特開2020-82261(P2020-82261A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-82261ダイヤフラム移送装置及び液体封入式防振マウントの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-82261(P2020-82261A)
(43)【公開日】2020年6月4日
(54)【発明の名称】ダイヤフラム移送装置及び液体封入式防振マウントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/00 20060101AFI20200508BHJP
   B23P 19/04 20060101ALI20200508BHJP
   F16F 13/10 20060101ALI20200508BHJP
   F16J 3/02 20060101ALI20200508BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20200508BHJP
【FI】
   B23P19/00 301L
   B23P19/04 D
   F16F13/10 J
   F16F13/10 L
   F16J3/02 Z
   F16J15/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-219385(P2018-219385)
(22)【出願日】2018年11月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 紘晋
【テーマコード(参考)】
3C030
3J043
3J045
3J047
【Fターム(参考)】
3C030AA16
3C030BB11
3C030BC02
3C030CC04
3J043AA03
3J043DA20
3J043FA20
3J043FB12
3J045AA14
3J045CA15
3J047AA03
3J047AB01
3J047DA02
3J047FA02
3J047GA01
(57)【要約】
【課題】ダイヤフラムの吸着性を向上させる。
【解決手段】ダイヤフラム移送装置1は、面直方向に突出した第1突出部34を有するダイヤフラム30を吸着して移送する。ダイヤフラム移送装置1は、ダイヤフラム30が第1突出部34を下方に向けた姿勢で載置される載置台10と、載置台10に載置されたダイヤフラム30を、前記突出部の外周側において、上方から吸着する吸着パッド22と、を備えている。載置台10は、ダイヤフラム30のうち吸着パッド22により吸着される外周側厚肉部37に対して下方から対向する環状の台座部13と、この内径側に下方に凹設された第2凹部14とを有している。上面視で、ダイヤフラム30の第1突出部34の全体が、第2凹部14の内側に位置している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面直方向に突出した突出部を有するダイヤフラムを吸着して移送するダイヤフラム移送装置であって、
ダイヤフラムが前記突出部を下方に向けた姿勢で載置される載置台と、
前記載置台に載置されたダイヤフラムを、前記突出部の外周側において、上方から吸着する吸着パッドと、
を備え、
前記載置台は、前記ダイヤフラムのうち前記吸着パッドにより吸着される被吸着部に対して下方から対向する環状の台座部と、この内径側に下方に凹設された凹部とを有し、
上面視で、前記ダイヤフラムの前記突出部の全体が、前記凹部の内側に位置している、ダイヤフラム移送装置。
【請求項2】
前記ダイヤフラムは、前記載置台に載置されており前記吸着パッドに吸着されていない状態で、上下方向において前記台座部に対して第1隙間を介して対向している、
請求項1に記載のダイヤフラム移送装置。
【請求項3】
前記ダイヤフラムは、前記載置台に載置されており前記吸着パッドに吸着されていない状態で、上下方向において前記突出部が前記凹部に対して第2隙間を介して対向しており、
前記第1隙間の長さは、前記第2隙間の長さ以下である、
請求項2に記載のダイヤフラム移送装置。
【請求項4】
前記載置台は、前記ダイヤフラムの外周部を、外径側から径方向に位置決めする外周壁部と、下方から支持する底面とを有する環状の段部をさらに有している、
請求項1〜3のいずれか1つに記載のダイヤフラム移送装置。
【請求項5】
前記載置台は、前記段部を径方向に貫通する溝部が形成されており、
前記載置台に前記ダイヤフラムが位置決めされた状態で、前記ダイヤフラムの下側に前記載置台との間に画定される空間が、前記溝部を介して外部に連通している、
請求項4に記載のダイヤフラム移送装置。
【請求項6】
液室が形成されたゴム部材と、面直方向に突出した突出部を有しており前記ゴム部材の前記液室を封止するダイヤフラムとを準備し、
前記ゴム部材の前記液室に液体を注入し、
請求項1〜5のいずれか1つに記載のダイヤフラム移送装置を用いて、前記ダイヤフラムを吸着して前記ゴム部材に移送し、
前記ダイヤフラムを前記ゴム部材に組み付けて、前記液室に前記液体を封入して、
液体封入式防振マウントを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラム移送装置及び液体封入式防振マウントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、液体封入式防振マウント(例えば液封エンジンマウント等)は、ゴム部材に形成された液室に液体を注入した後、液室の開口部にダイヤフラムを組み付けることによって液室に液体が封入されて製造される。ダイヤフラムは、載置台に載置された後に、ダイヤフラム移送装置によって吸着されて移送され、ゴム部材に組み付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−329079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6(a)に示すように、従来のダイヤフラム移送装置100では、ダイヤフラム105は、中央部に面直方向に突出する突出部106を備え、該突出部106を下方に向けた姿勢で載置台101に載置されている。ダイヤフラム105は、載置台101に載置された状態で、突出部106において載置台101によって下方から支持されており、突出部106の外周側の被吸着部107が吸着パッド103により上方から吸着される。
【0005】
吸着パッド103は、下端部に吸着面104を有し、吸着面104をダイヤフラム105の被吸着部107に上方から押し付けて、ダイヤフラム105を負圧で吸着する。ここで、載置台101は、ダイヤフラム105が載置される載置面102が平面状に構成されている。このため、ダイヤフラム105は、載置台101に載置された状態で、突出部106が載置面102に支持される一方で、この外周側の被吸着部107が載置面102から上方に離間している。
【0006】
図6(b)に示すように、この状態から吸着パッド103の吸着面104を、ダイヤフラム105の被吸着部107に上方から押し付けたときに、被吸着部107が、図6(b)において白抜き矢印で示すように、内側の突出部106に対して下方に傾斜するように変形する。この結果、吸着時において、吸着パッド103の吸着面104が、ダイヤフラム105の被吸着部107に沿い難く、吸着不良が生じやすい。
【0007】
本発明は、面直方向に突出した突出部を下方に向けた姿勢で載置されるダイヤフラムを吸着して移送するときに、ダイヤフラムの吸着性を向上させることができるダイヤフラム移送装置を提供することを課題とする。また、当該ダイヤフラム移送装置を使ってダイヤフラムを吸着して移送して、ゴム部材に組み付けて液体封入式防振マウントを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
面直方向に突出した突出部を有するダイヤフラムを吸着して移送するダイヤフラム移送装置であって、
ダイヤフラムが前記突出部を下方に向けた姿勢で載置される載置台と、
前記載置台に載置されたダイヤフラムを、前記突出部の外周側において、上方から吸着する吸着パッドと、
を備え、
前記載置台は、前記ダイヤフラムのうち前記吸着パッドにより吸着される被吸着部に対して下方から対向する環状の台座部と、この内径側に下方に凹設された凹部とを有し、
上面視で、前記ダイヤフラムの前記突出部の全体が、前記凹部の内側に位置している、ダイヤフラム移送装置を提供する。
【0009】
本発明によれば、吸着時にダイヤフラムが吸着パッドにより下方に押圧されたとしても、突出部が凹部の内側に位置しているので、被吸着部が台座部に着座する前に、突出部が載置台に接触することが抑制される。これによって、ダイヤフラムが、吸着時に、突出部の外周側において下方に傾斜状に変形することが抑制される。この結果、吸着パッドは、吸着面がダイヤフラムに沿いやすく、ダイヤフラムの吸着性が向上する。
【0010】
好ましくは、前記ダイヤフラムは、前記載置台に載置されており前記吸着パッドに吸着されていない状態で、上下方向において前記台座部に対して第1隙間を介して対向している。
【0011】
本構成によれば、ダイヤフラムを載置台に載置した状態において、ダイヤフラムの寸法バラツキを考慮しても台座部との干渉が防止される。これによって、載置時におけるダイヤフラムの変形が抑制されるので、吸着パッドによるダイヤフラムの吸着性が向上する。
【0012】
また、好ましくは、前記ダイヤフラムは、前記載置台に載置されており前記吸着パッドに吸着されていない状態で、上下方向において前記突出部が前記凹部に対して第2隙間を介して対向しており、
前記第1隙間の長さは、前記第2隙間の長さ以下である。
【0013】
本構成によれば、ダイヤフラムは、吸着時に吸着パッドにより下方に押圧されたときに、突出部が凹部に底付きする前に被吸着部が台座部に着座することになる。これによって、吸着時におけるダイヤフラムの被吸着部の変形が抑制されるので、吸着パッドによるダイヤフラムの吸着性が向上する。
【0014】
また、好ましくは、前記載置台は、前記ダイヤフラムの外周部を、外径側から径方向に位置決めする外周壁部と、下方から支持する底面とを有する環状の段部をさらに有している。
【0015】
本構成によれば、ダイヤフラムは、外周部において、載置台の段部によって径方向に位置決めされると共に下方から支持される。これによって、ダイヤフラムを、台座部との接触を防止しつつ載置台に載置できるので、載置時におけるダイヤフラムの変形が抑制される。よって、吸着パッドによるダイヤフラムの吸着性が向上する。
【0016】
また、好ましくは、前記載置台は、前記段部を径方向に貫通する溝部が形成されており、
前記載置台に前記ダイヤフラムが位置決めされた状態で、前記ダイヤフラムの下側に前記載置台との間に画定される空間が、前記溝部を介して外部に連通している。
【0017】
本構成によれば、載置台に載置されたダイヤフラムと載置台との間に略密閉空間が形成されることが防止される。これによって、ダイヤフラムを載置台から持ち上げやすく、吸着パッドによるダイヤフラムの吸着性が向上する。
【0018】
また、本発明の他の態様は、
液室が形成されたゴム部材と、面直方向に突出した突出部を有しており前記ゴム部材の前記液室を封止するダイヤフラムとを準備し、
前記ゴム部材の前記液室に液体を注入し、
上記ダイヤフラム移送装置を用いて、前記ダイヤフラムを吸着して前記ゴム部材に移送し、
前記ダイヤフラムを前記ゴム部材に組み付けて、前記液室に前記液体を封入して、
液体封入式防振マウントを製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、面直方向に突出した突出部を下方に向けた姿勢で載置されるダイヤフラムを吸着して移送するときに、ダイヤフラムの吸着性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】液体封入式エンジンマウントゴムを示す断面図。
図2】液体封入式エンジンマウントゴムの組立工程を示す説明図。
図3】ダイヤフラム移送装置の概略構成を示す断面図。
図4】載置台を上方から見た斜視図。
図5】吸着パッドによるダイヤフラムの吸着状態を示す断面図。
図6】従来例に係る、吸着パッドによるダイヤフラムの吸着状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0022】
図1は、液体封入式防振マウントの一例として、液体封入式エンジンマウントゴム50(以下、液封マウントゴム50と称する)を示している。液封マウントゴム50は、不図示のエンジンと車体フレームとの間に介設されて、エンジンを車体フレームに対して弾性的に支持するものであり、エンジンに取り付けられるボス金具51と、車体フレームに取り付けられる外筒金具52と、ボス金具51と外筒金具52との間に介設されたゴム部材からなる弾性基体53とを備えている。
【0023】
ボス金具51には上下方向に延びる雌ねじ部54が設けられており、ここに不図示のボルトによりエンジン側の部材に取り付けられるように構成されている。
【0024】
弾性基体53は、下端部53aにボス金具51が加硫接着されており、上端部53bに外筒金具52がカシメにより固定されている。上端部53bは、外径が下端部53aより大きく、この内側には、上方に開口した液室55が画定されている。液室55の上端の開口部55aには、ダイヤフラム30が設けられている。
【0025】
液室55は、ダイヤフラム30によって密閉状態に構成されており、水、エチレングリコール、シリコンオイル等の液体が封入されている。液室55は、仕切り部材57によって上側の第1室55bと下側の第2室55cとに上下に仕切られており、これらは仕切り部材57に形成された不図示のオリフィス流路を介して互いに連通している。すなわち、液室55に封入された液体は、第1室55bから第2室55cへ又はこの逆方向へ、互いに流動可能に構成されている。
【0026】
ダイヤフラム30は、弾性部材からなる円形の膜体31と、この外周部に設けられた補強金具36とを有している。膜体31は、外周側に位置しており厚み方向(図1において上下方向)に複数回折り返された薄肉部32と、中央部に位置しており薄肉部32に比して厚肉とされた厚肉部33とを有している。
【0027】
厚肉部33の中央部には、厚み方向(図1において下方)に突出して、さらに厚肉とされた第1突出部34が形成されている。第1突出部34の中央部には、厚み方向にさらに突出して、さらに厚肉とされた第2突出部35が形成されている。ダイヤフラム30は、補強金具36を介して、液室55の開口部55aにカシメ固定されている。以下の説明では、厚肉部33のうち第1及び第2突出部34,35の外径側に位置する部分を、外周側厚肉部37と称する。
【0028】
図2を参照して、液封マウントゴム50の組立工程について説明する。図2(a)に示すマウントワーク載置工程41において、弾性基体53にボス金具51が加硫されたマウントワーク50Wが準備され、マウントワーク50Wが、液室55の開口部55aが上方に開口する姿勢で組立台47の上に載置される。
【0029】
次に、図2(b)に示す液体注入工程42において、液体Wが液室55に所定量注入される。そして、図2(c)に示す仕切り部材組付工程43において、仕切り部材57が液室55に組み込まれる。さらに、図2(d)に示すダイヤフラム組付工程44において、ダイヤフラム30が液室55の開口部55aに組み付けられる。
【0030】
次に、図2(e)に示す外筒金具組付工程45において、外筒金具52がマウントワーク50Wの上端部の外周に嵌挿される。最後に、図2(f)に示す液室封止工程46において、外筒金具52を径方向内側にカシメてダイヤフラム30を液室55の開口部55aに固定することによって、液室55に液体Wを封止する。これによって、液封マウントゴム50が製造される。
【0031】
以下、ダイヤフラム30を、吸着して、ダイヤフラム組付工程44に移送するダイヤフラム移送装置1について説明する。
【0032】
図3は、ダイヤフラム移送装置1の概略構成を示す縦断面図であり、ダイヤフラム30が併せて示されている。図3に示すように、ダイヤフラム移送装置1は、ダイヤフラム30が載置される載置台10と、ダイヤフラム30を吸着する吸着部20とを有している。
【0033】
図4は、載置台10を上方から見た斜視図である。図4に示すように、載置台10は、矩形状の本体11と、本体11の上面11aに対して下方に凹設された第1凹部12と、第1凹部12の中央部においてこの底面12aに対して上方に隆起した環状の台座部13と、台座部13の中央部においてこの頂面13aに対して下方に凹設された第2凹部14と、第2凹部14の中央部においてこの底面14aから上下方向に貫通した貫通孔15とを有している。
【0034】
第1凹部12は、外周部において上下方向に延びる円筒状の外周壁部12bを有している。本体11の上面11aと第1凹部12の外周壁部12bとの間には、上面11aよりも階段状に一段下がった環状の段部16が形成されている。上面視で、第1凹部12、台座部13、第2凹部14、貫通孔15、段部16はそれぞれ、載置台10に載置されるダイヤフラム30の中心線O1(図3参照)に対して同心円状に形成されている。なお、ダイヤフラム30の中心線O1とは、上面視におけるダイヤフラム30の径方向の中心位置から、ダイヤフラム30の厚さ方向(面直方向)に延びる直線を意味している。
【0035】
段部16は、外周部において上下方向に延びる円筒状の外周壁部16aと、この下端部から径方向内側に延びて第1凹部12に至る底面16bとを有している。
【0036】
図3に示すように、外周壁部16aの内径D1は、ダイヤフラム30を径方向に位置決め出来る程度に、ダイヤフラム30の外径D2(図1参照)に対して少しのガタ(例えば1mm)を許容する大きさに形成されている。
【0037】
ダイヤフラム30は、載置台10に載置された状態で、補強金具36において段部16の外周壁部16aによって径方向に位置決めされると共に、底面16bによって下方から支持されている。この状態で、ダイヤフラム30の残余の部分、すなわち膜体31は、第1凹部12の底面12aから上方に離間している。
【0038】
台座部13、第2凹部14は、載置台10に載置されたダイヤフラム30の各部に対応して位置している。具体的には、載置台10に載置されたダイヤフラム30に対して、台座部13は外周側厚肉部37に対して第1隙間T1を介して下方から対向しており、第2凹部14は第1突出部34に対して第2隙間T2を介して下方から対向している。第2凹部14の内径D3は、第1突出部34の外径D4(図1参照)より大きい。換言すれば、上面視で、第1突出部34の全体が、第2凹部14の内側に位置している。
【0039】
本実施形態では、第1隙間T1は、第2隙間T2と同じ長さに設定されている。第1及び第2隙間T1,T2は、載置台10に載置されたダイヤフラム30に対して、ダイヤフラム30の形状における製造バラツキ、載置位置のバラツキを考慮しても接触することがない長さに設定されている。本実施形態では、第1隙間T1及び第2隙間T2は1mmに設定されている。
【0040】
貫通孔15は、ダイヤフラム30の第2突出部35の直下に位置している。貫通孔15の内径D5は、第2突出部35の外径D6(図1参照)よりも大きい。
【0041】
なお、本実施形態では、台座部13の頂面13a及び第2凹部14の底面14aは、第1凹部12の底面12aより上方であって、段部16の底面16bよりも下方に位置している。
【0042】
図4に示すように、載置台10には、本体11の側面11bと第1凹部12とを連通する溝部17がさらに形成されている。図3を併せて参照して、溝部17の溝底は、段部16の底面16bより下方に位置しており、具体的には第1凹部12の底面12aと同じ高さに位置している。これによって、ダイヤフラム30を、載置台10に載置した状態で、ダイヤフラム30の下側に載置台10との間に画定される空間が、溝部17を介して外部に連通するようになっている。
【0043】
図3に示すように、吸着部20は、吸着ロッド21と、この下端部に取り付けられた吸着パッド22とを有している。吸着ロッド21の基端部には不図示の負圧源が接続されており、吸着パッド22の内側が負圧状態に構成される。吸着パッド22は、中空状のゴム部材であって、下方に向かって径方向に拡がる円錐状に形成されており、内側の下端部に吸着面23が形成されている。吸着パッド22は、吸着面23を、被吸着物に沿わせて吸着パッド22の内側を略密閉状態として、負圧により被吸着物を吸着する。
【0044】
吸着部20は、不図示の移動手段(例えばロボット)により上下・左右・前後方向に移動可能に構成されている。吸着部20は、軸心O2をダイヤフラム30の中心線O1に一致させた状態でダイヤフラム30に対して上方に位置するアクセス開始位置から、下降してダイヤフラム30にアクセスする。アクセス開始位置においては、吸着パッド22の吸着面23が、ダイヤフラム30の外周側厚肉部37の直上に対応して位置している。
【0045】
吸着部20によるダイヤフラム30の吸着時の動作について説明する。
【0046】
図5に示すように、吸着部20がアクセス開始位置から下降して、下端部の吸着パッド22によってダイヤフラム30を外周側厚肉部37において吸着する。すなわち、外周側厚肉部37は被吸着部を構成している。このとき、吸着パッド22の吸着面23は、外周側厚肉部37に上方から当接して外周側厚肉部37を下方に押圧する。外周側厚肉部37は、下方に押し下げられると、台座部13の頂面13aに着座して台座部13により下方から支持される。換言すれば、台座部13は、吸着パッド22の吸着面23に対して、外周側厚肉部37を間に挟んで下方に対向して位置している。
【0047】
このとき、ダイヤフラム30において、外周側厚肉部37の下降に伴って、厚肉部33の全体すなわち第1及び第2突出部34,35も下降する。ここで、第1突出部34の下方には、第2凹部14が位置している。第2凹部14は、第1突出部34よりも大径であり、且つ、第1突出部34との間の第2隙間T2は第1隙間T1と同じである。さらに、第2突出部35の下方には、貫通孔15が位置している。貫通孔15は、第2突出部35よりも大径である。
【0048】
したがって、外周側厚肉部37と共に第1及び第2突出部34,35が下降しても、第1及び第2突出部34,35は第2凹部14及び貫通孔15にそれぞれ収容される。このため、外周側厚肉部37が台座部13に当接する前に、第1及び第2突出部34,35が載置台10に当接することが防止されている。
【0049】
この結果、外周側厚肉部37を、下方への傾斜を抑制しつつ略水平を維持しながら、台座部13に着座させることができるので、吸着パッド22の吸着面23を外周側厚肉部37に沿わせやすい。さらに、外周側厚肉部37は、台座部13により下方から支持されている。したがって、吸着パッド22の内側を略密閉状態に維持しやすく、吸着パッド22によってダイヤフラム30を好適に吸着できる。吸着部20によって吸着されたダイヤフラム30は、ダイヤフラム組付工程44に移送されて、マウントワーク50Wの液室55の開口部55aに組み付けられる。
【0050】
上記説明したダイヤフラム移送装置1によれば、次のような効果が得られる。
【0051】
(1)吸着時にダイヤフラム30が吸着パッド22により下方に押圧されたとしても、第1突出部34が第2凹部14の内側に位置しているので、外周側厚肉部37が台座部13に着座する前に、第1突出部34が載置台10に接触することが抑制される。これによって、ダイヤフラム30が、吸着時に、第1突出部34の外周側における外周側厚肉部37において、下方に傾斜状に変形することが抑制される。この結果、吸着パッド22は、吸着面23がダイヤフラム30の被吸着部としての外周側厚肉部37に沿いやすく、ダイヤフラム30の吸着性が向上する。
【0052】
(2)ダイヤフラム30は、載置台10に載置されており吸着パッド22に吸着されていない状態で、外周側厚肉部37が台座部13に対して第1隙間T1を介して対向している。これによって、ダイヤフラム30を載置台10に載置した状態において、ダイヤフラム30の寸法バラツキを考慮しても台座部13との干渉が防止される。これによって、載置時におけるダイヤフラム30の変形が抑制されるので、吸着パッド22によるダイヤフラム30の吸着性が向上する。
【0053】
(3)ダイヤフラム30は、載置台10に載置されており吸着パッド22に吸着されていない状態で、第1突出部34が第2凹部14に対して第2隙間T2を介して対向している。これによって、ダイヤフラム30は、吸着時に外周側厚肉部37が吸着パッド22により下方に押圧されたときに、第1突出部34が第2凹部14の底面14aに接触する前に、外周側厚肉部37が台座部13に着座する。これによって、吸着時に被吸着部としての外周側厚肉部37の変形が抑制されるので、吸着パッド22によるダイヤフラム30の吸着性が向上する。
【0054】
(4)ダイヤフラム30は、外周部の補強金具36において、載置台10の段部16によって径方向位置決めされて下方から支持される。これによって、ダイヤフラム30を、台座部13との接触を防止しつつ載置台10に載置できるので、載置時におけるダイヤフラム30の変形が抑制される。よって、吸着パッド22によるダイヤフラム30の吸着性が向上する。
【0055】
(5)ダイヤフラム30を、載置台10に載置した状態で、ダイヤフラム30の下側に載置台10との間に画定される空間が、溝部17を介して外部に連通するようになっている。これによって、載置台10に載置されたダイヤフラム30と載置台10との間に略密閉空間が形成されることが防止されるので、ダイヤフラム30を載置台10から持ち上げやすく、吸着パッド22によるダイヤフラム30の吸着性が向上する。
【0056】
上記実施形態では、第1及び第2隙間T1,T2を同一の長さに設定したがこれに限らない。すなわち、吸着時に、外周側厚肉部37が台座部13に着座する前に、第1突出部34が第2凹部14の底面14aに着座することがなければよく、第1隙間T1は、第2隙間T2より長くなければよい。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 載置台
11 本体
12 第1凹部
13 台座部
14 第2凹部
16 段部
17 溝部
20 吸着部
22 吸着パッド
23 吸着面
30 ダイヤフラム
31 膜体
33 厚肉部
34 第1突出部
36 補強金具
37 外周側厚肉部
44 ダイヤフラム組付工程
50 液封マウントゴム
50W マウントワーク
55 液室
図1
図2
図3
図4
図5
図6