(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-86651(P2020-86651A)
(43)【公開日】2020年6月4日
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G06T 3/00 20060101AFI20200508BHJP
【FI】
G06T3/00 750
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-216607(P2018-216607)
(22)【出願日】2018年11月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000213909
【氏名又は名称】朝日航洋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英夫
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057BA08
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA13
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE08
5B057CE11
5B057CH11
5B057CH14
5B057DA07
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB09
(57)【要約】
【課題】明暗ギャップを抑制した合成画像を生成することが可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】
画像処理装置は、被測定対象物に対して移動しながら複数の熱赤外画像を連続的に取得する撮像部と、撮像部で取得された各前記複数の熱赤外画像に対してオルソ変換処理するオルソ変換部と、オルソ変換部によりオルソ変換処理された複数のオルソ画像を合成したオルソモザイク画像を生成する合成処理部とを備える。合成処理部は、連続する複数のオルソ画像の重複領域の輝度値を補正する補正部を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象物に対して移動しながら複数の熱赤外画像を連続的に取得する撮像部と、
前記撮像部で取得された各前記複数の熱赤外画像に対してオルソ変換処理するオルソ変換部と、
前記オルソ変換部によりオルソ変換処理された複数のオルソ画像を合成したオルソモザイク画像を生成する合成処理部とを備え、
前記合成処理部は、連続する複数のオルソ画像の重複領域の輝度値を補正する補正部を含む、画像処理装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記複数のオルソ画像の重複領域の平均値に輝度値を補正する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記撮像部は、移動体に設けられ、垂直直下に撮影した熱赤外画像を取得する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記撮像部は、非冷却式の撮像素子を含む、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記撮像部は、所定周期毎に前記撮像素子の感度歪み補正処理を実行する、請求項3記載の画像処理装置。
【請求項6】
被測定対象物に対して移動しながら複数の熱赤外画像を連続的に取得するステップと、 取得された各前記複数の熱赤外画像に対してオルソ変換処理するステップと、
オルソ変換処理された複数のオルソ画像を合成したオルソモザイク画像を生成するステップとを備え、
前記オルソモザイク画像を生成するステップは、連続する複数のオルソ画像の重複領域の輝度値を補正するステップを含む、画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置に関し、熱赤外画像の合成処理に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルビデオの普及とパーソナルコンピュータの高性能化に伴って、かつては不可能であったデジタル画像データの大量保存や大量処理が可能になってきた。
【0003】
これに伴い、デジタル画像データを処理する新しい方法が行われるようになってきた。その一つとして、移動しながら撮影したビデオ画像や、同じ領域を場所や角度を変えて撮影した複数枚の静止画をつなぎ合わせて一つの合成画像を生成する技術がある。これをモザイキングと呼ぶこともある。
【0004】
この点で、通常の一般的な画像を取得する画像処理装置においてこのモザイキング処理を行う方式が開示されている(特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−139219号公報
【特許文献2】特開2005−277582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、熱放射を捉える熱赤外画像を取得する熱赤外線カメラは、受け取る放射エネルギーの感度の歪みが通常のカメラに比して生じやすい。
【0007】
したがって、一定時間毎にセンサーキャリブレーション(FFC(Flat Field Correction))により面内の撮像素子(センサー)の感度を均一にする補正処理が行われる。
【0008】
しかしながら、面内は均一であっても連続的に撮影した画像間の輝度値はセンサ−キャリブレーションによりそれぞれ異なる。
【0009】
当該状態でモザイキング処理をした場合には、明暗ギャップが生じる可能性がある。明暗ギャップにより合成画像の品質が低下する可能性がある。
【0010】
本開示は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、明暗ギャップを抑制した合成画像を生成することが可能な画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ある局面に従う画像処理装置は、被測定対象物に対して移動しながら複数の熱赤外画像を連続的に取得する撮像部と、撮像部で取得された各複数の熱赤外画像に対してオルソ変換処理するオルソ変換部と、オルソ変換部によりオルソ変換処理された複数のオルソ画像を合成したオルソモザイク画像を生成する合成処理部とを備える。合成処理部は、連続する複数のオルソ画像の重複領域の輝度値を補正する補正部を含む。
【0012】
好ましくは、補正部は、複数のオルソ画像の重複領域の平均値に輝度値を補正する。
好ましくは、撮像部は、移動体に設けられ、垂直直下に撮影した熱赤外画像を取得する。
【0013】
好ましくは、撮像部は、非冷却式の撮像素子を含む。
好ましくは、撮像部は、所定周期毎に撮像素子の感度歪み補正処理を実行する。
【0014】
ある局面に従う画像処理方法は、被測定対象物に対して移動しながら複数の熱赤外画像を連続的に取得するステップと、取得された各複数の熱赤外画像に対してオルソ変換処理するステップと、オルソ変換処理された複数のオルソ画像を合成したオルソモザイク画像を生成するステップとを備える。オルソモザイク画像を生成するステップは、連続する複数のオルソ画像の重複領域の輝度値を補正するステップを含む。
【発明の効果】
【0015】
本開示の画像処理装置および画像処理方法は、明暗ギャップを抑制した合成画像を生成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に従う画像処理システム100について説明する図である。
【
図2】実施形態に基づく情報処理装置30のハードウェア構成について説明する図である。
【
図3】実施形態に基づく情報処理装置30の機能ブロックを説明する図である。
【
図4】実施形態に基づく複数の熱赤外画像の具体例を説明する図である。
【
図5】実施形態に基づく複数の熱赤外画像のうちの連続する2枚の熱赤外画像について説明する図である。
【
図6】比較例として従来の複数の熱赤外画像に基づくオルソモザイク画像の具体例を説明する図である。
【
図7】実施形態に基づく補正部36における補正処理について説明する図である。
【
図8】実施形態に基づく複数の熱赤外画像に対して補正処理を実行した場合の具体例を説明する図である。
【
図9】実施形態に基づく補正処理前後の熱赤外画像の輝度値の平均値の変化を説明する図である。
【
図10】実施形態に基づく補正処理後の複数の熱赤外画像に基づくオルソモザイク画像の具体例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0018】
図1は、実施形態に従う画像処理システム100について説明する図である。
図1を参照して、画像処理システム100は、移動体5に設けられた熱赤外線カメラ10と、ネットワーク20と、情報処理装置30とを含む。
【0019】
ネットワーク20は、熱赤外線カメラ10および情報処理装置30と有線あるいは無線接続される。熱赤外線カメラ10で取得した情報は、ネットワーク20を介して情報処理装置30に送信される。
【0020】
情報処理装置30は、熱赤外線カメラ10で取得した情報に基づいて画像処理を実行する。
【0021】
本例においては、熱赤外線カメラ10は、移動体5の移動に伴って複数地点(被測定対象物)に対して連続的に複数の熱赤外画像を撮影する。一例として、移動体5は、ドローン等の飛行体とする。なお、ドローンに限られず航空機に取り付けるようにしても良いし、車両等の移動体に取り付けるようにしても良い。
【0022】
情報処理装置30は、熱赤外線カメラ10で連続的に撮影された複数の熱赤外画像に対して画像処理を実行する。
【0023】
具体的には、情報処理装置30は、複数の熱赤外画像に基づいてオルソモザイク画像を生成する。
【0024】
図2は、実施形態に基づく情報処理装置30のハードウェア構成について説明する図である。
【0025】
図2を参照して、情報処理装置30は、通信I/F40と、メモリ44と、CPU42とを含む。各装置は、内部バスで接続されており、互いにデータの授受が可能に設けられている。
【0026】
通信I/F40は、ネットワーク20と有線あるいは無線接続されて、熱赤外線カメラ10からの情報を取得する。
【0027】
メモリ44は、情報処理装置30における種々の機能を実行するためのプログラムを格納する。
【0028】
CPU42は、メモリ44に格納されているプログラムに基づいて各部と協働して種々の機能を実現する。本例においては、CPU42は、メモリ44に格納されているプログラムに基づいて取得した複数の熱赤外画像に基づいてオルソモザイク画像を生成する。
【0029】
図3は、実施形態に基づく情報処理装置30の機能ブロックを説明する図である。
図3を参照して、情報処理装置30は、メモリ44に格納されているプログラムに基づいて複数の機能ブロックを実現する。具体的には、情報処理装置30は、データ取得部32と、オルソ画像変換部34と、合成処理部38と、出力部39とを含む。
【0030】
データ取得部32は、熱赤外線カメラ10からの情報を取得する。熱赤外線カメラ10からの情報として熱赤外画像データと、撮影情報とを含む。撮影情報は、熱赤外線カメラ10の撮影方位と、撮影地点との情報を含む。本例においては、熱赤外線カメラ10は、移動体5から垂直直下の方向を撮影方位として撮影する。熱赤外線カメラ10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を搭載しており、GNSSから位置情報を取得して撮影地点の情報として出力する。なお、GNSSは、熱赤外線カメラ10に搭載されていなくてもよく、例えば移動体5にGNSSが搭載されていてもよく、当該GNSSから位置情報を取得するようにしても良い。
【0031】
オルソ画像変換部34は、熱赤外線カメラ10からの情報に基づいて複数の熱赤外画像をそれぞれオルソ画像に変換する。具体的には、オルソ画像変換部34は、2枚の連続する熱赤外画像データを抽出し、互いに重複する熱赤外画像(ステレオ画像)の撮影情報に基づいて3次元計測を実行する。オルソ画像変換部34は、3次元計測により奥行き情報を算出し、それぞれの熱赤外画像に対して倒れ込みを補正した正射投影画像(オルソ画像)に変換する。
【0032】
合成処理部38は、オルソ画像変換部34により変換された複数のオルソ画像に対して合成処理(モザイキング処理)を実行してオルソモザイク画像を生成する。
【0033】
合成処理部38は、補正部36を含み、補正部36は、連続する複数のオルソ画像の輝度値を補正する。
【0034】
出力部39は、生成したオルソモザイク画像を出力する。具体的には、出力部39は、表示部等に出力する。あるいは、出力部39は、外部の表示装置に出力するようにしてもよい。
【0035】
図4は、実施形態に基づく複数の熱赤外画像の具体例を説明する図である。
図4には、熱赤外線カメラ10により連続して撮影された複数の熱赤外画像が示されている。一例として所定速度で飛行しているドローンから2秒間隔で撮影した場合が示されている。また、連続する熱赤外画像は、90%以上がオーバーラップ(重複)している。なお、撮影間隔を調整することによりオーバラップ(重複)の割合を調整することも可能である。
【0036】
図5は、実施形態に基づく複数の熱赤外画像のうちの連続する2枚の熱赤外画像について説明する図である。
【0037】
図5に示されるように、上下で連続する2枚の熱赤外画像が示されている。2枚の熱赤外画像のうちの点線領域がオーバラップ(重複)している領域である。
【0038】
左右の熱赤外画像の点線領域は、同一地点を撮影しているにも関わらず輝度値が異なる。
【0039】
具体的には、左側の重複領域は輝度値が低く、右側の重複領域は、輝度値が高い場合が示されている。
【0040】
熱赤外線カメラ10は、受け取る放射エネルギーの感度の歪みが通常のカメラに比して生じやすく、一定時間毎にセンサーキャリブレーション(FFC(Flat Field Correction))により面を均一にする補正処理を行っている。一方で、面内のセンサー感度を均一にする補正処理を実行した場合であっても連続的に撮影した画像間の輝度値はセンサ−キャリブレーションによりそれぞれ異なる。
【0041】
したがって、本例の如く、同一地点であるにも関わらず上下で連続する2枚の熱赤外画像の輝度値はそれぞれ異なる状態となる。
【0042】
図6は、比較例として従来の複数の熱赤外画像に基づくオルソモザイク画像の具体例を説明する図である。
【0043】
図6に示されるように、複数の熱赤外画像のモザイキング処理において上下および左右に明暗ギャップが生じるため精度の粗いオルソモザイク画像になる可能性がある。輝度値にばらつきが生じるため品質が低い合成画像になる可能性がある。
【0044】
図7は、実施形態に基づく補正部36における補正処理について説明する図である。
図7に示されるように、補正部36は、2枚の熱赤外画像の重複領域に対して輝度値の平均値を算出し、当該輝度値に合わせる補正を実行する。具体的には、補正部36は、2枚の熱赤外画像の重複領域それぞれの全体の輝度値の平均値を算出する。そして、補正部36は、2枚の熱赤外画像の輝度値の中央値(平均値)を算出する。補正部36は、2枚の熱赤外画像の重複領域に対して、算出された中央値(平均値)となるように輝度値を補正する。
【0045】
なお、補正部36における輝度値の補正はこれに限られず例えば代表点を抽出してその平均値に合わせるように補正しても良い。あるいは、重複領域の輝度値の最大最小および分散が等しくなるように輝度値を補正してもよい。あるいは、重複領域の画素の位置をイメージマッチングにより正確に位置合わせして、各画素の差分が最小になるように輝度値を調整するようにしてもよい。
【0046】
図8は、実施形態に基づく複数の熱赤外画像に対して補正処理を実行した場合の具体例を説明する図である。
【0047】
図8に示されるように、
図4と比較して連続する複数の熱赤外画像に対して輝度値の変化が少なくなっている場合が示されている。
【0048】
図9は、実施形態に基づく補正処理前後の熱赤外画像の輝度値の平均値の変化を説明する図である。
【0049】
図9に示されるように、縦軸は画像輝度値、横軸は写真番号が示されている。補正処理前の画像は、感度の歪みによる影響により撮影開始から撮影終了までの写真の輝度値の平均値の変動は大きいが、補正処理後の画像は、撮影開始から撮影終了までの写真の輝度値の平均値の極度の変動が抑制される。
【0050】
図10は、実施形態に基づく補正処理後の複数の熱赤外画像に基づくオルソモザイク画像の具体例を説明する図である。
【0051】
図10に示されるように、実施形態に基づく複数の熱赤外画像のモザイキング処理により上下および左右の明暗ギャップが抑制されて、精度の高いオルソモザイク画像が生成される。輝度値のばらつきが小さいため品質の高い合成画像が生成される。
【0052】
なお、本例においては、熱赤外線カメラ10と、情報処理装置30とがそれぞれ独立に別々の場所に設けられた画像処理システムとして説明したが、特にこれに限られず赤外線カメラと情報処理装置とが1つの装置(画像処理装置)に収容することも可能である。
【0053】
また、本例においては、非冷却式センサーを搭載した熱赤外線カメラを用いているためサイズまたコスト的にも有利な構成を採用することが可能である。
【0054】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
5 移動体、10 熱赤外線カメラ、20 ネットワーク、30 情報処理装置、32 データ取得部、34 オルソ画像変換部、36 補正部、38 合成処理部、39 出力部、44 メモリ、100 画像処理システム。