【背景技術】
【0002】
従来、ジエン系ゴムなどのジエン系ポリマーに官能基を導入することにより、ジエン系ポリマーに新たな特性を付与することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体をグラフト重合することにより、低発熱性及び耐摩耗性が優れたゴム組成物が得られること、及び極性基含有単量体として極性基含有ビニル系単量体が用いられることが記載されている。特許文献2には、天然ゴムラテックスにアルコキシシランを有するビニルモノマーを添加してグラフト重合させるとともに、該アルコキシシランの加水分解及び縮合によりシリカを生成させることが記載されている。しかしながら、ビニルホスホン酸類をグラフト重合させることは記載されていない。
【0004】
一方、特許文献3には、アセチルアセトナート配位子を有するマンガン触媒を用いて、ジエン系ポリマーにホスホン酸類を反応させることにより、変性ポリマーの主鎖又は側鎖を構成する炭素原子にホスホン酸残基を直接結合させることが記載されている。しかしながら、この場合、ホスホン酸残基の付加反応にジエン系ポリマーの二重結合を消費するため、変性ジエン系ポリマーを加硫する際の加硫速度や架橋密度の低下等が懸念される。
【0005】
特許文献4には、ポリマーにメタル化有機ホスフィンを導入するために、メタル化した有機ホスフィンを共役ジエンモノマーに導入して反応性ポリマーを生成することが記載されている。しかしながら、メタル化有機ホスフィンを重合開始剤として用いるものであり、ジエン系ポリマーに対してビニルホスホン酸類をグラフト重合させることは記載されていない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態に係る変性ジエン系ポリマーは、ジエン系ポリマーにビニルホスホン酸類をグラフト重合してなるものである。
【0013】
[ジエン系ポリマー]
変性対象としてのジエン系ポリマーは、共役ジエンモノマーからなる構成単位を含む重合体であり、1種類の共役ジエンモノマーの単独重合体でもよく、2種以上の共役ジエンモノマーの共重合体でもよく、1種又は2種以上の共役ジエンモノマーとビニルモノマーとの共重合体でもよい。ジエン系ポリマーとしては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、ブタジエンイソプレン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、イソブテンイソプレン共重合体などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0014】
ジエン系ポリマーとしては、加硫されることでゴム弾性を示す未加硫のジエン系ゴムを用いることが好ましい。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレン共重合体ゴム、ブタジエンイソプレン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの中でも、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくはイソプレンゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0015】
変性対象としてのジエン系ポリマーは、常温(23℃)で液状であってもよく、固形状であってもよい。ジエン系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば、2,000〜3,000,000でもよく、20,000〜3,000,000でもよく、100,000〜3,000,000でもよく、400,000〜2,600,000でもよい。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による測定によりポリスチレン換算で求められる。
【0016】
[変性剤]
変性剤としてのビニルホスホン酸類としては、下記一般式(1)で表される化合物が用いられる。
【0018】
式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。R
1及びR
2について、炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)、炭素数2〜10のアルケニル基等が挙げられ、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基)、炭素数7〜10のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)等が挙げられる。一実施形態として、R
1及びR
2は、ともに水素原子でもよく、ともに炭素数1〜10(より好ましくは1〜4)のアルキル基でもよい。
【0019】
式(1)中、R
3は、水素原子またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。
【0020】
[変性ジエン系ポリマー]
本実施形態に係る変性ジエン系ポリマーにおいて、上記ビニルホスホン酸類は、ジエン系ポリマーにグラフト重合されている。そのため、変性ジエン系ポリマーは、上記のジエン系ポリマー(好ましくはジエン系ゴム)からなる骨格(即ち、幹)と、該骨格に結合した下記式(2)で表されるグラフト鎖とを有するものである。
【0022】
式(2)中のR
1、R
2及びR
3は、式(1)中のR
1、R
2及びR
3と同じであり、nは0以上の整数を示し、*はジエン系ポリマー中の炭素原子との結合位置を示す。
【0023】
詳細には、ジエン系ポリマーに含まれる炭素−炭素二重結合の隣の炭素原子に対し、ビニルホスホン酸類のビニル基が結合して、式(2)で表されるグラフト鎖が成長したものでもよい。例えば、イソプレンユニットを持つジエン系ポリマーでは、グラフト鎖が導入された構成単位は下記式(3)で表される構造を持つものでもよい。このように、ジエン系ポリマーの炭素−炭素二重結合を消費せずに、それに隣接する炭素原子にグラフト鎖が生成するため、得られた変性ジエン系ポリマーを加硫する際の加硫速度や架橋密度の低下を抑えることができると考えられる。
【0025】
式(3)中のAは、式(2)で表されるグラフト鎖を表す。
【0026】
変性ジエン系ポリマーの変性率は、特に限定されず、例えば0.1〜50モル%でもよく、0.5〜30モル%でもよく、1〜20モル%でもよく、2〜10モル%でもよい。ここで、変性率は、変性ジエン系ポリマーを構成する全構成単位のモル数に対する前記グラフト鎖が導入された構成単位のモル数の比率である。
【0027】
変性ジエン系ポリマーは、常温(23℃)で液状であってもよく、固形状であってもよい。変性ジエン系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば、2,000〜3,000,000でもよく、20,000〜3,000,000でもよく、100,000〜3,000,000でもよい。好ましくは、変性ジエン系ポリマーは常温で固形状の変性ジエン系ゴムであり、その重量平均分子量は400,000〜2,600,000であることが好ましい。
【0028】
変性ジエン系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、−70℃〜−20℃であることが好ましく、より好ましくは−70℃〜−50℃であり、更に好ましくは−65℃〜−60℃である。ここで、ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量測定(DSC)法により測定される。
【0029】
[変性ジエン系ポリマーの製造方法]
本実施形態に係る変性ジエン系ポリマーの製造方法は、ジエン系ポリマーに上記ビニルホスホン酸類をグラフト重合させる方法である。
【0030】
ジエン系ポリマーとしては、プロトン性溶媒である水中にミセル状になった水系エマルション、すなわちラテックスを用いてもよく、あるいはまた、有機溶媒に溶解させた溶液を用いてもよい。一実施形態として、ジエン系ポリマーとしては、ゴムラテックス、即ちジエン系ゴムのラテックスを用いることが好ましい。これらの濃度は特に限定されず、例えば、ラテックスの場合、ジエン系ポリマーの固形分濃度は5〜70質量%でもよく、10〜50質量%でもよい。また、溶液の場合、ジエン系ポリマーの固形分濃度は1〜30質量%でもよく、1〜10質量%でもよい。
【0031】
グラフト重合では、ジエン系ポリマーのラテックス又は溶液に、上記ビニルホスホン酸類と重合開始剤とを添加し、撹拌混合する。ラテックスの場合、更に、乳化剤やバッファーを添加してもよい。ラテックスの場合のpHは特に限定されず、例えばpH5〜12でもよい。
【0032】
ビニルホスホン酸類の添加量は、特に限定されないが、ジエン系ポリマー1kg当たり0.20〜4.0モルであることが好ましく、より好ましくは0.25〜3.0モルである。ビニルホスホン酸類の添加量が0.20モル以上であることにより、変性ジエン系ポリマーの物性向上効果を高めることができる。また4.0モル以下であることにより、グラフト重合反応時における変性ジエン系ポリマーの凝固を抑制することができる。
【0033】
重合開始剤としては、特に限定されず、単量体としてのビニルホスホン酸類をラジカルグラフト重合させることができるものを用いることができる。例えば、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、クメンヒドロペルオキシド、2,2−アゾビスイソブチロニトリルなどの過酸化物が挙げられる。これらはいずれか1種用いても、2種以上併用してもよい。
【0034】
重合開始剤としては、重合温度を低くできることから、レドックス系重合開始剤を用いてもよい。レドックス系重合開始剤として、過酸化物と組み合わされる還元剤には、例えば、テトラエチレンペンタミン、メルカプタン類、酸性亜硫酸ナトリウム、還元性金属イオン、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0035】
重合開始剤の添加量は特に限定されず、例えばビニルホスホン酸類に対して0.01〜5モル%でもよく、0.01〜0.1モル%でもよい。
【0036】
上記グラフト重合工程により得られた変性ジエン系ポリマーを含むラテックス又は溶液は、凝固乾燥させることにより、変性ジエン系ポリマーが得られる。凝固方法としては、特に限定されず、ギ酸を用いて凝固させてもよく、アセトンやメタノールなどの親水性有機溶媒を用いて凝固させてもよい。乾燥方法も特に限定されず、例えば、真空乾燥機、熱風式乾燥機などの通常の乾燥機を用いることができる。なお、乾燥前に、凝固物を水洗してもよい。
【0037】
本実施形態に係る変性ジエン系ポリマーであると、極性基であるホスホン酸基がジエン系ポリマーに導入される。そのため、例えば、該変性ジエン系ポリマーを含む組成物に充填剤としてシリカを配合する際に、当該シリカの分散性を向上させる効果が期待できる。
【0038】
また、グラフト重合による反応中に水素結合によるホスホン酸基の凝集が期待できるとともに、グラフト鎖によるナノマトリックス構造の形成も期待できる。そのため、これらの効果により、引張強度を向上させることができる。
【0039】
本実施形態に係る変性ジエン系ポリマーの用途は特に限定されず、種々のゴム製品、樹脂製品に用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
変性ジエン系ポリマーに関する各測定方法は、以下の通りである。
【0042】
[
31P−NMR]
31P−NMR定量スペクトルは、測定試料を重水素化クロロホルムに溶解させたものを用い、BLUKER社製「400ULTRASHIELDTM PLUS」により測定した。なお、ケミカルシフトの補正はトリフェニルホスフィンを外部標準として用いて行った。
【0043】
[変性率]
13C−NMR定量スペクトルより変性率を算出した。
13C−NMR定量スペクトルは、測定試料を重水素化クロロホルムに溶解させたものを用い、BLUKER社製「400ULTRASHIELDTM PLUS」により測定した。グラフト鎖由来のスペクトル(16ppmのスペクトルを使用)と主鎖由来のスペクトル(23ppmのスペクトルを使用)の積分比より、変性ジエン系ポリマーを構成する全構成単位のモル数に対するグラフト鎖が導入された構成単位のモル数の比率である変性率を算出した。
【0044】
[重量平均分子量(Mw)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)での測定により、ポリスチレン換算のMwを求めた。詳細には、測定試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させたものを用いた。(株)島津製作所「LC−20A」を使用し、試料をフィルター透過後、温度40℃、流量1.0mL/分で、カラム(Shodex KL−806)を通し、示差屈曲検出器(RI)で検出した。
【0045】
[ガラス転移温度(Tg)]
JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分にて測定した(測定温度範囲:−130℃〜200℃)。
【0046】
実施例で用いた試薬の詳細は以下の通りである。
・IRラテックス:イソプレンゴムラテックス、KRATONポリマージャパン(株)製「Califlex IR0401 SU Latex」
・りん酸水素二ナトリウム:富士フィルム和光純薬(株)製
・ドデシル硫酸ナトリウム:富士フィルム和光純薬(株)製
・tert−ブチルヒドロペルオキシド:東京化成工業(株)製
・テトラエチレンペンタミン:東京化成工業(株)製
・IR2200:イソプレンゴム、JSR(株)製「JSR IR2200」
・トルエン:ナカライテスク(株)製
・ビニルホスホン酸:東京化成工業(株)製
・ビニルホスホン酸ジエチル:東京化成工業(株)製
【0047】
[実施例1]
IRラテックスに水を加えて、ゴム固形分濃度20質量%のラテックス103gを調製した。該ラテックスにドデシル硫酸ナトリウム0.10gを加え、窒素雰囲気下で1時間撹拌した。その後、更に、tert−ブチルヒドロペルオキシド0.18mL、テトラエチレンペンタミン0.25mL、ビニルホスホン酸0.54gを加え、30℃で2時間撹拌した。ここで、ビニルホスホン酸の添加量はイソプレンゴム1kg当たり0.25モルである。得られた反応溶液をアセトンに滴下し、ゴム分を凝集させた。得られたゴム分を水で洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより、目的生成物として、ビニルホスホン酸がグラフト重合された変性イソプレンゴムを得た。得られた生成物の
31P−NMRスペクトルからホスホン酸基がイソプレンゴムポリマーに導入されたことを確認した。
【0048】
得られた変性イソプレンゴムは、
31P−NMR(CDCl
3),d=23.1(br)であった。また、変性率:10モル%、Mw:564,000、Tg:−62℃であった。
【0049】
[実施例2]
IRラテックスに水を加えて、ゴム固形分濃度20質量%のラテックス200gを調製した。該ラテックスにドデシル硫酸ナトリウム0.13gを加え、窒素雰囲気下で1時間撹拌した。その後、更に、tert−ブチルヒドロペルオキシド0.36mL、テトラエチレンペンタミン0.50mL、ビニルホスホン酸6.4gを加え、30℃で2時間撹拌した。ここで、ビニルホスホン酸の添加量はイソプレンゴム1kg当たり1.5モルである。得られた反応溶液をアセトンに滴下し、ゴム分を凝集させた。得られたゴム分を水で洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより、目的生成物として、ビニルホスホン酸がグラフト重合された変性イソプレンゴムを得た。得られた生成物の
31P−NMRスペクトルからホスホン酸基がイソプレンゴムポリマーに導入されたことを確認した。
【0050】
得られた変性イソプレンゴムは、
31P−NMR(CDCl
3),d=21.4(br)であった。また、変性率:10モル%、Mw:565,000、Tg:−62℃であった。
【0051】
[実施例3]
IRラテックスに水を加えて、ゴム固形分濃度20質量%のラテックス103gを調製した。該ラテックスに、りん酸水素二ナトリウム0.11gとドデシル硫酸ナトリウム0.10gを加え、窒素雰囲気下で1時間撹拌した。その後、更に、tert−ブチルヒドロペルオキシド0.18mL、テトラエチレンペンタミン0.25mL、ビニルホスホン酸ジエチル3.45gを加え、30℃で2時間撹拌した。ここで、ビニルホスホン酸ジエチルの添加量はイソプレンゴム1kg当たり1.05モルである。得られた反応溶液をアセトンに滴下し、ゴム分を凝集させた。得られたゴム分を水で洗浄し、50
℃で減圧乾燥することにより、目的生成物として、ビニルホスホン酸ジエチルがグラフト重合された変性イソプレンゴムを得た。得られた生成物の
31P−NMRスペクトルからホスホン酸エステル基がイソプレンゴムポリマーに導入されたことを確認した。
【0052】
得られた変性イソプレンゴムは、
31P−NMR(CDCl
3),d=36.7(br)であった。また、変性率:10モル%、Mw:2,060,000、Tg:−62℃であった。
【0053】
[実施例4]
6.0gのIR2200をトルエン200mLに溶解させてゴム溶液を調製した。得られたゴム溶液に、tert−ブチルヒドロペルオキシド48mg、テトラエチレンペンタミン70mg、ビニルホスホン酸0.97gを加え、30℃で2時間撹拌した。ここで、ビニルホスホン酸の添加量はイソプレンゴム1kg当たり1.5モルである。得られた反応溶液をアセトンに滴下し、ゴム分を凝集させた。得られたゴム分を水で洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより、目的生成物として、ビニルホスホン酸がグラフト重合された変性イソプレンゴムを得た。得られた生成物の
31P−NMRスペクトルからホスホン酸基がイソプレンゴムポリマーに導入されたことを確認した。
【0054】
得られた変性イソプレンゴムは、
31P−NMR(CDCl
3),d=19.8(br)であった。また、変性率:2モル%、Mw:485,000、Tg:−65℃であった。
【0055】
[実施例5]
6.0gのIR2200をトルエン200mLに溶解させてゴム溶液を調製した。得られたゴム溶液に、tert−ブチルヒドロペルオキシド96mg、テトラエチレンペンタミン140mg、ビニルホスホン酸1.94gを加え、30℃で2時間撹拌した。ここで、ビニルホスホン酸の添加量はイソプレンゴム1kg当たり3.0モルである。得られた反応溶液をアセトンに滴下し、ゴム分を凝集させた。得られたゴム分を水で洗浄し、50℃で減圧乾燥することにより、目的生成物として、ビニルホスホン酸がグラフト重合された変性イソプレンゴムを得た。得られた生成物の
31P−NMRスペクトルからホスホン酸基がイソプレンゴムポリマーに導入されたことを確認した。
【0056】
得られた変性イソプレンゴムは、
31P−NMR(CDCl
3),d=20.3(br)であった。また、変性率:3モル%、Mw:626,000、Tg:−64℃であった。
【0057】
実施例1,3の未加硫の変性イソプレンゴムについて抗張積を測定した。なお、比較例1として、未変性イソプレンゴムについても抗張積を測定した。未変性イソプレンゴムとしては、上記IRラテックスをアセトンに滴下して凝固し、水で洗浄後に50℃で減圧乾燥して得られた未加硫のイソプレンゴムを用いた。抗張積の測定方法は以下の通りである。
【0058】
[抗張積]
未加硫ゴムを厚さ5mmのシート状に成形し、該シートから縦60mm×横20mmに切り抜いたサンプルを、オートグラフを用いて引張試験を行い、破断特性としての抗張積(TB(引張強さ)×EB(破断時伸び))を求めた。数値が大きいほど、破壊特性に優れることを示す。
【0059】
結果は下記表1に示す通りであり、実施例1,3の変性イソプレンゴムであると、比較例1の未変性イソプレンゴムに対して、未加硫のゴム単体での評価でも、抗張積が向上しており、ビニルホスホン酸類による変性による物性向上効果が認められた。
【0060】
【表1】