(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-81281(P2020-81281A)
(43)【公開日】2020年6月4日
(54)【発明の名称】ゴルフ用ティ
(51)【国際特許分類】
A63B 57/10 20150101AFI20200508BHJP
A63B 57/50 20150101ALI20200508BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20200508BHJP
【FI】
A63B57/10
A63B57/50
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-218813(P2018-218813)
(22)【出願日】2018年11月22日
(71)【出願人】
【識別番号】504122859
【氏名又は名称】株式会社 エムエス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 裕吾
(57)【要約】
【課題】ゴルフ場内に放置されても自然環境を壊すことなく、適度な硬度と強度を有し、使い易く、安価なゴルフ用ティを提供する。
【解決手段】ゴルフ用ティ1は、生分解性ゴムを用いて形成されており、ゴルフ用ティ1の表面側には、ゴルフボールを載置するための座面部21を備えるボール載置部2と、ボール載置部2の裏面側には、ボール載置部2よりもゴム硬度が大きい中間部4(ボール載置部2よりも横断面積の小さい打球時変位部41と、打球時変位部41の裏面側には、打球時変位部41より横断面積が大きく、ボール載置部2より横断面積が小さい略球状のティ掴み42部)と、中間部4の裏面側には、中間部4よりもゴム硬度が大きく、下端部を地中に突き刺すための刺し込み部6を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフ用ティであって、
該ゴルフ用ティは、生分解性ゴムを用いて形成されており、
前記ゴルフ用ティの表面側には、ゴルフボールを載置するための座面を備えるボール載置部と、
該ボール載置部の裏面側には、前記ボール載置部よりもゴム硬度が大きい中間部と、
該中間部の裏面側には、前記中間部よりもゴム硬度が大きく、下端部を地中に突き刺すため尖らせた刺し込み部と、を有していることを特徴とするゴルフ用ティ。
【請求項2】
前記ボール載置部、前記中間部及び前記刺し込み部を形成する生分解性ゴムのゴム硬度は、規格JIS K 6253に基づくデュロメータタイプA(ショアA)によって測定したときに、前記ボール載置部が40以上60未満、前記中間部が50以上80未満、前記刺し込み部が80以上である請求項1に記載のゴルフ用ティ。
【請求項3】
前記中間部には、前記ボール載置部よりも横断面積の小さい打球時変位部と、該打球時変位部の裏面側には、略球状であり、前記打球時変位部よりも横断面積が大きく、前記ボール載置部よりも横断面積の小さいティ掴み部を有する請求項1に記載のゴルフ用ティ。
【請求項4】
前記打球時変位部と前記ティ掴み部を形成する生分解性ゴムのゴム硬度は、規格JIS K 6253に基づくデュロメータタイプA(ショアA)によって測定したときに、50以上80未満である請求項3に記載のゴルフ用ティ。
【請求項5】
前記ボール載置部と前記中間部との間、前記中間部と前記刺し込み部との間には、それぞれのゴム硬度の間のゴム硬度を有する連結部が形成されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のゴルフ用ティ。
【請求項6】
前記生分解性ゴムは、天然ゴム混合体である請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のゴルフ用ティ。
【請求項7】
前記ゴルフ用ティの表面には、水性塗料による表面処理が施されている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のゴルフ用ティ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ場内に放置されても自然環境を壊すことがなく、適度な硬度と強度を有し、使い易く、安価なゴルフ用ティに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフ用ティ(以下、「ティ」という。)は、木製であったが、製造が容易で、コストを低く抑えられるため、最近では、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製のものが主流を占めている。これらのティは、ゴルファーがティグラウンドに置き忘れたり、ティショットの際に前方に飛んでいったり、フェアウェー等を移動中に落としたりして、ゴルフ場内に放置されることが多い。また、ティショットの際に、ティが、ティを地面に刺し込むための刺し込み部で折れ、一部がティグラウンドの地中内に埋まった状態で放置されることも多い。そして、この様にして放置されたティ(ティの一部も含む)が、合成樹脂製である場合には、地面(芝の上)若しくは地中等で、腐敗せずに残ることが多い。
【0003】
ティが腐敗しない場合には、ゴルフ場の芝を枯渇させる原因になる等、環境を破壊するおそれがある。また、芝刈り機等を用いて、ゴルフ場内を整備する際に、かかるティが芝刈り機の刃の部分に巻き込まれて、機械の故障の原因となる。さらに、粉砕されたティの破片が飛び、作業者に当たる等、作業者に危害を及ぼす危険性も増大する。
【0004】
そこで、ティショットの際に前方に飛んでいったり、ティがその刺し込み部で折れることを抑制するティとしては、
図3に示すように、刺し込み部600とボール載置部200とがチューブ状の連結部材700で連結されており、打球時には、ボール載置部200が連結部材700に沿ってスライドする樹脂製のゴルフ用ティ100(特許文献1)や、
図4に示すように、刺し込み部600を硬質部材(硬質樹脂)とし、ボール載置部200を柔軟性部材(軟質樹脂、軟質ゴム)で形成し、硬質部材と軟質部材を硬質部材の連結部710で連結することにより、打球時には、刺し込み部600はそのままの状態で、柔軟性部材からなるボール載置部200のみが連結部710により撓んで折れ曲がり、打球後は元の状態に復元するゴルフ用ティ100がある(特許文献2)。
【0005】
一方、環境破壊防止への取り組みとして、生分解性樹脂組成物(例えば、澱粉若しくは澱粉系の農産物からの誘導品を主原料として、これに親水性を有し、且つ生分解性を備えた変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有させたもの)を使用し、
図5(a)に示すように、表面側に座面部210を備えるボール載置部200と、ボール載置部200の裏面側に連結され、ボール載置部200よりも横断面積の小さな刺し込み部600と、からなり、刺し込み部600は、横断面積が略一定若しくはボール載置部200から離れるに従って変化する中間部400と中間部400の下端側で連結し、横断面積が中間部400から離れるに従って小さくなる先端部620と、を備えるゴルフ用ティ100において、ボール載置部200及び刺し込み部600は、上記の生分解性樹脂組成物を主体に一体的に成形され、中間部400の最大横断面の最大幅をX、刺し込み部600の全長をYとした場合に、Y/Xが5.0以下としたゴルフ用ティがある。ここで、Y/Xが5.0以下とするのは、刺し込み部600は、その全長に比例して変形(曲げ等)を生じ易くなるため、刺し込み部600に比較的幅広の剛性(曲げ剛性等)の大きな部分を設け、刺し込み部600全体を通じて変形し難い状態にするためである(特許文献3)。
【0006】
また、特許文献3には、
図5(b)に示すように、ボール載置部200及び刺し込み部600にソーダ石灰ガラス製繊維が混入された生分解性樹脂組成物を主体に一体成形したゴルフ用ティも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】意匠登録第1189064号公報
【特許文献2】実用新案登録第3164074号公報
【特許文献3】実開平7−15069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ゴルフ用ティにおいては、以下の点が要求されると考えられる。
まず、性能面においては、ボール載置部について、ドライバーヘッドを傷つけないこと、インパクトにおける抵抗を減らし、ヘッドの抜けをよくすること、刺し込み部において、硬いティグラウンドでも変形せず、刺し込み易いこと。次に、可能な限り長く使用するために、変形し難いこと、欠け難いこと、折れ難いこと。次に、環境に配慮されていること。そして、安価であることである。
【0009】
背景技術を上記要求について評価すると次のようになる。特許文献1および特許文献2のティでは、性能面では優れているが、硬質部にヘッドが当たると硬質部が変形し、全体形状が元に戻らなくなる。また、連結部材700が切断され、ボール載置部200がティショットの際に前方に飛んでしまう場合がある。加えて、高価である。
一方、特許文献3のティでは、環境面では優れているが、
図5(a)では、刺し込み部600が長くなると、中間部400が非常に太くなる(例えば、刺し込み部600が約50mmの場合、中間部400の最大横断面の最大幅Xは10mm以上にもなる)。また、
図5(b)では、刺し込み部600の硬度に合わせてソーダ石灰ガラス製繊維を混入させているので、ボール載置部200が硬くなり、性能面において、特に、インパクトにおける抵抗を減らし、ヘッドの抜けをよくする点で問題がある。加えて、ボール載置部200の変形や欠けの問題も残っている。
【0010】
そこで、本発明は、ゴルフ用ティに関し、ゴルフ場内に放置されても自然環境を壊すことなく、また、芝等の整備作業の妨げにならないと共に、適度な硬度と強度を有し、使い易く、安価なゴルフ用ティを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、ゴルフ用ティは、生分解性ゴムを用いて形成されており、ゴルフ用ティの表面側には、ゴルフボールを載置するための座面を備えるボール載置部と、ボール載置部の裏面側には、ボール載置部よりもゴム硬度が大きい中間部と、中間部の裏面側には、中間部よりもゴム硬度が大きく、下端部を地中に突き刺すため尖らせた刺し込み部と、を有していることを特徴とするゴルフ用ティである。
【0012】
請求項1の本発明では、上記構成を有しているので、ボール載置部は、軟らかく、ボールを載せたときに、ボールの重さを吸収し、ボールを安定して載せることができる。また、打球時には、載置部が変形し、打球後は、元の形状に戻るので、欠けることを防止でき、長期に渡り、ボールを安定して載せることができる。
【0013】
中間部は、ボール載置部と刺し込み部との間のゴム硬度を有しているので、ボール載置部にボールを載せたときに中間部が撓んで折れ曲がることがなく、ボールの位置を安定して維持することができる。一方、打球時には、撓んで折れ曲がるので、ボール載置部の軟らかさと相俟って、ドライバーヘッドを傷つけることがなく、ヘッドの抜けをよくすることができる。また、打球時の衝撃が小さい場合には、中間部は元の形状に戻り、衝撃が大きい場合には、中間部の形状が元に戻りきらない場合があるが、この場合は、手で元の形に戻すことにより形状の回復が可能であるので、ゴルフ用ティを長期に渡り使用することができる。
【0014】
刺し込み部は、大きなゴム硬度を有しているので、硬いティグラウンドでも刺し込み易い。また、打球時にも、上部の中間部が撓んで折れ曲がるので、刺し込み部で折れることが極めて少なく、ゴルフ用ティを長期に渡り使用することができる。
【0015】
さらに、ゴルフ用ティは、生分解性ゴムを用いて形成されているので、例え、ゴルフ場内に放置されても自然環境を壊すことなく、また、芝等の整備作業の妨げにもならない。
【0016】
請求項2の本発明は、ボール載置部、中間部及び刺し込み部を形成する生分解性ゴムのゴム硬度は、規格JIS K 6253に基づくデュロメータタイプA(ショアA)によって測定したときに、ボール載置部が40以上60未満、中間部が50以上80未満、刺し込み部が80以上であるゴルフ用ティである。
【0017】
ボール載置部のゴム硬度は、規格JIS K 6253に基づくデュロメータタイプA(ショアA)によって測定したときに、40以上60未満である。硬度が40未満の場合は、軟らか過ぎてべたつき感があり、ボールを載せたときに、ボール載置部がボールに吸い付くようになり、インパクトにおける抵抗が増加するので望ましくない。一方、硬度が60以上では、硬くなり、打球時に載置部が変形したときに、元の形状に十分回復せず、次回以降に、安定してボールを載せることが難しくなるので望ましくない。
【0018】
中間部の硬度は、規格JIS K 6253に基づくデュロメータタイプA(ショアA)によって測定したときに、50以上80未満である。硬度が50未満の場合は、軟らかいため、載置部にボールを載せたときに中間部が撓んで折れ曲がる傾向が強くなり望ましくない。一方、硬度が80以上では、硬くなり、打球時に中間部で折れて、折れた部分より上の部分、すなわち、ボール載置部と中間部の一部が、前方に飛んでしまうので、ゴルフ用ティを長期に渡り使用することができなくなる。
【0019】
刺し込み部の硬度は、規格JIS K 6253に基づくデュロメータタイプA(ショアA)によって測定したときに、80以上である。硬度が80未満の場合は、硬いティグラウンドの場合に、刺し込み部が折れ曲がってしまい刺し難くなるので望ましくない。
【0020】
請求項3の本発明は、中間部には、ボール載置部よりも横断面積の小さい打球時変位部と、打球時変位部の裏面側には、略球状であり、打球時変位部よりも横断面積が大きく、ボール載置部よりも横断面積の小さいティ掴み部を有するゴルフ用ティである。
【0021】
請求項3の本発明では、中間部には、ボール載置部よりも横断面積の小さな打球時変位部と、打球時変位部の裏面側には、打球時変位部よりも横断面積が大きい略球状のティ掴み部を有しているので、ティを刺し込む場合にティ掴み部を持って刺すことができ操作性がよい。一方、打球時は、ボール載置部とティ掴み部の間に存在する打球時変位部が主に変位、すなわち、撓んで折れ曲がり、さらにティ掴み部の横断面積はボール載置部よりも小さいので、インパクトにおける抵抗を減らし、ヘッドの抜けをよくすることができる。また、打球時の衝撃が小さい場合には、打球時変位部は元の形状に戻り、衝撃が大きい場合には、打球時変位部の形状が元に戻りきらない場合があるが、この場合は、手で元の形に戻すことにより形状の回復が可能であるので、ゴルフ用ティを長期に渡り使用することができる。
【0022】
請求項4の本発明は、打球時変位部とティ掴み部を形成する生分解性ゴムのゴム硬度は、規格JIS K 6253に基づくデュロメータタイプA(ショアA)によって測定したときに、50以上80未満であるゴルフ用ティである。
【0023】
請求項4の本発明では、打球時変位部とティ掴み部の硬度は、50以上80未満であるので、載置部にボールを載せたときに打球時変位部とティ掴み部が撓んで折れ曲がることがなく、ボールの位置を安定して維持することができる。一方、打球時には、打球時変位部が撓んで折れ曲がるので、ボール載置部の軟らかさと相俟って、ヘッドの抜けをよくすることができる。
【0024】
なお、打球時変位部とティ掴み部の硬度は、同じであってもよく、また、異なっていてもよい。手で掴む部分は、特に感性が関係するので、商品のバリエーションの拡大に寄与する。
【0025】
請求項5に記載の本発明は、ボール載置部と中間部との間、中間部と刺し込み部との間には、それぞれのゴム硬度の間のゴム硬度を有する連結部が形成されているゴルフ用ティである。
【0026】
請求項5に記載の本発明では、ボール載置部と中間部との間、中間部と刺し込み部との間には、それぞれのゴム硬度の間のゴム硬度を有する連結部が形成されているので、ボール載置部から刺し込み部において、材料面における連結ができ、ボール載置部、中間部、刺し込み部が明確に区別された場合の、各部位の界面での破断を防止することができる。
【0027】
請求項6の本発明は、生分解性ゴムは、天然ゴム混合体であるゴルフ用ティである。天然ゴムは、天然資源のひとつであり、ゴルフ場内に放置されても自然環境を壊すことなく、芝等の整備作業の妨げにならない利点のみならず、合成ゴムのような石油・ナフサから作られる化学工業品とは異なるので、製造過程における二酸化炭素の排出等もなく総合的に環境性能に優れている。そして、天然ゴムの有する弾性は、ずば抜けており、そのバリエーションも広範囲に渡り存在している。なお、天然ゴム混合体とは、天然ゴムに補強剤、充填剤、軟化剤、加硫剤などの配合剤を加えたものをいう。したがって、配合剤の添加量等により所望の硬度を容易に得ることができ、本発明のボール載置部、中間部(打球時変位部とティ掴み部)及び刺し込み部の要求性能にも十分対応することができる。
【0028】
請求項7の本発明は、ゴルフ用ティの表面には、水性塗料による表面処理が施されているゴルフ用ティである。天然ゴムは、通常、輪ゴムのようなあめ色や自動車用タイヤのような黒色をしており、見た目が単調である。請求項7の本発明では、ゴルフ用ティの表面には、水性塗料による表面処理が施されているので、生分解を損なうことがなく、環境性能を維持しつつ、カラフルであり、商品の付加価値を向上させることができる。なお、表面処理には、水性塗料による単色もしくは複数色の塗装のみならず、ざらつきのある塗装や皮シボ塗装をも含むものである。
【発明の効果】
【0029】
生分解性ゴムを用いて形成され、表面側にゴルフボールを載置するための座面を備えるボール載置部と、ボール載置部の裏面側には、ボール載置部よりもゴム硬度が大きい中間部と、中間部の裏面側には、中間部よりもゴム硬度が大きく、下端部を地中に突き刺すため尖らせた刺し込み部と、を有しているので、ドライバーヘッドを傷つけず、インパクトにおける抵抗を減らし、ヘッドの抜けをよくすることができ、硬いティグラウンドでも差し込み易いなどの性能面に優れている。また、変形し難く、欠け難く、折れ難いので長期に渡り使用できる。さらに、生分解性ゴムを用いているので、環境性能にも優れている。加えて、安価なゴルフ用ティを提供することができる。
【0030】
中間部に、ボール載置部よりも横断面積の小さい打球時変位部と、打球時変位部の裏面側に、略球状であり、打球時変位部よりも横断面積が大きく、ボール載置部よりも横断面積の小さいティ掴み部を有している場合は、ティを刺す場合には、ティ掴み部を持って刺すことができ操作性が良い。一方、打球時は、ボール載置部とティ掴み部の間に存在する打球時変位部が変位、すなわち、撓んで折れ曲がるので、インパクトにおける抵抗を減らし、ヘッドの抜けをよくすることができる。
【0031】
ボール載置部と中間部との間、中間部と刺し込み部との間には、それぞれのゴム硬度の間のゴム硬度を有する連結部が形成されているので、ボール載置部から刺し込み部において、材料面における連結ができ、ボール載置部、中間部、刺し込み部に明確に区別された場合の、各部位の界面での破断を防止することができる。
【0032】
生分解性ゴムは、天然ゴム混合体であるので、ゴルフ場内に放置されても自然環境を壊すことなく、芝等の整備作業の妨げにならない利点のみならず、合成ゴムのような石油・ナフサから作られる化学工業品とは異なるので、製造過程における二酸化炭素の排出等もなく総合的に環境性能に優れている。また、配合剤の添加量等により所望の硬度を容易に得ることができ、ボール載置部、中間部(打球時変位部とティ掴み部)及び刺し込み部の要求性能にも十分対応することができる。
【0033】
ゴルフ用ティの表面には、水性塗料による表面処理が施されているので、生分解を損なうことがなく、環境性能を維持しつつ、カラフルであり、商品の付加価値を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示すゴルフ用ティの断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態を示すゴルフ用ティの断面図である。
【
図3】従来のゴルフ用ティの側面図である(特許文献1)。
【
図4】従来のゴルフ用ティの側面図である(特許文献2)。
【
図5】従来のゴルフ用ティの側面図であり、(a)は、生分解性樹脂組成物を使用したもの、(b)は、(a)の生分解性樹脂組成物にソーダ石灰ガラス製短繊維を混入して一体的に成形したものである(特許文献3)。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1の実施形態]
図1に基づき、本発明の第1の実施形態のゴルフ用ティについて説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態のゴルフ用ティ1は、表面側にゴルフボールを載置するための座面部21を備えるボール載置部2と、ボール載置部2の裏面側に設けられる中間部4と、中間部4の裏面側に設けられ、略棒状の外形を有する刺し込み部本体部61と地中に突き刺すために先端部62を尖らせた刺し込み部6と、を有する。
【0036】
ボール載置部2は、表面側に位置し、ゴルフボールを載置するための略皿状の座面部21と、裏面に向かい横断面積が徐々に大きくなる略円錐台形状の載置部本体部22と、からなる。ボール載置部2は、硬度50の天然ゴム混合体である。
【0037】
なお、略皿状の座面部21は、ゴルフボールを載せる部位であるが、座面部21全体でゴルフボールを受けても良いが、座面部21全体ではなく、円外周部23のみでゴルフボールを受けることが、ゴルフボールに伝わる力の影響を少なくする観点で望ましい。
【0038】
ボール載置部2の裏面側には、載置部本体部22から裏面に向かい、載置部本体部22から離れるにつれて横断面積が徐々に小さくなり、断面において、外側に凸の弧状と、外側に凸の弧状から連続して裏面側に向かい、外側に凸の弧状から離れるにつれて横断面積がわずかに小さくなり、断面において、内側に凸の弧状を有する第1連結部3が形成されている。第1連結部3のゴム硬度については、後述する。
【0039】
第1連結部3の裏面側には、第1連結部3から離れるにつれて横断面積がわずかに小さくなる略円錐台形状からなる中間部4が形成されている。中間部4は、硬度70の天然ゴム混合体である。なお、中間部4は、第1連結部3から離れても横断面積が変わらない円柱形状であってもよい。
【0040】
中間部4の裏面側には、中間部4から連続して裏面側に向かい、中間部4から離れるにつれて横断面積がわずかに小さくなる略円錐台形状の第2連結部5が形成されている。なお、第2連結部5は、中間部4から離れても横断面積が変わらない円柱形状であってもよい。第2連結部5のゴム硬度については、後述する。
【0041】
第2連結部5の裏面側には、第2連結部5から離れるにつれて横断面積がわずかに小さくなる略円錐台形の刺し込み部本体部61と、刺し込み部本体部61の裏面側から離れるにつれて横断面積が小さくなる略円錐状の先端部62からなる刺し込み部6が形成されている。なお、刺し込み部本体部61は、第2連結部5から離れても横断面積が変わらない円柱形状であってもよい。刺し込み部6は、硬度90の天然ゴム混合体である。
【0042】
本第1の実施形態のゴルフ用ティ1は、コンプレッション成形法を用いて製造した。コンプレッション成形法とは、適温にした金型にゴム材料を仕込んで金型を閉じ、圧力をかけて適切な架橋時間保持した後に金型を開き、製品を取り出す成形方法である。
【0043】
本第1の実施形態では、上記のゴルフ用ティ1の立体形状を半割した形状が複数形成された成形割金型(図示せず)に、ボール載置部2、中間部4、刺し込み部6に対応する硬度を有する天然ゴム混合体の平板を、ボール載置部2、中間部4、刺し込み部6の位置に配置し、上記形状が形成された反対側の成形割金型を閉じ、圧力をかけて成形した。この結果、ボール載置部2、中間部4、刺し込み部6の各部の連結部分、すなわち、第1連結部3及び第2連結部5は、硬度の異なる材料が混合されて形成されるので、第1連結部3及び第2連結部5のゴム硬度は、各部のほぼ中間のゴム硬度を有する状態になっている。
【0044】
上記のゴルフ用ティ1は、ボール載置部2(ゴム硬度:50)、中間部4(ゴム硬度:70)、刺し込み部6(ゴム硬度:90)でできているので、ドライバーヘッドを傷つけず、インパクトにおける抵抗を減らし、ヘッドの抜けをよくすることができ、硬いティグラウンドでも差し込み易いなどの性能面で優れており、欠け難く、折れ難いので長期に渡り使用できる。また、生分解性ゴムである天然ゴム混合体を用いているので、環境性能にも優れており、そして、安価なゴルフ用ティを提供することができる。
【0045】
[第2の実施形態]
図2に基づき、本発明の第2の実施形態のゴルフ用ティについて説明する。本発明の第2の実施形態において、上述の第1の実施形態と異なる点は、第1に、中間部において、打球時変位部41とティ掴み部42が存在する点であり、第2に、ゴルフ用ティの表面には、水性塗料による表面処理が施されている点にある。
【0046】
ボール載置部2は、表面側に位置し、ゴルフボールを載置するための略皿状の座面部21と、裏面に向かい横断面積が徐々に大きくなる略円錐台形状の載置部本体部22と、からなる。ボール載置部2の材料は、硬度50の天然ゴム混合体である。
【0047】
また、ボール載置部2の裏面側には、載置部本体部22から裏面側に向かい、載置部本体部22から離れるにつれて横断面積が徐々に小さくなり、断面において、外側に凸の弧状と、外側に凸の弧状から連続して裏面側に向かい、外側に凸の弧状から離れるにつれて横断面積がわずかに小さくなり、断面において、内側に凸の弧状を有する第1連結部3が形成されている。
【0048】
第1連結部3の裏面側には、横断面積に関し、第1連結部3から離れるにつれて、一旦、徐々に小さくなるが、その後に、徐々に大きくなる打球時変位部41が形成されている。打球時変位部41の材料は、硬度70の天然ゴム混合体である。
【0049】
打球時変位部41の裏面側には、略球状のティ掴み部42が形成されている。ティ掴み部42の横断面積は、打球時変位部41より大きく、ティ載置部2の横断面積より小さい。なお、打球時変位部41とティ掴み部42は、なだらかにつながっている。ティ掴み部42の材料は、硬度70の天然ゴム混合体である。
【0050】
本第2の実施形態では、打球時変位部41とティ掴み部42の硬度は、同じにして形成したが、硬度がボール載置部2より大きく、50以上、80未満であれば、異なっていてもよい。また、異なる場合は、打球時変位部41がティ掴み部42より大きい場合でも、打球時変位部41がティ掴み部42より小さい場合であってもよい。打球時変位部41とティ掴み部42の硬度が異なる場合は、それぞれ対応する硬度を有する天然ゴム混合体の平板を、打球時変位部41とティ掴み部42の位置に配置することによって成形を行う。この場合は、打球時変位部41とティ掴み部42の間には、両部位の間のゴム硬度を有する連結部が形成されることになる。
【0051】
ティ掴み部42の裏面側には、ティ掴み部42から離れるにつれて横断面積が徐々に小さくなり、断面において、内側に凸の弧状を有する第2連結部5が形成されている。ティ掴み部42と第2連結部5は、なだらかにつながっている。
【0052】
第2連結部5の裏面側には、第2連結部5から離れるにつれて横断面積がわずかに小さくなる略円錐台形の刺し込み部本体部61と、刺し込み部本体部61から裏面側に向かい、刺し込み部本体部61から離れるにつれて横断面積が小さくなる略円錐状の先端部62からなる刺し込み部6が形成されている。第2連結部5と刺し込み部本体部61は、なだらかにつながっている。なお、刺し込み部本体部61は、第2連結部5から離れても横断面積が変わらない円柱形状であってもよい。刺し込み部6の材料は、硬度90の天然ゴム混合体である。
【0053】
上記の第1連結部3及び第2連結部5は、硬度の異なる材料が混合されて形成されるので、第1連結部3及び第2連結部5のゴム硬度は、各部位のほぼ中間のゴム硬度を有する状態になっている。
【0054】
本第2の実施形態では、中間部4には、ボール載置部2の裏面側に、ボール載置部2よりも横断面積の小さな打球時変位部41と、打球時変位部41の下端部に連結される略球状のティ掴み部42を有しているので、ティを刺す場合には、ティ掴み部42を持って差すことができ操作性がよい。一方、打球時は、ボール載置部2とティ掴み部42の間に存在する打球時変位部41が主に変位、すなわち、撓んで折れ曲がり、さらにティ掴み部42の横断面積はボール載置部2の横断面積よりも小さいので、インパクトにおける抵抗を減らし、ヘッドの抜けをよくすることができる。
【0055】
本第2の実施形態では、ゴルフ用ティ1の表面には、水性塗料による表面処理が施されている。ここで、水性塗料とは、塗料の希釈にシンナーの代わりに水で薄めるタイプの塗料をいい、水性アクリルタイプ、水性ウレタンタイプ、水性シリコンタイプがある。
【0056】
本第2の実施形態では、上記のどのタイプの水性塗料を使用することができ、単色もしくは複数色の塗装のみならず、ざらつきのある塗装から皮シボ塗装などを施すことにより、商品の付加価値を向上させることができる。
【0057】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、製造方法について、本発明の実施形態では、コンプレッション成形法を用いて製造したが、トランスファー成形やインジェクション成形を用い、順次異なったゴム硬度の素材材料を注入口から導入して製造してもよい。
【0059】
例えば、ゴルフ用ティは、プレイヤーによって好みの高さ、すなわち、使用するティの長さが異なる。本発明においては、刺し込み本体部の長さを変えることにより、ティの長さの異なる複数のゴルフ用ティを提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ゴルフ用ティ
2 ボール載置部
21 座面部
22 載置部本体部
23 円外周部
3 第1連結部
4 中間部
41 打球時変位部
42 ティ掴み部
5 第2連結部
6 刺し込み部
61 刺し込み部本体部
62 先端部