特開2020-83834(P2020-83834A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-83834(P2020-83834A)
(43)【公開日】2020年6月4日
(54)【発明の名称】油中水乳化型化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20200508BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20200508BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20200508BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20200508BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61K8/73
   A61K8/06
   A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-222251(P2018-222251)
(22)【出願日】2018年11月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】青山 真穂子
(72)【発明者】
【氏名】山村 野乃
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC342
4C083AC692
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD051
4C083AD052
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD241
4C083AD242
4C083CC05
4C083CC19
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】
肌なじみが良好で、みずみずしくべたつかない使用感を発揮する油中水乳化型化粧料を提供する。
【解決手段】
下記(A)及び(B)を含有する、油中水乳化型化粧料に関する。
(A)多糖脂肪酸エステル
(B)ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル
多糖脂肪酸エステルとしては、オクタン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、オクタン酸イヌリン、ラウリン酸イヌリン、パルミチン酸イヌリン、ミリスチン酸イヌリン、ステアリン酸イヌリン等が例示される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)及び(B)を含有する、油中水乳化型化粧料。
(A)多糖脂肪酸エステル
(B)ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水乳化型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型固形化粧料は、肌上に滑らかな化粧膜を形成できるため、化粧持続性に優れエモリエント性の高い化粧料として、ファンデーション、口紅、フェイスカラー、日焼け止め料等に汎用されてきた。近年では高年齢女性の化粧意識の高まりに伴い、保湿性を重視する傾向があり、閉塞性の高いこの剤型は注目を集めつつある。
ここで、油中水型乳化組成物として、デキストリン脂肪酸エステルと、ポリグリセリン脂肪酸エステル等を含有するする油中水型乳化組成物が、ベタツキがなく、高温保存安定性がよく、バリア性にも優れた使用感を発揮すること(特許文献1特開2014−47158号公報)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−47158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された油中水型乳化組成物は、べたつきは少ないものの、使用時のみずみずしさに欠ける使用感であった。
【0005】
本発明は、上記欠点を解決し、肌なじみが良好で、みずみずしくべたつかない使用感を発揮する油中水乳化型化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
下記(A)及び(B)を含有する、油中水乳化型化粧料
(A)多糖脂肪酸エステル
(B)ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油中水乳化型化粧料は、肌なじみが良好で、みずみずしくべたつかない使用感を有するという効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0009】
油中水乳化型化粧料に配合する(A)多糖脂肪酸エステルは、特に限定されず、1種を単独で若しくは2種以上を併用して用いる。かかる多糖脂肪酸エステルとしては、デキストリン脂肪酸エステル、イヌリン脂肪酸エステルから選択される1種又は2種以上を用いることが好ましい。たとえば、オクタン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、オクタン酸イヌリン、ラウリン酸イヌリン、パルミチン酸イヌリン、ミリスチン酸イヌリン、ステアリン酸イヌリン等があげられる。
【0010】
油中水乳化型化粧料に配合する(B)ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルは、グリセリンのアルキレンオキシド誘導体であり、グリセリンに、オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレンが共重合したものである。共重合の順番や形態には、特に制限はなく、形態としては、ブロック共重合、ランダム共重合又はこれらの組み合わせを挙げることができる。これらの中でもPEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリン(化粧品表示名称)を用いることが好ましい。
【0011】
ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。市販品としては、ウィルブライドS−753D(日油株式会社製)等を挙げることができる。
【0012】
本発明の油中水乳化型化粧料に配合するポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルの配合量は、特に限定されず、種類や目的等によって調整することができるが、効果や安定性などの点から、化粧料全量に対して、好ましくは0.1〜20.0質量%であり、より好ましくは0.1〜10.0質量%であり、さらに好ましくは0.5〜10.0質量%である。20質量%を超えて配合すると、油中水乳化型の安定性が保てない場合がある。また0.1質量%未満の配合では、みずみずしい使用感が発揮できない場合がある。
【0013】
本発明の油中水乳化型化粧料には、その剤型の特徴から油性成分を当然に含有する。かかる油性成分として、炭化水素油、シリコーン油、エステル油等があげられる。本発明においては、みずみずしい使用感を担保する点から、シリコーン油を用いることが好ましい。
【0014】
本発明の油中水乳化型化粧料に、有機紫外線吸収剤を配合することにより、紫外線防御能を有する化粧料を提供することができる。かかる有機紫外線吸収剤は、化粧料に配合し得るものであれば特に限定されない。例えば、パラメトキシ桂皮酸オクチル、メトキシ桂皮酸イソプロピル、メトキシ桂皮酸イソアミル等の桂皮酸誘導体;パラアミノ安息香酸(以下、「PABA」と略記する)、エチルPABA、エチル−ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル−ジメチルPABA、グリセリルPABA等のPABA誘導体;ホモサラート、エチルヘキシルサリチラート、ジプロピレングリコールサリチラート、TEAサリチラート等のサリチル酸誘導体;ベンゾフェノン−1、ベンゾフェノン−2、ベンゾフェノン−3またはオキシベンゾン、ベンゾフェノン−4、ベンゾフェノン−5、ベンゾフェノン−6、ベンゾフェノン−8、ベンゾフェノン−9、ベンゾフェノン−12等のベンゾフェノン誘導体;3−ベンジリデンショウノウ、4−メチルベンジリデンショウノウ、ベンジリデンショウノウスルホン酸、メト硫酸ショウノウベンザルコニウム、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンショウノウ等のベンジリデンショウノウ誘導体;アニソトリアジン、ジエチヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6−トリス(ジイソブチル−4’−アミノベンザルマロナート)−s−トリアジン、2,4−ビス−〔{4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ}−フェニル〕−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス〔4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ〕−1,3,5−トリアジン等のトリアジン誘導体;フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム等のフェニルベンゾイミダゾール誘導体;ドロメトリゾールトリシロキサン、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)等のフェニルベンゾトリアゾール誘導体;アントラニル酸メンチル等のアントラニル誘導体;ジメトキシベンジリデンオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−エチルヘキシル等のイミダゾリン誘導体;ベンザルマロナート官能基を有するポリオルガノシロキサン等のベンザルマロナート誘導体;1,1−ジカルボキシ(2,2’−ジメチルプロピル)−4,4−ジフェニルブタジエン等の4,4−ジアリールブタジエン誘導体;オクトクリレン、2−〔4−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル〕安息香酸ヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等が挙げられる。これらの有機紫外線吸収剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0015】
紫外線吸収能と皮膚への安全性の観点から、パラメトキシ桂皮酸オクチルを用いることが好ましい。また、UVA防御機能を兼用させるため、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンとパラメトキシ桂皮酸オクチルを併用して用いることが好ましい。
【0016】
本発明の油中水乳化型化粧料には、紫外線を遮蔽する効果を有する無機微粒子を配合することができる。無機微粒子としては、化粧料に使用できる紫外線を遮蔽する無機微粒子であれば特に限定されない。具体例としては、微粒子酸化チタン、微粒子鉄含有酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、及びそれらの複合体等が挙げられる。この中でも、紫外線遮蔽効果の点から、微粒子酸化亜鉛が好ましく用いられる。無機微粒子の形状としては、球状、多面体形状、紡錘状、針状、及び板状等が挙げられ、紫外線を遮蔽する用途で化粧料に使用できるものであれば特に限定されない。無機微粒子の体積平均粒径は、紫外線を遮蔽する効果と使用感の観点から、10〜200nmであることが好ましく、20〜100nmであることがさらに好ましく、20〜50nmであることが最も好ましい。本明細書でいう体積平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定した値である。
【0017】
上記した無機微粒子に対して、撥水性や分散性を付与する目的で、疎水化処理を施した疎水化処理無機微粒子を紫外線遮蔽剤として用いることもできる。疎水化処理により、無機微粒子の油相中での分散安定化を図ることができる。疎水化処理としては、化粧料の材料に対して通常なされる方法であれば特に限定されない。疎水化処理の具体例としては、疎水化処理剤と無機微粒子とを直接混合し、加熱、若しくは非加熱で被覆する乾式被覆方法、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ヘキサン、塩化メチレン、揮発性メチルポリシロキサン、揮発性炭化水素油等の溶媒に疎水化処理剤を溶解又は分散した後、無機微粒子を添加し、混合後、前記溶媒を乾燥等により除去、加熱、粉砕する湿式被覆方法、溶媒に溶解又は分散した疎水化処理剤を流動層中で粉体にスプレーコートする気相被覆方法、メカノケミカル方法等が挙げられる。
【0018】
疎水化処理剤の具体例としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、アルキルチタネート等の有機チタネート化合物、金属石鹸、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、ワックス、ロウ、界面活性剤等が挙げられ、これらを組み合わせた複合処理を行なってもよい。
【0019】
本発明の油中水乳化型化粧料には、その剤型の特徴から乳化剤を当然に含有する。かかる乳化剤としては特に限定されない。
【0020】
本発明の油中水乳化型化粧料には、その剤型の特徴から水性成分を当然に含有する。かかる水性成分としては、通常化粧料に配合し得る水性成分であれば特に限定されず、精製水のほか、グリセリン、ジプロピレングリコール等の多価アルコール等が例示される。
【0021】
本発明の油中水乳化型化粧料の調製方法は、特に限定されず、通常の油中水乳化型化粧料を調製する方法により調製することができる。
【0022】
本願発明の油中水乳化型化粧料には、上述の必須成分、任意成分の他に、必要に応じて通常化粧料に配合される、水性成分、保湿剤、色素、界面活性剤、増粘剤、美容成分、香料、高分子物質、防菌防腐剤、アルコール類、粉体、生体由来成分等を適宜配合することができる。
【0023】
本発明の油中水乳化型紫外線防御用化粧料は、例えば、ローション剤、乳剤、軟膏の剤型で用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお配合量は、特に断りのない限り質量%である。
【0025】
まず、調製した油中水乳化型化粧料の評価方法を説明する。
【0026】
[安定性]
調製した実施例及び比較例にかかる化粧料を40℃の恒温槽で保管し、3カ月後の乳化状態の安定性を観察し、良好なものを「○」、分離などが認められ良好でないものを「×」として評価した。
【0027】
[使用感評価]
化粧料の官能評価専門員3名が、実施例及び比較例にかかる化粧料をそれぞれ独立して使用し、合議により下記の評価を行った。
・油性成分によるべたつき
感じない:○
感じる:×
・水性成分によるみずみずしさ
感じる:○
感じない:×
【0028】
以下に示す処方にて、本発明の実施例並びに比較例となる油中水乳化型紫外線防御用化粧料を調製した。実施例並びに比較例は、油性成分を均質に分散させた後、水性成分を添加して乳化することにより調製した。
【0029】
【表1】
【0030】
なお、表1中の注1〜3の成分は、下記の化粧品原料を使用した。
注1:KSG−210(信越化学社製)
注2:KSG−15(信越化学社製)
注3:KF−6017(信越化学社製)
【0031】
表1に示した通り、本発明の実施例1、2にかかる油中水乳化型化粧料は、保存安定性が良好で、べたつきがなく、みずみずしい使用感であった。これに対し、多糖脂肪酸エステルを配合していない比較例1は、保存安定性に問題があった。また、アルキレンオキシド誘導体を配合していない比較例2は、安定性は良好であったが、べたつきが気になりみずみずしさのない使用感であった。さらに、多糖脂肪酸エステルの代わりに、油相の増粘剤としてカチオン変性粘土鉱物の一種であるジステアルジモニウムヘクトライトを配合した比較例3は、べたつきが気になる使用感であった。
【0032】
【表2】