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特開2020-84081ゴム状重合体の製造方法、及びタイヤ用ゴム組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-84081(P2020-84081A)
(43)【公開日】2020年6月4日
(54)【発明の名称】ゴム状重合体の製造方法、及びタイヤ用ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/22 20060101AFI20200508BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20200508BHJP
   C08C 1/15 20060101ALI20200508BHJP
【FI】
   C08F6/22
   C08L21/00
   C08C1/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-222554(P2018-222554)
(22)【出願日】2018年11月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】福西 智史
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC001
4J002AC031
4J002AC081
4J002BG051
4J002DJ010
4J002FD010
4J002FD140
4J002FD150
4J002GN01
4J100AL04P
4J100AL62Q
4J100CA04
4J100EA07
4J100FA03
4J100FA20
4J100GC07
4J100GC17
4J100JA29
(57)【要約】
【課題】工業的に製造する際の作業性に優れたゴム状重合体の製造方法、及び低燃費性を維持しつつ、ウエットグリップ性能を向上することができる、タイヤ用ゴム組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】ゴム状重合体を含有するラテックスに、凝集液を添加することによりゴム状重合体を凝集させる凝集工程を有し、上記凝集液として、無機金属塩を含む水溶液と、有機溶媒とを用い、上記無機金属塩の配合量が、上記ゴム状重合体100質量部に対して3〜10質量部であり、上記有機溶媒の配合量が、上記ラテックス、上記水溶液、及び上記有機溶媒の混合液の液体成分中、10〜60質量%である、ゴム状重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状重合体を含有するラテックスに、凝集液を添加することによりゴム状重合体を凝集させる凝集工程を有し、
前記凝集液として、無機金属塩を含む水溶液と、有機溶媒とを用い、
前記無機金属塩の配合量が、前記ゴム状重合体100質量部に対して3〜10質量部であり、
前記有機溶媒の配合量が、前記ラテックス、前記水溶液、及び前記有機溶媒の混合液の液体成分中、10〜60質量%である、ゴム状重合体の製造方法。
【請求項2】
前記ゴム状重合体が、乳化重合により合成されたものであることを特徴とする、請求項1に記載のゴム状重合体の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒のsp値が11〜15であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム状重合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により得られたゴム状重合体を配合する、タイヤ用ゴム組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム状重合体の製造方法、及びタイヤ用ゴム組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム状重合体を合成して得られたラテックスから、ゴム状重合体を回収するために凝集させることがある。その凝集方法としては、特許文献1の段落0048に記載のように、無機金属塩や、貧溶媒などの凝集剤を添加する方法が知られている。
【0003】
しかしながら、ゴム状重合体の粒子径が小さい場合、無機金属塩の添加では凝集が不十分な場合がある。また、無機金属塩を多量に用いると、ゴム状重合体中に無機金属イオンが残存し、配合したゴム組成物の特性が悪化するおそれがあった。特に、タイヤ用ゴム組成物に、ウエットグリップ性能等のタイヤ性能を向上させる目的でゴム状重合体を配合した場合、低燃費性が悪化するおそれがあった。
【0004】
また、工業的にゴム状重合体を製造する場合、一般的には、重合反応を行った後、凝集槽において凝集を行い、凝集槽の下部に設けられた排出口から凝集した重合体の回収を行う。
【0005】
しかしながら、貧溶媒を添加する方法では、ゴム状重合体が凝固して塊状になり流動性を失い、凝集槽の排出口から排出できないという問題が生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5967342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、工業的に製造する際の作業性に優れたゴム状重合体の製造方法、及び、低燃費性を維持しつつ、ウエットグリップ性能を向上させることができる、タイヤ用ゴム組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るゴム状重合体の製造方法は、ゴム状重合体を含有するラテックスに、凝集液を添加することによりゴム状重合体を凝集させる凝集工程を有し、上記凝集液として、無機金属塩を含む水溶液と、有機溶媒とを用い、上記無機金属塩の配合量が、上記ゴム状重合体100質量部に対して3〜10質量部であり、上記有機溶媒の配合量が、上記ラテックス、上記水溶液、及び上記有機溶媒の混合液の液体成分中、10〜60質量%であるものとする。
【0009】
上記ゴム状重合体は、乳化重合により合成されたものとすることができる。
【0010】
上記有機溶媒のsp値は11〜15であるものとすることができる。
【0011】
本発明に係るタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、上記ゴム状重合体を配合するものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴム状重合体の製造方法によれば、工業的に製造する際の作業性を大きく向上させることができ、本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法によれば、低燃費性を維持しつつ、ウエットグリップ性能が向上したタイヤ用ゴム組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0014】
本実施形態に係るゴム状重合体の製造方法は、ゴム状重合体を含有するラテックスに、凝集液を添加することによりゴム状重合体を凝集させる凝集工程を有し、上記凝集液として、無機金属塩を含む水溶液と、有機溶媒とを用い、上記無機金属塩の配合量が、上記ゴム状重合体100質量部に対して3〜10質量部であり、上記有機溶媒の配合量が、上記ラテックス、上記水溶液、及び上記有機溶媒の混合液の液体成分中、10〜60質量%であるものとする。
【0015】
無機金属塩としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの金属塩が挙げられ、これらを2種以上併用するものであってもよい。これらの無機金属塩の中でも3価の無機金属イオンを有する無機金属塩であることが好ましい。
【0016】
無機金属塩を含む水溶液の濃度は、特に限定されないが、0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
【0017】
無機金属塩の配合量としては、ゴム状重合体100質量部に対して、3〜10質量部であれば特に限定されないが、3〜7質量部であることが好ましい。3質量部以上である場合、スラリー状のゴム状重合体が得られやすく、10質量部以下である場合、ゴム状重合体中に残存する無機金属塩の量を抑制することができ、ゴム状重合体を配合することで優れたゴム組成物の物性が得られやすい。
【0018】
無機金属塩の添加速度は、特に限定されないが、ゴム状重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部/minであることが好ましく、0.5〜5質量部/minであることがより好ましい。
【0019】
有機溶媒としては、特に限定されないが、sp値が11〜15であるものが好ましく、例えば、メタノール(sp値:14.5)、イソプロピルアルコール(sp値:11.5)、アセトニトリル(sp値:11.9)、エタノール(sp値:12.7)、ジメチルホルムアミド(sp値:12.0)、ジメチルスルホキシド(sp値:12.0)、エチレングリコール(sp値:14.2)などを好適に用いることができる。sp値が上記範囲内である場合、スラリー状のゴム状重合体が得られやすい。
【0020】
ここで本明細書において、sp値(溶解パラメータ)とは、例えば、向井淳二、金城徳幸著「技術者のための実学高分子」(講談社、1981年10月1日発行)の71〜77頁に記載のFedorsの式により算出される25℃における値δ[(cal/cm1/2]であり、1(cal/cm1/2=2.05(MJ/m1/2であり、そのため、SP値が10(cal/cm1/2以下とは20.5(MJ/m1/2以下であることを意味する。
Fedorsの式:
SP値(δ)=(Ev/v)1/2=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
Ev:蒸発エネルギー
v:モル体積
Δei:各成分の原子又は原子団の蒸発エネルギー
Δvi:各原子又は原子団のモル体積
【0021】
上記の式の計算に使用する各原子又は原子団の蒸発エネルギー、モル体積は、F. Fedors, Polym. Eng. Sci., 14, 147 〈1974〉を参照することができる。
【0022】
上記有機溶媒の配合量は、ラテックス、無機金属塩を含有する水溶液、及び有機溶媒の混合液の液体成分中、10〜60質量%であれば特に限定されないが、15〜50質量%であることが好ましい。10質量%以上である場合、ゴム状重合体の凝集が起こりやすく、60質量%以下である場合、スラリー状のゴム状重合体が得られやすい。
【0023】
上記有機溶媒の添加速度は、特に限定されないが、ラテックスと、無機金属塩を含有する水溶液との混合液の液体成分100質量部に対して、0.1〜10質量部/minであることが好ましく、0.5〜5質量部/minであることがより好ましい。
【0024】
本実施形態のように、ゴム状重合体を含有するラテックス中に、無機金属塩を含む水溶液と有機溶媒を添加した場合、ゴム状重合体が凝集によって塊状にはならず、二次粒子や三次粒子のゴム状重合体が分散したスラリー状態を維持することができる。そのメカニズムは定かではないが、ゴム状重合体の表面の電荷が無機金属イオンによって相殺されることで、ゴム状重合体と有機溶媒との相溶性が高まり、ゴム状重合体が緩やかに凝集するためと考えられる。本実施形態の製造方法によれば、工業的に製造する際に、得られるゴム状重合体クラムは流動性を有するため、凝集槽の排出口から容易にゴム状重合体を回収することができる。ここで、本明細書において「凝集」とは、コロイド粒子が集まってより大きな粒子になる現象をいう。
【0025】
上記無機金属塩を含む水溶液と上記有機溶媒は、それぞれ別々に添加してもよく、事前に混合し混合液として添加してもよいが、上記無機金属塩を含む水溶液を添加した後、上記有機溶媒を添加するか、あるいは、混合液として添加するのが好ましい。すなわち、凝集工程は、無機金属塩を含む水溶液を添加し、ゴム状重合体を凝集させる第一凝集工程と、sp値が11〜15である有機溶媒を添加し、ゴム状重合体を凝集させる第二凝集工程とを有する凝集工程であることが好ましく、あるいは、無機金属塩を含む水溶液とsp値が11〜15である有機溶媒との混合液を添加し、ゴム状重合体を凝集させる凝集工程であることが好ましい。
【0026】
混合液として添加する場合の添加速度は、特に限定されないが、ラテックスの液体成分100質量部に対して、0.1〜10質量部/minであることが好ましく、0.5〜5質量部/minであることがより好ましい。
【0027】
ゴム状重合体の重合方法としては、特に限定されず、例えば、乳化重合法、溶液重合法懸濁重合法が挙げられ、この中でも乳化重合法であることが好ましい。
【0028】
本実施形態の凝集工程において使用する攪拌機は、特に限定されず、例えば、撹拌翼形状としては三方後退翼、パドル型、アンカー型、タービン翼、マックスブレンド翼などの一般的な撹拌翼の攪拌機を用いることができる。
【0029】
本実施形態の凝集工程における上記攪拌機の回転数は、特に限定されず、使用する攪拌機の撹拌翼形状によっても異なるが、例えば、三方後退翼を用いた場合、60〜500rpmであってもよく、100〜400rpmであってもよい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[合成例]
3000gのメタクリル酸2,4,6−トリメチルヘプチル(メタクリル酸イソデシル)、78.8gのエチレングリコールジメタクリレート、382.2gのドデシル硫酸ナトリウム、6300gの水および700gのエタノールを混合し、1時間撹拌させることによりモノマーを乳化させ、35.8gの過硫酸カリウムを添加した後、撹拌しながら1時間の窒素バブリングを実施し、溶液を70℃で8時間保持することにより、ゴム状重合体の微粒子が分散したラテックスが得られた。
【0031】
得られたラテックスを撹拌させながら、凝集液を添加することにより凝集を実施した。
【0032】
撹拌は、凝集槽内での撹拌翼による機械撹拌方式で、撹拌翼形状としては三方後退翼にて実施した。
【0033】
得られたゴム状重合体の凝集状態を目視にて確認した。凝集したゴム状重合体がスラリー状に分散しているものは工業的な製造において優れた作業性を有していると評価し、十分な凝集が得られないものや、ゴム状重合体が凝固し塊状になったものは工業的な製造に不適として評価した。
【0034】
[実施例1−1]
得られたエマルションを300rpmで攪拌させながら、3wt%の硫酸アルミニウム水溶液を5250g添加して重合体を緩凝集させた後、イソプロピルアルコール(IPA)を5250g添加することによりゴム状重合体1を凝集させた。ゴム状重合体1は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0035】
[実施例1−2]
実施例1−1で用いたイソプロピルアルコールの代わりにアセトニトリルを5250g用いた以外は実施例1−1と同様の手法にてゴム状重合体2を凝集させた。ゴム状重合体2は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0036】
[実施例1−3]
実施例1−1で用いたイソプロピルアルコールの代わりにエタノールを5250g用いた以外は実施例1−1と同様の手法にてゴム状重合体3を凝集させた。ゴム状重合体3は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0037】
[実施例1−4]
実施例1−1で用いたイソプロピルアルコールの代わりにメタノールを5250g用いた以外は実施例1−1と同様の手法にてゴム状重合体4を凝集させた。ゴム状重合体4は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0038】
[比較例1−1]
実施例1−4で用いた硫酸アルミニウム水溶液濃度を1.2質量%とした以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体5を凝集させた。ゴム状重合体5は、塊状の固体として凝固析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して2質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0039】
[実施例1−5]
実施例1−4で用いた硫酸アルミニウム水溶液濃度を4.2質量%とした以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体6を凝集させた。ゴム状重合体6は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して7質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0040】
[比較例1−2]
実施例1−4で用いた硫酸アルミニウム水溶液濃度を6質量%とした以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体7を凝集させた。ゴム状重合体7は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して10質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0041】
[比較例1−3]
実施例1−4で用いたメタノールを2205gとした以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体8を凝集させた。溶液が白濁するのみで目視では固形分が確認できなかったため、ゴム状重合体8の凝集性は不十分であると評価した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、15質量%であった。
【0042】
[実施例1−6]
実施例1−4で用いたメタノールを18375gとした以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体9を凝集させた。ゴム状重合体9は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、60質量%であった。
【0043】
[比較例1−4]
実施例1−4で用いたメタノールを22890gとした以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体10を凝集させた。ゴム状重合体10は、塊状の固体として凝固析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、65質量%であった。
【0044】
[実施例1−7]
実施例1−4で用いた硫酸アルミニウムの代わりに塩化ナトリウム水溶液を5250g用いた以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体11を凝集させた。ゴム状重合体11は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0045】
[実施例1−8]
実施例1−4で用いた硫酸アルミニウムの代わりに塩化カルシウム水溶液を5250g用いた以外は実施例1−4と同様の手法にてゴム状重合体12を凝集させた。ゴム状重合体12は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0046】
[実施例1−9]
凝固液として、3wt%硫酸アルミニウム水溶液5250gとメタノール5250gをあらかじめ混合したものを用いた以外は実施例1−4と同様の手法によりゴム状重合体13を凝集させた。ゴム状重合体13は、溶液中に分散したスラリー状として析出した。無機金属塩の配合量は、ゴム状重合体100質量部に対して5質量部であり、有機溶媒の配合量は、ラテックスと凝集液との混合液の液体成分中、30質量%であった。
【0047】
スラリー状のゴム状重合体として得られたものについては、ゴム状重合体中に残存する無機金属イオンの濃度を測定した。測定方法は次のとおりであり、測定結果を表1に示す。
【0048】
・金属イオン総量:得られた重合体0.1gに硝酸5mlを加え、マイクロ波により分解し、蒸留水により50mlに希釈し、測定溶液とした。パーキンエルマー(株)製「Оptima8300」を用いて、誘電結合プラズマ発光分析(ICP−OES)を行い、ナトリウム濃度、カリウム濃度、アルミニウム濃度、カルシウム濃度を測定し、その合計値を求めた。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すとおり、凝集剤として、無機金属塩を含む水溶液と、有機溶媒とを併用し、それぞれ所定量とすることにより、流動性を保ったスラリー状のゴム状重合体が得られ、工業的な製造において優れた作業性が得られることがわかった。
【0051】
スラリー状で得られたゴム状重合体について、タイヤ用ゴム組成物に配合した際のタイヤ性能を評価した。
【0052】
バンバリーミキサーを使用し、下記表2に示す配合(質量部)に従い、まず、ノンプロ練り工程で、加硫促進剤及び硫黄を除く成分を添加混合し(排出温度=160℃)、プロ練り工程で、加硫促進剤及び硫黄を添加混合して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。
【0053】
表2中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0054】
・変性SBR:株式会社JSR(株)製「HPR350」、アルコキシ基及びアミノ基末端変性溶液重合SBR
・BR:宇部興産(株)製「ウベポールBR150B」
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・シランカップリング剤:エボニックジャパン(株)製「Si69」、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
・ゴム状重合体1:上記実施例1−1にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体2:上記実施例1−2にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体3:上記実施例1−3にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体4:上記実施例1−4にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体6:上記実施例1−5にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体7:上記比較例1−2にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体9:上記実施例1−6にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体11:上記実施例1−7にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体12:上記実施例1−8にて得られたゴム状重合体
・ゴム状重合体13:上記実施例1−9にて得られたゴム状重合体
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1種」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・硫黄:細井化学工業(株)製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ」
・2次加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
【0055】
得られた各ゴム組成物について、ウエットグリップ性能、及び低燃費性を評価した。評価方法は次の通りである。
【0056】
・ウエットグリップ性能:温度0℃の条件で損失係数tanδを測定した。0℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、湿潤路面に対するグリップ性能(ウエットグリップ性能)の指標として一般に用いられているものであり、上記指数が大きいほどtanδが大きく、ウエットグリップ性能に優れることを示す。
【0057】
・低燃費性:温度60℃の条件で損失係数tanδを測定した。60℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、低燃費性能の指標として一般に用いられているものであり、上記指数が小さいほどtanδが小さく、従って、発熱しにくく、タイヤとしての低燃費性能に優れることを示す。
【0058】
【表2】
【0059】
結果は、表2に示す通りであり、比較例2−1,比較例2−2と実施例2−1〜実施例2−9との対比より、実施例1−1〜実施例1−9の製造方法により得られた金属イオンの残存量の少ないゴム状重合体を配合するゴム組成物の製造方法により、低燃費性を維持しつつ、ウエットグリップ性能を向上させたタイヤ用ゴム組成物が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のゴム状重合体の製造方法は、各種用途に用いられるゴム状重合体を工業的に製造する際に好適に用いることができる。