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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-8105(P2020-8105A)
(43)【公開日】2020年1月16日
(54)【発明の名称】温度感応型制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/68 20060101AFI20191213BHJP
   F16K 7/02 20060101ALI20191213BHJP
   F25B 41/06 20060101ALI20191213BHJP
【FI】
   F16K31/68 A
   F16K7/02 D
   F25B41/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-130575(P2018-130575)
(22)【出願日】2018年7月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 裕正
(72)【発明者】
【氏名】横田 純一
【テーマコード(参考)】
3H057
【Fターム(参考)】
3H057AA02
3H057BB02
3H057CC03
3H057DD02
3H057EE05
3H057FA23
3H057FC05
(57)【要約】
【課題】冷却を必要とする熱源を冷却する冷却装置の冷媒供給用の配管に設けられる温度感応制御弁100において、熱源の温度変化に追従して冷媒を迅速に供給できるようにする。
【解決手段】温度変化に応じて膨張収縮する熱膨張体の体積変化に応じてピストン23を軸線L方向に進退させるサーモエレメント20を備える。冷媒を流す弁ポート13を弁体3で開閉する。弁体3をコイルばね32(弁閉ばね)により弁閉方向に付勢する。弁体3を含む構造部がダイヤフラム43にて密閉封止する。軸線L方向の機械的な押圧力をダイヤフラム43を介して弁体3に伝達する操作部4を設ける。ダイヤフラム43は、弁体3による弁閉時にダイヤフラム43の張力を弁体3に対して弁開方向に付勢するよう構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化に応じて膨張収縮する熱膨張体の体積変化でピストンを軸線方向に移動させるサーモエレメントと、
冷媒を流す弁ポートを弁閉ばねにより弁閉方向に付勢された弁体で開閉する弁装置本体であって、前記弁体を含む構造部がダイヤフラムにて密閉封止されるとともに、前記軸線方向の機械的な押圧力を前記ダイヤフラムを介して前記弁体に軸線方向に伝達する操作部、を有する弁装置本体と、
を備え、
前記ダイヤフラムは、前記弁体による弁閉時に前記押圧力を付勢する当該ダイヤフラムの作用面の高さを前記ダイヤフラムの自然状態での作用面よりも高い位置となるよう構成されていることを特徴とする温度感応型制御弁。
【請求項2】
前記弁装置本体は、弁ハウジングを有し、該弁ハウジング内には弁室が形成され、前記弁ハウジングの側壁には、前記弁室に冷媒が流入する第1ポートと前記弁室から冷媒が流出する第2ポートが形成され、前記弁室と前記第2ポートの間に軸線方向に前記弁ポートが形成され、
前記操作部は、前記弁装置本体の上部に設けられ、前記ダイヤフラムの下部が、前記第2ポートと連通することを特徴とする請求項1に記載の温度感応型制御弁。
【請求項3】
温度−弁リフト特性において、前記ダイヤフラムの前記作用面の高さが自然状態における高さとなる領域が前記サーモエレメントの感温部内の熱膨張体の液体膨張域であることを特徴とする請求項1に記載の温度感応型制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源を冷却する冷却装置等に冷媒を供給する温度感応型制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば情報処理分野において、サーバ等の大量に発熱するシステムを循環冷媒によって冷却することが行われている。例えば、特開2009−224406号公報(特許文献1)には、ブレードサーバのラックに対して冷却装置を配置し、ラック内を冷却する排熱利用システムが開示されている。また、特開2017−67164号公報(特許文献2)には、熱源の温度を感知するのに適したサーモエレメント及びピストン組立体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−224406号公報
【特許文献2】特開2017−67164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、冷却水(冷媒)により冷却を行うようにしているが、サーバ等の機器では、動作状態に応じて発生する熱量が大きく変化する。このため、熱源が設定温度に達した場合、即時に弁ポートを大きく開き、冷却に必要な冷媒量を即時に流して、熱源を迅速に冷却することが要求される。
【0005】
本発明は、冷却を必要とする熱源を冷却する冷却装置の冷媒供給用の配管に設けられ、熱源が設定温度に達した場合、弁ポートを大きく開き冷媒を迅速に供給できる温度感応型制御弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の温度感応型制御弁は、温度変化に応じて膨張収縮する熱膨張体の体積変化でピストンを軸線方向に移動させるサーモエレメントと、冷媒を流す弁ポートを弁閉ばねにより弁閉方向に付勢された弁体で開閉する弁装置本体であって、前記弁体を含む構造部がダイヤフラムにて密閉封止されるとともに、前記軸線方向の機械的な押圧力を前記ダイヤフラムを介して前記弁体に軸線方向に伝達する操作部、を有する弁装置本体と、を備え、前記ダイヤフラムは、前記弁体による弁閉時に前記押圧力を付勢する当該ダイヤフラムの作用面の高さを前記ダイヤフラムの自然状態での作用面よりも高い位置となるよう構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の温度感応型制御弁は、請求項1に記載の温度感応型制御弁であって、前記弁装置本体は、弁ハウジングを有し、該弁ハウジング内には弁室が形成され、前記弁ハウジングの側壁には、前記弁室に冷媒が流入する第1ポートと前記弁室から冷媒が流出する第2ポートが形成され、前記弁室と前記第2ポートの間に軸線方向に前記弁ポートが形成され、前記操作部は、前記弁装置本体の上部に設けられ、前記ダイヤフラムの下部が、前記第2ポートと連通することを特徴とする。
【0008】
請求項3の温度感応型制御弁は、請求項1に記載の温度感応型制御弁であって、温度−弁リフト特性において、前記ダイヤフラムの前記作用面の高さが自然状態における高さとなる領域が前記サーモエレメントの感温部内の熱膨張体の液体膨張域であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1乃至3の温度感応型制御弁によれば、組み付け時の弁閉状態において、操作部のダイヤフラムの軸方向の押圧力の作用面の高さが組み付け前の初期単品の状態、すなわち自然状態での高さより高い位置になることから、ダイヤフラムの張力が下向きに生ずるため、弁開方向に弁体を付勢するように設けられ、サーモエレメントのピストンが操作部に作用する押圧力と同じ方向にダイヤフラムも弁体を付勢しているので、温度変化に対して弁開度の特性が急峻になり、弁開状態となるとき弁ポートを介して冷媒を速やかに流すことができ、熱源の温度変化に追従して、冷却装置等に冷媒を迅速に供給でき、熱源を迅速に冷却することができる。
【0010】
請求項2の温度感応型制御弁によれば、冷媒が第1ポートから弁室に流入して弁ポートで絞られると低圧状態となって第2ポートから流出することになる。ダイヤフラムの下部が、冷媒が流出する第2ポートの低圧を受けるため、ダイヤフラムはさらに弁開方向に変位し易くなるため、より迅速に大きな流量で冷媒を流すことができる。
【0011】
請求項3の温度感応型制御弁によれば、温度―リフト特性において、組み付け後のダイヤフラムの押圧力の作用面の高さが自然状態での高さとなる領域をサーモエレメントの感温部内の熱膨張体の固液混合膨張域にすると、これより高い温度では、ダイヤフラムの張力が弁閉方向に働き、温度−リフト特性の傾きが緩やかになり、冷媒流量の急激な増大が見込まれなくなるが、液体膨張域とすれば、ダイヤフラムの張力の弁閉方向への反転が高い温度となり、固液混合膨張域にある場合より高い温度まで温度−弁リフト特性を急峻に保つことができ、より迅速に大きな流量で冷媒を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の温度感応型制御弁の縦断面図である。
図2】本発明の実施形態の温度感応型制御弁の上面図である。
図3】本発明の実施形態の温度感応型制御弁におけるサーモエレメントの縦断面図である。
図4】本発明の実施形態の温度感応型制御弁におけるサーモエレメントの温度−変位特性を示す図である。
図5】本発明の実施形態の温度感応型制御弁におけるダイヤフラムの2状態を説明する断面図である。
図6】本発明の実施形態の温度感応型制御弁における温度−弁リフト特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の温度感応型制御弁の実施形態を図面を参照して説明する。図1は実施形態の温度感応型制御弁の縦断面図、図2は同温度感応型制御弁の上面図、図3は同温度感応型制御弁におけるサーモエレメントの縦断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1及び図3の図面における上下に対応する。また、以下の説明において実施形態の温度感応型制御弁を適宜「制御弁」という。
【0014】
実施形態の制御弁100は、弁装置本体10とサーモエレメント20とで構成されている。弁装置本体10は、金属製の弁ハウジング1を有し、弁ハウジング1には、中央に円柱状の弁室1Aが形成され、この弁室1Aの側部に開口して冷媒が流入する第1ポート11が形成され、さらに、冷媒が流出する第2ポート12が形成されている。また、弁ハウジング1には、弁室1Aと第2ポート12との間に軸線Lを中心とする弁ポート13が形成されるとともに、弁ポート13と同軸で弁ハウジング1の上部から第2ポート12まで貫通するガイド孔14が形成されている。このガイド孔14は弁ポート13の軸線Lを中心軸とする円筒状の形状をしている。なお、冷媒は第2ポート12から流入して第1ポートから流出するような場合もある。
【0015】
弁室1A、第2ポート12及びガイド孔14内には弁体3が配設されている。弁体3は、円柱棒状の弁棒3aと、弁室1A側から弁ポート13を開閉する略円錐形状のニードル部3bと、ニードル部3bの外周に形成された鍔部3cとから構成されている。弁棒3aはガイド孔14内に挿通され、鍔部3cと弁室1Aの底部のばね受け31との間に「弁閉ばね」としてのコイルばね32が配設されている。これにより、コイルばね32は弁体3を後述のダイヤフラム43側に付勢している。
【0016】
弁ハウジング1の弁室1Aと反対側には、操作部4が取り付けられている。操作部4は、弁ハウジング1に固着された下蓋41と、下蓋41と同径の上ケース42と、下蓋41と上ケース42との間に配置されたダイヤフラム43と、下蓋41内でダイヤフラム43と弁体3の弁棒3aとの間に配置された下当金44と、上ケース42内でダイヤフラム43の上に配置された上当金45とで構成されている。そして、下蓋41、ダイヤフラム43及び上ケース42は、外周縁の部分で溶接されて一体に接合されている。なお、図2の上面図に示すように、弁ハウジング1は矩形状であるが、上ケース42(及び下蓋41、ダイヤフラム43)、サーモエレメント20は軸線L回りに回転対称な形状である。
【0017】
下当金44は、弁棒3aの外径よりも大径となっている。これにり、後述のように、サーモエレメント20の作用でダイヤフラム43が変形して弁棒3aに押圧力を伝達するとき、弁棒3aから受ける反作用力を下当金44の広い面積でダイヤフラム43に対して分散させることができ、ダイヤフラム43の耐久性の向上を図ることができる。また、同様に、上当金45は、後述のピストン23の外径より大径となっている。これにり、ピストン23がダイヤフラム43に直接当接する場合よりも上当金45の広い面積でダイヤフラム43に対して押圧力を分散して伝達でき、ダイヤフラム43の耐久性の向上を図ることができる。
【0018】
これにより、操作部4は、ダイヤフラム43と下蓋41とが下当金44及び弁棒3aからなる構造部を密閉封止するとともに、ダイヤフラム43の外部すなわち上ケース42内の上当金45からの軸線L方向の機械的な押圧力を、ダイヤフラム43及び下当金44を介して弁体3(弁棒3a)に伝達するような機能を有している。そして、この操作部4の上ケース42の円筒部42a内にサーモエレメント20(その一部)が収容され、上ケース42の上端からサーモエレメント20の感温部21aが突出されるとともに、サーモエレメント20の感温部側基部21bの感温部21a側の端部に円筒部42aの端部の係止片42a1が係合されている。
【0019】
サーモエレメント20は、温度変化によるパラフィン等の膨張収縮を利用したサーモアクチュエータである。図3に示すように、サーモエレメント20は、感温ケース21と、ガイドケース22と、ピストン23と、ダイヤフラム24と、ラバーピストン25と、保護板26とを備えて構成されている。感温ケース21は端部に底のある円筒形状の感温部21aと、ガイドケース22の一部を覆う感温部側基部21bとから構成されている。ガイドケース22は、ピストン23、ラバーピストン25及び保護板26を内挿する円筒形状のガイド部22aと、感温ケース21の感温部側基部21bに覆われるガイド側基部22bとから構成されている。
【0020】
感温ケース21の主に感温部21a内には、パラフィン等のワックスからなる熱膨張体2Aが充填され、熱膨張体2Aの下端面は、弾性密封部材であるダイアフラム24により封止されている。ガイドケース22のガイド側基部22bのすり鉢状内面22b1と、ダイアフラム24の下側との間には流体室が設けられ、流体室には流動体2Bが充填されている。流動体2Bは、非圧縮性で、流動性、潤滑性が良い非圧縮性流動体である。ガイドケース22のガイド部22aの内側のピストン摺動孔22a1内には、ラバーピストン25と保護板26を介して、ピストン23が摺動自在に挿通されて、ピストン23の外側端部はピストン摺動孔22a1から突き出している。
【0021】
感温部21aの環境温度が上昇すると熱膨張体2Aが膨張するとともにダイアフラム24が膨出し、ダイアフラム24の下方の流体室に封入された流動体2Bを押し下げる。これにより、流動体2Bは変形してその一部がガイド部22aのピストン摺動孔22a1内に進入し、ラバーピストン25と保護板26を介して、ピストン23を下方へ押し下げる。
【0022】
図1に示すように、上当金45には、遊び孔45a、ガイド挿通孔45b及びばね収容孔45cが同軸に形成されており、サーモエレメント20のピストン23が遊び孔45aに臨まされるとともに、ガイド部22aがガイド挿通孔45b内に挿通されている。また、ガイド部22aの外周には固定ばね46が配設され、この固定ばね46は、円筒部42a内の感温部側基部21bとばね収容孔45cの底部との間で圧縮して配設されている。すなわち、前記のように感温部側基部21bの端部は円筒部42aの係止片42a1に係合されているので、上記固定ばね46のばね力によりサーモエレメント20は円筒部42aに固定されている。また、サーモエレメント20の感温部21aは円柱状に突出しており、温度感知対象に対して装着が容易な構造となっている。そして、この感温部21aは、金属プレート50の装着孔50a内に装着され、この金属プレート50からの熱が感温部21aに伝達される。なお、金属プレート50は図示しない熱源に密着されている。
【0023】
以上の構成により、図1の状態から、サーモエレメント20の感温部21aの温度が上昇して前記のようにピストン23が下降するとピストン23が上当金45(遊び孔45aの底部)に当接する。さらに、ピストン23が下降すると、上当金45が下降してダイヤフラム43が変形するとともに下当金44が下降し、さらにこの下当金44に当接している弁体3が下降する。このように、この実施形態では、ピストン23の押圧力が、上当金45、ダイヤフラム43及び下当金44を介して弁体3に加わり始める瞬間が「弁開点」であり、この弁開点から弁体3のニードル部3bが弁ポート13の周囲から離間して、弁ポート13を開状態とする。
【0024】
図4はサーモエレメント20における感温部21aの温度とピストン23の変位(リフト)との関係を示す温度−変位特性を示す図である。感温部21a内の熱膨張体2Aは、温度に応じて固体状態、固体と液体が混合する固液混合状態及び液体状態のように、相変化する。これにより、温度−変位特性は、固体状態で膨張する「固体膨張域」と、固液混合状態で膨張する「固液混合膨張域」と、液体状態で膨張する「液体膨張域」とで、それぞれ異なる傾きを呈する。そして、固液混合膨張域での傾き、すなわち温度膨張率が一番大きく(急峻に)なる。この温度−変位特性はサーモエレメント20の固有の特性として既知であり、この場合ピストン23のリフトL1〜L3の範囲が「固液混合膨張域」に対応している。
【0025】
ここで、前記のように、弁装置本体10において弁開点は、上記「固液混合膨張域」の範囲内となるように設定されている。この実施形態では、弁開点は、図4に示す「弁開リフト=0」及び「サーモエレメントリフト=L2」となる状態に設定されている。このように、サーモエレメント20における熱膨張体2Aの温度膨張率が大きい「固液混合膨張域」の範囲内に弁開点が設定されているので、熱源が設定温度に達した場合、弁ポート13を速やかに大きく開くことができる。これにより、熱源の温度変化に追従して、図示しない冷却装置に冷媒を迅速に供給でき、結果的に熱源を迅速に冷却することができる。
【0026】
なお、サーモエレメント20において、感温部21aの温度が低下して、熱膨張体2Aが収縮するとき、ダイヤフラム24が動かずに固化した熱膨張体2A内に真空の空隙ができたり、流動体2B内に空隙ができることがある。また、熱膨張体2A内の収縮によりダイヤフラム24が変形して流動体2Bも形状を変えることがある。このような場合、ピストン23は突出した状態で、ラバーピストン25及び保護板26もピストン23側に停留した状態となったり、ラバーピストン25だけが流動体2Bに追従して移動した状態となったり、ラバーピストン25と保護板26が動体2Bに追従して移動した状態となることがある。いずれの場合も、ピストン23が突出して停留した状態では、このピストン23は操作部4(あるいは弁体3)に対して押圧力を加えるものではなく、本発明における「弁開点」とは異なる状態である。
【0027】
ここで、操作部4において、ダイヤフラム43は、図1及び図2に示すように弁体3による弁閉時に、このダイヤフラム43の張力を下当金44を介して弁体3(弁棒3a)に対して作用させているが、この張力による軸線L方向の力は、弁体3を弁開方向に付勢している。図5は、ダイヤフラムの構造を表す図であり、図5(A)は、ダイヤフラム43が、操作部4に組み込まれる前の初期単品の状態(自然状態)、すなわちダイヤフラム43に何ら負荷が掛かっていない状態を示す断面図で、図5(B)は、操作部4に組み込まれた際の弁閉時におけるダイヤフラム43の状態を示す断面図であり、二点鎖線は上当金45と下当金44を示している。
【0028】
図5(A)に示すように、ダイヤフラム43は、薄膜金属製の円環状であり、外周部には平面状のフランジ面43b1,43b2を有するフランジ部43b、中心部には上当金45と当接する平面状の作用面43a2,下当金44に当接する平面状の作用面43a1を有する当接部43aがそれぞれ形成され、この外周部のフランジ部43bと中心部の当接部43aの間には波形の円環状部43cが形成されている。 そして、当接部43aの下当金44と当接する作用面43a1は、軸線方向の機械的な押圧力をダイヤフラム43を介して弁体3に伝達する「作用面」となっている。
【0029】
ここで、ダイヤフラム43が操作部に組み込まれる前の自然状態においては、中央部の作用面43a1は、外周部のフランジ面43b1より低い位置となっている。次に、ダイヤフラム43が操作部に組み込まれる際には、弁閉位置において図5(B)に示すように、波形の環状部43cが変形して中央部の作用面43a1が外周部のフランジ面43b1より高い位置に組み込まれる。すなわち、作用面43a1の位置は、図5(A)の自然状態の位置より高くなっている。これにより、弁閉時にダイアフラム43に下向きの張力が生ずることになり、弁体にはこの張力が弁開方向に作用する。なお、サーモエレメント20からピストン23の力が作用していないときは、「弁閉ばね」としてのコイルばね32のばね力はダイヤフラム43の張力に抗して、弁閉状態を維持するよう設定されている。ダイアフラム43の形状は、図5(A),(B)の実施例に限られるものでは無く、弁閉時において、ダイヤフラムの張力が弁開方向に働く構造であればよい。
【0030】
このように、ダイヤフラム43が組み付け状態で弁開方向に弁体3を付勢しているので、図6に示すように、サーモエレメント20における感温部21aで感知する温度と弁体3の弁リフト(弁開度)との特性が従来よりも急峻になる。したがって、弁開状態となるとき弁ポート13を介して冷媒を速やかに流すことができ、熱源の温度変化に追従して、冷却装置等に冷媒を迅速に供給でき、熱源を迅速に冷却することができる。さらに、ダイヤフラム43の張力はサーモエレメント20のピストン23の押圧力と同じ方向に力を働かせるため、サーモエレメント20のピストン23のストロークに対して不要な荷重が加わることがなく、サーモエレメント20の耐久性も向上する。
【0031】
また、実施形態では、ダイヤフラム43の下部すなわち下蓋41側の面が、冷媒が流出する第2ポート12の低圧を受けるため、ダイヤフラム43はさらに弁開方向に変位し易くなる。これにより、より迅速に大きな流量で冷媒を流すことができる。
【0032】
また、実施形態において、組み付け後のダイヤフラムの押圧力の作用面の高さが自然状態での高さとなる領域をサーモエレメント20の感温部21a内の熱膨張体2Aの液体膨張域とした場合の温度−リフト特性は、図4及び図6の特性Aに示すように、熱膨張体2Aの固液混合膨張域と液体膨張域との間の温度−弁リフト特性における変曲点のリフト(温度)より大きいリフトの位置で、ダイヤフラム43が、該ダイヤフラム43の「自然状態での位置」となるので、この変曲点以降の温度でも、ダイヤフラム43の弁開方向の張力が働くので、温度−弁リフト特性を急峻に保つことができ、より迅速に大きな流量で冷媒を流すことができる。
【0033】
これに対し、実施形態において、組み付け後のダイヤフラムの押圧力の作用面の高さが自然状態での高さとなる領域をサーモエレメント20の感温部21a内の熱膨張体2Aの固液混合膨張域とした場合の温度−リフト特性は、図6の特性Bに示すように、温度−弁リフト特性における変曲点のリフトより小さいリフトの位置で、ダイヤフラム43が、該ダイヤフラム43の「自然状態での位置」となるので、これ以降の温度において、ダイヤフラム43の弁閉方向の張力が働くことになり、温度−弁リフト特性は特性Aに比べ傾きが少し緩くなるが、従来の温度−リフト特性よりは良くなっている。
【0034】
実施形態におけるサーモエレメントはラバーピストン、保護板及び流動体を備えているが、これらは無くてもよい。サーモエレメントは、熱膨張体の体積変化をピストンに伝達するものであればよい。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0036】
例えば、弁体が弁ポートの周囲の弁座に当接し、弁ポートを完全に閉とするものに限らず、弁体と弁座の間に隙間や流路があり、僅かなブリード流量がある場合でもよい。すなわち、本発明において、弁ポートの「閉状態」とは、完全に閉とする場合やブリード流量がある場合も含む概念である。
【符号の説明】
【0037】
1 弁ハウジング
1A 弁室
11 第1ポート
12 第2ポート
13 弁ポート
14 ガイド孔
L 軸線
21 感温ケース
21a 感温部
21b 感温部側基部
22 ガイドケース
22a ガイド部
22b ガイド側基部
23 ピストン
24 ダイヤフラム
25 ラバーピストン
26 保護板
2A 熱膨張体
2B 流動体
3 弁体
3a 弁棒
3b ニードル部
3c 鍔部
3a′ 弁棒
31 ばね受け
32 コイルばね
4 操作部
41 下蓋
42 上ケース
42a 円筒部
43 ダイヤフラム
43a1 作用面 (押圧力の作用面)
44 下当金(弁体側当金)
45 上当金(ピストン側当金)
46 固定ばね
47 コイルばね
45a 遊び孔
45b ガイド挿通孔
45c ばね収容孔
10 弁装置本体
20 サーモエレメント
100 温度感応型制御弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6