【解決手段】入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部と、一時貯留部から繰り出された硬貨を繰り出し可能に収納する金種別の繰出収納部33〜38と、一時貯留部から繰り出された硬貨のうち、繰出収納部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する一括収納部と、を有し、硬貨を繰り出し可能に収納する第1の収納部39と、第1の収納部39よりも収納容量が大で硬貨を繰り出し可能に収納する第2の収納部32と、を備え、第1の収納部39を一時貯留部とし第2の収納部32を一括収納部とする第1の動作モードと、第2の収納部32を一時貯留部とし第1の収納部39を一括収納部とする第2の動作モードと、に切り替え可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る一実施形態の硬貨処理装置を図面を参照して以下に説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の硬貨処理装置10は、装置本体11の前部に入金部12およびカルトン載置部13を有している。入金部12は、硬貨が外部から金種混合状態で一括して投入されるとともに投入された硬貨を一枚ずつ分離して繰り出す。図示は略すが、入金部12には、入金部12を外部に対し開閉するシャッタが設けられている。入金部12は、シャッタが開かれた状態で硬貨が外部から投入可能となり、シャッタが閉じられた状態では硬貨が外部から投入不可となるとともに内部の硬貨の外部への取り出しも不可となる。カルトン載置部13には、装置本体11とは別体のカルトン14が抜き差し可能に載置される。
【0012】
硬貨処理装置10は、装置本体11の側部に入金側搬送部15を有している。入金側搬送部15は、前後方向に延在しており、入金部12から繰り出された硬貨を後方に向けて搬送する。
【0013】
硬貨処理装置10は、入金側搬送部15の位置に、前から順に、識別部20、放出案内部21、カセット案内部22、1円硬貨用の還流案内部23、100円硬貨用の還流案内部24、10円硬貨用の還流案内部25、50円硬貨用の還流案内部26、5円硬貨用の還流案内部27、500円硬貨用の還流案内部28およびスタッカ案内部29を有している。識別部20は、入金側搬送部15で搬送中の硬貨の真偽および金種を識別しつつ計数する。放出案内部21、カセット案内部22、還流案内部23〜28およびスタッカ案内部29は、入金側搬送部15で搬送中の硬貨を、識別部20の識別結果に基づいて入金側搬送部15から分流させるように案内する。
【0014】
硬貨処理装置10は、入金部12の後側に、前から順に、プールカセット32(第2の収納部)と、1円硬貨用の還流部33(繰出収納部)と、100円硬貨用の還流部34(繰出収納部)と、10円硬貨用の還流部35(繰出収納部)と、50円硬貨用の還流部36(繰出収納部)と、5円硬貨用の還流部37(繰出収納部)と、500円硬貨用の還流部38(繰出収納部)と、プールスタッカ39(第1の収納部)と、を有している。
【0015】
放出案内部21は、入金側搬送部15から、カルトン載置部13に載置されたカルトン14に硬貨を案内する。放出案内部21は、例えば、識別部20の識別結果から真硬貨と判定できなかった受け入れ不可なリジェクト硬貨を入金側搬送部15からカルトン14に案内する。
【0016】
カセット案内部22は、例えば、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨を入金側搬送部15からプールカセット32に案内する。プールカセット32は、装置本体11に対し着脱可能であり、硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する。プールカセット32は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部42を有している。
【0017】
1円硬貨用の還流案内部23は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち1円硬貨のみを入金側搬送部15から1円硬貨用の還流部33に案内する。1円硬貨用の還流部33は、装置本体11に対し着脱不可であり、1円硬貨のみを収納する。1円硬貨用の還流部33は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部43を有している。
【0018】
100円硬貨用の還流案内部24は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち100円硬貨のみを入金側搬送部15から100円硬貨用の還流部34に案内する。100円硬貨用の還流部34は、装置本体11に対し着脱不可であり、100円硬貨のみを収納する。100円硬貨用の還流部34は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部44を有している。
【0019】
10円硬貨用の還流案内部25は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち10円硬貨のみを入金側搬送部15から10円硬貨用の還流部35に案内する。10円硬貨用の還流部35は、装置本体11に対し着脱不可であり、10円硬貨のみを収納する。10円硬貨用の還流部35は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部45を有している。
【0020】
50円硬貨用の還流案内部26は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち50円硬貨のみを入金側搬送部15から50円硬貨用の還流部36に案内する。50円硬貨用の還流部36は、装置本体11に対し着脱不可であり、50円硬貨のみを収納する。50円硬貨用の還流部36は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部46を有している。
【0021】
5円硬貨用の還流案内部27は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち5円硬貨のみを入金側搬送部15から5円硬貨用の還流部37に案内する。5円硬貨用の還流部37は、装置本体11に対し着脱不可であり、5円硬貨のみを収納する。5円硬貨用の還流部37は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部47を有している。
【0022】
500円硬貨用の還流案内部28は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨のうち500円硬貨のみを入金側搬送部15から500円硬貨用の還流部38に案内する。500円硬貨用の還流部38は、装置本体11に対し着脱不可であり、500円硬貨のみを収納する。500円硬貨用の還流部38は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部48を有している。
【0023】
スタッカ案内部29は、識別部20で真硬貨と判定された受け入れ可能な硬貨を入金側搬送部15からプールスタッカ39に案内する。プールスタッカ39は、装置本体11に対し着脱不可であり、硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する。プールスタッカ39は、収納している硬貨を一枚ずつ分離して計数しつつ繰り出す繰出部49を有している。
【0024】
いずれも硬貨を繰り出し可能に収納するプールカセット32、1円硬貨用の還流部33、100円硬貨用の還流部34、10円硬貨用の還流部35、50円硬貨用の還流部36、5円硬貨用の還流部37、500円硬貨用の還流部38およびプールスタッカ39のうち、プールカセット32のみが装置本体11に対し着脱可能となっている。そして、プールカセット32は、硬貨の収納容量、言い換えれば満杯状態での硬貨量が、1円硬貨用の還流部33、100円硬貨用の還流部34、10円硬貨用の還流部35、50円硬貨用の還流部、5円硬貨用の還流部37およびプールスタッカ39のそれぞれの硬貨の収納容量よりも大きくなっており、これらそれぞれの4倍程度となっている。具体的に、プールカセット32の収納容量は600枚であり、1円硬貨用の還流部33、100円硬貨用の還流部34、10円硬貨用の還流部35、50円硬貨用の還流部36、5円硬貨用の還流部37およびプールスタッカ39のそれぞれの収納容量は150枚となっている。500円硬貨用の還流部38は、還流部33〜37およびプールスタッカ39のそれぞれと内部の容積は同等であるものの、収納対象が大径の500円硬貨であることから、収納容量は還流部33〜37およびプールスタッカ39のそれぞれよりも少なく、110枚となっている。入金部12およびカルトン14のそれぞれの収納容量も150枚となっている。
【0025】
硬貨処理装置10は、装置本体11の入金側搬送部15とは反対側の側部に出金側搬送部55を有している。出金側搬送部55は、前後方向に延在しており、繰出部42〜49から繰り出された硬貨を入金部12に搬送する。
【0026】
硬貨処理装置10は、
図2に示すように、入金部12、入金側搬送部15、識別部20、放出案内部21、カセット案内部22、還流案内部23〜28、スタッカ案内部29、繰出部42〜49および出金側搬送部55を制御する制御部61と、操作入力を受け付ける操作部62と、画面表示を行う表示部63とを有している。
【0027】
制御部61は、操作部62への操作入力に基づいて、硬貨処理装置10を第1の動作モードと、第2の動作モードとに切り替えて動作させることが可能となっている。
【0028】
[第1の動作モード]
第1の動作モードでは、制御部61は、プールスタッカ39を、入金処理時に入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部とし、プールスタッカ39よりも収納容量が大のプールカセット32を、収納処理時にプールスタッカ39から繰り出された硬貨のうち、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する一括収納部とする。つまり、第1の動作モードでは、プールカセット32が、還流部33でオーバーフローする1円のオーバーフロー硬貨、還流部34でオーバーフローする100円のオーバーフロー硬貨、還流部35でオーバーフローする10円のオーバーフロー硬貨、還流部36でオーバーフローする50円のオーバーフロー硬貨、還流部37でオーバーフローする5円のオーバーフロー硬貨および還流部38でオーバーフローする500円のオーバーフロー硬貨を、金種混合で繰り出し可能に収納する。収納処理時に、収納しようとしている硬貨の枚数が、その収納先の還流部の収納容量から現在の硬貨量を減算した収納許容量を超えていると、収納許容量を超えた分の硬貨がオーバーフロー硬貨となる。
【0029】
以下、いずれも第1の動作モードで実行される、第1の入金処理、第1の返却処理、第1の収納処理、第1のカセット補充処理、第1のダイレクト補充処理、第1の入金部補充処理、第1の出金処理、第1の自己精査処理、第1のカセット収集処理、第1のカルトン収集処理、第1の整理計数処理、第1の分配回収処理および第1の分配処理について説明する。
【0030】
「第1の入金処理」
第1の動作モードでは、プールスタッカ39が、入金処理時に入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用されるため、第1の入金処理開始時点で、プールスタッカ39は空の状態にあり、第1の入金処理で一度に処理する入金枚数は、プールスタッカ39の収納容量である150枚以下に限定されている。
【0031】
制御部61は、第1の入金処理を開始すると、まず、入金部12の図示略のシャッタを開き、この入金部12に硬貨が投入されたことを図示略のセンサで検出すると、入金部12のシャッタを閉じ、入金部12から硬貨を繰り出させる。そして、入金部12から繰り出された硬貨を入金側搬送部15で搬送し識別部20で識別および計数する。そして、識別部20で受け入れ可能と識別された真硬貨を、
図3に太実線で示すように入金側搬送部15およびスタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送しプールスタッカ39に一時貯留する。その一方で、識別部20で受け入れ不可と識別されたリジェクト硬貨を、
図3に太破線で示すように、放出案内部21でカルトン14に搬送する。このとき、汚損硬貨および旧500円硬貨も真硬貨としてプールスタッカ39へ搬送する。また、識別部20で受け入れ可能と識別された真硬貨のうち、プールスタッカ39の収納容量(150枚)を超える硬貨は、放出案内部21でカルトン14に搬送する。入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、識別部20で受け入れ可能と識別された真硬貨の合計金額および金種別の枚数等を表示部63に表示させて、操作部62への確定指示操作、返却指示操作を待機する状態となって、第1の入金処理を終了する。このように、第1の収納処理では、プールスタッカ39が、入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部となる。
【0032】
「第1の返却処理」
第1の入金処理の終了後、操作部62へ返却指示操作が入力されると、制御部61は、第1の返却処理を開始する。つまり、
図4に太実線で示すように、プールスタッカ39の硬貨を、繰出部49で繰り出し、シャッタが閉じられた状態の入金部12に出金側搬送部55で搬送し、入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、放出案内部21でカルトン14に搬送する。そして、プールスタッカ39、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第1の返却処理を終了する。このようにプールスタッカ39内の硬貨をカルトン14に全て搬送して、操作者に取り出させる。
【0033】
「第1の収納処理」
第1の入金処理の終了後、操作部62へ確定指示操作が入力されると、制御部61は、第1の収納処理を開始する。つまり、
図5に太実線で示すように、プールスタッカ39の硬貨を、繰出部49で繰り出し、シャッタが閉じられた状態の入金部12に出金側搬送部55で搬送し、入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別する。そして、この識別部20の識別結果に基づいて、各金種の硬貨を還流案内部23〜28の対応する金種のもので、還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。すなわち、1円硬貨を1円硬貨用の還流案内部23で1円硬貨用の還流部33に、100円硬貨を100円硬貨用の還流案内部24で100円硬貨用の還流部34に、10円硬貨を10円硬貨用の還流案内部25で10円硬貨用の還流部35に、50円硬貨を50円硬貨用の還流案内部26で50円硬貨用の還流部36に、5円硬貨を5円硬貨用の還流案内部27で5円硬貨用の還流部37に、500円硬貨を500円硬貨用の還流案内部28で500円硬貨用の還流部38に、それぞれ収納する。言い換えれば、金種別の還流部33〜38は、一時貯留部としてのプールスタッカ39から繰り出された硬貨を繰り出し可能に収納する金種別の繰出収納部となる。なお、識別部20の識別結果に基づいて、各還流部33〜38のオーバーフロー硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨は、
図5に太破線で示すように、カセット案内部22でプールカセット32に収納する。そして、プールスタッカ39、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第1の収納処理を終了する。このように、第1の収納処理では、プールカセット32が各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する一括収納部となる。
【0034】
なお、第1の収納処理の緊急時対応として、プールカセット32をもオーバーフローするオーバーフロー硬貨が生じた場合、このようなオーバーフロー硬貨については、放出案内部21でカルトン14に搬送することも可能である。この場合、カルトン14の収納容量毎に区切って硬貨の搬送を行うことになる。具体的には、カルトン14の収納容量が150枚であるため、カルトン14へオーバーフロー硬貨を150枚搬送すると、搬送を一旦停止させ、図示略のセンサでカルトン載置部13に対するカルトン14の抜き取りを検知後、カルトン14の再セットを検知すると、次の150枚までのオーバーフロー硬貨をカルトン14へ搬送するという処理を必要回数繰り返す。
【0035】
あるいは、プールカセット32をもオーバーフローするオーバーフロー硬貨が生じる前に、プールカセット32の収納量が所定の回収基準枚数に達した時点で、一旦処理を停止して、操作者に対してプールカセット32の交換を促す報知を行い、プールカセット32の交換を検知後に処理を再開するようにしても良い。
【0036】
「第1のカセット補充処理」
第1のカセット補充処理は、硬貨処理装置10の外部で予めプールカセット32に収納された硬貨を、金種別の還流部33〜38に補充する処理である。第1のカセット補充処理は、硬貨が全く収納されていない硬貨処理装置10に、業務開始前に、金種毎に予め定められた枚数の硬貨を一括して装填するために実施される処理である。よって、第1のカセット補充処理は、硬貨処理装置10のプールカセット32以外に硬貨がある場合に動作不可となる。硬貨の有無判断は、直前までの履歴データ(前日の全回収の有無による)に基づく。なお、第1のカセット補充処理は、プールカセット32を用いた補充(装填)のため、操作者が現金に直接触れることがなく、特別な権限を要しない操作者が行うことができる処理となっている。
【0037】
硬貨が空の状態の硬貨処理装置10に対する運用前の第1のカセット補充処理に際し、例えば各金種50枚ずつの硬貨(全体で6金種300枚となる)が装填されたプールカセット32を装置本体11に装着する。そして、第1のカセット補充処理を行うことで、還流部33〜38のそれぞれに50枚ずつの硬貨が収納されることになって入出金取引を開始することが可能となる。勿論、プールカセット32への装填枚数は各金種50枚ずつに限らない。
【0038】
第1のカセット補充処理を開始すると、制御部61は、
図6に太実線で示すように、プールカセット32の硬貨を、繰出部42で繰り出し、シャッタが閉じられた状態の入金部12に出金側搬送部55で搬送し、入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、各金種の硬貨を還流案内部23〜28の対応する金種のもので、還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。言い換えれば、金種別の還流部33〜38は、一括収納庫としてのプールカセット32から繰り出された硬貨を金種別に繰り出し可能に収納する。なお、識別部20の識別および計数結果に基づいて、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨は、
図6に太破線で示すように、スタッカ案内部29でプールスタッカ39に収納する。そして、プールカセット32、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第1のカセット補充処理を終了する。
【0039】
第1のカセット補充処理後にプールスタッカ39に硬貨があると、制御部61は、プールスタッカ39内の硬貨をすべて、繰出部49で繰り出し、シャッタが閉じられた状態の入金部12に出金側搬送部55で搬送し、入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、カセット案内部22でプールカセット32へ収納する。
【0040】
なお、設定によるが、第1のカセット補充処理は操作者に現金を触らせないことも目的としているので、識別部20の識別結果に基づいて、真硬貨と識別されなかったリジェクト硬貨と、真硬貨と識別された汚損硬貨および旧500円硬貨とは、オーバーフロー硬貨と同様、一旦プールスタッカ39へ搬送し、プールカセット32からの第1のカセット補充処理の終了後に、プールスタッカ39の硬貨をプールカセット32へ搬送する。その際に、制御部61は、リジェクト硬貨については枚数を把握し、汚損硬貨および旧500円硬貨については金種別の枚数を把握する。但し、識別部20の識別結果からリジェクト硬貨と判定された硬貨については、放出案内部21でカルトン14に搬送しても良い。また、汚損硬貨および旧500円硬貨についても、同様にカルトン14に搬送しても良い。
【0041】
「第1のダイレクト補充処理」
第1のダイレクト補充処理は、入金部12に硬貨を投入して還流部33〜38に硬貨を補充する。これにより、カセットの着脱作業等が不要となる。なお、第1のダイレクト補充処理は、主に銀行業務開始前に活用する処理である。第1のダイレクト補充処理は、現金を操作者が直接取り扱うため、所定の権限を有するものを認識した場合のみ実行可能となる設定にできる。第1のダイレクト補充処理は、そもそも現金を操作者が直接取り扱えるため、リジェクト硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨をカルトン14に回収するようにでき、業務開始前に、これらの硬貨を硬貨処理装置10内に保管しなくて済む。すなわち、当初装填した硬貨をすべて、その後の出金業務に使用することができる。
【0042】
制御部61は、第1のダイレクト補充処理を開始すると、まず、入金部12の図示略のシャッタを開き、この入金部12に硬貨が投入されたことを図示略のセンサで検出すると、入金部12から硬貨を繰り出させる。そして、
図7に太実線で示すように、入金部12から繰り出した硬貨を入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、各金種の硬貨を還流案内部23〜28の対応する金種のもので、還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。なお、識別部20の識別および計数結果に基づいて、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨は、
図7に太破線で示すように、カセット案内部22でプールカセット32に収納する。そして、入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第1のダイレクト補充処理を終了する。なお、識別部20の識別結果に基づいて、受け入れ不可と識別されたリジェクト硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨は、放出案内部21でカルトン14に搬送する。なお、汚損硬貨および旧500円硬貨は、オーバーフロー硬貨と同様、カセット案内部22でプールカセット32に収納しても良い。
【0043】
「第1の入金部補充処理」
第1の入金部補充処理は、硬貨処理装置10に、業務時間内に一部金種の硬貨がニアエンド状態を含む不足状態になったとき(ニアエンド枚数以下になったとき、または、追加補充推奨枚数以下になったとき)など、当該不足状態となった金種の硬貨を補充装填するために、実施される処理である。第1の入金部補充処理には、二つの方式がある。一つは、入金部12に投入された硬貨をすべて還流部33〜38の対応する金種のものに補充する方式である。この方式は、操作性は良いが、本来補充すべき金種硬貨が補充されない可能性が残る。もう一つは、補充する金種別の枚数を操作部62に入力の上で、入金部12に投入された硬貨を、入力値との一致を確認しながら補充する。操作性は多少煩雑であり、入力値と補充値とが一致する必要性はあるが、本来補充すべき金種硬貨でない場合は、データ入力時点で警告させることができる。警告時には、補充すべき金種硬貨を再確認、準備の上、データ入力をやり直す。この場合、所定の権限を有するものを認識した場合のみ実行可能となる設定にできる。
【0044】
第1の入金部補充処理は、
図3に示す第1の入金処理と、
図4に示す第1の返却処理または
図5に示す第1の収納処理とを行う。第1の入金処理と第1の収納処理とを行うと、入金部12の硬貨を還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。または、
図7に示すように、第1のダイレクト補充処理と同様の処理を行って、入金部12の硬貨を還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。
【0045】
「第1の出金処理」
第1の出金処理は、出金データに基づいて、
図8に太実線で示すように、金種別に設けられた還流部33〜38の対応する金種のものから、繰出部43〜48の対応する金種のものによって、硬貨を、計数しつつ出金側搬送部55に繰り出し、シャッタが閉じられた状態の入金部12に出金側搬送部55で搬送し、入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、識別部20で識別および計数しつつ放出案内部21でカルトン14へ放出する。還流部33〜38の対応する金種のものから出金データのすべての硬貨が繰り出された後、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第1の出金処理を終了する。ここで、識別部20の識別および計数結果から、リジェクト硬貨が検出されると、この硬貨は、
図8に太破線で示すように、入金側搬送部15およびスタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送する。識別部20において識別されてカルトン14に振り分けられた硬貨が、金種別の出金予定枚数に達していない硬貨があれば、リジェクト硬貨が当該硬貨であるとして、当該金種の硬貨を還流部33〜38の対応する金種のものからさらに追加で繰り出して、金種別の出金予定枚数に達するように制御する。出金完了時、ブザー等の報知を確認して、操作者は、カルトン14の硬貨を顧客に出金する。なお、第1の出金処理では、識別部20で汚損硬貨と判定された硬貨であってもカルトン14へ搬送してそのまま出金する。
【0046】
第1の出金処理の完了、報知と並行して、プールスタッカ39に硬貨がある場合には、操作者の顧客への出金作業中の待機時間を利用して、プールスタッカ39より硬貨を繰出部49で繰り出して、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送し、再度、識別部20で識別させる。その結果、真硬貨と識別され金種が識別された硬貨は、還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。ここでも、またリジェクト硬貨と判定された場合は、同様の処理を繰り返すことになる。但し、リジェクト硬貨の累積枚数には上限枚数(例えば、10枚)が設定されており、上限枚数を超えた場合は、処理を中断しエラー状態となって報知を行う。これにより、操作者に確認を行わせることになる。または、この場合のリジェクト硬貨は、一度は識別されて還流部33〜38の対応する金種のもの収納された硬貨であるため、その金種は予想可能であり、予想された金種の硬貨として、プールカセット32に収納させても良い。
【0047】
「第1の自己精査処理」
第1の自己精査処理は、
図9に太実線で示すように、還流部33〜38のうちの精査対象のものから一旦すべての硬貨を繰り出して入金部12に貯留し、その後、入金部12から識別部20で識別および計数しつつ、識別結果に基づいて、還流案内部23〜28の対応する金種のもので還流部33〜38の対応金種のものに収納させる。第1の自己精査処理では、還流部33〜38を所定の順番で精査する。ここでは、小径硬貨の還流部から順に、すなわち、1円硬貨用の還流部33、50円硬貨用の還流部36、5円硬貨用の還流部37、100円硬貨用の還流部34、10円硬貨用の還流部35、500円硬貨用の還流部38の順番で精査する。なお、この順は、必須ではなく、金額の小さい順(または大きい順)でも構わない。還流部33〜38の配置の位置で、前方から、あるいは後方から順に行う等でも良い。
【0048】
第1の自己精査処理を開始すると、制御部61は、1円硬貨用の還流部33の硬貨を繰出部43で計数しつつ全て繰り出して還流部33を空にする。これと並行して、還流部33から繰り出された硬貨を全て、シャッタが閉じられた状態の入金部12に出金側搬送部55で搬送する。次に、制御部61は、入金部12から硬貨を繰り出し入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別および計数する。識別部20の識別結果から、1円硬貨は還流案内部23で還流部33に収納する。識別部20にて、異なる金種の硬貨であると識別された硬貨は、還流案内部24〜28の対応するもので、還流部34〜38の対応する金種のものに収納する。入金部12の収納容量は、還流部33の収納容量と等しいので、還流部33の硬貨をすべて入金部12で受け、還流部33が空になってから、入金部12の硬貨を還流部33に向けて送り出すことができる。なお、識別部20でリジェクト硬貨と判定された硬貨は、
図9に太破線で示すように、スタッカ案内部29で、空であるプールスタッカ39へ搬送した後、プールスタッカ39から繰出部49で再び繰り出して、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で再度識別させる。ここでも、またリジェクト硬貨と判定された場合は、同様の処理を繰り返すことになる。但し、リジェクト硬貨の累積枚数には上限枚数(例えば、10枚)が設定されており、上限枚数を超えた場合は、処理を中断しエラー状態となって報知を行う。リジェクト硬貨の処理は、全金種終了後にまとめて行っても良い。また、識別部20で、汚損硬貨または旧500円硬貨と識別された硬貨は、カセット案内部22でプールカセット32に収納する。
【0049】
入金部12より繰り出された全ての硬貨が還流部33に搬送された場合(即ち、エラーなしの場合)、制御部61は、次の50円硬貨用の還流部36について同様に精査処理を行い、同様にして、5円硬貨用の還流部37、100円硬貨用の還流部34、10円硬貨用の還流部35、500円硬貨用の還流部38の順に精査処理を行う。
【0050】
500円硬貨用の還流部38までの精査処理が終わると、制御部61はプールカセット32内の硬貨(オーバーフロー硬貨、汚損硬貨、旧500円硬貨)を繰出部42によって計数しつつ全て繰り出す。プールカセット32から繰出部42によって繰り出された硬貨を出金側搬送部55で搬送し、入金部12に一時貯留する。このとき、プールカセット32内の硬貨量が入金部12内の収納容量以下であれば、硬貨を入金部12に一時貯留することで、プールカセット32内の硬貨を空にすることができる。この場合、プールカセット32内の硬貨を空にした後、入金部12の硬貨を入金側搬送部15で搬送し識別部20で識別および計数して精査しながらプールカセット32に収納する。これにより、プールカセット32を精査する。
【0051】
ここで、プールスタッカ39が空(リジェクト硬貨がなし)であれば、プールカセット32の硬貨を入金部12およびプールスタッカ39に搬送してプールカセット32を空にすることができる。つまり、第1の自己精査処理時に、プールスタッカ39が空の状態で、プールカセット32に入っているオーバーフロー硬貨の精査を開始する場合、プールカセット32に入っているオーバーフロー硬貨の枚数が、入金部12の収納容量とプールスタッカ39の収納容量とを合わせた枚数までであれば精査が可能となる。ここでは、入金部12の収納容量が150枚であり、プールスタッカ39の収納容量が150枚であるため、プールカセット32に入っているオーバーフロー硬貨の枚数が最大300枚までであれば、最初の150枚の硬貨を、プールカセット32から繰出部42で計数しつつ繰り出し、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別および計数しながらスタッカ案内部29でプールスタッカ39に案内する。次に、残りの150枚までの硬貨を、プールカセット32から繰出部42で計数しつつ繰り出し、出金側搬送部55で入金部12に搬送し、入金部12に留めておく。このようにして、プールカセット32を空にしてから、入金部12の硬貨を入金側搬送部15で搬送し識別部20で識別および計数して精査しながらカセット案内部22でプールカセット32に収納し、その後、プールスタッカ39の硬貨を出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別および計数して精査しながらカセット案内部22でプールカセット32に収納することで、最大300枚の硬貨を精査できる。
【0052】
以上のようにして、プールカセット32の精査処理が終わると、制御部61は、表示部63上に今回の自己精査処理の結果(金種毎の硬貨枚数、合計金額、収納場所の表示など)と、精査前の機内有り高とを表示し、これらに差異があれば、機内有り高を今回の結果に合わせるか否かを、操作部62への操作入力で操作者に選択させて、第1の自己精査処理を終了する。
【0053】
「第1のカセット収集処理」
プールカセット32による全回収の動作処理である。カセット収集処理は、基本的には、プールカセット32が空になっている状態で行う。第1のカセット収集処理を行うにあたって、プールカセット32に硬貨が収納されている場合、制御部61は、例えば、空のプールカセット32への交換を促し、プールカセット32が空であることを確認してから第1のカセット収集処理を行う。なお、プールカセット32内の硬貨が精査済みであることを条件として、回収金をプールカセット32に元から入っている硬貨と合算して行う処理も可能である。
【0054】
第1のカセット収集処理では、
図10に太実線で示すように、還流部33〜38から繰出部43〜48で硬貨を同時に繰り出し、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別および計数して、リジェクト硬貨以外の真硬貨(汚損硬貨および旧500円硬貨を含む)をカセット案内部22でプールカセット32へ収納する。なお、汚損硬貨および旧500円硬貨を識別したときは、これらを入金側搬送部15およびスタッカ案内部29で一旦プールスタッカ39に収納し、還流部33〜38の硬貨が空になった後、プールスタッカ39に収納してある汚損硬貨および旧500円硬貨について、別メニューの混合スタッカ収集により回収しても良い。また、還流部33〜38から繰出部43〜48で硬貨を同時に繰り出すのではなく、還流部33〜38の一つですべての硬貨を繰り出したら、次の一つですべての硬貨を繰り出すという処理を順に行うようにしても良い。
【0055】
他方、識別部20でリジェクト硬貨と判定された硬貨については、
図10に太破線で示すように、入金側搬送部15およびスタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送した後、プールスタッカ39から再び繰出部49で繰り出して、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で再度、識別させる。ここでも、またリジェクト硬貨と判定された硬貨は、同様の処理を繰り返すことになる。但し、リジェクト硬貨の累積枚数には上限枚数(例えば、10枚)が設定されており、上限枚数を超えた場合は、処理を中断しエラー状態となって報知を行う。
【0056】
エラーの発生がなく処理が進み、プールカセット32に還流部33〜38の硬貨がすべて収納されると、制御部61は、第1のカセット収集処理を終了する。
【0057】
エラーの発生がなく処理が進み、プールカセット32の収納容量を超えた枚数、つまり601枚以上となった硬貨は、還流部33〜39(プールスタッカ39を含む)へ戻される。または、それぞれの還流部33〜39からの繰り出しに際して計数される繰り出し枚数から、合計601枚以上の硬貨を還流部33〜39から繰り出さないように制御しても良い。
【0058】
第1のカセット収集処理中に、600枚の硬貨が収納されたプールカセット32は、その識別番号が識別部20において識別された金種別の枚数データとともに制御部61に記憶されて管理される。プールカセット32に収納した金種別の枚数データ等をプールカセット32に設けたICタグ等の記憶手段に読み出し可能に記憶させても良い。併せて、制御部61は、600枚収納されたプールカセット32を、空のプールカセット32と交換するように表示部63に報知する。
【0059】
操作者が600枚収納されたプールカセット32を機外へ取り出し、硬貨を抜き取って空の状態として装置本体11に再セットし、あるいは空の予備のプールカセット32を装置本体11にセットすると、これを検知して、制御部61は、第1のカセット収集処理を再開し、601枚目以降の硬貨について、同様に処理を行う。第1のカセット収集処理では、操作者は現金に触れないため、所定の権限の認識を要しない。
【0060】
「第1のカルトン収集処理」
第1のカルトン収集処理は、カルトン14による回収動作であり、全回収の他、金額指定での一部回収も可能となっている。操作者が金額指定(金種および枚数)の一部回収か、全回収かを操作部62に入力すると、制御部61は、
図11に太実線で示すように、還流部33〜38およびプールカセット32から、指定分の硬貨を繰り出す。この場合も、還流部33〜38およびプールカセット32の指定されたものから繰出部42〜48の対応するもので硬貨を同時に繰り出し、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別および計数して、リジェクト硬貨以外の真硬貨(汚損硬貨および旧500円硬貨を含む)を放出案内部21でカルトン14に放出する。なお、還流部33〜38およびプールカセット32の指定されたものから繰出部42〜48の対応するもので硬貨を同時に繰り出すのではなく、還流部33〜38およびプールカセット32の一つで指定分の硬貨を繰り出したら、次の一つで指定分の硬貨を繰り出すという処理を順に行うようにしても良い。
【0061】
他方、識別部20でリジェクト硬貨と判定された硬貨は、カセット案内部22でプールカセット32へ搬送した後、プールカセット32から再び繰出部42で繰り出して、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で再度、識別させる(リジェクト硬貨と判定された硬貨の繰り出しは処理の最後に行わせても良い。)。ここでも、またリジェクト硬貨と判定された硬貨は、同様の処理を繰り返すことになる。但し、リジェクト硬貨の累積枚数には上限枚数(例えば、10枚)が設定されており、上限枚数を超えた場合は、処理を中断しエラー状態となって報知を行う。
【0062】
第1のカルトン収集処理では、カルトン14の収納容量毎に区切って硬貨の搬送を行うことになる。具体的には、カルトン14の収納容量が150枚であるため、カルトン14へ硬貨を150枚搬送すると、搬送を一旦停止させ、図示略のセンサでカルトン載置部13に対するカルトン14の抜き取りを検知後、カルトン14の再セットを検知すると、次の150枚までの硬貨をカルトン14へ搬送するという処理を必要回数繰り返す。この第1のカルトン収集処理では、汚損硬貨および旧500円硬貨も真硬貨と同様にカルトン14に搬送する。第1のカルトン収集処理は、現金を操作者が直接取り扱うため、所定の権限を有するものを認識した場合のみ実行可能となる設定にできる。
【0063】
「第1の整理計数処理」
第1の整理計数処理は、入出金取引には関わらない処理であり、手持ちの現金がいくらあるかを確認したい場合などに使用され、計数のみを行う処理である。
【0064】
制御部61は、第1の整理計数処理を開始すると、まず、入金部12の図示略のシャッタを開き、この入金部12に硬貨が投入されたことを図示略のセンサで検出すると、入金部12から硬貨を繰り出させる。そして、
図12に太実線で示すように、入金部12から繰り出した硬貨を入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、真硬貨を、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送する。また、識別部20の識別結果に基づいて、リジェクト硬貨を、
図12に太破線で示すように放出案内部21でカルトン14へ搬送する。なお、一度に計数できる枚数はプールスタッカ39の収納容量の枚数であり、収納容量の枚数を超える枚数の硬貨は受け付けない。つまり、プールスタッカ39の収納容量が150枚であるため、一度に計数できる枚数は150枚までであり、150枚を超える硬貨は、受け付けない。入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、制御部61は、識別部20の識別結果に基づく、合計金額および金種別の枚数等を表示部63へ表示させる。リジェクト硬貨があった場合は、次の返却操作前に、カルトン14のリジェクト硬貨を回収させる。図示略のセンサでカルトン載置部13に対するカルトン14の抜き取りを検知後、カルトン14の再セットを検知すると、返却操作が可能となり、この状態で、操作部62に返却操作が入力されると、制御部61は、プールスタッカ39から繰出部49で硬貨を繰り出し、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して放出案内部21でカルトン14に放出する。その後、プールスタッカ39、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第1の整理計数処理を終了する。
【0065】
「第1の分配回収処理」
第1の分配回収処理は、プールカセット32に収納されている硬貨のうち、出金に利用できる硬貨すなわち還流部33〜38からのオーバーフロー硬貨を還流部33〜38へ分配すると同時に、出金に利用できない硬貨すなわち汚損硬貨および旧500円硬貨を機外へ放出させる処理である。
【0066】
第1の分配回収処理では、
図13に太実線で示すように、プールカセット32内の硬貨を繰出部42で繰り出し、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別後、その結果に基づいて、還流案内部23〜28の対応するもので還流部33〜38に振り分けて収納する。還流部33〜38に入り切らないオーバーフロー硬貨と汚損硬貨と旧500円硬貨は、
図13に太破線で示すように、放出案内部21でカルトン14に搬送する(カルトン14への振り分けは上記したように150枚毎に行う)。この場合、識別部20でリジェクト硬貨と判定された硬貨は、カセット案内部22でプールカセット32へ搬送した後、プールカセット32から繰出部42で再び繰り出して、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で再度識別させる。ここでも、またリジェクト硬貨と判定された場合は、同様の処理を繰り返すことになる。但し、リジェクト硬貨の累積枚数には上限枚数(例えば、10枚)が設定されており、上限枚数を超えた場合は、処理を中断しエラー状態となって報知を行う。第1の分配回収処理は、現金を操作者が直接取り扱うため、所定の権限を有するものを認識した場合のみ実行可能となる設定にできる。
【0067】
「第1の分配処理」
第1の分配処理は、プールカセット32に収納されている硬貨のうち、出金に利用できる硬貨すなわち還流部33〜38からのオーバーフロー硬貨を還流部33〜38へ分配すると同時に、出金に利用できない硬貨すなわち汚損硬貨および旧500円硬貨をプールカセット32へ戻す処理である。
【0068】
第1の分配処理では、
図14に太実線で示すように、プールカセット32内の硬貨を繰出部42で繰り出し、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別後、その結果に基づいて、還流案内部23〜28の対応するもので還流部33〜38に振り分けて収納する。識別部20でリジェクト硬貨と判定された硬貨は、
図14に太破線で示すように、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送した後、プールスタッカ39から繰出部49で再び繰り出して、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で再度識別させる。ここでも、またリジェクト硬貨と判定された場合は、同様の処理を繰り返すことになる。但し、リジェクト硬貨の累積枚数には上限枚数(例えば、10枚)が設定されており、上限枚数を超えた場合は、処理を中断しエラー状態となって報知を行う。リジェクト硬貨と判定された硬貨は、一連の処理後に、プールスタッカ39からプールカセット32に戻す。還流部33〜38に入り切らないオーバーフロー硬貨と汚損硬貨と旧500円硬貨とについても、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ搬送し、プールスタッカ39に一時貯留させた後、第1の分配処理の最後に、プールスタッカ39から繰出部49で繰り出し、出金側搬送部55、シャッタが閉状態の入金部12および入金側搬送部15で搬送して、カセット案内部22でプールカセット32へ戻す。第1の分配処理では、操作者は現金に触れないため、所定の権限の認識を要しない。
【0069】
[第2の動作モード]
第2の動作モードでは、制御部61は、プールカセット32を、入金処理時に入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部とし、プールカセット32よりも容量小のプールスタッカ39を、収納処理時にプールカセット32から繰り出された硬貨のうち、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する一括収納部とする。つまり、第2の動作モードでは、プールスタッカ39が、還流部33でオーバーフローするオーバーフロー硬貨、還流部34でオーバーフローするオーバーフロー硬貨、還流部35でオーバーフローするオーバーフロー硬貨、還流部36でオーバーフローするオーバーフロー硬貨、還流部37でオーバーフローするオーバーフロー硬貨および還流部38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する。
【0070】
以下、いずれも第2の動作モードで実行される、第2の入金処理、第2の返却処理、第2の収納処理、第2のカセット補充処理、第2のダイレクト補充処理、第2の入金部補充処理、第2の出金処理、第2の自己精査処理、第2のカセット収集処理、第2のカルトン収集処理、第2の整理計数処理、第2の分配回収処理および第2の分配処理について説明する。
【0071】
「第2の入金処理」
第2の動作モードでは、プールカセット32が、入金処理時に入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部として使用されるため、第2の入金処理開始時点で、プールカセット32は空の状態にある。第2の入金処理で一度に処理する入金枚数は、プールカセット32の硬貨収納容量であり、ここでは600枚以下に限定されている。
【0072】
制御部61は、第2の入金処理を開始すると、まず、入金部12の図示略のシャッタを開き、この入金部12に硬貨が投入されたことを図示略のセンサで検出すると、入金部12のシャッタを閉じ、入金部12から硬貨を繰り出させる。そして、入金部12から繰り出された硬貨を入金側搬送部15で搬送し識別部20で識別および計数する。そして、識別部20で受け入れ可能と識別された真硬貨を、
図15に太実線で示すように、カセット案内部22でプールカセット32へ搬送してプールカセット32に一時貯留する。つまり、第2の入金処理は、一時貯留部として、第1の入金部補充処理のプールスタッカ39ではなく、プールカセット32を用いる。その一方で、識別部20で受け入れ不可と識別されたリジェクト硬貨を
図15に太破線で示すように、放出案内部21でカルトン14に搬送する。このとき、汚損硬貨や旧500円硬貨も真硬貨としてプールカセット32へ搬送する。入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、入金部12のシャッタを開き、追加投入の有無を照会する。
【0073】
硬貨が入金部12に追加投入されたことを図示略のセンサで検出すると、制御部61は、上記と同様、入金部12のシャッタを閉じ、入金部12で繰り出した硬貨を入金側搬送部15で搬送し識別部20で識別および計数する。そして、真硬貨をプールカセット32に一時貯留する一方で、リジェクト硬貨をカルトン14に搬送する。入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、入金部12のシャッタを開き、追加投入の有無を照会する。複数回の追加投入が行われることで、真硬貨がプールカセット32の収納容量(600枚)に達すると、それより後の真硬貨は放出案内部21でカルトン14に搬送する。追加投入の有無の照会中に、操作部62に入金終了の操作が入力されると、制御部61は、識別部20で受け入れ可能と識別された真硬貨の合計金額および金種別の枚数等を表示部63に表示させて、操作部62への確定指示操作、返却指示操作を待機する状態となって、第2の入金処理を終了する。このように、第2の収納処理では、プールカセット32が、入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を金種混合で繰り出し可能に一時貯留する一時貯留部となる。よって、第2の収納処理は、第1の収納処理と比べて、大量(約4倍の量)の硬貨の入金処理が一度に実施可能となる。
【0074】
「第2の返却処理」
第2の入金処理の終了後、操作部62へ返却指示操作が入力されると、制御部61は、第2の返却処理を開始する。第2の返却処理は、プールカセット32の硬貨枚数に応じて行う。プールカセット32の硬貨枚数がカルトン14で収容可能な枚数以内である場合、つまり150枚以内である場合、入金部12のシャッタを閉じた後、
図16に太実線で示すように、プールカセット32の硬貨を、繰出部42で繰り出し、シャッタが閉じられた状態の入金部12に出金側搬送部55で搬送し、入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、放出案内部21でカルトン14に搬送する。そして、プールカセット32、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第2の返却処理を終了する。このようにプールカセット32内の硬貨をカルトン14に全て搬送して、操作者に取り出させる。なお、このとき予測される返却時間を表示部63に表示させても良い。
【0075】
第2の返却処理において、プールカセット32の硬貨枚数がカルトン14で収容可能な枚数を超える場合、つまり150枚を超える場合、カルトン14への分割返却か、プールカセット32の抜き取りによる返却かのいずれかの方法を操作部62への選択操作で判断し、カルトン14への分割返却が選択された場合、カルトン14の収納容量毎に区切って硬貨の搬送を行うことになる。つまり、カルトン14の収納容量が150枚であるため、入金部12のシャッタを閉じた後、プールカセット32の硬貨を150枚分だけ繰出部42で計数しつつ繰り出し、シャッタが閉じられた状態の入金部12に出金側搬送部55で搬送し、入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、放出案内部21でカルトン14に搬送すると、搬送を一旦停止させ、図示略のセンサでカルトン載置部13に対するカルトン14の抜き取りを検知後、カルトン14の再セットを検知すると、プールカセット32から次の150枚までの硬貨をカルトン14へ搬送するという処理を必要回数繰り返す。プールカセット32、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第2の返却処理を終了する。
【0076】
他方、プールカセット32の抜き取りによる返却が選択された場合、操作者に対してプールカセット32の交換を促す報知を行う。プールカセット32の交換を検知すると、第2の返却処理を終了する。
【0077】
なお、カルトン14への分割返却か、プールカセット32の抜き取りによる返却かの選択操作を行わせる際に、カルトン14への分割返却を選択した場合に予測される返却時間を表示部63に表示させても良い。すなわち、プールカセット32に硬貨が例えば600枚収納されている場合に、繰り出し搬送による返却を行うと、カルトン14への放出枚数に150枚の制限があることから、単純に、600枚の繰り出し搬送時間に加えて、カルトン14の抜き差し時間を必要とする。よって、収納枚数から予測される返却時間を、カルトン14への分割返却か、プールカセット32の抜き取りによる返却かの選択操作を行わせるかの判断材料として表示部63に表示させる。
【0078】
「第2の収納処理」
第2の入金処理の終了後、操作部62へ確定指示操作が入力されると、制御部61は、第2の収納処理を開始する。つまり、
図17に太実線で示すように、プールカセット32の硬貨を繰出部42で繰り出し、シャッタが閉じられた状態の入金部12に出金側搬送部55で搬送し、入金部12から繰り出して入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、各金種の硬貨を還流案内部23〜28の対応する金種のもので、還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。なお、識別部20の識別結果に基づいて、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨は、
図17に太破線で示すように、スタッカ案内部29でプールスタッカ39に収納する。そして、プールカセット32、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第2の収納処理を終了する。このように、第2の収納処理では、プールスタッカ39が各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を金種混合で繰り出し可能に収納する一括収納部となる。
【0079】
なお、第2の収納処理では、プールスタッカ39の収納容量をも超えるオーバーフロー硬貨が生じると、処理を中断し、このようなオーバーフロー硬貨を、放出案内部21でカルトン14に搬送するか、プールカセット32に残してプールカセット32の交換で対応するかを操作部62に選択入力させる。なお、予め選択設定された内容に従うようにしても良い。カルトン14に搬送する場合は、現金を操作者が直接取り扱うため、所定の権限を有するものを認識した場合のみ実行可能となる設定にできる。
【0080】
カルトン14への搬送が選択されると、カルトン14の収納容量毎に区切って硬貨の搬送を行うことになる。ここでは、カルトン14の収納容量が150枚であるため、カルトン14へオーバーフロー硬貨を150枚搬送すると、搬送を一旦停止させ、図示略のセンサでカルトン載置部13に対するカルトン14の抜き取りを検知後、カルトン14の再セットを検知すると、次の150枚までのオーバーフロー硬貨をカルトン14へ搬送するという処理を必要回数繰り返す。そして、プールカセット32、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15に硬貨がなくなると、第2の収納処理を終了する。他方、プールカセット32の交換での対応が選択された場合、プールカセット32の交換を検知すると、第2の収納処理を終了する。
【0081】
第2の収納処理においては、操作部62へ確定指示操作が入力された時点での、各還流部33〜38とプールスタッカ39の収納済み枚数データと、プールカセット32の金種別入金枚数データから、引き続いて収納動作を行ったときに、プールスタッカ39の収納枚数が予測できる。このため、還流部33〜38およびプールスタッカ39だけでの収集に留まらないことが予測されたときには、各還流部33〜38への収納動作を優先させるべきか、プールカセット32の交換を行うかを操作部62への操作で選択させても良い。プールカセット32の交換が選択された場合であっても、さらに、プールスタッカ39に収納済みの硬貨量が所定値以上のときは、プールスタッカ39の硬貨の一部をプールカセット32に回収の上でプールカセット32を交換させるかを選択入力させるか、あるいは制御部61が自動的に判断する。
【0082】
「第2のカセット補充処理」
第2のカセット補充処理は、第1のカセット補充処理と基本的に同じである。つまり、第2のカセット補充処理では、
図6に太実線で示すように、プールカセット32の硬貨を、繰出部42で繰り出し、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。そして、
図6に太破線で示すように、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨は、金種別の枚数を把握してプールスタッカ39に収納し、リジェクト硬貨は枚数を把握してプールスタッカ39に収納する。なお、第2の動作モードでは、第2のカセット補充処理後も、プールスタッカ39の硬貨はそのままプールスタッカ39に保管する点が第1の動作モードとは異なる。第1の動作モードおよび第2の動作モードの両方で、プールカセット32を、カセット補充処理時に金種別の還流部33〜38に補充する硬貨が装置外で装填される一括収納カセットとして使用する。
【0083】
「第2のダイレクト補充処理」
第2のダイレクト補充処理では、
図18に太実線で示すように、第1のダイレクト補充処理と同様、入金部12に投入された硬貨を入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、真硬貨を還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。その一方で、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨は、
図18に太破線で示すように、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ収納する点が第1のダイレクト補充処理とは異なる。また、第2のダイレクト補充処理では、プールスタッカ39は、第2のダイレクト補充処理後も、硬貨を収納したままの状態を維持する点が第1のダイレクト補充処理とは異なる。それら以外は、第1のダイレクト補充処理と基本的に同じである。なお、汚損硬貨および旧500円硬貨については、オーバーフロー硬貨と同様、スタッカ案内部29でプールスタッカ39へ収納しても良い。オーバーフロー硬貨も、そもそも当該金種の硬貨を多く入れすぎたことになるので、カルトン14へ排出しても良い。
【0084】
「第2の入金部補充処理」
第2の入金部補充処理は、
図15に示す第1の入金処理と、
図16に示す第2の返却処理または
図17に示す第2の収納処理とを行う。第2の入金処理と第2の収納処理とを行うと、入金部12の硬貨を還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。または、
図18に示すように、第2のダイレクト補充処理と同様の処理を行って、入金部12の硬貨を還流部33〜38の対応する金種のものに収納する。
【0085】
「第2の出金処理」
第2の出金処理では、
図19に太実線で示すように、第1の出金処理と同様、出金データに基づいて、硬貨を、金種別に設けられた還流部33〜38の対応する金種のものから繰り出し、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15で搬送して、識別部20で識別および計数しつつ放出案内部21でカルトン14へ放出する。一方で、第2の出金処理では、第1の出金処理とは異なり、リジェクト硬貨を
図19に太破線で示すように、プールカセット32へ収納する。そして、第2の出金処理の完了後、プールカセット32に硬貨がある場合には、硬貨を繰出部42で繰り出して、再度、識別部20で識別させる処理を行う。それ以外は、第1の出金処理と基本的に同じである。
【0086】
「第2の自己精査処理」
第2の自己精査処理では、
図20に太実線で示すように、第1の出金処理と同様、還流部33〜38のうちの精査対象のものから一旦すべての硬貨を繰り出して入金部12に貯留し、その後、入金部12から識別部20で識別および計数しつつ、識別結果に基づいて、還流案内部23〜28の対応する金種のもので還流部33〜38の対応金種のものに収納させる。このような処理を還流部33〜38に順に行う。第2の自己精査処理では、第1の自己精査処理とは異なり、プールスタッカ39についての精査を還流部33〜38と同様に行う。第2の自己精査処理では、精査中に識別部20でリジェクト硬貨と判定された硬貨は、
図20に太破線で示すように、プールカセット32へ搬送した後、プールカセット32から再び繰り出して識別部20で再度識別させる。それ以外は、第1の自己精査処理と基本的に同じである。このように、第2の自己精査処理では、精査すべき硬貨が還流部33〜38およびプールスタッカ39に収納されている。このため、入金部12およびプールカセット32の両方を利用した精査動作が可能となる。還流部33〜38およびプールスタッカ39の各収納容量よりもプールカセット32の収納容量の方が多いことから、第1の自己精査処理で受けたような制約を受けにくい。
【0087】
「第2のカセット収集処理」
第2の動作モードでは、プールカセット32を、入金処理時に入金部12に投入され識別部20で識別された硬貨を一時貯留する一時貯留部として使用し、プールスタッカ39にオーバーフロー硬貨、汚損硬貨および旧500円硬貨を収納している。そして、通常動作時には、一つの取引の入出金が終了したときには、プールカセット32内に硬貨は存在せず、そのまま業務終了となったときにも、プールカセット32内に硬貨は存在することがない。よって、第2のカセット収集処理を行うに当たって、すでにプールカセット32は空であり、よって、第2のカセット収集処理を直ちに開始可能となる。第2のカセット収集処理は、プールスタッカ39が、第2のカセット収集処理後も、硬貨を収納したままの状態を維持する点が第1のカセット収集処理とは異なる。それ以外は、
図10に太線で示すルートで硬貨を搬送する第1のカセット収集処理と基本的に同じである。第1の動作モードおよび第2の動作モードの両方で、プールカセット32を、カセット収集処理時に金種別の還流部33〜38から繰り出された硬貨を収納する一括収納カセットとして使用する。
【0088】
「第2のカルトン収集処理」
第2のカルトン収集処理は、
図21に太実線で示すように、第1のカルトン収集処理と同様、硬貨を、金種別に設けられた還流部33〜38の対応する金種のものから繰り出し、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15で搬送して、識別部20で識別および計数しつつ放出案内部21でカルトン14へ放出する。その一方で、第2のカルトン収集処理では、第1のカルトン収集処理とは異なり、プールスタッカ39から硬貨を繰り出し、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15で搬送して、識別部20で識別および計数しつつ放出案内部21でカルトン14へ放出する。硬貨の繰り出し元の一つがプールスタッカ39であること以外は、第1のカルトン収集処理と基本的に同じである。
【0089】
「第2の整理計数処理」
第2の整理計数処理では、
図22に太実線で示すように、入金部12に投入された硬貨を入金側搬送部15で搬送し、識別部20の識別結果に基づいて、真硬貨を、カセット案内部22でプールカセット32へ搬送する。その一方で、リジェクト硬貨を、
図22に太破線で示すように放出案内部21でカルトン14へ搬送し、その後、返却操作が可能な状態で、操作部62に返却操作が入力されると、プールカセット32から硬貨を繰り出し、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15で搬送して放出案内部21でカルトン14に放出する。プールカセット32に硬貨を一時貯留する以外は、第1の整理計数処理と基本的に同じである。第2の整理計数処理では、一度に計数できる枚数はプールカセット32の収納容量の枚数であり、プールカセット32の収納容量が600枚であるため、一度に600枚まで計数できる。
【0090】
「第2の分配回収処理」
第2の分配回収処理は、
図23に太実線で示すように、プールスタッカ39内の硬貨を繰り出し、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別後、その結果に基づいて、出金に利用できる硬貨を還流部33〜38に振り分けて収納する。その一方、還流部33〜38に入り切らないオーバーフロー硬貨と、出金に利用できない硬貨を汚損硬貨および旧500円硬貨とは、
図23に太破線で示すように、放出案内部21でカルトン14に搬送する。硬貨の繰り出し元がプールスタッカ39であること以外は、第1の分配回収処理と基本的に同じである。
【0091】
「第2の分配処理」
第2の分配処理は、
図24に太実線で示すように、プールスタッカ39内の硬貨を繰り出し、出金側搬送部55、入金部12および入金側搬送部15で搬送して識別部20で識別後、その結果に基づいて、出金に利用できる硬貨を還流部33〜38に振り分けて収納する一方、還流部33〜38に入り切らないオーバーフロー硬貨と、出金に利用できない汚損硬貨および旧500円硬貨とは、
図24に太破線で示すように、プールカセット32に搬送する。硬貨の繰り出し元がプールスタッカ39であり、出金に利用できない硬貨の搬送先がプールカセット32であること以外は、第1の分配回収処理と基本的に同じである。
【0092】
第2の動作モードでは、大量枚数の入金処理などが可能となり、作業効率を高めた硬貨処理装置10を提供できる。
【0093】
[動作モードの選択]
硬貨処理装置10において、第1の動作モードと第2の動作モードとは切り替え可能であるが、動作モードの設定には、事前マニュアル設定方式と事前自動設定方式と任意設定可能方式とがある。
【0094】
「事前マニュアル設定方式」
事前マニュアル設定方式は、所定の管理者モード、サービス員設定モードなど、特別な権限またはモード下において、第1の動作モードと第2の動作モードとの切り替えを可能とする設定方式である。通常は、硬貨処理装置10の導入時、または、毎朝の業務開始前に、当日の業務予測(顧客来店予測等、過去実績に基づいた情報)に応じて、操作部62へのマニュアル操作にて、いずれかの動作モードが選択設定される。設定された動作モードは、硬貨処理装置10の表示部63や、これに通信可能な端末機等に表示可能である。業務時間中にこれらの動作モードを変更することは原則行わず、終業時まで、これらの動作モードを維持運用するようになっている。いずれにしても、硬貨処理装置10を導入した店舗の顧客特性等から小口顧客が多い場合や、過去の実績、月日、曜日等々の条件を鑑みて小口取引が多いと考えられるときには、従来と同様の動作モードである第1の動作モードを基本的に選択設定することで、適宜適切な運用が可能となる。また、業務予測等で大口取引の可能性の情報があるときには、業務開始前に、第2の動作モードを選択設定して運用させることも可能となる。
【0095】
「事前自動設定方式」
事前自動設定方式は、硬貨処理装置10の電源立ち上げ時、硬貨処理装置10の内部の現金つまり硬貨がない(残置仕様でない)ことを条件として、硬貨処理装置10または店舗内管理サーバ(さらには店舗外管理サーバもあり得る)内に記憶されている、当該店舗の、当日の業務予測(顧客来店予測等、過去実績に基づいた情報)に応じて、硬貨処理装置10が自動的に、あるいは店舗内管理サーバからの指示で第1の動作モードと第2の動作モードの切り替え設定を行う。
【0096】
「任意設定可能方式(都度)」
事前マニュアル設定方式および事前自動設定方式においては、一旦設定された動作モードは、設定された日の業務が完了するまでは、それぞれの動作モードに固定であるのに対し、任意設定可能方式は、条件が整えば、操作者の権限で、都度、動作モードを変更できる方式である。なお、硬貨処理装置10の電源立ち上げ時に設定される動作モードは、事前マニュアル設定方式および事前自動設定方式のいずれの方式で選択設定されても良い。ところで、業務途中において、これらの動作モードを変更する必要性がある場合は、第1の動作モードから第2の動作モードへの変更を要するときだけである。すなわち、通常、小口の入出金だけが行われている場面にあっては、第1の動作モードであっても、第2の動作モードであっても、何ら影響を受けない。これに対して、予定外に顧客が大量の硬貨を持参して入金することが希に存在する。大量の硬貨の入金に対応しうるモードは、上記したように第2の動作モードである。よって、第1の動作モードでの運用中に、やむを得ず、第2の動作モードで運用できる条件を設定すれば良い。
【0097】
{第1の動作モードから第2の動作モードへの設定変更可能条件について}
第1の動作モードでは、プールカセット32にオーバーフロー硬貨等を保管しているので、プールカセット32に収納されている硬貨を、第1の動作モードの第1の入金処理で一時貯留していたプールスタッカ39に収納できるか否かによって、第1の動作モードから第2の動作モードへの設定変更が可能か否かが決まる。上記実施態様では、プールスタッカ39の容量は150枚であるので、最大容量600枚のプールカセット32に収納されている硬貨が150枚以下であれば、これら硬貨をプールスタッカ39に移動させることで、プールカセット32内を空にする。
【0098】
なお、150枚近くの硬貨の移動には、時間が掛かるので、さらに好ましい態様では、一例として、(1)50枚までの移動を要するときは無条件に搬送移動を開始する。(2)100枚以上(移動しきれない150枚以上を含む)の硬貨の移動を要するときは、搬送移動を伴わない、空のプールカセット32へ交換させる。(3)50枚から100枚までの移動を要するときは、これらの移動に要する予測時間を表示部63に表示して、操作部62への操作入力で硬貨の移動またはカセット交換のいずれかを選択させるようにする。但し、操作員の判断を要せず、(3)を無くし、一例に示した50枚を超えるか否かで、搬送移動、カセット交換のいずれかを行うようにしても良い。
【0099】
これらにより、第1の動作モードで運用中に、大量の硬貨の入金が求められた場合、操作員は、端末機等において、動作モードの変更設定を行う。動作モードの変更設定は、操作選択が行いやすいように、「大量硬貨入金処理」と言うような処理名を作成して、選択設定させるようにしても良い。そして、顧客からの取引処理内容を把握したところで、硬貨処理装置10に通信可能な端末機において、「大量硬貨入金処理」を選択すると、硬貨処理装置10は、その時点でのプールカセット32内の収納枚数を確認し、上記した処理に基づいて、第1の動作モードから第2の動作モードへのモード変更動作を行う。すなわち、(1)プールカセット32内の硬貨をプールスタッカ39へ自動的に移動させる。(2)硬貨処理装置10または端末機の表示部に硬貨搬送予測時間を表示して、硬貨搬送を実行するかカセット交換を行うかの選択操作の入力を行わせる。(3)カセット交換の指示を表示して、カセット交換作業を促す。これらの動作、指示、作業後に、硬貨処理装置10は第1の動作モードから第2動作モードに設定変更され、入金部12への硬貨の投入を促す指示を表示部63に表示する。このとき、一回で150枚以上の硬貨の投入は避けられ、追加投入指示による入金作業が繰り返される。大量硬貨の入金がなされた結果は、各還流部33〜38およびプールスタッカ39への分配が可能であれば、これを行う。分配を行っても、分配しきれない硬貨が残ることが予測されたときは、上記したように、カセット交換を指示する。
【0100】
{第2の動作モードから第1の動作モードへの設定変更可能条件について}
通常は、上記の大量硬貨入金終了後に、第2の動作モードであったモードを、第1の動作モードに戻す作業となる。もともと第2の動作モードで運用中に、第1の動作モードに変更する必要性は少ない。例えば、オーバーフロー硬貨等を150枚以上収納したまま、装置運用を継続したときに変更される。第2の動作モードから第1の動作モードへの設定変更時には、プールスタッカ39に移動収納させた硬貨を、プールカセット32に収納し直す必要があるが、収納容量の問題は少ないので、上記した大量硬貨入金処理の終了後、プールカセット32がセットされていることを条件に、直ちに、搬送移動処理を行う。その際に、識別部20で識別および計数を行う。
【0101】
以上に述べた硬貨処理装置10によれば、第1の動作モードでは、プールスタッカ39を一時貯留部としプールスタッカ39よりも収納容量が大のプールカセット32を一括収納部とするため、入金処理時に少量の硬貨が投入される場合に好適となる。その場合に、各還流部33〜38でオーバーフローするオーバーフロー硬貨を収納容量が大のプールカセット32に収納可能となるため、オーバーフロー硬貨の硬貨量が多くなることによる装置停止の頻度を減らすことができる。他方、第2の動作モードでは、プールスタッカ39を一括収納部としプールスタッカ39よりも収納容量が大のプールカセット32を一時貯留部とするため、入金処理時に大量の硬貨が投入される場合に、一度に多くの硬貨を処理可能となり好適となる。よって、一時貯留部および一括収納部の両方の容量を増大させなくても、使い勝手性が向上し、利便性が良く、作業の効率化に繋がる。したがって、大型化を抑制しつつ使い勝手性を向上可能な硬貨処理装置10となる。しかも、例えば操作部62への操作で、第1の動作モード1と第2の動作モードとを、切り替えることができるため、操作者が所望する仕様を選択して、現金処理を行うことができる。
【0102】
また、第1の動作モードの第1のカセット収集処理時および第2の動作モードの第2のカセット収集処理時の両方で、装置本体11に対し着脱可能であってプールスタッカ39よりも収納容量が大のプールカセット32を一括収納カセットとするため、いずれの動作モードであっても、カセット収集処理時に金種別の還流部33〜38から多くの硬貨を回収することができる。
【0103】
また、第1の動作モードの第1のカセット補充処理時および第2の動作モードの第2のカセット補充処理時の両方で、装置本体11に対し着脱可能であってプールスタッカ39よりも収納容量が大のプールカセット32を一括収納カセットとするため、いずれの動作モードであっても、カセット補充処理時に金種別の還流部33〜38に多くの硬貨を補充することができる。