前記電子伝導物質が、前記イオン伝導性ポリマー100質量部に対して、10〜1000質量部含まれている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ポリマー材料。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の導電性ポリマー材料は、電子伝導性物質、リチウム塩化合物、及び側鎖にエチレンオキシド単位を有するイオン伝導性ポリマーを含むことを特徴としている。本発明の導電性ポリマー材料は、このような構成を備えていることにより、固体電解質二次電池の電極と無機固体電解質との間に配置されると、無機固体電解質二次電池に優れた充放電特性を発揮させることができる。
【0011】
より具体的には、本発明の導電性ポリマー材料は、電子伝導性物質と、リチウム塩化合物と、側鎖にエチレンオキシド単位を有するイオン伝導性ポリマー(以下、単に「イオン伝導性ポリマー」と表記することがある。)とを含んでいることから、電子伝導性とイオン伝導性の両方を有している。さらに、本発明の導電性ポリマー材料は、側鎖にエチレンオキシド単位を有するイオン伝導性ポリマーを含んでいることから、無機材料と比較して高い柔軟性を有している。従って、本発明の導電性ポリマー材料は、電極(より具体的には、活物質粒子などを含む電極材料層)や無機固体電解質との接触面積が大きくなり、その結果、無機固体電解質や電極との界面抵抗が効果的に低下し、優れた充放電特性が発揮されるものと考えられる。なお、後述の通り、本発明の導電性ポリマー材料は、電極と無機固体電解質との間に配置され、かつ、電極材料層と接触するように設けられることが好ましい。また、無機固体電解質二次電池は、高温環境(例えば100℃以上の高温環境)で使用されることもあるが、本発明の導電性ポリマー材料を用いることにより、高温環境において優れた充放電特性が発揮される。以下、本発明の導電性ポリマー材料及びこれを利用した無機固体電解質二次電池について詳述する。
【0012】
なお、本明細書において、「〜」で結ばれた数値は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「〜」で結ぶことができるものとする。
【0013】
本発明の導電性ポリマー材料は、少なくとも、電子伝導性物質、リチウム塩化合物、及び側鎖にエチレンオキシド単位を有するイオン伝導性ポリマーを含む。具体的には、本発明の導電性ポリマー材料は、電子伝導性物質と、リチウム塩化合物と、側鎖にエチレンオキシド単位を有するイオン伝導性ポリマーとの混合物である。
【0014】
側鎖にエチレンオキシド単位を有するイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、側鎖にエチレンオキシド単位を有するポリエーテル、側鎖にエチレンオキシド単位を有するホウ酸エステル、側鎖にエチレンオキシド単位を有するポリオレフィン等があり、好ましくは側鎖にエチレンオキシド単位を有するポリエーテルである。
【0015】
側鎖にエチレンオキシド単位を有するポリエーテルは、側鎖にエチレンオキシド単位を有するエポキシ化合物から形成された構成単位を含むことが好ましい。すなわち、イオン伝導性ポリマーは、側鎖にエチレンオキシド単位を有するエポキシ化合物を少なくとも単量体としたポリマーであることが好ましい。
【0016】
側鎖にエチレンオキシド単位を有するエポキシ化合物としては、例えば、下記式(2)で表される単量体が挙げられ、下記式(2)、必要により下記式(1)、下記式(3)で表される単量体を用いた分岐型ポリエーテルは、側鎖にエチレンオキシド単位を有するポリエーテル(i)となる。式(1)〜(3)で表される単量体は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0019】
[式(2)中、Rは−CH
2O(CH
2CH
2O)
nR
4であり、R
4は炭素数1〜6のアルキル基であり、nは0〜12の数である。]
【0021】
[式(3)中、R
5は、エチレン性不飽和基を含有する基を表す。]
【0022】
式(3)の単量体としては、アリルグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α−テルピニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルフェニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、4,5−エポキシ−2−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカンジエン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキセン、1,2−エポキシ−5−シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、ケイ皮酸グリシジル、クロトン酸グリシジル、グリシジル−4−ヘキセノエートが用いられる。好ましくは、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルである。
【0023】
側鎖にエチレンオキシド単位を有するポリエーテル(i)の合成は、例えば、次のようにして行うことができる。開環重合触媒として有機アルミニウムを主体とする触媒系、有機亜鉛を主体とする触媒系、有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系などの配位アニオン開始剤、または対イオンにK
+を含むカリウムアルコキシド、ジフェニルメチルカリウム、水酸化カリウムなどのアニオン開始剤を用いて、各単量体を溶媒の存在下又は不存在下、反応温度10〜120℃、撹拌下で反応させることによってポリエーテル(i)が得られる。重合度、あるいは得られる共重合体の性質などの点から、配位アニオン開始剤が好ましく、なかでも有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系が取り扱い易く特に好ましい。
【0024】
側鎖にエチレンオキシド単位を有するポリエーテル(i)において、式(1)の単量体に由来する繰り返し単位(A)と、式(2)の単量体に由来する繰り返し単位(B)と、式(3)の単量体に由来する繰り返し単位(C)とのモル比は、(A)95〜5モル%、(B)5〜95モル%、および(C)0〜20モル%が適当であり、好ましくは(A)92〜9モル%、(B)7〜90モル%、および(C)1〜15モル%、更に好ましくは(A)88〜18モル%、(B)10〜80モル%、および(C)2〜15モル%である。繰り返し単位(A)が95モル%以下であるとガラス転移温度の上昇とオキシエチレン鎖の結晶化を招かず、結果的にイオン伝導性の点で好ましい。
【0025】
側鎖にエチレンオキシド単位を有するポリエーテル(i)の具体例としては、エチレンオキシド/ジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル/アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エチレンオキシド/ジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル/メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレンオキシド/ジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル/アクリル酸グリシジル三元共重合体等が挙げられる。
【0026】
側鎖にエチレンオキシド単位を有するポリエーテル(i)の重量平均分子量は特に限定されないが、1万〜300万であってよく、5万〜250万であることがより好ましく、10万〜200万であることが特に好ましい。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で、溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)を使用して、標準ポリスチレン換算により算出する。
【0027】
導電性ポリマー材料に含まれるイオン伝導性ポリマーの含有量としては、導電性ポリマー材料全体を100質量部として、好ましくは3〜95質量部、より好ましくは10〜90質量部である。
【0028】
イオン伝導性ポリマーは、架橋体を含んでいてもよい。
【0029】
リチウム塩化合物としては、リチウムイオン電池に一般的に利用されているような、広い電位窓を有するリチウム塩化合物が好適である。リチウム塩化合物としては、例えば、LiBF
4、LiPF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2(LiTFSI),LiN(SFO
2)
2(LiFSI)、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN[CF
3SC(C
2F
5SO
2)
3]
2などを挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
【0030】
導電性ポリマー材料に含まれるリチウム塩化物の含有量としては、リチウム塩化合物のモル数/イオン伝導性ポリマーのエーテル酸素原子の総モル数の値が0.0001〜5が好ましく、更に好ましくは0.001〜0.5の範囲がよい。
【0031】
また、導電性ポリマー材料には、常温溶融塩が含まれていてもよい。常温溶融塩は、常温において少なくとも一部が液状を呈する塩をいい、常温とは電源が通常作動すると想定される温度範囲をいう。電源が通常作動すると想定される温度範囲とは、上限が120℃程度、場合によっては60℃程度であり、下限は−40℃程度、場合によっては−20℃程度である。
【0032】
常温溶融塩はイオン液体とも呼ばれており、ピリジン系、脂肪族アミン系、脂環族アミン系の4級アンモニウム有機物カチオンが知られている。4級アンモニウム有機物カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウム、トリアルキルイミダゾリウム、などのイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンなどが挙げられる。特に、イミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0033】
なお、テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
また、アルキルピリジウムイオンとしては、N−メチルピリジウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−ブチルピリジニウムイオン、1−エチル−2メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−2,4ジメチルピリジニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
イミダゾリウムカチオンとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
なお、これらのカチオンを有する常温溶融塩は、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いても良い。
【0037】
導電性ポリマー材料に常温溶融塩が含まれる場合、その含有量としては、イオン伝導性ポリマー100質量部に対して、好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜500質量部である。
【0038】
導電性ポリマー材料は、可塑剤などを含んでいてもよい。可塑剤としては、特に限定されないが、ジシアノ化合物、分岐型エーテル化合物が好ましい。可塑剤を添加する場合は、イオン伝導性ポリマーを架橋することが好ましい。この架橋は、化学架橋であり、導電性ポリマー材料からの可塑剤の流出を抑制できる。
【0039】
ジシアノ化合物としてはスクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1,5−ジシアノペンタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,7−ジシアノヘプタン、1,8−ジシアノオクタン等が挙げられる。分岐型エーテル化合物の例として、下記の多分岐型エーテル化合物などが挙げられる。
【0042】
導電性ポリマー材料に可塑剤が含まれる場合、可塑剤の含有量としては、イオン伝導性ポリマー100質量部に対して、好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜500質量部である。
【0043】
電子伝導性物質としては、炭素材料(天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等)、電子伝導性ポリマー、金等の金属、あるいは炭素材料と金属の混合物質として用いてもよい。炭素材料としては例えば、コークス類、ポリマー炭、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛類が挙げられる。コークス類の例としてはコークス、石油コークスおよびピッチコークスおよび石炭コークス等が挙げられる。カーボンブラックの例としては、アセチレンブラック等が挙げられる。黒鉛類の例としては、人造黒鉛、天然黒鉛等が挙げられる。電子伝導性ポリマーの例としては、ポリアセン、ポリチオフェン(PEDOT)、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
【0044】
導電性ポリマー材料に含まれる電子伝導性物質の含有量としては、イオン伝導性ポリマー100質量部に対して、好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜500質量部である。
【0045】
本発明の導電性ポリマー材料は、例えば、イオン伝導性ポリマー、リチウム塩化合物、電子伝導性物質を有機溶媒に混合して、基板(例えばPETフィルム、テフロン(登録商標)板など)上にキャスティングし、溶媒を除去することにより作製することができる。イオン伝導性ポリマーを架橋させる場合には、ラジカル開始剤を含有させ、溶媒を除去後、熱を加えるもしくは紫外線などの活性エネルギー線によって架橋させることができる。有機溶媒としては、極性溶媒が好ましい。具体的にはアセトニトリル、エチルアルコール、メチルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が単独、或いは混合して用いられる。
【0046】
熱による架橋の場合では、有機過酸化物、アゾ化合物等から選ばれるラジカル開始剤が用いられる。有機過酸化物としては、ケトンパーオキシド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキシド、ジアルキルパーオキシド、ジアシルパーオキシド、パーオキシエステル等、通常架橋用途に使用されているものが用いられ、アゾ化合物としてはアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物等、通常架橋用途に使用されているものが用いられる。ラジカル開始剤の添加量は種類により異なるが、通常、イオン伝導性ポリマーを100質量部として0.1〜10質量部の範囲内である。
【0047】
活性エネルギー線を照射する架橋の場合のラジカル開始剤としては、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン類、トリアジン類、ビスイミダゾール類、オキシムエステル類などが用いられる。これらのラジカル重合開始剤の添加量は種類により異なるが、通常、イオン伝導性ポリマーを100質量部として0.01〜5.0質量部の範囲内である。
【0048】
本発明においては、導電性ポリマー材料に架橋を施す場合に架橋助剤を使用してもよい。架橋助剤としてエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレート、トリアリルイソシアヌレート、マレイミド、フェニルマレイミド、無水マレイン酸等を任意に用いることができる。
【0049】
本発明の導電性ポリマー材料はフィルム状(好ましくは、導電性ポリマー材料の架橋フィルム)であってよく、フィルムの膜厚は、好ましくは0.1μm〜200μm、より好ましくは0.5μm〜100μmの範囲内である。
【0050】
無機固体電解質二次電池
本発明の無機固体電解質二次電池は、正極と、負極と、これらの間に配置された無機固体電解質とを備える無機固体電解質二次電池であって、正極と無機固体電解質との間、及び、負極と無機固体電解質との間の少なくとも一方に、本発明の導電性ポリマー材料が配置されている。本発明の導電性ポリマー材料については、前述の通りである。
【0051】
本発明の無機固体電解質二次電池に用いられる導電性ポリマー材料は、前述の通り、電子伝導性物質と、リチウム塩化合物と、側鎖にエチレンオキシド単位を有するイオン伝導性ポリマーとを含んでいることから、電子伝導性とイオン伝導性の両方を有している。さらに、導電性ポリマー材料は、側鎖にエチレンオキシド単位を有するイオン伝導性ポリマーを含んでいることから、無機材料と比較して高い柔軟性を有している。従って、本発明の無機固体電解質二次電池において、導電性ポリマー材料と、電極(より具体的には、活物質粒子などを含む電極材料層)や無機固体電解質(無機粒子の集合体)との接触面積が大きくなり、その結果、電極や無機固体電解質との界面抵抗が効果的に低下し、優れた充放電特性が発揮されるものと考えられる。特に、本発明の無機固体電解質二次電池において、導電性ポリマー材料は、電極と無機固体電解質との間に配置され、かつ、電極材料層と接触するように設けられることが好ましい。
【0052】
また、本発明の無機固体電解質二次電池は、高温環境(例えば100℃以上の高温環境)で使用されることもあるが、本発明の導電性ポリマー材料を用いることにより、高温環境において優れた充放電特性が発揮される。
【0053】
本発明の無機固体電解質二次電池においては、リチウム塩化合物と側鎖にエチレンオキシド単位を有するイオン伝導性ポリマーとを含むイオン伝導性ポリマー材料を、導電性ポリマー材料と無機固体電解質との間に配置することも好ましい。イオン伝導性ポリマー材料において、リチウム塩化合物及びイオン伝導性ポリマーは、それぞれ、導電性ポリマー材料と同様である。
【0054】
イオン伝導性ポリマーは、架橋フィルムであることが好ましい。イオン伝導性ポリマーの架橋フィルムは、少なくとも、リチウム塩化合物と、側鎖にエチレンオキシド単位を有するイオン伝導性ポリマーとを含む組成物を架橋することにより形成される。すなわち、架橋フィルムは、リチウム塩化合物とイオン伝導性ポリマーを含む組成物の架橋フィルムである。リチウム塩化合物及びイオン伝導性ポリマーについては、前述の通りである。
【0055】
架橋フィルムに含まれるイオン伝導性ポリマーの含有量としては、架橋フィルム全体を100質量部として、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは20〜80質量部である。
【0056】
架橋フィルムに含まれるリチウム塩化物の含有量リチウム塩化合物のモル数/イオン伝導性ポリマーのエーテル酸素原子の総モル数の値が0.0001〜5が好ましく、更に好ましくは0.001〜0.5の範囲がよい。
【0057】
また、架橋フィルムには、常温溶融塩が含まれていてもよい。常温溶融塩については、前述の通りである。
【0058】
架橋フィルムに常温溶融塩が含まれる場合、その含有量としては、イオン伝導性ポリマー100質量部に対して、好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜500質量部である。
【0059】
架橋フィルムは、可塑剤などを含んでいてもよい。可塑剤については、前述の通りである。
【0060】
架橋フィルムに可塑剤が含まれる場合、可塑剤の含有量としては、イオン伝導性ポリマー100質量部に対して、好ましくは10〜1000質量部、より好ましくは20〜500質量部である。
【0061】
リチウム塩化合物とイオン伝導性ポリマーを含む組成物に反応開始剤や架橋助剤を配合して、架橋フィルムを形成してもよい。反応開始剤としては、熱反応開始剤、光反応開始剤が挙げられる。
【0062】
熱反応開始剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物等から選ばれるラジカル開始剤が用いられる。有機過酸化物としては、ケトンパーオキシド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキシド、ジアルキルパーオキシド、ジアシルパーオキシド、パーオキシエステル等、通常架橋用途に使用されているものが用いられ、アゾ化合物としてはアゾニトリル化合物、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物等、通常架橋用途に使用されているものが用いられる。ラジカル開始剤の添加量は種類により異なるが、通常、イオン伝導性ポリマーを100質量部として0.1〜10質量部の範囲内である。
【0063】
光反応開始剤としては、アルキルフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン類、トリアジン類、ビスイミダゾール類、オキシムエステル類などラジカル開始剤が用いられる。これらのラジカル重合開始剤の添加量は種類により異なるが、通常、イオン伝導性ポリマーを100質量部として0.01〜5.0質量部の範囲内である。
【0064】
架橋助剤としては、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレート、トリアリルイソシアヌレート、マレイミド、フェニルマレイミド、無水マレイン酸等を任意に用いることができる。
【0065】
リチウム塩化合物とイオン伝導性ポリマーを含む組成物には、有機溶媒を配合してもよく、有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、アセトニトリル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)が挙げられる。
【0066】
架橋フィルムの作製方法は、例えば、イオン伝導性ポリマー、必要に応じて反応開始剤、及びリチウム塩化合物を有機溶媒に混合して溶解して組成物を形成し、基材(例えばPETフィルムやテフロン(登録商標)板など)上に組成物をキャスティングし、溶媒を除去後、加熱又は紫外線などの活性エネルギー線照射によって架橋フィルムを作製する方法が挙げられる。また、直接、無機固体電解質の表面に当該組成物をキャスティングして、架橋フィルムを作製することもできる。
【0067】
架橋フィルムの膜厚は、好ましくは0.1μm〜200μm、より好ましくは0.5μm〜100μmの範囲内である。
【0068】
本発明の無機固体電解質二次電池の積層構成としては、例えば、以下の構成が挙げられる。
正極、導電性ポリマー材料、イオン伝導性ポリマー材料、無機固体電解質、イオン伝導性ポリマー材料、導電性ポリマー材料、及び負極が順に積層された積層構成;
正極、導電性ポリマー材料、イオン伝導性ポリマー材料、無機固体電解質、イオン伝導性ポリマー材料、及び負極が順に積層された積層構成;
正極、導電性ポリマー材料、無機固体電解質、イオン伝導性ポリマー材料、導電性ポリマー材料、及び負極が順に積層された積層構成;
正極、導電性ポリマー材料、イオン伝導性ポリマー材料、無機固体電解質、及び負極が順に積層された積層構成;
正極、無機固体電解質、イオン伝導性ポリマー材料、導電性ポリマー材料、及び負極が順に積層された積層構成;
正極、導電性ポリマー材料、無機固体電解質、導電性ポリマー材料、及び負極が順に積層された積層構成;
正極、導電性ポリマー材料、無機固体電解質、及び負極が順に積層された積層構成;
正極、無機固体電解質、導電性ポリマー材料、及び負極が順に積層された積層構成。
【0069】
イオン伝導性ポリマー材料は、フィルム状(好ましくは、架橋フィルム)であることが好ましく、イオン伝導性ポリマー材料のフィルムの厚みは、好ましくは0.1〜200μm、より好ましくは0.5〜100μmである。
【0070】
本発明の無機固体電解質二次電池において、正極、負極ともに公知のものを用いることができるが、集電体に電極材料層、即ち正極材料層、又は負極材料層を備える電極を例示することができる。
【0071】
正極、負極には、公知の集電体を用いることができる。具体的には、正極には、集電体として、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、金、白金、チタン等の金属が使用される。負極には、集電体として、銅、ニッケル、ステンレス、金、白金、チタン等の金属が使用される。
【0072】
また、正極材料層、負極材料層は、それぞれ、少なくとも正極活物質、負極活物質を含有し、更に導電助剤、バインダー、増粘剤を含有していてもよく必要に応じて、前述の無機固体電解質を含有させてもよい。
【0073】
本発明で使用される正極活物質は、LiMO
2、LiM
2O
4、Li
2MO
3、LiMEO
4のいずれかの組成からなるリチウム金属含有複合酸化物粉末である。ここで式中のMは主として遷移金属からなり、Co、Mn、Ni、Cr、Fe、Tiの少なくとも一種を含んでいる。Mは遷移金属からなるが、遷移金属以外にもAl、Ga、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどが添加されていてもよい。EはP、Siの少なくとも1種を含んでいる。正極活物質の粒子径には50μm以下が好ましく、更に好ましくは20μm以下のものを用いる。これらの活物質は、3V(vs.Li/Li+)以上の起電力を有するものである。
【0074】
正極活物質の具体例としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ニッケル/コバルト/マンガン酸リチウム(3元系)、スピネル型マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムなどが挙げられる。
【0075】
本発明で使用される負極活物質は、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能な構造(層間化合物)を有する炭素材料(天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等)か、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能なリチウム、アルミニウム系化合物、スズ系化合物、シリコン系化合物、チタン系化合物等の金属である。粉末の場合、粒子径は10nm以上100μm以下が好ましく、更に好ましくは20nm以上20μm以下である。また、金属と炭素材料との混合活物質として用いてもよい。
【0076】
導電助剤を用いる場合には、公知の導電助剤を用いることができ、黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの炭素繊維、または金属粉末等が挙げられる。これら導電助剤は1種または2種以上用いてもよい。
【0077】
バインダーとしては、例えばPVdF等のフッ素樹脂、フッ素ゴムやアクリルゴム、変性アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリル系重合体、ビニル系重合体、前記記載のイオン伝導性ポリマーから選ばれる1種以上の化合物を用いることができる。これらバインダーは活物質を100質量部として、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、例えば0.01〜2質量部添加する。
【0078】
増粘剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびこれらの塩(ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。これら増粘剤は1種または2種以上用いてもよい。これら増粘剤は活物質を100質量部として、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、例えば0.01〜2質量部添加する。また、塗工液の粘度が低い場合には増粘剤を併用することができる。
【0079】
集電体と正極材料層、負極材料層を備える正極、負極の作製方法は特に限定されず一般的な方法が用いられる。例えば、正極活物質あるいは負極活物質、導電助剤、バインダー、水またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶媒、必要に応じて増粘剤などからなる正極材料、負極材料のペースト(塗工液)をドクターブレード法やシルクスクリーン法などにより集電体表面上に適切な厚さに均一に塗布することより行われる。
【0080】
例えばドクターブレード法では、負極活物質粉末や正極活物質粉末、導電助剤、バインダー等を水に分散してスラリー状にし、金属電極基板に塗布した後、所定のスリット幅を有するブレードにより適切な厚さに均一化する。電極は活物質塗布後、余分な有機溶剤を除去するため、例えば、100℃の熱風や80℃減圧状態で乾燥する。乾燥後の電極はプレス装置によってプレス成型することで電極が製造される。
【0081】
集電体上に正極材料層、負極材料層を形成した場合には、正極材料層、負極材料の電極材料間、例えば活物質間、活物質と他の電極材料との間等に空隙を生じることになる。本発明の無機固体電解質二次電池においては、このような空隙に、イオン伝導性ポリマー、リチウム塩化合物などを含んでいてもよい。
【0082】
無機固体電解質としては、酸化物系固体電解質、及び硫化物系固体電解質を例示することができる。無機固体電解質は、一般に、電解質を構成する無機固体粒子の集合体である。
【0083】
酸化物系固体電解質は、酸素を含有し、かつ、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0084】
酸化物系固体電解質を構成する具体的な化合物としては、Li
xLa
yTiO
3〔x=0.3〜0.7、y=0.3〜0.7〕(LLT)、Li
xLa
yZr
zM
mO
n(MはAl,Mg,Ca,Sr,V,Nb,Ta,Ti,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxは5≦x≦10を満たし、yは1≦y≦4を満たし、zは1≦z≦4を満たし、mは0≦m≦2を満たし、nは5≦n≦20を満たす。)Li
xB
yM
zO
n(式中MはC,S,Al,Si,Ga,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxは0≦x≦5を満たし、yは0≦y≦1を満たし、zは0≦z≦1を満たし、nは0≦n≦6を満たす。)、Li
x(Al,Ga)
y(Ti,Ge)
zSi
aP
mO
n(ただし、1≦x≦3、0≦y≦1、0≦z≦2、0≦a≦1、1≦m≦7、3≦n≦13)、Li
(3-2x)M
xDO(xは0以上0.1以下の数を表し、Mは2価の金属原子を表す。Dはハロゲン原子または2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。)、Li
xSi
yO
z(1≦x≦5、0<y≦3、1≦z≦10)、Li
xS
yO
z(1≦x≦3、0<y≦2、1≦z≦10)、Li
3BO
3−Li
2SO
4、Li
2O−B
2O
3−P
2O
5、Li
2O−SiO
2、Li
6BaLa
2Ta
2O
12、Li
3PO
(4-3/2w)N
w(wはw<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi
3.5Zn
0.25GeO
4、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa
0.55Li
0.35TiO
3、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi
2P
3O
12、Li
(1+x+y)(Al,Ga)
x(Ti,Ge)
(2-x)Si
yP
(3-y)O
12(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLi
7La
3Zr
2O1
2等が挙げられる。またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(Li
3PO
4)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれた少なくとも1種)等が挙げられる。また、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれた少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。
【0085】
その中でも、Li
xLa
yTiO
3〔x=0.3〜0.7、y=0.3〜0.7〕(LLT)、Li
xLa
yZr
zM
mO
n(MはAl,Mg,Ca,Sr,V,Nb,Ta,Ti,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxは5≦x≦10を満たし、yは1≦y≦4を満たし、zは1≦z≦4を満たし、mは0≦m≦2を満たし、nは5≦n≦20を満たす。)、Li
7La
3Zr
2O
12(LLZ)、Li
3BO
3、Li
3BO
3−Li
2SO
4、Li
3BO
3−Li
2CO
3、Li
x(Al,Ga)
y(Ti,Ge)
zSi
aP
mO
n(ただし、1≦x≦3、0≦y≦1、0≦z≦2、0≦a≦1、1≦m≦7、3≦n≦13)が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
硫化物系固体電解質は、硫黄を含有し、かつ、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば下記式で示される組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。
【0088】
式中、Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。なかでも、B、Sn、Si、Al、Geが好ましく、Sn、Al、Geがより好ましい。Aは、I、Br、Cl、Fを示し、I、Brが好ましく、Iが特に好ましい。a〜eは各元素の組成比を示し、a:b:c:d:eは1〜12:0〜1:1:2〜12:0〜5を満たす。aはさらに、1〜9が好ましく、1.5〜4がより好ましい。bは0〜0.5が好ましい。dはさらに、3〜7が好ましく、3.25〜4.5がより好ましい。eはさらに、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましい。
【0089】
式において、Li、M、P、S及びAの組成比は、好ましくはb、eが0であり、より好ましくはb=0、e=0で且つa、c及びdの比(a:c:d)がa:c:d=1〜9:1:3〜7であり、さらに好ましくはb=0、e=0で且つa:c:d=1.5〜4:1:3.25〜4.5である。
【0090】
無機固体電解質が粒子状である場合、その粒子径としては、例えば0.01〜100μm、好ましくは0.1〜20μmが挙げられる。
【0091】
無機固体電解質二次電池の製造方法
本発明の無機固体電解質二次電池の製造方法は特に限定されず、少なくとも、正極、負極、無機固体電解質、及び本発明の導電性ポリマー材料で構成され、公知の方法にて製造される。例えば、コイン型のリチウムイオン電池の場合、正極、無機固体電解質、負極、さらに、正極と無機固体電解質との間、及び、負極と無機固体電解質との間の少なくとも一方に導電性ポリマー材料を配置して、外装缶に挿入する。その後、封口体とタブ溶接などで接合して、封口体を封入し、カシメることで蓄電池が得られる。電池の形状は限定されないが、例としてはコイン型、円筒型、シート型などがあげられ、2個以上の電池を積層した構造でもよい。
【実施例】
【0092】
以下の実施例において本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0093】
本実施例では、導電性ポリマー材料を用いて、コイン電池を作製し、コイン電池の充放電特性の性能評価を以下の実験にて行った。
【0094】
[作製した電池の評価]
作製した電池の評価としては充放電装置を用いて充放電試験を行い、充電容量および放電容量を求めた。
【0095】
充放電測定
0.1C(10時間率)に相当する電流で4.2VまでCCCV充電(0.01Cカット)後、0.1Cに相当する電流で、2.5VまでCCCV放電(0.01Cカット)を行った。試験温度は100℃環境とした。
【0096】
[正極の作製例]
正極活物質としてNCM(ニッケル/コバルト/マンガン酸リチウム=5/2/3)100質量部に、導電助剤として気相成長炭素繊維(VGCF)1質量部、バインダーとしてPVdF8質量部、イオン伝導性ポリマーとしてエチレンオキシド/ジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル/アリルグリシジルエーテル=80/17/3モル%三元共重合体(重量平均分子量102万)10質量部、リチウム塩化合物としてホウフッ化リチウム3質量部を加え、さらにスラリーの固形分濃度が40質量%となるようにNMP溶液中に加えて、十分に混合して正極用スラリーを得た。得られた正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム集電体上にダイコーターを用いて塗布し、100℃で12時間以上乾繰後、ロールプレス機にてプレスを行い、厚さ20μmの正極を作製した。
【0097】
[導電性ポリマー材料(架橋フィルム)の実施作製例]
側鎖にエチレンオキシド単位を有するイオン伝導性ポリマーとしてエチレンオキシド/ジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル/アリルグリシジルエーテル=80/17/3モル%三元共重合体(重量平均分子量102万)100質量部にリチウム塩化合物としてLiBF
4 15質量部を、炭素材料としてアセチレンブラック85質量部、気相成長炭素繊維(VGCF)85質量部、架橋助剤として、トリメチロールプロパントリアクリレート10質量部、ラジカル開始剤としてベンゾイルパーオキシド(ナイパーBMT、日油株式会社製)0.3質量部を加え、さらにスラリーの固形成分濃度が50質量%になるようにアセトニトリル溶液中に加えて、充分に混合してスラリー溶液を得た。このスラリー溶液をPETフィルム上に塗工、乾燥後、100℃、2時間、減圧下で熱架橋を行い、厚さ20μmの電子伝導性およびイオン伝導性の両方を有する導電性ポリマー材料の架橋フィルムを得た。
【0098】
[イオン伝導性ポリマー材料(架橋フィルム)の実施作製例]
イオン伝導性ポリマーとしてエチレンオキシド/ジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル/アリルグリシジルエーテル=80/17/3モル%三元共重合体(重量平均分子量150万)100質量部、リチウム塩化合物としてLiTFSI 38質量部を、架橋助剤として、トリメチロールプロパントリアクリレート10質量部、ラジカル開始剤としてベンゾイルパーオキシド(ナイパーBMT、日油株式会社製)0.3質量部をアセトニトリル900質量部に完全に溶解させて塗工溶液を調製した。この塗工溶液をPETフィルム上に塗工、乾燥後、100℃、2時間、減圧下で熱架橋を行い、厚さ20μmのリチウム塩化合物を含むイオン伝導性ポリマー材料の架橋フィルムを得た。
【0099】
[無機固体電解質の実施作製例]
(1)イオン交換水99.5質量部にホウ酸リチウム0.5質量部を溶かし、0.5質量%のホウ酸リチウム水溶液を調製した。別途、イオン交換水99.5質量部に硫酸リチウム一水和物0.5質量部を溶かし、0.5質量%の硫酸リチウム水溶液を調製した。0.5質量%のホウ酸リチウム水溶液100質量部に、0.5質量%の硫酸リチウム水溶液13質量部を加え、更に、酸化物系固体電解質LATP(豊島製作所製)(組成:Li
1.3Al
0.3Ti
1.7P
3O
12、平均粒径:1μm)10.5質量部を添加し、室温中で撹拌した。このスラリーを60℃の湯浴を備えたロータリーエバポレーターに移し、加熱・撹拌・減圧下に溶媒を留出・乾固させ、白色の乾固品を得た。これを150℃1時間真空乾燥し、5質量%のホウ酸リチウム−硫酸リチウムが被覆されたLATP(無機固体電解質)の乾燥品を得た。
【0100】
(2)イオン伝導性ポリマーとしてエチレンオキシド/ジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル/アリルグリシジルエーテル=80/17/3モル%三元共重合体(重量平均分子量150万)100質量部、リチウム塩化合物としてホウフッ化リチウム12質量部、架橋助剤として、トリメチロールプロパントリアクリレート10質量部、ラジカル開始剤としてベンゾイルパーオキシド(ナイパーBMT、日油株式会社製) 0.3質量部をアセトニトリル中、室温で、10時間、攪拌し、完全に溶解させて、0.5質量%分岐型ポリエーテルの高分子固体電解質を含むアセトニトリル溶液を調製した。
【0101】
(3)上記(2)の0.5質量%分岐型ポリエーテルの高分子固体電解質を含むアセトニトリル溶液100質量部に、上記(1)の無機固体電解質の乾燥品8.7質量部を加え、60℃の湯浴を備えたロータリーエバポレーターで、加熱・撹拌・減圧下に溶媒を留出させ乾固した。乾固品を110℃2時間真空乾燥し、白色の乾燥品を得た。乾燥品の粉末39mgを、直径10mmφの錠剤成型ダイスに入れ、20kNで、5分間加圧し、厚み230μmの成型品を得た。
【0102】
[導電性ポリマー材料(架橋フィルム)の比較作製例]
ポリエチレンオキシド(重量平均分子量110万)100質量部にリチウム塩化合物としてLiBF
4 15質量部を、炭素材料としてアセチレンブラック85質量部、気相成長炭素繊維(VGCF)85質量部を加え、さらにスラリーの固形成分濃度が50質量%になるようにアセトニトリル溶液中に加えて、充分に混合してスラリー溶液を得た。このスラリー溶液をPETフィルム上に塗工、乾燥を行い、厚さ22μmの電子伝導およびイオン伝導の両方を有する導電性ポリマー材料の架橋フィルムを得た。
【0103】
電池の製造例
[無機固体電解質二次電池の実施製造例1]
ドライルーム内において、作製例で得た正極、実施作製例の導電性ポリマー材料、実施作製例のイオン伝導性ポリマー材料、実施作製例の無機固体電解質、実施作製例のイオン伝導性ポリマー材料、負極(金属リチウム箔)の順に積層後、カシめ、試験用2032型コイン電池を製造した。
<充放電条件>
下限電圧2.5V−上限電圧4.2V、100℃
CC(0.1C)−CV(0.01C)充電
CC(0.1C)−CV(0.01C)放電
<充放電試験結果>
充電容量140mAh/g、放電容量110mAh/g
【0104】
[無機固体電解質二次電池の比較製造例1]
比較製造例1では、実施製造例1の導電性ポリマー材料に代えて、比較作製例の導電性ポリマー材料を用いたこと以外は、実施製造例1と同様にして、試験用2032型コイン電池を製造した。
<充放電条件>
下限電圧2.5V−上限電圧4.2V、100℃
CC(0.1C)−CV(0.01C)充電
CC(0.1C)−CV(0.01C)放電
<充放電試験結果>
充電容量105mAh/g、放電容量95mAh/g。
【0105】
[無機固体電解質二次電池の比較製造例2]
比較製造例2では、実施製造例1の導電性ポリマー材料を用いなかったこと以外は、実施製造例1と同様にして、試験用2032型コイン電池を製造した。
<充放電条件>
下限電圧2.5V−上限電圧4.2V、100℃
CC(0.1C)−CV(0.01C)充電
CC(0.1C)−CV(0.01C)放電
<充放電試験結果>
充電容量100mAh/g、放電容量90mAh/g。
【0106】
実施例の結果から、電子伝導およびイオン伝導の両方を有する導電性ポリマー材料を電極と無機固体電解質の間に挿入することによって、無機固体電解質二次電池が優れた充放電特性(充電および放電容量)を発揮することが分かる。