特開2020-78925(P2020-78925A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-78925(P2020-78925A)
(43)【公開日】2020年5月28日
(54)【発明の名称】インクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20200501BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20200501BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20200501BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20200501BHJP
【FI】
   B41M5/00 100
   B41M5/00 120
   B41M5/00 132
   B41J2/01 125
   B41J2/01 123
   B41J2/01 101
   B41J2/01 401
   C09D11/40
   C09D11/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2019-182997(P2019-182997)
(22)【出願日】2019年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2018-191929(P2018-191929)
(32)【優先日】2018年10月10日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】大谷 拓海
(72)【発明者】
【氏名】後藤 史博
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 洋平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 亮平
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EC29
2C056EC32
2C056FC01
2C056FD13
2C056HA42
2C056HA44
2C056HA45
2C056HA46
2H186AA04
2H186AB08
2H186AB13
2H186AB17
2H186AB23
2H186AB39
2H186AB44
2H186AB55
2H186AB56
2H186AB64
2H186BA08
2H186DA08
2H186FA01
2H186FA08
2H186FA14
2H186FA18
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB58
4J039AB12
4J039AD01
4J039AD03
4J039AD06
4J039AD09
4J039AD10
4J039AD15
4J039AE04
4J039AE06
4J039AE07
4J039AE08
4J039BA04
4J039BB01
4J039BC07
4J039BC09
4J039BC10
4J039BC11
4J039BC12
4J039BC13
4J039BC39
4J039BC50
4J039BC60
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4J039BE12
4J039BE19
4J039BE22
4J039BE23
4J039BE24
4J039BE30
4J039EA14
4J039FA02
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】部分的な光沢差が大きく、かつ光沢ムラが少ない画像を形成することが可能なインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】有色インクから形成される画像部と透明インクから形成される画像部を有する画像の記録媒体への定着に以下の条件(1)または(2)による定着工程を用いる。
(1)T1>MFT1>MFT2及びMFT1>T2>MFT2
(2)T1>MFT2>MFT1及びMFT2>T2>MFT1
・MFT1:有色インクの最低造膜温度
・MFT2:透明インクの最低造膜温度
・T1:加熱及び加圧する時の定着部材の温度
・T2:画像を定着部材から剥離する時の定着部材の温度
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と第一の樹脂を含む有色インクと、第二の樹脂を含む透明インクと、を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成工程と、
前記画像を前記記録媒体に定着させる定着工程と、
を有するインクジェット記録方法であって、
前記定着工程は、
前記記録媒体に形成された画像に定着部材を接触させた状態で、前記画像を加熱及び加圧し、
加熱及び加圧された前記画像を冷却し、
冷却された前記画像を前記定着部材から剥離する
ことによって、前記画像を前記記録媒体に定着させる工程であり、
前記画像を加熱及び加圧する時の定着部材の表面の温度(T1)が、前記有色インクの最低造膜温度(MFT1)及び前記透明インクの最低造膜温度(MFT2)より高く、
前記画像を前記定着部材から剥離する時の定着部材の表面の温度(T2)が、前記有色インクの最低造膜温度(MFT1)と前記透明インクの最低造膜温度(MFT2)との間の温度である
ことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記MFT1が、前記MFT2よりも低い請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記T1が、前記MFT2よりも10℃以上高い請求項2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記T2が、前記MFT1よりも10℃以上高い請求項2または3に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記画像は、前記記録媒体上に、前記記録媒体の側から順に、前記有色インクによって形成された有色インク層と、前記透明インクによって形成された透明インク層と、を有する請求項2〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記MFT1が、前記MFT2よりも高い請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記T1が、前記MFT1よりも10℃以上高い請求項6に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記T2が、前記MFT2よりも10℃以上高い請求項6または7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記第一の樹脂が樹脂粒子である請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記第二の樹脂が樹脂粒子である請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記有色インク及び前記透明インクのうちの少なくとも一方がワックス粒子を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記定着部材の表面粗さRaは、0.1μm以下である請求項1〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
前記画像形成工程が、
転写体に前記有色インクと前記透明インクを付与して中間画像を形成するインク付与工程と、
前記中間画像を前記転写体から前記記録媒体に転写することによって、前記記録媒体に前記画像を形成する転写工程と
を有する請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
前記転写体の前記有色インクが付与される領域及び前記透明インクが付与される領域の少なくとも一方の領域に、少なくとも一部が重なるように、該有色インク及び/または該透明インクを高粘度化する反応液を付与する反応液付与工程を有する請求項13に記載のインクジェット記録方法。
【請求項15】
前記転写体上に形成された中間画像から液体成分の少なくとも一部を液吸収部材により除去する液体成分除去工程を有する請求項13または14に記載のインクジェット記録方法。
【請求項16】
前記画像形成工程が、前記記録媒体に前記有色インクと前記透明インクを付与して画像を形成する画像形成工程である請求項1〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項17】
前記記録媒体の前記有色インクが付与される領域及び前記透明インクが付与される領域の少なくとも一方の領域に、少なくとも一部が重なるように、該有色インク及び/または該透明インクを高粘度化する反応液を付与する反応液付与工程を有する請求項16に記載のインクジェット記録方法。
【請求項18】
前記記録媒体上に形成された画像から液体成分の少なくとも一部を液吸収部材により除去する液体成分除去工程を有する請求項16または17に記載のインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法により樹脂粒子を含んだインクを記録媒体に付与して形成した画像を加熱及び加圧して定着することにより、インクを被膜化する画像形成方法が知られている。この画像形成方法によれば、画像を形成するインクを被膜化したことにより、その耐擦過性を向上させることが可能になるとともに、被膜化したインクの表面の平滑性を高めることで光沢性の高い画像を得ることが出来る。
特許文献1には、色材を含む第1の液体組成物の凝集層から得られる被膜化された画像部と、色材を含まない第2の液体組成物の凝集層から得られる被膜化された画像部に光沢差を発生させる方法が開示されている。特許文献1では、記録媒体に形成した被膜化可能な画像を第1の定着部材で加熱及び加圧する第1の定着工程と、第2の定着部材で加熱及び加圧した後に冷却して第2の定着部材を剥離して被膜化された画像を記録媒体に定着する第2の定着工程を採用している。定着される被膜化可能な画像は、色材を含む第1の液体組成物の凝集層からなる画像部と、色材を含まない第2の液体組成物の凝集層からなる画像部を有する。特許文献1では、以下の条件(1−1)及び(1−2)を用いて定着工程を行うことで、目的とする光沢差を発生させている。
(1−1) MFT1>MFT2
(1−2) T1>MFT1≧T2>MFT2≧T3
MFT1:色材を含む第1の液体組成物の凝集層の最低造膜温度
MFT2:色材を含まない第2の液体組成物凝集層の最低造膜温度
T1:第1の定着工程における加熱及び加圧時の第1及び第2の液体組成物凝集層の温度T2:第2の定着工程における加熱及び加圧時の第1及び第2の液体組成物凝集層から得られた画像の温度
T3:第2の定着工程における剥離時の温度。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−203626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット記録方法によって形成される画像よりもさらに高光沢と低光沢の光沢差を大きくすることが求められている。そこで、本発明の目的は、部分的な光沢差が大きく、かつ光沢ムラが少ない画像を形成することが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかるインクジェット記録方法は、
色材と第一の樹脂を含む有色インクと、第二の樹脂を含む透明インクと、を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成工程と、
前記画像を前記記録媒体に定着させる定着工程と、
を有するインクジェット記録方法であって、
前記定着工程は、
前記記録媒体に形成された画像に定着部材を接触させた状態で、前記画像を加熱及び加圧し、
加熱及び加圧された前記画像を冷却し、
冷却された前記画像を前記定着部材から剥離する
ことによって、前記画像を前記記録媒体に定着させる工程であり、
前記画像を加熱及び加圧する時の定着部材の表面の温度(T1)が、前記有色インクの最低造膜温度(MFT1)及び前記透明インクの最低造膜温度(MFT2)より高く、
前記画像を前記定着部材から剥離する時の定着部材の表面の温度(T2)が、前記有色インクの最低造膜温度(MFT1)と前記透明インクの最低造膜温度(MFT2)との間の温度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、部分的な光沢差が大きく、かつ光沢ムラが少ない画像を形成することが可能なインクジェット記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明における光沢差発現方法を示した模式図である。
図2】本発明における転写型インクジェット記録装置の構成の一例を示す模式図である。
図3】本発明における直接描画型インクジェット記録装置の構成の一例を示す模式図である。
図4図2に示す転写型インクジェット記録装置における、装置全体の制御システムを示すブロック図である。
図5図2に示すプリンタ制御部のブロック図である。
図6図3に示す直接描画型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図である。
図7】本発明の実施形態における冷剥離定着装置の全体構成を表す模式図である。
図8図7に示す冷剥離定着装置における加熱加圧部の構成を表す模式図である。
図9】本発明の実施形態における冷剥離定着工程での画像部の温度プロファイルを示したグラフである。
図10】実施例1〜6における出力画像パターンの模式図である。
図11】実施例1〜3における画像部の温度プロファイルを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明にかかるインクジェット記録方法は、以下の工程を有する。
(A)色材と第一の樹脂を含む有色インクと、第二の樹脂を含む透明インクと、を用いて記録媒体に画像を形成する画像形成工程。
(B)記録媒体に形成された画像を記録媒体に定着させる定着工程。
そして、定着工程において、記録媒体に形成された画像に定着部材を接触させた状態で、(i)前記画像を加熱及び加圧し、(ii)加熱及び加圧された前記画像を冷却し、(iii)冷却された前記画像を前記定着部材から剥離する。これにより、画像を記録媒体に定着させることができる。
【0009】
本発明では、この定着工程において、画像を加熱及び加圧する時の定着部材の表面の温度(T1)、画像を形成する有色インクの最低造膜温度(MFT1)、及び透明インクの最低造膜温度(MFT2)が以下の関係を満たす。
・T1>MFT1
・T1>MFT2
すなわち、前記画像を加熱及び加圧する時の定着部材の表面の温度(T1)が、前記有色インクの最低造膜温度(MFT1)及び前記透明インクの最低造膜温度(MFT2)より高くなるように制御する。
さらに、この定着工程において、画像を定着部材から剥離する時の定着部材の表面の温度(T2)は、有色インクの最低造膜温度(MFT1)と透明インクの最低造膜温度(MFT2)との間に設定される。すなわち、画像を定着部材から剥離する時の定着部材の表面の温度(T2)、有色インクの最低造膜温度(MFT1)、及び透明インクの最低造膜温度(MFT2)が以下の関係を満たす。
・MFT1<T2<MFT2、または、MFT2<T2<MFT1
従って、定着部材の表面の温度がMFT1とMFT2の間まで冷却されたタイミングで定着部材の画像からの剥離が行われる。
【0010】
記録媒体に形成された画像の有する有色インクから形成された部分及び透明インクから形成される部分は被膜形成性であり、定着工程前において、それぞれ最低造膜温度(MFT:Minimum Film-forming Temperature)を有する。有色インクから形成される定着前の部分である、定着前の画像部は、色材と第一の樹脂を含み、そのMFT1以上の温度に加熱されることで造膜し被膜化する。また、透明インクから形成される定着前の部分である、定着前の画像部は、第二の樹脂を含み、そのMFT2以上の温度に加熱されることで造膜し被膜化する。
定着処理前(定着工程前)の有色インクの画像部での形態は、色材と樹脂を含む高粘度化された有色インクの形態であっても、色材と樹脂を含む凝集物としての形態であってもよい。
定着処理前(定着工程前)の透明インクの画像部での形態は、色材を含まず、樹脂を含む高粘度化された透明インクの形態であっても、色材を含まず、樹脂を含む凝集物としての形態であってもよい。
定着部材の表面の温度T1及びT2は、記録媒体に定着させる画像と接触する側の定着部材の表面の温度のことである。また、定着部材によって記録媒体に定着させる画像は非常に薄いため、画像中に温度勾配が生じるといったことを考慮する必要がない。そのため、画像を加熱及び加圧する時の定着部材の表面の温度(T1)は、加熱及び加圧する時の画像の温度とすることができる。また、同様の理由から、画像を定着部材から剥離する時の定着部材の表面の温度(T2)は、剥離する時の画像の温度とすることができる。
なお、上記(B)として記載した定着工程を以下冷剥離定着工程ともいう。また、T1を加圧温度、T2を剥離温度ともいう。
【0011】
まず初めに、本発明における画像部の光沢差の発現方法についての概要を説明する。
図1は、本発明を用いて出力した記録媒体上94における画像の模式的断面図である。図1(A)は定着部材93と画像部が密着した状態を示した図であり、図1(B)は定着部材93を画像部から剥離した後の状態を示した図である。
この例では、低い最低造膜温度(MFT1)を持った有色インクと高い最低造膜温度(MFT2)を持った透明インクを用いて記録媒体上に、有色インク層92と透明インク層91とを有する画像が形成される。冷剥離定着工程において、加圧温度(T1)は有色インクおよび透明インクそれぞれの最低造膜温度よりも高いため両インクは造膜して、それぞれ有色インクによって形成された有色インク層92、及び、透明インクによって形成された透明インク層91が形成される。形成された有色インク層92と透明インク層91は定着部材93の表面に倣って平滑化される。続いて剥離温度(T2)は、有色インクの最低造膜温度(MFT1)よりも高く、透明インクの最低造膜温度(MFT2)よりも低い。そのため有色インク層92はまだ軟らかい状態にある。一方で、透明インク層91は透明インクの最低造膜温度以上に加熱されて被膜化した後、最低造膜温度よりも低い温度に冷却されることで、充分に硬化した状態で定着部材93から剥離される。これにより軟らかい有色インク層92の表面は定着部材93に引っ張られ画像表面の平滑性が定着部材に対して相対的に低下する。一方、充分に硬化した透明インク層91は平滑な表面形状を維持したまま定着部材93から剥離可能である。よって両画像において大きな光沢差を発生させることが可能となる。
【0012】
また、有色インクの最低造膜温度(MFT1)が、透明インクの最低造膜温度(MFT2)よりも低く、かつ、画像が、記録媒体上に、記録媒体の側から順に、有色インクによって形成された有色インク層92と、透明インクによって形成された透明インク層91とを有することが好ましい。画像が、記録媒体の側から順に、有色インク層92と透明インク層91とを有することで、有色インク層92の上に、剥離温度よりも高い最低造膜温度を有する透明インク層が存在することになる。そのため、この有色インク層92と透明インク層91が積層された領域(画像部)では、定着部材から剥離したとき、画像の表面の平滑性が低下されない。よって、透明インクの画像部と有色インクの画像部との間で光沢差を生じさせるだけでなく、有色インクの画像部の中においても、透明インク層の有無によって光沢差を生じさせることが可能となる。
以上、MFT1<T2<MFT2の場合に光沢差が得られることについて説明したが、MFT1>T2>MFT2の場合においても図1で説明した場合と同様のメカニズムによって光沢差を生じさせることができる。
【0013】
以下、実施形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「記録媒体」とは、一般的な印刷で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック、フィルムその他の印刷媒体、記録メディアも含めて言う。
本発明にかかるインクジェット記録方法としては、被吐出媒体としての転写体上で画像を形成し、記録媒体へ転写するインクジェット記録方法と、被吐出媒体としての記録媒体上で画像を形成するインクジェット記録方法とが挙げられる。
【0014】
以下にそれぞれのインクジェット記録方法に用いられる装置について説明する。本発明において、転写体上で画像を形成し記録媒体へ転写するインクジェット記録装置を、以下便宜的に「転写型インクジェット記録装置」と称し、記録媒体上で画像を形成するインクジェット記録装置を、以下便宜的に「直接描画型インクジェット記録装置」と称する。
転写型インクジェット記録装置では、転写体上でインクにより形成されたインク像としての画像は転写体上での各種の処理を経て印刷物形成用の記録媒体に転写されて最終画像を有する印刷物が形成される。
直接描画型インクジェット記録装置では、印刷物形成用の記録媒体上で画像の形成及び画像の各種処理が行われ、最終画像を有する印刷物が形成される。この場合、記録媒体自体が印刷物を構成する部材である。
【0015】
(転写型インクジェット記録装置)
図2は、転写型インクジェット記録装置の概略構成の一例を示す模式図である。
この転写型インクジェット記録装置は、支持部材102によって支持された転写体101、反応液付与装置103、インク付与装置104、液吸収装置105、転写用の押圧部材106を有する転写装置、定着装置50、クリーニング装置109を有する。反応液付与装置103、液吸収装置105、クリーニング装置109は、それぞれ必要に応じて設けることができる。
支持部材102は、その回転軸102aを中心として図2の矢印の方向に回転する。この支持部材102の回転により、転写体101が移動する。この転写体の移動に同期して、転写体の周辺に配置された各装置が作動する。各装置の作動によって、転写体101での画像の形成、画像の各種処理及び転写体101からの画像の記録媒体108への転写、転写された画像の記録媒体への定着が順次行われ、定着された画像を有する印刷物が形成される。
具体的には先ず、転写体101上に、反応液付与装置103による反応液、および、インク付与装置104によるインクの付与が順次行われ、転写体101上に画像が形成される。反応液とインクの付与順は図示した順に限定されない。これらが少なくとも一部で重なるように転写体に付与される。
【0016】
転写体101上に形成された画像は、転写体101の移動により、液吸収装置105が有する液吸収部材105aと接触する位置まで移動する。
転写体101と液吸収装置105は互いに同期して作動し、画像は転写体101と同期して移動する液吸収部材105aと接触した状態を経由する。この間に液吸収部材105aは画像から液体成分の少なくとも一部を除去する。なお、画像は液吸収部材105aと接触した状態を経由することで液体成分のほとんどが除かれるが、このとき画像と液吸収部材105aとは所定の押圧力をもって接触した状態とされることが本装置構成では液吸収部材105aを効果的に機能させる観点で特に好ましい構成である。
液体成分の除去を異なる視点で説明すれば、転写体上に形成された画像を構成するインクを濃縮するとも表現することができる。インクを濃縮するとは、インクに含まれる液体成分が減少することによって、インクに含まれる色材や樹脂といった固形分の液体成分に対する含有割合が増加することを意味する。
そして、液体成分が除去された画像は、転写体101の移動により、記録媒体と接触する転写部に移動し、記録媒体搬送装置107によって転写部に搬送された記録媒体に押圧されることによって、記録媒体上に画像を形成する。なお、転写体上には反応液が付与されてからインクが付与されて画像が形成されるため、画像が形成されていない非画像領域には反応液がインクと反応することなく残っている場合がある。このような場合においては、本装置では液吸収部材105aは画像からのみならず、未反応の反応液とも接触(圧接)し、反応液の液体成分も併せて除去している。したがって、以上では、画像から液体成分を除去すると表現し説明しているが、画像のみから液体成分を除去するという限定的な意味合いではなく、少なくとも転写体上の画像から液体成分を除去していればよいという意味合いで用いている。なお、液体成分は、一定の形を持たず、流動性を有し、ほぼ一定の体積を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、インクや反応液に含まれる水や有機溶媒等が液体成分として挙げられる。
画像が形成された記録媒体108が記録媒体搬送装置107により定着装置50の位置に達すると、画像が冷剥離定着工程によって記録媒体に定着される。
【0017】
転写型インクジェット記録装置の各構成について以下に説明する。
<転写体>
転写体101は、画像形成用領域を有する表面を含む表面層を有する。画像形成領域は転写体の表面層の表面に設けられた領域であり、この画像形成領域全体にインクを付与して画像を形成しても、その一部にインクを付与して画像を形成してもよい。
表面層の部材としては、樹脂、セラミック等各種材料を適宜用いることができるが、耐久性等の点で圧縮弾性率の高い材料が好ましい。具体的には、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、加水分解性有機ケイ素化合物を縮合して得られる縮合物等が挙げられる。反応液の濡れ性、転写性等を向上させるために、表面層に対して表面処理を施して用いてもよい。表面処理としては、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、研磨処理、粗化処理、活性エネルギー線照射処理、オゾン処理、界面活性剤処理、シランカップリング処理などが挙げられる。これらを複数組み合わせてもよい。また、表面層に任意の表面形状を設けることもできる。
転写体は、圧力変動を吸収する機能を有する圧縮層を有することが好ましい。圧縮層を設けることで、圧縮層が変形を吸収し、局所的な圧力変動に対してその変動を分散し、高速印刷時においても良好な転写性を維持することができる。圧縮層の部材としては、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。上記ゴム材料の成形時に、所定量の加硫剤、加硫促進剤等を配合し、さらに発泡剤、中空微粒子或いは食塩等の充填剤を必要に応じて配合し多孔質としたものが好ましい。これにより、様々な圧力変動に対して気泡部分が体積変化を伴って圧縮されるため、圧縮方向以外への変形が小さく、より安定した転写性、耐久性を得ることができる。多孔質のゴム材料としては、各気孔が互いに連続した連続気孔構造のものと、各気孔がそれぞれ独立した独立気孔構造のものがある。多孔質の構造はこれらのいずれの構造であってもよく、これらの構造を併用してもよい。
【0018】
転写体は、表面層と圧縮層との間に弾性層を有することが好ましい。弾性層の部材としては、樹脂、セラミック等、各種材料を適宜用いることができる。加工特性等の点で、各種エラストマー材料、ゴム材料が好ましく用いられる。具体的には、例えば、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、スチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ブタジエンの共重合体、ニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。特に、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴムは、圧縮永久ひずみが小さいため、寸法安定性、耐久性の面で好ましい。また、温度による弾性率の変化が小さく、転写性の点でも好ましい。
表面層、弾性層、圧縮層の間に、これらを固定・保持するために各種接着剤や両面テープを用いてもよい。また、装置に装着する際の横伸びの抑制や、コシを保つために圧縮弾性率が高い補強層を設けてもよい。また、織布を補強層としてもよい。転写体は前記材質による各層を任意に組み合わせて作製することができる。
転写体の大きさは、目的の印刷画像サイズに合わせて自由に選択することができる。転写体の形状としては、特に制限されず、具体的にはシート形状、ローラ形状、ベルト形状、無端ウェブ形状等が挙げられる。
【0019】
<支持部材>
転写体101は、支持部材102上に支持されている。転写体の支持には、各種接着剤や両面テープを用いてもよい。または、転写体に金属、セラミック、樹脂等を材質とした設置用部材を取り付け、この設置用部材を用いて転写体を支持部材102上に支持してもよい。
支持部材102には、その搬送精度や耐久性の観点からある程度の構造強度が求められる。
支持部材の材質には金属、セラミック、樹脂等が好ましく用いられる。中でも特に、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するために、アルミニウム、鉄、ステンレス、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、シリカセラミクス、アルミナセラミクスが好ましく用いられる。またこれらを組み合わせて用いるのも好ましい。
【0020】
<反応液付与装置>
転写体に反応液を付与する反応液付与装置103は、反応液を収容する反応液収容部103aと、反応液収容部103aにある反応液を転写体101上に付与する反応液付与部材103b、103cを有する。
反応液付与装置としては、従来知られている各種装置を適宜用いる事ができる。具体的には、図2に示す反応液付与装置103のようなグラビアオフセットローラや、インクジェットヘッドを有する液体付与装置、ダイコーター、ブレードコーターなどが挙げられる。
反応液付与装置によって付与される反応液は、反応液を転写体に付与した後に付与されるインクと転写体上で接触することで、インクを高粘度化させることができる。
【0021】
<反応液>
反応液は、インク高粘度化成分を含有する。インクを構成している組成物の一部である色材や樹脂等がインク高粘度化成分と接触することによって化学的に反応し、あるいは物理的に吸着する。インクの高粘度化は、これらの現象によってインク全体の粘度の上昇が認められる場合や、色材などインクを構成する成分の一部が凝集する事により局所的に粘度の上昇を生じる場合をも含む。このインク高粘度化成分は、記録媒体上でのインク及び/又はインク組成物の一部の流動性を低下せしめて、画像形成時のブリーディングや、ビーディングを抑制する効果がある。
本発明においてはインク高粘度化成分として、多価の金属イオン、有機酸、カチオンポリマー、多孔質性微粒子などの公知のものを用いることができる。中でも、特に多価の金属イオン及び有機酸が好適である。また、複数の種類のインク高粘度化成分を含有させることも好適である。尚、反応液中のインク高粘度化成分の含有量は、反応液全質量に対して5質量%以上であることが好ましい。
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+及びZn2+等の二価の金属イオンや、Fe3+、Cr3+、Y3+及びAl3+等の三価の金属イオンが挙げられる。
有機酸としては、例えば、シュウ酸、ポリアクリル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、レブリン酸、コハク酸、グルタル酸、グルタミン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、オキシコハク酸、ジオキシコハク酸等が挙げられる。
反応液は適量の水や有機溶剤を含有していてもよい。この場合に用いる水はイオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また、反応液に用いることのできる有機溶剤としては特に限定されず、公知の有機溶剤を用いることができる。
また、反応液は界面活性剤や粘度調整剤を加えてその表面張力や粘度を適宜調整して用いることができる。用いられる材料としてはインク高粘度化成分と共存できるものであれば特に制限は無い。具体的に用いられる界面活性剤としては、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物(商品名:アセチレノールE100、川研ファインケミカル株式会社製)、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(商品名:メガファックF444、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
<インク付与装置>
インクを付与するインク付与装置104として、インクジェットヘッドを有する液体付与装置を用いる。インクジェットヘッドの形態としては、例えば電気−熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する形態、電気−機械変換体によってインクを吐出する形態、静電気を利用してインクを吐出する形態等が挙げられる。公知のインクジェットヘッドを用いることができる。中でも特に高速で高密度の画像形成の観点からは電気−熱変換体を利用したものが好適に用いられる。描画は画像信号を受け、各位置に必要なインク量を付与することにより行われる。
インク付与量は画像濃度(duty)やインク厚みで表現することができるが、各インクドットの質量に付与個数を掛け、印字面積で割った平均値をインク付与量(g/m)とした。なお、画像領域における最大インク付与量とは、インク中の液体分を除去する観点より、記録媒体の情報として用いられる領域内において、少なくとも5mm以上の面積において付与されているインク付与量を示す。
転写体101上に有色インクと透明インクを付与するために、インク付与装置104はインクジェットヘッドを複数有する。また、複数色の有色インクを用いる場合は、その色数に応じてインクジェットヘッドを用意する。例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクを用いて画像を形成する場合、インク付与装置104はこれら4種類の有色インクを転写体上にそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッドを有する。
【0023】
<インク>
(有色インク)
以下に有色インクの各成分について説明する。
(色材)
有色インクに含有される色材として、顔料、あるいは染料と顔料との混合物を用いることができる。色材として用いることができる顔料の種類は特に限定されない。顔料の具体例としては、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料を挙げることができる。これらの顔料は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
色材として用いることができる染料の種類は特に限定されない。染料の具体例としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料、食用染料などを挙げることができ、アニオン性基を有する染料を用いることができる。染料骨格の具体例としては、アゾ、トリフェニルメタン、フタロシアニン、アザフタロシアニン、キサンテン、アントラピリドンなどが挙げられる。
有色インク中の色材の含有量は、インク全質量に対し0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
(分散剤)
顔料を分散させる分散剤としては、インクジェットに用いられる公知の分散剤を使用することができる。中でも構造中に親水性部と疎水性部とを併せ持つ水溶性の分散剤を用いることが好ましい。特に、少なくとも親水性のモノマーと疎水性のモノマーとを含んで共重合させた樹脂からなる顔料分散剤が好ましく用いられる。ここで用いられる各モノマーについては特に制限はなく、公知のものが好適に用いられる。具体的には、疎水性モノマーとしてはスチレン、スチレン誘導体、アルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。
分散剤の酸価は50mgKOH/g以上550mgKOH/g以下であることが好ましい。また、分散剤の重量平均分子量は1000以上50000以下であることが好ましい。尚、顔料と分散剤との質量比(顔料:分散剤)としては1:0.1〜1:3の範囲であることが好ましい。
また、分散剤を用いず、顔料自体を表面改質して分散可能としたいわゆる自己分散顔料を用いることも好適である。
【0025】
(樹脂粒子)
有色インクは、冷剥離定着工程におけるインクの被膜化のための成分として色材を含まない樹脂(第一の樹脂)を含有する。この被膜化用の樹脂は、樹脂粒子の形態で有色インクに含まれることが好ましい。樹脂を樹脂粒子として用いることで、画像品位や定着性の向上に効果がある場合があり好適である。
樹脂粒子の材質としては、特に限定されず公知の樹脂を適宜用いることができる。具体的には、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、ポリジエン等の単独重合物、または、これらの単独重合物を生成するためのモノマーを複数組み合わせて重合した共重合物が挙げられる。該樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上2,000,000以下の範囲が好適である。また、有色インク中における樹脂粒子の量は、インク全質量に対して1質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上40質量%以下である。
樹脂粒子は、樹脂粒子が液中に分散した樹脂粒子分散体として用いることが好ましい。分散の手法については特に限定はないが、解離性基を有するモノマーを単独重合もしくは複数種共重合させた樹脂を用いて分散させたいわゆる自己分散型の樹脂粒子分散体は好適である。ここで解離性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられ、この解離性基を有するモノマーとしてはアクリル酸やメタクリル酸等が挙げられる。また、乳化剤により樹脂粒子を分散させたいわゆる乳化分散型の樹脂粒子分散体も、同様に好適に用いることができる。ここで言う乳化剤としては、低分子量、高分子量に関わらず公知の界面活性剤が好ましい。該界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤か、もしくは樹脂粒子と同じ電荷を持つ界面活性剤が好ましい。
樹脂粒子分散体は、10nm以上1000nm以下の分散粒径を有することが好ましく、さらに100nm以上500nm以下の分散粒径を有することがより好ましい。
また、樹脂粒子分散体を作製する際に、安定化のために各種添加剤を加えておくことも好ましい。該添加剤としては、例えば、n−ヘキサデカン、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、クロロベンゼン、ドデシルメルカプタン、青色染料(ブルーイング剤)、ポリメチルメタクリレート等が好ましい。
【0026】
(ワックス粒子)
有色インクは、ワックスを含有してもよい。ワックスを樹脂粒子と併用することで、有色インクの最低造膜温度と、冷剥離定着工程における剥離温度と、の差を小さくすることができる。
ワックスは粒子の形態で用いることが好ましい。
ワックス粒子に含まれるワックス成分としては、例えば、天然ワックス又は合成ワックスを挙げることができる。天然ワックスとしては、例えば、石油系ワックス、植物系ワックス、又は動植物系ワックス等が挙げられる。
石油系ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、又はペトロラタム等が挙げられる。
植物系ワックスとしては、例えば、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ等が挙げられる。
動植物系ワックスとしては、例えば、ラノリン、又はみつろう等が挙げられる。
合成ワックスとしては、例えば、合成炭化水素系ワックス、又は変性ワックス系等が挙げられる。
合成炭化水素系ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、又はフィッシャー・トロプシュワックス等が挙げられる。
変性ワックス系としては、例えば、パラフィンワックス誘導体、モンタンワックス誘導体、又はマイクロクリスタリンワックス誘導体等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ワックス粒子は、ワックス粒子が液中に分散したワックス粒子分散体の形態で有色インクの調製に用いることが好ましい。ワックス粒子は、ワックス成分が分散剤により分散されて形成されることが好ましい。分散剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、公知の分散剤を用いることができる。有色インク中におけるワックス粒子の分散状態の安定性を考慮して、分散剤の種類を選択することが好ましい。また、先に挙げた分散剤として機能する水溶性樹脂をワックス粒子の分散剤として利用することも可能である。
ワックス粒子の体積平均粒子径は、10nmから1000nm以下が好ましく、さらに50nmから500nm以下がより好ましい。
【0027】
有色インク中に分散剤としての水溶性樹脂を添加する場合のその含有量は、有色インクの全質量に対して0.1質量%以上20質量%以下の範囲が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下の範囲がより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下の範囲が更に好ましい。
水溶性樹脂の含有量をこれらの範囲とすることによって、インクジェットヘッドから有色インクを吐出する場合における吐出安定性、吐出液滴の着弾位置精度等の特性の向上を図ることができる。
また、ワックス粒子の含有量は、有色インクの全質量に対して0.5質量%以上20質量%以下の範囲が好ましく、1質量%以上10質量%以下の範囲がより好ましい。水溶性樹脂とワックス粒子との質量比率(水溶性樹脂:ワックス粒子)は3:1から1:10の範囲から選択することが好ましく、1:1から1:10の範囲から選択することがさらに好ましい。
樹脂粒子とワックス粒子との質量比率(樹脂粒子:ワックス粒子)は、10:1から1:20の範囲から選択することが好ましく、5:1から1:10の範囲から選択することがさらに好ましい。樹脂粒子とワックス粒子の比率をこれらの範囲から選択することによって、樹脂粒子をより効果的に用いることができる。
ワックス粒子の融点(Tm)は、40℃以上150℃以下が好ましい。
【0028】
(界面活性剤)
有色インクは界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、具体的には、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物(商品名:アセチレノ−ルE100、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。有色インク中の界面活性剤の量は、インク全質量に対して0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0029】
(水及び水溶性有機溶剤)
有色インクは溶剤として水及び/または水溶性有機溶剤を含むことができる。水は、イオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また、有色インク中の水の含有量は、インク全質量に対して30質量%以上97質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤の種類は特に限定されず、公知の有機溶剤をいずれも用いることができる。具体的には、グリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ピロリドン、エタノール、メタノール、等が挙げられる。もちろん、これらの中から選択した2種類以上のものを混合して用いることも出来る。
有色インク中の水溶性有機溶剤の含有量は、インク全質量に対して3質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0030】
(その他添加剤)
有色インクは上記成分以外にも必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、水溶性樹脂及びその中和剤、粘度調整剤など種々の添加剤を含有してもよい。
【0031】
(透明インク)
透明インクは、色材を用いない以外は有色インクと同様の組成で調製することができる。なお、透明インクに含まれる樹脂を第二の樹脂と呼ぶことがある。なお、第二の樹脂の種類としては、上記の有色インクに含まれる第一の樹脂として挙げられたものを用いることができる。また、第二の樹脂は、第一の樹脂と同様に、樹脂粒子であることが好ましい。
【0032】
<最低造膜温度>
本発明における最低造膜温度(MFT)とは、記録媒体上に形成された定着前の画像を形成するインクを加熱した場合に、インク中に含まれる樹脂成分等の被膜形成用の成分が溶融または軟化し、インクが膜状態になる温度を意味する。定着処理前の画像を形成するインクは高粘度化された形態でも、凝集した固形分成分を含むインク凝集層の形態、これらが混在した形態でもよい。
MFTを測定する方法としては、例えば、記録画像上に形成された樹脂成分を含むインク層に対して段階的に加熱温度を変更させ、各サンプルの発色性を比較するという方法が挙げられる。高温で加熱すると発色性が向上する理由は、インク層に含まれる樹脂成分が高温で加熱されることで溶融または軟化して被膜化し、それによりインク層内に存在していた空隙がなくなるために、光の散乱が抑制されるからである。この現象を利用し、インク自体の最低造膜温度を把握することができる。インクでの評価が困難である場合は、インク中に含有される樹脂粒子を用い、JIS K 6828−2:2003の「最低造膜温度の求め方」に従い、その樹脂粒子を適切な温度勾配のもとで加熱し、造膜している透明な部分と造膜していない部分との境界温度を測定することで求めてもよい。
【0033】
<画像形成工程>
転写型インクジェット記録装置を用いたインクジェット記録方法において、画像形成工程は、転写体に有色インクと透明インクを付与して中間画像を形成するインク付与工程と、中間画像を転写体から記録媒体に転写することによって、記録媒体に画像を形成する転写工程とを有する。
この画像形成工程において、前記転写体の前記有色インクが付与される領域及び前記透明インクが付与される領域の少なくとも一方の領域に、少なくとも一部が重なるように、該有色インク及び/または該透明インクを高粘度化する反応液を付与する反応液付与工程を有することが好ましい。
また、記録媒体上に、記録媒体の側から順に、有色インク層と、透明インク層とを有する画像を形成する場合は、転写体に透明インクを付与し、前記透明インクが付与される領域に、少なくとも一部が重なるように、有色インクを付与して中間画像を形成する。これにより、転写体上に、転写体の側から順に、透明インク層と、有色インク層とを有する中間画像が形成され、その後の転写工程によって、記録媒体上に、記録媒体の側から順に、有色インク層と、透明インク層とを有する画像を形成することができる。
【0034】
<液体成分除去工程>
記録媒体に定着された画像の堅牢性や光沢部の光沢性をより向上させるために、転写体上に形成した画像に含まれる液体分の少なくも一部を除去することが好ましい。除去方法としては、熱や風により水分蒸発を促進させる乾燥による方法や、画像に接触し液体成分を吸収する液吸収装置を用いた方法などが挙げられる。
【0035】
以下に、液吸収装置について説明する。
<液吸収装置>
液吸収装置105によって、反応液との反応で高粘度化した画像から液体成分の少なくとも一部を除去することで、画像に含まれる残存液体成分に起因する紙などの記録媒体に画像が転写された後のカールや、コックリング、あるいは重ねた紙への裏移り等の画像乱れを抑制することができる。
液吸収装置105は、液吸収部材105a、および、液吸収部材105aを転写体101上の画像に押し当てる液吸収用の押圧部材105bを有する。また、液吸収部材105aおよび押圧部材105bの形状については特に制限がない。例えば、図2に示すように、押圧部材105bが円柱形状であり、液吸収部材105aがベルト形状であって、円柱形状の押圧部材105bでベルト形状の液吸収部材105aを転写体に押し当てる構成であってもよい。また、押圧部材105bが円柱形状であり、液吸収部材105aが円柱形状の押圧部材105bの周面上に形成された円筒形状であって、円柱形状の押圧部材105bで円筒形状の液吸収部材105aを転写体に押し当てる構成であってもよい。また、液吸収装置105は、液吸収部材を張架する張架部材を有していてもよい。図2において、105c、105d、105eは張架部材としての張架ローラである。
液吸収装置では、多孔質体を有する液吸収部材105aを押圧部材105bによって画像に押圧することで、画像に含まれる液体成分を液吸収部材105aに吸収させ、画像から液体成分の少なくとも一部を除去する。画像中の液体成分を除去する方法として、液吸収部材105aを押圧する本方式に加え、その他従来用いられている各種手法、例えば、加熱による方法、低湿空気を送風する方法、減圧する方法等を組み合わせてもよい。
【0036】
以下、液吸収装置における、各種条件と構成について詳細に述べる。
(前処理)
多孔質体を有する液吸収部材を画像に接触する前に、前処理装置(図2および図3では不図示)によって液吸収部材に処理液を付与することによって前処理を施すことが好ましい。前処理用の処理液は、水及び水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水は、イオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤の種類は特に限定されず、エタノールやイソプロピルアルコール等の公知の有機溶剤をいずれも用いる事ができる。液吸収部材の前処理において、前処理用の処理液の付与方法は特に限定されないが、浸漬や液滴滴下が好ましい。
【0037】
(加圧条件)
転写体上の画像に対して圧接する液吸収部材の圧力が0.3kgf/cm(29.4kPa)以上であれば、画像中の液体をより短時間に固液分離でき、画像中から液体成分を除去できるため好ましい。なお、液吸収部材の圧力とは、転写体101と液吸収部材105aとの間のニップ圧を示しており、面圧分布測定器(新田株式会社製 I−SCAN)にて面圧測定を行い、加圧領域における加重を面積で割り、値を算出した。
【0038】
(作用時間)
画像に液吸収部材105aを接触させる作用時間は、画像中の色材の液吸収部材への付着をより抑制するために、50ms以内であることが好ましい。なお、この作用時間とは、上述した面圧測定における、転写体101の移動方向における圧力感知幅を、転写体101の移動速度で割って算出される。この作用時間を液吸収ニップ時間と称す。
【0039】
(液吸収部材からの液体除去方法)
画像から液吸収部材に吸収された液体成分は公知の手段により液吸収部材105aから除去することが可能である。例としては加熱による方法、低湿空気を送風する方法、減圧する方法、多孔質体を絞る方法等が挙げられる。
【0040】
(多孔質体)
液吸収部材105aが有する多孔質体は、多孔質体へのインク色材付着を抑制するため、孔径は小さいことが好ましく、少なくとも画像と接触する側の多孔質体の孔径は、10μm以下であることが好ましい。なお、孔径とは平均直径のことを示し、公知の手段、例えば水銀圧入法や、窒素吸着法、SEM画像観察等で測定可能である。
また、均一に高い通気性とするために多孔質体の厚みを薄くすることが好ましい。通気性はJIS P8117で規定されるガーレ値で示すことができ、ガーレ値は10秒以下であることが好ましい。多孔質体の形状としては、特に制限されないが、ローラ形状、ベルト形状等が挙げられる。
但し、多孔質体を薄くすると、液体成分を吸収するために必要な容量を十分に確保できない場合があるため、多孔質体を複数の層を有する多層構成とすることが可能である。また、液吸収部材105aは、転写体上の画像と接触する層が多孔質体であればよく、転写体上の画像と接触しない層は多孔質体でなくてもよい。
次に、多孔質体を多層構成とする場合の実施形態について説明する。ここでは転写体に接触する側の第一の層、第一の層の下、すなわち第一の層の転写体との接触面と反対の面に積層される層を第二の層として説明する。さらに多層の構成についても順次第一の層からの積層順で表記する。なお、本明細書において、第一の層を「吸収層」、第二の層以降を「支持層」ということがある。なお、多孔質体を単層構成とする場合は、後述する第一の層用の材料を利用して多孔質体を単層で形成することができる。
【0041】
[第一の層]
第一の層の材料は特に限定されることはないが、色材付着の抑制及びクリーニング性の向上の観点から、表面自由エネルギーの低いフッ素樹脂であることが好ましい。フッ素樹脂としては、具体的に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)が挙げられる。これらの樹脂は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができ、第一の層の中に複数の膜が積層された構成でもよい。
画像に接する側の、多孔質体の第一の層の孔径は、画像に圧接させた際の色材付着の観点から、10μm以下であることが好ましい。第一の層の膜厚は、50μm以下であることが好ましく、30μm以下がより好ましい。膜厚は、直進式のマイクロメーターOMV_25(商品名、ミツトヨ製)で任意の10点の膜厚を測定し、その平均値を算出することで得た。
【0042】
[第二の層]
第二の層は通気性をもつ層であることが好ましい。不織布でもよいし、織布でもよい。第二の層の材料としては、特に限定されないが、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリウレタン、ナイロン、ポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタラート(PET)など)、ポリスルフォン(PSF)などの単一素材、またはこれらの複合材料などが好ましい。
【0043】
[第三の層]
多層構造の多孔質体は3層以上の構成であってもよく、限定されない。第三の層としては剛性の観点から不織布が好ましい。材料としては第二の層と同様なものが用いられる。[多孔質体の製造方法]
第一の層と第二の層を積層して多孔質体を形成する方法は、特には限定されなることはない。重ね合わせるだけでもよいし、接着剤ラミネートまたは熱ラミネートなどの方法を用いて互いに接着してもよい。通気性の観点から、熱ラミネートが好ましい。また、例えば、加熱により、第一の層または第二の層の一部を溶融させて接着積層してもよい。また、ホットメルトパウダーのような融着材を第一の層と第二の層に介在させて加熱により互いに接着積層してもよい。第三の層以上を積層する場合は、一度に積層させてもよいし、順次積層させてもよく、積層順に関しては適宜選択される。
加熱工程では、加熱されたローラで多孔質体を挟み込んで加圧しながら、多孔質体を加熱するラミネート法が好ましい。
【0044】
<転写装置>
記録媒体搬送装置107によって搬送される記録媒体108上に転写体上の画像を、転写用の押圧部材106としての加圧ローラにより記録媒体に押圧することで、画像を記録媒体へ転写する。転写体上の画像に含まれる液体成分を除去した後に、記録媒体へ転写することにより、カールや、コックリング等を抑制した記録画像を得ることが可能となる。転写装置の押圧部材としては、加圧ローラに限定されず、加圧ローラ以外の押圧部材を利用してもよい。
図示した転写装置は、転写体の支持体及び加圧ローラ、並びに、これらの駆動装置を有する。
転写用の押圧部材には、記録媒体の搬送精度や耐久性の観点からある程度の構造強度が求められる。押圧部材の材質には、金属、セラミック、樹脂等が好ましく用いられる。中でも特に、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するために、アルミニウム、鉄、ステンレス、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、シリカセラミクス、アルミナセラミクスが好ましく用いられる。またこれらを組み合わせて用いてもよい。
転写体上の画像を記録媒体に押圧している時間については特に制限はないが、転写が良好に行われ、かつ転写体の耐久性を損なわないようにするために、5ms以上100ms以下であることが好ましい。なお、この押圧時間とは、記録媒体と転写体間が接触している時間を示しており、面圧分布測定器(商品名:I−SCAN、新田株式会社製)にて面圧測定を行い、加圧領域の搬送方向長さを搬送速度で割り、値を算出した。
また、転写体上の画像を記録媒体に押圧する圧力についても特に制限はないが、転写が良好に行われ、かつ転写体の耐久性を損なわないようにするために、1kgf/cm以上30kgf/cm以下(98kPa以上2.94MPa以下)であることが好ましい。なお、この押圧における圧力とは、記録媒体と転写体間のニップ圧を示しており、上述した面圧分布測定器にて面圧測定を行い、加圧領域における加重を面積で割り、値を算出した。
転写体上の画像を記録媒体に押圧する際の温度についても、目的とする転写性等が得られればよく、特に制限はないが、転写体上の画像、転写体及び記録媒体を加熱する加熱装置を備える態様が好ましい。
【0045】
<記録媒体および記録媒体搬送装置>
記録媒体108は特に限定されず、公知の記録媒体をいずれも用いることができる。記録媒体としては、ロール状、枚葉のものが挙げられる。材質としては、紙、プラスチックフィルム、木板、段ボール、金属フィルムなどが挙げられる。
また、図2において、記録媒体を搬送するための記録媒体搬送装置107は、記録媒体繰り出しローラ107aおよび記録媒体巻き取りローラ107bによって構成されているが、記録媒体を搬送できればよく、特にこの構成に限定されるものではない。
【0046】
<定着装置>
記録媒体に形成された画像を記録媒体に定着させるとともに、画像に光沢を付与するために、記録媒体に形成された画像の定着処理を行う。
定着処理用の定着装置として、定着部材によって記録媒体に加熱下で圧力を印加し、冷却後に定着部材を記録媒体上の画像から剥離する冷剥離定着装置を用いる、以下に、冷剥離定着装置について詳細に説明する。
【0047】
(冷剥離定着装置)
図7は冷剥離定着装置の一例の概略構成を示した模式図である。
図7に示すように、冷剥離定着装置は、加熱ローラ45、剥離ローラ49、それら2つのローラに張架されている無端ベルト状の定着部材47を有する。加熱ローラ45と対向する位置に加圧ローラ46が設けられており、加熱ローラ45の外周面に巻き付くように搬入される定着部材47との間にニップ部を形成している。加熱ローラ45と剥離ローラ49との間には、定着部材47を冷却する冷却装置48が設けられている。
記録媒体108上に形成された画像32が、加熱ローラ45に巻きつけられた定着部材47と加圧ローラ46により形成されたニップ部内を通過することで、画像32に加熱及び加圧が施される。これにより画像32の表面の所定の部分を定着部材47の表面に倣わせて平滑にすることができる。定着部材47と画像32は剥離ローラ49の位置に達するまでは接触したままとなっており、冷却装置48により冷却され、剥離ローラ49まで搬送される。剥離ローラ49通過後の定着部材47の搬送方向は、剥離ローラの外周面に倣って、画像32を有する記録媒体108の搬送方向と異なる方向に変化し、記録媒体108から定着部材47が剥離する。
なお、冷剥離定着装置は定着部材と画像が密着した状態で加熱及び加圧され、冷却後に定着部材が剥離されることで目的とする定着工程に利用できる構成を有していればよく、冷剥離定着装置の構成は図7に示す無端ベルト状の定着部材を有する構成に限定されない。
【0048】
(加圧温度)
図8は、図7に示した冷剥離定着装置における加熱加圧部の構成を表す模式図である。本発明における画像を加圧及び加熱する時の定着部材の表面の温度である加圧温度は、図7に示すよう加熱ローラ45と加圧ローラ46によって画像に圧力を印加している圧力印加部61における画像の最大温度のことを示す。
図9は、冷剥離定装置における画像の温度プロファイルの一例を示したグラフである。図9に示す例では、圧力印加部61において加熱ローラ45からの伝熱により画像の温度は上昇していき圧力印加部61を通過する直前における画像の温度は75℃を示す。しかし圧力印加部を通過したあとも定着部材からの伝熱により画像は80℃以上まで昇温する。この場合においても、加圧温度はあくまでも圧力印加部における最大温度であるため75℃となる。
加圧温度は、高光沢を付与する画像部を形成するインクの最低造膜温度よりも高く設定され、この最低造膜温度より10℃以上高い温度となることが好ましい。インクが含む樹脂粒子の最低造膜温度等にもよるが、記録媒体へのダメージや定着部材の密着性を考慮すると、加圧温度は60〜120℃の範囲から選択することが好ましい。加熱加圧時における画像の温度は、加圧直後の記録媒体上の画像を形成するインク被膜(画像)の温度を非接触温度計(商品名:IT−314、アズワン社製)で測定することで求めた。なお、この画像の温度は、定着部材の表面の温度(加圧温度T1)と同じであった。
【0049】
(冷却方法)
定着部材47および画像32を有する記録媒体108の冷却方法は、搬送速度および装置サイズを加味し所望の剥離温度で剥離することができれば特に限定されるものではなく、自然冷却や空冷・水冷・接触冷却といった様々な冷却方法から選択できる。
【0050】
(剥離温度)
本発明における剥離温度とは、定着部材47と画像32が剥離する時点での温度を示す。例えば、図9においては圧力印加部先端(定着部材に画像が接触した直後の位置)と剥離部62の距離が600mmある場合の画像温度プロファイルであるため、600mm時点の画像温度50℃を剥離温度とする。
加えて本発明の効果を得るために、剥離温度は2種類のインクの最低造膜温度の間に設定される。より高光沢部と低光沢部の光沢差をつけるためには、剥離温度を、高光沢を発現させる画像部を形成するインクの最低造膜温度より低く、かつ低光沢を発現させる画像部を形成するインクの最低造膜温度よりも高く、好ましくは10℃以上高く設定する。
インクに含まれる樹脂粒子の最低造膜温度や加圧温度等にもよるが、定着部材へのインク付着を考慮すると、剥離温度は60℃以下の温度から選択することが好ましい。剥離時における画像の温度は、剥離直後の記録媒体上のインク被膜(画像)の温度を非接触温度計(商品名:IT−314、アズワン社製)で測定することで求めた。なお、この画像の温度は、定着部材の表面の温度(剥離温度T2)と同じであった。
【0051】
(定着圧力)
定着部材によって画像にかける圧力としての定着圧力は、画像部を充分に平坦化できる圧力であればよく、特に限定するものではない。面圧分布測定器(商品名:I−SCAN、新田株式会社製)にて測定される圧力が1〜20kgf/cm(98kPa〜1.96MPa)の範囲から選択される圧力でることが好ましく、3〜5kgf/cm(294kPa〜490kPa)の範囲から選択されることがより好ましい。
【0052】
(定着部材)
定着部材47の物性としては、主に表面自由エネルギー・平滑性・硬さ・厚みなどが挙げられる。定着部材の物性は、目的とする光沢性を画像に付与可能であれば特に限定されない。高光沢の画像部により高い光沢性を得るために、定着部材の表面自由エネルギーは、接触角計/表面自由エネルギー解析器(KRUSS社製)において15〜50mN/mが好ましく、20〜35mN/mがより好ましい。また、高光沢の画像部により高い光沢性を得るために、定着部材の画像と接触する面が平滑であることが好ましい。そのため、日本工業規格JIS B 0601により測定される、定着部材の表面粗さ(算術平均粗さ)Raが0.1μm以下であることが好ましい。なお、この定着部材の表面粗さの下限値は0μmである。また、硬さは圧力印加時に画像部よりも充分に硬いものが好ましく、特にヤング率が1GPa以上のものが好ましい。定着部材としては、例えば、ポリイミドフィルムのような樹脂フィルムや、ステンレス、アルミニウム等の金属からなるシートやベルとなどが挙げられる。
【0053】
(加圧温度及び剥離温度)
以下の温度に関するパラメータに関する条件を種々設定することで、画像部間での光沢差を調整することができ、光沢画像の質のバリエーションを広げることができる。
・定着処理前の画像における有色インクから形成された画像部の最低造膜温度MFT1。
・定着処理前の画像における透明インクから形成された画像部の最低造膜温度MFT2。
・冷剥離定着工程における加圧温度T1
・冷剥離定着工程における剥離温度T2
【0054】
以下に、これらのパラメータの設定に関する実施形態について説明する。
(A)MFT1<MFT2の条件での画像形成
MFT1<MFT2である場合の各パラメータからなる条件は、以下のとおりである。
・T1>MFT2>MFT1
・MFT2>T2>MFT1
上記の条件によって得られる定着画像では、図1(B)で説明したとおり、有色インクから形成された画像部92の光沢が透明インクから形成された画像部91よりも低くなる。
なお、これらの画像部間の光沢差をより大きくするには、以下の条件を更に採用することが好ましい。
・T1>(MFT2+10℃)
・T2>(MFT1+10℃)
【0055】
(B)MFT1>MFT2の条件での画像形成
MFT1>MFT2である場合の各パラメータからなる条件は、以下のとおりである。
・T1>MFT1>MFT2
・MFT1>T2>MFT2
上記の条件によって得られる定着画像では、有色インクから形成された画像部の光沢が透明インクから形成された画像部よりも高くなる。
なお、これらの画像部間の光沢差をより大きくするには、以下の条件を更に採用することが好ましい。
・T1>(MFT1+10℃)
・T2>(MFT2+10℃)
【0056】
<制御部>
転写型インクジェット記録装置の有する画像形成用の各装置を制御する制御部について以下に説明する。
図4は、図2に示す転写型インクジェット記録装置における、装置全体の制御システムを示すブロック図である。
301は外部プリントサーバー等の記録データ生成部、302は操作パネル等の操作制御部、303は記録プロセスを実施するためのプリンタ制御部、304は記録媒体を搬送するための記録媒体搬送制御部、305は印刷するためのインクジェットデバイスである。
図5は、図2の転写型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図である。
401はプリンタ全体を制御するCPU、402は前記CPUの制御プログラムを格納するためのROM、403はプログラムを実行するためのRAMである。404はASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。ASICは、ネットワークコントローラ、シリアルIFコントローラ、ヘッドデータ生成用コントローラ、モーターコントローラ等を内蔵している。405は液吸収部材搬送モータ406を駆動するための液吸収部材搬送制御部であり、404のASICからシリアルIFを介して、コマンド制御される。407は転写体駆動モータ408を駆動するための転写体駆動制御部であり、同様に404のASICからシリアルIFを介してコマンド制御される。409はヘッド制御部であり、インクジェットデバイス305の最終吐出データ生成、駆動電圧生成等を行う。
410は、冷剥離定着装置の駆動モータ411の制御部であり、404のASICからシリアルIFを介してコマンド制御される。
【0057】
(直接描画型のインクジェット記録装置)
図3は、直接描画型インクジェット記録装置の概略構成の一例を示す模式図である。
直接描画型インクジェット記録装置は、転写体101、支持部材102、転写体クリーニング装置109を有さず、記録媒体208上で画像を形成する点以外は、転写型インクジェット記録装置と同様の構成を有する。
従って、この直接描画型インクジェット記録装置は、反応液付与装置203、インク付与装置204および液吸収装置205を有する。
反応液付与装置203は、反応液を収容する反応液収容部203a、反応液収容部203aにある反応液を記録媒体208に付与する反応液付与部材203b、203cを有する。
液吸収装置205は、液吸収部材205a、および、液吸収部材205aを記録媒体208上の画像に押し当てる液吸収用の押圧部材205bを有する。また、液吸収部材205aおよび押圧部材205bの形状については特に制限がなく、転写型インクジェット記録装置で使用可能な液吸収部材および押圧部材と同様の形状のものを用いることができる。また、液吸収装置205は、液吸収部材を張架する張架部材を有していてもよい。図3において、205c、205d、205e、205f、205gは張架部材としての張架ローラである。
定着部材60は、図2に示す転写型インクジェット記録装置における定着装置50と同じ構成を有し、加熱ローラ55、加圧ローラ56、剥離ローラ59、2つのローラ55、59に張架されている無端ベルト状の定着部材57を有する。
インク付与装置204によって記録媒体208にインクを付与する印字部、および、液吸収部材205aを記録媒体上の画像に押圧し、液体成分を除去する液体成分除去部には、記録媒体を下から支える不図示の記録媒体支持部材を有していてもよい。
また、記録媒体上に、記録媒体の側から順に、有色インク層と、透明インク層とを有する画像を形成する場合は、記録媒体に、有色インクを付与し、その後に前記有色インクが付与された領域に、少なくとも一部が重なるように、透明インクを付与して画像を形成すればよい。
【0058】
<記録媒体搬送装置>
記録媒体搬送装置207は特に限定されず、公知の記録媒体搬送装置を用いることができる。例として、図3に示すように、記録媒体繰り出しローラ207a、記録媒体巻き取りローラ207b、記録媒体搬送ローラ207c、207d、207e、207fを有する記録媒体搬送装置が挙げられる。
【0059】
<制御部>
直接描画型インクジェット記録装置の画像形成用の各装置を制御する制御部について以下に説明する。
装置全体の制御システムを示すブロック図は、図2に示す転写型インクジェット記録装置と同様に、図4に示すとおりである。
図6は、図3の直接描画型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図である。
501はプリンタ全体を制御するCPU、502は前記CPUの制御プログラムを格納するためのROM、503はプログラムを実行するためのRAMである。504はネットワークコントローラ、シリアルIFコントローラ、ヘッドデータ生成用コントローラ、モーターコントローラ等を内蔵したASICである。505は液吸収部材搬送モータ506を駆動するための液吸収部材搬送制御部であり、504のASICからシリアルIFを介して、コマンド制御される。509はヘッド制御部であり、インクジェットデバイス305の最終吐出データ生成、駆動電圧生成等を行う。
510は、冷剥離定着装置の駆動モータ511の制御部であり、504のASICからシリアルIFを介してコマンド制御される。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0061】
(実施例1)
本実施例では図2に示す転写型インクジェット記録装置を用いた。
転写体101は接着剤により支持部材102に固定されている。厚さ0.5mmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートにシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製KE12)を0.3mmの厚さにコーティングしたシートを転写体の弾性層として用いた。さらにグリシドキシプロピルトリエトキシシランとメチルトリエトキシシランとをモル比1:1で混合し、加熱還流により得られる縮合物と光カチオン重合開始剤(ADEKA製SP150)の混合物を作製した。弾性層表面の水の接触角を10度以下となるように大気圧プラズマ処理を行い、前記混合物を弾性層上に付与し、UV照射(高圧水銀ランプ、積算露光量5000mJ/cm)、熱硬化(150℃2時間)により成膜し、弾性体上に厚さ0.5μmの表面層を形成し、転写体101を得た。
本構成においては、なお説明の簡略のため図示を省略しているが、転写体101と支持部材102の間に転写体101を保持するために両面テープを用いた。
本構成においては、転写体101の表面は図示しない加熱手段により60℃としている。
反応液付与装置103により付与される反応液は、以下組成(各成分の合計:100部)の反応液を用い、付与量は1g/mとした。
・グルタル酸:21.0部
・グリセリン:5.0部
・界面活性剤(製品名:メガファックF444、DIC株式会社製):5.0部
・イオン交換水:残部
【0062】
インクは以下のように調製した。
<顔料分散体の調製>
カーボンブラック(製品名:モナク1100、キャボット製)10部、樹脂水溶液(スチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、酸価150、重量平均分子量(Mw)8,000、樹脂の含有量が20.0質量%の水溶液を水酸化カリウム水溶液で中和したもの)15部、純水75部を混合し、バッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mm径のジルコニアビーズを200部充填し、水冷しつつ、5時間分散処理を行った。この分散液を遠心分離して、粗大粒子を除去した後、顔料の含有量が10.0質量%のブラック顔料分散体を得た。
<樹脂粒子>
樹脂粒子として、アニオン性樹脂粒子の分散液である第一工業製薬社製のスーパーフレックス820(商品名、最低造膜温度65℃)またはスーパーフレックス420NS(商品名、最低造膜温度40℃)を使用した。スーパーフレックス820及びスーパーフレックス420NSはいずれもウレタン樹脂粒子の水分散体である。
【0063】
<インクの調製>
上記で得られた顔料分散体および樹脂粒子を下記各成分と混合した。尚、イオン交換水の残部は、インクを構成する全成分の合計が100.0質量%となる量のことである。・顔料分散体(色材の含有量は10.0質量%):40.0質量%
・樹脂粒子:20.0質量%
[スーパーフレックス820(商品名、第一工業製薬社製、最低造膜温度65℃)またはスーパーフレックス420NS(商品名、第一工業製薬社製、最低造膜温度40℃)]
・グリセリン:7.0質量%
・ポリエチレングリコール(数平均分子量(Mn):1,000):3.0質量%
・界面活性剤:アセチレノールE100(川研ファインケミカル株式会社製):0.5質量%
・イオン交換水:残部
これを十分撹拌して分散した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム株式会社製)にて加圧ろ過を行い、ブラックインクを調製した。
【0064】
また、透明インクは下記各成分を混合し、インクと同様の工程で調製した。
・樹脂粒子:20.0質量%
[スーパーフレックス820(商品名、第一工業製薬社製、最低造膜温度65℃)またはスーパーフレックス420NS(商品名、第一工業製薬社製、最低造膜温度40℃)]
・グリセリン:5.0質量%
・ジエチレングリコール:7.0質量%
・界面活性剤1:0.5質量%
・イオン交換水:残部
【0065】
インク付与装置104としては電気−熱変換素子を用いオンデマンド方式にてインク吐出を行うタイプのインクジェットヘッドを有する液体付与装置を使用した。液吸収部材105aは液吸収部材を張架しつつ搬送する張架ローラ105c、105d、105eによって、転写体101の移動速度と同等の速度になるよう調節されている。また、転写体101の移動速度と同等の速度となるように、記録媒体108は記録媒体繰り出しローラ107aおよび記録媒体巻き取りローラ107bによって搬送される。本実施例において、搬送速度は0.6m/sとし、記録媒体108としてオーロラコート紙(日本製紙株式会社製・坪量210g/m)を用いた。
また、転写体101と液吸収部材105aとの間のニップ圧が平均圧力で2kgf/cm(196kPa)となるように押圧部材105bの押圧力が調整された。また、液吸収装置における押圧部材105bはローラ直径φ200mmのローラ形状の押圧部材を用いた。
【0066】
<液吸収部材>
本実施例で用いた液吸収部材には以下の材料を使用した。
第一の層としては、転写体上の中間画像と接する側の面における平均孔径が0.2μmである、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の多孔質体からなる多軸延伸膜を使用した。該第一の層は、結晶化したPTFEの乳化重合粒子を圧縮成形し、PTFEの融点以下の温度で多軸延伸することによりフィブリル化した多孔質体を得る方法で作製した。
第二の層としては、ポリプロピレン(PP)からなる芯構造と、ポリエチレン(PE)からなる鞘構造を有する繊維を含むHOPシリーズ(商品名、廣瀬製紙製)を使用した。該第二の層は、繊維aを含む第二の層aと、繊維bを含む第二の層bとを有する。第二の層aに含まれる繊維aの平均繊維径は5μm、第二の層bに含まれる繊維bの平均繊維径は15μmである。第二の層の、第一の層側に配置された第二の層aに含まれる繊維aをより細く、第三の層側に配置された第二の層bに含まれる繊維bをより太くしている。
第三の層としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維(商品名:トルコン、東レ製)を湿式抄紙して作製した不織布(商品名:PPSペーパー、廣瀬製紙製)を使用した。この第三の層の平均孔径は20μmであった。そして転写体上の中間画像と接する側の第一の面の裏面である第二の面の平均孔径も20μmであった。
前記第一から第三の層を、前記第一の層と前記第二の層とをラミネートした後、さらに前記第三の層をラミネートすることで多孔質体を含む液吸収部材を作製した。
【0067】
<転写>
液吸収部材105aによって転写体上の中間画像101から液体成分を吸収した後、記録媒体108に転写させる。転写体101と転写用の押圧部材106との間のニップ圧が、平均圧力で5kgf/cm(490kPa)となるように転写用の押圧部材106の押圧力が調整された。
【0068】
<定着>
定着装置50は、図2に記載の通り、加熱ローラ45、加圧ローラ46、無端ベルト状の定着部材(無端定着ベルト)47、冷却装置48、及び剥離ローラ49を有する。
本実施例における定着条件は以下のとおりである。
定着部材としては、フィルム基材としてのポリイミドフィルム(商品名:カプトン、東レ・デュポン株式会社製、厚み75μm)の表面に撥水性の表面層を形成した無端ベルトを用いた。撥水性の表面層の形成は以下のとおりである。
コーティング剤として、グリシドキシプロピルトリエトキシシランとメチルトリエトキシシランとをモル比1:1で混合し、加熱還流により得られる縮合物と光カチオン重合開始剤(ADEKA製SP150)の混合物を調製した。フィルム基材表面の水の接触角を10度以下となるように大気圧プラズマ処理を行い、前記混合物をフィルム基材表面に付与し、UV照射(高圧水銀ランプ、積算露光量5000mJ/cm)、熱硬化(150℃2時間)により成膜し、厚さ0.5μmの表面層を形成した。この定着部材の表面粗さRaは0.02μmであった。加熱ローラと加圧ローラとの間のニップ圧(加熱加圧時の圧力)が平均圧力で5kgf/cm(490kPa)となるように加圧ローラの押圧力が調整された。また、加熱ローラの温度、剥離ローラの温度は、後述の表5に記載の定着部材の表面の加圧温度T1及び剥離温度T2となるように適宜調整した。図10は、実施例1における作成画像パターンを示した模式図である。図10において、領域81にBlackインク72と透明インク71により画像1が形成され、領域82にBlackインク72により画像2が形成される。
また、表1に各インクの付与量を示す。本実施例は転写型インクジェット記録方式のため、転写体への付与順と記録媒体上でのインク層構成が上下逆転する。例えば表1における画像1のように、転写体へのインク付与順を透明インク、Blackインクとした場合、記録媒体上に転写した後のインク層構成は記録媒体側からBlackインク、透明インクの順となる。表2にBlackインクおよび透明インクの最低造膜温度を示す。表2に記載の通りBlackインクの最低造膜温度は40℃あり、透明インクは最低造膜温度が65℃である。なお、Blackインク及び透明インクの最低造膜温度には、それぞれのインクに含まれる樹脂粒子の最低造膜温度の値を採用した。樹脂粒子の最低造膜温度は、JIS K 6828−2の「最低造膜温度の求め方」にしたがって測定した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
初めに転写体上に反応液与装置により反応液を塗布する。その後インク付与装置により表1に示した付与量に従い透明インク、Blackインクの順で付与し画像を形成する。転写体上に形成した画像に対して液吸収装置の液吸収部材を押圧し画像から液体成分を除去し、転写体上での画像形成を完成させる。次に、記録媒体搬送装置により搬送した記録媒体と画像を形成した転写体とを接触させ加圧することで画像を転写体から記録媒体へと転写させ、記録媒体上への画像形成が完成する。この記録画像に対して、冷剥離定着装置を用いて定着を行う。
図11は、本実施例における、加熱ローラおよび加圧ローラによる圧力印加部への突入時から、冷却および剥離までの画像温度プロファイルを示したグラフである。加圧温度は透明インクの最低造膜温度よりも高い70℃に設定し、剥離温度は透明インクの最低造膜温度よりも低く、かつBlackインクの最低造膜温度よりも高い45℃とした。
【0072】
得られた画像1及び画像2の20度光沢値を定法により測定した結果を表6に示す。
更に、画像1と画像2の両画像の光沢差を以下の基準で評価付けした。
A・・・画像1と画像2の20度光沢値の差が30以上
B・・・画像1と画像2の20度光沢値の差が20以上30未満
C・・・画像1と画像2の20度光沢値の差が10以上20未満
D・・・画像1と画像2の20度光沢値の差が10未満
また、画像での光沢ムラ発生の有無に関しては、以下の基準で評価付けした。
A・・・目視及び光学顕微鏡による観察では光沢ムラは見られなかった。
B・・・目視による観察では光沢ムラは見られなかったが、光学顕微鏡による観察で若干の光沢ムラが見られた。
C・・・目視による観察では光沢ムラが見られた。
上記の各評価の結果を表6に記載する。
【0073】
(比較例1)
加圧温度を透明インクの最低造膜温度よりも20℃高い85℃とし、かつ、剥離温度を透明インクの最低造膜温度より高い75℃とする以外は実施例1と同様にして画像を形成し、評価した。20度光沢値の測定結果と評価結果を表6に示す。
(比較例2)
剥離温度をBlackインクの最低造膜温度より低い30℃とする以外は比較例1と同様にして画像を形成し、評価した。20度光沢値の測定結果と評価結果を表6に示す。
(比較例3)
加圧温度を透明インクの最低造膜温度より低い60℃として加熱加圧を行い、剥離温度を30℃とする以外は実施例1と同様にして画像を形成し、評価した。20度光沢値の測定結果と評価結果を表6に示す。
(比較例4)
加圧温度が透明インクとBlackインクそれぞれの最低造膜温度の間にあり、かつ剥離温度がBlackインクの最低造膜温度よりも高い条件で剥離を行う以外は実施例1と同様にして画像を形成し、評価した。20度光沢値の測定結果と評価結果を表6に示す。
【0074】
表6に示したように、加圧温度が透明インクおよびBlackインクの最低造膜温度よりも高く、剥離温度が透明インクおよびBlackインクの最低造膜温度の間である45℃であった実施例1は、20度光沢値で17の光沢差を得ることができた。加えて画像1および画像2において光沢ムラの視認できない良好な画質を得ることができた。比較例1は剥離温度が75℃と透明インクの最低造膜温度よりも高いため画像1の20度光沢値が49とあまり高い光沢性とはならず、加えて最低造膜温度が低いBlackインクが露出する画像2では定着部材側にBlackインクがホットオフセットした。また比較例2は剥離温度が透明インクおよびBlackインクの最低造膜温度よりも低いため、どちらの画像も平滑化され充分に光沢差をつけることはできなかった。また比較例3は画像1の20度光沢値が38であり画像2の20度光沢値が79と20度光沢値では差が充分についているものの、出来上がった印字サンプルは加圧温度より高い最低造膜温度を持つ透明インクが露出する画像1内に不自然な光沢ムラが発生し、許容できないレベルの画質となった。これは加熱及び加圧時に画像1内に平滑化された箇所とそうでない箇所とがまばらに存在していることから起きたと推測される。加えて、加熱加圧時に充分に熱が加わっていないことから画像1の堅牢性は画像2に比べて低下していた。比較例4における画像1は比較例3と同様に画像内に不自然な光沢ムラが発生した。また画像2は20度光沢値が56と実施例1のような高光沢は発生しなかった。これは剥離温度がBlackインクの最低造膜温度よりも高いために加圧温度が最低造膜温度より高くても実施例1の透明インクのように平滑にはならなかったことが原因である。比較例4の結果から、加圧温度をBlackインクの最低造膜温度以上かつ透明インクの最低造膜温度以下にしても、剥離温度がBlackインクの最低造膜温度以下でなければ高い光沢差を得ることができないことがわかる。
【0075】
(実施例2)
実施例1は記録媒体上で最表層となる透明インクの最低造膜温度が高く、高光沢発現の役割を果たした例であった。本実施例に記載するとおり、本発明によれば、最表層となる透明インクの最低造膜温度を下層のインクよりも低くすることで同様の効果を得ることもできる。
なお、画像が形成された記録媒体が冷剥離定着装置に搬送されるまでの過程は実施例1と同様である。
表3は、本実施例における各インクの最低造膜温度を示す。先に転写体上へ付与される透明インクに最低造膜温度が40℃であるインクを用意し、後に付与されるBlackインクに最低造膜温度が65℃であるインクを用意した。作成画像パターンは図10および表1に示した画像パターンと同じものを作成した。冷剥離定着条件も実施例1と同様、加圧温度は両インクの最低造膜温度を超える温度となる70℃とし、剥離温度が45℃となるように剥離を行った。
本実施例における20度光沢値の結果は表6に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
表6に示したように透明インクが画像の最表面となる画像1は透明インクの最低造膜温度40℃よりも高い温度で剥離させているため20度光沢値が58と低い値を示した。一方でBlackインクが最表面となる画像2は、剥離温度がBlackインクよりも低い温度であったため、20度光沢値が76と画像1よりも高い光沢性を示した。その結果両画像の20度光沢差は18となった。
この様に本発明において透明インクおよび色インクの最低造膜温度を逆転させても同程度の光沢差を発現させることができた。
【0078】
(実施例3)
本実施例では、実施例1に対して加圧温度が高温側の最低造膜温度よりも充分に高い温度で加熱加圧を行うことで高光沢画像部の光沢性を更に向上させる。本実施例で使用する画像パターンは表1及び図10の通りとし、使用するインクは表2に記載のインクとした。加圧温度は透明インクの最低造膜温度よりも10℃高い75℃とし、剥離温度は両インクの最低造膜温度の間である45℃とした。それぞれの画像部における20度光沢値の結果を表6に記載する。
表6に示す通り、最低造膜温度より充分に高い温度で加熱加圧を加え、かつ最低造膜温度よりも低い温度で剥離を行った画像1においては20度光沢値で87と非常に高い光沢性となった。一方で最低造膜温度よりも充分に高い温度で加熱加圧を行い、かつ最低造膜温度よりも高い温度で剥離を行った画像2においては実施例1と同程度の60といった20度光沢値を示した。その結果、両画像の20度光沢差は27と広がった。このように高光沢画像部に対して最表面に存在するインクの最低造膜温度よりも10℃と充分に高い温度で加熱加圧を加えることにより、更に高い光沢性を発現させることができ、高光沢部と低光沢部のコントラストを向上させることができる。また、透明インクの最低造膜温度およびBlackインクの最低造膜温度を逆転させ、同条件で加熱加圧および剥離を行った場合も同程度の光沢差を発現させることができた。
【0079】
(実施例4)
本実施例では、実施例1に対して剥離温度が低温側の最低造膜温度よりも充分に高い温度で剥離を行うことで低光沢画像部の光沢性を更に低下させる。本実施例で使用する画像パターンは表1及び図10の通りとし、使用するインクは表2に記載のインクとした。加圧温度は透明インクの最低造膜温度よりも高い70℃とし、剥離温度は両インクの最低造膜温度の間かつBlackインクの最低造膜温度よりも10℃高い50℃とした。それぞれの画像部における20度光沢値の結果を表6に記載する。
表6に示す通り、最低造膜温度より高い温度で加熱加圧を加え、かつ最低造膜温度よりも低い温度で剥離を行った画像1においては20度光沢値で実施例1と同程度の75となった。一方で、最低造膜温度よりも高い温度で加熱加圧を加え、かつ最低造膜温度よりも10℃高い温度で剥離を行った画像2においては20度光沢値で50と実施例1の画像2よりも低い光沢性を示した。その結果両画像の20度光沢差は25と広がった。このように低光沢画像部に対して最表面に存在するインクの最低造膜温度よりも10℃と充分に高い温度で剥離を行うことにより、更に低い光沢性を発現させることができ、高光沢部と低光沢部のコントラストを向上させることができる。また、透明インクのおよびBlackインクの最低造膜温度を逆転させ、同条件で加熱加圧および剥離を行った場合も同程度の光沢差を発現させることができた。
【0080】
(実施例5)
本実施例では、加圧温度が高温側の最低造膜温度よりも充分に高く、かつ剥離温度が低温側の最低造膜温度よりも充分に高い温度で剥離を行うことで高光沢部の光沢性を更に向上させ、かつ低光沢部の光沢性を更に低下させる。本実施例で使用する画像パターンは表1及び図10に記載の通りとし、使用するインクは表2に記載のインクとした。加圧温度は透明インクの最低造膜温度よりも10℃高い75℃とし、剥離温度は両インクの最低造膜温度の間かつBlackインクの最低造膜温度よりも10℃高い50℃とした。それぞれの画像部における20度光沢値の結果を表6に記載する。
表6に示す通り、最低造膜温度より充分に高い温度で加熱加圧を加え、かつ最低造膜温度よりも低い温度で剥離を行った画像1においては20度光沢値で85と非常に高い光沢性となった。一方で、最低造膜温度よりも高い温度で加熱加圧を加え、かつ最低造膜温度よりも10℃高い温度で剥離を行った画像2においては20度光沢値で52と実施例1の画像2よりも低い光沢性を示した。その結果両画像の20度光沢差は33と大幅に広がった。このように加圧温度を高温側の最低造膜温度よりも10℃と充分に高温にすることで高光沢部を更に高光沢とすることができ、かつ剥離温度を低温側の最低造膜温度よりも10℃と充分に高くすることで低光沢部を更に低光沢にすることができる。その結果より高光沢部と低光沢部のコントラストを向上させることが可能となる。また、透明インクのおよびBlackインクの最低造膜温度を逆転させ、同条件で加熱加圧および剥離を行った場合も同程度の光沢差を発現させることができた。
【0081】
(実施例6)
本実施例では、透明インクにワックス粒子を含有させる。添加するワックス粒子は融点付近において硬さが急峻に変化するため、剥離温度をより加圧温度に近づける効果が期待できる。
本実施例で使用したワックス粒子は65℃に融点を持ち、実施例1で用いた透明インクに含有される樹脂粒子と添加するワックスの分量割合(質量基準)を2:1とした。
表4は本実施例における透明インクとBlackインクそれぞれの最低造膜温度を示す。表4に示すようにワックス粒子を含有した透明インクは最低造膜温度が65℃であった。
Blackインクは実施例1と同じものを使用した。
本実施例では、加圧温度を実施例1や実施例2や実施例4と同様に、高温側の最低造膜温度よりも5℃高い70℃とした。また剥離温度は低温側の最低造膜温度よりも充分に高い60℃とした。結果を表6に記す。
表6に記載の通り、加圧温度が透明インクの最低造膜温度よりも5℃だけ高く実施例3の様に充分な温度差はないにもかかわらず、透明インクにワックス粒子を含有させた実施例6における画像1の20度光沢値は、83と高い光沢性を示した。これは、透明インク中に含まれるワックス粒子が最低造膜温度付近において急峻に軟化したことで透明インクの最低造膜温度+5℃と小さい温度差でも定着部材に密着したと考えられる。一方で、剥離温度は実施例4と同様にBlackインクの最低造膜温度よりも充分に高いため、20度光沢値は49と低い。従って、ワックス粒子特有の急峻な温度特性を利用しインクに含有させることで、最低造膜温度との充分な温度差をつけなくとも実施例3や実施例5にみられるような大きな光沢差を得ることができた。また、実施例2のように有色インク画像部を高光沢にする場合においても、有色インクにワックス粒子を添加し加圧温度を低下させることで同様の効果が得られた。
【0082】
【表4】
【0083】
本実施例の効果として、加圧温度と剥離温度の温度差を縮小させることで冷却距離を大幅に短縮できることが挙げられる。
表5は各実施例における加圧温度と剥離温度、およびそれぞれの冷却距離を示した表である。表5に示すようにワックス粒子を透明インクに含有させ加圧温度と剥離温度の温度差を縮小させた実施例6は他の実施例に比べて冷却距離を短縮させることができた。それにより、装置サイズの縮小や同装置サイズであっても冷却能力にかかる消費電力低減、更なる線速の向上といった効果が得られる。
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【符号の説明】
【0086】
32 画像
45 加熱ローラ
46 加圧ローラ
47 定着部材(無端定着ベルト)
48 冷却装置
49 剥離ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11