【解決手段】カップリング装置は、入力伝達部410と、出力伝達部420と、中間伝達部430と、第1変位吸収部材450と、第2変位吸収部材460とを備える。入力伝達部は、入力回転体41に含まれる。出力伝達部は、出力回転体42に含まれるとともに、入力伝達部の径方向外方に位置する。中間伝達部は、軸方向に延びる円筒状であり、入力伝達部の径方向外方、かつ、出力伝達部の径方向内方に配置される。第1変位吸収部材は、中間伝達部の軸方向の一方側の端面である前端面に取り付けられるとともに、入力伝達部の軸方向の一方側の端面である前端面に取り付けられる。第2変位吸収部材は、出力伝達部の軸方向の他方側の端面である後端面に取り付けられるとともに、中間伝達部の軸方向の他方側の端面である後端面に取り付けられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、波動歯車式減速機の中心軸と平行な方向を「軸方向」、波動歯車式減速機の中心軸に直交する方向を「径方向」、波動歯車式減速機の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。なお、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0010】
<1.第1実施形態>
<1−1.波動歯車式減速機の全体構成>
以下では、
図1および
図2を参照して、実施形態に係る波動歯車式減速機100の全体的な構成について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るカップリング装置40を備える波動歯車式減速機100の縦断面図である。
図2は、
図1中のII−II線断面図であり、可撓性外歯と剛性内歯との噛み合いを示している。ただし、
図2においては、図面を見やすくするために、ハッチングを省略している。
【0011】
本実施形態の波動歯車式減速機100は、後述する剛性内歯歯車(内歯歯車)10と可撓性外歯歯車20との差動(相対回転)を利用して、入力された回転動力を変速する装置である。波動歯車式減速機100は、例えば、小型ロボットの関節に組み込まれ、モータから得られる動力を減速する減速機として用いられる。
図1に示すように、波動歯車式減速機100は、剛性内歯歯車10と、可撓性外歯歯車20と、波動発生器30と、カップリング装置40とを備えている。
【0012】
剛性内歯歯車10は、
図1に示す中心軸Cを中心とする円環状の部材である。剛性内歯歯車10の剛性は、後述する可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23の剛性よりも、はるかに高い。したがって、剛性内歯歯車10は、実質的に剛体とみなすことができる。剛性内歯歯車10は、内周面に複数の剛性内歯11を有する。
図2に示すように、複数の剛性内歯11は、周方向に沿って、一定のピッチで配列される。本実施形態の剛性内歯歯車10は、波動歯車式減速機100が搭載される装置の枠体に固定される。
【0013】
図1に示すように、可撓性外歯歯車20は、円筒状の胴部21と平板部22とを備える部材である。胴部21は、径方向に撓み変形可能な部位である。円筒状の胴部21は、軸方向の一方側の端部である後端部に、可撓性外歯29が外周面に形成される可撓性歯部23を有する。円筒状の胴部21の軸方向の他方側の端部には、平板部22が接続される。
【0014】
平板部22は中心軸Cに対して垂直に略平面状に広がる部位である。平板部22は、胴部21よりも撓み変形し難い。平板部22は、円環板状の固定部25と、ダイヤフラム部24とを有する。ダイヤフラム部24は、胴部21との接続箇所に近い側に配置され、軸方向の肉厚が固定部25よりも薄い。ダイヤフラム部24は、円環状の形状を有し、可撓性歯部23よりも小さい撓み性を有する。
【0015】
固定部25は、ダイヤフラム部24の径方向内側に配置される、一定の肉厚を有する部位である。固定部25の撓み性は、ダイヤフラム部24の撓み性よりもはるかに小さい。固定部25には、減速後の動力を取り出すための出力シャフト(図示省略)が同軸上で固定される。なお、可撓性外歯歯車20と出力シャフトとを合わせたものが、本実施形態に係る「減速回転体」をなしている。
【0016】
波動発生器30は、可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23を径方向に非真円形状に撓み変形させるための機構である。波動発生器30は、非真円カム31と、波動ベアリング33とを有する。
【0017】
本実施形態の非真円カム31は、楕円形のカムプロフィールを有する板状のカムである。
図1に示すように、非真円カム31は、可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23の径方向内方に配置される。非真円カム31の中央部には、駆動シャフト1が、後述するカップリング装置40を介して、相対回転不能に固定される。具体的には、この駆動シャフト1は、例えば電動機の出力シャフトとすることができる。駆動シャフト1が回転すると、非真円カム31が、中心軸Cを中心にして減速前の回転数、すなわち駆動シャフト1と同一の回転数で回転する。
【0018】
図2に示すように、波動ベアリング33は、内輪331と、複数のボール332と、弾性変形可能な外輪333とを有する。内輪331は、非真円カム31の外周面に固定される。外輪333は、可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23の内周面に固定される。複数のボール332は、内輪331と外輪333の間に介在し、周方向に沿って配列される。外輪333は、回転される非真円カム31のカムプロフィールを反映して、内輪331およびボール332を介して弾性変形(撓み変形)する。
【0019】
カップリング装置40は、駆動シャフト1と波動発生器30とを接続するための継手装置である。カップリング装置40は、概ね円筒状である。より具体的には、カップリング装置40は、中心軸Cを中心として回転する入力回転体41と、当該入力回転体41と同軸上に配置された出力回転体42とを、接続する。入力回転体41は、駆動シャフト1を含む。入力回転体41は、駆動シャフト1と同一の回転数で回転する。このため、駆動シャフト1が第1回転数で回転すると、入力回転体41も第1回転数で回転する。そうすると、後に詳述するように、出力回転体42も入力回転体41と同一の第1回転数で回転する。ここで、本実施形態では、波動発生器30の非真円カム31が、出力回転体42の動力伝達経路の最も後段の部位をなしている。そのため、入力回転体41が第1回転数で回転すると、波動発生器30の非真円カム31も第1回転数で回転する。なお、カップリング装置40の詳細な構成については、後に詳述する。
【0020】
このように、波動歯車式減速機100においては、駆動シャフト1に第1回転数の動力が供給されると、非真円カム31も第1回転数で回転する。また、非真円カム31の回転に伴って、波動ベアリング33を介して、可撓性外歯歯車20の可撓性歯部23の内周面が押されることにより、可撓性歯部23が楕円状に径方向に撓み変形する。これにより、
図2のように、可撓性歯部23がなす楕円の長軸の両端の2箇所で、可撓性外歯29と剛性内歯11とが噛み合う。この際、前記楕円の外周のうち上記の2箇所以外の位置では、可撓性外歯29と剛性内歯11とは噛み合わない。
【0021】
非真円カム31が回転すると、前記楕円の長軸の位置が周方向に移動するので、可撓性外歯29と剛性内歯11との噛み合い位置も周方向に移動する。ここで、剛性内歯歯車10の剛性内歯11の数と、可撓性外歯歯車20の可撓性外歯29の数とは、僅かに相違する。このため、非真円カム31の1回転ごとに、剛性内歯11と可撓性外歯29との噛み合い位置が僅かに変化する。その結果、剛性内歯歯車10に対して可撓性外歯歯車20および上記の出力シャフト(減速回転体)が、減速された第2回転数で回転する。これにより、減速された動力を装置の外部に取り出すことができる。
【0022】
ここで、継手等のカップリング装置においては、多少の取付誤差等があっても入力回転体の回転を出力回転体へ精度よく伝達できることが求められる。そのため、軸方向において、入力回転体と出力回転体との間に、傾きや偏心に起因する位置のずれを吸収するための変位吸収部材(例えば、オルダムスライダ)を設けることが一般的に考えられる。しかしながら、斯かる構成とした場合、カップリング装置が軸方向に大型化してしまうという問題があった。また、傾きや偏心に起因する位置のずれを柔軟に吸収できるようにするために、入力回転体および出力回転体と、変位吸収部材とに、すきま公差を持たせることが一般的に考えられる。しかしながら、斯かる構成とした場合、高い加工精度が要求されるため、製造コストが嵩んでしまうという問題があった。また、すきま公差を持たせると、駆動時に部品同士が衝突して振動や騒音が大きくなってしまう点でも、改善の余地があった。
【0023】
この点、本実施形態に係るカップリング装置40は、入力回転体の出力回転体に対する傾きや偏心に起因する位置のずれを柔軟に吸収できるようにするための、特有の構成を有する。この特有の構成によれば、カップリング装置40が軸方向に大型化してしまうことを抑制でき、しかも、製造コストを抑えることができ、しかも、駆動時の振動や騒音の問題も解消できる。
【0024】
<1−2.カップリング装置の詳細構成>
以下では、本実施形態のカップリング装置40に特有の構成について、
図1から
図4までを参照して説明する。
図3は、カップリング装置40の縦断面図と、カップリング装置40を軸方向の一方側からみた前端面図と、カップリング装置40を軸方向の他方側からみた後端面図とである。
図4は、カップリング装置40が、入力回転体41の出力回転体42に対する偏心に起因する位置のずれ分を吸収する様子を示す縦断面図である。
【0025】
カップリング装置40は、駆動シャフト1を含む入力回転体41と、後段側で波動発生器30および可撓性外歯歯車20を介して出力シャフトに接続される出力回転体42とを、同期回転する態様で接続する。
図3に示すように、カップリング装置40は、入力回転体41に含まれる部位として、入力伝達部410を有する。入力伝達部410は、入力回転体41の動力伝達経路の最も後段に位置する。
【0026】
また、カップリング装置40は、出力回転体42に含まれる部位として、出力伝達部420を有する。出力伝達部420は、出力回転体42の動力伝達経路の最も前段に位置する。本実施形態の出力伝達部420は、非真円カム31と単一の部材をなしている。
【0027】
カップリング装置40は、動力伝達経路における入力伝達部410と出力伝達部420との間に、中間伝達部430、第1変位吸収部材450、および第2変位吸収部材460を主として有する。
【0028】
入力伝達部410は、軸方向に延びる円筒状の部材である。
図1に示すように、入力伝達部410は、駆動シャフト1の軸方向の他方側の端部の径方向外方に配置される。入力伝達部410と駆動シャフト1とは、互いの間にキー部材411を介在させることにより、相対回転不能に固定されている。入力伝達部410の軸方向の一方側の端面である前端面には、軸方向に延びる第1ネジ孔が2つ形成される。軸方向にみたときに、この2つの第1ネジ孔の一方は、中心軸Cを挟んで他方の第1ネジ孔とは反対側に配置される。
【0029】
出力伝達部420は、軸方向に延びる円筒状の部材である。出力伝達部420は、入力伝達部410の径方向外方に配置される。出力伝達部420の内径は、入力伝達部410の外径よりも大きい。出力伝達部420の軸方向の他方側の端面である後端面には、軸方向に延びる第4ネジ孔が2つ形成される。軸方向にみたときに、この2つの第4ネジ孔の一方は、中心軸Cを挟んで他方の第4ネジ孔とは反対側に配置される。
【0030】
中間伝達部430は、軸方向に延びる円筒状の部材である。中間伝達部430は、入力伝達部410の径方向外方、かつ、出力伝達部420の径方向内方に配置される。中間伝達部430の径方向の厚みは、入力伝達部410の外径と出力伝達部420の内径との差分よりも小さい。したがって、中間伝達部430は、径方向外方にも径方向内方にもクリアランスを有する状態で、入力伝達部410と出力伝達部420との間に配置される。
【0031】
中間伝達部430の軸方向の一方側の端面である前端面には、軸方向に延びる第2ネジ孔が2つ形成される。軸方向にみたときに、この2つの第2ネジ孔の一方は、中心軸Cを挟んで他方の第2ネジ孔とは反対側に配置される。また、中間伝達部430の軸方向の他方側の端面である後端面には、軸方向に延びる第3ネジ孔が2つ形成される。軸方向にみたときに、この2つの第3ネジ孔の一方は、中心軸Cを挟んで他方の第3ネジ孔とは反対側に配置される。本実施形態においては、軸方向にみたときに、2つの第2ネジ孔の中心同士を結ぶ第2仮想直線L2は、2つの第3ネジ孔の中心同士を結ぶ第3仮想直線L3に対して、直交している。
【0032】
第1変位吸収部材450は、矩形状の板バネである。第1変位吸収部材450は、軸方向にみたときに第1ネジ孔が中心軸Cを中心にして第2ネジ孔に対して90°回転した位置に配置された状態で、入力伝達部410の前端面と、中間伝達部430の前端面とに、取り付けられる。詳細には、第1変位吸収部材450の中央部には、円孔が設けられる。この円孔に、駆動シャフト1が挿入される。第1変位吸収部材450の矩形の4つの角部には、第1ネジ孔に対応する第1貫通孔と、第2ネジ孔に対応する第2貫通孔とが、周方向に交互に配置される。そして、第1ネジ孔に第1貫通孔を軸方向の一方側から重ね合わせた状態で、第1ネジ孔にネジ等の第1締結部材471がねじ込まれる。また、第2ネジ孔に第2貫通孔を軸方向の一方側から重ね合わせた状態で、第2ネジ孔にネジ等の第2締結部材472がねじ込まれる。このようにして、入力伝達部410と中間伝達部430とが、間に第1変位吸収部材450を介在させて接続される。
【0033】
図3に示すように、第1変位吸収部材450は、軸方向にみたときに、第1締結部材471が挿入される箇所と、第2締結部材472が挿入される箇所との間に、径方向の厚みが相対的に薄い腕部450aを有する。また、第1変位吸収部材450の矩形の角部は、出力伝達部420には到達しない。これにより、第1変位吸収部材450との接触により出力伝達部420の動きが阻害されてしまうといった事態が生じない。
【0034】
第2変位吸収部材460は、矩形状の板バネである。第2変位吸収部材460は、軸方向にみたときに第4ネジ孔が中心軸Cを中心にして第3ネジ孔に対して90°回転した位置に配置された状態で、中間伝達部430の後端面と、出力伝達部420の後端面とに、取り付けられる。詳細には、第2変位吸収部材460の中央部には、円孔が設けられる。この円孔に、駆動シャフト1が挿入される。第2変位吸収部材460の矩形の4つの角部には、第3ネジ孔に対応する第3貫通孔と、第4ネジ孔に対応する第4貫通孔とが、周方向に交互に配置される。そして、第3ネジ孔に第3貫通孔を軸方向の他方側から重ね合わせた状態で、第3ネジ孔にネジ等の第3締結部材473がねじ込まれる。また、第4ネジ孔に第4貫通孔を軸方向の他方側から重ね合わせた状態で、第4ネジ孔にネジ等の第4締結部材474がねじ込まれる。このようにして、中間伝達部430と出力伝達部420とが、間に第2変位吸収部材460を介在させて接続される。
【0035】
図3に示すように、第2変位吸収部材460は、軸方向にみたときに、第3締結部材473が挿入される箇所と、第4締結部材474が挿入される箇所との間に、径方向の厚みが相対的に薄い腕部460aを有する。
【0036】
以上のような構成のカップリング装置40において、取付誤差等に起因して、入力回転体41が出力回転体42に対して厳密に同軸上には配置されない場合が想定される。具体的には、入力回転体41が出力回転体42に対して傾いている場合と、入力回転体41が出力回転体42に対して偏心している場合とが、想定される。以下では、これらの場合の、カップリング装置40の各部の作用について、詳細に説明する。
【0037】
<1−3.入力回転体が出力回転体に対して傾いている場合について>
入力回転体41の中心軸Cが、出力回転体42の中心軸Dに対して大きく傾いている場合、軸方向にみたときに2つの第1締結部材471の中心同士を結ぶ第1仮想直線L1が、中心軸Dに垂直な仮想平面に対して大きく傾斜していると想定される。斯かる場合、腕部450aが変形することにより、軸方向にみたときに2つの第2締結部材472の中心同士を結ぶ第2仮想直線L2の、中心軸Dに垂直な平面に対する傾斜量は、第1仮想直線L1ほどには大きくはない。すなわち、腕部450aが変形することにより、入力伝達部410の傾きに起因する位置のずれ分が、減衰されて、中間伝達部430へと伝達される。さらに、腕部460aが変形することにより、軸方向にみたときに2つの第4締結部材474の中心同士を結ぶ第4仮想直線L4の、中心軸Dに垂直な平面に対する傾斜量は、第2仮想直線L2および第3仮想直線L3ほどには大きくはない。すなわち、腕部460aが変形することにより、中間伝達部430の傾きに起因する位置のずれ分が、減衰されて、出力伝達部420へと伝達される。すなわち、回転が入力伝達部410から中間伝達部430へと伝達される第1段階と、回転が中間伝達部430から出力伝達部420へと伝達される第2段階の、2段階で、傾きに起因する位置のずれ分が減衰される。その結果、入力回転体41が出力回転体42に対して大きく傾斜していても、傾きに起因する位置のずれ分を変位吸収部材450,460により吸収して、入力回転体41の回転を精度よく出力回転体42に伝達することができる。
【0038】
<1−4.入力回転体が出力回転体に対して偏心している場合について>
入力回転体41の中心軸Cが、出力回転体42の中心軸Dに対して偏心している場合、腕部450aが変形することにより、中間伝達部430の前端面の位置が、中心軸Dにより近づいた位置に調整される。また、腕部460aが変形することにより、中間伝達部430の後端面の位置が、中心軸Dにより近づいた位置に調整される。すなわち、腕部450aが変形することにより、入力伝達部410の偏心に起因する位置のずれ分が、減衰されて、中間伝達部430へと伝達される。さらに、腕部460aが変形することにより、中間伝達部430の偏心に起因する位置のずれ分が、減衰されて、出力伝達部420へと伝達される。すなわち、回転が入力伝達部410から中間伝達部430へと伝達される第1段階と、回転が中間伝達部430から出力伝達部420へと伝達される第2段階の、2段階で、偏心に起因する位置のずれ分が減衰される。その結果、入力回転体41が出力回転体42に対して偏心していても、偏心に起因する位置のずれ分を変位吸収部材450,460により吸収して、入力回転体41の回転を精度よく出力回転体42に伝達することができる。
【0039】
<1−5.まとめ>
以上に示したように、本実施形態のカップリング装置40は、入力伝達部410と、出力伝達部420と、中間伝達部430と、第1変位吸収部材450と、第2変位吸収部材460とを備える。第1変位吸収部材450は、入力伝達部410の前端面に取り付けられるとともに、中間伝達部430の前端面に取り付けられる。第2変位吸収部材460は、中間伝達部430の後端面に取り付けられるとともに、出力伝達部420の後端面に取り付けられる。これにより、入力回転体41が出力回転体42に対して傾いている場合や、偏心している場合においても、傾きや偏心に起因する位置のずれ分が、変位吸収部材450,460が変形することで吸収されて、入力回転体41の回転を出力回転体42へ精度よく伝達することができる。
【0040】
また、本実施形態のカップリング装置40では、変位吸収部材450,460は板バネである。これにより、カップリング装置40の軸方向のサイズを小型化することができる。
【0041】
また、本実施形態のカップリング装置40では、第1変位吸収部材450は、第1締結部材471を介して入力伝達部410に取り付けられるとともに、第2締結部材472を介して中間伝達部430に取り付けられる。また、第2変位吸収部材460は、第3締結部材473を介して中間伝達部430に取り付けられるとともに、第4締結部材474を介して出力伝達部420に取り付けられる。これにより、シンプルな態様で、第1変位吸収部材450を入力伝達部410および中間伝達部430に取り付けるとともに、第2変位吸収部材460を中間伝達部430および出力伝達部420に取り付けることができる。
【0042】
また、本実施形態のカップリング装置40では、2つの第1締結部材471同士を結ぶ第1仮想直線L1は、2つの第2締結部材472同士を結ぶ第2仮想直線L2と直交する。これにより、入力回転体41が出力回転体42に対して傾いていることに起因して、第1仮想直線L1が、中心軸に垂直な仮想平面に対して傾斜している場合においても、第2仮想直線L2の仮想平面に対する傾斜量は相対的に少なく抑えることができる。その結果、傾き等に起因する位置のずれ分を減衰して、入力回転体41の回転を出力回転体42へと伝達することができる。
【0043】
また、本実施形態のカップリング装置40では、軸方向にみたときに、2つの第3締結部材473同士を結ぶ第3仮想直線L3は、2つの第4締結部材474同士を結ぶ第4仮想直線L4と直交する。これにより、入力回転体41が出力回転体42に対して傾いていることに起因して、第3仮想直線L3が、中心軸に垂直な仮想平平面に対して傾斜している場合においても、第4仮想直線L4の仮想平面に対する傾斜量は相対的に少なく抑えることができる。その結果、傾き等に起因する位置のずれ分を大幅に減衰して、入力回転体41の回転を出力回転体42へと伝達することができる。すなわち、回転が入力伝達部410から中間伝達部430へと伝達される第1段階と、回転が中間伝達部430から出力伝達部420へと伝達される第2段階の、2段階で、傾き等に起因する位置のずれ分が減衰される。その結果、入力回転体41の出力回転体42に対する大きな傾きや偏心を許容したカップリング装置40が実現する。
【0044】
また、本実施形態のカップリング装置40では、第1変位吸収部材450および第2変位吸収部材460は、それぞれ、軸方向にみたときに矩形状であり、中央部に円孔を有する。第1締結部材471および第2締結部材472は、第1変位吸収部材450の角部に配置される。第3締結部材473および第4締結部材474は、第2変位吸収部材460の角部に配置される。これにより、変位吸収部材450,460において、周方向に隣接する角部と角部との間に、径方向の厚みが相対的に薄い腕部(薄肉部)450a,460aが配置されることになる。よって、変位吸収部材450,460をより容易に変形させることができる。その結果、入力回転体41の出力回転体42に対する傾きや偏心を大きく許容したカップリング装置40を実現できる。
【0045】
<2.第1変形例>
上記の実施形態では、出力伝達部420と非真円カム31とは、単一の部材であったが、これに限らない。すなわち、出力伝達部420と非真円カム31とを個別の部材として、出力伝達部420の外周面に非真円カム31の内周面が結合されていてもよい。斯かる構成とした場合の、カップリング装置400の具体例を、
図5に示している。なお、
図5中では、第1実施形態に示したのと同様の構成・機能の部材に、第1実施形態のものと同一の符号を付してある。
【0046】
<3.第2変形例>
上記の実施形態では、軸方向にみたときに、第2締結部材472が配置される位置は、中心軸Cを中心にして、第3締結部材473が配置される位置と互いに90°回転した位置であった。しかしながら、これに代えて、軸方向にみたときに、第2締結部材472が配置される位置が、第3締結部材473が配置される位置と重なっていてもよい。斯かる構成とした場合、中間伝達部430内に、第2/第3締結部材473を埋め込むための孔を形成する加工工程を、効率的に行うことができる。具体的には、加工工程により、中間伝達部430に軸方向に貫通する孔を形成し、この孔に第2/第3締結部材473を軸方向の両側から締結することができる。その結果、カップリング装置40の製造コストを抑えることができる。
【0047】
<4.第3変形例>
上記の実施形態では、軸方向にみたときに、第1締結部材471が配置される位置と、第3締結部材473が配置される位置とが、互いに重なっていた。また、第2締結部材472が配置される位置と、第4締結部材474が配置される位置とが、互いに重なっていた。しかしながら、これに代えて、軸方向にみたときに、第1締結部材471が配置される位置と、第2締結部材472が配置される位置と、第3締結部材473が配置される位置と、第4締結部材474が配置される位置とが、いずれも互いに重ならなくてもよい。斯かる構成とした場合、第1変位吸収部材450および第2変位吸収部材460の変形量が、局所的に集中してしまうことを抑制できる。
【0048】
<5.第4変形例>
さらに言えば、軸方向にみたときに、第1締結部材471、第2締結部材472、第3締結部材473、および第4締結部材474が、周方向に等間隔に配置されていてもよい。このような構成とした場合、入力回転体41が出力回転体42に対して360°のどの方向に傾斜/偏心している場合においても、入力回転体41の回転を出力回転体42へとムラを抑えて滑らかに伝達することができる。
【0049】
<6.その他の変形例>
上記の実施形態では、締結部材はネジ等であり、ネジ孔にねじ込まれるとしたが、これに限定されない。例えば、締結部材をリベット等とし、入力伝達部、中間伝達部、および出力伝達部の端面に設けられた孔に埋め込まれるものとしてもよい。
【0050】
第1変位吸収部材450の矩形の各辺(腕部450a)が、径方向内方にえぐれていてもよい。同様に、第2変位吸収部材460の矩形の各辺(腕部460a)が、径方向内方にえぐれていてもよい。その場合、腕部450a,460aの径方向の厚みがより薄型化し、変形しやすくなる。
【0051】
第1変位吸収部材450および第2変位吸収部材460の形状は、必ずしも矩形状ではなくてもよく、例えば円形状等としてもよい。
【0052】
上記の実施形態では、カップリング装置40は、減速機、特に波動歯車式減速機100に備えられているとしたが、これに限定されない。本発明に係るカップリング装置は、減速機に限らず、電動機等の種々の機器に幅広く適用可能である。
【0053】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。