【課題】プラズマを生成させるためのマイクロ波にパルス的なマイクロ波電力を有するマイクロ波を利用しつつ、プラズマの点燈状態の維持安定性を向上させたプラズマを用いる処理装置、及び、処理方法を提供する。
【解決手段】本発明のプラズマ(25)を用いた処理装置(10)は、処理対象物(13)にプラズマ(25)を照射する処理を行う処理室(14)と、プラズマ(25)を生成させためのマイクロ波を処理室(14)内に供給するマイクロ波供給部(17)と、を備え、マイクロ波供給部(17)が、マイクロ波電力の最大値と最小値の差が第1幅以上のパルス的な第1マイクロ波電力を有する第1マイクロ波と、マイクロ波電力の変動の小さい定常的な第2マイクロ波電力を有する第2マイクロ波と、を供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、還元し難い材料等の還元を行うためには、プラズマ密度を高めることが考えられる。
また、プラズマは、還元以外にも使用することが可能であるが、この場合でもプラズマ密度が高いことで効率的な処理が行えるものと考えられる。
【0005】
そして、プラズマを発生させるために処理室に供給するマイクロ波のマイクロ波電力を高めることで、発生するプラズマ密度を高めることが可能であるが、この場合、例えば、マイクロ波を導入する部分に設けられる誘電体の窓周辺が高温になり、誘電体の窓にダメージを与えたり、パッキン等の劣化が激しいという問題がある。
【0006】
一方、マイクロ波電力をパルス的なものとすると、平均的なマイクロ波電力を低く抑えつつ、マイクロ波電力のピーク値(最大値)に対応したプラズマ密度のプラズマを発生させることが可能であり、マイクロ波を導入する部分に設けられる誘電体の窓周辺の温度を低くできる。
【0007】
しかしながら、マイクロ波電力をパルス的なものとすると、プラズマの点燈状態を安定して維持するのが難いという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、プラズマを生成させるためのマイクロ波にパルス的なマイクロ波電力を有するマイクロ波を利用しつつ、プラズマの点燈状態の維持安定性を向上させたプラズマを用いる処理装置、及び、処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の処理装置は、プラズマを用いた処理装置であって、前記処理装置は、処理対象物にプラズマを照射する処理を行う処理室と、前記プラズマを生成させためのマイクロ波を前記処理室内に供給するマイクロ波供給部と、を備え、前記マイクロ波供給部が、マイクロ波電力の最大値と最小値の差が第1幅以上のパルス的な第1マイクロ波電力を有する第1マイクロ波と、マイクロ波電力の変動の小さい定常的な第2マイクロ波電力を有する第2マイクロ波と、を供給する。
【0010】
(2)上記(1)の構成において、前記マイクロ波供給部は、前記第1マイクロ波を発生させる第1マイクロ波発生装置と、前記第2マイクロ波を発生させる第2マイクロ波発生装置と、前記第1マイクロ波と前記第2マイクロ波で共用され、前記第1マイクロ波及び前記第2マイクロ波を前記処理室内に導入する1つの誘電体の窓と、前記第1マイクロ波発生装置、及び、前記第2マイクロ波発生装置から前記誘電体の窓まで前記第1マイクロ波、及び、前記第2マイクロ波をガイドする導波部と、を備える。
【0011】
(3)上記(1)の構成において、前記マイクロ波供給部は、前記第1マイクロ波、及び、前記第2マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、前記マイクロ波発生装置で発生した前記第1マイクロ波、及び、前記第2マイクロ波を前記処理室内に導入する1つの誘電体の窓と、前記マイクロ波発生装置から前記誘電体の窓まで前記第1マイクロ波、及び、前記第2マイクロ波をガイドする導波部と、を備え、前記マイクロ波発生装置は、供給電力に応じたマイクロ波電力のマイクロ波を発生させるマイクロ波発生部と、前記マイクロ波発生部に電力を供給する電力供給部と、を備え、前記電力供給部が、前記第1マイクロ波電力に応じた電力と前記第2マイクロ波電力に応じた電力を前記マイクロ波発生部に供給可能である。
【0012】
(4)上記(1)の構成において、前記マイクロ波供給部は、前記第1マイクロ波を発生させる第1マイクロ波発生装置と、前記第2マイクロ波を発生させる第2マイクロ波発生装置と、前記第1マイクロ波を前記処理室内に導入する誘電体の第1の窓と、前記第1の窓との離間距離が30cm以内位置に設けられ、前記第2マイクロ波を前記処理室内に導入する誘電体の第2の窓と、前記第1マイクロ波発生装置から前記第1の窓まで前記第1マイクロ波をガイドする第1の導波部と、前記第2マイクロ波発生装置から前記第2の窓まで前記第2マイクロ波をガイドする第2の導波部と、を備える。
【0013】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つの構成において、前記処理装置が、複数の前記マイクロ波供給部を備える。
【0014】
(6)本発明の処理方法は、処理対象物にプラズマを照射する処理を行う処理方法であって、前記プラズマを発生させるためのマイクロ波に、マイクロ波電力の最大値と最小値の差が第1幅以上のパルス的な第1マイクロ波電力を有する第1マイクロ波と、マイクロ波電力の変動の小さい定常的な第2マイクロ波電力を有する第2マイクロ波と、が用いられている。
【0015】
(7)上記(6)の構成において、前記処理対象物が無水のハロゲン化物であり、前記処理がプラズマ化する気体に還元雰囲気を形成する水素原子を含むガスを用いた還元処理であり、前記還元処理によって、水素化物を生成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プラズマを生成させるためのマイクロ波にパルス的なマイクロ波電力を有するマイクロ波を利用しつつ、プラズマの点燈状態の維持安定性を向上させたプラズマを用いる処理装置、及び、処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0019】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る第1実施形態のプラズマを用いた処理装置10の斜視図であり、
図2は本発明に係る第1実施形態のプラズマを用いた処理装置10の断面図である。
【0020】
処理装置10は、処理対象物13(
図2参照)を収容し、処理対象物13にプラズマ25(
図2参照)を照射する処理を行う処理室14(
図1、及び、
図2参照)と、処理室14の上側に設けられ、プラズマ25を生成させためのマイクロ波を処理室14内に供給するマイクロ波供給部17(
図2参照)と、を備えている。
【0021】
具体的には、処理装置10は、処理室本体11と、処理室本体11の前側に設けられ、開閉操作時に掴む把手12aを有する扉12と、処理室本体11の開放口縁に設けられたパッキン材15と、を備えており、処理室本体11、扉12、及び、パッキン材15で、扉12を閉じると密閉空間となる処理室14が形成されるものになっている。
【0022】
また、
図2に示すように、マイクロ波供給部17は、第1マイクロ波を発生させる第1マイクロ波発生装置17aと、第2マイクロ波を発生させる第2マイクロ波発生装置17bと、第1マイクロ波と第2マイクロ波で共用され、第1マイクロ波及び第2マイクロ波を処理室14内に導入する1つの誘電体(例えば、石英やセラミック等)の窓17cと、第1マイクロ波発生装置17a、及び、第2マイクロ波発生装置17bから誘電体の窓17cまで第1マイクロ波、及び、第2マイクロ波をガイドする導波部17dと、を備えている。
【0023】
第1マイクロ波発生装置17aの発生する第1マイクロ波は、マイクロ波電力の最大値と最小値の差が第1幅以上のパルス的な第1マイクロ波電力を有するマイクロ波であり、第2マイクロ波発生装置17bの発生する第2マイクロ波は、マイクロ波電力の変動の小さい定常的な第2マイクロ波電力を有するマイクロ波である。
【0024】
本実施形態では、マイクロ波電力の最大値が約6キロワットで、マイクロ波電力の最小値が0キロワットであり、マイクロ波電力の最大値間の時間周期が30マイクロ秒であるパルス的な第1マイクロ波電力を有する第1マイクロ波を発生する第1マイクロ波発生装置17aを用いている。
なお、必ずしも、マイクロ波電力の最小値が0キロワットである必要はない。
【0025】
したがって、本実施形態では、第1マイクロ波発生装置17aの発生する第1マイクロ波は、マイクロ波電力の最大値と最小値の差である第1幅が6キロワットのパルス的な第1マイクロ波電力を有するマイクロ波になっている。
【0026】
ただし、第1幅は、大きい方が高い密度のプラズマ25を生成することができるものの、必ずしも、6キロワットである必要はなく、パルス的なマイクロ波電力とすることで平均電力を抑えつつ、高い密度のプラズマ25を生成することができるものになっていればよい。
【0027】
このことから、第1幅は、1キロワット以上であることが好ましく、1.5キロワット以上であることがより好ましく、さらに、2キロワット以上であることが好ましい。
【0028】
一方、導波部17dの設計によるが、マイクロ波電力の最大値が24キロワットを超えると、導波部17d内での放電を抑制するのが難しくなると考えられるため、第1幅は24キロワット以下であることが好ましく、放電をより抑制するために、15キロワット以下であることがより好ましく、さらに、10キロワット以下であることが好ましい。
【0029】
このため、上述のように、好ましいマイクロ波電力の最大値を考えると、第1幅は、24キロワット以下が好ましく、15キロワット以下がより好ましく、10キロワット以下が更に好ましい。
【0030】
なお、第1マイクロ波発生装置17aは、マイクロ波発生部(例えば、マグネトロン)と、マイクロ波発生部に電力を供給する電力供給部(電源装置ともいう。)と、を備え、電源装置として、平均使用電力の最大値が1.5キロワットのパルス型の電源装置を備えているため、上述のように、最大値が6キロワットのマイクロ波電力の第1マイクロ波を発生させることができるものとなっている。
【0031】
一方、第2マイクロ波発生装置17bも、マイクロ波発生部(例えば、マグネトロン)と、マイクロ波発生部に電力を供給する電力供給部(電源装置ともいう。)と、を備えているが、電源装置として、最大供給電力が1.5キロワットの直流型の電源装置を備えるものになっている。
【0032】
したがって、第2マイクロ波発生装置17bは、1.5キロワットまでの範囲で選択されるマイクロ波電力の変動の小さい定常的な第2マイクロ波電力を有する第2マイクロ波を発生させるものになっている。
【0033】
つまり、第2マイクロ波発生装置17bは、例えば、電源装置の電力の設定を1.0キロワットにすれば、1.0キロワットでほぼ一定のマイクロ波電力の第2マイクロ波を発生させ、電源装置の設定を0.6キロワットにすれば、0.6キロワットでほぼ一定のマイクロ波電力の第2マイクロ波を発生させる。
【0034】
そして、第1マイクロ波発生装置17aの発生する第1マイクロ波、及び、第2マイクロ波発生装置17bの発生する第2マイクロ波は、上述のように、マイクロ波電力の状態は異なるものの、マイクロ波としての周波数は同じであってよく、例えば、一般的なマグネトロンで発生させることができる2.45GHzの周波数でよい。
【0035】
なお、第1マイクロ波発生装置17aの発生する第1マイクロ波、及び、第2マイクロ波発生装置17bの発生する第2マイクロ波は、マイクロ波としての周波数が異なっていてもよく、また、周波数についても2.45GHzに限定される必要はなく、例えば、通信目的以外で使用できるISMバンドの5GHz、24.1GHz、915MHz、40.6MHz、27.1MHz及び13.56MHz等であってもよい。
【0036】
また、第1マイクロ波発生装置17aには、自身で発生させた第1マイクロ波の一部が反射等の影響で戻ってきて第1マイクロ波発生装置17aに入射すること、及び、第2マイクロ波発生装置17bで発生した第2マイクロ波の一部が第1マイクロ波発生装置17aに入射することを抑制するアイソレータを備えていてもよい。
【0037】
つまり、第1マイクロ波発生装置17aは、第1マイクロ波発生装置17aにマイクロ波(第1マイクロ波の一部、及び、第2マイクロ波の一部)が入射するのを抑制するアイソレータを備えていてもよい。
【0038】
同様に、第2マイクロ波発生装置17bも、第2マイクロ波発生装置17bにマイクロ波(第1マイクロ波の一部、及び、第2マイクロ波の一部)が入射するのを抑制するアイソレータを備えるものとしてもよい。
【0039】
このように、第1マイクロ波発生装置17a、及び、第2マイクロ波発生装置17bがマイクロ波の入射を抑制するアイソレータを備えることで、マイクロ波の入射による第1マイクロ波発生装置17a、及び、第2マイクロ波発生装置17bの劣化を抑制することができる。
【0040】
また、処理装置10は、
図1に示すように、前側の処理室本体11の左右一方側(図では右側)に設けられた処理開始ボタン21と、前側の処理室本体11の左右一方側(図では右側)に設けられた処理時間を設定するタイマー設定ダイヤル22と、前側の処理室本体11の左右一方側(図では右側)に設けられた処理時間を表示する処理時間表示部23と、を備えている。
【0041】
さらに、処理装置10は、
図2に示すように、処理室14の壁面(本例では右壁面)に開口するように設けられ、プラズマ化する気体を受け入れる受入口18aと、受入口18aから処理室14内に供給される気体を供給するための気体供給手段18(本例では、水素ガス供給手段)と、処理室14の壁面(本例では右壁面)に開口するように設けられ、処理室14内の気体を排出する排気口19aと、排気口19aから気体を排出するための気体排出手段19(本例では、真空ポンプ)と、を備えている。
【0042】
なお、真空ポンプには、吸引力が高く、処理室14内を速やかに真空(例えば、10Pa程度)にできるようにメカニカルブースターポンプを用いることが好ましい。
また、気体の貯蔵部であるボンベ又はタンクが処理装置10とは別体に設けられ、気体の貯蔵部から処理装置10まで気体供給配管で繋げる場合もあることから、気体供給手段18は、供給する気体の流量等を制御する流量制御装置までを意味し、気体の貯蔵部を含まない場合がある。
【0043】
そして、処理装置10は、処理室14の壁面(本例では下壁面)に開口する通気孔16aと、通気孔16aを通じて外気を処理室14内に取り込むか否かを制御するバルブ16と、を備えている。
【0044】
なお、処理装置10は、処理対象物13を配置するために処理室14内に設置され、複数の貫通孔の形成された載置台24も備えている。
ただし、載置台24は、処理対象物13を配置する部分に貫通孔を設けず、その載置する部分以外に貫通孔が設けられているものであってもよく、このようにすれば、処理対象物13が粉体である場合でも配置することができる。
【0045】
そして、扉12(
図1参照)を閉めると、扉12が処理室本体11にロックされ、そのロックに連動してバルブ16が閉じて、処理室14が密閉空間になるとともに、マイクロ波供給部17、気体供給手段18、及び、気体排出手段19の稼働が許可された動作可能モードになる。
【0046】
なお、扉12を開く場合には、把手12aを引くことになり、その引き操作に連動して扉12のロックが解除されるとともに、マイクロ波供給部17、気体供給手段18、及び、気体排出手段19の稼働が許可されない動作不能モードになるとともに、バルブ16が開き処理室14が常圧になって扉12を開けることができる。
【0047】
ただし、通気孔16aから外気を取り込む形態に限らず、例えば、通気孔16aに窒素や不活性ガスを供給する配管が接続されており、バルブ16が開くことで、処理室14に窒素や不活性ガス等の活性の低い(反応性の低い)ガスが供給されるようになっていてもよい。
【0048】
そして、扉12を開けて、載置台24に処理対象物13を配置して扉12を閉じて、処理時間表示部23を見ながらタイマー設定ダイヤル22を操作して処理時間を設定した後、処理開始ボタン21を押すと、処理対象物13にプラズマ25を照射する処理が開始される。
【0049】
具体的には、気体排出手段19が駆動して処理室14内の圧力が所定の圧力まで減圧されると、気体供給手段18が駆動して処理室14内にプラズマ化する気体(例えば、水素ガス)の供給が開始されるとともに、マイクロ波供給部17の第1マイクロ波発生装置17a、及び、第2マイクロ波発生装置17bが駆動してプラズマ25を生成させるためのマイクロ波(第1マイクロ波、及び、第2マイクロ波)の処理室14への供給が開始される。
【0050】
なお、高密度なプラズマ25(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)を安定して生成させるためには、処理室14内の圧力が低い方が有利であり、少なくとも処理室14内は10分の1気圧以下が好ましく、100分の1気圧以下がより好ましく、1000分の1気圧以下が更に好ましく、本実施形態では、所定の圧力を10000分の1気圧程度である約10Paにしている。
【0051】
そして、マイクロ波(第1マイクロ波、及び、第2マイクロ波)が窓17cを通じて処理室14内に供給されると、窓17cの処理室14内に露出した表面に表面波が形成され、この表面波のカットオフ角周波数で決まる密度以上の高密度なプラズマ25(本例では、高密度なマイクロ波表面波水素プラズマ)が生成される。
【0052】
なお、高密度なプラズマ25として点線で示す範囲は、プラズマ25の発光状態が目視できるほどプラズマ密度が高い範囲を模式的に示したものであり、密度は低いもののそれよりも外側にもプラズマが存在する。
【0053】
また、マイクロ波表面波プラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)は、電子密度が高いので照射されたマイクロ波はマイクロ波表面波プラズマの表面で反射されて内部には入らないがマイクロ波表面波プラズマの表面に沿う形で伝搬される。
【0054】
そして、設定された処理時間の間、高密度なプラズマ25(本例では、高密度なマイクロ波表面波水素プラズマ)による処理対象物13の処理が行われ、設定された処理時間が経過すると、マイクロ波供給部17の第1マイクロ波発生装置17a、及び、第2マイクロ波発生装置17bの駆動が停止するとともに、気体供給手段18の駆動が停止し、処理対象物13にプラズマ25を照射する処理が完了する。
【0055】
以上のような構成であれば、窓17cからマイクロ波電力の最大値と最小値の差が第1幅以上のパルス的な第1マイクロ波電力を有する第1マイクロ波の供給だけでなく、プラズマ25の点燈状態の維持(以下、点燈維持ともいう)を安定化させるマイクロ波電力の変動の小さい定常的な第2マイクロ波電力を有した第2マイクロ波の供給も行われる。
このため、第1マイクロ波のマイクロ波電力が小さくなるときでも、プラズマ25の点燈維持を安定して行うことができる。
【0056】
より詳細に説明すると、プラズマ25は、点燈開始時に必要なマイクロ波電力で発生するプラズマ密度P1未満の密度になると消えるのではなく、一度、点燈すれば、プラズマ密度P1よりも小さい点燈維持に必要なプラズマ密度P2を下回るまで点燈が維持できる。
【0057】
そして、パルス的な第1マイクロ波電力を有する第1マイクロ波では、マイクロ波電力の大きい時と小さい時があるが、マイクロ波電力が、例えば、0になったと同時に、プラズマ25の密度が点燈維持に必要なプラズマ密度P2未満になるわけではない。
【0058】
このため、第1マイクロ波電力のパルス周期(第1マイクロ波電力の最大値の現れる周期)が短ければ、直ぐに、大きなマイクロ波電力を有する第1マイクロ波が供給され、高いプラズマ密度となることで平均的に見て高いプラズマ密度のプラズマ25が維持される。
【0059】
しかし、処理室14内の状態(例えば、圧力等)によっては、マイクロ波電力が小さくなった時にプラズマ密度が点燈維持に必要なプラズマ密度P2を下回ることが起きる場合があり、パルス的な第1マイクロ波電力を有する第1マイクロ波だけを供給している態様であると、このようにプラズマ密度が低下した時にプラズマ25が消えることになる。
【0060】
しかしながら、プラズマ密度が点燈維持に必要なプラズマ密度P2未満にならないように、マイクロ波電力の変動の小さい定常的な第2マイクロ波電力を有した第2マイクロ波の供給を行っていることで、パルス的な第1マイクロ波電力を有する第1マイクロ波だけではプラズマ25のプラズマ密度が点燈維持に必要なプラズマ密度P2を下回るようなときでも、第2マイクロ波によってプラズマ25のプラズマ密度は点燈維持に必要なプラズマ密度P2以上を保つことができるので、安定してプラズマ25の点燈を維持することができる。
【0061】
具体的には、第1マイクロ波発生装置17aだけを駆動させた場合、第1マイクロ波発生装置17aの備えるパルス型の電源装置の供給電力の設定を最大の平均使用電力である1.5キロワットに設定して、第1マイクロ波発生装置17aのマイクロ波発生部(例えば、マグネトロン)に電力を供給すると、プラズマ25が点燈するが、その後、第1マイクロ波発生装置17aの備えるパルス型の電源装置の供給電力の設定を少し下げるように調整すると、ほどなくプラズマ25が点燈しなくなる。
【0062】
これは、パルス型の電源装置の供給電力の設定を下げることで最大のマイクロ波電力の時の値が下がるため、プラズマ25の平均的なプラズマ密度が低くなり、点燈維持に必要なプラズマ密度P2未満になる瞬間が発生しやすいためと考えられる。
【0063】
しかし、第2マイクロ波発生装置17bを駆動させている場合には、先に説明したように、プラズマ25のプラズマ密度が点燈維持に必要なプラズマ密度P2以上に保たれるため、第1マイクロ波発生装置17aの備えるパルス型の電源装置の供給電力の設定を半分以下に下げても安定してプラズマ25を点燈させ続けることができる。
【0064】
また、プラズマ25の点燈開始時には、先に説明したことからわかるように、点燈維持に必要なマイクロ波電力より大きなマイクロ波電力が必要なため、第2マイクロ波発生装置17bの直流型の電源装置の供給電力の設定を最大にする方が、プラズマ25の点燈が行いやすいが、一旦、プラズマ25が点燈すれば、直流型の電源装置の供給電力の設定を半分以下にしても問題なく、プラズマ25の点燈を維持することが可能であった。
【0065】
具体的には、マイクロ波電力が0.3キロワット程度の第2マイクロ波が窓17cから処理室14内に供給されていれば、安定したプラズマ25の点燈を維持することが可能であった。
【0066】
なお、上記では、処理装置10が1つのマイクロ波供給部17を備える場合について示したが、例えば、処理室14が大きい場合、処理装置10が、上述で説明したようなマイクロ波供給部17を複数備えるものとしてもよい。
【0067】
また、マイクロ波供給部17が備える第1マイクロ波発生装置17aが1つである必要はなく、より高密度なプラズマ25を得るために、マイクロ波供給部17が複数の第1マイクロ波発生装置17aを備えるものとしてもよく、その場合、導波部17dが、第2マイクロ波発生装置17bの発生する第2マイクロ波とそれら複数の第1マイクロ波発生装置17aの発生する複数の第1マイクロ波を窓17cにガイドするものにすればよい。
【0068】
(第2実施形態)
第1実施形態では、マイクロ波供給部17が第1マイクロ波発生装置17aと第2マイクロ波発生装置17bを備える場合について説明したが、必ずしも、2つのマイクロ波発生装置を備えるものとする必要はなく、第1実施形態で説明したのと同様のことは1つのマイクロ波発生装置でも実現することができ、以下、第2実施形態として、マイクロ波供給部17が1つのマイクロ波発生装置を備える場合について説明する。
なお、全体的な構成は第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と同様の点については説明を省略する場合がある。
【0069】
つまり、第2実施形態では、マイクロ波供給部17が第1マイクロ波、及び、第2マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置を備えるとともに、そのマイクロ波発生装置で発生した第1マイクロ波、及び、第2マイクロ波を処理室14内に導入する1つの誘電体の窓17cと、そのマイクロ波発生装置から誘電体の窓17cまで第1マイクロ波、及び、第2マイクロ波をガイドする導波部17dと、を備えるものとなる。
【0070】
この場合、例えば、
図2において、第1マイクロ波発生装置17aのところに、第1マイクロ波、及び、第2マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置を設けるとすれば、導波部17dは窓17cよりも図右側(第2マイクロ波発生装置17b側)に延在している必要はない。
【0071】
そして、第1マイクロ波、及び、第2マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置とするために、マイクロ波発生装置は、供給電力に応じたマイクロ波電力のマイクロ波を発生させるマイクロ波発生部(例えば、マグネトロン)と、マイクロ波発生部に電力を供給する電力供給部(電源装置)と、を備え、その電力供給部が、第1マイクロ波電力に応じた電力と第2マイクロ波電力に応じた電力をマイクロ波発生部に供給可能であるものとすればよい。
【0072】
つまり、電源装置が、第1電源部と、第2電源部と、を備え、第2電源部が、第2マイクロ波電力に応じた電力を出力し、第1電源部が、所定のタイミングで、その第2電源部の出力する電力に加える電力を出力し、電力の総和が、第1マイクロ波の最大となる第1マイクロ波電力に応じた電力になるようにして、所定のタイミングでは第1電源部と第2電源部の出力する電力を合わせた電力が1つのマイクロ波発生部(例えば、マグネトロン)に供給されるものとすれば、1つのマイクロ波発生部から第1マイクロ波、及び、第2マイクロ波を発生させることができるようになる。
【0073】
そして、このように構成されたマイクロ波供給部17の場合でも、窓17cに供給される第1マイクロ波のマイクロ波電力が小さくなるときに、マイクロ波電力の変動の小さい定常的な第2マイクロ波電力を有する第2マイクロ波が供給されている状態となるので、その第2マイクロ波によって、安定してプラズマ25の点燈を維持させることができる。
【0074】
なお、本実施形態でも、第1実施形態で述べたように、処理装置10が1つのマイクロ波供給部17を備えることに限定される必要はなく、処理室14が大きい場合に、処理装置10が、上述で説明したようなマイクロ波供給部17を複数備えるものとしてもよい。
【0075】
(第3実施形態)
図3は本発明に係る第3実施形態のプラズマを用いた処理装置10の断面図であり、
図2に対応する図になっている。
【0076】
なお、本実施形態においても、基本的な構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と異なるのは、マイクロ波供給部17の構成だけである。
したがって、以下では主にマイクロ波供給部17について説明し、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する場合がある。
【0077】
図3に示すように、本実施形態では、マイクロ波供給部17が、第1マイクロ波を発生させる第1マイクロ波発生装置17aと、第2マイクロ波を発生させる第2マイクロ波発生装置17bと、第1マイクロ波を処理室14内に導入する誘電体の第1の窓17caと、第1の窓17caとの離間距離が30cm以内位置に設けられ、第2マイクロ波を処理室14内に導入する誘電体の第2の窓17cbと、第1マイクロ波発生装置17aから第1の窓17caまで第1マイクロ波をガイドする第1の導波部17daと、第2マイクロ波発生装置17bから第2の窓17cbまで第2マイクロ波をガイドする第2の導波部17dbと、を備える。
【0078】
このような構成でも、第1の窓17caと第2の窓17cbが30cm以内と近くに存在するので、第1の窓17caに供給される第1マイクロ波のマイクロ波電力が小さくなるときに、第2の窓17cbから供給されるマイクロ波電力の変動の小さい定常的な第2マイクロ波電力を有する第2マイクロ波によって安定してプラズマ25の点燈が維持される。
なお、第1の窓17caと第2の窓17cbの離間距離は、20cm以内がより好ましく、15cm以内が、さらに、好ましく、10cm以内が最も好ましい。
【0079】
そして、本実施形態でも、マイクロ波供給部17が、複数の第1マイクロ波発生装置17aを備えるものとしてもよい。
この場合、共通の第1の窓17caに複数の第1マイクロ波発生装置17aの発生する第1マイクロ波を供給するように第1の導波部17daを構成するようにしてもよく、また、マイクロ波供給部17が、複数の第1の窓17caと、複数の第1マイクロ波発生装置17aの発生する第1マイクロ波を、それぞれの第1の窓17caにガイドする複数の第1の導波部17daと、を備えるものとしてもよい。
ただし、複数の第1の窓17caを備えるようにする場合でも、第2の窓17cbは、それぞれの第1の窓17caからの離間距離が30cm以内となる位置に設けられる。
【0080】
また、処理室14が大きい場合には、処理装置10が上述したマイクロ波供給部17を複数備えるものとしてもよい。
【0081】
以上、具体的な実施形態に基づいて、本発明について説明してきたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されるものではない。
【0082】
上記実施形態の態様に触れればわかるように、本明細書には、処理対象物13にプラズマ25を照射する処理を行う処理方法も開示されているものであって、その処理方法は、プラズマ25を発生させるためのマイクロ波に、マイクロ波電力の最大値と最小値の差が第1幅以上のパルス的な第1マイクロ波電力を有する第1マイクロ波と、マイクロ波電力の変動の小さい定常的な第2マイクロ波電力を有する第2マイクロ波と、が用いられているものであり、この第2マイクロ波によってプラズマ25の点燈維持安定性が高められる。
【0083】
また、上記では、プラズマ化する気体が水素ガスである場合について示したが、例えば、メタン、プロパンといった炭化水素ガスであっても、水素ガスと同様に、処理対象物13を還元処理することができるプラズマ25を生成することができ、還元処理を行いたい場合のプラズマ化する気体は、水素ガスに限定されず、炭化水素ガスであってもよい。
【0084】
例えば、無水のハロゲン化物[例えば、ハロゲン化アルカリ土類金属(フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウム、及び、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等のハロゲン化カルシウム)や、ハロゲン化アルカリ金属(フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム)]を水素化する還元処理[例えば、水素化アルカリ土類金属(水素化マグネシウム、水素化カルシウム)や、水素化アルカリ金属(水素化リチウム)を生成する処理]は、プラズマ化する気体に還元雰囲気を形成するガスを用いるだけでなく、一般的なプラズマよりも高密度なプラズマ25(マイクロ波表面波プラズマ)が必要であるため、上記処理方法は、このような処理を行うのに好適な処理方法である。
【0085】
したがって、上記処理方法の好適な一例としては、処理対象物13が無水のハロゲン化物(ハロゲン化土類金属、ハロゲン化アルカリ金属等)であり、プラズマ化する気体に還元雰囲気を形成する水素原子を含むガス(水素ガス、炭化水素ガス等)を用い、その処理対象物13を還元処理して、水素化物(水素化アルカリ土類金属、水素化アルカリ金属等)を生成するものが挙げられる。
【0086】
逆に、酸化処理を行いたい場合には、プラズマ化する気体に酸素ガスを用いればよく、また、アルゴン等の希ガスを加えることでプラズマ25の点燈維持安定性がより高くなることから、プラズマ化する気体に、還元雰囲気を形成する水素原子を含むガス(水素ガス、炭化水素ガス)を用いる場合でも酸素ガスを用いる場合でも希ガスを混合するようにしてもよい。
【0087】
このように、本発明は具体的な実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。