【解決手段】本発明にかかるホース反転装置106は、圧力流体を用いてホース120を反転しつつ管路102の隙間110に進入させるホース反転装置であって、圧力流体が導入される圧力容器124と、圧力容器の先端に設けられホースを反転させながら射出する射出口126と、圧力容器の後端に設けられ容器外からホースを引き込む導入口128と、圧力容器の内部に設けられ導入口から引き込まれたホースを射出口に向かって送り出す送り機構136と、導入口の外から送り機構より先まで差し込まれたパイプ状のロッド200と、ロッドの中に通されて、ロッドの先端204の外でループをなし、ループ内にはホースの未反転部120aが通される紐202とを備える。
【背景技術】
【0002】
河川などに架け渡された橋梁の下には、例えば数100mの長距離にわたって管路が設置されている。管路は、例えばFRP(Fiber-Reinforced Plastics)などの樹脂からなり、その内部には、高電圧の電線などのOF(Oil Filled)ケーブルが敷設されている。
【0003】
このような管路では、OFケーブルが漏電などにより発火すると、樹脂である管路自体が燃えてしまい、管路の外部にまで炎が拡散し、火災が発生する事態があり得る。したがって、このような事態を想定し、ケーブルが敷設された管路内には何らかの防災対策を施す必要がある。
【0004】
特許文献1には、圧縮空気を用いて長尺の合成樹脂製筒状のチューブを裏返(反転)しつつ管内に進入させる空気圧送式管内進入装置が記載されている。この装置は、容器を備えていて、圧縮空気発生装置からの圧縮空気を容器内に導入する導入口と、チューブを吐出する筒状の吐出口とを有する。
【0005】
チューブは、折り畳んで積層して容器内に設置されている。チューブの先端部は、吐出口から容器外に導出され裏返しにされ、さらに吐出口の外周に被覆されて固定具で気密に固定されている。特許文献1では、容器の吐出口を管路の開口に対向させて、導入口から圧縮空気を容器内に導入すると、裏返しにされたチューブの先端部が空気に押されて、管路内に進入する、としている。
【0006】
特許文献2には、筒状のフィルムを裏返しつつ管内に進入させるフィルム送り出し装置が記載されている。この装置は、密閉された箱状の容器であって、圧空導入部およびフィルム導出部が設けられている。フィルムは、装置内に設けられた支軸に巻回され回転自在に装置内で懸架保持されている。フィルムの先端部は、フィルム導出部から引き出され裏返しにされ、フィルム導出部に気密に固定されている。
【0007】
特許文献2では、圧空導入部から圧縮空気を装置内に送ると、裏返しにされたフィルムの先端部が空気に押されて、管路内に進入する、としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記防火対策を実現するために、2つのマンホールの間に位置する管路の中に消火チューブを引き込むことが考えられる。仮に特許文献1、2に記載の技術を適用した場合、チューブやフィルムを裏返しながら管路の一端から管内に進入させ、管路の他端まで到達した後、チューブやフィルムの後端に消火チューブを結び付けて、チューブやフィルムを引き抜くことにより、管路の中に消火チューブを引き込む、という手順が想定される。
【0010】
しかし特許文献1、2の容器は、チューブを折り畳んで積層してその内部に設置したり、容器内に設けられた支軸に巻回されたフィルムを収容したりする必要があるため、サイズが大きくなってしまう。したがって、特許文献1、2の容器を、ケーブルが敷設された管路間に設けられたマンホールのような狭い空間に設置すること自体が困難となり、上記防災対策を実現することが困難である。
【0011】
さらに特許文献1、2の技術を適用しても、チューブやフィルムを裏返しながら数100mの長距離の管路の一端から管内に進入させ、管路の他端まで到達させることは容易ではない。例えばチューブやフィルムを裏返そうとしても、何らかの抵抗により裏返しが停止してしまい、それ以上裏返すことができないときがある。チューブやフィルムの裏返しを再開させたい場合、圧力をさらに上げることが考えられる。しかし、圧力を上げようとしても、チューブやフィルム、装置自体さらには管路に圧力制限があるため、チューブやフィルムを再度裏返すために必要な圧力まで上げることができない。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑み、マンホールのような狭い空間に設置可能であり、管内にホースを確実に進入させることができるホース反転装置およびホース反転工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明にかかるホース反転装置の代表的な構成は、圧力流体を用いてホースを反転しつつ管内の隙間に進入させるホース反転装置であって、圧力流体が導入される圧力容器と、圧力容器の先端に設けられホースを反転させながら射出する射出口と、圧力容器の後端に設けられ容器外からホースを引き込む導入口と、圧力容器の内部に設けられ導入口から引き込まれたホースを射出口に向かって送り出す送り機構と、導入口の外から送り機構より先まで差し込まれたパイプ状のロッドと、ロッドの中に通されて、ロッドの先端の外でループをなし、ループ内にはホースの未反転部分が通される紐とを備えることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、まず圧力容器には、後端の導入口を通して容器外からホースが引き込まれる。つぎに引き込まれたホースは、圧縮空気による圧力を受けて圧力容器の先端の射出口で反転しつつ管内に進入する。ホースは、容器外から引き込まれるため、圧力容器内に予め収容する必要がない。したがって、ホース反転装置によれば、圧力容器を小さくでき、マンホールなどの狭い空間に設置できる。
【0015】
一例として防火対策を行う場合には、管路の一端側のマンホールにホース反転装置を設置し、管路とほぼ同じ長さのホースを用意し、ホースの後端に消火チューブを取り付ける。この状態で、圧力容器に容器外からホースを引き込んで反転させながら、管路の一端から他端に向けて進入させる。そしてホースの後端が管路の他端側のマンホールまで到達すると、管路の中に消火チューブを確実に引き込むことができる。
【0016】
ところで、ホースを反転させながら、管路の一端から他端に向けて進入させようとしても、何らかの抵抗により反転が停止してしまい、それ以上反転させることができないときがある。一例としてホースが自重によりたわみ、圧力容器の内面に接触し、摩擦抵抗が増えることで、ホースの推進力が低下した場合などが考えられる。ホースの反転を再開させたい場合、圧力をさらに上げることが考えられる。しかし、圧力を上げようとしても、ホース、装置自体さらには管路に圧力制限があるため、ホースを再度反転させるために必要な圧力まで上げることができない。
【0017】
これに対して上記構成では、導入口の外から送り機構より先まで差し込まれたパイプ状のロッドと、ロッドの中を通された紐とを備えている。紐は、ロッドの先端の外でループをなしていて、ループ内にはホースの未反転部分が通されている。このような上記構成によれば、ロッドの後端から紐を引くことにより、ループを狭めてホースの未反転部分を締め付け固定し、ロッドをさらに押し込むことでホースの未反転部分を押出すことができる。これにより、ホースの反転が停止したら、作業者は、紐を引いてループを狭めて、ホースの未反転部分を締め付け固定し、その状態でロッドをさらに先まで押し込むことができる。このようにすれば、ホースに対する圧縮空気による推進力に、ロッドによる押込み力が加わるので、ホースの再反転に本来必要とされる圧力よりも低い圧力でホースを再度反転させることができる。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明にかかるホース反転工法の代表的な構成は、圧力流体が導入される圧力容器と、圧力容器の先端に設けられホースを反転させながら射出する射出口と、圧力容器の後端に設けられ容器外からホースを引き込む導入口と、導入口から引き込まれたホースを射出口に向かって送り出す送り機構と、導入口の外から送り機構より先まで差し込まれたパイプ状のロッドと、ロッドの中に通されて、ロッドの先端の外でループをなし、ループ内にはホースの未反転部分が通される紐とを備えるホース反転装置を用いて、導入口からホースを、紐のループ内を通過させつつ引き込みながら、圧力流体を用いて射出口からホースを反転させながら射出し、ホースの反転が停止したとき、ロッドの後端から紐を引いて、ループを狭めてホースの未反転部分を締め付け固定し、ロッドをさらに押し込むことでホースの未反転部分に推進力を与えることを特徴とする。
【0019】
上述したホース反転装置における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該ホース反転工法にも適用可能である。すなわち圧力容器は、容器外からホースが引き込まれるため、サイズを小さくでき、マンホールなどの狭い空間に設置できる。そしてマンホールに設置したホース反転装置を用いることで、導入口から引き込まれたホースを、射出口で反転させつつ、送り機構によってホースを射出口に向かって送り出すことで、反転をスムーズに行うことが可能となり、反転圧力を低く抑えることができる。これにより、管路の一端から他端に向けて確実にホースを進入させると共に、ホース反転の圧力によって管路変形などを生じさせないことが可能となる。
【0020】
また、ホースの反転が何らかの抵抗により停止した場合であっても、作業者は、ロッドの後端から紐を引くことでループを狭めてホースの未反転部分を締め付け固定し、ロッドをさらに押し込むことでホースの未反転部分に推進力を与えることができる。すなわち、ホースに対する圧縮空気による推進力に、ロッドによる押込み力が加えられることから、ホースの再反転に本来必要とされる圧力よりも低い圧力でホースを再度反転させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、マンホールのような狭い空間に設置可能であり、管内にホースを確実に進入させることができるホース反転装置およびホース反転工法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態におけるホース反転装置を適用する管路を示す図である。
図1(a)は、橋梁100の下に設置された管路102を示す図である。
図1(b)は、
図1(a)の管路102のA−A断面図である。なお
図1(b)に示すように、橋梁100の下には複数本の管路102が設置されているが、
図1(a)では1本の管路102を代表的に示している。
【0025】
図1(a)に示す橋梁100の下には、例えば数100mの長距離にわたって管路102が設置されている。管路102は、FRPなどの樹脂からなり、その内部には高電圧の電線(OFケーブル104)などが敷設されている。なお管路102は、橋梁100の下ばかりでなく、地中に設置されている場合もある。このような管路102では、OFケーブル104が漏電などにより発火した場合、樹脂である管路102自体が燃えてしまい、管路102の外部にまで炎が拡散し、ついには火災が発生する事態があり得る。
【0026】
そこで本実施形態では、ホース反転装置106(
図2参照)を用いて、管路102の中に
図1(a)に破線で示す消火チューブ108を引き込む、という防災対策を採用した。ここで管路102の中とは、
図1(b)に示す管路102とOFケーブル104との隙間110であり、その形状は、管路102およびOFケーブル104の断面形状がほぼ円形であるため、三日月形状となっている。
【0027】
消火チューブ108は、マンホール112、114の間に位置する管路102の中に、ホース反転装置106を用いて引き込まれる(後述)。消火チューブ108の両端は、マンホール112、114内に配置された消火ポンプ116、118に接続される。消火ポンプ116、118から消火チューブ108に消火剤が圧力をかけて供給されている。
【0028】
このようにすれば、OFケーブル104が発火する事態において、発火部位の熱により消火チューブ108が破れることにより、消火剤が発火部位に噴射されて、消火が可能となる。なお、消火チューブ108は、軽量で且つ消火剤を注入する内圧力や反転時の外圧力に耐えうる強度を有する硬質樹脂性のチューブが好適である。
【0029】
以下、ホース反転装置106を用いて上記防災対策を行う場合について説明する。
図2は、本発明の実施形態におけるホース反転装置106による反転挿通工程(ホース反転工法)を説明する図である。
図3は、
図2のホース反転装置106の内部を示す模式図である。
図4は、ホース反転装置106に用いられるホース120を説明する図であって、
図3のB−B断面図である。
【0030】
ホース反転装置106は、圧力流体の例としての圧縮空気を用いてホース120を反転しつつ管路102(
図1参照)の中に進入させる、いわゆるホースライニング工法を実施する装置である。ホース反転装置106は、
図2に示すように圧縮空気が導入される圧力容器124と、射出口126と、導入口128とを備える。射出口126は、圧力容器124の先端に設けられた筒状の部位であり、ホース120を反転させながら射出する(
図3参照)。
図3に示すホース120の先端130は、射出口126から容器外に導出され裏返し(反転)にされ、さらに射出口126の外周に被覆されて固定具(反転金具132)で気密に固定されている。
【0031】
ホース反転装置106により反転されるホース120は、反転挿通工程を行うことで
図3に示すように、未だ反転していないホース未反転部120aと、既に反転済みのホース既反転部120bとを含むことになる。なお
図4は、ホース未反転部120aの断面を示している。
【0032】
図4に示すホース未反転部120aは、繊維製筒状体(筒状織布)である内層134aと、内層134aの外面に一体成形された被膜層134bとを有する。被膜層134bとしては、ポリウレタン樹脂、ポリエステルエラストマ等の熱可塑性樹脂が用いられ、気密性を確保している。なおホース120は、反転後の状態すなわちホース既反転部120bにおいて、筒状織布である内層134aがホース120の外面となり、被膜層134bがホース120の内面となる。
【0033】
ホース反転装置106の導入口128は、
図2に示すように圧力容器124の後端に設けられていて、容器外からホース120を引き込む。このようにホース120が容器外から引き込まれることから、圧力容器124にはホース120を予め収容する必要がない。このため、圧力容器124は、サイズを小さくできる。
【0034】
ホース反転装置106はさらに、
図3に示すパイプ状のロッド200と、紐202とを備える(後述)。ロッド200は、導入口128の外から圧力容器124内に差し込まれている。すなわち導入口128は、容器外からホース120を引き込みつつ、さらにはロッド200が差し込まれた状態で気密性を保つよう構成されている。また導入口128は、射出口126からホース120を送り出すための圧力を容器内から受けている。このため、導入口128では、この圧力に抗して容器外からホース120を引き込む必要がある。
【0035】
そこで圧力容器124の内部には、
図3に示すように送り機構136が設けられている。送り機構136は、モーター(不図示)により駆動される一対の送り出しローラ138を含む。送り出しローラ138は、圧力容器124の導入口128から引き込まれたホース120を上下方向から挟み込んで、射出口126に向かって送り出す。このため、導入口128で抵抗が生じた場合であっても、送り機構136によって抵抗が低減あるいは相殺される。このため、導入口128の抵抗は、ホース120が射出口126で反転することを妨げない。
【0036】
ホース反転装置106では、上記したように圧力容器124の外からホースが引き込まれるため、サイズを小さくできる。このため、
図2に示す管路102の一端140に面するマンホール112(
図1(a)参照)のような狭い空間であってもホース反転装置106を設置できる。
【0037】
圧力容器124の外には、
図2に示すようにホース120が折り畳んで積層され配置されていて、さらにホース120の後端142に消火チューブ108が結び付けられている。なおホース120の長さは、管路102とほぼ同じ長さとしている。
【0038】
また圧力容器124には、配管144、146を介してエアタンク148、コンプレッサ150が接続されている。これにより、圧力容器124には、コンプレッサ150からの圧縮空気が配管144を介して導入可能となっている。
【0039】
このようなホース反転装置106をマンホール112に設置して、圧力容器124の射出口126を管路102の一端140に対向させた状態で、圧縮空気を圧力容器124に導入する。これにより、
図3に示すように圧力容器124には導入口128を通して容器外からホース120が引き込まれ(矢印C参照)、送り機構136によりホース120が射出口126に向かって送り出される。射出口126に向かって送り出されたホース120は、圧力容器124に導入された圧縮空気(矢印D参照)による圧力を受けて、圧力容器124の射出口126で反転しつつ、管路102の中に向かう(矢印E参照)。
【0040】
その結果、
図2に示すように、圧力容器124の容器外に折り畳まれていたホース120は、圧力容器124の導入口128を通して引き込まれて、射出口126で反転しつつ、管路102の一端140から他端152に向かって進入する。
【0041】
なおホース未反転部120aの外面とホース既反転部120bの内面は、いずれも熱可塑性樹脂から成る被膜層134b(
図4参照)である。このため一例として、ホース120の被膜層134bの表面に予め油性潤滑剤を塗布すれば、被膜層134b同士の摩擦抵抗は大幅に軽減されて、反転はスムーズに進行するとともに、反転圧力を低くすることができる。これにより、ホース120の反転圧力によって、管路202の変形などが生じる事態を回避できる。
【0042】
ところで、ホース120を反転させながら、管路102の一端140から他端152に向けて進入させようとしても、何らかの抵抗により反転が停止してしまい、それ以上反転させることができないときがある。原因としては、例えばホース120が自重によりたわみ、圧力容器124の内面に接触し、摩擦抵抗が増えることで、ホース120の推進力が低下した場合などが想定される。そしてホース120の反転を再開させたい場合、圧力容器124の圧力をさらに上げることが考えられる。しかし、圧力を上げようとしても、ホース120、ホース反転装置106さらには管路102に圧力制限があるため、ホース120を再度反転させるために必要な圧力まで上げることができない。
【0043】
そこでホース反転装置106では、上記のロッド200と紐202とを用いたロッド押込み工程によって、圧力をさらに上げることなく、ホース120の再反転を可能としている。以下、
図3および
図5を参照してロッド押込み工程について説明する。
図5は、ホース反転装置106によるロッド押込み工程を説明する図である。
【0044】
ここでホース反転装置106では、
図3に示すように導入口128から送り機構136までの区間Fにおいては、送り機構136による送り込みでホース120が進行する。さらにホース反転装置106では、送り機構136からホース120の反転進行点154までの区間Gにおいては、圧力容器124に導入される圧縮空気(矢印D参照)による推進力によってホース120が進行する。しかしホース120の反転が何らかの抵抗により停止した場合、上記したように圧力を上げて圧縮空気による推進力を高めることができない。
【0045】
この対策として、ロッド200は、
図3に示すように導入口128の外から送り機構136より先まで差し込まれていて、その先端204が区間Gのうち送り機構136と射出口126との間に位置している。紐202は、ロッド200の後端206からロッド200の中を通され、さらにロッド200の先端204の外でループ208を成している。また、紐202のループ208内には、ホース未反転部120aが通されている(
図5(a)参照)。
【0046】
ロッド押込み工程において、作業者は、
図5(b)に示すようにロッド200の後端206から紐202を引く(矢印H参照)。紐202を引くことにより、ループ208は狭められて、ホース未反転部120aを締め付け固定する。続いて作業者は、
図5(c)に示すように、ループ208によってホース未反転部120aが締め付け固定された状態のままで、ロッド200をさらに導入口128に向かって押し込む(矢印I参照)。
【0047】
ロッド200が押し込まれると、ホース未反転部120aは、狭められたループ208を介して区間Gにおいて射出口126に向かって進行する(矢印J参照)。このようなロッド押込み工程によれば、区間Gにおいてホース120に対する圧縮空気による推進力に、ロッド200による押込み力が加わるので、ホース120の再反転に本来必要とされる圧力よりも低い圧力でホース120を再度反転させることができる。具体的には、圧力を例えば0.1MPa程度低減することが可能である。なおホース120が再反転を開始したら、作業者は、紐202を緩めてループ208を再び広げた状態(
図5(a)参照)として、ホース未反転部120aの締め付け固定を解除する。
【0048】
図6は、
図5に後続するチューブ引込工程を説明する図である。
図5に示したロッド押込み工程によりホース120が再反転した後、
図6(a)に示すようにホース120の約半分の長さが管路102に進入すると、ホース120の後端142に結び付けられた消火チューブ108が、導入口128から圧力容器124内に引き込まれ、送り機構136により射出口126に向かって送り出され始める。このとき送り機構136を通過する形状について、扁平状態のホース120からチューブ形状の消火チューブ108に切り替わるので、送り出しローラ138間を上部ハンドルで適宜調整して広げる。送り機構136で消火チューブ108を送り出すことで、ホース120の後端142を介してホース未反転部120aを進行方向に押し込む作用が働き、ホース120の反転進行を補助する働きが生じる。
【0049】
そして
図6(b)に示すように、管路102の一端140から他端152に向かって進入したホース120は、ついには全体にわたって反転し、図示のように後端142が管路102の他端152に到達する。その結果、ホース120の後端142に結び付けられた消火チューブ108は、図示のようにホース120に連れられて管路102の他端152に到達する。
【0050】
そして作業者が、管路102の他端152に面するマンホール114(
図1(a)参照)からアクセスして、後端142を切断処理する。反転したホース120は残置しても良いし、可能であれば引き抜いても良い。このようにして、管路102の一端140から他端152にわたって消火チューブ108を引き込む、という防災対策を実現できる。
【0051】
図7は、本発明の他の実施形態におけるホース反転装置106Aを示す図である。ホース反転装置106Aは、ロッド200Aの先端204Aが、区間Gのうち射出口126よりも先、すなわち圧力容器124の外に位置するようにロッド200Aが差し込まれている点で、上記のホース反転装置106と異なる。
【0052】
このようなホース反転装置106Aであっても、ホース120の反転が何らかの抵抗により停止した場合、作業者は、上記のロッド押込み工程を行うことができる。すなわち作業者は、ロッド200Aの後端206Aから紐202Aを引いてループ208Aを狭め、ホース120のホース未反転部120aを締め付け固定し、ロッド200Aをさらに押し込むことでホース未反転部120aに推進力を与えることができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のホース反転装置106、106Aによれば、圧力容器124のサイズを小さくできるため、マンホール112などの狭い空間に設置できる。そしてマンホール112に設置したホース反転装置106、106Aを用いることで、導入口128から引き込まれたホース120を、射出口126で反転させつつ管路102の中に確実に進入させることが可能となる。さらにホース120の後端142に消火チューブ108を結び付けることにより、管路102の中に消火チューブ108を確実に引き込むことができる。
【0054】
またホース反転装置106、106Aでは、ホース120の反転が何らかの抵抗により停止した場合、ロッド200、200Aの後端206、206Aから紐202、202Aを引いてループ208、208Aを狭めて、ホース120のホース未反転部120aを締め付け固定し、ロッド200、200Aをさらに押し込む、というロッド押込み工程が可能である。したがって、ホース反転装置106、106Aによれば、ホース120に対する圧縮空気による推進力に、ロッド200、200Aによる押込み力を加えることが可能となり、ホース120の再反転に本来必要とされる圧力よりも低い圧力でホース120を再度反転させることができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。