【解決手段】本発明にかかる牽引具200は、ケーブル104が敷設された管路102の中に紐130を引き込む牽引具であって、多数本の繊維を束ねた紡錘形の房122と、長手方向に筒となる二重構造213の帯状体202と、帯状体の長手方向の両縁208、210に装着された通線ロッド204、206を有する伸長ノズル201とを備え、房には、紐が取り付けられていて、伸長ノズルは、帯状体の二重構造の中に紐を通していて、管路の中に房とともに繰り出され、二重構造の中にエアが圧送されることを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、防災対策として、管路とケーブルとの間の隙間に、消火剤を圧入可能な消火チューブを管路の全域にわたって引き込むという着想を得た。このようにすれば、OFケーブルが発火する事態において、発火部位の熱により消火チューブが破れて、消火剤が発火部位に噴射されることで消火が可能となる。
【0008】
この防災対策を実現するために、特許文献1に記載の工法を適用して、管路の中に消火チューブを引き込むことが考えられる。しかし本発明者らが検証したところ、パラシュート状の牽引部材ではパラシュートの脇に風が逃げてしまい、風を十分に受けることができず、牽引具が管路内を十分に移動することは困難であった。
【0009】
また管路内にエアを圧送すると、管路の継手部からエアが漏れる場合や、管路に欠損があると、その部位(管路欠損部)からエアが漏れる場合もあり得る。このような場合、牽引具は、管路欠損部より先に進むことができない。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑み、ケーブルが敷設された管路の中に消火チューブを確実に引き込むことができる牽引具および牽引方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる牽引具の代表的な構成は、ケーブルが敷設された管路の中にラインを引き込む牽引具であって、多数本の繊維を束ねた紡錘形の房と、長手方向に筒となる二重構造の帯状体と、帯状体の長手方向の両縁に装着された通線ロッドを有する伸長ノズルとを備え、房には、ラインが取り付けられていて、伸長ノズルは、帯状体の二重構造の中にラインを通していて、管路の中に房とともに繰り出され、二重構造の中にエアが圧送されることを特徴とする。
【0012】
上記構成の牽引具は、多数本の繊維を束ねた紡錘形の房と、伸長ノズルとを備えている。伸長ノズルは、長手方向に筒となる二重構造の帯状体であり、その長手方向の両縁に通線ロッドが装着されている。換言すれば、伸長ノズルは、2本の通線ロッドを帯状体によってつないだ構造である。また見方を変えれば、伸長ノズルは、ホースを畳んで、その両側を2本の通線ロッドで補強した構造である。二重構造の帯状体の幅の長さは、管路内径と、管路とケーブルとの隙間の大きさに合わせて適宜設定される。このため、ケーブルが敷設された管路とケーブルとの隙間に伸長ノズルを挿入すると、伸長ノズルは、ケーブル上にまたがるように乗った状態となる。ここで管路およびケーブルの断面形状はほぼ円形である。このため、ケーブルが敷設された管路内では、ケーブルと管路との隙間の形状が三日月形状となる。
【0013】
つまり伸長ノズルは、ケーブル上に乗った状態であれば、三日月形状の隙間のうち狭い部分に落ち込んで食い込むこともない。このため、帯状体を例えば消防ホースのような織布にエラストマー、ゴム等の弾性樹脂を被膜としたもので、可撓性はあるが、ある程度の硬質素材で形成し、さらにボールローラーなどで管路内に伸長ノズルを繰り出すと、伸長ノズルは、ケーブル上に乗った状態を維持しながら、管路内を確実に移動できる。
【0014】
このため上記構成のように、伸長ノズルの帯状体の二重構造の中に、房に取り付けたラインを通した状態で、伸長ノズルと房を一緒に繰り出すことにより、伸長ノズルは、房とともに管路内を確実に移動することになる。その後、帯状体の二重構造の中にエアを圧送すると、房は、伸長ノズルが管路内で到達した位置からその先に向かって、伸長ノズルを飛び出す。さらに房は、多数本の繊維を束ねることで膨らんだ紡錘形であるから、風によく乗って管路内を確実に移動できる。
【0015】
一例として、管路内にエアを圧送すると、管路の継手部からエアが漏れる場合や、管路に欠損があると、その部位(管路欠損部)からエアが漏れる場合もあり得る。このような場合、房は、管路欠損部より先に進むことができない。そこで上記構成の牽引具では、管路の継手部や管路欠損部よりも先まで到達するように伸長ノズルを繰り出した後、二重構造の中にエアを圧送すればよい。このようにすれば、紡錘形の房は、伸長ノズルが到達した位置すなわち継手部や管路欠損部よりも先の位置から伸長ノズルを飛び出し、エア漏れの影響を受けずに風によく乗って、管路内を確実に移動できる。
【0016】
また房にはライン例えばメッセンジャーロープ(紐)が取り付けられているので、管路から房を引き抜くことで、管路の中にラインを確実に引き込むことができる。ここで一例として、管路をFRP管とし、ケーブルを電線などのOFケーブルとした場合、作業者は、管路の中にラインを引き込んだ後、ラインに消火チューブを結び付けて、ラインを回収することにより、管路の中に消火チューブを引き込むことができる。このようにすれば、漏電などによりOFケーブルが発火する事態において、管路内で消火チューブが熱により破れて、消火剤が発火部位に噴射されるため、消火が可能となる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明にかかる牽引方法の代表的な構成は、多数本の繊維を束ねた紡錘形の房と、長手方向に筒となる二重構造の帯状体と、帯状体の長手方向の両縁に装着された通線ロッドを有する伸長ノズルとを備える牽引具を用いて、ケーブルが敷設された管路の中にラインを引き込む牽引方法であって、管路の全長よりも長いラインを房に取り付け、伸長ノズルの帯状体の二重構造の中にラインを通し、管路の一端から管路の中に房とともに伸長ノズルを繰り出し、伸長ノズルが管路の欠損部よりも先まで到達すると、二重構造の中にエアを圧送し、ラインの張力を保ちながら、管路の他端まで房を移動させ、房を回収することを特徴とする。
【0018】
上述した牽引具における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該方法にも適用可能である。すなわち、紡錘形の房にラインを取り付けた状態で、管路の一端から管路の中に房と一緒に伸長ノズルを繰り出し、伸長ノズルが管路の欠損部よりも先まで到達すると、帯状体の二重構造の中にエアを圧送する。このようにすれば、紡錘形の房は、伸長ノズルが到達した位置すなわち管路の欠損部よりも先の位置から伸長ノズルを飛び出し、欠損部からの空気漏れの影響を受けずに風によく乗って、管路内を確実に移動できる。
【0019】
さらに房が管路内を移動する際、ラインの張力を保って弛まないようにすることで、房の移動速度を調整できる。例えば房の移動速度が速すぎると、管路とケーブルとの三日月形状の隙間のうち狭い部分に房が勢い余って突入し移動できなくなる。しかし房の移動速度を調整することにより、三日月形状の隙間のうち広い部分(すなわち風速が速く圧力の低い部分)に房が引き寄せられ、房は、管路内を確実に移動できるようになる。
【0020】
その後、管路の他端に到達した房を回収することにより、管路の中にラインを引き込むことができる。そして作業者は、管路の中にラインを引き込んだ後、ラインに消火チューブを結び付けて、ラインを回収することで、管路の中に消火チューブを引き込むことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ケーブルが敷設された管路の中に消火チューブを確実に引き込むことができる牽引具および牽引方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態における牽引具を適用する管路を示す図である。
図1(a)は、橋梁100の下に設置された管路102を示す図である。
図1(b)は、
図1(a)の管路102のA−A断面図である。なお
図1(b)に示すように、橋梁100の下には複数本の管路102が設置されているが、
図1(a)では1本の管路102を代表的に示している。
【0025】
図1(a)に示す橋梁100の下には、例えば数100mの長距離にわたって管路102が設置されている。管路102は、FRPなどの樹脂からなり、その内部には高電圧の電線(OFケーブル104)などが敷設されている。このような管路は、橋梁100の下ばかりでなく、地中に設置されている場合もある。このような管路102では、OFケーブル104が漏電などにより発火した場合、樹脂である管路102自体が燃えてしまい、管路102の外部にまで炎が拡散し、ついには火災が発生する事態があり得る。
【0026】
そこで本実施形態では、牽引具200(
図4参照)を用いて、管路102の中に
図1(a)に破線で示す消火チューブ110を引き込む、という防災対策を採用した。牽引具200は、詳細は後述するが、
図2に示す先導体106、108と、
図3に示す伸長ノズル201とを備えている。ここで管路102の中とは、
図1(b)に示す管路102とOFケーブル104との隙間112であり、その形状は、管路102およびOFケーブル104の断面形状がほぼ円形であるため、三日月形状となっている。
【0027】
消火チューブ110は、マンホール114、116の間に位置する管路102の中に引き込まれる。また消火チューブ110の両端は、マンホール114、116内に配置された消火ポンプ118、120に接続される。消火ポンプ118、120から消火チューブ110に消火剤が圧力をかけて供給されている。
【0028】
このようにすれば、OFケーブル104が発火する事態において、発火部位の熱により消火チューブ110が破れることにより、消火剤が発火部位に噴射されて、消火が可能となる。
【0029】
図2は、本発明の実施形態における牽引具200の先導体106、108を説明する図である。先導体106、108は、OFケーブル104が敷設された管路102の中、すなわち隙間112に、消火チューブ110を引き込む際に用いられる。
【0030】
図2(a)に示す先導体106は、複数本(ここでは3本)の房122を備える。房122は、多数本の繊維を束ねることで紡錘形を成していて、さらに剛性のある軸124を繊維の束で包囲している。繊維の束は、一例として、長さ1000mmのPE紐(3本撚り、8mm径、嵩密度:0.2g/cm
3)を用意し、これの撚りを戻した後、二つ折りにして複数本合わせたものを1束としている。このため、繊維の束の全長は500mm程度となっている。また、繊維の束に比して剛性のある軸124は、ここでは、3mm径の塩化ビニルの棒を用いているが、これに限定されない。
【0031】
房122は、PE紐の撚りを戻すことで繊維が膨らむため、紡錘形を成し易くなり、さらに剛性のある軸124を繊維の束で包囲することで、紡錘形を確実に保つことができる。
【0032】
房122の後端126には、繋ぎ部128を介してライン(紐130)が取付けられている。紐130の材質は、例えばポリエチレンなど、軽くて、かつ管路102およびOFケーブル104との間の摩擦係数が小さいものであればよい。紐130としては、例えば舟のけい留用ロープ等などを用いてよい。
【0033】
図2(b)に示す先導体108は、房122の先端を1つに束ねる先頭部132を備える点で、
図2(a)に示す先導体106の変形例である。先頭部132は、
図2(c)に示すように扁平な形状を有していて、ここでは3本の房122の先端134(
図2(b)参照)を一列に固定している。先頭部132は、例えば2枚の樹脂フィルムで房122の先端を挟み込むことによって構成することができる。
【0034】
図3は、本発明の実施形態における牽引具200の伸長ノズル201を説明する図である。伸長ノズル201は、管路102の隙間112に消火チューブ110を引き込む際に、先導体106、108とともに用いられる。
【0035】
伸長ノズル201は、帯状体202と、2本の通線ロッド204、206とを備える。帯状体202は、例えば消防ホースのような可撓性はあるが、ある程度の硬質素材で形成されている。なおこれに限定されず、帯状体202の素材は、消防ホースのような織布にエラストマー、ゴム等の弾性樹脂を被膜としたものであってもよい。通線ロッド204、206は、例えばFRP製であり、帯状体202の長手の両縁208、210に装着されている。
【0036】
また帯状体202の両縁208、210の間は、気密性を有するように本体部212によってつながれている。本体部212は、図示のように長手方向に筒となる二重構造213を有している。このように伸長ノズル201は、長手方向に筒となる二重構造213の帯状体202であり、その長手方向の両縁208、210に通線ロッド204、206が装着されている。換言すれば、伸長ノズル201は、2本の通線ロッド204、206を帯状体202によってつないだ構造である。また見方を変えれば、伸長ノズル201は、ホースを畳んで、その両側を2本の通線ロッド204、206で補強した構造である。
【0037】
さらに帯状体202では、図示のように通線ロッド204、206を包むように両縁208、210が幅方向に折り返され、その先端214、216が本体部212に融着されている。このようにして通線ロッド204、206は、帯状体202の両縁208、210に装着されるため、管路102の隙間112に繰り出されても(
図4参照)、ねじれることがない。
【0038】
ここで
図2に示す先導体106の房122は、多数本の繊維を束ねることで膨らんだ紡錘形であるから、本来、風によく乗って管路102内を移動できる構造となっている。しかし管路102に欠損部218(
図4(a)参照)がある場合、管路102内にエアを圧送しても欠損部218からエアが漏れてしまい、先導体106は、管路102の欠損部218より先に進むことができない。なお欠損部218としては、管路102の継手部などが挙げられる。
【0039】
そこで本実施形態では、管路102の欠損部218からエア漏れが生じている場合でも、先導体106が管路102内を確実に移動できる構成を採用した。なお帯状体202は、その全長Lが
図4(a)に示す管路102の一端220から欠損部218までの距離よりも長く設定され、さらに幅の長さWが管路102の内径と隙間112の大きさに合わせて適宜設定されている。
【0040】
図4は、管路102内を移動する牽引具200の状態を示す図である。
図4(a)は、管路102の内部を示す図であり、管路102を上方から見た状態を示す模式図である。
図4(b)は、
図4(a)の管路102のB−B断面図である。
【0041】
牽引具200は、
図4(b)に示すように伸長ノズル201の帯状体202の二重構造213の中に、先導体106に取り付けた紐130を通した状態とされる。また帯状体202の二重構造213の中には、紐130だけでなく先導体106自体も押し込まれている。ここで紐130の全長は、管路102の全長よりも長く設定されている。
【0042】
さらに
図4(a)に示す牽引具200では、先導体106が伸長ノズル201の先端222付近に押し込まれた状態で、管路102の中の隙間112に伸長ノズル210と先導体106が一緒に繰り出されている。伸長ノズル210と先導体106は、管路102の一端220に取付けられた繰出し装置224によって繰り出される。
【0043】
繰出し装置224は、支持台226と、支持台226に支持されるボールローラー228とを有する。ボールローラー228は一対のタイヤのような構造をしていて、モーター(不図示)により駆動され、先導体106が押し込まれた伸長ノズル201を上下方向から挟み込みながら、管路102の中の隙間112に伸長ノズル201と先導体106を一緒に繰り出す。先導体106と伸長ノズル201とを備える牽引具200は、不図示のドラムに巻き取られて収納されていて、繰出し装置224によって図中矢印Cに示すように管路102の一端220から他端230に向かって隙間112内を移動する。
【0044】
ここで管路102とケーブル104との隙間112の形状が三日月形状であるため、隙間112は、
図4(b)に示すように広い部分232と、広い部分232の幅方向両側に位置する狭い部分234、236とを含む。
【0045】
伸長ノズル201は、帯状体202の長手の両縁208、210に通線ロッド204、206が装着されていて、上記したように2本の通線ロッド204、206を帯状体202によってつないだ構造となっている。
【0046】
このため、伸長ノズル201は、管路102とOFケーブル104との隙間112に押し込まれると、
図4(b)に示すようにケーブル104上にまたがるように乗った状態となる。また、帯状体202は、ある程度の硬質素材なので幅方向の寸法が変化しにくい。その結果、伸長ノズル201は、ケーブル104上に乗った状態で隙間112のうち広い部分232からずれ落ちることがない。さらに伸長ノズル201では、ケーブル104上に乗った状態で帯状体202の両縁208、210が隙間112のうち狭い部分234、236に入り込まないように、管路102の内径と隙間112の大きさに合わせて帯状体202の幅の長さW(
図3参照)を設定している。
【0047】
つまり伸長ノズル201は、ケーブル104上に乗った状態であれば、三日月形状の隙間112のうち狭い部分234、236に落ち込んで食い込むこともない。したがって、帯状体202をある程度の硬質素材で形成し、さらに繰出し装置224で管路102内に伸長ノズル201を繰り出すと、伸長ノズル201は、ケーブル104上に乗った状態を維持しながら、管路102の隙間112内を確実に移動できる。
【0048】
このため牽引具200のように、伸長ノズル201の帯状体202の二重構造213の中に、先導体106に取り付けた紐130を通した状態で、伸長ノズル201と先導体106を一緒に繰り出すことにより、伸長ノズル201は、先導体106とともに管路102内を確実に移動することになる。
【0049】
さらに牽引具200では、
図4(a)に示すように管路102の欠損部218よりも先まで到達するように伸長ノズル201を繰り出している。つまり伸長ノズル210の先端222は、管路102の欠損部218を通り過ぎ、さらに欠損部218よりも管路102の他端230に近い位置まで到達している。
【0050】
図5は、
図4(a)に後続する牽引具200の状態を示す図である。続いて牽引具200では、伸長ノズル201の帯状体202の二重構造213の中に、
図5に示すエア圧送装置238によってエアが圧送される。エア圧送装置238は、管路102の一端220付近に配置されている。エア圧送装置238は、帯状体202の二重構造213に接続されている装置であって、不図示のコンプレッサを駆動して帯状体202の二重構造213の中にエア(矢印D参照)を圧送する。
【0051】
帯状体202の二重構造213の中にエアを圧送すると、先導体106は、伸長ノズル201の先端222が管路102内で到達した位置、すなわち管路102の欠損部218よりも先の位置から伸長ノズル201を飛び出す。さらに先導体106の房122は、多数本の繊維を束ねることで膨らんだ紡錘形であるから、二重構造213の中から吹き出される風(矢印E参照)によく乗って、エア漏れの影響を受けずに管路102内を確実に移動できる(
図6参照)。
【0052】
図6は、
図5の管路102内を移動する牽引具200の先導体106の状態を示す図である。
図6(a)は、管路102の内部を示す図であり、管路102を側方から見た状態を示す図である。
図6(b)は、
図6(a)の管路102のF−F断面図である。
【0053】
先導体106は、多数本の繊維を束ねることで膨らんだ紡錘形の房122を備えている。このため、先導体106は、伸長ノズル210から管路102とOFケーブル104との隙間112に飛び出して、
図6(a)に示す二重構造213の中から吹き出される風(矢印E参照)を受けると、風をよく受けて管路102内を確実に移動できる。
【0054】
また先導体106は、紡錘形の房122を複数本(ここでは3本)備えているので、
図6(b)に示すように三日月形状の隙間112を塞いで風圧をよく受けることができる。
【0055】
ここで先導体106が隙間112内を移動する際、作業者は、紐130が弛まないように張力を保ちながら、先導体106を移動させる。このように紐130の張力を保ちながら、先導体106を移動させることで移動速度を調整できる。
【0056】
一例として先導体106の移動速度が速すぎると、三日月形状の隙間112のうち狭い部分234、236に房122が勢い余って突入し移動できなくなる場合があり得る。これに対して先導体106の移動速度を調整することにより、三日月形状の隙間112のうち広い部分232(すなわち風速が速く圧力の低い部分)に房122が引き寄せられる。その結果、先導体106は、隙間112内を確実に移動できるようになる。すなわち先導体106は、風圧を受けて移動するというより、気流に乗って移動すると表現する方が適切である。
【0057】
さらに房122は、単に繊維を束ねただけでなく、剛性のある軸124(
図6(b)参照)を繊維の束で包囲して形成されているため、紡錘形を確実に保つことができる。したがって、房122は、隙間112で風を受けた場合、例えば折れ曲がって隙間112のうち狭い部分234、236に挟まることもなく、紡錘形を保ちながら隙間112内を確実に移動できる。
【0058】
そして先導体106に取付けられた紐130の全長が管路102の全長よりも長いため、先導体106は、隙間112内を移動して、
図1のマンホール120に面する管路102の他端230(
図5参照)まで到達できる。そこで作業者は、紐130が取付けられた先導体106を回収し、さらに管路102の一端220から牽引具200を引き抜くことで、管路102の中に紐130を確実に引き込むことができる。
【0059】
そして作業者は、管路102の中に紐130を引き込んだ後、紐130に消火チューブ110を結び付けて、紐130を回収することにより、管路102の中に消火チューブ110を引き込むことができる。
【0060】
なお
図6に示す管路102内の隙間112を、先導体106に代えて先頭部132つきの先導体108(
図2(b)、
図2(c)参照)が移動する場合、先導体108では、3本の房122の先端134が先頭部132によって1つに束ねられているため、隙間112に房122が挟まることをより確実に防止できる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態における牽引具200を用いることにより、OFケーブル104が敷設された管路102の中に、紐130さらには消火チューブ110を確実に引き込むことができ、上記の防火対策を実現できる。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。