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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-79835(P2020-79835A)
(43)【公開日】2020年5月28日
(54)【発明の名称】ロードボックス、及び音質改良方法
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/14 20060101AFI20200501BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20200501BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20200501BHJP
   H03G 5/06 20060101ALN20200501BHJP
【FI】
   G10H1/14
   H04R1/02 101Z
   H04R3/00 320
   H04R3/00 310
   H03G5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-212267(P2018-212267)
(22)【出願日】2018年11月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 直志
【テーマコード(参考)】
5D017
5D220
5D478
5J030
【Fターム(参考)】
5D017AD40
5D220AA50
5D220AB01
5D220BA30
5D478DA00
5J030AA03
5J030AB01
5J030AC06
(57)【要約】
【課題】真空管アンプを用いた音声の音質向上を図る。
【解決手段】第1の周波数帯域におけるインピーダンス特性が真空管アンプの種別に基づいて複数の第1のインピーダンス特性パターン候補から選ばれた第1のインピーダンス特性パターンを含むとともに、第2の周波数帯域におけるインピーダンス特性が真空管アンプの種別に基づいて複数の第2のインピーダンス特性パターンから選ばれた第2のインピーダンス特性パターンを含むインピーダンス特性を有するリアクティブロードが、そのインピーダンス特性に従って真空管アンプから出力された音声信号に反応した信号を出力し、リアクティブロードの出力信号に対する補正を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空管アンプから出力される音響信号に対し、スピーカキャビネットのインピーダンス特性を模擬したインピーダンス特性で反応した信号を出力するリアクティブロードと、
前記リアクティブロードの、第1の周波数帯域におけるインピーダンス特性を、少なくとも前記真空管アンプの種別に基づいて複数の第1のインピーダンス特性パターン候補から選ばれた第1のインピーダンス特性パターンに調整するとともに、前記リアクティブロードの、前記第1の周波数帯域より高い第2の周波数帯域におけるインピーダンス特性を、少なくとも前記真空管アンプの種別に基づいて複数の第2のインピーダンス特性パターン候補から選ばれた第2のインピーダンス特性パターンに調整するための操作子と、
前記第1のインピーダンス特性パターン及び前記第2のインピーダンス特性パターンを含むインピーダンス特性を有する前記リアクティブロードの出力信号に対する補正処理を行う補正部と、
を含むロードボックス。
【請求項2】
前記補正部は、前記リアクティブロードの出力信号の音質を、前記第1のインピーダンス特性パターン及び前記第2のインピーダンス特性パターンに基づいて補正する
請求項1に記載のロードボックス。
【請求項3】
前記補正部は、前記第1のインピーダンス特性パターン及び前記第2のインピーダンス特性パターンに基づいて、前記リアクティブロードの出力信号の周波数特性を変更する
請求項1又は2に記載のロードボックス。
【請求項4】
前記補正部によって補正された音響信号を増幅するパワーアンプと、
前記所定の制御入力に応じて、前記補正部によって補正された音響信号の増幅率を、前記パワーアンプにおける歪みが生じない増幅率に制御する制御部と
をさらに含む請求項1から3のいずれか一項に記載のロードボックス。
【請求項5】
前記所定の制御入力が、前記パワーアンプに接続される前記スピーカキャビネットから出力される音響の音量を示す情報である
請求項4に記載のロードボックス。
【請求項6】
前記パワーアンプに接続される前記スピーカキャビネットから出力される音響の音量を示す情報に基づいて、前記補正部によって補正された音響信号のラウドネス補正を行うラウドネス補正部をさらに含む
請求項4又は5に記載のロードボックス。
【請求項7】
前記補正部によって補正された音響信号に基づく音響が所定のスピーカキャビネットから出力された場合の音響を模擬した音響信号を生成する生成部
をさらに含む請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のロードボックス。
【請求項8】
前記補正部によって補正された音響信号に基づく音響が所定のスピーカキャビネットから出力されるとともにマイクロフォンによって集音された場合の音響を模擬した音響信号を生成する生成部
をさらに含む請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のロードボックス。
【請求項9】
前記リアクティブロードから出力された音響信号の信号レベルを低減するレベル調整器と、
前記レベル調整器から出力された音響信号を外部エフェクタへ送信する送信端子と、
前記外部エフェクタにて効果が付加された音響信号を受信する受信端子と、
をさらに含み、
前記受信端子が前記外部エフェクタから受信した音響信号が前記補正部に接続される
請求項1から8のいずれか一項に記載のロードボックス。
【請求項10】
前記リアクティブロードから出力された音響信号である第1信号と、前記受信端子が前記外部エフェクタから受信した音響信号である第2信号と、前記第1信号と前記第2信号とのミキシングによって得られた第3信号とのいずれかを前記補正部に接続するスイッチ、をさらに含む
請求項9に記載のロードボックス。
【請求項11】
真空管アンプに接続されるリアクティブロードと、
前記リアクティブロードの操作子と、
前記操作子の操作に応じて前記リアクティズロードの出力信号を補正する補正部と、
を含むロードボックス。
【請求項12】
前記リアクティブロードの出力信号に効果を付加する効果付加部に係る設定情報を、複数記憶可能な記憶部と、
設定要求に対応する設定情報を前記記憶部から読み出して前記効果付加部に設定する設定部と
をさらに含む請求項1から8及び請求項11のいずれか一項に記載のロードボックス。
【請求項13】
前記ロードボックスに接続した所定のスピーカキャビネットから出力される音響を模擬した音響信号と、前記所定のスピーカキャビネットから出力された音響をマイクロフォンによって集音した場合の音響を模擬した音響信号との少なくとも一方を生成する生成部に係る設定情報を、複数記憶可能な記憶部と、
設定要求に対応する設定情報を前記記憶部から読み出して前記生成部に設定する設定部とをさらに含む
請求項1から6及び請求項9から12のいずれか一項に記載のロードボックス。
【請求項14】
前記真空管アンプのチャネル制御部に係る設定情報を、複数記憶可能な記憶部と、
設定要求に対応する設定情報を前記記憶部から読み出して前記チャネル制御部に設定する設定部と
をさらに含む請求項1から13のいずれか一項に記載のロードボックス。
【請求項15】
前記リアクティブロードの出力信号に効果を付加する効果付加部に係る制御情報を外部機器から取得し、前記制御情報に基づいて前記効果付加部の動作を制御する効果制御部、をさらに含む請求項1から8及び請求項11から14のいずれか一項に記載のロードボックス。
【請求項16】
前記ロードボックスに接続された前記真空管アンプのチャネルを制御するチャネル制御部をさらに含む
請求項1から13及び請求項15のいずれか一項に記載のロードボックス、
【請求項17】
真空管アンプから出力される音響信号に対し、スピーカキャビネットのインピーダンス特性を模擬したインピーダンス特性で反応した信号を出力するリアクティブロードであって、第1の周波数帯域におけるインピーダンス特性が前記真空管アンプの種別に基づいて複数の第1のインピーダンス特性パターン候補から選ばれた第1のインピーダンス特性パターンを含むとともに、前記第1の周波数帯域より高い第2の周波数帯域におけるインピーダンス特性が前記真空管アンプの種別に基づいて複数の第2のインピーダンス特性パターンから選ばれた第2のインピーダンス特性パターンを含むインピーダンス特性を有する
リアクティブロードが、前記インピーダンス特性に従って前記真空管アンプから出力された音響信号に反応した信号を出力し、
前記リアクティブロードの出力信号に対する補正を行う
ことを含む音質改良方法。
【請求項18】
真空管アンプが接続されるリアクティブロードと、
前記リアクティブロードのインピーダンス特性を前記真空管アンプに適合するスピーカキャビネットのインピーダンス特性に調整するための第1調整部及び第2調整部と
を含むロードボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードボックス、及び音質改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空管アンプ(チューブアンプとも呼ばれる)を用いて好適なギターの音を出すには、真空管アンプで音を歪ませる必要があり、これにより音量が大音量となる。大音量の音響をスピーカキャビネットから出力させることができない環境(家庭など)では、真空管アンプにロードボックスと呼ばれる機器が接続される。
【0003】
ロードボックスは、リアクティブロードと呼ばれるダミーロード(擬似負荷)を有する。リアクティブロードは、入力周波数に反応してインピーダンスが変化する、スピーカキャビネットと同様のインピーダンス特性で真空管アンプからの信号にリアクティブに反応する。ロードボックスの利用により、ダミーロードとしてアッテネータなどを使用する場合に比べて、真空管アンプを用いた場合の、暖かみのある、ダイナミクスな音質が損なわれるのを回避し得る。本発明に関連する先行技術として、以下の特許文献1に示す技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4363934号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のロードボックスにおけるリアクティブロードは、固定された一種類のインピーダンス特性を用いる。このため、真空管アンプのインピーダンス特性とリアクティブロードのインピーダンス特性とが合わない場合には、ユーザの意図しない音色変化が起こることがあった。
【0006】
本発明は、真空管アンプを用いた音響の音質の向上を図ることのできる、ロードボックス及び音質改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、真空管アンプから出力される音響信号に対し、スピーカキャビネットのインピーダンス特性を模擬したインピーダンス特性で反応した信号を出力するリアクティブロードと、
前記リアクティブロードの、第1の周波数帯域におけるインピーダンス特性を、少なくとも前記真空管アンプの種別に基づいて複数の第1のインピーダンス特性パターン候補から選ばれた第1のインピーダンス特性パターンに調整するとともに、前記リアクティブロードの、前記第1の周波数帯域より高い第2の周波数帯域におけるインピーダンス特性を、少なくとも前記真空管アンプの種別に基づいて複数の第2のインピーダンス特性パターン候補から選ばれた第2のインピーダンス特性パターンに調整するための操作子と、
前記第1のインピーダンス特性パターン及び前記第2のインピーダンス特性パターンを含むインピーダンス特性を有する前記リアクティブロードの出力信号に対する補正処理を行う補正部と、
を含むロードボックスである。
【0008】
本発明に係るロードボックスにおいて、前記補正部は、前記リアクティブロードの出力
信号の音質を、前記第1のインピーダンス特性パターン及び前記第2のインピーダンス特性パターンに基づいて補正するようにしてもよい。
【0009】
本発明に係るロードボックスにおいて、前記補正部は、前記第1のインピーダンス特性パターン及び前記第2のインピーダンス特性パターンに基づいて、前記リアクティブロードの出力信号の周波数特性を変更するようにしてもよい。補正部は、例えばイコライザである。
【0010】
本発明に係るロードボックスにおいて、前記補正部によって補正された音響信号を増幅するパワーアンプと、前記所定の制御入力に応じて、前記補正部によって補正された音響信号の増幅率を、前記パワーアンプにおける歪みが生じない増幅率に制御する制御部とをさらに含む構成としてもよい。前記所定の制御入力は、例えば、前記パワーアンプに接続される前記スピーカキャビネットから出力される音響の音量を示す情報である。
【0011】
本発明に係るロードボックスにおいて、前記パワーアンプに接続される前記スピーカキャビネットから出力される音響の音量を示す情報に基づいて、前記補正部によって補正された音響信号のラウドネス補正を行うラウドネス補正部をさらに含む構成を採用しても良い。
【0012】
本発明に係るロードボックスにおいて、前記補正部によって補正された音響信号に基づく音響が所定のスピーカキャビネットから出力された場合の音響を模擬した音響信号を生成する生成部をさらに含む構成を採用してもよい。
【0013】
本発明に係るロードボックスにおいて、前記補正部によって補正された音響信号に基づく音響が所定のスピーカキャビネットから出力されるとともにマイクロフォンによって集音された場合の音響を模擬した音響信号を生成する構成を採用してもよい。
【0014】
本発明に係るロードボックスにおいて、前記リアクティブロードから出力された音響信号の信号レベルを低減するレベル調整器と、前記レベル調整器から出力された音響信号を外部エフェクタへ送信する送信端子と、前記外部エフェクタにて効果が付加された音響信号を受信する受信端子と、をさらに含み、前記受信端子が前記外部エフェクタから受信した音響信号が前記補正部に接続される構成を採用してもよい。
【0015】
本発明に係るロードボックスにおいて、前記リアクティブロードから出力された音響信号である第1信号と、前記受信端子が前記外部エフェクタから受信した音響信号である第2信号と、前記第1信号と前記第2信号とのミキシングによって得られた第3信号とのいずれかを前記補正部に接続するスイッチ、をさらに含む構成を採用してもよい。
【0016】
本発明に係る他の態様の一つは、真空管アンプに接続されるリアクティブロードと、
前記リアクティブロードの操作子と、前記操作子の操作に応じて前記リアクティズロードの出力信号を補正する補正部と、を含むロードボックスである。
【0017】
本発明に係るロードボックスでは、前記リアクティブロードの出力信号に効果を付加する効果付加部に係る設定情報を、複数記憶可能な記憶部と、設定要求に対応する設定情報を前記記憶部から読み出して前記効果付加部に設定する設定部(CPU)とをさらに含む構成を採用することができる。効果付加部は、ロードボックスに接続される外部エフェクタであっても、ロードボックスに内蔵されるエフェクタであってもよい。但し、外部エフェクタと内蔵エフェクタとの双方を有する必要はなく、いずれか一方であってもよい。
【0018】
また、本発明に係るロードボックスでは、前記ロードボックスに接続した所定のスピー
カキャビネットから出力される音響を模擬した音響信号と、前記所定のスピーカキャビネットから出力された音響をマイクロフォンによって集音した場合の音響を模擬した音響信号との少なくとも一方を生成する生成部に係る設定情報を、複数記憶可能な記憶部と、設定要求に対応する設定情報を前記記憶部から読み出して前記生成部に設定する設定部とをさらに含む構成を採用することができる。
【0019】
本発明に係るロードボックスでは、前記真空管アンプのチャンネル制御部に係る設定情報を、複数記憶可能な記憶部と、設定要求に対応する設定情報を前記記憶部から読み出して前記チャンネル制御部に設定する設定部とをさらに含む構成を採用することができる。
【0020】
本発明に係るロードボックスでは、前記リアクティブロードの出力信号に効果を付加する効果付加部に係る制御情報を外部機器から取得し、前記制御情報に基づいて前記効果付加部の動作を制御する効果制御部と、をさらに含む構成を採用することができる。
【0021】
本発明に係るロードボックスでは、前記ロードボックスに接続された前記真空管アンプのチャネルを制御するチャネル制御部をさらに含む構成を採用することができる。
【0022】
本発明の他の態様の一つは、音質改良方法である。この音質改良方法は、真空管アンプから出力される音響信号に対し、スピーカキャビネットのインピーダンス特性を模擬したインピーダンス特性で反応した信号を出力するリアクティブロードであって、第1の周波数帯域におけるインピーダンス特性が前記真空管アンプの種別に基づいて複数の第1のインピーダンス特性パターン候補から選ばれた第1のインピーダンス特性パターンを含むとともに、前記第1の周波数帯域より高い第2の周波数帯域におけるインピーダンス特性が前記真空管アンプの種別に基づいて複数の第2のインピーダンス特性パターンから選ばれた第2のインピーダンス特性パターンを含むインピーダンス特性を有するリアクティブロードが、前記インピーダンス特性に従って前記真空管アンプから出力された音響信号に反応した信号を出力し、前記リアクティブロードの出力信号に対する補正を行うことを含む。
【0023】
本発明の他の態様の一つは、真空管アンプが接続されるリアクティブロードと、前記リアクティブロードのインピーダンス特性を前記真空管アンプに適合するスピーカキャビネットのインピーダンス特性に調整するための第1調整部及び第2調整部とを含むロードボックスである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係るロードボックスの構成例を示す。
図2】リアクティブロードのインピーダンス特性の調整の説明図である。
図3】第1のインピーダンス特性パターンと、第2のインピーダンス特性パターンと、真空管アンプと、スピーカキャビネットとの対応関係を示す表である。
図4図1に示したDSPの構成例を示す。
図5】イコライザによる補正(周波数特性変更)の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、実施形態に係るロードボックス及び音質改良方法について説明する。実施形態に係るロードボックスの構成は一例であり、その構成に限定されない。本実施形態では、ギターを真空管アンプに接続し、真空管アンプをさらにロードボックスに接続する例について説明する。ギターは、楽器の一例であり、楽器はギター以外の弦楽器や、弦楽器以外の楽器を含み得る。本明細書において、音響信号は音声信号を含む。音響には、楽器の音や、人の声(音声)の他、楽器の音や音声以外の音も含まれる。
【0026】
<全体構成>
図1は、実施形態に係るロードボックスの構成例を示す。図1において、電気ギター1(以下単に「ギター1」と表記)が真空管アンプ(ヘッドアンプ)2に接続されており、真空管アンプ2は、端子11を介してロードボックス10に接続されている。ロードボックス10は、送信端子15と受信端子16とを含み、送信端子15及び受信端子16を介してロードボックス10の外部に或るエフェクタ(外部エフェクタ3)と接続されている。
【0027】
また、ロードボックス10は、端子23、端子25、端子27、端子29を含む。端子23は、スピーカ用の端子であり、端子23を介してスピーカキャビネット(CAB)4と接続される。端子25には、FOH(Front of House)5が接続される。FOH5は、ギター1を含んだ複数の楽器からの音響信号が入力され、音響信号の信号レベルを調整し、PA(Public Address)へ向けて出力する拡声器である。端子27には、録音機(REC)6が接続される。端子29には、ヘッドホン(PHONES)7が接続される。
【0028】
<リアクティブロード>
ロードボックス10は、端子11を介して真空管アンプ2と接続されるリアクティブロード12を含む。リアクティブロード12は、真空管アンプ2から入力される音響信号の周波数に応じてインピーダンスを変える。すなわち、リアクティブロード12は、端子23を用いてロードボックス10に接続されるスピーカキャビネット4のインピーダンス特性と同様のインピーダンス特性に従って反応した信号を出力する。
【0029】
図2は、リアクティブロードのインピーダンス特性の調整方法の説明図である。インピーダンス特性は、縦軸がインピーダンスを示し、横軸がインピーダンス応答(周波数)を示すグラフによって表される。インピーダンス特性は、周波数の低い、第1の周波数帯域において、共振周波数をピークとするカーブを描き、第1の周波数帯域より高い周波数の、第2の周波数帯域において、インピーダンスが上昇する。スピーカキャビネット4の有するコイルが、高周波を通し難い性質を有するからである。リアクティブロード12は、スピーカキャビネット4のインピーダンス特性と同様のインピーダンス特性を有するように形成された電気回路である。
【0030】
本実施形態に係るリアクティブロード12のインピーダンス特性のうち、第1の周波数帯域における第1のインピーダンス特性に関して、複数のパターン、すなわち、複数の第1のインピーダンス特性パターン候補が用意されている。また、リアクティブロード12の第2の周波数帯域における第2のインピーダンス特性に関して、複数のパターン、すなわち、複数の第2のインピーダンス特性パターン候補が用意されている。
【0031】
本実施形態では、複数の第1のインピーダンス特性パターン候補として、3つの第1のインピーダンス特性パターン候補が用意されている。3つの第1のインピーダンス特性パターン候補は、共振の幅(帯域)、共振周波数、インピーダンスのピーク(Resonance)
がそれぞれ異なる。但し、第1のインピーダンス特性パターン候補間において、これらのうちの少なくとも一つが異なっていればよい。図2に示す例では、ピークの低い順に、第1のインピーダンス特性パターン候補“L1”(パターンL1と称する)、“M1”(パターンM1と称する)、及び“H1”(パターンH1と称する)とが設けられている。
【0032】
また、複数の第2のインピーダンス特性パターン候補として、3つの第2のインピーダンス特性パターン候補が用意されている。3つの第2のインピーダンス特性パターン候補は、インピーダンスの上昇具合(Presence)が異なる。図2に示す例では、上昇具合の低い順に、第2のインピーダンス特性パターン候補“L2”(パターンL2と称する)、“M2”(パターンM2と称する)、及び“H2”(パターンH2と称する)とが設けられ
ている。
【0033】
なお、第1及び第2の周波数帯域のそれぞれの上限及び下限は適宜設定可能である。また、第1及び第2のインピーダンス特性候補パターンの数は、3より多くても少なくてもよい。
【0034】
ロードボックス10は、リアクティブロード12の操作子の一例として、第1調整器121(第1調整部の一例)と、第2調整器122(第2調整部の一例)とを備えている。第1調整器121は、パターンL1、パターンM1、パターンH1のいずれかを選択可能な複数のレンジを備えた調整ツマミ121Aと、第1の周波数帯域におけるインピーダンス特性を、選択されたパターンL1、パターンM1、パターンH1のいずれかにする電気回路とを含む。ロードボックス10のユーザが調整ツマミ121AをパターンL1、パターンM1、パターンH1のいずれかレンジに合わせることで、リアクティブロード12をなす回路構成が変わり、第1の周波数帯域におけるインピーダンス特性が、選択されたパターンL1、パターンM1、パターンH1のいずれかとなる。
【0035】
第2調整器122は、パターンL2、パターンM2、パターンH2のいずれかを選択可能な複数のレンジを備えた調整ツマミ122Aと、第2の周波数帯域におけるインピーダンス特性を、選択されたレンジに応じてパターンL2、パターンM2、パターンH2のいずれかにする電気回路とを含む。ロードボックス10のユーザが調整ツマミ122AをパターンL2、パターンM2、パターンH2のいずれかに合わせることで、リアクティブロード12をなす回路構成が変わり、第2の周波数帯域におけるインピーダンス特性が、選択されたパターンL2、パターンM2、パターンH2のいずれかとなる。
【0036】
図3は、第1のインピーダンス特性パターン(第1調整器121の選択パターン)と、第2のインピーダンス特性パターン(第2調整器122の選択パターン)と、真空管アンプ2の種別と、スピーカキャビネットの種別(タイプ)と、の対応関係を示す表である。
【0037】
図3に示す表は、真空管アンプ2(種別A1〜A9)のインピーダンス特性と同等又は適合するインピーダンス特性を有するスピーカキャビネット4のタイプ(種別)を示す。各タイプのスピーカキャビネット4のインピーダンス特性は、第1調整器121及び第2調整器122のマニュアル操作を通じて、第1のインピーダンス特性パターンと第2のインピーダンス特性パターンとを組み合わせることにより得られることが示されている。
【0038】
すなわち、調整ツマミ121A及び調整ツマミ122Aのそれぞれが指すパターンを切り替えることで、リアクティブロード12が有するインピーダンス特性を、ロードボックス10に接続された真空管アンプ2と適合する(合致する)ものに変更する(切り替える)ことができる。これによって、真空管アンプ2のインピーダンス特性とリアクティブロードのインピーダンス特性との不一致や不適合による、ユーザの意図しない音色変更を抑えることができる。すなわち、音質の向上を図ることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、操作子が第1調整器121及び第2調整器122の二つを備える構成を例示している。当該構成の代わりに、一つの操作子(調整器)の操作によって、第1インピーダンス特性候補と第2インピーダンス特性候補との組み合わせが選択される構成を用いてもよい。操作子が3以上の調整器を有する場合もあり得る。
【0040】
<入力レベル調整器>
図1において、リアクティブロード12の出力信号は、入力レベル調整器13に入力される。入力レベル調整器13は、真空管アンプ2によってつくられた信号の歪みによる音量の増大を抑えるために設けられており、リアクティブロード12の出力信号のレベル(
電力)を低減する減衰器を含む。入力レベル調整器13は、電力の切替スイッチ13Aを有している。ロードボックス10に接続される真空管アンプの出力電力に合わせた電力設定とされる。本実施形態では、切替スイッチ13Aは、10W,50W、及び100Wのいずれかに切替可能となっている。切替スイッチ13Aの操作は、マニュアルで行われても自動的に行われても良い。
【0041】
<外部エフェクタ>
外部エフェクタ3に係る構成として、ロードボックス10は、スイッチ17と、スイッチ14と、送信端子15と、受信端子16と、スイッチ17と、ミキサ(加算器)18とを含む。スイッチ17の入力端子は、入力レベル調整器13の出力端子と接続されている。スイッチ14の入力端子は、入力レベル調整器13とスイッチ17との間の信号線に接続され、スイッチ14の出力端子は、送信端子15に接続されている。スイッチ17の出力端子と、受信端子16とのそれぞれは、ミキサ18に接続されている。
【0042】
外部エフェクタ3を利用する場合、スイッチ14がオン(閉状態)にされ、入力レベル調整器13の出力信号は、スイッチ14を経て送信端子15から外部エフェクタ3へ送信される。外部エフェクタ3は、ディレイ、リバーブ、トレモロなどの所定の効果を、入力レベル調整器13の出力信号、すなわち、ギター1の音響信号に付加する。外部エフェクタ3の出力信号(効果が付加された音響信号)は、受信端子16にて受信され、ミキサ18に入力される。
【0043】
スイッチ17は、オン(閉状態)のときに、入力レベル調整器13の出力信号をミキサ18に入力する。したがって、スイッチ17がオンのときにスイッチ14がオンであれば、ミキサ18は、入力レベル調整器13から出力された元の信号と、外部エフェクタ3が元の信号に効果を付加した信号とをミキシングした信号を出力する。これに対し、スイッチ17がオンであり、スイッチ14がオフのとき、ミキサ18は、入力レベル調整器13から出力された元の信号を出力する。これに対し、スイッチ17がオフであり、スイッチ14はオンのとき、ミキサ18は、外部エフェクタ3の出力信号を出力する。
【0044】
スイッチ14及びスイッチ17のオンオフは、外部エフェクタ3による効果付加の要否や、外部エフェクタ3で付加される効果の種類に従って制御される。また、スイッチ14及びスイッチ17のオンオフは、第1調整器121及び第2調整器122において選択されたパターンの組み合わせ(リアクティブロード12のインピーダンス特性)に応じて制御されてもよい。当該構成によれば、歪みを含む真空管アンプ2の信号を入力レベル調整器13で信号レベル(電力)の小さい信号に変換し、その信号に外部エフェクタ3を用いて効果を付加することができる。
【0045】
<DSP>
ミキサ18の出力端子は、アナログ/ディジタル変換器(A/D)19に接続されており、A/D19はDSP(Digital Signal Processor)20に接続されている。これより、DSP20には、入力音響信号として、入力レベル調整器13の出力信号(真空管アンプからの音響信号(元の信号))と、元の信号に外部エフェクタ3による効果が付加された信号(効果付加信号)と、元の信号と効果付加信号とがミキシングされた信号(ミキシング信号)とのいずれかがディジタル変換されて入力される。DSP20は、メモリを有し、メモリに記憶されたプログラムを実行することによって、以下のような構成を有する装置として動作する。
【0046】
<<イコライザ>>
図1及び図4に示すように、DSP20は、A/D19の出力信号が入力されるイコライザ(EQ)201を含む。イコライザ201には、第1調整器121及び第2調整器1
22によって選択された第1及び第2のインピーダンス特性パターンの組み合わせ(すなわち、リアクティブロード12のインピーダンス特性)を示す情報が制御信号として入力される。イコライザ201は、上記組み合わせに応じた、複数の、入力音響信号の周波数特性の変更パターンを有しており、組み合わせに対応する変更パターンに従って、入力音響信号の周波数特性を変更する。
【0047】
図5は、イコライザ201による、周波数特性の変更の例を示す。イコライザ201は、入力音響信号(元の信号)Sに対し、第1のインピーダンス特性パターンに従った周波数特性の変更を行い、周波数の低域に関して信号Sより振幅が増減した信号CS1を生成する。また、イコライザ201は、元の信号Sに対し、第2のインピーダンス特性パターンに従った周波数特性の変更を行い、周波数の高域に関して信号Sより振幅が増減した信号CS2を生成する。
【0048】
このように、イコライザ201は、第1及び第2のインピーダンス特性パターンによって、元の信号Sの低域及び高域に対する周波数特性が変更された信号を生成することができる。すなわち、イコライザ201は、真空管アンプ2から出力された音響信号(リアクティブロード12が反応して出力した信号)について、その音質が向上するように補正処理を行う。これによって、リアクティブロード12とイコライザ201とのうち、リアクティブロード12のみを用いる場合よりも、音質を向上(改良)することができる。イコライザ201は、補正部の一例である。
【0049】
<<エフェクタ>>
DSP20は、イコライザ201の出力信号が入力されるエフェクタ(EFC)202を含む。エフェクタ202は、一例として、コンプレッサ(COMP)203、ディレイ(DELAY)204、リバーブ(REVERB)205を有する。但し、エフェクタ202が有する効果(エフェクト)の種類は、これらに限定されない。
【0050】
エフェクタ202に入力された音響信号には、コンプレッサ203、ディレイ204、リバーブ205のそれぞれによる効果が付与される。但し、エフェクタ202に入力された音響信号に対してコンプレッサ203、ディレイ204及びリバーブ205の全ての効果が付与されることは必ずしも必要なく、これらから選択された少なくとも一つの効果が付加される構成を採用することができる。また、効果付加を要しない場合には、元の音響信号がエフェクタ202から出力されてもよい。
【0051】
リバーブ205の出力は、エフェクタ202の出力として、二つの系統に出力される。二系統のうちの一つは、スピーカキャビネット4(図1)から音響を出力するための第1の系統(スピーカアウト)である。もう一つの系統は、FOH5から音響を出力したり、REC6にて録音したりする第2の系統(ラインアウト)である。
【0052】
<第1の系統(スピーカアウト)>
図1及び図4に示すように、ロードボックス10は、第1の系統に係る構成として、直列に接続された、ミキサ206、信号線30a、イコライザ(EQ)208、レベル調整器(LV)209、イコライザ(EQ)213、リミッタ(LMT)214、ボリューム(VOL)21、及びパワーアンプ(PW AMP)22を備えている。ミキサ206はエフェクタ202(リバーブ205)と接続されており、パワーアンプ22によって増幅された音響信号は、端子23を介してスピーカキャビネット4に接続される。
【0053】
上記した第1の系統に係る構成のうち、イコライザ208、レベル調整器209、イコライザ(EQ)213、リミッタ(LMT)214は、DSP20によって実現される。
【0054】
イコライザ208及びレベル調整器209は、エフェクタ202からの出力信号に対して必要な周波数特性の変更や信号レベルの調整を行う。イコライザ213は、レベル調整された信号に対し、必要な周波数特性の変更を行う。イコライザ213はラウドネス補正を行うラウドネス補正部として動作し得る。ラウドネス補正のオンオフは、スイッチ215のオンオフによって行われる。スイッチ215のオンオフは、マニュアルでもマニュアル以外の操作でもよい。ここに、ボリューム21は、スピーカキャビネット4から出力される音響の音量の調整器であり、ボリューム21には、音量をマニュアル操作するための調整器(調整ツマミ21a)が接続されている。スイッチ215のオン状態において、調整ツマミ21aの操作による音量の増減(音量を示す情報)に応じて、イコライザ213のラウドネス補正の補正量が増大する。すなわち、イコライザ213は小音量時に低音域と高音域とを増強し、音量の上昇につれて、増強の度合いを減少させる。
【0055】
リミッタ214は、パワーアンプ22における増幅によって信号に歪みが生じないように、リミッタ214への入力信号に関して、パワーアンプ22での増幅率の調整を行う。リミッタ214は、制御部の一例である。増幅率の調整を行う閾値は、所定の制御入力によって調整される。例えば、ボリューム21の調整器(調整ツマミ21a)の操作による音量の調整結果(スピーカキャビネット4に接続する音響信号の音量を示す情報)を所定の制御入力とし、調整結果に応じて、リミッタ214の閾値が変更される。このように、本実施形態では、ラウドネス補正と、リミッタ214の閾値変更とのそれぞれがボリューム21の調整(調整ツマミ21aの操作)によって行われる構成(操作子の共通化構成)を採用している。但し、ラウドネス補正と閾値変更が異なる操作子によって行われてもよい。
【0056】
<第2の系統>
図1及び図4に示すように、ロードボックス10は、第2の系統に係る構成として、直列に接続された、信号線31a、イコライザ(EQ)210、シミュレータ(SIM)211、レベル調整器(LV)212を含む。レベル調整器212からの出力信号は、信号線31を介して、ミキサ24、ボリューム(VOL)26、ボリューム(VOL)28のそれぞれに接続される。ミキサ24は、左右のステレオ信号のミキシングを行ってモノラルの信号を生成する。ミキサ24の出力は、端子25を介してFOH5に接続される。ボリューム26にて音量が調整された信号は、端子27を介して録音機6に入力され、録音される。ボリューム28にて音量が調整された信号は、端子29を介してヘッドホン7に入力され、ユーザの聴取に利用される。
【0057】
イコライザ213は、必要な周波数特性の変更を行う。シミュレータ211は、ロードボックス10に登録された複数種類のスピーカキャビネット及びマイクロフォンに係るシミュレーションを行う。シミュレータ211は、エフェクタ202から入力される音響信号(イコライザ210の出力信号)に関して、上記複数種類のスピーカキャビネットから選択されたスピーカキャビネットを模擬し、その選択されたスピーカキャビネットから音響が出力される場合の音響信号(スピーカ音信号と称する)を生成する。スピーカキャビネットの種類数は、2以上の所望数である。
【0058】
また、シミュレータ211は、対応するスピーカキャビネット4から出力された音響をマイクロフォンで集音した場合を模擬した音響信号(マイク集音信号と称する)を生成する。ロードボックス10に対する所定の操作を通じて、ユーザはスピーカ音信号と、マイク集音信号と、スピーカ音信号及びマイク集音信号とのいずれをシミュレータ211で生成するかを設定することができ、シミュレータ211は、シミュレータ211に対する設定に応じて、スピーカ音信号、マイク集音信号、又はスピーカ音信号及びマイク集音信号を生成する。シミュレータ211によって生成された信号は、信号線31へ出力され、FOH5から出力されたり、録音機6で録音されたり、ヘッドホン7から出力されたりする
。上記した構成によって、選択されたスピーカキャビネットから出力される音響を模擬した音響信号や、その音響をマイクで集音した音響信号を生成し、出力や録音などを行うことができる。なお、シミュレータ211は生成部の一例である。
【0059】
<ロードボックスの制御及び操作>
図1に示すように、ロードボックス10は、CPU41と、メモリ42とを備えている。メモリ42は、記憶部の一例であり、主記憶装置と補助記憶装置とを含む。主記憶装置は、プログラムやデータの記憶領域、CPU41の作業領域などとして使用される。補助記憶装置は、プログラムやデータの記憶領域として使用される。主記憶装置は、例えば、RAM、ROM、RAMとROMとの組み合わせであり、補助記憶装置は、ハードディスク、SSD、フラッシュメモリ、EEPROMなどである。
【0060】
CPU41は、プロセッサの一例であり、メモリ42に記憶されたプログラムを実行することによって、ロードボックス10全体の動作の制御を行う。例えば、CPU41は、DSP20のシミュレータ211の動作制御を行う。
【0061】
また、CPU41は、DSP20中のエフェクタ202や、スイッチ14やスイッチ17のオンオフを制御することで、エフェクタ202や外部エフェクタ3の使用/非使用、元の信号との混合/非混合、効果の内容などを制御する。エフェクタ202及び外部エフェクタ3のそれぞれは効果付加部の一例である。また、CPU41は効果制御部の一例である。CPU41が行う処理は、複数のプロセッサを用いたり、FPGAなどの集積回路を用いたりして実現されてもよい。
【0062】
また、CPU41は、アンプコントローラ(AMP CTRL)50などの動作を制御する。アンプコントローラ50は、端子51に接続されており、端子51は制御線51aを介して真空管アンプ2のチャネル切替端子2aと接続されている。真空管アンプ2は、例えば、クリーンチャネル及びリードチャネルのような複数のチャネルを有している。アンプコントローラ50は、チャネルの切替信号を端子51を介して真空管アンプ2へ送り、真空管アンプ2のチャネルの切り替えを行う。アンプコントローラ50は、チャンネル制御部の一例である。
【0063】
図1及び図4において、それぞれ一点鎖線ボックスST1で囲まれたスイッチ14、一点鎖線ボックスST2で囲まれたエフェクタ202、シミュレータ211など、一点鎖線ボックスST3で囲まれたアンプコントローラ50は、その動作に当たり、複数のパラメータ(パラメータセット(設定情報に相当))が設定される、パラメータセットの設定対象である。パラメータセットの設定はCPU41によって行われる。メモリ42は、スイッチ14、エフェクタ202、シミュレータ211、アンプコントローラ50などの各設定対象に関して、複数のパラメータセットを記憶する。本実施形態では、10個のパラメータセットをメモリ42に記憶することができる。但し、記憶可能な数は、10より多くても少なくてもよい。
【0064】
ロードボックス10は、操作部33を備え、操作部33は、ボタンなどの操作子を含んでいる。ユーザは、操作部33の操作によって、設定対象と、設定対象に設定するパラメータセット(設定情報)を指定する指定情報を入力することができる。この指定情報は、CPU41に提供される。すると、CPU41は、メモリ42から、指定情報に対応する設定情報を読み出し、指定情報によって指定された設定対象に、読み出した設定情報の設定を行う。これによって、例えば、メモリ42に複数のエフェクタ202の設定情報を記憶しておき、ユーザが所望する設定をCPU41が呼び出すようにすることができる。スイッチ14や、アンプコントローラ50、シミュレータ211についても同様である。メモリ42は記憶部の一例であり、CPU41は設定部の一例である。
【0065】
操作部33には、外部機器の一例であるフットコントローラ32が接続されている。フットコントローラ32は、ユーザの足で操作され、その操作によって、真空管アンプ2のチャネルを切り替える制御信号をCPU41に入力することができる。CPU41は制御信号に従ってアンプコントローラ50にチャネルの切替命令を与え、アンプコントローラ50が、真空管アンプ2のチャネル切替を行う。これによって、フットコントローラ32の操作により、真空管アンプ2のチャネルを切り替えることができる。
【0066】
また、フットコントローラ32は、その操作に応じて、スイッチ14のオンオフ信号や、エフェクタ202のオンオフ信号をロードボックス10のCPU41に供給することができ、CPU41は、オンオフ信号に従ってスイッチ14(外部エフェクタ3)やエフェクタ202をオンオフさせる。
【0067】
また、フットコントローラ32の操作によって、上述した指定情報(設定対象及び設定情報の指定)をCPU41に供給することができる。これによって、フットコントローラ32の操作によって、エフェクタ202が付加する効果を変更したり、シミュレータ211がシミュレートするスピーカキャビネットを変更したりすることができる。
【0068】
<実施形態の効果>
実施形態に係るロードボックス10は、真空管アンプ2から出力される音響信号に対し、スピーカキャビネット4のインピーダンス特性を模擬したインピーダンス特性で反応した信号を出力するリアクティブロード12を備える。また、ロードボックス10は、リアクティブロード12の、第1の周波数帯域におけるインピーダンス特性を、少なくとも真空管アンプ2の種別に基づいて複数の第1のインピーダンス特性パターン候補(L1、M1、H1)から選ばれた第1のインピーダンス特性パターンに調整するための第1調整器121(操作子、第1調整部に相当)を備える。また、ロードボックス10は、リアクティブロード12の、第1の周波数帯域より高い第2の周波数帯域におけるインピーダンス特性を、少なくとも真空管アンプ2の種別に基づいて複数の第2のインピーダンス特性パターン候補(L2、M2、H2)から選ばれた第2のインピーダンス特性パターンに調整するための第2調整器122(操作子、第2調整部に相当)を備える。さらに、ロードボックス10は、第1のインピーダンス特性パターン及び第2のインピーダンス特性パターンを含むインピーダンス特性を有するリアクティブロード12の出力信号に対する補正処理を行うイコライザ201(補正部に相当)を備える。
【0069】
実施形態において、イコライザ201は、リアクティブロード12の出力信号の音質を、第1のインピーダンス特性パターン及び前記第2のインピーダンス特性パターンに基づいて補正する。すなわち、イコライザ201は、第1のインピーダンス特性パターン及び第2のインピーダンス特性パターンに基づいて、リアクティブロード12の出力信号の周波数特性を変更する。これによって、真空管アンプ2に適合又は合致するスピーカキャビネット4のインピーダンス特性と同様のインピーダンス特性を模擬するリアクティブロード12を真空管アンプ2に接続したのと同様の環境を得て、リアクティブロード12の出力信号を補正することで、音響の音質の向上又は改良を行うことができる。
【0070】
また、ロードボックス10は、イコライザ201によって補正された音響信号に効果を付加するエフェクタ202と、エフェクタ202から出力された音響信号を増幅するパワーアンプ22と、所定の制御入力(例えば、第1及び第2のインピーダンス特性パターン)に応じて、イコライザ201によって補正された音響信号、イコライザ201によって補正された音響信号に効果を付加した音響信号のそれぞれの増幅率を、パワーアンプ22における歪みが生じない増幅率に制御するリミッタ214(制御部に相当)を含む。当該構成によって、真空管アンプ2によって歪んだ信号に対し、パワーアンプ22による歪み
がさらに加わるのを回避することができる。
【0071】
また、ロードボックス10は、イコライザ210によって補正された音響信号に基づく音響、又はイコライザ201によって補正された音響信号に効果を付加した音響信号に基づく音響がパワーアンプ22と接続されるスピーカキャビネット4から出力された場合の音響を模擬した音響信号を生成するシミュレータ211(生成部に相当)を含む。シミュレータ211は、スピーカキャビネット4から出力された場合の音響がマイクロフォンによって集音された場合を模擬した音響信号を生成する。当該構成によって、スピーカキャビネット4から音響を出力しない場合でも。スピーカキャビネット4から音響を出力した場合の音響信号や、それをマイクロフォンで集音した場合の音響信号を生成し、出力や録音に供することができる。
【0072】
また、ロードボックス10は、リアクティブロード12から出力された音響信号の信号レベルを低減する入力レベル調整器13(レベル調整器に相当)と、入力レベル調整器13から出力された音響信号を外部エフェクタ3へ送信する送信端子15と、外部エフェクタ3にて効果が付加された音響信号を受信する受信端子16とを含み、受信端子16が外部エフェクタ3から受信した音響信号がイコライザ201に接続される構成を備える。これによって、入力レベル調整器13で歪みを有する音響信号のレベル(電力)を小さくし、外部エフェクタ3による効果を付与し、さらにイコライザ201で音質の向上を図ることができる。
【0073】
また、ロードボックス10は、リアクティブロード12から出力された音響信号である第1信号(入力レベル調整器13からスイッチ17を介してミキサ18に入力される信号)と、受信端子16が外部エフェクタ3から受信した音響信号である第2信号(受信端子16からミキサ18に入力される信号)と、第1信号と第2信号とのミキシングによって得られた第3信号とのいずれかをイコライザ201に接続するスイッチ14、17を含む。これによって、イコライザ201に接続する音響信号の種類を選択できる。実施形態にて示した構成は、目的を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0074】
1・・・電気ギター
2・・・真空管アンプ
3・・・外部エフェクタ
4・・・スピーカキャビネット
12・・・リアクティブロード
13・・・入力レベル調整器
14,17・・・スイッチ
20・・・DSP
22・・・パワーアンプ
121・・・第1調整器
122・・・第2調整器
201・・・イコライザ
202・・・エフェクタ
211・・・シミュレータ
214・・・リミッタ
図1
図2
図3
図4
図5