【解決手段】ICソケットのコンタクト30は、コンタクトビーム31と被保持部32を有する。被保持部32は、ハウジングの貫通孔に挿し込まれて保持される。被保持部32は、平板状の基部321と一対の側部322とを有する。側部322は、基部321の両側各々において基部321との間にスリット323を挟み基部321に対し角度をもって立ち上がっている。これにより、被保持部32は、ハウジング20の平板部21の第1面211と平行な向きの断面が、基部321および側部322により略U字形状を成している。
平板部を有し該平板部の第1面に対面した位置にICが配置されるハウジングと、各コンタクトビームが該第1面から外方に突き出た状態に配列され、配置されたICに接触して該ICと電気的に導通する複数のコンタクトとを備えたICソケットであって、
前記複数のコンタクトの各々が、前記平板部に設けられた貫通孔に挿し込まれて該平板部に保持された被保持部と、該被保持部から延びるコンタクトビームとを備え、
前記被保持部が、平板状の基部と、前記第1面と平行な向きの断面が該基部を含め略U字形状となるように、該基部の両側各々において該基部に対し角度をもって立ち上がった一対の側部とを有することを特徴とするICソケット。
前記被保持部が、前記貫通孔の内壁面により該側部どうしが互いに近づく向きに押されて該側部が弾性変形し、該側部の立ち上がった先端と、該基部の前記断面上の両端とが該内壁面に接触することで該貫通孔内に保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載のICソケット。
前記コンタクトビームが、前記第1面に対し斜めに延出し、延出した先端にICに接触する接触部を有し、該接触部を有する先端部を除いた部分が均一の幅を有することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のICソケット。
前記コンタクトビームが、該コンタクトビームの延出方向の中間部に、前記第2のスリットを分断して前記2本のサブビームどうしを繋ぐ梁を有することを特徴とする請求項6に記載のICソケット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上掲の特許文献1に開示されているICソケットの各コンタクトは、ハウジングに設けられたコンタクト保持孔内に挿し込まれた被保持部と、ハウジングから突き出た弾性アームとを有する。この特許文献1に開示されたICソケットのコンタクトの被保持部は平板形状を有する。
【0006】
ここで、コンタクトは、隣接して配列されたコンタクトからの影響を受けるため、その影響を考慮した信号伝送性能を評価する必要がある。
【0007】
この特許文献1に開示されたICソケットのコンタクトのように被保持部が平板形状の場合、被保持部の平板が広がる方向に隣接して配列された隣のコンタクトとの間の被保持部どうしの距離と、その平板が広がる方向とは交わる方向に隣接して配列された隣のコンタクトとの間の被保持部どうしの距離が大きく異なる。このため、隣接して配列されたコンタクトからの影響のレベルが、そのコンタクトに隣接する方向によって異なることになる。影響のレベルが方向によって異なると、信号伝送性能の劣化につながる。したがって、特許文献1のコンタクトでは、100GHzもの高速信号を伝送することは極めて難しい。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、特許文献1のICソケットと比べ高速信号の伝送に優れたICソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明のICソケットは、
平板部を有しその平板部の第1面に対面した位置にICが配置されるハウジングと、各コンタクトビームが第1面から外方に突き出た状態に配列され、配置されたICに接触してICと電気的に導通する複数のコンタクトとを備えたICソケットであって、
複数のコンタクトの各々が、上記平板部に設けられた貫通孔に挿し込まれてその平板部に保持された被保持部と、その被保持部から延びるコンタクトビームとを備え、
上記被保持部が、平板状の基部と、上記第1面と平行な向きの断面が基部を含め略U字形状となるように、基部の両側各々において基部に対し角度をもって立ち上がった一対の側部とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のICソケットは、被保持部が略U字形状に形成されている。このため、被保持部が平板形状の場合と比べ、周囲のコンタクトから受ける影響が、隣接するコンタクトの、隣接する方向によらず均一化される。したがって、本発明のICソケットは、このコンタクトを採用したことにより、高速信号の伝送に優れたICソケットとなる。
【0011】
ここで、本発明のICソケットにおいて、上記被保持部が、基部と一対の側部の各々との間に第1のスリットを有することが好ましい。
【0012】
また、本発明のICソケットにおいて、上記被保持部が、上記貫通孔の内壁面により該側部どうしが互いに近づく向きに押されて側部が弾性変形し、側部の立ち上がった先端と、基部の上記断面上の両端とが貫通孔の内壁面に接触することで貫通孔内に保持されていることが好ましい。
【0013】
側部を弾性変形させることにより、被保持部が貫通孔内に安定的に保持される。
【0014】
また、側部を弾性変形させる構成において上記の第1のスリットが形成されていると、側部の弾性変形のばね力が調整され、さらに、貫通孔の内壁面に、側部の立ち上がった先端だけでなく基部のエッジも接触する。このため、この第1のスリットが形成されていることにより、被保持部が貫通孔内に一層安定的に保持される。
【0015】
あるいは、本発明のICソケットにおいて、上記被保持部は、圧入により貫通孔に保持されていてもよい。
【0016】
圧入によっても、被保持部を貫通孔内に安定的に保持させることができる。
【0017】
また、被保持部を貫通孔内に圧入によって保持させる構成において上記の第1のスリットが形成されていると、折り曲げ加工時に、基部に対し側部を正確な角度に折り曲げやすい。
【0018】
さらに、本発明のICソケットにおいて、上記コンタクトビームが、上記第1面に対し斜めに延出し、延出した先端にICに接触する接触部を有し、その接触部を有する先端部を除いた部分が均一の幅を有することも好ましい態様である。
【0019】
例えば伝送される信号の電圧や電流、差動信号か否かなど、伝送される信号の性質によっては、均一幅のコンタクトビームを備えることも高速信号伝送に寄与することになる。
【0020】
ここで、本発明のICソケットにおいて、均一幅のコンタクトビームを備えた場合に、そのコンタクトビームは、互いの間に形成された第2のスリットを間に挟んだ2本のサブビームを有することが好ましい。
【0021】
高速信号伝送には、コンタクトビーム全体の幅が重要である。すなわち、コンタクトビームが、間にスリットを挟んだ2本のサブビームで構成されているか、あるいは、スリットのない、一体のビームとして構成されているかは重要ではない。スリットを間に挟んだ2本のサブビームでコンタクトビームを構成すると、コンタクトビームのばね性を適度に調整することができる。
【0022】
ここで、コンタクトビームが2本のサブビームを有する構成において、コンタクトビームが、そのコンタクトビームの延出方向の中間部に、上記第2のスリットを分断して2本のサブビームどうしを繋ぐ梁を有することが好ましい。
【0023】
この梁を設けると、中間部におけるコンタクトビームの幅寸法の変動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の本発明によれば、高速信号の伝送に優れたICソケットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明の第1実施形態のICソケットを構成するハウジングとコンタクトとを示した斜視図である。
【0028】
ここで、ICソケット10Aのハウジング20は平板部21を有し、その平板部21には、実際には、例えば4000本もの多数のコンタクト30が配列されている。ただし、その配列は、同一形状のコンタクトの配列である。したがって、ここでの説明には、この
図1に示す、ハウジング20の平板部21のごく一部と少数本のコンタクト30のみで十分である。なお、一般的なICソケットは広く知られており、ここでは、ICソケット全体の図示および説明は省略する。
【0029】
ICソケット10Aは、この
図1に示すように、平板部21を有するハウジング20と、複数のコンタクト30とを備えている。平板部21の第1面211と対面した位置にはIC(不図示)が配置される。ハウジング20の平板部21には、第1面211と第2面212とに貫通した多数の貫通孔22が形成されている。そして、各コンタクト30は、各貫通孔22に挿し込まれてハウジング20に保持されている。各コンタクト30は、第1面211から外方に突き出るコンタクトビーム31を有する。第1面211に対面した位置にICが配置されると、コンタクトビーム31がICのパッド(不図示)に接触してICと電気的に導通する。また、この
図1には、第2面212側においてコンタクト30に固定された半田ボール40(
図2(A)を合わせて参照)が示されている。
【0030】
本実施形態のICソケット10Aの特徴は、コンタクト30の形状にあり、以下では、コンタクト30について説明する。
【0031】
図2は、
図1に示したICソケットを構成する1本のコンタクトを示した図である。ここで、
図2(A)は、半田ボール付きのコンタクトの側面図、(B)は、半田ボールが付いていない状態のコンタクトの側面図である。また、
図2(C)は、コンタクトの斜視図である。この
図2には、貫通孔22に挿し込まれた後の形状のコンタクト30が示されている。
【0032】
コンタクト30は、
図1に示したコンタクトビーム31のほか、被保持部32および半田ボール保持部33を備えている。半田ボール保持部33には、
図2(A)に示すように、半田ボール40が保持される。
【0033】
また、被保持部32は、ハウジング20の平板部21に設けられた貫通孔22に挿し込まれて平板部21に保持される。
【0034】
ここで、被保持部32は、平板状の基部321と一対の側部322とを有する。一対の側部322は、基部321の両側各々において基部321に対し角度をもって立ち上がっている。これにより、この被保持部32は、ハウジング20の平板部21の第1面211と平行な向きの断面が、基部321および一対の側部322とにより、略U字形状を成している。ここで、本実施形態における被保持部32は、基部321と一対の側部322の各々との間にスリット323が形成されている。
【0035】
このコンタクト30のコンタクトビーム31は、基部321から幅広部312を介して、ハウジング20の平板部21の第1面211に対し斜めに立ち上がっている。そして、コンタクトビーム31は、その斜めに立上った先端側ほど狭幅となっており、その先端にICに接触する接触部311を有する。
【0036】
幅広部312は、コンタクトビーム31に隣接した位置にキャリアカット部313を有する。キャリアカット部313は、比較的剛性の高い幅広部312に設けられているので、キャリア(不図示)の折取りを容易にする。
【0037】
また、幅広部312の中央には略矩形の開口314が形成されている。開口314の下端縁315は、コンタクト30を貫通孔22内に圧入する際に、圧入治具(不図示)により押圧される面である。
【0038】
図3は、
図1に示したICソケットおよび1本のコンタクトの側面図である。
【0039】
また、
図4は、
図3に示した矢印A−Aに沿う断面(A)と、その断面の中の1本のコンタクトおよびその周囲の部分の拡大断面(B)を示した図である。
図3には、ハウジング20から独立したコンタクト30が示されている。ただし、これは、コンタクト30の断面箇所を示すためのものであって、
図4には、ハウジング20から独立したコンタクト30は示されていない。この
図4に示す、
図3に示す矢印A−Aに沿う断面は、すなわち、ハウジング20の平板部21の第1面211と平行な向きの断面である。
【0040】
また、
図5は、
図3に示した矢印B−Bに沿う断面(A)と、その断面の中の1本のコンタクトおよびその周囲の部分の拡大断面(B)を示した図である。この
図5においても、ハウジング20から独立したコンタクト30は示されていない。この
図5に示す、
図3に示す矢印B−Bに沿う断面も、
図4と同様、ハウジング20の平板部21の第1面211と平行な向きの断面である。
【0041】
前述したとおり、
図2には、貫通孔22に挿し込まれた後の形状のコンタクト30が示されている。すなわち、
図2に示したコンタクト30の被保持部32の一対の側部322は、同じ向きに互いに平行に延びている。ただし、これは、一対の側部322が、貫通孔22の内壁面により側部322どうしが互いに近づく向きに押されて側部322が弾性変形した後の形状である。これら一対の側部322は、貫通孔22に挿し込まれる前は、側部322の、立ち上がった先端322aが、
図4,
図5に示すよりも互いに互いに離れる向きに、互いに広がった形状となっている。コンタクト30の被保持部32が貫通孔22内に挿し込まれると、貫通孔22の内壁面により側部322どうしが互いに近づく向きに押されて側部322が弾性変形する。この弾性変形により、側部322の立ち上がった先端322aの一隅と、基部321の、矢印A−Aに沿う断面上の両端321aの一隅とが貫通孔22の内壁面に合計4点で接触し、被保持部32が貫通孔22内に安定的に保持される。
【0042】
また、この被保持部32を略U字形状に形成したことで、単なる平板状の被保持部を備えたコンタクトと比べ、周囲に存在するコンタクト30との間の距離dが方向によらず均一化され、これにより高速信号伝送を可能としている。
【0043】
ここで、本実施形態のコンタクト30の被保持部32は、基部321と一対の側部322の各々との間に略U字形状のスリット323を有する。このスリット323は、本発明にいう第1のスリットの一例に相当する。このスリット323が形成されていることで、側部322の弾性変形のばね力が調整されている。また、このスリット323が形成されていることで、基部321の両端321aの隅にエッジが形成され、そのエッジが貫通孔22の内壁面に接触する。このように、このスリット323が形成されていることにより、被保持部32が貫通孔22内に一層安定的に保持される。
【0044】
以上で、第1実施形態の説明を終了し、次に、第2実施形態について説明する。この第2実施形態の説明では、第1実施形態のICソケット10Aを構成する各要素と対応する要素には、形状等の相違があっても同一の符号を付して示す。
【0045】
図6は、本発明の第2実施形態のICソケットを構成するハウジングとコンタクトとを示した斜視図である。
図6(A)と
図6(B)は、互いに異なる視点から眺めたときの形状のICソケットを示している。
【0046】
ICソケット10Bのハウジング20は平板部21を有し、その平板部21には、実際には、例えば4000本もの多数のコンタクト30が配列されている。ただし、その配列は、同一形状のコンタクトの配列である。したがって、ここでの説明には、この
図6に示す、ハウジング20の平板部21のごく一部と少数本のコンタクト30のみで十分である。なお、一般的なICソケットは広く知られており、ここでは、ICソケット全体の図示および説明は省略する。
【0047】
ICソケット10Bは、この
図6に示すように、平板部21を有するハウジング20と、複数のコンタクト30とを備えている。平板部21の第1面211に対面した位置にはIC(不図示)が配置される。ハウジング20の平板部21には、第1面211と第2面212とに貫通した多数の貫通孔22が形成されている。そして、各コンタクト30は、各貫通孔22に挿し込まれてハウジング20に保持されている。各コンタクト30は、第1面211から外方に突き出るコンタクトビーム31を有する。第1面211に対面した位置にICが配置されると、コンタクトビーム31がICのパッド(不図示)に接触してICと電気的に導通する。また、この
図6には、第2面212側においてコンタクト30に固定された半田ボール40が示されている。
【0048】
本第2実施形態のICソケット10Bの特徴は、第1実施形態の場合と同様、コンタクト30の形状にあり、以下では、コンタクト30について説明する。
【0049】
図7は、
図6に示したICソケットを構成する1本のコンタクトを示した図である。ここで、
図7(A),(B)は、互いに異なる視点から眺めたときのコンタクトの斜視図である。また、
図7(C)は背面図、
図7(D)は左側面図である。この
図7には、半田ボールは示されていない。また、この
図7には、貫通孔22に挿し込まれた後の形状のコンタクト30が示されている。
【0050】
コンタクト30は、
図6に示したコンタクトビーム31のほか、被保持部32および半田ボール保持部33を備えている。半田ボール保持部33には、
図6および後述する
図8(A)に示すように半田ボール40が保持される。
【0051】
また、被保持部32は、ハウジング20の平板部21に設けられた貫通孔22に挿し込まれて平板部21に保持される。コンタクトビーム31は、貫通孔22に挿し込まれる被保持部32から延びている。
【0052】
ここで、被保持部32は、平板状の基部321と一対の側部322とを有する。一対の側部322は、基部321の両側各々において基部321に対し角度をもって立ち上がっている。これにより、この被保持部32は、ハウジング20の平板部21の第1面211と平行な向きの断面が、基部321および一対の側部とにより、略U字形状を成している。ここで、本実施形態における被保持部32は、基部321と一対の側部322の各々との間にスリット323が形成されている。この被保持部32については、コンタクトビーム31の説明の後、さらに説明を加える。
【0053】
コンタクトビーム31は、ハウジング20の平板部21の第1面211に対し斜めに立ち上がっている。そして、コンタクトビーム31は、斜めに延在した先端にICに接触する接触部311を有する。さらに、コンタクトビーム31は、
図7(C)に示すように、その接触部311を有する先端部を除いた部分が均一の幅Wを有する。この第2実施形態の場合、コンタクトビーム31が均一の幅Wを有することが、高速信号伝送を可能とする1つの要因となっている。ここで、コンタクトビーム31は、2本のサブビーム316を有する。これら2本のサブビーム316は、スリット317を間に挟んで互いに平行に延びている。このスリット317は、本発明にいう第2のスリットの一例に相当する。スリット317を間に挟んだ2本のサブビーム316でコンタクトビーム31を構成すると、コンタクトビーム31のばね性を適度に調整することができる。高速信号伝送性能は、コンタクトビーム31の全体の幅Wでほぼ決定されるため、コンタクトビーム31を2本のサブビーム316で構成することは、高速信号伝送性能には大きな影響は与えない。
【0054】
図8は、
図6に示したICソケットの正面図(A)と、
図8(A)に示した矢印X−Xに沿う断面図(B)と、
図8(B)の部分拡大図(C)である。
【0055】
図8(B),(C)には、コンタクト30の被保持部32の、矢印X−Xに沿う向きの断面、すなわち、ハウジング20の平板部21の第1面211と平行な向きの断面が示されている。
【0056】
前述したとおり、
図7には、貫通孔22に挿し込まれた後の形状のコンタクト30が示されている。すなわち、
図7に示したコンタクト30の被保持部32の一対の側部322は、基部321から見て同じ向きに互いに平行に延びている。ただし、これは、一対の側部322が、貫通孔22の内壁面により側部322どうしが互いに近づく向きに押されて側部322が弾性変形した後の形状である。これら一対の側部322は、貫通孔22に挿し込まれる前は、側部322の、立ち上がった先端322aが、
図4,
図5に示すよりも互いに互いに離れる向きに、互いに広がった形状となっている。コンタクト30の被保持部32が貫通孔22内に挿し込まれると、貫通孔22の内壁面により側部322どうしが互いに近づく向きに押されて側部322が弾性変形する。この弾性変形により、側部322の立ち上がった先端322aの一隅と、基部321の、矢印X−Xに沿う断面上の両端321aの一隅とが貫通孔22の内壁面に合計4点で接触し、被保持部32が貫通孔22内に安定的に保持される。また、この被保持部32を略U字形状に形成したことで、単なる平板状の被保持部を備えたコンタクトと比べ、周囲に存在するコンタクト30との間の距離dが方向によらず均一化され、高速信号伝送を可能としている。
【0057】
ここで、本実施形態のコンタクト30の被保持部32は、基部321と一対の側部322の各々との間に略U字形状のスリット323を有する。このスリット323は、本発明にいう第1のスリットの一例に相当する。このスリット323が形成されていることで、側部322の弾性変形のばね力が調整されている。また、このスリット323が形成されていることで、基部321の両端321aの隅にエッジが形成され、そのエッジが貫通孔22の内壁面に接触する。このように、このスリット323が形成されていることにより、被保持部32が貫通孔22内に一層安定的に保持される。
【0058】
図9は、第2実施形態におけるコンタクトの変形例を示した、
図7と同様な図である。
【0059】
ここでは、
図7に示したコンタクトの要素と対応する要素には
図7において付した符号と同じ符号を付して示し、相違点についてのみ説明する。
【0060】
この
図9に示したコンタクト30には、コンタクトビーム31に設けられているスリット317を分断してサブビーム316どうしを繋ぐ梁318が設けられている。
【0061】
2本のサブビーム316は、長く延びている。このため、コンタクト30の材質や厚み等によっては、配置されたICで押されることなどにより、コンタクトビーム31に、その幅Wを変化させる変形を生じさせるおそれがある。コンタクトビーム31の幅Wが変化すると、信号伝送性能が変化する。そこで、コンタクトビーム31の幅Wが変化するおそれがあるときは、
図9に示すように、梁318を設けてもよい。前述したとおり、高速信号伝送性能は、コンタクトビーム32の全体の幅Wでほぼ決定されるため、梁318を設けても、高速信号伝送性能に与える影響はほとんどない。
【0062】
なお、上述の第1実施形態および第2実施形態とその変形例では、被保持部32にスリット323が設けられていたが、被保持部はスリットを有さなくてもよい。この場合、被保持部の基部の両端は、エッジではなく、側部に連続するアール部でハウジングの貫通孔の内壁面に接触する。
【0063】
以上で第2実施形態の説明を終了し、次に、第3実施形態について説明する。この第3実施形態の説明においても、第1実施形態のICソケット10Aを構成する各要素と対応する要素には、形状等の相違があっても同一の符号を付して示す。
【0064】
上述の第1実施形態および第2実施形態と同様、本第3実施形態のICソケット10Cの特徴もコンタクト30の形状にあり、以下では、コンタクト30について説明する。なお、ここでは、第1実施形態における
図1に相当する図の提示は省略する。
【0065】
図10は、第3実施形態のICソケットを構成する1本のコンタクトを示した図である。ここで、
図10(A)はコンタクトの側面図である。また、
図10(B)は、コンタクトの斜視図である。
【0066】
コンタクト30は、コンタクトビーム31、被保持部32および半田ボール保持部33を備えている。半田ボール保持部33には、
図11に示すように半田ボール40が保持される。
【0067】
また、被保持部32は、ハウジング20の平板部21に設けられた貫通孔22に挿し込まれて平板部21に圧入により保持される。
【0068】
ここで、被保持部32は、平板状の基部321と一対の側部322とを有する。一対の側部322は、基部321の両側各々において基部321に対しほぼ直角に立ち上がっている。これにより、この被保持部32は、基部321および一対の側部とにより、ハウジング20の平板部21の第1面211と平行な向きの断面が略U字形状を成している。
【0069】
ここで、上述の第1実施形態および第2実施形態の場合は、一対の側部322は基部321から互いに開いた角度をもって立ち上がっている。そして、それら一対の側部322は、貫通孔22に挿入されることにより弾性変形して、基部321からほぼ垂直に立ち上がった状態となる。これに対し、この第3実施形態の場合は、一対の側部322は、貫通孔22に挿入(圧入)される前の、単独のコンタクト30の状態にあるときから、基部321から垂直に立ち上がっている。この第3実施形態のコンタクト30の被保持部32は貫通孔22内に圧入されるため、側部322のばね力は不要だからである。また、一対の側部322の各々には、基部321から立ち上がった先端に、貫通孔22(
図12,13参照)への圧入を可能にするための圧入突起322b,322cが形成されている。
【0070】
また、本実施形態におけるコンタクト30の被保持部32にも、基部321と一対の側部322の各々との間にスリット323が形成されている。この第3実施形態の場合、このスリット323には、側部322のばね力の調整の意味合いはない。このスリット323は、基部321に対する側部322の正確な角度への折り曲げを容易にするためである。
【0071】
このコンタクト30のコンタクトビーム31は、基部321〜幅広部312を介して、ハウジング20の平板部21の第1面211に対し斜めに立ち上がっている。そして、コンタクトビーム31は、その斜めに立上った先端側ほど狭幅となっており、その先端にICに接触する接触部311を有する。
【0072】
幅広部312は、コンタクトビーム31に隣接した位置にキャリアカット部313を有する。キャリアカット部313は、比較的剛性の高い幅広部312に設けられているので、キャリア(不図示)の折取りを容易にする。
【0073】
また、幅広部312の中央には略矩形の開口314が形成されている。開口314の下端縁315は、コンタクト30を貫通孔22内に圧入する際に、圧入治具(不図示)により押圧される面である。
【0074】
図11は、この第3実施形態のICソケットおよび1本のコンタクトの側面図である。
【0075】
また、
図12は、
図11に示した矢印A−Aに沿う断面(A)と、その断面の中の1本のコンタクトおよびその周囲の部分の拡大断面(B)を示した図である。
図11には、ハウジング20からは独立したコンタクト30が示されている。ただし、これは、コンタクト30の断面箇所を示すためのものであって、
図12には、ハウジング20から独立したコンタクト30は示されていない。この
図12に示す、
図11に示す矢印A−Aに沿う断面は、すなわち、ハウジング20の平板部21の第1面211と平行な向きの断面である。
【0076】
また、
図13は、
図11に示した矢印B−Bに沿う断面(A)と、その断面の中の1本のコンタクトおよびその周囲の部分の拡大断面(B)を示した図である。この
図13においても、ハウジング20から独立したコンタクト30は示されていない。この
図13に示す、
図11に示す矢印B−Bに沿う断面も、
図12と同様、ハウジング20の平板部21の第1面211と平行な向きの断面である。
【0077】
図12,
図13に示す通り、この第3実施形態におけるハウジング20の平坦部21に設けられている貫通孔22は、断面が矩形の貫通孔である。上述の第1実施形態および第2実施形態の場合、貫通孔22は、基板への孔開け加工より形成される。このため、貫通孔22は断面が円形となっている。これに対し、この第3実施形態の場合、ハウジング20は、射出成形により形成される。このため、円形あるいは矩形のいずれの形の貫通孔22も可能である。ここでは、貫通孔22は、コンタクト30の被保持部32の圧入用であり、円形である必要はない。そこで、ここでは、略U字形状の断面をもつ被保持部32の形状に合わせて、矩形断面の貫通孔22としている。
【0078】
このコンタクトの被保持部32が貫通孔22に圧入されると、側部322の先端の圧入部322b,322cが貫通孔22の内壁に食い込み、基部321が、貫通孔22の内壁の一面に強く押し当てられる。これにより、被保持部32が貫通孔22内に安定的に保持される。
【0079】
また、この被保持部32を略U字形状に形成したことで、単なる平板状の被保持部を備えたコンタクトと比べ、周囲に存在するコンタクト30との間の距離dが方向によらず均一化され、これにより高速信号伝送を可能としている。
【0080】
ここで、この第3実施形態では、コンタクト30の被保持部32は圧入部322b,322cの貫通孔22の内壁への食い込みにより、圧入されている。一方、この第3実施形態の場合、基部321の広がる向き(圧入部322b,322cが突き出た向きとは直角の向き)には、圧入されていない。そこで、スリット323の形成時に
図12に示す一対の突起324を側部323よりも外向きに突き出る長さの突起とし、貫通孔22の内壁に食い込ませることにより、さらに強固な圧入を行ってもよい。
【0081】
あるいは、圧入部322b,322cによる圧入で十分な場合は、被保持部32は、スリット323を有さなくてもよい。
【0082】
また、この第3実施形態におけるコンタクト30のコンタクトビーム31は、第1実施形態と同じく、立ち上がった先端側ほど狭幅に形成されている。ただし、この第3実施形態のように圧入する構成の被保持部32を有するコンタクト30の場合も、第2実施形態やその変形例と同様に、均一幅のコンタクトビーム31を備えていてもよい。