【解決手段】レーザ加工装置を用いて対象物を加工するレーザ加工方法であって、レーザ光を出射する工程と、対象物の加工面上において複数のレーザスポットが形成されるように前記レーザ光の位相を変調する工程と、位相が変調された前記レーザ光を前記加工面上に集光する工程と、前記複数のレーザスポットが前記加工面上においてトレパニング軌道を描くように、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる工程と、を含み、前記相対移動させる工程は、前記トレパニング軌道の直径をDtとし、前記レーザスポットの直径をDIとしたときに、0<Dt/DI<100を満たすように前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる、レーザ加工方法。
前記相対移動させる工程は、前記対物レンズ及び前記対象物の双方を移動させることによって、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる、請求項1に記載のレーザ加工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガルバノスキャナを用いたレーザ加工方法は、位置決め精度に限界があるため、レーザ加工した孔の輪郭精度が悪いという課題がある。
【0007】
トレパニングを行うレーザ加工方法は、加工速度が低下するという課題がある。
【0008】
本発明は、従来における前記諸課題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、レーザ加工を高速かつ高精度で行うことが可能なレーザ加工方法を提供することを目的とする。また、本発明は、レーザ加工を高速かつ高精度で行うことが可能なレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> レーザ光源と空間光位相変調器と対物レンズと移動機構とを備えるレーザ加工装置を用いて対象物を加工するレーザ加工方法であって、
前記レーザ光源によって、レーザ光を出射する工程と、
前記空間光位相変調器によって、対象物の加工面上において複数のレーザスポットが形成されるように前記レーザ光の位相を変調する工程と、
前記対物レンズによって、位相が変調された前記レーザ光を前記加工面上に集光する工程と、
前記移動機構によって、前記複数のレーザスポットが前記加工面上においてトレパニング軌道を描くように、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる工程と、を含み、
前記相対移動させる工程は、前記トレパニング軌道の直径をDtとし、前記レーザスポットの直径をDIとしたときに、0<Dt/DI<100を満たすように前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる、レーザ加工方法である。
<2> 前記相対移動させる工程は、前記対物レンズを移動させることによって、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる、<1>に記載のレーザ加工方法である。
<3> 前記相対移動させる工程は、前記対象物を移動させることによって、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる、<1>に記載のレーザ加工方法である。
<4> 前記相対移動させる工程は、前記対物レンズ及び前記対象物の双方を移動させることによって、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる、<1>に記載のレーザ加工方法である。
<5> 前記対象物に加工される形状は、貫通孔又は止まり孔である、<1>から<4>のいずれかに記載のレーザ加工方法である。
<6> 対象物をレーザ光で加工するレーザ加工装置であって、
レーザ光を出射するレーザ光源と、
対象物の加工面上において複数のレーザスポットが形成されるように前記レーザ光の位相を変調する空間光位相変調器と、
位相が変調された前記レーザ光を前記加工面上に集光する対物レンズと、
前記複数のレーザスポットが前記加工面上においてトレパニング軌道を描くように、前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる移動機構と、を備え、
前記移動機構は、前記トレパニング軌道の直径をDtとし、前記レーザスポットの直径をDIとしたときに、0<Dt/DI<100を満たすように前記対物レンズと前記対象物とを相対移動させる、レーザ加工装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザ加工を高速かつ高精度で行うことが可能なレーザ加工方法を提供することができる。また、本発明によれば、レーザ加工を高速かつ高精度で行うことが可能なレーザ加工装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置1の概略構成を示す図である。レーザ加工装置1は、レーザ光源11と、空間光位相変調器12と、対物レンズ13と、移動機構14とを備える。
【0014】
レーザ加工装置1は、対象物20をレーザ光で加工する。レーザ加工装置1によって加工される対象物20は、例えば、プリント基板、半導体チップのインターポーザ、又はスクリーン印刷用孔版などであってよい。レーザ加工装置1は、貫通孔若しくは止まり孔などの孔を形成する加工、又は、対象物20の表面処理を行う加工などをすることができる。
【0015】
レーザ光源11は、レーザ光101を出射する。レーザ光源11は、レーザ加工に一般的に用いられるレーザ光源であってよい。レーザ光源11は、対象物20の光吸収特性に合わせて波長が選定されていることが望ましい。
【0016】
例えば対象物20が樹脂である場合、レーザ光源11は、YAGレーザの355nm、又はKrFエキシマレーザの248nmなどであってよい。また例えば、対象物20が金属である場合、レーザ光源11は、YAGレーザの1064nm、ファイバーレーザの1500nm、又はCO2レーザなどであってよい。なお、レーザ光源11は、上述の例示した光源に限定されるものではなく、対象物20の材料に適した光源であればよい。
【0017】
レーザ光源11は、単一の光源であってもよいし、複数の光源を組み合わせて多重化したものであってもよい。レーザ光源11は、加工に必要とされる出力に合わせて構成されてよい。
【0018】
空間光位相変調器12は、複数のレーザスポットが対象物20の加工面21上において形成されるように、レーザ光101の位相を変調する。ここで、「レーザスポット」は、対象物20の加工面21上において、集光されたレーザ光が形成する領域を意味する。
【0019】
空間光位相変調器12がレーザ光101の位相を変調することによって対象物20の加工面21上に形成される複数のレーザスポットの配置の例を
図2A〜
図2Cに示す。
図2Aは、複数のレーザスポット102が、49点格子配置(7×7)で配置されている例を示す。
図2Bは、複数のレーザスポット102が、48点千鳥配置(8×6)で配置されている例を示す。
図2Cは、複数のレーザスポット102が、96点千鳥配置(12×8)で配置されている例を示す。
【0020】
このように空間光位相変調器12によって複数のレーザスポットが対象物20の加工面21上に形成されることにより、レーザ加工装置1は、例えば複数の孔を、対象物20に同時に形成することができる。
【0021】
空間光位相変調器12は、所望の配置の複数のレーザスポットが対象物20の加工面21上において形成されるように、レーザ光101の位相を変調させて2次元ホログラムを生成する。空間光位相変調器12が生成した2次元ホログラムが対物レンズ13を通して対象物20の加工面21上で結像すると、所望の配置の複数のレーザスポットが形成される。
【0022】
空間光位相変調器12は、例えば、アドレス部と光変調部とを備えてよい。空間光位相変調器12は、アドレス部に書き込まれた情報に応じて、レーザ光101の位相を光変調部によって変調することができる。空間光位相変調器12は、例えば、液晶の配向を制御してレーザ光101の位相を変調させてよい。
【0023】
図1では、透過型の空間光位相変調器12を示しているが、空間光位相変調器12は反射型であってもよい。空間光位相変調器12を反射型とする場合は、別途ミラーなどを用いて、空間光位相変調器12が生成した2次元ホログラムが対物レンズ13に入射されるようにすればよい。
【0024】
空間光位相変調器12は、レーザ光源11が出射するレーザ光101の波長及び強度に適合した空間光位相変調器であってよい。空間光位相変調器12は、例えば、HOLOEYE社のPLUTO、又は浜松ホトニクス社のLCOS−SLM(Liquid Crystal On Silicon - Spatial Light Modulator)などであってよい。
【0025】
対物レンズ13は、空間光位相変調器12によって位相が変調されたレーザ光を、対象物20の加工面21上に集光する。上述のように、空間光位相変調器12によって生成された2次元ホログラムが対物レンズ13を通して対象物20の加工面21上で結像されることにより、所望の配置の複数のレーザスポットが加工面21上に形成される。
【0026】
対物レンズ13は、レーザ光源11が出射するレーザ光に対して十分なレーザ耐力を有するものが選定されている。また、対物レンズ13は、対象物20の加工面21上おいて、加工対象の形状(例えば孔の形状)以下のレーザスポット径を形成できるものが選定されている。
【0027】
移動機構14は、対物レンズ13を
図1に示すX方向に沿って移動させることができる。また、移動機構14は、対物レンズ13を
図1に示すY方向に沿って移動させることができる。即ち、移動機構14は、対物レンズ13を、XY平面に平行に2次元状に移動させることができる。
図1に示すように、XY平面は、対象物20の加工面21に対して平行な平面である。
【0028】
移動機構14は、対物レンズ13を移動させることで、対物レンズ13と対象物20とを相対移動させることができる。移動機構14が対物レンズ13と対象物20とを相対移動させることにより、対象物20の加工面21上に形成される複数のレーザスポットの位置が移動する。
【0029】
移動機構14は、複数のレーザスポットが対象物20の加工面21上においてトレパニング軌道を描くように、対物レンズ13と対象物20とを相対移動させる。ここで、「トレパニング軌道」とは、レーザスポットの中心点が所望の経路を移動することにより描かれる軌道である。所望の経路は、例えば円形状の経路、又は、四角形などの多角形状の経路であってよい。所望の経路が円形状の経路ある場合、レーザスポットの直径をDIとし、トレパニング軌道の直径をDtとすると、レーザスポットがトレパニング軌道を描くように移動機構14が対物レンズ13と対象物20とを相対移動させることにより、直径がDI+Dtの孔が対象物20の加工面21上に形成される。なお、トレパニング軌道の直径とは、レーザスポットの中心点が移動する円の直径を意味する。
【0030】
移動機構14は、0<Dt/DI<100の関係を満たすように、対物レンズ13と対象物20とを相対移動させる。
【0031】
図3に、移動機構14の構成の一例を示す。移動機構14は、第1移動機構141と、第2移動機構142とを備える。第1移動機構141は、第2移動機構142の上に積み重ねられている。第1移動機構141の上には、対物レンズ13が固定されている。
【0032】
第1移動機構141は、例えばピエゾステージであってよい。第1移動機構141は、上部ステージ141aと、下部ステージ141bとを備える。上部ステージ141aは、下部ステージ141bに対してX方向に移動可能である。上部ステージ141aは、第1移動機構141に印加された電圧に応じて、X方向に移動する。
【0033】
第2移動機構142は、例えばピエゾステージであってよい。第2移動機構142は、上部ステージ142aと、下部ステージ142bとを備える。上部ステージ142aは、下部ステージ142bに対してY方向に移動可能である。上部ステージ142aは、第2移動機構142に印加された電圧に応じて、Y方向に移動する。
【0034】
移動機構14は、第1移動機構141によるX方向の移動と、第2移動機構142によるY方向の移動とを組み合わせて、第1移動機構141に固定された対物レンズ13を、XY平面に平行に2次元状に移動させることができる。
【0035】
図4A〜
図4Cを参照して、X方向の移動及びY方向の移動により、レーザスポットの中心点が直径Dtの円周に沿って移動する様子を説明する。
【0036】
図4Aは、移動機構14が対物レンズ13をX方向に移動させることによりレーザスポットがX方向に移動する移動量の時間変化を示す。
図4Bは、移動機構14が対物レンズ13をY方向に移動させることによりレーザスポットがY方向に移動する移動量の時間変化を示す。
【0037】
図4A及び
図4Bに示すように、レーザスポットのY方向の移動量は、X方向の移動量に対して、位相が90度ずれている。このように、X方向の移動量の位相と、Y方向の移動量の位相とが90度ずれていることにより、レーザスポットの中心点は、
図4Cに示すように、直径Dtの円周上を移動する。
【0038】
移動機構14は、例えば、レーザスポットの中心点が5Hzのスピードで直径Dtの円周上を移動するように、対物レンズ13を移動させてよい。
【0039】
移動機構14の構成は、
図3に示した構成に限定されない。移動機構14は、対物レンズ13をXY平面に平行に2次元状に移動させることができる任意の構成であってよい。移動機構14は、例えば、リニアモータ又はボールネジなどのような直動機構によって構成されてもよい。また、移動機構14は、例えば、サーボスピンドルなどのような回転機構によって構成されてもよい。また、移動機構14は、電気光学変調器(EOM)又は音響光学変調器(AOM)などによってレーザスポットの位置を移動させてもよい、
【0040】
レーザ加工装置1は、上述したレーザ光源11、空間光位相変調器12、対物レンズ13、及び移動機構14に加えて、レーザ加工装置に一般的に用いられる構成要素を備えていてもよい。レーザ加工装置1は、例えば、レンズ、ミラー、シャッタ、波長板、アパーチャ、偏光子、リニアステージ、ローテーションステージ、ガルバノスキャナ、オートフォーカス機構、アッテネータ、オートパワーコントローラ、ビームプロファイラ、回折格子、及びホログラム素子などの構成要素のうちのいくつかをさらに備えていてもよい。
【0041】
続いて、
図5に示すフローチャートを参照して、対象物20に複数の孔が形成される様子を説明する。
図5に示すフローチャートの説明においては、49点格子配置で、複数のレーザスポットが対象物20の加工面21上に配置されるものとする。
【0042】
ユーザは、対象物20を、レーザ加工装置1の所定の位置にセットする(ステップS101)。対象物20がセットされると、レーザ加工装置1は、レーザ照射を開始する(ステップS102)。この際、レーザ加工装置1は、レーザ光源11がレーザ光の出射を開始することによってレーザ照射を開始してもよいし、又は、レーザ光源11と空間光位相変調器12との間に設置されたシャッタを開くことによってレーザ照射を開始してもよい。
【0043】
ステップS102における様子を
図6Aに示す。レーザ照射が開始されると、直径がDIのレーザスポット102によって、対象物20に孔103が形成される。この時点では、対象物20に形成された孔103の直径はDIである。
【0044】
レーザ加工装置1の移動機構14は、複数のレーザスポットが対象物20の加工面21上においてトレパニング軌道を描くように、対物レンズ13と対象物20とを相対移動させる(ステップS103)。
【0045】
ステップS103における様子を
図6Bに示す。直径がDIのレーザスポット102が、直径Dtの円周に沿って移動すると、対象物20に、直径がDI+Dtの孔103が徐々に形成されていく。
【0046】
レーザスポットが少なくとも1周以上のトレパニング軌道を移動すると、レーザ加工装置1は、レーザ照射を終了する(ステップS104)。この際、レーザ加工装置1は、レーザ光源11がレーザ光の出射を停止することによってレーザ照射を終了してもよいし、又は、レーザ光源11と空間光位相変調器12との間に設置されたシャッタを閉じることによってレーザ照射を終了してもよい。
【0047】
ステップS104における様子を
図6Cに示す。
図6Cに示すように、対象物20には、直径がDI+Dtの孔103が形成されている。
【0048】
ユーザは、対象物20を、レーザ加工装置1の所定の位置から取り外してレーザ加工処理を終了する(ステップS105)。
【0049】
図7に、レーザ加工装置1によるレーザ加工によって、実際に対象物20に孔が形成された様子を示す。
図7には、トレパニング軌道の直径Dtが、0μm、14μm、16μm、18μm、20μm、及び22μmの6通りの場合の図を示す。
【0050】
レーザ加工装置1によって加工可能な代表的な加工例と、各加工例における好適な条件を以下に示す。
・加工例1(プリント基板の孔加工)
孔径:300〜1000μm
精度:60〜200μm以内
孔深さ:1000〜3000μm
対象物の材質:ポリイミド、ガラス繊維入りエポキシ
レーザ光源:UV−YAGレーザ λ=355nm
・加工例2(半導体チップのインターポーザ孔加工)
孔径:30〜300μm
精度:6〜60μm以内
孔深さ:10〜500μm
対象物の材質:シリコン、ガラス、シリコーン
レーザ光源:ピコ秒パルスレーザ λ=800nm
・加工例3(スクリーン印刷用孔版加工)
孔径:30〜1000μm
精度:6〜200μm以内
孔深さ:10〜1000μm
対象物の材質:ステンレス、ニッケル
レーザ光源:UV−YAGレーザ λ=355nm
【0051】
本実施形態に係るレーザ加工装置1によれば、空間光位相変調器12は、対象物20の加工面21上において複数のレーザスポットが形成されるようにレーザ光の位相を変調する。これにより、複数のレーザスポットで同時に孔などを形成することができるため、レーザ加工を高速で行うことができる。また、移動機構14は、複数のレーザスポットが対象物20の加工面21上においてトレパニング軌道を描くように、対物レンズ13と対象物20とを相対移動させる。これにより、対象物20に形成する孔などの輪郭精度を向上させることができるため、レーザ加工を高精度で行うことができる。また、移動機構14は、0<Dt/DI<100を満たすように対物レンズ13と対象物20とを相対移動させる。これにより、レーザスポットが移動するトレパニング軌道の円周が長くなり過ぎ、レーザ加工の時間が遅くなることを抑制することができる。本実施形態に係るレーザ加工装置1は、これらの技術的特徴を有することにより、レーザ加工を高速かつ高精度で行うことが可能である。
【0052】
また、複数の加工をする場合、従来のガルバノミラー方式では、一つの集光点を高速で動かして加工する。この方式は、一個一個のパターンを順次加工していくため、近隣の加工で発生したデブリが累積で溜まりやすく、後半の加工ではデブリの付着により加工品質が劣化するという課題がある。これに対し、本実施形態に係るレーザ加工装置1は、空間光位相変調器12が、対象物20の加工面21上において複数のレーザスポットが形成されるようにレーザ光の位相を変調するため、同時に複数の加工をすることができる。従って、デブリの発生による加工品質の劣化を抑制することができる。
【0053】
また、ガルバノミラー方式では、ミラー角度とシャッタ開閉動作とを高速かつ高精度に制御するため高額な同期制御システムが必要である。これに対し、本実施形態に係るレーザ加工装置1は、このような高速かつ高精度の同期制御システムを必要としないため、装置を構成するためのコストを低減することができる。
【0054】
(第1変形例)
図8は、本発明の第1変形例に係るレーザ加工装置2の概略構成を示す図である。第1変形例に係るレーザ加工装置2については、
図1などを参照して説明したレーザ加工装置1との相違点について主に説明する。
【0055】
第1変形例に係るレーザ加工装置2は、レーザ光源11と、空間光位相変調器12と、対物レンズ13と、移動機構15とを備える。
【0056】
移動機構15は、対象物20を
図8に示すX方向に沿って移動させることができる。また、移動機構15は、対象物20を
図8に示すY方向に沿って移動させることができる。即ち、移動機構15は、対象物20を、XY平面に平行に2次元状に移動させることができる。
【0057】
移動機構15は、対象物20を移動させることで、対物レンズ13と対象物20とを相対移動させることができる。移動機構15が対物レンズ13と対象物20とを相対移動させることにより、対象物20の加工面21上に形成される複数のレーザスポットの位置が移動する。
【0058】
移動機構15は、
図1に示した移動機構14のように対物レンズ13を移動させるのではなく、対象物20を移動させるという点で
図1に示した移動機構14と相違し、それ以外の機能は、
図1に示した移動機構14と同様である。
【0059】
第1変形例に係るレーザ加工装置2は、
図1に示したレーザ加工装置1のように対物レンズ13を移動させる移動機構14を備えるのではなく、対象物20を移動させる移動機構15を備えるという点で
図1に示したレーザ加工装置1と相違する。
【0060】
第1変形例に係るレーザ加工装置2も、対物レンズ13と対象物20とを相対移動させることにより、
図1に示したレーザ加工装置1と同様の効果を有する。
【0061】
(第2変形例)
図9は、本発明の第2変形例に係るレーザ加工装置3の概略構成を示す図である。第2変形例に係るレーザ加工装置3については、
図1などを参照して説明したレーザ加工装置1との相違点について主に説明する。
【0062】
第2変形例に係るレーザ加工装置3は、レーザ光源11と、空間光位相変調器12と、対物レンズ13と、移動機構14と、移動機構15とを備える。
【0063】
第2変形例に係るレーザ加工装置3は、
図1に示したレーザ加工装置1が、さらに
図8に示した移動機構15を備えるという点で、
図1に示したレーザ加工装置1と相違する。
【0064】
第2変形例に係るレーザ加工装置3は、移動機構14が対物レンズ13を移動させることで、対物レンズ13と対象物20とを相対移動させることができる。また、第2変形例に係るレーザ加工装置3は、移動機構15が対象物20を移動させることで、対物レンズ13と対象物20とを相対移動させることができる。また、第2変形例に係るレーザ加工装置3は、移動機構14が対物レンズ13を移動させ、移動機構15が対象物20を移動させるというように、対物レンズ13及び対象物20の双方を移動させることで、対物レンズ13と対象物20とを相対移動させることができる。
【0065】
第2変形例に係るレーザ加工装置3も、対物レンズ13と対象物20とを相対移動させることにより、
図1に示したレーザ加工装置1と同様の効果を有する。
【0066】
(第3変形例)
図10は、本発明の第3変形例に係るレーザ加工装置4の概略構成を示す図である。第3変形例に係るレーザ加工装置4については、
図1などを参照して説明したレーザ加工装置1との相違点について主に説明する。
【0067】
第4変形例に係るレーザ加工装置3は、レーザ光源11と、対物レンズ13と、移動機構14と、空間光位相変調器16と、プリズムミラー17とを備える。
【0068】
空間光位相変調器16は、
図1に示した透過型の空間光位相変調器12と異なり、反射型の空間光位相変調器である。空間光位相変調器16は、透過型でなく反射型であること以外は、
図1に示した空間光位相変調器12と同様の機能を有する。
【0069】
プリズムミラー17は、レーザ光源11から入射されたレーザ光101を反射して、空間光位相変調器16に向けて照射する。プリズムミラー17は、空間光位相変調器16で位相が変調されて戻ってきたレーザ光を反射して、対物レンズ13に照射する。
【0070】
第3変形例に係るレーザ加工装置4も、反射型の空間光位相変調器16が
図1に示した透過型の空間光位相変調器12と同様の機能を有するため、
図1に示したレーザ加工装置1と同様の効果を有する。
【実施例】
【0071】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に制限されるものではない。以下に説明するレーザ加工装置の構成で、様々な加工条件でレーザ加工を行い、加工部の輪郭精度、及び加工時間を評価した。
【0072】
加工部の輪郭精度は、10%より小さければ「OK」と判定し、10%より大きければNGと判定した。加工時間は、1つの孔あたりの加工時間が1000ms以下であれば「OK」と判定し、1000msより大きければNGと判定した。
【0073】
(レーザ加工装置の構成)
実施例及び比較例の評価において用いたレーザ加工装置の構成を以下に示す。
・レーザ光源:サイバーレーザ製IFRIT
・空間光位相変調器:浜松ホトニクス製10468−02
(ホログラムデータは、IFTA法により生成)
・移動機構:シグマ光機製対物レンズアクチュエータSFS−H60XYZ
【0074】
(加工条件)
以下の条件をパラメータとして組み合わせて、実施例1〜4及び比較例1〜3とした。
・加工内容の種別:貫通孔、止まり孔
・加工部寸法:7〜400μm、円形
・対象物:SUS304(厚さ20μm又は1000μm)、
ポリイミドフィルム(厚さ20μm)、
シリコーンフィルム(厚さ200μm)
・トレパニング軌道の直径(Dt):0〜396.3μm
・レーザスポットの直径(DI):3.7μm又は8.8μm
・レーザスポットの配置:48千鳥、96千鳥、1(位相変調なし)
【0075】
(実施例1〜4の評価結果)
以下の表1に、実施例1〜4の評価結果を示す。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例1〜4においては、空間光位相変調器によって、対象物の加工面上に複数のレーザスポットが形成されるようにしている。また、実施例1〜4においては、トレパニング軌道の直径が3.3〜21.2μmであり、全ての実施例1〜4においてトレパニングが行われている。また、実施例1〜4においては、Dt/DIが0.9〜2.4であり、0<Dt/DI<100の条件を満たしている。
【0078】
上述のような加工条件で行われた全ての実施例1〜4において、加工部の輪郭精度は「OK」評価であった。また、全ての実施例1〜4において、加工時間は「OK」評価であった。
【0079】
(比較例1〜3の評価結果)
以下の表2に、比較例1〜3の評価結果を示す。
【0080】
【表2】
【0081】
比較例1は、Dtが11.2μmでありトレパニングを行っているが、空間光位相変調器は位相変調を行っていない。従って、対象物の加工面上には1つのレーザスポットのみが形成されている。その結果、加工部の輪郭精度は「OK」評価であるが、加工時間は1000msを超えて「NG」評価となっている。
【0082】
比較例2は、空間光位相変調器は位相変調を行い、対象物の加工面上に48千鳥のレーザスポットを形成しているが、Dtが0μmでありトレパニングは行われていない。その結果、加工時間は「OK」評価であるが、加工部の輪郭精度は10%を超えて「NG」評価となっている。
【0083】
比較例3は、Dtが396.3μmでありトレパニングを行っている。また、空間光位相変調器が位相変調を行い、対象物の加工面上に48千鳥のレーザスポットを形成している。しかしながら、Dt/DIが107.1であり、0<Dt/DI<100との条件は満たしていない。その結果、加工部の輪郭精度は「OK」評価であるが、加工時間は1000msを超えて「NG」評価となっている。
【0084】
上述の実施例1〜4及び比較例1〜3の評価結果から、レーザ加工を高速かつ高精度で行うための好適な条件が見出せた。即ち、空間光位相変調器が位相変調を行い、対象物の加工面上に複数のレーザスポットを形成することが好ましい。また、トレパニングを行うことが好ましい。また、トレパニングは、0<Dt/DI<100との条件を満たして行うことが好ましい。