【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[合成例]
3000gのメタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル(メタクリル酸イソデシル)、78.8gのエチレングリコールジメタクリレート、382.2gのドデシル硫酸ナトリウム、6300gの水および700gのエタノールを混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、35.8gの過硫酸カリウムを添加した後、撹拌しながら1時間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で8時間保持することにより、ゴム状重合体の微粒子が分散したラテックスが得られた。
【0031】
得られたラテックスを撹拌させながら、凝集液を添加することにより凝集を実施した。
【0032】
撹拌は、凝集槽内での撹拌翼による機械撹拌方式で、撹拌翼形状としては三方後退翼にて実施した。
【0033】
得られたゴム状重合体の凝集状態を目視にて確認した。凝集したゴム状重合体がスラリー状に分散しているものは工業的な製造において優れた作業性を有していると評価し、十分な凝集が得られないものや、ゴム状重合体が凝固し塊状になったものは工業的な製造に不適として評価した。
【0034】
[実施例1−1]
得られたエマルションを300rpmで攪拌させながら、3wt%の硫酸アルミニウム水溶液を5250g添加して重合体を緩凝集させた後、イソプロピルアルコール(IPA)を5250g添加することによりゴム状重合体1を凝集させた。ゴム状重合体1は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0035】
[実施例1−2]
実施例1−1で用いたイソプロピルアルコールの代わりにアセトニトリルを5250g用いた以外は実施例1−1と同様の手法にてゴム状重合体2を凝集させた。ゴム状重合体2は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0036】
[実施例1−3]
実施例1−1で用いたイソプロピルアルコールの代わりにエタノールを5250g用いた以外は実施例1−1と同様の手法にてゴム状重合体3を凝集させた。ゴム状重合体3は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0037】
[実施例1−4]
実施例1−1で用いたイソプロピルアルコールの代わりにメタノールを5250g用いた以外は実施例1−1と同様の手法にてゴム状重合体4を凝集させた。ゴム状重合体4は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0038】
[比較例1−1]
実施例1−4で用いた硫酸アルミニウム水溶液濃度を1.2質量%とした以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体5を凝集させた。ゴム状重合体5は、塊状の固体として凝固析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して2質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0039】
[実施例1−5]
実施例1−4で用いた硫酸アルミニウム水溶液濃度を4.2質量%とした以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体6を凝集させた。ゴム状重合体6は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して7質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0040】
[比較例1−2]
実施例1−4で用いた硫酸アルミニウム水溶液濃度を6質量%とした以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体7を凝集させた。ゴム状重合体7は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して10質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0041】
[比較例1−3]
実施例1−4で用いたメタノールを2205gとした以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体8を凝集させた。溶液が白濁するのみで目視では固形分が確認できなかったため、ゴム状重合体8の凝集性は不十分であると評価した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、15質量%であった。
【0042】
[実施例1−6]
実施例1−4で用いたメタノールを18375gとした以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体9を凝集させた。ゴム状重合体9は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、60質量%であった。
【0043】
[比較例1−4]
実施例1−4で用いたメタノールを22890gとした以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体10を凝集させた。ゴム状重合体10は、塊状の固体として凝固析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、65質量%であった。
【0044】
[実施例1−7]
実施例1−4で用いた硫酸アルミニウムの代わりに塩化ナトリウム水溶液を5250g用いた以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体11を凝集させた。ゴム状重合体11は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0045】
[実施例1−8]
実施例1−4で用いた硫酸アルミニウムの代わりに塩化カルシウム水溶液を5250g用いた以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体12を凝集させた。ゴム状重合体12は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0046】
[実施例1−9]
凝固液として、3wt%硫酸アルミニウム水溶液5250gとメタノール5250gをあらかじめ混合したものを用いた以外は実施例1−4と同様の手法によりゴム状重合体13を凝集させた。ゴム状重合体13は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0047】
スラリー状のゴム状重合体として得られたものについては、ゴム状重合体中に残存する無機金属イオンの濃度を測定した。測定方法は次のとおりであり、測定結果を表1に示す。
【0048】
・金属イオン総量:得られた重合体0.1gに硝酸5mlを加え、マイクロ波により分解し、蒸留水により50mlに希釈し、測定溶液とした。パーキンエルマー(株)製「Оptima8300」を用いて、誘電結合プラズマ発光分析(ICP−OES)を行い、ナトリウム濃度、カリウム濃度、アルミニウム濃度、カルシウム濃度を測定し、その合計値を求めた。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すとおり、凝集剤として、無機金属塩を含む水溶液と、有機溶媒とを併用し、それぞれ所定量とすることにより、流動性を保ったスラリー状のゴム状重合体が得られ、工業的な製造において優れた作業性が得られることがわかった。
【0051】
スラリー状で得られたゴム状重合体について、タイヤ用ゴム組成物に配合した際のタイヤ性能を評価した。
【0052】
バンバリーミキサーを使用し、下記表2に示す配合(質量部)に従い、まず、ノンプロ練り工程で、加硫促進剤及び硫黄を除く成分を添加混合し(排出温度=160℃)、プロ練り工程で、加硫促進剤及び硫黄を添加混合して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。
【0053】
表2中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0054】
・変性SBR:株式会社JSR(株)製「HPR350」、アルコキシ基及びアミノ基末端変性溶液重合SBR
・BR:宇部興産(株)製「ウベポールBR150B」
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・シランカップリング剤:エボニックジャパン(株)製「Si69」、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
・ゴム状重合体1:上記実施例1−1にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体2:上記実施例1−2にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体3:上記実施例1−3にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体4:上記実施例1−4にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体6:上記実施例1−5にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体7:上記比較例1−2にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体9:上記実施例1−6にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体11:上記実施例1−7にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体12:上記実施例1−8にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体13:上記実施例1−9にて得られたゴム状重合体
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1種」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・硫黄:細井化学工業(株)製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ」
・2次加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
【0055】
得られた各ゴム組成物について、ウエットグリップ性能、及び低燃費性を評価した。評価方法は次の通りである。
【0056】
・ウエットグリップ性能:温度0℃の条件で損失係数tanδを測定した。0℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、湿潤路面に対するグリップ性能(ウエットグリップ性能)の指標として一般に用いられているものであり、上記指数が大きいほどtanδが大きく、ウエットグリップ性能に優れることを示す。
【0057】
・低燃費性:温度60℃の条件で損失係数tanδを測定した。60℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、低燃費性能の指標として一般に用いられているものであり、上記指数が小さいほどtanδが小さく、従って、発熱しにくく、タイヤとしての低燃費性能に優れることを示す。
【0058】
【表2】
【0059】
結果は、表2に示す通りであり、比較例2−1,比較例2−2と実施例2−1〜実施例2−9との対比より、実施例1−1〜実施例1−9の製造方法により得られた金属イオンの残存量の少ないゴム状重合体を配合するゴム組成物の製造方法により、低燃費性を維持しつつ、ウエットグリップ性能を向上させたタイヤ用ゴム組成物が得られることがわかった。