(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-84360(P2020-84360A)
(43)【公開日】2020年6月4日
(54)【発明の名称】抄紙用分散剤及び抄紙用分散組成物
(51)【国際特許分類】
D21H 21/06 20060101AFI20200508BHJP
D21H 13/24 20060101ALI20200508BHJP
D21H 13/50 20060101ALI20200508BHJP
D06M 15/507 20060101ALI20200508BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20200508BHJP
B01F 17/52 20060101ALI20200508BHJP
C08G 63/688 20060101ALI20200508BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20200508BHJP
C08G 63/668 20060101ALI20200508BHJP
C08G 63/664 20060101ALI20200508BHJP
【FI】
D21H21/06
D21H13/24
D21H13/50
D06M15/507
D06M15/53
B01F17/52
C08G63/688
C08L67/02
C08G63/668
C08G63/664
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-218561(P2018-218561)
(22)【出願日】2018年11月21日
(11)【特許番号】特許第6534769号(P6534769)
(45)【特許公報発行日】2019年6月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大島 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 基樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 旬
【テーマコード(参考)】
4D077
4J002
4J029
4L033
4L055
【Fターム(参考)】
4D077AA05
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4J029HB03A
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4L033AA07
4L033AA09
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4L055AF01
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4L055AG89
4L055AH29
4L055AH33
4L055EA32
4L055FA09
(57)【要約】
【課題】無機繊維又は有機繊維を抄紙する際、優れた分散性を付与する抄紙用分散剤を提供する。
【解決手段】本発明は、所定の構成単位Aが0.1〜50モル%、及び所定の構成単位Bが50〜99.9モル%から構成された質量平均分子量1000〜200000であるポリエーテルエステル化合物を含有することを特徴とする無機繊維又は有機繊維の抄紙用分散剤が提供される。また、前記抄紙用分散剤、及び無機繊維又は有機繊維を含むことを特徴とする抄紙用分散組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構成単位Aが0.1〜50モル%、及び下記の構成単位Bが50〜99.9モル%から構成された質量平均分子量1000〜200000であるポリエーテルエステル化合物を含有することを特徴とする無機繊維又は有機繊維の抄紙用分散剤。
構成単位A:二塩基酸、二塩基酸のエステル形成性誘導体、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、スルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、及びスルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位を含むもの。
構成単位B:アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールから選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位を含むもの。
【請求項2】
前記構成単位A中の前記二塩基酸が、芳香族ジカルボン酸であり、前記二塩基酸のエステル形成性誘導体が、芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体である請求項1に記載の抄紙用分散剤。
【請求項3】
前記構成単位Aが、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、スルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、及びスルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位を含むものである請求項1又は2に記載の抄紙用分散剤。
【請求項4】
前記構成単位B中の前記アルキレングリコールが、エチレングリコールであり、前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコールである請求項1〜3のいずれか一項に記載の抄紙用分散剤。
【請求項5】
更に、スルフォネート塩、サルフェート塩、ホスフェート塩、及び脂肪酸塩から選ばれる少なくとも一種のアニオン界面活性剤を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の抄紙用分散剤。
【請求項6】
前記ポリエーテルエステル化合物、及び前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリエーテルエステル化合物を70〜99.9質量%、及び前記アニオン界面活性剤を0.1〜30質量%の割合で含有する請求項5に記載の抄紙用分散剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の抄紙用分散剤、及び無機繊維又は有機繊維を含むことを特徴とする抄紙用分散組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維又は有機繊維を抄紙する際、優れた分散性を付与する抄紙用分散剤及び抄紙用分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭素繊維を水系媒体に均一に分散させるための抄紙用分散剤が知られている。従来、例えば特許文献1に開示される抄紙用分散剤が知られている。かかる抄紙用分散剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤、アルキルベタイン型両性界面活性剤、及びポリエーテル型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−57511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら従来の抄紙用分散剤は、繊維の分散性が十分ではないという問題があった。特に繊維含有量が高い場合には繊維の分散性の低下が顕著であった。
本発明が解決しようとする課題は、無機繊維又は有機繊維を抄紙する際、優れた分散性を付与する抄紙用分散剤を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定構造のポリエーテルエステル化合物を含有する抄紙用分散剤が正しく好適であることを見出した。
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、下記の構成単位Aが0.1〜50モル%、及び下記の構成単位Bが50〜99.9モル%から構成された質量平均分子量1000〜200000であるポリエーテルエステル化合物を含有することを特徴とする無機繊維又は有機繊維の抄紙用分散剤が提供される。
【0006】
構成単位Aは、二塩基酸、二塩基酸のエステル形成性誘導体、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、スルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、及びスルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位を含むものである。
【0007】
構成単位Bは、アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールから選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位を含むものである。
前記構成単位A中の前記二塩基酸が、芳香族ジカルボン酸であり、前記二塩基酸のエステル形成性誘導体が、芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体であることが好ましい。
【0008】
前記構成単位Aが、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、スルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、及びスルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位を含むものであることが好ましい。
【0009】
前記構成単位B中の前記アルキレングリコールが、エチレングリコールであり、前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコールであることが好ましい。
更に、スルフォネート塩、サルフェート塩、ホスフェート塩、及び脂肪酸塩から選ばれる少なくとも一種のアニオン界面活性剤を含むことが好ましい。
【0010】
前記ポリエーテルエステル化合物、及び前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリエーテルエステル化合物を70〜99.9質量%、及び前記アニオン界面活性剤を0.1〜30質量%の割合で含有することが好ましい。
【0011】
本発明の別の態様は、前記抄紙用分散剤、及び無機繊維又は有機繊維を含むことを特徴とする抄紙用分散組成物が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、無機繊維又は有機繊維を抄紙する際、優れた分散性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の抄紙用分散剤(以下、分散剤という)を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態の分散剤は、下記に示される構成単位A及び構成単位Bで構成されたポリエーテルエステル化合物を含有するものである。
【0014】
構成単位Aは、二塩基酸、二塩基酸のエステル形成性誘導体、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、スルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位である。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、分散性に優れる観点から二塩基酸が芳香族ジカルボン酸であり、二塩基酸のエステル形成性誘導体が芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体であるものが好ましい。更には、構成単位Aが、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、スルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、及びスルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位を含むものがより好ましい。
【0015】
具体的に構成単位Aを形成することとなる化合物としては、例えば(1)シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の二塩基酸、(2)シュウ酸ジメチル、コハク酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル等の二塩基酸のエステル形成性誘導体、(3)5−スルホイソフタル酸、2−スルホテレフタル酸等のスルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、(4)1,3−ジメチル−5−スルホイソフタル酸、1,4−ジメチル−2−スルホテレフタル酸等のスルホ基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、(5)5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸カリウム塩、5−スルホイソフタル酸リチウム塩、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、2−スルホテレフタル酸カリウム塩、2−スルホテレフタル酸リチウム塩等のスルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、(6)1,3−ジメチル−5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、1,3−ジメチル−5−スルホイソフタル酸カリウム塩、1,3−ジメチル−5−スルホイソフタル酸リチウム塩、1,4−ジメチル−2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、1,4−ジメチル−2−スルホテレフタル酸カリウム塩、1,4−ジメチル−2−スルホテレフタル酸リチウム塩等のスルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0016】
構成単位Bは、アルキレングリコール、及びポリアルキレングリコールから選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位である。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも本発明の効果に優れる観点からアルキレングリコールがエチレングリコールであり、ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールであるものが好ましい。
【0017】
本実施形態の分散剤に供するポリエーテルエステル化合物の質量平均分子量は、1000〜200000である。かかる範囲に規定することにより本発明の効果を向上させる。尚、分散剤の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて以下条件で測定を行った。
【0018】
・質量平均分子量の測定条件
機種:HLC−8120GPC(東ソー社製液体クロマトグラフ)
カラム:TSK gel Super H4000+TSK gel Super
H3000+TSK gel Super H2000(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
検出器:RI(Refractive Index)
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5mL/分
試料濃度:0.25質量%
注入量:10μL
本実施形態の分散剤は、以上説明したようなポリエーテルエステル化合物を含有してなるものであるが、更にスルフォネート塩、サルフェート塩、ホスフェート塩、及び脂肪酸塩から選ばれる少なくとも一種のアニオン界面活性剤を含有して成るものが好ましい。かかるアニオン界面活性剤をさらに配合することにより、本発明の効果をより向上させる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
具体的にスルフォネート塩としては、例えば(1)炭素数6〜22の有機スルホン酸アルカリ金属塩、(2)炭素数6〜22の有機スルホン酸アミン塩、(3)炭素数6〜22の有機スルホン酸ホスホニウム塩等が挙げられる。かかる有機スルホン酸塩を構成する炭素数6〜22の有機スルホン酸の具体例としては、(1)デシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、イソトリドデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ヘキサデシルスルホン酸、ペンタデカンスルホン酸等のアルキルスルホン酸、(2)ブチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルアリールスルホン酸、(3)ジオクチルスルホコハク酸エステル、ジブチルスルホコハク酸エステル、ドデシルスルホ酢酸エステル、ノニルフェノキシポリエチレングリコールスルホ酢酸エステル等のエステルスルホン酸等が挙げられる。
【0020】
前記スルフォネート塩において、アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、例えばナトリウム、カリウム等が挙げられる。
前記スルフォネート塩において、アミン塩を構成することとなるアミンの具体例としては、例えば(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン等の脂肪族アミン類、(2)アニリン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン類、(3)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、(4)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル類、(5)アンモニア等が挙げられる。
【0021】
前記スルフォネート塩において、ホスホニウム塩を構成することとなるホスホニウム基の具体例としては、例えば(1)テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリメチルエチルホスホニウム、トリメチルプロピルホスホニウム、トリメチルオクチルホスホニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム等の、リン原子に結合する有機基が全て脂肪族炭化水素基であるホスホニウム基、(2)トリメチルフェニルホスホニウム、トリエチルフェニルホスホニウム、トリブチルフェニルホスホニウム、ジメチルジフェニルホスホニウム、トリフェニルエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム等の、リン原子に結合する有機基のうちで少なくとも一つが芳香族炭化水素基であるホスホニウム基等が挙げられる。
【0022】
具体的に、サルフェート塩としては、例えば(1)デシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸リチウム、ヘキサデシル硫酸カリウム等のアルキル硫酸アルカリ金属塩、(2)牛脂硫酸化油、ひまし油硫酸化油等の天然油脂の硫酸化物のアルカリ金属塩等が挙げられる。かかるアルカリ金属塩を構成するアルカリ金属は、スルフォネート塩について前記した具体例を採用することができる。
【0023】
具体的に、ホスフェート塩としては、例えば(1)アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアルカリ金属塩、(2)アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、(3)アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアミン塩、(4)アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアミン塩等が挙げられる。
【0024】
前記アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアルカリ金属塩の具体例としては、例えばブチルリン酸エステルアルカリ金属塩、ペンチルリン酸エステルアルカリ金属塩、ヘキシルリン酸エステルアルカリ金属塩、ヘプチルリン酸エステルアルカリ金属塩、オクチルリン酸エステルアルカリ金属塩、イソオクチルリン酸エステルアルカリ金属塩、2−エチルヘキシルリン酸エステルアルカリ金属塩、デシルリン酸エステルアルカリ金属塩、ドデシルリン酸エステルアルカリ金属塩、トリデシルリン酸エステルアルカリ金属塩、ミリスチルリン酸エステルアルカリ金属塩、セチルリン酸エステルアルカリ金属塩、ステアリルリン酸エステルアルカリ金属塩、エイコシルリン酸エステルアルカリ金属塩、ベヘニルリン酸エステルアルカリ金属塩等が挙げられる。これらのアルキルリン酸エステルアルカリ金属塩を構成するアルカリ金属は、スルフォネート塩について前記した具体例を採用することができる。
【0025】
前記アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩の具体例としては、例えばポリオキシアルキレンブチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンペンチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンヘキシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンヘプチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンオクチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンイソオクチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレン−2−エチルヘキシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンデシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレントリデシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンミリスチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンセチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンステアリルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンエイコシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンベヘニルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0026】
かかるポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩における(ポリ)オキシアルキレン基の具体例としては、例えば(ポリ)オキシエチレン基、(ポリ)オキシプロピレン基、(ポリ)オキシエチレンオキシプロピレン基等が挙げられる。
【0027】
これらのポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩を構成するアルカリ金属は、スルフォネート塩について前記した具体例を採用することができる。
【0028】
前記アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアミン塩、アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアミン塩に用いるアミンに関しては、スルフォネート塩について前記した具体例を採用することができる。
【0029】
前記アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアミン塩を構成するアルキル基の具体例としては、前記アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアルカリ金属塩について、前記した具体例を採用することができる。
【0030】
前記アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアミン塩を構成するアルキル基及び(ポリ)オキシアルキレン基の具体例としては、前記アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩について、前記した具体例をそれぞれ採用することができる。
【0031】
具体的に、脂肪酸塩としては、例えば(1)炭素数6〜22の脂肪酸のアルカリ金属塩、(2)炭素数6〜22の脂肪酸のアミン塩、(3)炭素数6〜22の脂肪酸のホスホニウム塩等が挙げられる。かかる炭素数6〜22の脂肪酸の具体例としては、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルシン酸、リノール酸、ドデセニルコハク酸等が挙げられる。
【0032】
前記脂肪酸のアルカリ金属塩を構成するアルカリ金属、脂肪酸のアミン塩を構成するアミン、及び脂肪酸のホスホニウム塩を構成するホスホニウム基は、スルフォネート塩について前記した具体例をそれぞれ採用することができる。
【0033】
本発明の分散剤における、ポリエーテルエステル化合物、及びアニオン界面活性剤の含有割合には特に制限はないが、ポリエーテルエステル化合物、及びアニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、ポリエーテルエステル化合物を70〜99.9質量%、及びアニオン界面活性剤を0.1〜30質量%の割合で含有するのが好ましい。かかる範囲に規定することにより本発明の効果をより向上させる。
【0034】
次に本実施形態の分散剤が適用される無機繊維、及び有機繊維について説明する。無機繊維の具体例としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維、バサルト繊維等が挙げられる。
【0035】
有機繊維の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、セルロース繊維、セルロースナノ繊維等が挙げられる。
【0036】
また、無機繊維、有機繊維の繊維長としては、1〜100mmであることが好ましく、3〜50mmであることがより好ましい。繊維長が1mm以上の場合、無機繊維、有機繊維による補強効果を効率よく発揮することができる。100mm以下の場合、分散状態をより良好に保つことができる。ここで、繊維長は単繊維の長さをいい、繊維軸方向の長さをノギスで測定する。あるいは単繊維を取り出し顕微鏡で観察して測定する。
【0037】
(第2実施形態)
次に本発明に係る抄紙用分散組成物を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の抄紙用分散組成物は、第1実施形態の分散剤、及び無機繊維又は有機繊維を含むものである。本実施形態の抄紙用分散組成物は、無機繊維及び有機繊維のいずれか一方を含んでもよく、両方を含んでもよい。本実施形態の抄紙用分散組成物は、さらに、分散媒を含んでいてもよい。
【0038】
分散媒の具体例としては、例えば水、芳香族炭化水素系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、酢酸エステル系溶剤、ジアルキルエーテル系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤等が挙げられる。これらの中でも、水が好ましい。
【0039】
上記実施形態の分散剤及び抄紙用分散組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
上記実施形態では、無機繊維又は有機繊維を抄紙する際、優れた分散性を付与することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の抄紙用分散剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、その他の成分として、上述した界面活性剤以外の界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤等の通常分散剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0042】
試験区分1(ポリエーテルエステル化合物の合成)
・ポリエーテルエステル化合物(P−1)の合成
テレフタル酸ジメチル58.2部(0.30モル)、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩40.2部(0.15モル)、エチレングリコール18.6部(0.3モル)、ポリエチレングリコール(質量平均分子量2000)800.0部(0.40モル)、三酸化アンチモン0.5部を反応容器に仕込んだ。次に、窒素雰囲気下、150〜220℃でメタノールを留出させながら6時間反応させ、ほぼ理論量のメタノールが留出したことを確認した。続いて20mmHgの減圧下に220〜250℃で60分間、更に0.5〜1.0mmHgの減圧下に250〜260℃で6時間重縮合反応を行った。全構成単位中、構成単位Aに相当するテレフタル酸ジメチル(A−1)から形成された構成単位を30モル%、構成単位Aに相当する5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩(A−4)から形成された構成単位を15モル%、構成単位Bに相当するエチレングリコール(B−1)から形成された構成単位を15モル%及びポリエチレングリコール(B−2)から形成された構成単位を40モル%(合計100モル%)の割合で有するポリエーテルエステル化合物(P−1)を得た。このポリエーテルエステル化合物(P−1)をテトラヒドロフランに溶解させ、GPC法により分析したところ、質量平均分子量9000であった。
【0043】
・ポリエーテルエステル化合物(P−2)〜(P−8)の合成
ポリエーテルエステル化合物(P−1)の合成と同様にして、ポリエーテルエステル化合物(P−2)〜(P−8)を合成した。以上で合成したポリエーテルエステル化合物の内容を表1にまとめて示した。上述した各ポリエーテルエステル化合物について、構成単位A及び構成単位Bの種類、比率(モル%(小数点以下切捨て))、並びに質量平均分子量を下記表1に示す。
【0044】
【表1】
表1において、
A−1:テレフタル酸ジメチルから形成された構成単位
A−2:イソフタル酸から形成された構成単位
A−3:コハク酸から形成された構成単位
A−4:5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩から形成された構成単位
B−1:エチレングリコールから形成された構成単位
B−2:ポリエチレングリコール(分子量2000)から形成された構成単位
B−3:ポリエチレングリコール(分子量4000)から形成された構成単位
試験区分2(抄紙用分散剤の調製)
・実施例1
1000mLのビーカーに20℃の水720.0gを秤量し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(N−1)16.0g加えた。これをホモミキサーで撹拌(4000rpm)しつつ、予め150℃で溶融状態にしておいたポリエーテルエステル化合物(P−1)64.0gを加えた後、10分間撹拌(4000rpm)し、実施例1の抄紙用分散剤の10%水性液を調製した。
【0045】
・実施例2〜16及び比較例1〜4
抄紙用分散剤(実施例1)の10%水性液の調製と同様にして、抄紙用分散剤(実施例2〜16及び比較例1,2)の10%水性液を調製した。ただし、溶融温度は各ポリエーテルエステルの溶融する温度とし、仕込み量は表2に記載した割合とした。抄紙用分散剤(比較例3,4)は、Z−1又はZ−2を所定量の水で希釈して、10%水性液を調製した。以上で調製した各例の抄紙用分散剤の内容を表2にまとめて示した。なお、表2においては、各例の抄紙用分散剤中における溶媒以外の固形分としてポリエーテルエステル化合物及びアニオン界面活性剤の合計を100%とした場合の各成分の比率を示す。
【0046】
【表2】
表2において、
P−1〜P−8:表1に記載のポリエーテルエステル化合物、
N−1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、
N−2:ラウリル硫酸ナトリウム、
N−3:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、
N−4:オクチルリン酸ナトリウム、
N−5:オクチルリン酸カリウム、
Z−1:ポリエーテル型ウレタン樹脂:明成化学工業社製の商品名「パルセットHA」、
Z−2:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル:明成化学工業社製 商品名「メイカサーフMK−37」、
を示す。
【0047】
・水分散性の評価
25℃にて、前記抄紙用分散剤の10%水性液0.1g、水300mL、1.5cmにカットしたサイジング剤未処理の炭素繊維(引張強度3500MPa、引張弾性率2.3×10
5MPa、12000フィラメント)又はポリエステル繊維(単糸繊度0.5デニール、140000フィラメント)3.0gを500mLのビーカー(直径9cm×高さ12cm)に入れ、直径4cmの4枚羽根のプロペラにより500rpmの速度で1分間撹拌した後、繊維の分散状態を目視し、以下の基準で評価した。使用した繊維の種類及び結果を表2にまとめて示した。
【0048】
・水分散性の評価基準
5:繊維が完全に均一に分散しており、短繊維束の存在が全く認められない。
4:繊維が均一に分散しているが、短繊維束の存在がわずかに認められる。
3:繊維が概ね均一に分散しているが、短繊維束の存在が明らかに認められる。
2:繊維があまり均一に分散しておらず、短繊維束が多く認められる。
1:繊維の分散状態が不均一で、短繊維束の存在が全体に認められる。
【0049】
以上表2の結果からも明らかなように本発明の分散剤を使用することで無機繊維又は有機繊維を抄紙する際、優れた分散性を付与することができるという効果がある。
【手続補正書】
【提出日】2019年5月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構成単位Aが0.1〜50モル%、及び下記の構成単位Bが50〜99.9モル%から構成された質量平均分子量1000〜200000であるポリエーテルエステル化合物、並びにスルフォネート塩、サルフェート塩、ホスフェート塩、及び脂肪酸塩から選ばれる少なくとも一種のアニオン界面活性剤を含有することを特徴とする無機繊維又は有機繊維の抄紙用分散剤。
構成単位A:芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種と、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、スルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、及びスルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位を含むもの。
構成単位B:アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールから選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位を含むもの。
【請求項2】
前記構成単位B中の前記アルキレングリコールが、エチレングリコールであり、前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコールである請求項1に記載の抄紙用分散剤。
【請求項3】
前記ポリエーテルエステル化合物、及び前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリエーテルエステル化合物を70〜99.9質量%、及び前記アニオン界面活性剤を0.1〜30質量%の割合で含有する請求項1又は2に記載の抄紙用分散剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の抄紙用分散剤、及び無機繊維又は有機繊維を含むことを特徴とする抄紙用分散組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維又は有機繊維を抄紙する際、優れた分散性を付与する抄紙用分散剤及び抄紙用分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭素繊維を水系媒体に均一に分散させるための抄紙用分散剤が知られている。従来、例えば特許文献1に開示される抄紙用分散剤が知られている。かかる抄紙用分散剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤、アルキルベタイン型両性界面活性剤、及びポリエーテル型ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−57511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら従来の抄紙用分散剤は、繊維の分散性が十分ではないという問題があった。特に繊維含有量が高い場合には繊維の分散性の低下が顕著であった。
本発明が解決しようとする課題は、無機繊維又は有機繊維を抄紙する際、優れた分散性を付与する抄紙用分散剤を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定構造のポリエーテルエステル化合物
及びアニオン界面活性剤を含有する抄紙用分散剤が正しく好適であることを見出した。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、下記の構成単位Aが0.1〜50モル%、及び下記の構成単位Bが50〜99.9モル%から構成された質量平均分子量1000〜200000であるポリエーテルエステル化合物
、並びにスルフォネート塩、サルフェート塩、ホスフェート塩、及び脂肪酸塩から選ばれる少なくとも一種のアニオン界面活性剤を含有することを特徴とする無機繊維又は有機繊維の抄紙用分散剤が提供される。
【0007】
構成単位Aは、
芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種と、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、スルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、及びスルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位を含むものである。
【0008】
構成単位Bは、アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールから選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位を含むものである
。
【0009】
前記構成単位B中の前記アルキレングリコールが、エチレングリコールであり、前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコールであることが好ましい
。
前記ポリエーテルエステル化合物、及び前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリエーテルエステル化合物を70〜99.9質量%、及び前記アニオン界面活性剤を0.1〜30質量%の割合で含有することが好ましい。
【0010】
本発明の別の態様は、前記抄紙用分散剤、及び無機繊維又は有機繊維を含むことを特徴とする抄紙用分散組成物が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、無機繊維又は有機繊維を抄紙する際、優れた分散性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の抄紙用分散剤(以下、分散剤という)を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態の分散剤は、下記に示される構成単位A
が0.1〜50モル%及び構成単位B
が50〜99.9モル%で構成されたポリエーテルエステル化合物を含有するものである。
本発明ではさらに所定のアニオン界面活性剤を含有する。
【0013】
構成単位Aは、
例えば二塩基酸、二塩基酸のエステル形成性誘導体、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、スルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位
が挙げられる。本発明では、二塩基酸として芳香族ジカルボン酸及び二塩基酸のエステル形成性誘導体として芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種と、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、スルホ基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、スルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、及びスルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位を含むものである。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい
。分散性に優れる観点から二塩基酸が芳香族ジカルボン酸であり、二塩基酸のエステル形成性誘導体が芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体であるものが
用いられる。
【0014】
具体的に構成単位Aを形成することとなる化合物としては、例えば(1
)イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の
芳香族ジカルボン酸、(2
)イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル等の
芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、(3)5−スルホイソフタル酸、2−スルホテレフタル酸等のスルホ基を有する芳香族ジカルボン酸、(4)1,3−ジメチル−5−スルホイソフタル酸、1,4−ジメチル−2−スルホテレフタル酸等のスルホ基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、(5)5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸カリウム塩、5−スルホイソフタル酸リチウム塩、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、2−スルホテレフタル酸カリウム塩、2−スルホテレフタル酸リチウム塩等のスルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸、(6)1,3−ジメチル−5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、1,3−ジメチル−5−スルホイソフタル酸カリウム塩、1,3−ジメチル−5−スルホイソフタル酸リチウム塩、1,4−ジメチル−2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、1,4−ジメチル−2−スルホテレフタル酸カリウム塩、1,4−ジメチル−2−スルホテレフタル酸リチウム塩等のスルホン酸金属塩基を有する芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体が挙げられる。
その他参考例として(1)シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸、(2)シュウ酸ジメチル、コハク酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル等の二塩基酸のエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0015】
構成単位Bは、アルキレングリコール、及びポリアルキレングリコールから選ばれる少なくとも一種から形成された構成単位である。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも本発明の効果に優れる観点からアルキレングリコールがエチレングリコールであり、ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールであるものが好ましい。
【0016】
本実施形態の分散剤に供するポリエーテルエステル化合物の質量平均分子量は、1000〜200000である。かかる範囲に規定することにより本発明の効果を向上させる。尚、分散剤の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて以下条件で測定を行った。
【0017】
・質量平均分子量の測定条件
機種:HLC−8120GPC(東ソー社製液体クロマトグラフ)
カラム:TSK gel Super H4000+TSK gel SuperH3000+TSK gel Super H2000(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
検出器:RI(Refractive Index)
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5mL/分
試料濃度:0.25質量%
注入量:10μL
本実施形態の分散剤は、以上説明したようなポリエーテルエステル化合物を含有してなるものであるが、更にスルフォネート塩、サルフェート塩、ホスフェート塩、及び脂肪酸塩から選ばれる少なくとも一種のアニオン界面活性剤を含有して成
る。かかるアニオン界面活性剤をさらに配合することにより、本発明の効果をより向上させる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
具体的にスルフォネート塩としては、例えば(1)炭素数6〜22の有機スルホン酸アルカリ金属塩、(2)炭素数6〜22の有機スルホン酸アミン塩、(3)炭素数6〜22の有機スルホン酸ホスホニウム塩等が挙げられる。かかる有機スルホン酸塩を構成する炭素数6〜22の有機スルホン酸の具体例としては、(1)デシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、イソトリドデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ヘキサデシルスルホン酸、ペンタデカンスルホン酸等のアルキルスルホン酸、(2)ブチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルアリールスルホン酸、(3)ジオクチルスルホコハク酸エステル、ジブチルスルホコハク酸エステル、ドデシルスルホ酢酸エステル、ノニルフェノキシポリエチレングリコールスルホ酢酸エステル等のエステルスルホン酸等が挙げられる。
【0019】
前記スルフォネート塩において、アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、例えばナトリウム、カリウム等が挙げられる。
前記スルフォネート塩において、アミン塩を構成することとなるアミンの具体例としては、例えば(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン等の脂肪族アミン類、(2)アニリン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン類、(3)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、(4)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル類、(5)アンモニア等が挙げられる。
【0020】
前記スルフォネート塩において、ホスホニウム塩を構成することとなるホスホニウム基の具体例としては、例えば(1)テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリメチルエチルホスホニウム、トリメチルプロピルホスホニウム、トリメチルオクチルホスホニウム、トリメチルドデシルホスホニウム、トリメチルオクタデシルホスホニウム等の、リン原子に結合する有機基が全て脂肪族炭化水素基であるホスホニウム基、(2)トリメチルフェニルホスホニウム、トリエチルフェニルホスホニウム、トリブチルフェニルホスホニウム、ジメチルジフェニルホスホニウム、トリフェニルエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム等の、リン原子に結合する有機基のうちで少なくとも一つが芳香族炭化水素基であるホスホニウム基等が挙げられる。
【0021】
具体的に、サルフェート塩としては、例えば(1)デシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸リチウム、ヘキサデシル硫酸カリウム等のアルキル硫酸アルカリ金属塩、(2)牛脂硫酸化油、ひまし油硫酸化油等の天然油脂の硫酸化物のアルカリ金属塩等が挙げられる。かかるアルカリ金属塩を構成するアルカリ金属は、スルフォネート塩について前記した具体例を採用することができる。
【0022】
具体的に、ホスフェート塩としては、例えば(1)アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアルカリ金属塩、(2)アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、(3)アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアミン塩、(4)アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアミン塩等が挙げられる。
【0023】
前記アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアルカリ金属塩の具体例としては、例えばブチルリン酸エステルアルカリ金属塩、ペンチルリン酸エステルアルカリ金属塩、ヘキシルリン酸エステルアルカリ金属塩、ヘプチルリン酸エステルアルカリ金属塩、オクチルリン酸エステルアルカリ金属塩、イソオクチルリン酸エステルアルカリ金属塩、2−エチルヘキシルリン酸エステルアルカリ金属塩、デシルリン酸エステルアルカリ金属塩、ドデシルリン酸エステルアルカリ金属塩、トリデシルリン酸エステルアルカリ金属塩、ミリスチルリン酸エステルアルカリ金属塩、セチルリン酸エステルアルカリ金属塩、ステアリルリン酸エステルアルカリ金属塩、エイコシルリン酸エステルアルカリ金属塩、ベヘニルリン酸エステルアルカリ金属塩等が挙げられる。これらのアルキルリン酸エステルアルカリ金属塩を構成するアルカリ金属は、スルフォネート塩について前記した具体例を採用することができる。
【0024】
前記アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩の具体例としては、例えばポリオキシアルキレンブチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンペンチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンヘキシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンヘプチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンオクチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンイソオクチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレン−2−エチルヘキシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンデシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレントリデシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンミリスチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンセチルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンステアリルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンエイコシルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレンベヘニルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0025】
かかるポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩における(ポリ)オキシアルキレン基の具体例としては、例えば(ポリ)オキシエチレン基、(ポリ)オキシプロピレン基、(ポリ)オキシエチレンオキシプロピレン基等が挙げられる。
【0026】
これらのポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩を構成するアルカリ金属は、スルフォネート塩について前記した具体例を採用することができる。
【0027】
前記アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアミン塩、アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアミン塩に用いるアミンに関しては、スルフォネート塩について前記した具体例を採用することができる。
【0028】
前記アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアミン塩を構成するアルキル基の具体例としては、前記アルキル基の炭素数が4〜22であるアルキルリン酸エステルアルカリ金属塩について、前記した具体例を採用することができる。
【0029】
前記アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアミン塩を構成するアルキル基及び(ポリ)オキシアルキレン基の具体例としては、前記アルキル基の炭素数が4〜22であり且つ(ポリ)オキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン単位の数が1〜5個である(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルアルカリ金属塩について、前記した具体例をそれぞれ採用することができる。
【0030】
具体的に、脂肪酸塩としては、例えば(1)炭素数6〜22の脂肪酸のアルカリ金属塩、(2)炭素数6〜22の脂肪酸のアミン塩、(3)炭素数6〜22の脂肪酸のホスホニウム塩等が挙げられる。かかる炭素数6〜22の脂肪酸の具体例としては、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルシン酸、リノール酸、ドデセニルコハク酸等が挙げられる。
【0031】
前記脂肪酸のアルカリ金属塩を構成するアルカリ金属、脂肪酸のアミン塩を構成するアミン、及び脂肪酸のホスホニウム塩を構成するホスホニウム基は、スルフォネート塩について前記した具体例をそれぞれ採用することができる。
【0032】
本発明の分散剤における、ポリエーテルエステル化合物、及びアニオン界面活性剤の含有割合には特に制限はないが、ポリエーテルエステル化合物、及びアニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、ポリエーテルエステル化合物を70〜99.9質量%、及びアニオン界面活性剤を0.1〜30質量%の割合で含有するのが好ましい。かかる範囲に規定することにより本発明の効果をより向上させる。
【0033】
次に本実施形態の分散剤が適用される無機繊維、及び有機繊維について説明する。無機繊維の具体例としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維、バサルト繊維等が挙げられる。
【0034】
有機繊維の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミドイミド繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、セルロース繊維、セルロースナノ繊維等が挙げられる。
【0035】
また、無機繊維、有機繊維の繊維長としては、1〜100mmであることが好ましく、3〜50mmであることがより好ましい。繊維長が1mm以上の場合、無機繊維、有機繊維による補強効果を効率よく発揮することができる。100mm以下の場合、分散状態をより良好に保つことができる。ここで、繊維長は単繊維の長さをいい、繊維軸方向の長さをノギスで測定する。あるいは単繊維を取り出し顕微鏡で観察して測定する。
【0036】
(第2実施形態)
次に本発明に係る抄紙用分散組成物を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の抄紙用分散組成物は、第1実施形態の分散剤、及び無機繊維又は有機繊維を含むものである。本実施形態の抄紙用分散組成物は、無機繊維及び有機繊維のいずれか一方を含んでもよく、両方を含んでもよい。本実施形態の抄紙用分散組成物は、さらに、分散媒を含んでいてもよい。
【0037】
分散媒の具体例としては、例えば水、芳香族炭化水素系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、酢酸エステル系溶剤、ジアルキルエーテル系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤等が挙げられる。これらの中でも、水が好ましい。
【0038】
上記実施形態の分散剤及び抄紙用分散組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
上記実施形態では、無機繊維又は有機繊維を抄紙する際、優れた分散性を付与することができる。
【0039】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の抄紙用分散剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、その他の成分として、上述した界面活性剤以外の界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤等の通常分散剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0041】
試験区分1(ポリエーテルエステル化合物の合成)
・ポリエーテルエステル化合物(P−1)の合成
テレフタル酸ジメチル58.2部(0.30モル)、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩40.2部(0.15モル)、エチレングリコール18.6部(0.3モル)、ポリエチレングリコール(質量平均分子量2000)800.0部(0.40モル)、三酸化アンチモン0.5部を反応容器に仕込んだ。次に、窒素雰囲気下、150〜220℃でメタノールを留出させながら6時間反応させ、ほぼ理論量のメタノールが留出したことを確認した。続いて20mmHgの減圧下に220〜250℃で60分間、更に0.5〜1.0mmHgの減圧下に250〜260℃で6時間重縮合反応を行った。全構成単位中、構成単位Aに相当するテレフタル酸ジメチル(A−1)から形成された構成単位を30モル%、構成単位Aに相当する5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩(A−4)から形成された構成単位を15モル%、構成単位Bに相当するエチレングリコール(B−1)から形成された構成単位を15モル%及びポリエチレングリコール(B−2)から形成された構成単位を40モル%(合計100モル%)の割合で有するポリエーテルエステル化合物(P−1)を得た。このポリエーテルエステル化合物(P−1)をテトラヒドロフランに溶解させ、GPC法により分析したところ、質量平均分子量9000であった。
【0042】
・ポリエーテルエステル化合物(P−2)〜(P−8)の合成
ポリエーテルエステル化合物(P−1)の合成と同様にして、ポリエーテルエステル化合物(P−2)〜(P−8)を合成した。以上で合成したポリエーテルエステル化合物の内容を表1にまとめて示した。上述した各ポリエーテルエステル化合物について、構成単位A及び構成単位Bの種類、比率(モル%(小数点以下切捨て))、並びに質量平均分子量を下記表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1において、
A−1:テレフタル酸ジメチルから形成された構成単位
A−2:イソフタル酸から形成された構成単位
A−3:コハク酸から形成された構成単位
A−4:5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩から形成された構成単位
B−1:エチレングリコールから形成された構成単位
B−2:ポリエチレングリコール(分子量2000)から形成された構成単位
B−3:ポリエチレングリコール(分子量4000)から形成された構成単位
試験区分2(抄紙用分散剤の調製)
・実施例1
1000mLのビーカーに20℃の水720.0gを秤量し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(N−1)16.0g加えた。これをホモミキサーで撹拌(4000rpm)しつつ、予め150℃で溶融状態にしておいたポリエーテルエステル化合物(P−1)64.0gを加えた後、10分間撹拌(4000rpm)し、実施例1の抄紙用分散剤の10%水性液を調製した。
【0045】
・実施例2〜
12、参考例13〜16及び比較例1〜4
抄紙用分散剤(実施例1)の10%水性液の調製と同様にして、抄紙用分散剤(実施例2〜
12、参考例13〜16及び比較例1,2)の10%水性液を調製した。ただし、溶融温度は各ポリエーテルエステルの溶融する温度とし、仕込み量は表2に記載した割合とした。抄紙用分散剤(比較例3,4)は、Z−1又はZ−2を所定量の水で希釈して、10%水性液を調製した。以上で調製した各例の抄紙用分散剤の内容を表2にまとめて示した。なお、表2においては、各例の抄紙用分散剤中における溶媒以外の固形分としてポリエーテルエステル化合物及びアニオン界面活性剤の合計を100%とした場合の各成分の比率を示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表2において、
P−1〜P−8:表1に記載のポリエーテルエステル化合物、
N−1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、
N−2:ラウリル硫酸ナトリウム、
N−3:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、
N−4:オクチルリン酸ナトリウム、
N−5:オクチルリン酸カリウム、
Z−1:ポリエーテル型ウレタン樹脂:明成化学工業社製の商品名「パルセットHA」、
Z−2:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル:明成化学工業社製 商品名「メイカサーフMK−37」、
を示す。
【0048】
・水分散性の評価
25℃にて、前記抄紙用分散剤の10%水性液0.1g、水300mL、1.5cmにカットしたサイジング剤未処理の炭素繊維(引張強度3500MPa、引張弾性率2.3×10
5MPa、12000フィラメント)又はポリエステル繊維(単糸繊度0.5デニール、140000フィラメント)3.0gを500mLのビーカー(直径9cm×高さ12cm)に入れ、直径4cmの4枚羽根のプロペラにより500rpmの速度で1分間撹拌した後、繊維の分散状態を目視し、以下の基準で評価した。使用した繊維の種類及び結果を表2にまとめて示した。
【0049】
・水分散性の評価基準
5:繊維が完全に均一に分散しており、短繊維束の存在が全く認められない。
4:繊維が均一に分散しているが、短繊維束の存在がわずかに認められる。
3:繊維が概ね均一に分散しているが、短繊維束の存在が明らかに認められる。
2:繊維があまり均一に分散しておらず、短繊維束が多く認められる。
1:繊維の分散状態が不均一で、短繊維束の存在が全体に認められる。
【0050】
以上表2の結果からも明らかなように本発明の分散剤を使用することで無機繊維又は有機繊維を抄紙する際、優れた分散性を付与することができるという効果がある。