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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-86570(P2020-86570A)
(43)【公開日】2020年6月4日
(54)【発明の名称】火災感知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20200508BHJP
【FI】
   G08B17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-215465(P2018-215465)
(22)【出願日】2018年11月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】増川 忍
(72)【発明者】
【氏名】巽 正大
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 佑大
(72)【発明者】
【氏名】茂垣 秀彦
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA01
5G405AA03
5G405AA06
5G405CA05
5G405CA11
5G405CA15
5G405CA16
5G405CA30
(57)【要約】
【課題】混信を抑制しつつ、異常を迅速に通知する。
【解決手段】火災感知システムは、火災受信機1に接続される複数の中継器2と、中継器2に接続され、火災を感知する1以上の感知器4とを備える。複数の中継器2のそれぞれには、それぞれ異なる時刻に到来する複数の第1タイミングが割り当てられている。複数の中継器2のそれぞれは、自身に対応する1つの第1タイミングで、感知器4に、信号線の断線又は感知器4の脱落を示す異常が発生しているか否かを判定するために用いられる第1応答信号を中継器2に送信することを要求する監視信号を送信する。感知器4は、中継器2から監視信号を受信すると、当該中継器2に対応する第1タイミングが新たに到来する前の第2タイミングで第1応答信号を当該中継器2に送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火管理者に火災の発生を通知する火災受信機に接続される複数の中継器と、前記中継器に接続され、火災を感知する1以上の感知器とを備える火災感知システムであって、
前記複数の中継器のそれぞれには、信号の送信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで異なる時刻に到来する第1タイミングが割り当てられているとともに、信号の受信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで異なる時刻に到来し、前記第1タイミングよりも後に到来する第2タイミングが割り当てられており、
前記複数の中継器のそれぞれは、
1つの前記第1タイミングで、前記中継器に接続されている前記1以上の感知器に、前記感知器が接続されている信号線の断線又は前記感知器の脱落を示す異常が発生しているか否かを判定するために用いられる第1応答信号を送信することを要求する監視信号を送信する要求部と、
前記監視信号の送信に対する前記1以上の感知器からの前記第1応答信号の受信状況に基づいて、前記異常が発生しているか否かを判定し、判定結果を前記火災受信機に通知する通知部と、
を有し、
前記感知器は、
前記中継器から前記監視信号を受信すると、当該中継器に対応する前記第1タイミングが新たに到来する前の前記第2タイミングで前記第1応答信号を当該中継器に送信する応答部を有する、
火災感知システム。
【請求項2】
前記複数の中継器のそれぞれには、信号の送信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで同じ時刻に到来する複数の第3タイミングが割り当てられているとともに、信号の受信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで同じ時刻に到来し、前記第3タイミングよりも後に到来する第4タイミングが割り当てられており、
前記要求部は、1つの前記第3タイミングで、前記中継器に接続されている前記1以上の感知器に、試験用の制御信号を送信し、
前記応答部は、前記中継器から前記試験用の制御信号を受信すると、前記第3タイミングが新たに到来する前の前記第4タイミングで前記試験用の制御信号に対応する第2応答信号を前記中継器に送信し、
前記通知部は、前記監視信号の送信に対する前記1以上の感知器からの前記第2応答信号の受信状況に基づいて、前記感知器が正常に動作しているか否かを判定し、判定結果を前記火災受信機に通知する、
請求項1に記載の火災感知システム。
【請求項3】
前記複数の中継器のそれぞれには、信号の送信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで同じ時刻に到来する複数の第5タイミングが割り当てられているとともに、信号の受信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで同じ時刻に到来し、前記第5タイミングよりも後に到来する第6タイミングが割り当てられており、
前記要求部は、1つの前記第5タイミングで、前記中継器に接続されている前記1以上の感知器に、前記感知器が火災を感知している場合に第3応答信号を送信することを要求する取得要求信号を送信し、
前記応答部は、火災を感知している場合に前記中継器から前記取得要求信号を受信すると、前記第5タイミングが新たに到来する前の前記第6タイミングで前記第3応答信号を当該中継器に送信し、
前記通知部は、前記取得要求信号の送信に対する前記1以上の感知器からの前記第3応答信号の受信状況に基づいて火災を感知した感知器を特定し、当該感知器の位置に対応する情報を前記火災受信機に通知する、
請求項1又は2に記載の火災感知システム。
【請求項4】
前記通知部は、前記1以上の感知器において同一の前記第6タイミングで送信された前記第3応答信号が混信したことにより火災を感知した感知器を特定できない場合に、前記中継器に接続されている前記1以上の感知器の少なくともいずれかにおいて火災を感知したことを前記火災受信機に通知する、
請求項3に記載の火災感知システム。
【請求項5】
前記複数の中継器のそれぞれには、信号の送信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで同じ時刻に到来する複数の第5タイミングが割り当てられているとともに、信号の受信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで同じ時刻に到来し、前記第5タイミングよりも後に到来する第6タイミングが割り当てられており、
前記要求部は、1つの前記第5タイミングで、前記中継器に接続されている前記1以上の感知器に、前記感知器が火災を感知している場合に第3応答信号を送信することを要求する取得要求信号を送信し、
前記応答部は、火災を感知している場合に前記中継器から前記取得要求信号を受信すると、前記感知器のアドレスに対応する前記第6タイミングで前記第3応答信号を当該中継器に送信し、
前記通知部は、前記取得要求信号の送信に対する前記1以上の感知器からの前記第3応答信号の受信状況に基づいて火災を感知した感知器を特定し、当該感知器の位置に対応する情報を前記火災受信機に通知する、
請求項1又は2に記載の火災感知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、R型の火災受信機を備える火災感知システムにおいて、R型の火災感知器よりも安価なP型の火災感知器を接続できる構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。図6は、R型の火災受信機を備える火災感知システムにP型の火災感知器を接続した例を示す図である。図6に示すように、火災受信機101には、複数の中継器102が接続されている。複数の中継器102のそれぞれには、デイジーチェーン接続された複数のP型の火災感知器104が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4683474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
R型の自動火災報知設備において火災受信機に複数の中継器が接続されている場合、複数の中継器は、中継器盤に収容される。この場合、複数の中継器のそれぞれとP型の火災感知器との通信線が近接する箇所が発生し、当該箇所において混信が発生しやすいという問題がある。
【0005】
また、自動火災報知設備では、実火災が発生した場合に確実に感知器から火災発報信号を受信できるように、火災感知器と信号を送受信するための信号線の断線及び感知器の脱落を示す異常が発生しているかの監視が行われている。これらの異常が発生したことについても迅速に特定できるようにすることが求められている。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、混信を抑制しつつ、異常の発生を迅速に通知することができる火災感知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る火災感知システムは、防火管理者に火災の発生を通知する火災受信機に接続される複数の中継器と、前記中継器に接続され、火災を感知する1以上の感知器とを備える火災感知システムであって、前記複数の中継器のそれぞれには、信号の送信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで異なる時刻に到来する第1タイミングが割り当てられているとともに、信号の受信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで異なる時刻に到来し、前記第1タイミングよりも後に到来する第2タイミングが割り当てられており、前記複数の中継器のそれぞれは、1つの前記第1タイミングで、前記中継器に接続されている前記1以上の感知器に、前記感知器が接続されている信号線の断線又は前記感知器の脱落を示す異常が発生しているか否かを判定するために用いられる第1応答信号を送信することを要求する監視信号を送信する要求部と、前記監視信号の送信に対する前記1以上の感知器からの前記第1応答信号の受信状況に基づいて、前記異常が発生しているか否かを判定し、判定結果を前記火災受信機に通知する通知部と、を有し、前記感知器は、前記中継器から前記監視信号を受信すると、当該中継器に対応する前記第1タイミングが新たに到来する前の前記第2タイミングで前記第1応答信号を当該中継器に送信する応答部を有する。
【0008】
前記複数の中継器のそれぞれには、信号の送信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで同じ時刻に到来する複数の第3タイミングが割り当てられているとともに、信号の受信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで同じ時刻に到来し、前記第3タイミングよりも後に到来する第4タイミングが割り当てられており、前記要求部は、1つの前記第3タイミングで、前記中継器に接続されている前記1以上の感知器に、試験用の制御信号を送信し、前記応答部は、前記中継器から前記試験用の制御信号を受信すると、前記第3タイミングが新たに到来する前の前記第4タイミングで前記試験用の制御信号に対応する第2応答信号を前記中継器に送信し、前記通知部は、前記監視信号の送信に対する前記1以上の感知器からの前記第2応答信号の受信状況に基づいて、前記感知器が正常に動作しているか否かを判定し、判定結果を前記火災受信機に通知してもよい。
【0009】
前記複数の中継器のそれぞれには、信号の送信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで同じ時刻に到来する複数の第5タイミングが割り当てられているとともに、信号の受信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで同じ時刻に到来し、前記第5タイミングよりも後に到来する第6タイミングが割り当てられており、前記要求部は、1つの前記第5タイミングで、前記中継器に接続されている前記1以上の感知器に、前記感知器が火災を感知している場合に第3応答信号を送信することを要求する取得要求信号を送信し、前記応答部は、火災を感知している場合に前記中継器から前記取得要求信号を受信すると、前記第5タイミングが新たに到来する前の前記第6タイミングで前記第3応答信号を当該中継器に送信し、前記通知部は、前記取得要求信号の送信に対する前記1以上の感知器からの前記第3応答信号の受信状況に基づいて火災を感知した感知器を特定し、当該感知器の位置に対応する情報を前記火災受信機に通知してもよい。
【0010】
前記通知部は、前記1以上の感知器において同一の前記第6タイミングで送信された前記第3応答信号が混信したことにより火災を感知した感知器を特定できない場合に、前記中継器に接続されている前記1以上の感知器の少なくともいずれかにおいて火災を感知したことを前記火災受信機に通知してもよい。
【0011】
前記複数の中継器のそれぞれには、信号の送信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで同じ時刻に到来する複数の第5タイミングが割り当てられているとともに、信号の受信タイミングとして、前記複数の中継器のそれぞれで同じ時刻に到来し、前記第5タイミングよりも後に到来する第6タイミングが割り当てられており、前記要求部は、1つの前記第5タイミングで、前記中継器に接続されている前記1以上の感知器に、前記感知器が火災を感知している場合に第3応答信号を送信することを要求する取得要求信号を送信し、前記応答部は、火災を感知している場合に前記中継器から前記取得要求信号を受信すると、前記感知器のアドレスに対応する前記第6タイミングで前記第3応答信号を当該中継器に送信し、前記通知部は、前記取得要求信号の送信に対する前記1以上の感知器からの前記第3応答信号の受信状況に基づいて火災を感知した感知器を特定し、当該感知器の位置に対応する情報を前記火災受信機に通知してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、混信を抑制しつつ、異常の発生を迅速に通知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る火災感知システムの構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る中継器の構成を示す図である。
図3】本実施形態に係る感知器の構成を示す図である。
図4】本実施形態に係る中継器及び感知器に割り当てられている通信タイミングを説明するための図である。
図5】火災感知システムにおける火災感知時の処理の流れを示すシーケンス図である。
図6】R型の火災受信機を備える火災感知システムにP型の火災感知器を接続した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[火災感知システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る火災感知システムSの構成を示す図である。火災感知システムSは、火災受信機1と、複数の中継器2と、1以上の感知器4とを備える。
【0015】
火災受信機1は、伝送線L1を介して複数の中継器2と接続されている。火災受信機1は、中継器2を介して1以上の感知器4の少なくともいずれかにおいて火災を感知したことを特定すると、防火管理者に火災の発生を通知する。
【0016】
複数の中継器2は、例えば中継器盤3に収容されている。複数の中継器2のそれぞれは、伝送線L1を介して火災受信機1と接続されているとともに、感知器回線L2を介して、デイジーチェーン接続された1以上の感知器4が接続されている。
【0017】
1以上の感知器4は、P型の火災感知器(オンオフ型の火災感知器)であり、予め感知器4を識別するアドレスが割り当てられている。1以上の感知器4は、火災を感知すると、中継器2を介して火災を感知したことを示す火災感知情報と、感知器4のアドレスとを含む応答信号を火災受信機1に通知する。また、1以上の感知器4は、中継器2から監視信号を受信すると、監視信号に対する応答信号を中継器2に送信する。
【0018】
複数の中継器2は、中継器盤3に収容されていることから、感知器回線L2が近接する箇所が発生し、当該箇所において混信が発生しやすくなるという問題が発生する。これに対し、本実施形態に係る火災感知システムSでは、複数の中継器2のそれぞれに、信号の送信タイミングとして異なる時刻に到来する複数の第1タイミングが割り当てられているとともに、信号の受信タイミングとして異なる時刻に到来する複数の第2タイミングが割り当てられている。複数の中継器2のそれぞれは、当該中継器2に対応する1つの第1タイミングで、感知器4に監視信号を送信する。
【0019】
感知器4は、中継器2から監視信号を受信すると、感知器4が接続されている中継器2に割り当てられている第1タイミングが新たに到来する前の第2タイミングで監視信号に対する応答信号を当該中継器2に送信する。このようにすることで、火災感知システムSは、監視信号に対する応答信号が混信することを抑制しつつ、異常の発生を迅速に通知することができる。
続いて、火災感知システムSが備える中継器2及び感知器4の構成について説明する。
【0020】
[中継器2の構成]
まず、中継器2の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る中継器2の構成を示す図である。中継器2は、第1通信部21と、第2通信部22と、記憶部23と、制御部24とを備える。
【0021】
第1通信部21は、伝送線L1を介して火災受信機1と通信を行う通信インターフェースである。
第2通信部22は、感知器回線L2を介して1以上の感知器4と通信を行う通信インターフェースである。
記憶部23は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶媒体を含む。記憶部23は、制御部24が実行するプログラムを記憶する。
【0022】
制御部24は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部24は、記憶部23に記憶されたプログラムを実行することにより、同期部241、状態変更部242、要求部243、及び通知部244として機能する。状態変更部242、要求部243、及び通知部244の機能の詳細については後述する。
【0023】
[感知器4の構成]
続いて、感知器4の構成について説明する。図3は、本実施形態に係る感知器4の構成を示す図である。感知器4は、通信部41と、感知部42と、記憶部43と、制御部44とを備える。
【0024】
通信部41は、感知器回線L2を介して中継器2と通信を行う通信インターフェースである。感知部42は、火災の発生を感知する。
【0025】
記憶部43は、ROMやRAM等の記憶媒体を含む。記憶部43は、アドレス設定器(不図示)により設定される感知器4のアドレスを記憶する。また、記憶部43は、感知器4が中継器2と通信を行うタイミングを規定する設定情報を記憶する。
制御部44は、例えば制御回路であり、発報部441及び応答部442として機能する。発報部441及び応答部442の機能の詳細については後述する。
【0026】
[中継器2の同期]
本実施形態において、中継器2は、火災の感知、感知器回線L2の断線及び感知器4の脱落の監視、及び感知器4が正常に動作するか否かの試験を行うために、各種コマンドを感知器4に送信し、感知器4から当該コマンドに対応する応答信号を受信する。
【0027】
まず、複数の中継器2において同期を行う処理について説明する。火災受信機1は、複数の中継器2に定期的に同期信号を送信する。例えば、火災受信機1は、自身に接続されている中継器2の台数に基づく周期で、複数の中継器2に同期信号を送信する。
【0028】
複数の中継器2の同期部241は、火災受信機1から同期信号を受信すると、自身に割り当てられているアドレスに基づいて、同期信号を受信した時間を基準とした、各種信号の送信タイミング(例えば、第1タイミングの送信タイミング)の到来時期を特定する。これにより、火災感知システムSは、複数の中継器2のそれぞれにおいて、監視信号を送信する第1タイミングを異なるタイミングとすることができる。
【0029】
[各コマンドに対応する通信タイミング]
続いて、各種コマンドの送信タイミング及び応答信号の受信タイミングについて説明する。図4は、本実施形態に係る中継器2及び感知器4に割り当てられている通信タイミングを説明するための図である。図4に示す例では、火災受信機1に3台の中継器2として、中継器2A、2B、2Cが接続されており、火災受信機1には感知器4が接続されていないものとする。なお、図4には示していないが、同期信号は、タイムスロットT0よりも前に受信しているものとする。
【0030】
中継器2A、2B、2Cのそれぞれには、感知器回線L2の断線及び感知器4の脱落を監視するための監視コマンドを送信するための通信タイミングとして、複数の中継器2のそれぞれで異なる時刻に到来する第1タイミングが割り当てられている。また、中継器2A、2B、2Cのそれぞれには、監視コマンドに対応する応答信号である第1応答信号を受信するための通信タイミングとして、複数の中継器2のそれぞれで異なる時刻に到来し、第1タイミングの後に到来する第2タイミングが割り当てられている。本実施形態において、第2タイミングは第1タイミングと連続しており、第1タイミングの直後に到来する。
【0031】
図4に示す例において、中継器2Aの第1タイミングは、タイムスロットT0、T18であり、中継器2Aの第2タイミングは、タイムスロットT1、T19である。中継器2Bの第1タイミングは、タイムスロットT6であり、中継器2Bの第2タイミングは、タイムスロットT7である。中継器2Cの第1タイミングは、タイムスロットT12であり、中継器2Cの第2タイミングは、タイムスロットT13である。各タイムスロットの長さは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
中継器2A、2B、2Cのそれぞれには、試験用の制御信号である試験用コマンドを送信するための通信タイミングとして、複数の中継器2のそれぞれで同じ時刻に到来する第3タイミングが割り当てられている。また、中継器2A、2B、2Cのそれぞれには、試験用コマンドに対応する応答信号である第2応答信号を受信するための通信タイミングとして、複数の中継器2のそれぞれで同じ時刻に到来し、第3タイミングの後に到来する第4タイミングが割り当てられている。本実施形態において、第4タイミングは第3タイミングと連続しており、第3タイミングの直後に到来する。
【0033】
図4に示す例において、第3タイミングは、タイムスロットT2、T8、T14、T20であり、第4タイミングは、タイムスロットT3、T9、T15、T21である。
【0034】
また、中継器2A、2B、2Cのそれぞれには、火災場所確認用の取得要求信号である火災場所確認コマンドを送信するための通信タイミングとして、複数の中継器2のそれぞれで同じ時刻に到来する第5タイミングが割り当てられている。また、中継器2A、2B、2Cのそれぞれには、火災場所確認コマンドに対応する応答信号である第3応答信号を受信するための通信タイミングとして、複数の中継器2のそれぞれで同じ時刻に到来し、第5タイミングの後に到来する第6タイミングが割り当てられている。本実施形態において、第6タイミングは第5タイミングと連続しており、第5タイミングの直後に到来する。
【0035】
火災場所確認用のコマンドと第3応答信号を受信するための通信タイミングは、監視コマンドとその応答信号を受信するための通信タイミングが到来する周期に比べて早い周期で到来する。図4に示す例において、第5タイミングは、タイムスロットT4、T10、T16、T22であり、第6タイミングは、タイムスロットT5、T11、T17、T23である。
【0036】
[断線・脱落監視時の処理]
続いて、中継器2が備える状態変更部242、要求部243及び通知部244の機能と、感知器4が備える発報部441及び応答部442の機能とについて説明する。まず、感知器回線L2の断線及び感知器4の脱落の監視に係る機能について説明する。
【0037】
中継器2の要求部243は、1つの第1タイミングで、感知器回線L2を介して中継器2に接続されている1以上の感知器4に監視コマンドを送信する。監視コマンドは、第1応答信号を送信することを要求する信号である。ここで、第1応答信号は、感知器4が接続されている感知器回線L2の断線又は感知器4の脱落を示す異常が発生しているか否かを判定するために用いられる。
【0038】
感知器4の応答部442は、中継器2から監視コマンドを受信すると、当該中継器2に対応する第1タイミングが新たに到来する前の第2タイミングで、感知器4が監視信号を受信していることを示す第1応答信号として、オン信号を当該中継器2に送信する。具体的には、応答部442は、当該第2タイミングに対応するタイムスロット内において、感知器4に割り当てられているアドレスに対応する時刻に第1応答信号を中継器2に送信する。
【0039】
図4に示す例において、中継器2Aは、タイムスロットT0及びT18において、中継器2Aに接続されている1以上の感知器4に監視コマンドを送信する。中継器2Aに接続されている1以上の感知器4のそれぞれは、中継器2Aの第2タイミングに対応するタイムスロットT1及びT19において、第1応答信号を中継器2Aに送信する。
【0040】
1以上の感知器4のそれぞれの応答部442は、感知器4のアドレスに基づいて、タイムスロットT1及びT19のそれぞれにおいて、異なる時刻に第1応答信号を中継器2Aに送信する。例えば、感知器4の台数が、32台であり、タイムスロットT1、T19の時間間隔が0.5秒であるものとする。この場合、タイムスロットT1、T19は、時間間隔(0.5秒)を台数(32台)で除算して得られる時間間隔(0.0156秒間隔)に区切られている。1以上の感知器4のそれぞれの応答部442は、タイムスロットT1、T19において区切られている時間間隔のうち、感知器4のアドレスに対応する時間間隔に第1応答信号を中継器2Aに送信する。
【0041】
通知部244は、監視コマンドの送信に対する、1以上の感知器4のそれぞれからの第1応答信号の受信状況に基づいて、感知器回線L2の断線及び感知器4の脱落を示す異常が発生しているか否かを判定する。ここで、通知部244は、第1応答信号の受信状況に基づいて、感知器回線L2の断線位置及び感知器4の脱落箇所を特定してもよい。
【0042】
火災受信機1は、定期的に、複数の中継器2のそれぞれに、中継器2の状態を確認するための状態確認信号を送信する。通知部244は、状態確認信号を火災受信機1から受信した場合に、異常が発生しているか否かの判定結果を火災受信機1に通知する。また、通知部244は、感知器回線L2の断線及び感知器4の脱落を感知していると判定すると、感知器回線L2の断線又は感知器4の脱落箇所を感知したことを示す感知情報を火災受信機1に通知する。これにより、火災受信機1は、当該アドレスに対応する感知器4が設置されている位置において断線が発生しているか、感知器4が脱落していることを防火管理者に通知することができる。
【0043】
[試験火災時の処理]
続いて、試験火災時の処理について説明する。
まず、火災受信機1は、試験火災用の制御信号としての試験信号を複数の中継器2に送信する。また、試験信号には、試験を行う中継器2のアドレスが含まれている。
【0044】
中継器2の要求部243は、自身のアドレスを含む火災受信機1から試験信号を受信すると、1つの第3タイミングで、試験用の制御信号である試験用コマンドを送信する。
【0045】
感知器4の応答部442は、中継器2から試験用コマンドを受信する。応答部442は、試験用コマンドを受信すると、第2応答信号を中継器2に送信する。応答部442は、第3タイミングが新たに到来する前の第4タイミングで、第2応答信号を中継器2に送信する。具体的には、応答部442は、当該第4タイミングに対応するタイムスロット内において、感知器4に割り当てられているアドレスに対応する時刻に第2応答信号を中継器2に送信する。
【0046】
図4に示す例において、中継器2Aは、タイムスロットT2、T8、T14及びT20において、中継器2Aに接続されている1以上の感知器4に試験用コマンドを送信する。中継器2Aに接続されている1以上の感知器4は、第4タイミングに対応するタイムスロットT3、T9、T15及びT21において、第2応答信号を中継器2Aに送信する。1以上の感知器4のそれぞれの応答部442は、感知器4のアドレスに基づいて、第4タイミングに対応するタイムスロットT3、T9、T15及びT21のそれぞれにおいて、異なる時刻に第2応答信号を中継器2Aに送信する。
【0047】
火災受信機1は、定期的に、複数の中継器2のそれぞれに、中継器2の状態を確認するための状態確認信号を送信する。通知部244は、1以上の感知器4から、同一のタイムスロット(例えばタイムスロットT3、T9、T15及びT21)において異なる時刻に送信される第2応答信号の受信状況に基づいて、1以上の感知器4のそれぞれが正常に動作しているか否かを判定し、判定結果を火災受信機1に通知する。例えば、通知部244は、状態確認信号を火災受信機1から受信すると、正常に動作していない感知器4のアドレスを示す情報を火災受信機1に通知する。これにより、火災受信機1は、感知器4が正常に動作しているか否かを防火管理者に通知することができる。
【0048】
[火災感知時の処理]
続いて、火災感知時の処理について説明する。図5は、火災感知システムSにおける火災感知時の処理の流れを示すシーケンス図である。
感知器4の発報部441は、感知部42が火災の発生を感知すると、中継器2に火災を感知したことを示す火災感知信号としてのオン信号を送信する(S11)。
【0049】
中継器2の記憶部23は、火災を感知しているか否かを示す保有値を記憶している。例えば、火災を感知していない場合、保有値の値は「0x00」であり、火災を感知している場合、保有値の値は「0xFF」である。中継器2の状態変更部242は、感知器4から火災発報信号を受信すると、記憶部23に記憶されている保有値の値を、「0x00」から「0xFF」に変更する(S12)。
【0050】
中継器2の要求部243は、記憶部23に記憶されている保有値の値が「0xFF」に変更されると、1つの第5タイミングで、当該中継器2に接続されている1以上の感知器4に、取得要求信号としての火災場所確認コマンドを送信する(S13−1、S13−2)。火災場所確認コマンドは、感知器4が火災を感知している場合に第3応答信号を送信することを要求する信号である。本実施形態において、要求部243は、同一の感知器4から第3応答信号を2回受信するか、火災場所確認コマンドを所定回数送信するまで、第5タイミングで火災場所確認コマンドを繰り返し送信する。
【0051】
感知器4の応答部442は、感知部42が火災を感知している場合に中継器2から火災場所確認コマンドを受信すると、第5タイミングが新たに到来する前の第6タイミングで第3応答信号を当該中継器2に送信する(S14−1、S14−2)。
【0052】
図4に示す例において、タイムスロットT7において、状態変更部242により保有値の値が「0xFF」に変更されたとする。この場合、中継器2Aの要求部243は、最も早く到来する第5タイミングであるタイムスロットT10において、当該中継器2Aに接続されている1以上の感知器4に火災場所確認コマンドを送信する。中継器2Aに接続されている1以上の感知器4のそれぞれのうち、火災の発生を感知している感知器4は、第5タイミングが新たに到来するタイムスロットT16よりも前の第6タイミングであるタイムスロットT11に、第3応答信号を中継器2Aに送信する。具体的には、火災の発生を感知している感知器4の応答部442は、当該第6タイミングに対応するタイムスロットT11内において、感知器4に割り当てられているアドレスに対応する時刻に第3応答信号を中継器2に送信する。
【0053】
また、中継器2Aの要求部243は、新たに到来する第5タイミングであるタイムスロットT16において、当該中継器2Aに接続されている1以上の感知器4に火災場所確認コマンドを送信する。中継器2Aに接続されている1以上の感知器4のそれぞれのうち、火災の発生を感知している感知器4は、第5タイミングが新たに到来するタイムスロットT22よりも前の第6タイミングであるタイムスロットT17に、第3応答信号を中継器2Aに送信する。
【0054】
第5タイミング及び第6タイミングが到来する周期は、第1タイミング〜第4タイミングが到来する周期よりも短いことから、中継器2は、火災が発生した場所を、他の異常が発生した場所に比べて迅速に特定することができる。また、第5タイミング及び第6タイミングは、複数の中継器2において共有されるものの、複数の中継器2において同時に火災場所確認コマンドを送信することが殆ど発生しないことから、極めて高い確率で混信することなく火災場所確認コマンドを送信することができる。
【0055】
なお、応答部442は、第5タイミングが新たに到来するよりも前の第6タイミングで第3応答信号を中継器2に送信することとしたが、これに限らない。応答部442は、火災を感知している場合に、中継器2から火災場所確認コマンドを受信すると、感知器4に割り当てられているアドレスに対応する第6タイミングで第3応答信号を当該中継器2に送信してもよい。
【0056】
この場合、要求部243は、第5タイミングが到来するよりも長い間隔で火災場所確認コマンドを送信する。図4に示す例では、要求部243は、タイムスロットT10、T22において火災場所確認コマンドを送信する。
【0057】
応答部442は、例えば、感知器4のアドレスの末尾が奇数である場合、第5タイミングの直後に到来する第6タイミングに第3応答信号を中継器2に送信し、感知器4のアドレスの末尾が偶数である場合、新たに到来する第5タイミングの直後に到来する第6タイミングに第3応答信号を中継器2に送信する。図4に示す例では、アドレスの末尾が奇数の感知器4の応答部442は、タイムスロットT11において第3応答信号を送信し、アドレスの末尾が偶数の感知器4の応答部442は、タイムスロットT17において第3応答信号を送信する。このようにすることで、1以上の感知器4が同時に第3応答信号を送信し、混信してしまうことを抑制することができる。
【0058】
通知部244は、火災場所確認コマンドの送信に対する1以上の感知器4からの第3応答信号の受信状況に基づいて火災を感知した感知器4を特定し、当該感知器4の位置に対応する火災場所情報を火災受信機1に通知する。具体的には、まず、通知部244は、同じ感知器4から連続して第3応答信号を受信すると、火災場所を、当該感知器4が設置されている位置と特定する(S15)。通知部244は、当該第3応答信号に含まれる感知器4のアドレスを火災場所情報として記憶部23に記憶させる。
【0059】
通知部244は、火災受信機1から所定時間おきに、中継器2の状態を確認するための状態確認信号を受信する(S1−1、S1−2、S1−3)。通知部244は、状態確認信号を受信した場合に、記憶部23に記憶されている保有値の値が、火災が発生していないことを示す「0x00」であるときには、保有値を含む正常信号を火災受信機1に送信する(S2−1)。
【0060】
通知部244は、状態確認信号を受信した場合に、保有値の値が、火災が発生していることを示す「0xFF」であるとともに、記憶部23に火災発生場所情報が記憶されていないとき、当該保有値と、火災が発生した場所を特定していないことを示す場所未特定情報とを含む火災感知信号を火災受信機1に送信する(S2−2、S2−3)。また、通知部244は、状態確認信号を受信した場合に、保有値の値が火災が発生していることを示す「0xFF」であるとともに、記憶部23に火災場所情報が記憶されているとき、保有値と、火災が発生した場所を特定していることを示す場所特定情報とを含む火災感知信号を火災受信機1に送信する(S2−4)。
【0061】
火災受信機1は、保有値と、場所特定情報とを含む火災感知信号を中継器2から受信すると、火災場所の確認を示す拡張伝送信号である状態確認信号を当該中継器2に送信する(S3)。
【0062】
通知部244は、拡張伝送信号としての状態確認信号を受信すると、記憶部23に記憶されている火災場所情報を示す火災場所信号を火災受信機1に送信する(S4)。火災受信機1は、中継器2から火災場所信号を受信すると、当該火災場所信号に基づいて、例えば、火災発生場所を表示部(不図示)に表示することにより、火災発生場所を通知する(S5)。これにより、火災受信機1は、当該アドレスに対応する感知器4が設置されている位置において火災が発生したことを防火管理者に通知することができる。
【0063】
なお、通知部244は、1以上の感知器4において、同一の第6タイミングで第3応答信号が送信され、当該第3応答信号が混信したことにより、火災を感知した感知器4に対応するアドレスを特定できない場合に、自身に接続されている1以上の感知器4の少なくともいずれかにおいて火災を感知したことを火災受信機1に通知してもよい。これにより、火災受信機1は、第3応答信号を受信した中継器2に接続されている1以上の感知器4のいずれかが設置されている位置において火災が発生したことを防火管理者に通知することができる。
【0064】
[本実施形態における効果]
以上説明したように、本実施形態に係る火災感知システムSでは、複数の中継器2のそれぞれに、信号の送信タイミングとして、複数の中継器2のそれぞれで異なる時刻に到来する第1タイミングが割り当てられているとともに、信号の受信タイミングとして、第1タイミングよりも後に到来する第2タイミングが割り当てられている。複数の中継器2のそれぞれは、自身に対応する1つの第1タイミングで、中継器2に接続されている感知器4に、第1応答信号を送信することを要求する監視コマンドを送信する。感知器4は、中継器2から監視コマンドを受信すると、当該中継器2に対応する第1タイミングが新たに到来する前の第2タイミングで第1応答信号を当該中継器2に送信する。このようにすることで、火災感知システムSは、混信を抑制しつつ、異常の発生を迅速に防火管理者に通知することができる。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0066】
1 火災受信機
2 中継器
21 第1通信部
22 第2通信部
23 記憶部
24 制御部
241 同期部
242 状態変更部
243 要求部
244 通知部
3 中継器盤
4 感知器
41 通信部
42 感知部
43 記憶部
44 制御部
441 発報部
442 応答部
S 火災感知システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6