特開2020-85184(P2020-85184A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-85184(P2020-85184A)
(43)【公開日】2020年6月4日
(54)【発明の名称】カップリング装置および駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/66 20060101AFI20200508BHJP
   F16D 3/04 20060101ALI20200508BHJP
   F16D 3/74 20060101ALI20200508BHJP
   F16H 1/32 20060101ALN20200508BHJP
【FI】
   F16D3/66
   F16D3/04 Z
   F16D3/74 B
   F16H1/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-223197(P2018-223197)
(22)【出願日】2018年11月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】日本電産シンポ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】坪根 太平
(72)【発明者】
【氏名】羽泉 喬平
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA11
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC07
3J027GC13
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】入力回転体が出力回転体に対して傾いている場合や,偏心している場合に,位置のずれ分を柔軟に吸収することができ,製造コストを抑えることができ,運転時の振動や騒音も軽減できるカップリング装置およびそれを備える駆動装置を提供する。
【解決手段】カップリング装置は、中心軸を中心として回転する入力回転体41と出力回転体42とを接続するカップリング装置であって、入力伝達部と、出力伝達部と、第1コイルスプリング430と、第2コイルスプリング440とを備える。入力伝達部は、入力回転体に含まれる。出力伝達部は、出力回転体に含まれる。前記第1コイルスプリングは、一端部が入力伝達部に固定されるとともに、他端部が出力伝達部に固定され、巻き方向が第1方向である。第2コイルスプリングは、一端部が入力伝達部に固定されるとともに、他端部が出力伝達部に固定され、巻き方向が前記第1方向とは逆向きの第2方向である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転する入力回転体と出力回転体とを接続するカップリング装置であって、
前記入力回転体に含まれる入力伝達部と、
前記出力回転体に含まれる出力伝達部と、
一端部が前記入力伝達部に固定されるとともに、他端部が前記出力伝達部に固定され、巻き方向が第1方向である第1コイルスプリングと、
一端部が前記入力伝達部に固定されるとともに、他端部が前記出力伝達部に固定され、巻き方向が前記第1方向とは逆向きの第2方向である第2コイルスプリングと、
を備えるカップリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカップリング装置であって
前記入力伝達部は、前記入力回転体の動力伝達経路の最も後段に位置し、
前記出力伝達部は、前記出力回転体の動力伝達経路の最も前段に位置する、カップリング装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のカップリング装置であって、
前記第1コイルスプリングの巻き径と、前記第2コイルスプリングの巻き径とが、同等である、カップリング装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のカップリング装置であって、
前記第1コイルスプリングを構成する金属線の太さと、前記第2コイルスプリングを構成する金属線の太さとが、同等である、カップリング装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のカップリング装置であって、
前記第1コイルスプリングの自然長と、前記第2コイルスプリングの自然長とが、同等である、カップリング装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のカップリング装置であって、
前記第1コイルスプリングと、前記第2コイルスプリングとは、軸方向における位置が互いに異なる、カップリング装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のカップリング装置であって、
前記入力伝達部は、前記第1コイルスプリングを構成する前記金属線および前記第2コイルスプリングを構成する前記金属線の径方向内方に配置され、
前記出力伝達部は、前記第1コイルスプリングを構成する前記金属線および前記第2コイルスプリングを構成する前記金属線の径方向外方に配置される、カップリング装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載のカップリング装置を備える駆動装置であって、
前記入力回転体は、軸方向に延びるとともに、電動機の動力により直接または間接的に回転駆動する駆動シャフトを含み、
前記出力回転体は、軸方向に延びる被駆動シャフトに動力伝達経路の後段で接続される、駆動装置。
【請求項9】
中心軸を中心として回転する入力回転体と出力回転体とを接続するカップリング装置であって、
前記入力回転体の動力伝達経路の最も後段に位置する入力伝達部と、
前記出力回転体の動力伝達経路の最も前段に位置する出力伝達部と、
軸方向において前記入力伝達部と前記出力伝達部との間に介在する中間伝達部と、
一端部が前記入力伝達部に固定されるとともに、他端部が前記中間伝達部に固定され、巻き方向が第1方向である第1コイルスプリングと、
一端部が前記中間伝達部に固定されるとともに、他端部が前記出力伝達部に固定され、巻き方向が前記第1方向とは逆向きの第2方向である第2コイルスプリングと、
を備えるカップリング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップリング装置および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力回転体と出力回転体とを接続するカップリング装置が知られている。この種のカップリング装置は、例えば電動機や減速機に用いられる。従来のカップリング装置については、例えば特開2004−245269号公報に開示されている。この特開2004−245269号公報に開示された電動機の継手は、電動機の出力軸に固定されたオルダムハブと、被駆動軸に固定されたオルダムハブと、二つのオルダムハブを互いに直角に連結するオルダムスライダ(11)とを備えている。
【特許文献1】特開2004−245269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特開2004−245269号公報に開示されるようなオルダム継手の場合、オルダムハブと、オルダムスライダ(11)とに、すきま公差を持たせることで、出力軸の被駆動軸に対する傾きや偏心に起因する位置のずれ分を吸収する構成とすることが一般的である。しかしながら、斯かる構成を採用した場合、高い加工精度が要求されるため、製造コストが嵩んでしまうという点で、不利であった。また、すきま公差を持たせると、運転時に部品同士が衝突して振動や騒音が大きくなってしまうという点でも、改善の余地があった。
【0004】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、その潜在的な目的は、入力回転体が出力回転体に対して傾いている場合や、偏心している場合に、傾きや偏心に起因する位置のずれ分を柔軟に吸収することができ、製造コストを抑えることができ、しかも運転時の振動や騒音も軽減できるカップリング装置およびそれを備える駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
本発明の観点によれば、以下の構成のカップリング装置が提供される。即ち、このカップリング装置は、中心軸を中心として回転する入力回転体と出力回転体とを接続するカップリング装置であって、入力伝達部と、出力伝達部と、第1コイルスプリングと、第2コイルスプリングとを備える。前記入力伝達部は、前記入力回転体に含まれる。前記出力伝達部は、前記出力回転体に含まれる。前記第1コイルスプリングは、一端部が前記入力伝達部に固定されるとともに、他端部が前記出力伝達部に固定され、巻き方向が第1方向である。前記第2コイルスプリングは、一端部が前記入力伝達部に固定されるとともに、他端部が前記出力伝達部に固定され、巻き方向が前記第1方向とは逆向きの第2方向である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の観点によれば、入力回転体が出力回転体に対して傾いている場合や、偏心している場合に、傾きや偏心に起因する位置のずれ分を柔軟に吸収することができ、製造コストを抑えることができ、しかも運転時の振動や騒音も軽減できるカップリング装置および駆動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係るカップリング装置を備える波動歯車式減速機の縦断面図である。
図2図2は、図1中のII−II線断面図である。
図3図3は、カップリング装置の構成を示す図であり、軸方向の一方側からみた図と、一部縦断面図と、縦断面図である。
図4図4は、第2実施形態に係るカップリング装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、波動歯車式減速機の中心軸と平行な方向を「軸方向」、波動歯車式減速機の中心軸に直交する方向を「径方向」、波動歯車式減速機の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0010】
<1.第1実施形態>
<1−1.波動歯車式減速機の全体構成>
以下では、図1および図2を参照して、実施形態に係る波動歯車式減速機100の全体的な構成について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るカップリング装置40を備える波動歯車式減速機100の縦断面図である。図2は、図1中のII−II線断面図であり、可撓性外歯と剛性内歯との噛み合いを示している。ただし、図2においては、図面を見やすくするために、ハッチングを省略してある。
【0011】
本実施形態の波動歯車式減速機100は、後述する剛性内歯歯車10と可撓性外歯歯車20との差動(相対回転)を利用して、入力された回転動力を変速する装置である。波動歯車式減速機100は、例えば、小型ロボットの関節に組み込まれ、モータから得られる動力を減速する減速機として用いられる。図1に示すように、波動歯車式減速機100は、剛性内歯歯車10と、可撓性外歯歯車20と、波動発生器30と、カップリング装置40とを備えている。
【0012】
剛性内歯歯車10は、図1に示す中心軸Cを中心とする円環状の部材である。剛性内歯歯車10の剛性は、後述する可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23の剛性よりも、はるかに高い。したがって、剛性内歯歯車10は、実質的に剛体とみなすことができる。剛性内歯歯車10は、内周面に複数の剛性内歯11を有する。図2に示すように、複数の剛性内歯11は、周方向に沿って、一定のピッチで配列される。本実施形態の剛性内歯歯車10は、波動歯車式減速機100が搭載される装置の枠体に固定される。
【0013】
可撓性外歯歯車20は、円筒状の胴部21と平板部22とを備える部材である。胴部21は、径方向に撓み変形可能な部位である。円筒状の胴部21の軸方向の一方側の端部には、平板部22が接続される。また、円筒状の胴部21は、軸方向の他方側の端部に、可撓性外歯29が外周面に形成される可撓性歯部23を有する。
【0014】
平板部22は、中心軸Cに対して垂直に略平面状に広がる部位である。平板部22は、胴部21よりも撓み変形し難い。平板部22は、円環板状の固定部25と、ダイヤフラム部24とを有する。ダイヤフラム部24は、胴部21との接続箇所に近い側に配置され、軸方向の肉厚が固定部25よりも薄い。ダイヤフラム部24は、円環状の形状を有し、可撓性歯部23よりも小さい撓み性を有する。
【0015】
固定部25は、ダイヤフラム部24の径方向内側に配置される、一定の肉厚を有する部位である。固定部25の撓み性は、ダイヤフラム部24の撓み性よりもはるかに小さい。固定部25には、減速後の動力を取り出すための出力シャフト(被駆動シャフト、図示省略)が同軸上で固定される。
【0016】
波動発生器30は、可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23を径方向に非真円状に撓み変形させるための機構である。波動発生器30は、非真円カム31と、波動ベアリング33とを有する。
【0017】
本実施形態の非真円カム31は、楕円形のカムプロフィールを有する板状のカムである。図1に示すように、非真円カム31は、可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23の径方向内方に配置される。非真円カム31の中央部には、入力シャフト(駆動シャフト)1が、後述するカップリング装置40を介して、相対回転不能に固定される。具体的には、この入力シャフト1は、例えば電動機の出力シャフトとすることができる。入力シャフト1が回転すると、非真円カム31が、中心軸Cを中心にして減速前の回転数、すなわち入力シャフト1と同一の回転数で回転する。
【0018】
図2に示すように、波動ベアリング33は、内輪331と、複数のボール332と、弾性変形可能な外輪333とを有する。内輪331は、非真円カム31の外周面に固定される。外輪333は、可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23の内周面に固定される。複数のボール332は、内輪331と外輪333の間に介在し、周方向に沿って配列される。外輪333は、回転される非真円カム31のカムプロフィールを反映して、内輪331およびボール332を介して弾性変形(撓み変形)する。
【0019】
カップリング装置40は、入力シャフト1と波動発生器30とを接続するための継手装置である。カップリング装置40は、概ね円筒状である。より具体的には、カップリング装置40は、中心軸Cを中心として回転する入力回転体41と、当該入力回転体41と同軸上に配置された出力回転体42とを、接続する。入力回転体41は、入力シャフト1を含む。入力回転体41は、入力シャフト1と同一の回転数で回転する。このため、入力シャフト1が第1回転数で回転すると、入力回転体41も第1回転数で回転する。そうすると、後に詳述するように、出力回転体42も入力回転体41と同一の第1回転数で回転する。ここで、本実施形態では、波動発生器30の非真円カム31と、出力回転体42の最も後段の部位(出力伝達部420)とは、単一の部材である。そのため、入力回転体41が第1回転数で回転すると、波動発生器30の非真円カム31も第1回転数で回転する。なお、カップリング装置40の詳細な構成については、後に説明する。
【0020】
このように、波動歯車式減速機100においては、入力シャフト1に第1回転数の動力が供給されると、非真円カム31も第1回転数で回転する。また、非真円カム31の回転に伴って、波動ベアリング33を介して、可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23の内周面が押されることにより、可撓性歯部23が楕円状に径方向に撓み変形する。これにより、図2のように、可撓性歯部23がなす楕円の長軸の両端の2箇所で、可撓性外歯29と剛性内歯11とが噛み合う。この際、前記楕円の外周のうち上記の2箇所以外の位置では、可撓性外歯29と剛性内歯11とは噛み合わない。
【0021】
非真円カム31が回転すると、前記楕円の長軸の位置が周方向に移動するので、可撓性外歯29と剛性内歯11との噛み合い位置も周方向に移動する。ここで、剛性内歯歯車10の剛性内歯11の数と、可撓性外歯歯車20の可撓性外歯29の数とは、僅かに相違する。このため、非真円カム31の1回転ごとに、剛性内歯11と可撓性外歯29との噛み合い位置が僅かに変化する。その結果、剛性内歯歯車10に対して可撓性外歯歯車20および上記の出力シャフトが、減速された第2回転数で回転する。これにより、減速された動力を装置の外部に取り出すことができる。
【0022】
ここで、継手等のカップリング装置においては、入力回転体の回転を出力回転体へ常に精度よく伝達できることが望ましいため、カップリング装置にトルクが掛かったときに生じるスラスト力(軸方向の力。以下同じ)が小さいことが求められる。また、多少の取付誤差等があってもカップリング装置の機能が損なわれないようにするために、カップリング装置の径方向の剛性には、ある程度の柔軟性が求められる。そこで、従来、スラスト力の発生を少なく抑えることができるとともに、径方向の取付誤差をある程度吸収できる継手として、オルダム継手が知られている。しかしながら、オルダム継手の場合、上述もしたように、製造コストが嵩んでしまうという点と、運転時の振動や騒音が大きくなってしまうという点で、不利であった。
【0023】
そこで、継手に、径方向の撓み性が大きいコイルスプリングを用いることが考えられる。具体的には、入力回転体と出力回転体とを、単一のコイルスプリングで接続する構成が考えられる。斯かる場合、製造コストを抑えることができるとともに、運転時の振動や騒音も軽減できる。しかしながら、このような構成とした場合、継手に掛かるトルクの向きや大きさに応じて、コイルスプリングが捩れて巻き径が変化し、ひいてはスラスト力が生じてしまう点で、不利である。
【0024】
<1−2.カップリング装置の詳細な構成>
この点、本実施形態のカップリング装置40は、特有の構成を有することにより、製造コストの削減、運転時の振動や騒音の軽減、および、スラスト力の抑制を、具現化できる。以下では、カップリング装置40のこの特有の構成について、図1から図3を参照して詳細に説明する。図3は、カップリング装置40を軸方向の一方側からみたときの図と、一部縦断面図と、縦断面図とを示している。
【0025】
カップリング装置40は、入力伝達部410と、出力伝達部420と、第1コイルスプリング430と、第2コイルスプリング440とを有する。
【0026】
入力伝達部410は、入力回転体41の動力伝達経路の最も後段に位置する。入力伝達部410は、軸方向に延びる円筒状の部材である。入力伝達部410の軸方向の一方側の端部の外周面には、径方向内方に凹む凹部411が設けられる。また、入力伝達部410の軸方向中途部の外周面には、径方向内方に凹む凹部412が設けられる。
【0027】
出力伝達部420は、出力回転体42の動力伝達経路の最も前段に位置する。出力伝達部420は、軸方向に延びる円筒状の部材である。出力伝達部420は、入力伝達部410の径方向外方に配置される。入力伝達部410と出力伝達部420の間には、径方向に間隙が設けられる。出力伝達部420の軸方向中途部の内周面には、径方向外方に凹む凹部421が設けられる。また、出力伝達部420の軸方向の他方側の端部の内周面には、径方向外方に凹む凹部422が設けられる。本実施形態の出力伝達部420と非真円カム31とは、単一の部材である。
【0028】
第1コイルスプリング430は、金属線を螺旋状に巻いた部材である。第1コイルスプリング430は、自然長がL1であり、金属線の太さがB1であり、巻き方向が第1方向であり、巻き径がD1である。第1コイルスプリング430の金属線の一端部は、入力伝達部410の凹部411に係合される。第1コイルスプリング430の金属線の他端部は、出力伝達部420の凹部421に係合される。
【0029】
第2コイルスプリング440は、金属線を螺旋状に巻いた部材である。第2コイルスプリング440は、自然長がL2であり、金属線の太さがB2であり、巻き方向が第2方向であり、巻き径がD2である。ここで、L2はL1に等しく(L2=L1)、B2はB1に等しく(B2=B1)、D2はD1に等しく(D2=D1)、かつ、第2方向は第1方向とは逆向きである。第2コイルスプリング440の金属線の一端部は、入力伝達部410の凹部412に係合される。第2コイルスプリング440の金属線の他端部は、出力伝達部420の凹部422に係合される。
【0030】
ここで、入力伝達部410の凹部412は、出力伝達部420の凹部421よりも、軸方向の他方側寄りに配置されている。よって、第1コイルスプリング430と第2コイルスプリング440とは、軸方向において離間して配置され、互いに干渉しない。
【0031】
以上のような構成のカップリング装置40において、取付誤差等に起因して、入力回転体41が出力回転体42に対して厳密に同軸上には配置されない場合が想定される。具体的には、入力回転体41が出力回転体42に対して偏心している場合や、入力回転体41が出力回転体42に対して傾いている場合が、想定される。以下では、そのような場合の、カップリング装置40の各部の作用について、簡単に説明する。
【0032】
入力回転体41の中心軸Cが、出力回転体42の中心軸に対して傾いたり、偏心したりしている場合には、第1コイルスプリング430および第2コイルスプリング440が、それぞれ径方向に撓み変形する。これにより、入力回転体41の出力回転体42に対する傾きや偏心に起因する位置のずれ分が、第1コイルスプリング430および第2コイルスプリング440が変形することにより、吸収される。その結果、多少の取付誤差等があっても、入力回転体41の回転が出力回転体42へと精度よく伝達される。
【0033】
ここで、カップリング装置40に負荷トルクが掛かった場合の、カップリング装置40の各部の作用について、説明する。
【0034】
カップリング装置40にある方向の負荷トルクが掛かった場合、第1コイルスプリング430は、巻き締め方向、すなわち巻き径が小さくなる方向へ変形しようとする。このとき、第1コイルスプリング430は軸方向に伸びようとする。一方で、第2コイルスプリング440は、巻き戻し方向、すなわち巻き径が大きくなる方向へ変形しようとする。このとき、第2コイルスプリング440は軸方向に縮もうとする。このように、本実施形態のカップリング装置40では、第1コイルスプリング430の軸方向に掛かる力の向きと、第2コイルスプリング440の軸方向に掛かる力の向きとが、互いに逆向きとなる。その結果、カップリング装置40全体としてみたときには、スラスト力が小さくなる。すなわち、第1コイルスプリング430で生じたスラスト力と、第2コイルスプリング440で生じたスラスト力とが、互いに打ち消し合い、全体としてみたときにはスラスト力は殆ど無くなる。その結果、入力回転体41の回転を出力回転体42へ常に精度よく伝達することが可能となる。
【0035】
以上に示したように、本実施形態に係るカップリング装置40は、入力伝達部410と、出力伝達部420と、第1コイルスプリング430と、第2コイルスプリング440とを備える。第1コイルスプリング430および第2コイルスプリング440はそれぞれ、一端部が入力伝達部410に固定されるとともに、他端部が出力伝達部420に固定される。第1コイルスプリング430および第2コイルスプリング440は、巻き方向が互いに逆向きである。これにより、入力回転体41が出力回転体42に対して傾いている場合や、偏心している場合においても、傾きや偏心に起因する位置のずれ分が、第1コイルスプリング430および第2コイルスプリング440が変形することで吸収されて、入力回転体41の回転を出力回転体42へ精度よく伝達することができる。また、巻き方向が互いに逆のコイルスプリング430,440を組み合わせて用いることにより、トルクが掛かったときのスラスト力の発生を抑制することができる。このように、カップリング装置40は部品点数が少なくシンプルな構成であるので、製造コストを抑えることができる。また、部品間にすきま公差等を設けていないので、運転時の振動や騒音も少なく抑えることができる。
【0036】
また、第1コイルスプリング430と第2コイルスプリング440とでは、巻き径が同等であり(D1=D2)、金属線の太さも同等であり(B1=B2)、また自然長も同等である(L1=L2)。よって、カップリング装置40に第1捩り方向の力が働いた場合にも、第1捩り方向とは逆向きの第2捩り方向の力が働いた場合にも、捩り剛性およびスラスト剛性を同等の特性とすることができる。
【0037】
また、第1コイルスプリング430と、第2コイルスプリング440とは、軸方向における位置が互いに異なる。これにより、捩り方向に力が掛かっても、第1コイルスプリング430と第2コイルスプリング440とが接触しない。よって、捩り剛性が複雑に変化してしまう虞が少ない。
【0038】
また、本実施形態に係るカップリング装置40では、入力伝達部410は、第1コイルスプリング430を構成する金属線および第2コイルスプリング440を構成する金属線の径方向内方に配置される。また、出力伝達部420は、第1コイルスプリング430を構成する金属線および第2コイルスプリング440を構成する金属線の径方向外方に配置される。これにより、入力伝達部410、第1コイルスプリング430、第2コイルスプリング440、および出力伝達部420の、全体としての軸方向の寸法を抑えることができる。その結果、コンパクトなカップリング装置40を実現できる。
【0039】
また、本実施形態で開示した減速機(駆動装置)は、カップリング装置40を搭載する。入力回転体41は、入力シャフト(駆動シャフト)1を含む。出力回転体42は、出力シャフト(被駆動シャフト)に動力伝達経路の後段で接続される。
【0040】
<2.第2実施形態>
上記の実施形態では、第1コイルスプリング430および第2コイルスプリング440はそれぞれ、一端部が入力伝達部410に固定されるとともに、他端部が出力伝達部420に固定されているとしたが、これに限らない。上記に代えて、図4に示すように、カップリング装置400が、入力伝達部450と出力伝達部460と中間伝達部470とを備えることにしてもよい。その場合、中間伝達部470は、軸方向において入力伝達部450と出力伝達部460との間に介在する。第1コイルスプリング430は、一端部が入力伝達部450に固定されるとともに、他端部が中間伝達部470に固定される。第2コイルスプリング440は、一端部が中間伝達部470に固定されるとともに、他端部が出力伝達部460に固定される。このように構成した場合、入力回転体41が出力回転体42に対して傾いている場合や、偏心している場合においても、傾きや偏心に起因する位置のずれ分が、第1コイルスプリング430および第2コイルスプリング440が変形すること、および中間伝達部470が変位することで吸収されて、入力回転体41の回転を出力回転体42へ精度よく伝達することができる。また、巻き方向が互いに逆のコイルスプリング430,440を組み合わせて用いることにより、トルクが掛かったときのスラスト力の発生を抑制することができる。
【0041】
<3.その他の変形例>
上記の実施形態では、コイルスプリング430,440の端部は、凹部411,412,421,422に嵌め込まれることにより、入力伝達部210または出力伝達部220に係合されるとしたが、これに限定されない。上記に代えて、例えば、コイルスプリングの端部が、溶接等の方法により、入力伝達部または出力伝達部に接続されていてもよい。
【0042】
上記の実施形態では、カップリング装置40は、減速機、特に波動歯車式減速機100に備えられているとしたが、これに限定されない。本発明に係るカップリング装置は、減速機に限らず、電動機等の種々の機器に幅広く適用可能である。
【0043】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本願は、カップリング装置に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 入力シャフト
10 剛性内歯歯車
11 剛性内歯
20 可撓性外歯歯車
21 胴部
22 平板部
23 可撓性歯部
24 ダイヤフラム部
25 固定部
29 可撓性外歯
30 波動発生器
31 非真円カム
33 波動ベアリング
40 カップリング装置
41 入力回転体
42 出力回転体
100 波動歯車式減速機
210 入力伝達部
220 出力伝達部
331 内輪
332 ボール
333 外輪
400 カプリング装置
410 入力伝達部
411 凹部
412 凹部
420 出力伝達部
421 凹部
422 凹部
430 第1コイルスプリング
430 コイルスプリング
440 コイルスプリング
440 第2コイルスプリング
450 入力伝達部
460 出力伝達部
470 中間伝達部
C 中心軸

図1
図2
図3
図4