【解決手段】本発明のパラシュート装置は、複数の錘を取り付けた傘体と、呂索を介して連結された前記傘体が収納される開口を有する傘体収納部と、前記傘体収納部の外周に亘って配置され、前記複数の錘が個別に収納される複数の錘収納部と、を有し、遠隔操作又は自動制御で飛行する無人浮遊機の上部に固定される装置本体と、化学反応時に高圧ガスを発生させる非火薬系薬剤を封入したガス発生器と、点火時に、前記ガス発生器に封入された非火薬系薬剤の化学反応を生じさせる点火器と、前記傘体収納部に収納された前記傘体と前記錘収納部に収納された前記複数の錘とを被覆するとともに、前記ガス発生器により発生する高圧ガスの圧力を受けて前記複数の錘が射出されたときに前記容器から分離して前記傘体収納部の前記開口を露呈する蓋部材と、を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明のパラシュート装置が取り付けられる無人浮遊機の一実施形態を示す。無人浮遊機10は、オペレータによるコントローラ(図示省略)の操作に基づいた無線通信により飛行するマルチコプター等の飛行体である。無人浮遊機10は、オペレータによるコントローラの操作に基づいた無線通信により飛行する無人浮遊機の他、内蔵された自動飛行プログラムによって自動的に飛行する無人浮遊機であってもよい。
【0029】
無人浮遊機10は、機体11と、機体11を中心として放射状に延出される複数のアーム12と、機体11から延出された複数のアーム12の先端部に設けた複数のロータユニット13と、機体11の下部に設けられたスキッド(固定式降着装置)14、14’とを有する。
図1では、6個のロータユニット13を備えた無人浮遊機10を一例として開示している。なお、無人浮遊機10の形状は多種に亘るため、無人浮遊機10の構造や、ロータユニット13の数については、無人浮遊機10の形状や大きさに合わせて適宜設定される。
【0030】
機体11は、詳細は後述するが、コントローラとの間で無線通信を行う無線モジュール72、無線モジュール72により受信された操作信号を受けてロータユニット13の駆動制御を行う制御回路74や、無人浮遊機10の主電源であるバッテリー73などを収納する。なお、無人浮遊機10にカメラが搭載されている場合、機体11は、カメラによる撮像制御を行う撮像制御基板をさらに備える。
【0031】
アーム12は、例えば合成樹脂や金属材料を用いた筒状の部材である。上述したように、アーム12は機体11から放射状に延出される。
図1においては、アーム12は、隣り合うアームとの角度が例えば60度間隔で、6箇所に配置される。なお、
図1においては、6本のアームを有する無人浮遊機について開示しているが、アーム12の本数は、6本に限定する必要はなく、飛行性能や、無人浮遊機の上面視における無人浮遊機の最大面積に応じて、例えば2〜5本のいずれか、又は6本以上としてもよい。
【0032】
ロータユニット13は、ロータ16、駆動モータ17及びブラケット18から構成される。ロータユニット13は、駆動モータ17の駆動軸に固着されるロータ16が上方に位置するように、アーム12の先端にブラケット18を介して固定される。なお、駆動モータ17に接続されるケーブルは、例えばアーム12の内部に挿通された後、機体11に収納された制御回路基板に接続される。
【0033】
ロータ16は、駆動モータ17の駆動軸に固定される回転軸と、回転軸を中心として180度間隔を空けて配置された2枚のロータブレードとを有する。なお、ロータ16に設けられるロータブレードの数は2枚に限定される必要はなく、3枚以上のロータブレードを有してもよい。なお、ロータブレードの長さは、例えば、隣り合うロータユニット13のロータブレードの回転軌跡が互いに重畳されない長さに設定される。
【0034】
無人浮遊機10の機体11には、固定具25が固定される。固定具25は、パラシュート装置40を固定する部材である。なお、パラシュート装置40は、後述する傘体43の射出方向が上方向となるように無人浮遊機10の機体11に固定された固定具25に装着される。
【0035】
図2に示すように、固定具25は、装置本体26と、装置本体26から放射状に配置される複数のアーム27とを含む。装置本体26は、例えば合成樹脂製又は金属製の部材である。装置本体26は、例えば円板形状で、その上面の中央領域に、パラシュート装置40のプラグ65が固定される固定筒部28を備える。なお、図示は省略するが、パラシュート装置40は、例えば、固定筒部28の外周面に所定間隔おきに複数箇所に設けたねじ穴の各々にねじを螺合させ、これらねじの締め付けにより、ねじの先端部をパラシュート装置40のプラグ65の外周面に圧接させて固定する。なお、パラシュート装置40を固定具25に固定する方法は、上記に限定される必要はない。
【0036】
また、装置本体26の上面で且つ外周縁部には、所定間隔を空けて複数の係合部29が設けられる。係合部29は、アーム27の一端が取り付けられる箇所である。
図2においては、装置本体26の上面の外周縁部に沿って、例えば90度間隔に4個の係合部29を設けた場合について記載している。なお、装置本体26が有する係合部29の数は、4個に限定される必要はなく、3個、又は5個以上であってもよい。
【0037】
アーム27は、例えば合成樹脂製又は金属製の部材である。アーム27は、アーム27の一端部(符号27a)が、他端部(符号27b)よりも長くなるように、アーム27の両端部を同一方向に屈曲させた、いわゆるJ字形状の部材である。長尺に設定されたアーム27の一端部27aには、上述した係合部29に係止される係止部31が設けられる。なお、係止部31は、アーム27の一端部27aの先端部分を折り返すことで形成される。また、短尺に設定されたアーム27の他端部27bには、例えば矩形状の弾性部材32が配設される。
【0038】
固定具25は、各アーム27を上方に回動させた装置本体26を無人浮遊機10の機体11の上面に載置された状態で、短尺に設定されたアーム27の他端部27bを無人浮遊機10の機体11の下面側に回動させる。このアーム27の回動により、短尺に設定されたアーム27の他端部27bに設けた弾性部材32が機体11の下面に圧接される。全てのアームを同様にして回動させることによって、各アーム27に配設した弾性部材32が無人浮遊機10の機体の下面に圧接されることで、固定具25が機体11に固定される。なお、固定具25を無人浮遊機10の機体11から取り外す場合には、アーム27を装置本体26の上方に向けて回動させて、短尺に設定されたアーム27の他端部27bに設けた弾性部材32による機体11の下面への圧接を解除すればよい。
【0039】
なお、固定具25の構成は、一例を示すものであり、
図2に示す固定具25の構成に限定されるものではない。
【0040】
次に、本発明に係るパラシュート装置40の構成について説明する。以下、無人浮遊機10の飛行時に、無人浮遊機において状態判定を行った結果に基づいて、パラシュート装置を作動させる場合を、第1実施形態と称して説明する。
【0041】
<第1実施形態>
パラシュート装置40は、発生させた高圧ガスにより複数の錘を噴出させ、複数の錘の噴出により傘体を展開させる装置である。以下、パラシュート装置40は、外周部に8個の錘を用いて傘体を噴出させる場合について説明する。以下、容器45、プラグ65及びフィックスカップ66が、請求項に記載の装置本体に相当する。
【0042】
図3及び
図4に示すように、パラシュート装置40は、8個の錘41が紐部材42によって取り付けられた傘体43と、8個の錘41及び傘体43をそれぞれ個別に収納する容器45と、傘体43を収納する容器45の開口部分を被覆するスリーブ46と、容器45に取り付けられる蓋47と、容器45に個別に収納された8個の錘41を噴出させる高圧ガスを発生させるガス発生器48とを含む。なお、
図3及び
図4において符号43で示す網目の部分が傘体である。なお、傘体43は、折りたたまれた状態で容器45に収納される。
【0043】
傘体43は、例えばナイロン製で、半球状の部材である。なお、傘体43の材質としては、例えばナイロン以外の化学繊維や、植物繊維及び動物繊維が用いることができる。また、傘体43の形状は、半球状の他に、四角形状、十字形状、八角形状或いはドーナツ形状などを用いることができる。
【0044】
傘体43の周縁部には、紐部材42を介して8個の錘41が所定間隔(角度間隔を含む)を空けて取り付けられる。錘41は、例えばステンレス製の円柱形状である。なお、錘41はステンレス製としているが、耐腐食性に優れた材質を用いることも可能である。錘41は、弾性体からなる錘カバー50の内部に収納される。錘41のそれぞれに取り付けられる紐部材42は、例えばポリエステル製で、線径が例えばφ=0.7mmの紐が用いられる。紐部材42は、一端側が錘41と連結され、他端が傘体43と連結している。
【0045】
傘体43は、複数の吊索(サスペンションライン)52を介して容器45と連結される。吊索52は、ケブラー製で、1本当たりの引張強度が392N以上のものが用いられる。吊索52の線径φは例えばφ=1.0mmである。なお、吊索52の材質は、引張強度が392N以上であれば、ケブラーに限定する必要はない。また、吊索52の線径φは、引張強度が392N以上であれば、φ=1.0mmに限定されるものではない。
【0046】
容器45は、例えばABS樹脂、又はPOM樹脂などの合成樹脂材を成形した2つの部材を重ね合わせた状態でねじ固定される部材である。以下、2つの部材を、第1構成部材55、第2構成部材56と称する。第1構成部材55は、略漏斗形状の部材である。第1構成部材55は、等間隔で8方向に分岐する半円弧状の溝部55aを内周面に有する。また、第1構成部材55は、内周面に設けた溝部55aに対応する位置に溝部55bを外周面に有する。さらに、第1構成部材55は、ガス発生器48の一部が収納される筒部55cを有する。
【0047】
第2構成部材56は、第1構成部材55が取り付けられる一端側から他端側に向けて広がる略漏斗形状の部材である。第2構成部材56の他端側は開口されており、開口に連なる内部空間が、傘体43が収納される傘体収納部56aとなる。第2構成部材56の外周面には溝部56bと、溝部55bに連なる円弧状の溝部56cとが8個設けられる。
【0048】
第1構成部材55と第2構成部材56とを重ね合わせた状態でねじ固定すると、第1構成部材55に設けた溝部55bと、第2構成部材56に設けた溝部56bとがそれぞれ連通される。第1構成部材55に設けた溝部55bと、第2構成部材56に設けた溝部56bとが連通された状態では、蓋47の舌片47aが挿入可能となる。また、第1構成部材55の内周面に設けた半円弧状の溝部55aと、第2構成部材56の外周面に設けた半円弧状の溝部56cとが組み合わされ、8個の錘収納部(図示省略)が形成される。さらに、第1構成部材55と第2構成部材56とを重ね合わせると、第1構成部材55と第2構成部材56との間に、8個の錘収納部に連なる流路60が形成される。なお、8個の錘収納部は、その延出方向がパラシュート装置40の中心軸に対して外方に所定の角度傾いた状態で形成される。
【0049】
スリーブ46は、第2構成部材56の傘体収納部56aに収納される傘体43が第2構成部材56の傘体収納部56aからはみ出すことを防止する。同時に、スリーブ46は、蓋47を容器45に取り付けるときに、第2構成部材56の傘体収納部56aに収納される傘体43が容器45の外周面と蓋47との間に挟み込まれることを防止する。
【0050】
スリーブ46は、帯状のシートを軸方向の両端が開口された円筒状に加工したものである。スリーブ46の材質としては、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、リニアポリエチレン(LLDPE)の他、薄紙やポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンなどのラップフィルムが挙げられる。スリーブ46の元になる帯状のシートは、厚みが例えば0.08mm以下のシート材が使用される。
【0051】
スリーブ46は、幅方向の一端縁部が第2構成部材56の傘体収納部56aの内周面に沿って挿入される。このとき、スリーブ46の幅方向の他端縁部は、第2構成部材56の開口部分から外部に延在している。スリーブ46の幅方向の他端縁部は、傘体43が第2構成部材56の傘体収納部56aに収納された後、第2構成部材56の傘体収納部56aに収納された傘体43に向けて折り畳まれる。スリーブ46の幅方向の他端側が折り畳まれると、折り畳まれたスリーブ46は、第2構成部材56の傘体収納部56aの開口部分のうち、錘41と傘体43と連結する紐部材42が位置する中央部分を除いた領域を被覆する。
【0052】
図示は省略するが、スリーブ46は、第2構成部材56の傘体収納部56aへ挿入するときの挿入する際の目安となるマークや線を有している。これらマークや線を有することで、スリーブ46を第2構成部材56の傘体収納部56aに挿入するときの挿入量を一定とすることができる。
【0053】
なお、第1実施形態では、スリーブ46を有するパラシュート装置40の構成としているが、スリーブ46は必ずしも設ける必要はない。
【0054】
蓋47は、容器45の第2構成部材56に設けた傘体収納部56aの開口部分や容器45の外周面の錘収納部を各々被覆して傘体43及び8個の錘41の脱落を防止する。蓋47は、ガス発生器48による高圧ガスの発生に伴って錘41が噴出した時に容易に脱落するように容器45に取り付けられる。蓋47は、弾性のあるゴム材や紙材から製造される他、フィルム材から製造される。蓋47は、側部から突出する例えば8個の舌片47aを有する。舌片47aは、根本部分に第2構成部材56の溝部56bに設けた突起56dが嵌め込まれる孔47bを有する。
【0055】
ガス発生器48は、装填されたガス発生剤を燃焼させることで、高圧ガスを発生させる。ガス発生器48は、イニシエータ61と、イニシエータ61の外周に固定されるホルダ62とを有する。また、図示は省略するが、ガス発生器48は、イニシエータ61において、イニシエータ61からの高圧ガスを冷却濾過するフィルタと、フィルタを収納してホルダの一側に螺合するフィルタカップとから構成される。ガス発生器48の他端部にはリード線63が露呈している。リード線63の先端部にはコネクタ64が設けられる。コネクタ64は、無人浮遊機10の制御回路基板に取り付けられたリード線が有するコネクタと接続される。
【0056】
ガス発生器48に装填されるガス発生剤は、例えば低振動・低騒音破砕薬剤ガンサイザー(登録商標:日本工機株式会社製商品名)を用いている。ガス発生剤は、火薬類を用いた破砕方法と同じ手順で消費許可を必要とせずに岩盤などを破砕する非火薬破砕組成物である。ガス発生器48は、以下に示す構成のガス発生剤が一例として1g〜2gの範囲で充填される。ガス発生剤の組成及び配合率は、例えばアンモニウム明礬44〜55%、酸化第二銅33〜44%、アルミニウム9〜17%、ステアリン酸カルシウム2.4〜2.6%、塩化ビニル1.2〜1.8%である。なお、ガス発生剤の粒度は、24タイラーメッシュ通過42タイラーメッシュ止まりの篩分け品、すなわち、粒径が0.35mm〜0.71mmの範囲である。上述したガス発生剤は、10cc圧力タンク内で燃焼したときの最大圧力が25MPa程度の薬剤が用いられる。
【0057】
プラグ65は、筒部材から構成される。プラグ65は、一端側から第1構成部材55の筒部55cを収納する。上述したように、ガス発生器48は、第1構成部材55の筒部55cに一部が収納され、イニシエータ61が取り付けられる端部が露呈される。第1構成部材55にプラグ65を取り付けると、第1構成部材55の筒部55c、ガス発生器48のイニシエータ側の端部、リード線63の一部がプラグ65の内部に収納され、リード線63及びコネクタ64が第1構成部材55の筒部55cを収納するプラグ65の一端側とは反対側となる他端部から外部に引き出される。
【0058】
フィックスカップ66は、容器45とプラグ65とを連結する部材である。フィックスカップ66は、キー溝66aを有する。キー溝66aは、プラグ65が挿通されたときに、プラグ65に設けたキー部65aを嵌合する。これにより、フィックスカップ66とプラグ65とが互いに対して位置決めされ、プラグ65に対するフィックスカップ66の回転が防止される。プラグ65に対して位置決めされたフィックスカップ66は、ねじ67を用いて、容器の第1構成部材55に固定される。なお、符号68は、ねじ67の頭部を被覆するシールである。
【0059】
次に、パラシュート装置40に用いられる傘体43の展開時間を測定した結果を表1に示す。展開時間の測定は、以下の手順で行った。まず、傘体43の展開径に対して、ガス発生剤の充填量を設定した。なお、展開時間とは、イニシエータの点火開始から傘体が完全に展開されるまでの時間である。
【0061】
表1に示すように、例1のパラシュート装置40においては、傘体43の展開径はφ=0.5m、ガス発生剤の充填量を1gとした。例2のパラシュート装置40においては、傘体43の展開径はφ=1.0m、ガス発生剤の充填量を1gとした。例3のパラシュート装置40においては、傘体43の展開径はφ=1.5m、ガス発生剤の充填量を1gとした。例4のパラシュート装置40においては、傘体43の展開径はφ=2.0m、ガス発生剤の充填量を1gとした。例5のパラシュート装置40においては、傘体43の展開径はφ=3.0m、ガス発生剤の充填量を1gとした。例6のパラシュート装置40においては、傘体43の展開径はφ=4.0m、ガス発生剤の充填量を2gとした。例7のパラシュート装置40においては、傘体43の展開径はφ=5.0m、ガス発生剤の充填量を2gとした。例8のパラシュート装置40においては、傘体43の展開径はφ=6.0m、ガス発生剤の充填量を2gとした。
【0062】
上述した例1から例8のパラシュート装置40における傘体43の展開時間の結果は以下の通りである。例1のパラシュート装置40における傘体43の展開時間は0.04秒、例2のパラシュート装置40における傘体43の展開時間は0.08秒であった。例3のパラシュート装置40における傘体43の展開時間は0.12秒、例4のパラシュート装置40における傘体43の展開時間は0.16秒であった。例5のパラシュート装置40における傘体43の展開時間は0.25秒、例6のパラシュート装置40における傘体43の展開時間は0.33秒であった。例7のパラシュート装置40における傘体43の展開時間は0.41秒、例8のパラシュート装置40における傘体43の展開時間は0.49秒であった。
【0063】
つまり、例1から例8のパラシュート装置40のいずれもが、傘体43が1秒以内に完全に展開することがわかった。したがって、瞬時に傘体43を展開させることができることが確認できた。
【0064】
次に、第1実施形態における無人浮遊機10及びパラシュート装置40の電気的構成について、
図5を参照して説明する。
図5に示すように、無人浮遊機10は、上述したロータユニット13の他に、ジャイロセンサ70、加速度センサ71、無線モジュール72、バッテリー73、制御回路(IC)74等を有する。
【0065】
ジャイロセンサ70は、無人浮遊機10に働く角速度を検出するセンサである。加速度センサ71は、無人浮遊機10に働く加速度を検出するセンサである。ジャイロセンサ70及び加速度センサ71からの出力信号は制御回路74に入力される。なお、第1実施形態では、ジャイロセンサ70及び加速度センサ71を備えた場合について説明しているが、角速度及び加速度の双方を検出するセンサを用いることも可能である。
【0066】
バッテリー73は、制御回路74に給電を行う装置である。なお、バッテリー73から制御回路74に供給される電力は、ジャイロセンサ70、加速度センサ71、無線モジュール72、ロータユニット13の各部に供給される。
【0067】
無線モジュール72は、オペレータにより操作されるコントローラからの無線信号を受信する。
【0068】
制御回路74は、無線モジュール72によって受信した無線信号を受けて、ロータユニット13の各々を駆動制御する。制御回路74は、CPU75及び記憶媒体76を有し、記憶媒体76に記憶された制御プログラム77を実行することで、無人浮遊機10の各部の制御やパラシュート装置40のイニシエータ61の点火制御などの処理を実行する。CPU75は、記憶媒体76に記憶された制御プログラム77を実行することで、姿勢検出部81、加速度算出部82、電源状態検出部83及び状態判定部84として機能する。
【0069】
姿勢検出部81は、ジャイロセンサ70からの出力を受けて、水平面に対する無人浮遊機の姿勢(傾き角)を算出する。
【0070】
加速度算出部82は、加速度センサ71からの出力を受けて、無人浮遊機10に働く加速度のうち、下方向の加速度を算出する。
【0071】
電源状態検出部83は、バッテリー73との間で通信を行い、バッテリー73の異常の有無を検出する。なお、バッテリー73の異常の有無の検出は、バッテリー73から出力される電流値等を検出することで、バッテリー73の残量が少ないか否かの判定や、バッテリー73から供給される電流が過電流であるか否かの判定などを行うことで実施される。
【0072】
状態判定部84は、飛行時における無人浮遊機10の状態判定を行う。詳細には、状態判定部84は、姿勢検出部81により算出された無人浮遊機10の傾き角θが基準角度αを超過しているか否かを判定する。無人浮遊機10の傾き角θが基準角度αを超過している場合には、さらに加速度算出部82により算出された下方向の加速度Aが基準加速度βを超過しているか否かを判定する。そして、下方向の加速度Aが基準加速度βを超過している場合には、無人浮遊機10に異常が発生したと判定する。なお、基準角度αや基準加速度βは、実際に無人浮遊機10が墜落したときの値であり、これら値は、実験、シミュレーションなどにより得ることができる。また、この他に、状態判定部84は、バッテリー73が正常であるか否かの判定や、ロータユニット13が正常に駆動しているか否かの判定を行う。
【0073】
なお、状態判定部84において、無人浮遊機10の傾き角θ及び無人浮遊機10に働く下方向の加速度を用いて、無人浮遊機10の異常の有無を判定しているが、無人浮遊機10を昇降させる場合も下方向の加速度が働くことを考慮すると、無人浮遊機10の傾き角θのみを考慮して、無人浮遊機10に異常が発生したか否かを判定するようにしてもよい。
【0074】
次に、第1実施形態における無人浮遊機にて実行される状態判定からパラシュート装置40を作動させるまでの処理の流れについて、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0075】
ステップS101は、ジャイロセンサ及び加速度センサによる計測である。CPU75は、ジャイロセンサ70及び加速度センサ71に給電を行い、ジャイロセンサ及び加速度センサを作動させる。これらセンサが作動することで、角速度や加速度が測定される。なお、これらセンサによる計測信号はCPU75に入力される。
【0076】
ステップS102は、傾き角θを算出する処理である。CPU75は、ジャイロセンサ70からの計測信号から、水平面に対する無人浮遊機10の傾き角θを算出する。
【0077】
ステップS103は、下方向の加速度Aを算出する処理である。CPU75は、加速度センサ71からの計測信号から、無人浮遊機10に働く下方向の加速度Aを算出する。
【0078】
ステップS104は、バッテリーをチェックする処理である。CPU75は、バッテリー73から出力される電流値等を検出することで、バッテリー73の残量が少ないか否かの判定や、バッテリー73から供給される電流が過電流であるか否かの判定など、バッテリー73の状態を検出する。
【0079】
ステップS105は、ロータユニットの駆動状態をチェックする処理である。CPU75は、ロータユニット13が有する駆動モータ17の駆動時の回転数や駆動モータ17の駆動電流値(又は電圧値)などを参照して、ロータユニット13の駆動状態を検出する。なお、駆動時の駆動モータ17の回転数や駆動モータ17の駆動電流値などは、図示を省略した計測機器などによって測定されるものである。
【0080】
以下、ステップS106、ステップS107、ステップS108、ステップS109の処理が、無人浮遊機10が異常であるか否かを判定する処理となる。
【0081】
ステップS106は、傾き角θ≦基準角度αであるか否かを判定する処理である。CPU75は、ステップS102で検出された無人浮遊機10の傾き角θを参照する。CPU75は、傾き角θ≦基準角度αと判定したときに、ステップS106の判定処理の結果をYesとする。この場合、ステップS107に進む。一方、CPU75は、傾き角θ>基準角度αと判定したときに、ステップS106の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS109に進む。ステップS106の判定処理を行うことで、無人浮遊機10が必要以上に傾いて飛行しているか否かを判断することができる。
【0082】
ステップS107は、バッテリーの状態が正常であるか否かを判定する処理である。ステップS104の処理を行うことで、CPU75は、バッテリー73の状態を判定している。したがって、バッテリー73の状態が正常であれば、CPU75は、ステップS107の判定処理の結果をYesとする。この場合、ステップS108に進む。一方、バッテリー73の残量が少ない場合やバッテリー73から供給される電柱が過電流であるなど、状態が異常と判断されていれば、CPU75は、ステップS107の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS110に進む。
【0083】
ステップS108は、ロータユニットの状態が正常であるか否かを判定する処理である。ステップS105の処理を行うことで、CPU75は、ロータユニット13の駆動状態を判定している。したがって、ロータユニット13の駆動状態が正常であれば、CPU75は、ステップS108の判定処理の結果をYesとする。この場合、
図5に示す判定処理の結果が終了し、ステップS101に戻る。
【0084】
一方、ロータユニット13の駆動状態が異常であると判断されていれば、CPU75は、ステップS107の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS110に進む。
【0085】
上述したように、ステップS106における判定処理でNoとなる場合には、ステップS109に進む。
【0086】
ステップS109は、下方向の加速度A≦基準加速度βであるか否かを判定する処理である。CPU75は、ステップS103の処理で求めた下方向の加速度Aを参照する。例えば下方向の加速度A≦基準加速度βとなるときには、CPU75は、ステップS109の判定処理の結果をYesとする。この場合、上述したステップS107に進む。一方、下方向の加速度A>基準加速度βであるときには、CPU75は、ステップS109の判定処理の結果をNoとする。この場合、ステップS110に進む。
【0087】
例えば風の影響を受けて無人浮遊機10が傾いて飛行している場合には、無人浮遊機10は必要以上に傾く可能性があるが、無人浮遊機10は飛行を継続しているので、下方向の加速度Aは、基準加速度β以下となる。一方、例えば風の影響を受けて無人浮遊機10が飛行できずに墜落する場合には、無人浮遊機10は必要以上に傾き、また、無人浮遊機10に作用する下方向の加速度Aは、基準加速度βを超過する。したがって、ステップS106及びステップS109の判定処理を行うことで、無人浮遊機の飛行状態を判断できる。また、ステップS107やステップS108の判定処理を行うことで、無人浮遊機10の飛行状態だけでなく、バッテリー異常やロータユニットの動作異常の発生を判断できる。
【0088】
ステップS110は、イニシエータの点火を行う処理である。CPU75は、パラシュート装置40のイニシエータ61に給電を行う。これにより、イニシエータ61が点火し、ガス発生器48に装填された非火薬破砕組成物が化学反応し、高圧ガスを発生させる。発生する高圧ガスにより錘41が噴出(射出)され、噴出される錘41に引っ張られることで、パラシュート装置40の傘体43が射出される。上述したように、パラシュート装置の容器45が有する8個の錘収納部は、その延出方向がパラシュート装置40の中心軸に対して外方に所定の角度傾いた状態で形成されている。したがって、各錘収納部に収納される錘41の噴出(射出)方向は、パラシュート装置40の中心軸に対して外方に所定の角度傾いた方向となる。したがって、各錘が放射状に広がるように射出されるので、傘体43が射出されながら、展開する。
【0089】
ステップS111は、バッテリーによる給電を停止する処理である。CPU75は、バッテリー73からの電力供給を停止する。したがって、無人浮遊機10の各部の動作が停止される。なお、ステップS111の処理は、省略してもよい。
【0090】
図7(a)に示すように、例えば無人浮遊機10の飛行時に異常が発生した場合には、イニシエータ61が点火し、パラシュート装置40が有するガス発生器48に装填されるガス発生剤がテルミット反応を生じ、高圧ガスを発生させる。この高圧ガスの発生により、パラシュート装置40が有する8個の錘41の各々が上方に射出される。上述したように、射出される8個の錘41は、紐部材42を介して傘体43に取り付けられている。したがって、
図7(b)に示すように、8個の錘41が射出されると、傘体43が傘体収納部56aから上方に射出され、展開される。なお、傘体43は、吊索52により容器45に連結されている。したがって、
図7(c)に示すように、射出された傘体43が完全に展開されると、無人浮遊機10は、展開された傘体43に吊り下げられた状態となる。その結果、展開された傘体43が抵抗となり、無人浮遊機10を軟着陸させることができる。
【0091】
第1実施形態では、無人浮遊機10における飛行時の姿勢に基づいて、パラシュート装置40のイニシエータ61の点火を行っているが、例えば、無人浮遊機の飛行時におけるパラシュート装置の姿勢に基づいて、パラシュート装置のイニシエータ61の点火を行うことも可能である。以下、無人浮遊機の飛行時におけるパラシュート装置の姿勢に基づいて、パラシュート装置のイニシエータの点火を行う場合の実施形態を、第2実施形態と称して説明する。
【0092】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態に示すパラシュート装置は、制御回路基板を備える点で、第1実施形態に示すパラシュート装置40と相違する。したがって、第2実施形態に示すパラシュート装置において、第1実施形態に示すパラシュート装置40と同一構成に対しては、同一の符号を付して説明し、その説明を省略する。また、第2実施形態において、無人浮遊機及びパラシュート装置の電気的構成が異なることから、無人浮遊機に対しては符号10Aを付し、パラシュート装置に対しては符号40Aを付して説明する。
【0093】
第2実施形態のパラシュート装置40Aは、第1実施形態に示すパラシュート装置40と同様に、第1実施形態にて説明した固定具25を介して無人浮遊機10Aに固定される。
【0094】
図8及び
図9に示すように、パラシュート装置40Aは、制御回路基板90を有する。この制御回路基板90には、ケーブル91,92が接続される。ケーブル91の先端に設けられるコネクタ93は、イニシエータ61が有するコネクタ64と接続される。また、ケーブル92の先端に設けられるコネクタ94は、プラグ95において、ガス発生器48が挿入される一端側とは反対側の端部から引き出され、無人浮遊機10Aの制御回路基板に接続されるケーブルのコネクタ(図示省略)に接続される。パラシュート装置40Aを製造した状態では、制御回路基板90、ケーブル91及びコネクタ93は、プラグ95に収納される。
【0095】
図10は、第2実施形態における無人浮遊機とパラシュート装置とにおける電気的構成を示す機能ブロック図である。
図10に示すように、第2実施形態の無人浮遊機10Aは、第1実施形態の無人浮遊機10に搭載されるジャイロセンサ70及び加速度センサ71の構成を省略している。したがって、CPU75Aにより記憶媒体76Aに記憶された制御プログラム77Aを実行すると、CPU75Aは、電源状態検出部83と状態判定部84との機能のみを実行する。
【0096】
一方、パラシュート装置40Aは、ジャイロセンサ100、加速度センサ101、バッテリー102及び制御回路103を有する。
【0097】
ジャイロセンサ100は、パラシュート装置40Aに働く角速度を検出するセンサである。加速度センサ101は、パラシュート装置40Aに働く加速度を検出するセンサである。ジャイロセンサ100及び加速度センサ101からの出力信号は制御回路103に入力される。なお、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、ジャイロセンサ100及び加速度センサ101を備えた場合について説明しているが、角速度及び加速度の双方を検出するセンサを用いることも可能である。
【0098】
バッテリー102は、制御回路103に給電を行う装置である。なお、バッテリー102から制御回路103に供給される電力は、ジャイロセンサ100、加速度センサ101の各部に供給される。
【0099】
制御回路103は、CPU104及び記憶媒体105を有し、記憶媒体105に記憶された制御プログラム106を実行し、必要に応じて、パラシュート装置40Aのイニシエータ61の点火制御を実行する。CPU104は、記憶媒体105に記憶された制御プログラム106を実行することで、姿勢検出部111、加速度算出部112、電源状態検出部113及び状態判定部114として機能する。
【0100】
姿勢検出部111は、ジャイロセンサ100からの出力を受けて、パラシュート装置40Aに働く角速度から、水平面に対するパラシュート装置40Aの姿勢を示す傾き角θ1を算出する。
【0101】
加速度算出部112は、加速度センサ71からの出力を受けて、パラシュート装置40Aに働く加速度から、下方向の加速度A1を算出する。
【0102】
電源状態検出部113は、バッテリー102との間で通信を行い、バッテリー102の異常の有無を検出する。なお、バッテリー102の異常の有無の検出は、バッテリー102から出力される電流値等を検出することで、バッテリー102の残量が少ないか否かの判定や、バッテリー102から供給される電流が過電流であるか否かの判定などを行うことで実施される。
【0103】
状態判定部114は、姿勢検出部111により算出されたパラシュート装置40Aの傾き角θ1が基準角度αを超過しているか否かを判定する。パラシュート装置40Aの傾き角θ1が基準角度αを超過している場合には、さらに加速度算出部112により算出された下方向の加速度A1が基準加速度βを超過しているか否かを判定する。そして、下方向の加速度A1が基準加速度βを超過している場合には必要以上に傾いて飛行していると判定する。なお、上述した基準角度αや基準加速度βは、第1実施形態で使用した値と同一の値である。
【0104】
また、状態判定部114は、バッテリー102が正常であるか否かの判定を行って異常が発生したか否かを判定する。さらに、状態判定部114は、無人浮遊機10Aから出力される状態判定の結果から、異常が発生したか否かを判定する。
【0105】
なお、状態判定部114において、パラシュート装置40Aの傾き角θ1及びパラシュート装置40Aに働く下方向の加速度A1を用いて、パラシュート装置40Aの異常の有無を判定しているが、無人浮遊機10が昇降する場合もパラシュート装置40Aには、下方向の加速度が働く。したがって、パラシュート装置40Aの傾き角θ1のみを考慮して、異常が発生したか否かを判定するようにしてもよい。
【0106】
以下、無人浮遊機10A及びパラシュート装置40Aの各々にて実行される状態判定からパラシュート装置40Aを作動させるまでの処理の流れについて、
図11のフローチャートを用いて説明する。なお、第2実施形態では、無人浮遊機10Aにおける処理とパラシュート装置40Aにおける処理が同時に実行される。
【0107】
まず、無人浮遊機10Aにおける処理の流れを説明する。
【0108】
ステップS201は、バッテリーをチェックする処理である。CPU75Aは、バッテリー73から出力される電流値等を検出することで、バッテリー73の残量が少ないか否かの判定や、バッテリー73から供給される電流が過電流であるか否かの判定など、バッテリー73の状態を検出する。
【0109】
ステップS202は、ロータユニットの駆動状態をチェックする処理である。CPU75Aは、ロータユニット13が有する駆動モータ17の駆動時の回転数や駆動モータ17の駆動電流値(又は電圧値)などを参照して、ロータユニット13の駆動状態を検出する。
【0110】
ステップS203は、無人浮遊機の状態を判定する処理である。CPU75Aは、ステップS201及びステップS202の判定結果を参照して、無人浮遊機10Aが異常であるか否かの判定を行う。
【0111】
ステップS204は、状態判定の結果を出力する処理である。CPU75Aは、ステップS203における判定結果をパラシュート装置40Aに出力する。
【0112】
ステップS205は、点火信号の入力がないか否かを判定する処理である。パラシュート装置40Aが有するCPU104から、イニシエータ61を点火することを示す点火信号を受け付けていない場合には、CPU75AはステップS205の判定結果をYesとする。この場合、ステップS201に戻る。一方、パラシュート装置40Aが有するCPU104から、イニシエータ61を点火することを示す点火信号を受け付けている場合には、CPU75Aは、ステップS205の判定結果をNoとする。この場合、ステップS206に進む。
【0113】
ステップS206は、バッテリーによる給電を停止する処理である。CPU75Aは、バッテリー73からの電力供給を停止する。なお、ステップS206の処理は、省略してもよい。
【0114】
次に、パラシュート装置40Aにおける処理について説明する。
【0115】
ステップS301は、ジャイロセンサ及び加速度センサによる計測である。ジャイロセンサ100及び加速度センサ101による計測信号はCPU104に入力される。
【0116】
ステップS302は、傾き角θ1を算出する処理である。CPU104は、ジャイロセンサ100からの計測信号から、水平面に対するパラシュート装置40Aの傾き角θ1を算出する。
【0117】
ステップS303は、下方向の加速度A1を算出する処理である。CPU104は、加速度センサ101からの計測信号から、パラシュート装置40Aに働く下方向の加速度A1を算出する。
【0118】
ステップS304は、パラシュート装置の状態判定を行う処理である。CPU104は、ステップS302にて得られるパラシュート装置40Aの傾き角θ1が、傾き角θ1≦基準角度αであるか否かを判定する。傾き角θ1が、傾き角θ1≦基準角度αである場合には、バッテリーの状態が正常であるか否かの処理を実行する。一方、傾き角θ1>基準角度αである場合には、ステップS303にて得られるパラシュート装置40Aに働く下向きの加速度A1が、下方向の加速度A1≦基準加速度βであるか否かを判定する。これら判定を行うことで、パラシュート装置40Aが必要以上に傾いて飛行しているか否かが判定される。また、CPU104は、バッテリー102から出力される電流値等を検出することで、バッテリー102の残量が少ないか否かの判定や、バッテリー102から供給される電流が過電流であるか否かの判定など、バッテリー102の状態を検出する。これら判定を行うことで、パラシュート装置40Aが異常であるか否かの判定を行う。
【0119】
ステップS305は、イニシエータの点火の有無を決定する処理である。例えば無人浮遊機10Aからの状態判定結果及びステップS304における状態判定結果がともに正常であると判定されるものであれば、CPU104は、イニシエータ61の点火を「無」とする。一方、無人浮遊機10Aからの状態判定結果及びステップS304における状態判定結果の少なくともいずれか一方の判定結果が異常と判定されている場合には、CPU104は、イニシエータ61の点火を「有」とする。
【0120】
ステップS306は、イニシエータの点火が「無」であるか否かを判定する処理である。ステップS305において、イニシエータ61の点火を「無」としていれば、CPU104は、ステップS306の判定結果をYesとする。この場合、ステップS301に戻る。一方、ステップS305において、イニシエータ61の点火を「有」としていれば、CPU104は、ステップS306の判定結果をNoとする。この場合、ステップS307に進む。
【0121】
ステップS307は、点火信号を出力する処理である。CPU104は、無人浮遊機10Aが有するCPU75Aに向けて点火信号を出力する。これを受けて、無人浮遊機10Aが有するCPU75Aは、上述したステップS205の処理を実行する。
【0122】
ステップS308は、イニシエータの点火を行う処理である。CPU104は、パラシュート装置40Aのイニシエータ61に給電を行う。これにより、イニシエータ61が点火し、高圧ガスを発生させる。その結果、パラシュート装置40の傘体43が上方に射出された後、展開される。
【0123】
ステップS309は、バッテリーによる給電を停止する処理である。CPU104は、バッテリー102からの電力供給を停止する。なお、ステップS309の処理は、省略してもよい。
【0124】
上述した第2実施形態は、パラシュート装置40Aは無人浮遊機10Aに固定されているので、パラシュート装置40Aの状態を判定すれば、無人浮遊機10Aの飛行状態も判定できるという概念により成り立つ。したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を有することができる。
【0125】
第1実施形態では、無人浮遊機の飛行時の姿勢に基づいて、パラシュート装置のイニシエータを点火させる例を説明している。また、第2実施形態では、無人浮遊機の飛行時におけるパラシュート装置の姿勢に基づいて、パラシュート装置のイニシエータを点火させる例を説明している。以下、無人浮遊機の飛行時の姿勢、又は無人浮遊機の飛行時におけるパラシュート装置の姿勢のいずれか一方に基づいて、パラシュート装置のイニシエータを点火させる例について、第3実施形態として説明する。
【0126】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態における無人浮遊機及びパラシュート装置の構成について、
図12に示す。
図12に示すように、第3実施形態における無人浮遊機は、第1実施形態の無人浮遊機と同一構成である。したがって、第3実施形態における無人浮遊機については、第1実施形態の無人浮遊機と同一の符号(符号10)を付して説明し、無人浮遊機の各部の構成については省略する。
【0127】
一方、第3実施形態におけるパラシュート装置は、第2実施形態のパラシュート装置と同一構成である。したがって、第3実施形態におけるパラシュート装置については、第2実施形態のパラシュート装置と同一の符号(符号40A)を付して説明し、パラシュート装置の各部の構成については省略する。
【0128】
以下、無人浮遊機及びパラシュート装置の各々にて実行される状態判定からパラシュート装置40を作動させるまでの処理の流れについて、
図13のフローチャートを用いて説明する。なお、第3実施形態では、第2実施形態と同様に、無人浮遊機10における処理と、パラシュート装置40Aにおける処理が同時に実行される。
【0129】
まず、無人浮遊機10における処理の流れを説明する。
【0130】
ステップS401は、ジャイロセンサ及び加速度センサによる計測である。加速度センサ71及びジャイロセンサ70による計測信号はCPU75に入力される。
【0131】
ステップS402は、傾き角θを算出する処理である。CPU75は、ジャイロセンサ70からの計測信号から、水平面に対する無人浮遊機10の傾き角θを算出する。
【0132】
ステップS403は、下方向の加速度Aを算出する処理である。CPU75は、加速度センサ71からの計測信号から、無人浮遊機10に働く下方向の加速度Aを算出する。
【0133】
ステップS404は、バッテリーをチェックする処理である。CPU75は、バッテリー73から出力される電流値等を検出することで、バッテリー73の残量が少ないか否かの判定や、バッテリー73から供給される電流が過電流であるか否かの判定など、バッテリー73の状態を検出する。
【0134】
ステップS405は、ロータユニットの駆動状態をチェックする処理である。CPU75は、ロータユニット13が有する駆動モータ17の駆動時の回転数や駆動モータ17の駆動電流値(又は電圧値)などを参照して、ロータユニット13の駆動状態を検出する。なお、駆動時の駆動モータ17の回転数や駆動モータ17の駆動電流値などは、図示を省略した計測機器などによって測定されるものである。
【0135】
ステップS406は、無人浮遊機の状態判定を行う処理である。なお、このステップS406の処理は、
図6におけるS106からステップS109の処理に相当する。CPU75は、無人浮遊機の状態判定を行う処理である。CPU75は、ステップS402にて得られる無人浮遊機10の傾き角θが、傾き角θ≦基準角度αであるか否かを判定する。傾き角θが、傾き角θ≦基準角度αである場合には、バッテリーの状態が正常であるか否かの処理を実行する。一方、傾き角θ>基準角度αである場合には、ステップS403にて得られる無人浮遊機10に働く下方向の加速度Aが、下方向の加速度A≦基準加速度βであるか否かを判定する。これら判定を行うことで、無人浮遊機10が必要以上に傾いて飛行しているか否かが判定される。また、CPU75は、バッテリー73から出力される電流値等を検出することで、バッテリー73の残量が少ないか否かの判定や、バッテリー73から供給される電流が過電流であるか否かの判定など、バッテリー73の状態を判定する。さらに、CPU75は、ロータユニット13が有する駆動モータ17の駆動時の回転数や駆動モータ17の駆動電流値(又は電圧値)などを参照して、ロータユニット13の駆動状態が正常に駆動しているか否かを判定する。これら判定により、無人浮遊機10が異常であるか否かの判定が行われる。
【0136】
ステップS407は、状態判定の結果を出力する処理である。CPU75は、ステップS406における判定結果をパラシュート装置40Aに出力する。
【0137】
ステップS408は、点火信号の入力がないか否かを判定する処理である。パラシュート装置40Aが有するCPU104から、イニシエータ61を点火することを示す点火信号を受け付けていない場合には、CPU75はステップS408の判定結果をYesとする。この場合、ステップS401に戻る。一方、パラシュート装置40Aが有するCPU104から、イニシエータ61を点火することを示す点火信号を受け付けている場合には、CPU75Aは、ステップS408の判定結果をNoとする。この場合、ステップS409に進む。
【0138】
ステップS409は、バッテリーによる給電を停止する処理である。CPU75は、バッテリー73からの電力供給を停止する。なお、ステップS409の処理は、省略してもよい。
【0139】
次に、パラシュート装置40Aにおける処理について説明する。
【0140】
ステップS501は、ジャイロセンサ及び加速度センサによる計測である。ジャイロセンサ100及び加速度センサ101による計測信号はCPU104に入力される。
【0141】
ステップS502は、傾き角θ1を算出する処理である。CPU104は、ジャイロセンサ100からの計測信号から、水平面に対するパラシュート装置40Aの傾き角θ1を算出する。
【0142】
ステップS503は、下方向の加速度A1を算出する処理である。CPU104は、加速度センサ71からの計測信号から、パラシュート装置40Aに働く下方向の加速度A1を算出する。
【0143】
ステップS504は、パラシュート装置の状態判定を行う処理である。CPU104は、ステップS502にて得られるパラシュート装置40Aの傾き角θ1が、傾き角θ1≦基準角度αであるか否かを判定する。傾き角θ1が、傾き角θ1≦基準角度αである場合には、バッテリーの状態が正常であるか否かの処理を実行する。一方、傾き角θ1>基準角度αである場合には、ステップS503にて得られるパラシュート装置40Aに働く下方向の加速度A1が、下方向の加速度A1≦基準加速度βであるか否かを判定する。これら判定を行うことで、パラシュート装置40Aが必要以上に傾いて飛行しているか否かが判定される。また、CPU104は、バッテリー102から出力される電流値等を検出することで、バッテリー102の残量が少ないか否かの判定や、バッテリー102から供給される電流が過電流であるか否かの判定など、バッテリー102の状態を検出する。これら判定により、パラシュート装置40Aが異常であるか否かの判定が行われる。
【0144】
ステップS505は、イニシエータの点火の有無を決定する処理である。例えば無人浮遊機10Aからの状態判定結果及びステップS304における状態判定結果がともに正常であると判定されるものであれば、CPU104は、イニシエータ61の点火を「無」とする。一方、無人浮遊機10からの状態判定結果及びステップS504における状態判定結果の少なくともいずれか一方の判定結果が異常と判定されている場合には、CPU104は、イニシエータ61の点火を「有」とする。
【0145】
このステップS505では、無人浮遊機10Aからの状態判定結果及びステップS504における状態判定結果を参照してイニシエータ61の点火の有無を決定しているが、例えば、無人浮遊機10Aからの状態判定のみを使用して、イニシエータの点火の有無を決定してもよい。
【0146】
ステップS506は、イニシエータの点火が「無」であるか否かを判定する処理である。ステップS505において、イニシエータ61の点火を「無」としていれば、CPU104は、ステップS506の判定結果をYesとする。この場合、ステップS301に戻る。一方、ステップS505において、イニシエータ61の点火を「有」としていれば、CPU104は、ステップS506の判定結果をNoとする。この場合、ステップS307に進む。
【0147】
ステップS507は、点火信号を出力する処理である。CPU104は、無人浮遊機10が有するCPU75に向けて点火信号を出力する。これを受けて、無人浮遊機10が有するCPU75は、上述したステップS205の処理を実行する。
【0148】
ステップS508は、イニシエータの点火を行う処理である。CPU104は、パラシュート装置40Aのイニシエータ61に給電を行う。これにより、イニシエータ61が点火し、高圧ガスを発生させる。その結果、パラシュート装置40Aの傘体43が上方に射出された後、展開される。
【0149】
ステップS509は、バッテリーによる給電を停止する処理である。CPU104は、バッテリー102からの電力供給を停止する。なお、ステップS509の処理は、省略してもよい。
【0150】
上述した第3実施形態では、無人浮遊機10の飛行時における姿勢だけでなく、無人浮遊機の飛行時におけるパラシュート装置40Aにおける姿勢を判定している。例えば無人浮遊機側の判定と、パラシュート装置側の判定とがともに、異常であると判定されていれば、無人浮遊機及び無人浮遊機に固定されるパラシュート装置が落下(墜落)していると判定できる。一方、無人浮遊機側の判定が異常であり、パラシュート装置側が正常であると判定される場合、パラシュート装置の姿勢は良いが、浮遊機の姿勢が悪い、つまりパラシュート装置が無人浮遊機から脱落していることが想定される。また、無人浮遊機側の判定が正常であり、パラシュート装置側が異常であると判定される場合には、パラシュート装置が無人浮遊機から脱落している場合が想定される。したがって、これら2つの場合には、パラシュート装置のイニシエータを点火し、傘体を展開させることで、墜落させずに軟着陸させることができる。したがって、第3実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を有することができる。
【0151】
第3実施形態では、ステップS505における処理を行うことでイニシエータの点火の有無を決定している。しかしながら、無人浮遊機から異常であるとの信号を受けたときに、ステップS505及びステップS506の処理を行わずに、自動的にイニシエータを点火させることも可能である。