(54)【発明の名称】水素化マグネシウムの生成反応の向上を図った水素化マグネシウムを含む水素発生材料を製造する材料製造方法、及び、その材料製造方法で製造された水素化マグネシウムを含む水素発生材料を用いた水素製造方法
【解決手段】本発明の水素化マグネシウムを含む水素発生材料を製造する材料製造方法は、原料にプラズマを照射する処理室11を減圧に保つ減圧ステップと、原料を加熱して気体の状態でプラズマ中に供給する供給ステップと、原料とプラズマの反応で生成した水素化マグネシウムを含む水素発生材料を回収する回収ステップと、を含み、原料がヨウ化マグネシウムであり、プラズマが還元雰囲気を形成する水素を含む反応性ガスのプラズマである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0020】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る第1実施形態の水素化マグネシウムを含む水素発生材料を製造する材料製造方法に用いる製造装置10を説明するための断面図である。
【0021】
図1に示すように、製造装置10は、内部にアクセスするときに開閉される開閉扉11Aを有し、原料にプラズマを照射する処理室11と、プラズマを照射する処理の間、処理室11を減圧に保つ減圧手段としての排気用のポンプP(真空ポンプ)と、を備えている。
なお、ポンプPは排気される気体へのオイルの混入を避けるため、ドライポンプであることが好ましい。
【0022】
具体的には、製造装置10は、処理室11から気体を排出する排気管12を備えており、ポンプPは、その排気管12の途中に接続されている。
なお、ポンプPよりも下流側(処理室11から離れる側)の排気管12は溶液(水溶液13A)を貯蔵した処理タンク13内の溶液中に挿入され、その溶液中に位置する排気管12に設けられた貫通孔12Aから処理室11から排出された気体が溶液中にバブリング状態で放出されることで溶液に曝されるようになっており、溶液に曝された後の気体が処理タンク13に設けられた図示しない放出口から処理タンク13外部に放出されるようになっている。
【0023】
また、製造装置10は、原料とプラズマの反応で生成した水素化マグネシウムを含む水素発生材料を回収する回収部14を備えている。
なお、回収部14は、後ほど説明するように、水素化マグネシウムを含む水素発生材料を付着させる部材である。
【0024】
そして、本実施形態では、水素発生材料中の水素化マグネシウムの含有率を高くするために、水素発生材料を付着させる回収部14の表面SFの温度を400℃以上800℃以下の温度に保つようにするため、回収部14には、厚さ10mm以内のステンレスの板が用いられている。
【0025】
また、製造装置10は、原料を加熱して気体の状態でプラズマ中に供給する原料供給部15を備えている。
具体的には、原料供給部15は、処理室11の上側の外に配置され、貯蔵した原料を気体の状態に加熱する加熱部15Aと、気体の状態を保つように加熱され、処理室11に原料を導く原料供給路15Bと、加熱部15Aの上部に設けられ、加熱部15Aに原料を投入する時に開閉される上蓋15AAと、を備えている。
【0026】
なお、図示は省略しているが、加熱部15A及び原料供給路15Bは、原料が気体となる温度に加熱できるヒータ構造(例えば、通電加熱構造等)を備えている。
【0027】
さらに、製造装置10は、プラズマ化して原料に反応させる反応性ガスを供給するガス供給部16と、プラズマを生成させるためのマイクロ波を供給するマイクロ波供給部17と、処理室11に導入するマイクロ波を通す誘電体(例えば、石英やセラミック等)の窓18と、を備えている。
【0028】
具体的には、ガス供給部16は、反応性ガス(例えば水素ガス)を貯蔵しているガスボンベ又はガスタンクと処理室11の間を繋ぐガス配管と、図示を省略しているが、そのガス配管上に設けられ、処理室11に供給する反応性ガスの流量を制御する流量制御器(例えば、マスフローコントローラ)と、を備えている。
【0029】
また、マイクロ波供給部17は、マイクロ波発生部17Aと、マイクロ波発生部17Aで発生したマイクロ波を窓18まで導波させる導波部17Bと、を備えている。
【0030】
そして、マイクロ波発生部17Aは、マイクロ波発生器(例えば、マグネトロン)と、マイクロ波発生器にマイクロ波を発生させるための電力を供給する電源装置と、を備えており、その電源装置から電力がマイクロ波発生器に供給されると、マイクロ波発生器でマイクロ波が発生し、その発生したマイクロ波は導波部17Bによって窓18のところまでガイドされ、窓18を通じて処理室11内に導入される。
【0031】
このような構成で生成されるプラズマは、マイクロ波表面波プラズマであり、マイクロ波表面波プラズマは、電子密度が高いので窓18を通じて照射されたマイクロ波はマイクロ波表面波プラズマの表面で反射されて内部には入らないがマイクロ波表面波プラズマの表面に沿う形で伝搬される。
【0032】
また、マイクロ波表面波プラズマは、他のプラズマ(例えば、高周波プラズマや直流放電プラズマ等)と比較すれば、電子温度が低く(例えば、1eV程度)、他のプラズマのように、高い電子温度(例えば、10eV以上)とするためにエネルギーが消費されるプラズマと異なり、エネルギーロスが少ないという利点があるとともに、例えば、0.5m
2以上の大面積の範囲に生成することができる。
【0033】
さらに、処理室11内に入射させるマイクロ波は、窓18を通して伝搬するが、表面波として吸収されるため、処理室11内には、マイクロ波(電磁波)が存在せず、処理室11内の構成自由度が高いとともに、マイクロ波表面波プラズマは、プラズマ中のイオンや分子の温度が熱プラズマと呼ばれるものに比べ大幅に低い(ほぼ常温)という特徴があり、先行技術文献で用いられている熱プラズマに比べ圧倒的に低い温度のプロセスを実現することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、処理室11の上側に複数(具体的には2個)の窓18を設け、それぞれの窓18に対応して複数(具体的には2個)のマイクロ波供給部17を設けるようにしているが、必ずしも、窓18及びマイクロ波供給部17を複数設けなければならないわけではない。
【0035】
また、原料と反応性ガスのプラズマとの反応性を高めるためには、プラズマの密度が高い方が好ましいと考えられる。
なお、反応性ガスとは原料との反応で生成される水素化マグネシウム(MgH
2)を構成する原子である水素を含むガス(例えば、水素ガスやメタン、プロパン等の炭化水素ガス)であり、したがって、希ガスは反応性ガスにはならない。
【0036】
ただし、炭化水素ガスは、水素ガスと同様に還元雰囲気を形成するため、還元反応が行えるプラズマの生成が可能であるものの、排ガス中に炭素を含むガスが含まれることになるため、反応性ガスは水素ガスであることが好ましい。
【0037】
このため、本実施形態では、マイクロ波供給部17に、少なくとも窓18を通して処理室11内に供給されるマイクロ波のマイクロ波電力のピーク値が2.0キロワット以上となるマイクロ波を発生するものを用いている。
【0038】
なお、2.0キロワット未満のマイクロ波電力のマイクロ波でプラズマを生成していた時も水素化マグネシウムの生成反応は見られていたが、2.0キロワット以上になっていることで圧倒的に水素化マグネシウムの含有率の高い水素発生材料が得られる状態となった。
【0039】
具体的には、電源装置に平均使用電力の最大値が1.5キロワットのパルス型の電源装置を用いており、瞬間的にはマイクロ波発生器(例えば、マグネトロン)に6.0キロワット程度の電力が供給され、マイクロ波電力の最大値が6.0キロワット程度のパルス型のマイクロ波電力を有するマイクロ波が発生するものとしている。
なお、マイクロ波電力の最小値は0キロワットであり、マイクロ波電力の最大値間の時間周期が30マイクロ秒である。
【0040】
このようにマイクロ波電力の最小値が0キロワットになる瞬間があっても、プラズマ密度が、プラズマの消える密度に至る前に点燈を維持することができるだけのマイクロ波電力を有するマイクロ波が供給されていれば、プラズマの点燈を維持することが可能であり、しかも、マイクロ波電力の最大値間の時間周期が短ければ、マイクロ波電力の最大値に対応したプラズマ密度を維持することができる。
【0041】
このため、平均的なマイクロ波電力を抑えつつ、高いプラズマ密度のプラズマの点燈を維持することが可能であり、このことは、マイクロ波を発生させるために使用される平均的な電力を抑えられることを意味する。
【0042】
ただし、電源装置にパルス型の電源装置を用いることが必須ではなく、例えば、供給電力の設定値として2.0キロワット以上の設定が行える直流型の電源装置を用いるようにしてもよい。
【0043】
なお、本実施形態のように、窓18を通して処理室11内に供給されるマイクロ波のマイクロ波電力のピーク値が2.0キロワット以上にするためには、窓18に至るまでの反射減衰を見込んで、直流型の電源装置の場合、2.5キロワット以上の設定が行えるものを選ぶのが好ましい。
【0044】
また、プラズマ密度を高くする点からすれば、マイクロ波供給部17には、少なくとも窓18を通して処理室11内に供給されるマイクロ波のマイクロ波電力のピーク値が3.0キロワット以上となるマイクロ波を発生するものを用いるのがよく、4.0キロワット以上となるマイクロ波を発生するものを用いるのが更によい。
【0045】
一方、導波部17Bの設計にもよるが、窓18から導入するマイクロ波のマイクロ波電力のピーク値を大きくするために、マイクロ波電力のピーク値を高くしすぎると、導波部17B内で放電が発生するという問題があるため、マイクロ波供給部17には、発生させるマイクロ波のマイクロ波電力のピーク値が24キロワット以下、更には、15キロワット以下のマイクロ波を発生するものを用いるのが好ましい。
【0046】
また、製造装置10は、窓18に対面する下側の位置に配置可能に設けられた回収部14の少なくとも窓18に対面する表面SFの部分の温度を450℃以上800℃以下の温度に保つことができる温度制御部19を備えている。
【0047】
具体的には、温度制御部19は、処理室11の側面側に設けられたヒータ19Aと、回収部14に接触又は近接するように処理室11の底面側に設けられた温調部19Bと、を備えている。
【0048】
なお、温調部19Bは、回収部14よりも下側に位置し、処理室11内にリークしないように所定の温度に保たれた温調媒体(例えば、水)を循環させる循環路と、その循環路の途中(例えば、処理室11の外側に位置する循環路の部分)に設けられ、温調媒体の温度を制御する温調器(図示せず)と、循環路内の温調媒体を循環させるためのポンプ(図示せず)と、を備えている。
【0049】
そして、温度制御部19のヒータ19Aは、処理室11内の温度を原料が気体の状態を保つ機能も兼ねたものになっており、そのヒータ19Aによって加熱された回収部14を温調部19Bで、例えば、冷却することで回収部14の少なくとも窓18に対面する表面SFの部分の温度を450℃以上800℃以下の温度に保てるようにしている。
【0050】
また、製造装置10は、図示を省略しているが、開閉扉11Aの開閉作業を行うために、処理室11の内圧を減圧状態から大気圧にするときに、窒素ガスや希ガス(例えば、HeやAr等)のように活性の低いガス(以下、パージガスともいう)を処理室11に供給するために、処理室11に接続されたパージガス供給部を備えている。
【0051】
なお、パージガス供給部も構成自体は、ガス供給部16と同様であり、パージガスを貯蔵しているガスボンベ又はガスタンクと処理室11の間を繋ぐガス配管と、そのガス配管上に設けられ、処理室11に供給するパージガスの流量を制御する流量制御器(例えば、マスフローコントローラ)と、を備えている。
【0052】
さらに、プラズマの点燈開始時には、反応性ガスに希ガスが混じっているほうがプラズマの点燈が行いやすいため、パージガス供給部が希ガスを供給するものでない場合には、希ガス供給部を設けるものとすればよい。
【0053】
なお、希ガス供給部も構成自体は、ガス供給部16と同様でよく、希ガスを貯蔵しているガスボンベ又はガスタンクと処理室11の間を繋ぐガス配管と、そのガス配管上に設けられ、処理室11に供給する希ガスの流量を制御する流量制御器(例えば、マスフローコントローラ)と、を備えるものとすればよい。
【0054】
また、一旦、プラズマが点燈すれば、希ガスの供給を止めてもプラズマの点燈を維持する上では問題がないため、プラズマが点燈したら処理室11への希ガスの供給を停止するようにしてよく、本実施形態では希ガスの供給を停止するようにしている。
【0055】
次に、上記の構成を有する製造装置10を用いて水素化マグネシウムを含む水素発生材料を製造する材料製造方法、及び、その製造された水素発生材料を用いた水素製造方法について説明する。
【0056】
(材料製造方法)
まず、材料製造方法では、先に説明したポンプPを駆動させて、処理室11内の気体を排出し、処理室11内を減圧する。
なお、処理室11内は、材料製造処理が終了するまで所定の圧力に減圧された状態とされるため、ポンプPの駆動開始は、処理室11を減圧に保つ減圧ステップの開始であり、本実施形態では、この処理室11から気体を排出する排気管12に接続されたポンプPによって、減圧ステップが行われている。
【0057】
そして、処理室11内に還元雰囲気を形成する水素を含む反応性ガスである水素ガスの供給を開始した後、マイクロ波供給部17のマイクロ波発生部17Aを駆動させ、窓18からマイクロ波を導入してプラズマ(本例では、マイクロ波表面波水素プラズマ)の点燈を行う。
なお、先に触れたように、この点燈開始時には、処理室11に希ガスも供給しているがプラズマが点燈したら希ガスの供給を停止している。
【0058】
また、プラズマは、材料製造処理が終了するまで点燈している状態とされるため、このプラズマの点燈開始は、処理室11内でのプラズマ生成状態を保つプラズマ生成ステップの開始である。
【0059】
そして、プラズマ生成ステップが開始されたら、処理室11内の圧力を所定の減圧状態に調整した後、原料供給部15を駆動させ、原料を加熱して気体の状態でプラズマ中に供給する供給ステップを開始する。
【0060】
例えば、反応性の高い高密度なプラズマを生成するためには、処理室11内の圧力が低い方が有利であるため、所定の減圧状態への調整としては、処理室11内の圧力を10分の1気圧以下に調整するのが好ましく、100分の1気圧以下に調整するのがより好ましく、1000分の1気圧以下に調整するのが更に好ましく、本実施形態では、所定の圧力を10000分の1気圧程度である約10Paにしている。
なお、この調整は、ポンプPより上流側(処理室11側)の排気管12上に設けられた図示しないバルブの開度を調整することで行っている。
【0061】
しかしながら、反応性は、処理室11内に存在する、反応性ガス(水素ガス)の分圧によっても変わり、分圧という視点で見れば、処理室11内の圧力が高い方が処理室11内に存在する反応性ガスの濃度を高くすることができ、有利な面がある。
【0062】
このことから、所定の減圧状態への調整としては、10KPaから10Paの範囲で行われるのが好ましい。
【0063】
ここで、本発明の材料製造方法では、原料がヨウ化マグネシウム(MgI
2)とされており、ヨウ化マグネシウムは、気体となる温度で分解が起るため、処理室11には、マグネシウム(Mg)とヨウ素(I
2)に分解された原料が供給されることになる。
【0064】
同じハロゲン化マグネシウムでも、例えば、塩化マグネシウム(MgCl
2)等は、気体になる温度よりも分解温度が高いため、加熱して気体の状態で処理室11に供給しても、塩化マグネシウム等の状態のまま供給されることになる。
【0065】
このため、水素化マグネシウム(MgH
2)に変化するためには、プラズマによって塩素(Cl)とマグネシウム(Mg)に分解する反応が必要と考えられ、その分解によって発生したマグネシウムとプラズマとが、更に反応することで水素化マグネシウムが生成されると考えられる。
なお、プラズマによる分解反応で塩化マグネシウムが分解する時には、塩素(Cl)は、分子、イオン、ラジカルといった様々な状態になる。
【0066】
しかしながら、原料がヨウ化マグネシウム(MgI
2)の場合には、処理室11にマグネシウム(Mg)とヨウ素(I
2)に分解された原料が供給されることになるため、前段反応としての分解反応が不要であり、水素化マグネシウムの生成反応の向上を図ることができる。
【0067】
そして、供給ステップが開始されると、ほぼ同じタイミングで原料であるヨウ化マグネシウム(MgI
2)とプラズマの反応で生成した水素化マグネシウムを含む水素発生材料が回収部14の表面SFに付着しはじめ、水素発生材料を回収する回収ステップも開始されることになる。
【0068】
ここで、表面SFに付着する水素発生材料には、金属マグネシウム(Mg)等も含まれるが、水素発生量の多い、水素発生材料とするためには、水素化マグネシウム以外のものが含まれている割合は低いほうが望ましい。
【0069】
そして、水素化マグネシウムは、圧力が約10Paの条件のときに、約100℃以上の温度になると、金属マグネシウムと水素に分解しはじめるため、本来は、回収部14の表面SFの温度は100℃未満が望ましいと考えられる。
【0070】
確かに、100℃未満の低温に保つようにすると、単位時間当たりの付着量が増加するとともに、水素の発生率の高い水素発生材料が得られる傾向が見られた。
【0071】
しかしながら、表面SFを低温に保つことでは、付着した水素発生材料を水素化マグネシウムの本来の色である白色の状態にすることができず、金属マグネシウム等を含む状態から脱することができなかった。
【0072】
そして、実験を繰り返しているときに、表面SFの温度が比較的高い温度になったときがあり、そのときに表面SFに付着した水素発生材料が白色で、これまでになく、水との反応で激しく発泡するものになっていることを発見した。
なお、水素発生量については、発泡状態だけでなく、水素検知管での測定も行っている。
【0073】
そこで、表面SFの温度を高温とした実験を進めた結果、表面SFが400℃以上800℃以下の温度に保たれているときに、白色で水と激しく反応する、水素化マグネシウムの含有率の高い水素発生材料が得られることがわかった。
【0074】
なお、より好ましくは、450℃以上750℃以下で、より白色で水と激しく反応する水素発生材料が得られ、更には、450℃以上600℃以下で、更に白色で水と激しく反応する水素発生材料が得られることを見出した。
【0075】
このような現象は、先に説明した水素化マグネシウムの分解しはじめる温度を念頭に平衡状態を考えた時には理解できない現象であるが、上述のように、マイクロ波電力の高いマイクロ波で高いプラズマ密度のプラズマを発生させている場合、反応性の高い水素が多く存在し、水素化マグネシウムが分解される速度よりも早く、水素化マグネシウムになる反応が進んでいるのではないかと推察している。
【0076】
より正確には、水素化マグネシウムが消失する過程は、まず、金属マグネシウムと水素に分解する反応が起きて、その後、金属マグネシウムが気体になるのではと考えており、上述のように、反応性の高い水素が多く存在することで、はじめの金属マグネシウムと水素に分解する過程が阻害される結果、上述のような高温でも水素化マグネシウムが表面SF上に存在し続けることができているのではないかと推察している。
【0077】
しかも、圧力約10Paの状態で、400℃以上になると金属マグネシウムが気体の状態になりはじめると考えられるため、水素発生材料中の不純物としての金属マグネシウムの割合が減少し、又は、水素化マグネシウムに変化することで、結果として、水素化マグネシウムを多く含む水素発生材料が得られるのではないかと推察している。
【0078】
したがって、高濃度に水素化マグネシウムを含む水素発生材料を得るためには、本実施形態のように、回収ステップでは、処理室11内に配置された回収部14の少なくとも窓18に対面する表面SFの部分の温度を450℃以上800℃以下の温度に保つようにして実施されることが好ましい。
【0079】
そして、処理室11から排出された気体は、排気管12を通じて処理タンク13内の溶液(水溶液13A)中にバブリング状態で放出され、溶液に曝される。
【0080】
処理室11内では、水素ガスのプラズマによって、水素化マグネシウム(MgH
2)が生成される反応とともに、ヨウ素(I
2)と水素ガスのプラズマとの反応でヨウ化水素(HI)も生成され、ヨウ化水素は回収部14に付着できないため、処理室11から排出される気体として排出される。
【0081】
そして、ヨウ化水素(HI)は溶液(水溶液13A)に対して易溶であるため、上述のように、溶液に曝されると、ヨウ化水素(HI)は溶液中に溶解して、溶液がヨウ化水素溶液となる。
【0082】
したがって、処理タンク13によって、減圧ステップで処理室11から排出された気体を溶液(水溶液13A)に曝して、少なくとも排出された気体中のヨウ化水素(HI)の溶解したヨウ化水素溶液を取得する溶液取得ステップが行われている。
【0083】
なお、処理室11から排出された気体には、水素ガスも含まれているが、水素ガスは溶液中にほとんど溶けないため、処理タンク13から気体の状態で排出されることになり、例えば、水素ガス回収装置で回収する。
【0084】
以上のように、本実施形態の材料製造方法は、処理室11を減圧に保つ減圧ステップと、処理室11内に還元雰囲気を形成する水素を含む反応性ガスである水素ガスの供給を開始した後、マイクロ波供給部17のマイクロ波発生部17Aを駆動させてプラズマを点燈し、処理室11内でのプラズマ生成状態を保つプラズマ生成ステップと、原料(ヨウ化マグネシウム)を加熱して気体の状態でプラズマ中に供給する供給ステップと、原料(ヨウ化マグネシウム)とプラズマの反応で生成した水素化マグネシウムを含む水素発生材料を回収する回収ステップと、減圧ステップで処理室11から排出された気体を溶液(水溶液13A)に曝して、少なくとも排出された気体中のヨウ化水素(HI)の溶解したヨウ化水素溶液を取得する溶液取得ステップと、を含んでいる。
【0085】
そして、この材料製造方法では、減圧ステップ、プラズマ生成ステップ、及び、供給ステップ等で電力を使用することになるが、現状では、電力需要が低い時に、太陽光発電や風力発電等の停止を行っており、また、それ以外の発電においても、夜間等では余剰電力が発生しており、そのような電力需要の低い時の余剰電力を使用すればよい。
【0086】
一方、電力需要が高い時には、上述の材料製造方法で製造された水素化マグネシウムを含む水素発生材料を用いて水素を発生させ、その水素を用いて発電(例えば、水素タービン発電、燃料電池等を用いた発電)を行うことになる。
【0087】
そこで、次に、上述の材料製造方法で製造された水素化マグネシウムを含む水素発生材料を用いた水素発生方法(水素製造方法)について説明する。
なお、以下では、材料を無駄に廃棄しないために、水素発生材料に含まれるマグネシウム(Mg)を、再び、材料製造方法で利用する原料(ヨウ化マグネシウム)として再生できる水素製造方法について説明する。
【0088】
(水素製造方法)
まず、水素製造方法では、水素発生材料を溶液(水溶液)に投入して水素を発生させる水素発生ステップが行われる。
具体的には、水素発生ステップは、十分な溶液(水溶液)を貯蔵した密閉タンクと、密閉タンク内に水素発生材料を供給する水素発生材料供給部と、を備えた水素発生装置を用いて実施され、具体的には、水素発生材料供給部が、密閉タンクに必要な水素を発生させることができるだけの水素発生材料を投入することで行われる。
【0089】
なお、密閉タンクといっても発生した水素の排出が行えないものではなく、当然、密閉タンクには、発生した水素を発電装置に供給するための配管や供給圧力、供給量を制御するための圧力制御バルブ、流量制御装置等が設けられており、密閉タンクの密閉とは、あくまで発生した水素や貯蔵する溶液(水溶液)が自由に漏れ出ることが無いという意味である。
【0090】
また、密閉タンクには、密閉タンク内の溶液(水溶液)を交換する時に、溶液を排出するための溶液排出機構と新しい溶液を供給するための溶液供給機構が設けられている。
【0091】
そして、溶液(水溶液)中に水素化マグネシウムを含む水素発生材料が投入されると、式1に示すように、水素化マグネシウム(MgH
2)と溶液(H
2O)が反応して水素(H
2)が発生する。
MgH
2 + 2H
2O → Mg(OH)
2 + 2H
2・・・(1)
【0092】
なお、式1の反応が主であると考えられるが、水素化マグネシウム(MgH
2)と溶液(H
2O)の反応として、一部、式2の反応が起きる場合があると考えられる。
MgH
2 + H
2O → MgO + 2H
2 ・・・(2)
【0093】
また、水素発生材料に金属マグネシウムが含まれていても、式3、及び、式4の反応で水素が発生する。
Mg + 2H
2O → Mg(OH)
2 + H
2 ・・・(3)
Mg + H
2O → MgO + H
2 ・・・(4)
【0094】
そして、式1から式4のいずれの反応が起きても、水素発生ステップでは、副生成物として水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、酸化マグネシウム(MgO)といった酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)が生成され、このような酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)は、水溶液にほとんど解けないため、例えば、溶液排出機構で密閉タンクから排出される溶液(排液ともいう。)をろ過する等して得ることができる。
【0095】
一方、水素発生ステップで副生成物として生成される酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)は、ヨウ化水素溶液中に投入すると、式5、及び、式6に示すように、ヨウ化マグネシウムの状態となるので、ヨウ化水素溶液中に投入することで、ヨウ化マグネシウムを含むヨウ化マグネシウム含有溶液を得ることができる。
Mg(OH)
2 + 2HI → MgI
2 + 2H
2O ・・・(5)
MgO + 2HI → MgI
2 + H
2O ・・・(6)
【0096】
そして、先に説明した材料製造方法では、減圧ステップで処理室11から排出された気体を溶液(水溶液13A)に曝して、少なくとも排出された気体中のヨウ化水素(HI)の溶解したヨウ化水素溶液を取得する溶液取得ステップを有している。
【0097】
そこで、本実施形態の水素製造方法では、溶液取得ステップで取得されたヨウ化水素溶液を利用して、水素発生ステップで副生成物として生成される酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)とヨウ化水素溶液を反応させて、ヨウ化マグネシウムを含むヨウ化マグネシウム含有溶液を取得するヨウ化マグネシウム含有溶液取得ステップを行うものとして、材料製造方法で利用する原料であるヨウ化マグネシウムを再生するようにしている。
【0098】
ただし、このように再生されたヨウ化マグネシウムは、溶液中に存在する状態であるため、本実施形態の水素製造方法では、無水のヨウ化マグネシウムとするために、以下の2つのステップを行うものとしている。
【0099】
具体的には、本実施形態の水素製造方法では、無水のヨウ化マグネシウムとするための第1ステップとして、ヨウ化マグネシウム含有溶液からヨウ化マグネシウム水和物を取得する水和物取得ステップを実施している。
【0100】
例えば、ヨウ化マグネシウム含有溶液を50℃前後に加熱すると、ヨウ化マグネシウムの水和物(MgI
2・6H
2O又はMgI
2・8H
2O)が析出するので、その析出したヨウ化マグネシウム水和物を取得するようにして水和物取得ステップが実施される。
【0101】
そして、水和物取得ステップで取得されたヨウ化マグネシウム水和物も水和物であることから依然として水を有しているため、本実施形態の水素製造方法では、無水のヨウ化マグネシウムとするための第2ステップとして、ヨウ化マグネシウム水和物とヨウ化アンモニウムを反応させてヨウ化マグネシウム水和物の脱水を行う脱水ステップを実施し、無水のヨウ化マグネシウムを取得する。
【0102】
具体的には、ヨウ化マグネシウムの水和物(MgI
2・6H
2O又はMgI
2・8H
2O)は、圧力1atmの雰囲気でヨウ化アンモニウムの分解温度である約550℃で水和物等量モル数のヨウ化アンモニウム(NH
4I)と反応させると脱水が起る。
【0103】
なお、ヨウ化マグネシウムは、圧力1atmの雰囲気で700℃になると分解するため、ヨウ化アンモニウムと反応させるときの温度は、550℃以上700℃未満、より好ましくは、600℃以上650℃以下とするのが好ましい。
【0104】
例えば、ヨウ化マグネシウム・八水和物であれば、以下の式7に示すような脱水反応が起る。
MgI
2・8H
2O + 8NH
4I
→ MgI
2 + 8NH
3 + 8HI + 8H
2O・・・(7)
【0105】
このように脱水ステップで脱水され、無水のヨウ化マグネシウムとなったヨウ化マグネシウムは、本実施形態では、再び、材料製造方法で用いられる原料としてのヨウ化マグネシウムに利用される。
【0106】
なお、脱水ステップは、ヨウ化マグネシウム水和物とヨウ化アンモニウムを混合した材料を収容し、その混合した材料を加熱する反応室と、その反応で発生する気体(NH
3、HI、H
2O(水蒸気))を排出する気体排出機構と、を有する脱水装置で行われるが、アンモニア(NH
3)とヨウ化水素(HI)は低温になると、直ぐに、反応して固体のヨウ化アンモニウム(NH
4I)になる。
【0107】
このため、本実施形態では、脱水装置の気体排出機構にヨウ化アンモニウムを取得するための集塵機を設け、水素製造方法が、脱水ステップで発生するアンモニアとヨウ化水素が反応して生成されるヨウ化アンモニウムを取得するヨウ化アンモニウム取得ステップを含むものとして、ヨウ化アンモニウム取得ステップで取得したヨウ化アンモニウムを脱水ステップで利用するものとしている。
【0108】
(第2実施形態)
図2は本発明に係る第2実施形態の水素化マグネシウムを含む水素発生材料を製造する材料製造方法に用いる製造装置10を説明するための断面図である。
【0109】
なお、本実施形態の製造装置10も、
図2を見ればわかる通り、ほとんどの構成は、第1実施形態と同様であるため、以下では、主に第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同様の点については説明を省略する場合がある。
つまり、特に断りがない点については、本実施形態も第1実施形態と同じである。
【0110】
図2に示すように、本実施形態の製造装置10は、排気管12のポンプPよりも上流側(処理室11側)の排気管12の一部を冷却する冷却器20と、その冷却器20内で分岐された排気管12の分岐管が冷却器20から出る部分に接続された回収容器21と、を備えている。
【0111】
先に説明したように、処理室11から排出される気体には、ヨウ化水素(HI)が含まれているが、ヨウ化水素(HI)は比較的高温の状態で液化する。
ヨウ化水素(HI)は、例えば、圧力1atmの雰囲気で約−35℃が沸点であるため、排気管12内の圧力が低圧であることから、もう少し、沸点が低くなるものの、冷却器20による冷却で十分に液化させることができる。
【0112】
そして、排気管12をヨウ化水素の融点と沸点の間になる温度に冷却すると、排出される気体中のヨウ化水素(HI)が液化し、鉛直方向下側に位置する排気管12の分岐管に向けて、液化したヨウ化水素が流れていくことになり、回収容器21に回収されることになる。
【0113】
なお、回収容器21は、排気管12の分岐管に接続するための接続配管を有しており、その接続配管には、ヨウ化水素(HI)が逆流するのを防止する逆止機構21Aが設けられている。
【0114】
また、図示は省略しているが、逆止機構21Aの上流側(排気管12側)には、開閉バルブが設けられるとともに、回収容器21には、回収したヨウ化水素(HI)を取出すための取出用配管等も設けられている。
【0115】
そして、上述のように、気体であったヨウ化水素(HI)を液化させると、その体積は大幅に減少するため、ポンプPが吸引する必要がある気体の体積が減少し、ポンプPに掛かる負荷が大幅に減少するので、ポンプP自体の容量を小さいものとすることができるとともに、ポンプPに必要な電力を低減することができる。
【0116】
なお、上記では、冷却器20でヨウ化水素(HI)を液化させるようにした場合について説明したが、排気管12を融点未満に冷却して固化させるようにしても、同様の効果が得られ、この場合には、固体のヨウ化水素を集塵する集塵機と、その集塵機で集塵したヨウ化水素を収容する密閉型の回収容器と、を備えるものとすればよい。
【0117】
(材料製造方法)
上述したように、本実施形態の製造装置10では、ポンプPに至るまでに気体の体積を減少させるものとなっているため、本実施形態の製造装置10を用いた材料製造方法は、処理室11からポンプPに至るまでの間に、処理室11から排出された気体の体積を減少させる体積減少ステップを含むものとなっている。
【0118】
そして、その体積減少ステップは、先に説明したように、処理室11からポンプPに至るまでの間の排気管12を冷却して、少なくとも排出された気体中のヨウ化水素(HI)を液体、固体、又は、液体及び固体の混合物の状態にして体積を減少させるステップである。
【0119】
また、回収容器21にヨウ化水素(HI)が回収されることで、本実施形態の材料製造方法は、液体、固体、又は、液体及び固体の混合物の状態のヨウ化水素(HI)を取得するヨウ化水素取得ステップを含むものになっている。
【0120】
なお、気体中のヨウ化水素が全て回収容器21に回収できていない時のために、図示を省略したが、本実施形態でも、第1実施形態で説明した処理タンク13の構成を設けるようにしている。
【0121】
(水素製造方法)
一方、本実施形態の水素製造方法は、基本的には、第1実施形態と同様であるが、ヨウ化マグネシウム含有溶液取得ステップの点だけが異なる。
【0122】
つまり、第1実施形態では、ヨウ化水素溶液を取得する溶液取得ステップで取得したヨウ化水素溶液に水素発生ステップで副生成物として生成される酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)を投入して、ヨウ化マグネシウム含有溶液取得ステップが行われていたが、本実施形態ではこの点が異なる。
【0123】
具体的には、本実施形態では、水素発生ステップで水素発生材料を溶液に投入した後の投入後溶液(先に説明した溶液排出機構で密閉タンクから排出される排液)に材料製造方法のヨウ化水素取得ステップで取得されたヨウ化水素(HI)を投入し(溶かし込み)、水素発生ステップで副生成物として生成される酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)とヨウ化水素を反応させて、ヨウ化マグネシウム(MgI
2)を含むヨウ化マグネシウム含有溶液を取得するヨウ化マグネシウム含有溶液取得ステップとしている。
【0124】
この場合でも、ヨウ化マグネシウム含有溶液が取得されるため、さらに、第1実施形態で説明した水和物取得ステップと、脱水ステップと、を行えば、無水のヨウ化マグネシウムが得られ、脱水ステップで脱水された無水のヨウ化マグネシウムを材料製造方法で用いる原料に利用することができる。
【0125】
(第3実施形態)
図3は本発明に係る第3実施形態の水素化マグネシウムを含む水素発生材料を製造する材料製造方法に用いる製造装置10を説明するための断面図である。
【0126】
なお、本実施形態の製造装置10も、
図3を見ればわかる通り、ほとんどの構成は、第1実施形態と同様であるため、以下では、主に第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同様の点については説明を省略する場合がある。
つまり、特に断りがない点については、本実施形態も第1実施形態と同じである。
【0127】
図3に示すように、本実施形態の製造装置10は、排気管12の途中に設けられたポンプPよりも上流側(処理室11側)の排気管12に接続され、アンモニアガス(NH
3)を供給するアンモニアガス供給部22と、アンモニアガス供給部22とポンプPの間の排気管12上に設けられた集塵装置23と、を備えている。
なお、集塵装置23は、ポンプPの下流側(処理室11から離れた側)の排気管12上に設けられていてもよい。
【0128】
アンモニアガス供給部22は、ガス供給部16とほぼ同じ構成であり、アンモニアを貯蔵したアンモニア貯蔵部(図示せず)と排気管12の間を繋ぐガス配管と、そのガス配管上に設けられ、排気管12に供給するアンモニアガスの流量を制御する図示しない流量制御器(例えば、マスフローコントローラ)と、を備えている。
【0129】
そして、先に、説明したように、アンモニア(NH
3)とヨウ化水素(HI)は、低温(ヨウ化アンモニウム(NH
4I)の分解温度である約550℃以下)の状態でヨウ化アンモニウムとなって固体状になる。
【0130】
また、処理室11から排気される気体には、先に説明したようにヨウ化水素(HI)が含まれており、排気管12内の温度は、常温に近い状態になっているため、アンモニアガス供給部22から排気管12にアンモニアガス(NH
3)が供給されると、ヨウ化水素とアンモニアが反応して固体状のヨウ化アンモニウムが生成され、その生成されたヨウ化アンモニウムが集塵装置23で集塵されることで取得される。
【0131】
なお、未反応のアンモニア又はヨウ化水素が存在した時のために、図示を省略したが、本実施形態でも、第1実施形態で説明した処理タンク13の構成を設けるようにしている。
【0132】
この場合でも、気体であったヨウ化水素(HI)は、固体であるヨウ化アンモニウム内に取り込まれることになるので、その体積が大幅に減少し、第2実施形態で説明したのと同様の効果を得られる。
【0133】
(材料製造方法)
上述したように、本実施形態の製造装置10でも、第2実施形態と同様に、ポンプPに至るまでに気体の体積を減少させるものとなっているため、本実施形態の製造装置10を用いた材料製造方法も、処理室11からポンプPに至るまでの間に、処理室11から排出された気体の体積を減少させる体積減少ステップを含むものとなっている。
【0134】
しかし、その体積減少ステップは、本実施形態では、処理室11からポンプPに至るまでの間の排気管12内にアンモニアガスを供給し、少なくとも排出された気体中のヨウ化水素(HI)をヨウ化アンモニウム(NH
4I)にして固化し、体積を減少させるステップになっている。
【0135】
また、集塵装置23でヨウ化アンモニウム(NH
4I)が回収されることで、本実施形態の材料製造方法は、ヨウ化アンモニウムを取得するヨウ化アンモニウム取得ステップを含むものになっている。
【0136】
(水素製造方法)
一方、本実施形態の水素製造方法では、水素発生ステップについては、第1実施形態と同様であるが、それ以降のステップが異なっており、以下、水素発生ステップ以降のステップについて説明する。
【0137】
第1実施形態でも説明したが、水素発生ステップでは、副生成物として水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、酸化マグネシウム(MgO)といった酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)が生成されるが、このような酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)は、水溶液にほとんど解けないため、例えば、溶液排出機構で密閉タンクから排出される溶液(排液)をろ過する等して得ることができる。
【0138】
そして、そのようにして取得した副生成物である酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)2、MgO)を、例えば、乾燥室で乾燥処理し、湿気を飛ばした酸素含有マグネシウム化合物を取得するステップを行う。
【0139】
つまり、本実施形態の水素製造方法では、水素発生ステップの後、水素発生材料を溶液に投入した後の投入後溶液(溶液排出機構で密閉タンクから排出される排液)から水素発生ステップで副生成物として生成される酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)を乾燥させた状態で取得する酸素含有マグネシウム化合物取得ステップを行う。
【0140】
そして、その乾燥した酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)とヨウ化アンモニウム(NH
4I)を反応させると無水のヨウ化マグネシウム(MgI
2)を得ることができる。
【0141】
具体的には、ヨウ化アンモニウム(NH
4I)の分解温度以上の温度で酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)のうちの水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)はヨウ化アンモニウム(NH
4I)と反応して、式8に示すように、ヨウ化マグネシウム(MgI
2)が生成され、同じ温度で、酸化マグネシウム(MgO)はヨウ化アンモニウム(NH
4I)と反応して、式9に示すように、ヨウ化マグネシウムが生成される。
Mg(OH)
2 + 2NH
4I
→ MgI
2 + 2NH
3 + 2H
2O ・・・(8)
MgO + 2NH
4I → MgI
2 + 2NH
3 + H
2O・・・(9)
【0142】
このように、本実施形態の水素製造方法では、酸素含有マグネシウム化合物取得ステップの後、酸素含有マグネシウム化合物取得ステップで取得した酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)と先に説明した材料製造方法のヨウ化アンモニウム取得ステップで取得したヨウ化アンモニウム(NH
4I)を反応させて無水のヨウ化マグネシウム(MgI
2)を得るヨウ化マグネシウム取得ステップが行われる。
【0143】
なお、ヨウ化マグネシウム取得ステップは、先に説明した脱水ステップの時と同様の構成のヨウ化マグネシウム生成装置を用いて行うことができる。
つまり、酸素含有マグネシウム化合物(Mg(OH)
2、MgO)とヨウ化アンモニウム(NH
4I)を混合した材料を収容し、その混合した材料を加熱する生成室と、その反応で発生する気体(NH
3、H
2O(水蒸気))を排出する気体排出機構と、を有するヨウ化マグネシウム生成装置で行われる。
【0144】
そして、ヨウ化マグネシウム取得ステップで取得した無水のヨウ化マグネシウム(MgI
2)は、これまでの実施形態と同様に、材料製造方法で用いる原料に利用することができる。
【0145】
ところで、式8、及び、式9を見ればわかる通り、ヨウ化マグネシウム生成装置の生成室から排出される気体には、アンモニアガス(NH
3)が含まれており、本実施形態では、ヨウ化マグネシウム生成装置の気体排出機構に乾燥フィルタ(例えば、モレキュラーシーブ)を設けるとともに、乾燥フィルタを通過した気体(つまり、アンモニアガス)を取得するアンモニアガス取得手段としてのアンモニアを貯蔵するためのアンモニア貯蔵部を設けるようにしている。
なお、アンモニア貯蔵部には、昇圧装置を経由してアンモニアガスが充填される。
【0146】
したがって、本実施形態の水素製造方法は、ヨウ化マグネシウム取得ステップで発生するアンモニアガス(NH
3)を取得するアンモニアガス取得ステップを含むものになっており、このアンモニア貯蔵部に先に説明したアンモニアガス供給部22のアンモニアを貯蔵したアンモニア貯蔵部(図示せず)と排気管12の間を繋ぐガス配管が接続されている。
【0147】
このため、本実施形態では、アンモニアガス取得ステップで取得されたアンモニアガス(NH
3)が先に説明した材料製造方法の体積減少ステップで処理室11からポンプPに至るまでの間の排気管12内に供給されるアンモニアガスに利用されるものになっている。
【0148】
以上、具体的な実施形態に基づいて、本発明について説明してきたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。