(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-82411(P2020-82411A)
(43)【公開日】2020年6月4日
(54)【発明の名称】ゴム配合物のブローポイントの測定方法および空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20200508BHJP
B29D 30/00 20060101ALI20200508BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20200508BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20200508BHJP
【FI】
B29C33/02
B29D30/00
B29C35/02
B29L30:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2018-216323(P2018-216323)
(22)【出願日】2018年11月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 倫一
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
4F215
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AB03
4F202AH20
4F202AM22
4F202AP20
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU02
4F203AA45
4F203AB03
4F203AH20
4F203AM22
4F203AP20
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DK08
4F203DL10
4F215AH20
4F215VA03
4F215VL25
4F215VL27
(57)【要約】
【課題】ゴム配合物の加硫の際、ブローポイントを正確かつ簡便に測定可能なゴム配合物のブローポイントの測定方法、および該測定方法を利用した空気入りタイヤの製造方法を提供すること。
【解決手段】ゴム配合物を加硫成形することによりサンプルゴムを製造する加硫工程と、X線撮影することにより前記サンプルゴムの内部状態を観察する観察行程と、前記観察行程において、前記サンプルゴムの内部に気泡が存在しないことを確認した段階でブローポイントとする終了行程とを有することを特徴とする、ゴム配合物のブローポイントの測定方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム配合物を加硫成形することによりサンプルゴムを製造する加硫工程と、X線撮影することにより前記サンプルゴムの内部状態を観察する観察行程と、前記観察行程において、前記サンプルゴムの内部に気泡が存在しないことを確認した段階でブローポイントとする終了行程とを有することを特徴とする、ゴム配合物のブローポイントの測定方法。
【請求項2】
未加硫の生タイヤを加熱加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法であって、
前記加硫工程が、前記生タイヤを構成するゴム配合物のブローポイントに関する情報に基づき加硫工程を終了するものであり、
請求項1に記載の測定方法により、前記ブローポイントに関する情報を取得することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム配合物のブローポイントの測定方法、および該測定方法を利用した空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品である空気入りタイヤを製造する場合、その加硫工程は最も時間を要する工程となるため、加硫工程の時間短縮の努力が現在でも行われている。その一方で、加硫工程においてゴム部の加硫が不十分であると、ゴムの加硫反応により発生した気泡が加硫ゴム内に残存し、かかる残存気泡は製品段階でのタイヤ故障の原因となる場合がある。したがって、通常のタイヤ生産の現場では、季節要因などにより、例えば原料である未加硫の生タイヤの温度、金型内温度、雰囲気温度などがばらつく点を考慮し、加硫工程での全ばらつきを加味した余裕時間を加算して加硫工程に要する時間を設定している。
【0003】
しかしながら、余裕時間の設定はタイヤの生産性向上の観点からは好ましくなく、タイヤ毎にブローポイントに関する情報を入手し、かかる情報に基づき正確な加硫終了時を決定し、効率良く加硫工程を実行することが望まれていた。なお、本発明において「ブローポイント」とは、ゴム配合物を金型内などで加圧加硫した後、加硫を終了するために非加圧状態とした時点で、加硫ゴムの内部に気泡が残存しなくなるまでに必要な最低限の加硫時間を意味するものとする。
【0004】
下記特許文献1では、サンプルゴムの粘弾特性に基づく情報に基づきブローポイントを測定する技術が記載されている。しかしながら、かかる技術は測定装置が大掛かりになる一方で、サンプルゴムとタイヤ製品などとの間で、ブローポイントにズレが発生する場合があり、その精度向上が要求されていた。
【0005】
ところで、下記特許文献2では、タイヤの低温での柔軟性維持と、乾燥路面/湿潤路面上でのグリップ性向上と、を目的として、トレッド部を構成するゴム部材に気泡を含有させ、該気泡を顕微鏡により確認する技術が記載されている。しかしながら、かかる技術は目的とするタイヤ性能発揮のためにトレッド部表面に気泡を形成し、これを確認するための技術に過ぎず、加硫ゴムの内部状態を観察し、ブローポイント測定に応用できる技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−113984号公報
【特許文献2】特開2009−256532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゴム配合物の加硫の際、ブローポイントを正確かつ簡便に測定可能なゴム配合物のブローポイントの測定方法、および該測定方法を利用した空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち本発明は、ゴム配合物を加硫成形することによりサンプルゴムを製造する加硫工程と、X線撮影することにより前記サンプルゴムの内部状態を観察する観察行程と、前記観察行程において、前記サンプルゴムの内部に気泡が存在しないことを確認した段階でブローポイントとする終了行程とを有することを特徴とする、ゴム配合物のブローポイントの測定方法に関する。
【0009】
従来のゴム配合物のブローポイントの測定方法では、加硫成形することにより得られたサンプルゴムの内部が観察できるように、サンプルゴムを切断し、かかる切断面を目視観察し、気泡が存在しないことを確認した時点をブローポイントとしていた。しかしながらこのような測定方法では、その都度、サンプルゴムを切断する必要があり、さらに切断する箇所によっては、実際にはサンプルゴム内部に気泡が存在するにもかかわらず見落としてしまう虞もあった。一方、本発明に係るゴム配合物のブローポイントの測定方法では、ゴム配合物を加硫成形することによりサンプルゴムを製造し(加硫工程)、X線撮影することによりサンプルゴムの内部状態を観察する(観察行程)。したがって、サンプルゴムを切断する必要がなく、さらにX線撮影により、サンプルゴム内部に存在する気泡の存在を見落とすことなく、正確に検出可能となる。その結果、観察行程において、サンプルゴムの内部に気泡が存在しないことを確認した時点をブローポイントとする終了行程が容易かつ正確に実行可能となる。このように、本発明に係るゴム配合物のブローポイントの測定方法では、ゴム配合物の加硫の際、ブローポイントを正確かつ簡便に測定することができる。
【0010】
本発明に係るゴム配合物のブローポイントの測定方法は、加硫ゴムを備える全ての製品に利用可能であるが、特に、未加硫の生タイヤを加熱加硫する加硫工程を含む空気入りタイヤの製造方法であって、前記加硫工程が、前記生タイヤを構成するゴム配合物のブローポイントに関する情報に基づき加硫工程を終了するものであり、前記記載の測定方法により、前記ブローポイントに関する情報を取得することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法に好適に使用可能である。かかる空気入りタイヤの製造方法では、加硫工程を効率よく実行可能であり、しかもタイヤ内部に気泡が存在せず、製品性能に優れた空気入りタイヤを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るゴム配合物のブローポイントの測定方法は、少なくとも加硫工程と観察行程と終了行程とを含む。以下に、各工程を説明する。
【0012】
(1)加硫工程
加硫工程において、ゴム配合物を加硫成形することによりサンプルゴムを製造する。ゴム配合物の配合種類は、製品に応じて様々に変更可能であり特に限定されるものではない。サンプルゴム形状は、最終的な製品形状としてもよいが、観察行程においてX線撮影する際、内部状態を容易かつ正確に観察するために、例えば短冊状、直方体状、立方体状、球形状、円柱状などに設定可能である。また、サンプルゴムサイズも特に限定はなく、例えばX線撮影の際、X線の透過方向厚み(長さ、大きさなど)を1〜30mm程度に設定可能である。
【0013】
(2)観察行程
観察行程において、X線撮影することによりサンプルゴムの内部状態を観察する。X線撮影のためのX線撮影装置は、建築物や配管などの構造物内部や、空気入りタイヤなどを対象とした非破壊検査用、あるいは空港などでの手荷物検査用など、放射線透過検査に使用可能なものを適宜使用可能である。さらに、X線強度についても、ゴム配合物の配合如何、さらにはサンプルゴムサイズ如何により適宜設定可能である。また、サンプルゴムに対するX線透過方向は厚み方向だけでなく、サンプルゴム形状に応じて様々な方向から設定可能である。
【0014】
(3)終了行程
終了行程において、観察行程において、サンプルゴムの内部に気泡が存在しないことを確認した段階でブローポイントとする。前記観察行程で調整することにより、サンプルゴム中の例えば0.5mm程度の気泡も存在を確認できるため、気泡の有無を容易に確認することが可能となり、この情報に基づき、ブローポイントを測定することができる。
【0015】
本発明に係るゴム配合物のブローポイントの測定方法は、加硫ゴムを備える全ての製品に利用可能であり、具体的には例えば空気入りタイヤ、自動車用防振ゴム、建築物用防振ゴム、高減衰免振ゴム、ゴム継手、ゴムパッキン、各種ゴムグローブなどに利用可能である。これらの中でも、本発明に係るゴム配合物のブローポイントの測定方法は、製品の占めるゴム部材の割合が多く、ゴムサイズも大きい空気入りタイヤの製造方法に好適に利用可能である。
【0016】
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、未加硫の生タイヤを加熱加硫する加硫工程を含み、加硫工程が、生タイヤを構成するゴム配合物のブローポイントに関する情報に基づき加硫工程を終了するものであり、本発明に係るゴム配合物のブローポイントの測定方法測定方法により、前記ブローポイントに関する情報を取得する。空気入りタイヤは、トレッド部、サイドウォール部、ビード部などの部位により配合設計が異なり、また乗用車用やトラックバス用など、タイヤサイズも種類によって大きく異なるが、一般にトレッド部は加硫の進行が最も遅い加硫最遅部となることが多い。したがって、例えば製造する空気入りタイヤのトレッド部を構成するゴム配合物によりサンプルゴムを製造し、この際に得たブローポイントに関する情報に基づき、加硫終点を決定すれば、空気入りタイヤの製造時に問題となる、余分な余裕時間の設定を省略し、あるいは大幅に短縮することができる。このように、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法では、加硫工程を効率よく実行可能であり、しかもタイヤ内部に気泡が存在せず、製品性能に優れた空気入りタイヤを製造することができる。
【0017】
以下に、空気入りタイヤのトレッド部を構成するゴム配合物を加硫成形することにより製造したサンプルゴムを用いた、ゴム配合物のブローポイントの測定方法の一例について説明する。ただし、本発明のX線撮影装置や測定条件は以下の例に限定されるものではなく、想定する製品用途やサンプルゴム形状に応じて任意に変更可能である。
【0018】
ゴム配合物を加硫成形することにより、X線透過方向の厚みが20mmの2種類のサンプルゴムA,Bを製造した(加硫工程)。なお、サンプルゴムAは加硫時間を十分に確保しつつ加硫成形したもので、サンプルゴムBは加硫時間をサンプルゴムA製造時よりも2.0分程度短く設定して加硫成形を行った。次に、X線撮影を行うことにより、サンプルゴムA,Bの内部状態を観察した(観察行程)。以下に、X線撮影条件を示す。
(X線撮影条件)
X線撮影装置:SOFTEX社製「WORK LEADER90特型」
入力:AC100V
出力:最大管電圧90kV
最大管電流0.1mA
管球型名:I−905(Be窓)焦点10μm
サイドウインド広角方
冷却方式:空冷
防護方式:インターロックスイッチ付き完全防衛照射箱型
漏洩線量:装置表面において1μSv/h
35kVp―85mAで5秒照射し、撮影画像のコントラスト調整をパソコン上で実行
【0019】
前記観察行程では、サンプルゴムAについては気泡が存在しない内部状態が観察されたため、かかるサンプルゴムAの加硫条件によりブローポイントを決定可能である(終了行程)。一方、サンプルゴムBについては、0.5mm程度の気泡が残存する内部状態が観察されたため、かかるサンプルゴムBの加硫条件では、ブローポイントに到達しないことがわかる。