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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-87813(P2020-87813A)
(43)【公開日】2020年6月4日
(54)【発明の名称】固体高分子形燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/90 20060101AFI20200508BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20200508BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20200508BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20200508BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20200508BHJP
【FI】
   H01M4/90 M
   H01M4/86 M
   H01M4/92
   H01M8/10 101
   H01M8/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-223295(P2018-223295)
(22)【出願日】2018年11月29日
(71)【出願人】
【識別番号】518218896
【氏名又は名称】株式会社グラヴィトン
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】奥山 正己
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018BB01
5H018BB11
5H018BB12
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE04
5H018HH01
5H018HH03
5H018HH04
5H018HH05
5H018HH08
5H018HH09
5H126BB06
5H126EE03
5H126EE22
5H127AA06
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA42
5H127BA52
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DC04
5H127DC06
5H127DC07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】白金族金属の含有量が少ないにもかかわらず、優れた触媒活性(触媒作用)を示す燃料極及び空気極を有する固体高分子形燃料電池の提供。
【解決手段】固体高分子形燃料電池10に使用する燃料極及び空気極は、各種の白金族金属から選択された少なくとも1種類の少量の白金族金属と、各種の遷移金属から選択された少なくとも2種類の遷移金属とから形成されている。燃料極及び空気極は、選択された少なくとも1種類の白金族金属を微粉砕した白金族金属微粉体と選択された少なくとも2種類の遷移金属を微粉砕した遷移金属微粉体と所定のバインダーとを均一に混合・分散した金属微粉体混合物に所定の気孔形成材を添加し、気孔形成材を添加した金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に成形し、所定面積の薄板状に成形した金属微粉体成形物を脱脂・焼結することで、多数の微細な気孔が形成されたマイクロポーラス構造の薄板状電極である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを有するセルスタックを備え、前記セルが、燃料極及び空気極と、前記燃料極と前記空気極との間に位置する電極接合体膜と、前記燃料極の外側と前記空気極の外側とに位置するセパレータとから形成され、
前記燃料極及び前記空気極が、各種の白金族金属から選択された少なくとも1種類の少量の白金族金属と、各種の遷移金属から選択された少なくとも2種類の遷移金属とから形成され、
前記燃料極及び前記空気極は、前記選択された少なくとも1種類の白金族金属を微粉砕した白金族金属微粉体と前記選択された少なくとも2種類の遷移金属を微粉砕した遷移金属微粉体と所定のバインダーとを均一に混合・分散した金属微粉体混合物に所定の気孔形成材を添加し、前記気孔形成材を添加した金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に成形し、前記所定面積の薄板状に成形した金属微粉体成形物を脱脂・焼結することで、多数の微細な気孔が形成されたマイクロポーラス構造の薄板状電極であることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
【請求項2】
前記燃料極及び前記空気極では、前記選択された少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、前記各種の遷移金属の中から少なくとも2種類の遷移金属が選択されている請求項1に記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項3】
前記燃料極及び前記空気極に形成された気孔の平均径が、1〜100μmの範囲にある請求項1又は請求項2に記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項4】
前記燃料極の厚み寸法と前記空気極の厚み寸法とが、0.03mm〜1.5mmの範囲にある請求項1ないし請求項3いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項5】
前記白金族金属が、Pt(白金)であり、前記遷移金属が、Ni(ニッケル)とFe(鉄)とであり、前記燃料極及び前記空気極では、前記Niの仕事関数と前記Feの仕事関数との合成仕事関数が前記白金族金属の仕事関数に近似するように、前記Ptの白金族金属微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比と前記Niの遷移金属微粉体の該金属微粉体混合物の全重量に対する重量比と前記Feの遷移金属微粉体の該金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とが定められている請求項1ないし請求項4いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項6】
前記Ptの白金族金属微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、4〜10%の範囲、前記Niの遷移金属微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、45%〜48%の範囲、前記Feの遷移金属微粉体の前記金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、45%〜48%の範囲にある請求項5に記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項7】
前記マイクロポーラス構造の薄板状に成形された前記燃料極及び前記空気極の気孔率が、70%〜85%の範囲にある請求項1ないし請求項6いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項8】
前記マイクロポーラス構造の薄板に成形された前記燃料極及び前記空気極の密度が、6.0g/cm〜8.0g/cmの範囲にある請求項1ないし請求項7いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項9】
前記白金族金属の白金族金属微粉体の粒径と前記遷移金属の遷移金属微粉体の粒径とが、1μm〜100μmの範囲にある請求項1ないし請求項8いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項10】
前記固体高分子形燃料電池では、前記燃料極に供給される水素の雰囲気が相対湿度95%〜100%の範囲にあり、前記水素の温度が45℃〜55℃の範囲にある請求項1ないし請求項9いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項11】
前記固体高分子形燃料電池では、前記燃料極に供給される水素の供給圧力が+0.06MPa〜+0.08MPaの範囲にある請求項1ないし請求項10いずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルを有するセルスタックを備えた固体高分子形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子電解質膜と、固体高分子電解質膜を両面から挟持するアノード電極及びカソード電極と、液体燃料を収容する燃料容器と、アノード電極とカソード電極との間に設けられる気液分離性多孔質体からなる燃料気化層と、燃料気化層を両面から挟持する有孔固定板とを有し、カソード電極側に配置した有孔固定板の開口率がアノード電極側に配置した有孔固定板の開口率よりも大きい個体高分子形燃料電池が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−222119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の個体高分子形燃料電池のカソード電極及びアノード電極の作成方法は、以下のとおりである。炭素粒子に粒子径が3〜5nmの範囲にある白金微粒子を重量比で55%担持させた触媒担持炭素微粒子を作り、その触媒担持炭素微粒子1gに5重量%ナフィオン溶液を適量加えて攪拌し、カソード電極用の触媒ペーストを作る。カソード電極用の触媒ペーストを基材としてのカーボンペーパー上に8mg/cmの量で塗布した後、乾燥させて4cm×4cmのカソード電極を作製する。次に、白金微粒子に替えて粒子径が3〜5nmの範囲にある白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金微粒子(Ruの割合は60at%)を重量比で55%担持させた触媒担持炭素微粒子を作り、その触媒担持炭素微粒子1gに5重量%ナフィオン溶液を適量加えて攪拌し、アノード電極用の触媒ペーストを作る。アノード電極用の触媒ペーストを基材としてのカーボンペーパー上に8mg/cmの量で塗布した後、乾燥させて4cm×4cmのアノード電極を作製する。
【0005】
固体高分子形燃料電池の電極触媒として各種の白金担持カーボンが広く利用されている。しかし、白金は、貴金属であり、その生産量に限りがある希少な金属資源であることから、その使用を抑えることが求められている。さらに、今後の固体高分子形燃料電池の普及に向けて高価な白金の含有量を極力少なくするとともに、少ない量の白金とともに白金以外の金属を使用した電極の開発が求められている。
【0006】
本発明の目的は、白金族金属の含有量を極力少なくすることができ、白金族金属の含有量が少ないにもかかわらず、優れた触媒活性(触媒作用)を有する燃料極及び空気極を備え、その燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる固体高分子形燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の固体高分子形燃料電池は、複数のセルを有するセルスタックを備え、セルが、燃料極及び空気極と、燃料極と空気極との間に位置する電極接合体膜と、燃料極の外側と空気極の外側とに位置するセパレータとから形成され、燃料極及び空気極が、各種の白金族金属から選択された少なくとも1種類の少量の白金族金属と、各種の遷移金属から選択された少なくとも2種類の遷移金属とから形成され、燃料極及び空気極は、選択された少なくとも1種類の白金族金属を微粉砕した白金族金属微粉体と選択された少なくとも2種類の遷移金属を微粉砕した遷移金属微粉体と所定のバインダーとを均一に混合・分散した金属微粉体混合物に所定の気孔形成材を添加し、気孔形成材を添加した金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に成形し、所定面積の薄板状に成形した金属微粉体成形物を脱脂・焼結することで、多数の微細な気孔が形成されたマイクロポーラス構造の薄板状電極であることを特徴とする。
【0008】
本発明の固体高分子形燃料電池の一例として、燃料極及び空気極では、選択された少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも2種類の遷移金属が選択されている。
【0009】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、燃料極及び空気極に形成された気孔の平均径が、1〜100μmの範囲にある。
【0010】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、燃料極の厚み寸法と空気極の厚み寸法とが、0.03mm〜1.5mmの範囲にある。
【0011】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、白金族金属が、Pt(白金)であり、遷移金属が、Ni(ニッケル)とFe(鉄)とであり、燃料極及び空気極では、Niの仕事関数とFeの仕事関数との合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、Ptの白金族金属微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とNiの遷移金属微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とFeの遷移金属微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とが定められている。
【0012】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、Ptの白金族金属微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、4〜10%の範囲、Niの遷移金属微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、45%〜48%の範囲、Feの遷移金属微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が、45%〜48%の範囲にある。
【0013】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、マイクロポーラス構造の薄板状に成形された燃料極及び空気極の気孔率が、70%〜85%の範囲にある。
【0014】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、マイクロポーラス構造の薄板に成形された燃料極及び空気極の密度が、6.0g/cm〜8.0g/cmの範囲にある。
【0015】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例としては、白金族金属の白金族金属微粉体の粒径と遷移金属の遷移金属微粉体の粒径とが、1μm〜100μmの範囲にある。
【0016】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例として、固体高分子形燃料電池では、燃料極に供給される水素の雰囲気が相対湿度95%〜100%の範囲にあり、水素の温度が45℃〜55℃の範囲にある。
【0017】
本発明の固体高分子形燃料電池の他の一例として、固体高分子形燃料電池では、燃料極に供給される水素の供給圧力が+0.06MPa〜+0.08MPaの範囲にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る固体高分子形燃料電池によれば、それに使用される燃料極及び空気極が、各種の白金族金属から選択された少なくとも1種類の白金族金属と各種の遷移金属から選択された少なくとも2種類の遷移金属とから形成され、選択された少なくとも1種類の白金族金属を微粉砕した白金族金属微粉体と選択された少なくとも2種類の遷移金属を微粉砕した遷移金属微粉体と所定のバインダーとを均一に混合・分散した金属微粉体混合物に所定の気孔形成材を添加し、気孔形成材を添加した金属微粉体混合物を所定面積の薄板状に成形し、所定面積の薄板状に成形した金属微粉体成形物を脱脂・焼結することで、多数の微細な気孔が形成されたマイクロポーラス構造の薄板状電極であるから、白金族金属以外の遷移金属を使用することで、白金族金属の含有量を極力少なくすることができるとともに、白金族金属の触媒活性を利用するとともに遷移金属の触媒活性を利用した燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0019】
燃料極及び空気極において、選択された少なくとも2種類の遷移金属の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属の中から少なくとも2種類の遷移金属が選択されている固体高分子形燃料電池は、合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように各種の遷移金属の中から少なくとも2種類の遷移金属が選択されているから、白金族金属の含有量が少ないにもかかわらず、燃料極及び空気極が白金を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極及び空気極が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮し、選択された少なくとも2種類の遷移金属を含むとともに優れた触媒活性を有する燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0020】
燃料極及び空気極に形成された気孔の平均径が1〜100μmの範囲にある固体高分子形燃料電池は、燃料極及び空気極に形成された気孔の平均径が1〜100μmの範囲にあるから、燃料極及び空気極の単位体積当たりに多数の気孔が形成され、燃料極及び空気極の比表面積を大きくすることができ、それら気孔を気体が通流することで気体を燃料極及び空気極の接触面に広範囲に接触させることができ、燃料極及び空気極の触媒作用を最大限に利用することができる。固体高分子形燃料電池は、平均径が1〜100μmの範囲の気孔を有するとともに優れた触媒活性を有する燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0021】
燃料極の厚み寸法と空気極の厚み寸法とが0.03mm〜1.5mmの範囲にある固体高分子形燃料電池は、燃料極及び空気極の厚み寸法を前記範囲にすることで、燃料極及び空気極の電気抵抗を小さくすることができ、燃料極や空気極に電流をスムースに流すことができる。固体高分子形燃料電池は、燃料極及び空気極が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を有するとともに、燃料極及び空気極の電気抵抗が小さく、燃料極及び空気極に電流がスムースに流れるから、優れた触媒活性を有するとともに電位抵抗が小さい燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0022】
白金族金属がPt(白金)であり、遷移金属がNi(ニッケル)とFe(鉄)とであり、Niの仕事関数とFeの仕事関数との合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、Ptの白金族金属微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とNiの遷移金属微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とFeの遷移金属微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比とが定められている固体高分子形燃料電池は、遷移金属の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物の全重量に対するPtの白金族金属微粉体の重量比や金属微粉体混合物の全重量に対するNiの遷移金属微粉体の重量比、金属微粉体混合物の全重量に対するFeの遷移金属微粉体の重量比が決定されているから、燃料極や空気極が白金を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極や空気極が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極や空気極が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、その燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。固体高分子形燃料電池は、燃料極及び空気極がNi(ニッケル)とFe(鉄)とを含み、Pt(白金)の含有量が少ないから、燃料極や空気極の材料費を低減させることができ、固体高分子形燃料電池を廉価に作ることができるとともに、固体高分子形燃料電池の運転コストを下げることができる。
【0023】
Ptの白金族金属微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が4〜10%の範囲、Niの遷移金属微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が45%〜48%の範囲、Feの遷移金属微粉体の金属微粉体混合物の全重量に対する重量比が45%〜48%の範囲にある固体高分子形燃料電池は、合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するNi(ニッケル)とFe(鉄)とを選択するとともに、金属微粉体混合物の全重量に対するPtの白金族金属微粉体の重量比や金属微粉体混合物の全重量に対するNiの遷移金属微粉体の重量比、金属微粉体混合物の全重量に対するFeの遷移金属微粉体の重量比を前記範囲にすることで、Niの遷移金属微粉体とFeの遷移金属微粉体との仕事関数の合成仕事関数を白金族金属の仕事関数に近似させることができ、Ptの含有量が少ないにもかかわらず、燃料極や空気極が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極や空気極が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、その燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。固体高分子形燃料電池は、燃料極及び空気極が前記重量比のNi(ニッケル)とFe(鉄)とを含み、金属微粉体混合物の全重量に対するPt(白金)の重量比が小さく、Pt(白金)の含有量が少ないから、燃料極や空気極の材料費を低減させることができ、固体高分子形燃料電池を廉価に作ることができるとともに、固体高分子形燃料電池の運転コストを下げることができる。
【0024】
マイクロポーラス構造の薄板状に成形された燃料極及び空気極の気孔率が70%〜85%の範囲にある固体高分子形燃料電池は、燃料極及び空気極の気孔率を前記範囲にすることで、燃料極及び空気極が多数の微細な気孔(通路孔)を有する多孔質(気孔の平均径1〜100μmのマイクロポーラス構造)に成形され、燃料極及び空気極の比表面積を大きくすることができ、それら気孔を気体が通流しつつ気体を燃料極や空気極のそれら気孔における接触面に広範囲に接触させることが可能となり、燃料極や空気極が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0025】
マイクロポーラス構造の薄板に成形された燃料極及び空気極の密度が6.0g/cm〜8.0g/cmの範囲にある固体高分子形燃料電池は、燃料極及び空気極の密度を前記範囲にすることで、燃料極及び空気極が多数の微細な気孔(通路孔)を有する多孔質(気孔の平均径1〜100μmのマイクロポーラス構造)に成形され、燃料極及び空気極の比表面積を大きくすることができ、それら気孔を気体が通流しつつ気体を燃料極や空気極のそれら気孔における接触面に広範囲に接触させることが可能となり、燃料極や空気極が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0026】
白金族金属の白金族金属微粉体の粒径と遷移金属の遷移金属微粉体の粒径とが1μm〜100μmの範囲にある固体高分子形燃料電池は、白金族金属の白金族金属微粉体や遷移金属の遷移金属微粉体の粒径を前記範囲にすることで、燃料極及び空気極が多数の微細な気孔(通路孔)を有する多孔質(気孔の平均径1〜100μmのマイクロポーラス構造)に成形され、燃料極及び空気極の比表面積を大きくすることができ、それら気孔を気体が通流しつつ気体を燃料極や空気極のそれら気孔における接触面に広範囲に接触させることが可能となり、燃料極や空気極が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能であって優れた触媒活性(触媒作用)を有する燃料極及び空気極を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0027】
燃料極に供給される水素の雰囲気が相対湿度95%〜100%の範囲にあり、水素の温度が45℃〜55℃の範囲にある固体高分子形燃料電池は、相対湿度95%〜100%の雰囲気で燃料極に水素を供給するとともに、45℃〜55℃の温度で燃料極に水素を供給することで、燃料極の触媒活性が増加し、燃料電池の起電力が向上し、燃料極や空気極を利用して十分な電気を確実に発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを確実に供給することができる。
【0028】
燃料極に供給される水素の供給圧力が+0.06MPa〜+0.08MPaの範囲にある固体高分子形燃料電池は、+0.06MPa〜+0.08MPaの供給圧力で燃料極に水素を供給することで、燃料極の触媒活性が増加し、燃料電池の起電力が向上し、燃料極や空気極を利用して十分な電気を確実に発電することができ、燃料電池に接続された負荷に十分な電気エネルギーを確実に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】一例として示す固体高分子形燃料電池の斜視図。
図2】セルスタックを形成するセルの一例を示す分解斜視図。
図3】セルの側面図。
図4】一例として示す燃料極及び空気極の斜視図。
図5】燃料極及び空気極の一例として示す部分拡大正面図。
図6】固体高分子形燃料電池の発電を説明する図。
図7】燃料極及び空気極の起電圧試験の結果を示す図。
図8】燃料極及び空気極のI−V特性試験の結果を示す図。
図9】固体高分子形燃料電池に使用する燃料極及び空気極の製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一例として示す固体高分子形燃料電池10の斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る固体高分子形燃料電池の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、セルスタック12を形成するセル11の一例を示す分解斜視図であり、図3は、セル11の側面図である。図4は、一例として示す燃料極13及び空気極14の斜視図であり、図5は、燃料極13及び空気極14の一例として示す部分拡大図である。図4では、厚み方向を矢印Xで示し、径方向を矢印Yで示す。
【0031】
固体高分子形燃料電池10は、複数のセル11を有するセルスタック12(燃料電池スタック)を備え、水素と酸素とを供給することで電気エネルギーを生成する。セルスタック12では、複数のセル11(単セル)が一方向へ重なり合って直列に接続されている。セル11の一例としては、図2に示すように、燃料極13(アノード)及び空気極14(カソード)と、燃料極13及び空気極14の間に位置(介在)する固体高分子電解質膜15(電極接合体膜)(スルホン酸基を有するフッ素系イオン交換膜)と、燃料極13の厚み方向外側に位置するセパレータ16(バイポーラプレート)と、空気極14の厚み方向外側に位置するセパレータ17(バイポーラプレート)とから形成されている。
【0032】
それらセパレータ16,17には、反応ガス(水素や酸素等)の供給流路が刻設されている(彫り込まれている)。セル11では、図3に示すように、燃料極13や空気極14、固体高分子電解質膜15が厚み方向へ重なり合って一体化し、膜/電極接合体18(Membrane Electrode Assembly, MEA)を構成し、膜/電極接合体18をそれらセパレータ16,17が挟み込んでいる。膜/電極接合体18では、ホットプレスによって固体高分子電解質膜15の一方の面に燃料極13の面が隙間なく密着し、固体高分子電解質膜15の他方の面に空気極14の面が隙間なく密着している。固体高分子電解質膜15は、プロトン導電性があり、電子導電性がない。
【0033】
燃料極13とセパレータ16との間には、ガス拡散層19が形成され、空気極14とセパレータ17との間には、ガス拡散層20が形成されている。燃料極13とセパレータ16との間であってガス拡散層20の上部及び下部には、ガスシール21が設置されている。空気極14とセパレータ17との間であってガス拡散層20の上部及び下部には、ガスシール22が設置されている。
【0034】
固体高分子形燃料電池10(セル11)に使用する燃料極13(触媒電極)及び空気極14(触媒電極)は、前面23及び後面24を有するとともに、所定の面積及び所定の厚み寸法L1を有し、その平面形状が四角形に成形されている。燃料極13及び空気極14は、多数の微細な気孔25(流路)(連続かつ独立通路孔)を有する多孔質(マイクロポーラス構造)の薄板状電極26(薄板状発泡金属電極)である。気孔25には、ガス(気体)が通流する。なお、燃料極13や空気極14の平面形状に特に制限はなく、四角形の他に、その用途にあわせて円形や楕円形等の他のあらゆる平面形状に成形することができる。
【0035】
燃料極13及び空気極14(マイクロポーラス構造の薄板状電極26)は、粉状に加工された白金族金属31と、粉状に加工された遷移金属32の中から選択された少なくとも2種類の遷移金属32とから形成されている。白金族金属31としては、白金(Pt)、パラジウム(Pb)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)を使用することができる。白金族金属31には、それらのうちの少なくとも1種類が使用される。遷移金属32としては、3d遷移金属や4d遷移金属が使用される。3d遷移金属には、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Zn(亜鉛)が使用される。4d遷移金属には、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀)が使用される。遷移金属32には、それらのうちの少なくとも2種類が使用される。
【0036】
燃料極13及び空気極14では、選択された少なくとも2種類の遷移金属32の仕事関数(物質から電子を取り出すのに必要なエネルギー)の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、遷移金属32の中から少なくとも2種類の遷移金属32が選択されている。白金の仕事関数は、5.65(eV)である。Tiの仕事関数は、4.14(eV)、Crの仕事関数は、4.5(eV)、Cuの仕事関数は、5.10(eV)、Mnの仕事関数は、4.1(eV)、Feの仕事関数は、4.67(eV)、Coの仕事関数は、5.0(eV)、Niの仕事関数は、5.22(eV)、Znの仕事関数は、3.63(eV)、Nbの仕事関数は、4.01(eV)、Moの仕事関数は、4.45(eV)、Agの仕事関数は、4.31(eV)である。
【0037】
燃料極13及び空気極14は、白金族金属31の白金族金属微粉体(微粉状に加工されたPt(白金)、微粉状に加工されたPb(パラジウム)、微粉状に加工されたRh(ロジウム)、微粉状に加工されたRu(ルテニウム)、微粉状に加工されたIr(イリジウム)、微粉状に加工されたOs(オスミウム))と、各種の遷移金属32から選択された少なくとも2種類のそれら遷移金属32の遷移金属微粉体(微粉状に加工されたTi(チタン)、微粉状に加工されたCr(クロム)、微粉状に加工されたCu(銅)、微粉状に加工されたMn(マンガン)、微粉状に加工されたFe(鉄)、微粉状に加工されたCo(コバルト)、微粉状に加工されたNi(ニッケル)、微粉状に加工されたZn(亜鉛)、微粉状に加工されたNb(ニオブ)、微粉状に加工されたMo(モリブデン)、微粉状に加工されたAg(銀))と、所定のバインダー33(紛状の樹脂系バインダー)とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物41を作り、金属微粉体混合物41に所定の気孔形成材40(発泡剤)を添加し(加え)、気孔形成材40を添加した金属微粉体混合物41を所定面積の薄板状に成形(押し出し成形又は射出成形)して薄板状の金属微粉体成形物42を作り、その金属微粉体成形物42を脱脂及び所定温度で焼結(焼成)することから作られている(図9参照)。
【0038】
燃料極13及び空気極14では、選択された2種類の遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、白金族金属31の白金族金属微粉体の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比が決定され、それら遷移金属32の遷移金属微粉体の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比が決定されている。
【0039】
具体的には、白金族金属31の白金族金属微粉体の金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対する重量比が4%〜10%の範囲、好ましくは、6%〜8%の範囲にあり、選択された遷移金属32のうちの1種類の遷移金属微粉体の金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対する重量比が45%〜48%の範囲にあり、選択された遷移金属32のうちの他の1種類の遷移金属微粉体の金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対する重量比が45%〜48%の範囲にある。
【0040】
白金族金属31の白金族金属微粉体の重量比、選択された1種類の遷移金属32の遷移金属微粉体の重量比、選択された他の1種類の遷移金属32の遷移金属微粉体の重量比が前記範囲外になると、それら遷移金属32の遷移金属微粉体の合成仕事関数を白金族金属の仕事関数に近似させることができないとともに、金属微粉体混合物41を成形した金属微粉体成形物42を脱脂・焼結(焼成)して作られた電極10が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができない。
【0041】
固体高分子形燃料電池17は、白金族金属31の微粉体の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比や選択された1種類の遷移金属32の微粉体の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比、選択された他の1種類の遷移金属32の微粉体の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比を前記範囲にすることで、選択された少なくとも2種類の遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似させることができ、燃料極13及び空気極14が白金を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極13や空気極14が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極13や空気極14が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、燃料極13や空気極14を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0042】
燃料極13及び空気極14には、径が異なる多数の微細な気孔25(流路)(連続かつ独立通路孔)が形成されている。燃料極13及び空気極14は、多数の微細な気孔25が形成されているから、その比表面積が大きい。それら気孔25は、燃料極13及び空気極14の前面23に開口する複数の通流口27と、燃料極13及び空気極14の後面24に開口する複数の通流口27とを有し、燃料極13及び空気極14の前面23から後面24に向かって燃料極13や空気極14をその厚み方向に貫通している。
【0043】
それら気孔25は、燃料極13及び空気極14の前面23と後面24との間において燃料極13や空気極14の厚み方向へ不規則に曲折しながら延びているとともに、燃料極13及び空気極14の外周縁28から中心に向かって燃料極13及び空気極14の径方向へ不規則に曲折しながら延びている。径方向へ隣接して厚み方向へ曲折して延びるそれら気孔25(流路)(連続かつ独立通路孔)は、径方向において部分的につながり、一方の気孔25と他方の気孔25とが互いに連通している。厚み方向へ隣接して径方向へ曲折して延びるそれら気孔25(流路)(連続かつ独立通路孔)は、厚み方向において部分的につながり、一方の気孔25と他方の気孔25とが互いに連通している。
【0044】
それら気孔25(通路孔)の開口面積(開口径)は、厚み方向に向かって一様ではなく、厚み方向に向かって不規則に変化しているとともに、径方向に向かって一様ではなく、径方向に向かって不規則に変化している。それら気孔25は、その開口面積(開口径)が大きくなったり、小さくなったりしながら厚み方向と径方向とへ不規則に開口している。また、燃料極13及び空気極14の前面23に開口する通流口27と後面24に開口する通流口27とは、その開口面積(開口径)が一様ではなく、その面積がすべて相違している。そそれら気孔13(通路孔)の平均径(平均開口径)や前後面23,24の通流口27の開口径(平均開口径)は、1μm〜100μmの範囲にある。
【0045】
固体高分子形燃料電池17は、それに使用する燃料極13及び空気極14に厚み方向や径方向へ不規則に曲折しながら延びる複数の気孔25(連続かつ独立通路孔)が形成され、その気孔の平均径が1〜100μmの範囲にあるから、燃料極13や空気極14の単位体積当たりに多数の気孔25が形成され、燃料極13や空気極14の比表面積が大きく、それら気孔25をガス(気体)が通流しつつガス(気体)を燃料極13及び空気極14のそれら気孔25における接触面に広範囲に接触させることができ、燃料極13や空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。
【0046】
燃料極13及び空気極14(マイクロポーラス構造の薄板状電極26)は、その厚み寸法L1が0.03mm〜1.5mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜1.0mmの範囲にある。燃料極13及び空気極14の厚み寸法L1が0.03mm(0.05mm)未満では、その強度が低下し、衝撃が加えられたときに燃料極13や空気極14が容易に破損又は損壊し、その形状を維持することができない場合がある。燃料極13及び空気極14の厚み寸法L1が1.5mm(1.0mm)を超過すると、燃料極13や空気極14の電気抵抗が大きくなり、燃料極13及び空気極14に電流がスムースに流れず、燃料極13や空気極14が固体高分子形燃料電池17に使用されたときに燃料電池17において十分な電気を発電することができず、燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができない。
【0047】
固体高分子形燃料電池17は、それに使用する燃料極13及び空気極14の厚み寸法L1が0.03mm〜1.5mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜1.0mmの範囲にあるから、燃料極13及び空気極14が高い強度を有してその形状を維持することができ、燃料極13や空気極14に衝撃が加えられたときの燃料極13や空気極14の破損や損壊を防ぐことができる。更に、燃料極13及び空気極14の電気抵抗を小さくすることができ、燃料極13や空気極14に電流がスムースに流れ、燃料極13及び空気極14が固体高分子形燃料電池17に使用されたときに燃料電池17において十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0048】
燃料極13及び空気極14(マイクロポーラス構造の薄板状電極26)は、その気孔率が70%〜85%の範囲にある。燃料極13及び空気極14の気孔率が70%未満では、燃料極13及び空気極14に多数の微細な気孔25(連続かつ独立通路孔)が形成されず、燃料極13及び空気極14の比表面積を大きくすることができない。燃料極13及び空気極14の気孔率が90%を超過すると、気孔25(連続かつ独立通路孔)の開口面積(開口径)や前後面23,24の通流口27の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、燃料極13及び空気極14の強度が低下し、衝撃が加えられたときに燃料極13や空気極14が容易に破損又は損壊し、その形状を維持することができない場合があるとともに、燃料極13及び空気極14の触媒作用が低下し、触媒活性を発揮することができない。
【0049】
固体高分子形燃料電池17は、それに使用する燃料極13及び空気極14の気孔率が前記範囲にあるから、燃料極13及び空気極14が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な気孔25(平均径が1〜100μmの範囲の気孔25)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面23,24の通流口27(平均径が1〜100μmの範囲の通流口27)を有する多孔質(マイクロポーラス構造)に成形され、燃料極13や空気極14の比表面積を大きくすることができ、それら気孔25をガス(気体)が通流しつつガス(気体)を燃料極13や空気極14のそれら気孔25における接触面に広範囲に接触させることができることができるとともに、燃料極13及び空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。更に、燃料極13及び空気極14の触媒作用が向上し、燃料極13及び空気極14に優れた触媒活性を発揮させることができ、燃料極13及び空気極14が固体高分子形燃料電池17に使用されたときに燃料電池17において十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0050】
燃料極13及び空気極14(マイクロポーラス構造の薄板状電極26)は、その密度が6.0g/cm〜8.0g/cmの範囲、好ましくは、6.5g/cm〜7.5g/cmの範囲にある。燃料極13及び空気極14の密度が6.0g/cm(6.5g/cm)未満では、燃料極13や空気極14の強度が低下し、衝撃が加えられたときに燃料極13や空気極14が容易に破損または損壊し、その形状を維持することができない場合があるとともに、燃料極13及び空気極14の触媒作用が低下し、触媒活性を発揮することができない。燃料極13及び空気極14の密度が8.0g/cm(7.5g/cm)を超過すると、燃料極13や空気極14に多数の微細な気孔25や多数の微細な通流口27が形成されず、燃料極13や空気極14の比表面積を大きくすることができず、燃料極13や空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効に利用することができない。
【0051】
固体高分子形燃料電池17は、それに使用する燃料極13及び空気極14の密度が前記範囲にあるから、燃料極13や空気極14が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な気孔25(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面23,24の通流口27を有する多孔質(マイクロポーラス構造)に成形され、燃料極13や空気極14の比表面積を大きくすることができ、それら流路25をガス(気体)が通流しつつガス(気体)を燃料極13及び空気極14のそれら流路25における接触面に広く接触させることができ、燃料極13や空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。更に、燃料極13や空気極14の触媒作用が向上し、燃料極13や空気極14に優れた触媒活性を発揮させることができる。
【0052】
固体高分子形燃料電池17は、それに使用する燃料極13及び空気極14の密度を前記範囲にすることで、燃料極13及び空気極14が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な気孔25(通路孔)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面23,24の通流口27を有する多孔質(マイクロポーラス構造)に成形され、燃料極13及び空気極14の比表面積を大きくすることができ、それら流路25をガス(気体)が通流しつつガス(気体)を燃料極13や空気極14のそれら流路25における接触面に広範囲に接触させることが可能となり、燃料極13や空気極14が白金族金属を含む電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を確実に発揮し、燃料極13及び空気極14を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷29に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0053】
Ptの微粉体(粉状に加工されたPt)、Pbの微粉状(粉状に加工されたPb)、Rhの微粉状(粉状に加工されたRh)、Ruの微粉状(粉状に加工されたRu)、Irの微粉状(粉状に加工されたIr)、Osの微粉状(粉状に加工されたOs)、Tiの微粉体(粉状に加工されたTi)、Crの微粉体(粉状に加工されたCr)、Mnの微粉体(粉状に加工されたMn)、Feの微粉体(粉状に加工されたFe)、Coの微粉体(粉状に加工されたCo)、Niの微粉体(粉状に加工されたNi)、Znの微粉体(粉状に加工されたZn)、Nbの微粉体(粉状に加工されたNb)、Moの微粉体(粉状に加工されたMo)、Agの微粉体(粉状に加工されたAg)、Cuの微粉体(粉状に加工されたCu)の粒径は、1μm〜100μmの範囲にある。
【0054】
それら白金族金属31の白金族金属微粉体の粒径やそれら遷移金属32の遷移金属微粉体が1μm未満では、それら金属の微粉体によって気孔25(通路孔)が塞がれ、燃料極13及び空気極14に多数の微細な気孔25を形成することができず、燃料極13や空気極14の比表面積を大きくすることができないとともに、燃料極13及び空気極14の触媒作用が低下し、燃料極13や空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効に利用することができない。それら白金族金属31の白金族金属微粉体の粒径やそれら遷移金属32の遷移金属微粉体の粒径が100μmを超過すると、気孔25(通路孔)の開口面積(開口径)や前後面23,24の通流口27の開口面積(開口径)が必要以上に大きくなり、燃料極13及び空気極14に多数の微細な気孔25を形成することができず、燃料極13や空気極14の比表面積を大きくすることができないとともに、燃料極13及び空気極14の触媒作用が低下し、燃料極13や空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効に利用することができない。
【0055】
固体高分子形燃料電池17は、燃料極13及び空気極14を形成する白金族金属31の白金族金属微粉体の粒径や遷移金属32の遷移金属微粉体の粒径が前記範囲にあるから、燃料極13や空気極14が開口面積(開口径)の異なる多数の微細な気孔25(平均径が1〜100μmの範囲の気孔25)や開口面積(開口径)の異なる多数の微細な前後面23,24の通流口27(平均径が1〜100μmの範囲の通流口27)を有する多孔質(マイクロポーラス構造)に成形され、燃料極13や空気極14の比表面積を大きくすることができ、それら気孔25をガス(気体)が通流しつつガス(気体)を燃料極13や空気極14のそれら気孔25における接触面に広く接触させることができるとともに、燃料極13や空気極14の触媒活性(触媒作用)を有効かつ最大限に利用することができる。更に、燃料極13及び空気極14の触媒作用が向上し、燃料極13及び空気極14に優れた触媒活性を発揮させることができ、燃料極13及び空気極14が固体高分子形燃料電池17に使用されたときに燃料電池17において十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0056】
燃料極13及び空気極14(マイクロポーラス構造の薄板状電極26)に使用する白金族金属31や遷移金属32の具体例としては、図9に示すように、粉状に加工されたPt34(白金)の白金族金属微粉体38(粒径:1μm〜100μm)と、粉状に加工されたNi35(ニッケル)の遷移金属微粉体39(粒径:1μm〜100μm)と、粉状に加工されたFe36(鉄)の遷移金属微粉体40(粒径:1μm〜100μm)とを原料としている。
【0057】
燃料極13及び空気極14は、Pt34やNi35、Fe36の微粉体37〜38と所定のバインダー33とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物41を作り、金属微粉体混合物41に気孔形成材40(発泡剤)を添加し、気孔形成材40を添加した金属微粉体混合物41を所定面積の薄板状に成形(押し出し成形又は射出成形)して金属微粉体成形物42を作り、その金属微粉体成形物42を脱脂するとともに所定温度で焼結(焼成)することで、多数の微細な気孔25(平均径が1〜100μmの範囲の気孔25)が形成されたマイクロポーラス構造かつ薄板状の電極(燃料極13及び空気極14)に成形される。
【0058】
燃料極13及び空気極14では、Ni35の仕事関数とFe36の仕事関数との合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、Pt34の白金族金属微粉体37の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比、Ni35の遷移金属微粉体38の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比、Fe36の遷移金属微粉体39の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比が決定されている。
【0059】
金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するPt34(白金族金属31)の白金族金属微粉体37の重量比は、4%〜10%の範囲、好ましくは、5%〜8%の範囲であり、金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するNi35(遷移金属32)の遷移金属微粉体38の重量比は、45%〜48%の範囲である。金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するFe36(遷移金属32)の遷移金属微粉体39の重量比は、45〜48%の範囲である。
【0060】
Pt34の微粉体37の重量比、Ni35の微粉体38の重量比、Fe36の微粉体39の重量比が前記範囲外になると、Ni35の微粉体38とFe36の微粉体39との合成仕事関数を白金族金属の仕事関数に近似させることができないとともに、金属微粉体混合物41を成形した金属微粉体成形物42を脱脂・焼結して作られた燃料極13及び空気極14が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができない。
【0061】
固体高分子形燃料電池17は、金属微粉体混合物41の全重量に対するPt34の微粉体37の重量比やNi35の微粉体38の重量比、Fe36の微粉体39の重量比を前記範囲にすることで、Ni35の微粉体38とFe36の微粉体39との仕事関数の合成仕事関数を白金族金属の仕事関数に近似させることができ、燃料極13及び空気極14が白金を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極13や空気極14が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極13や空気極14が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、燃料極13や空気極14を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池17に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0062】
図6は、固体高分子形燃料電池10の発電を説明する図であり、図7は、燃料極13及び空気極14の起電圧試験の結果を示す図である。図8は、燃料極13及び空気極14のI−V特性試験の結果を示す図である。固体高分子形燃料電池10では、図6に示すように、燃料極13(電極)に水素(燃料)が供給され、空気極14(電極)に空気(酸素)が供給される。
【0063】
燃料極13に供給される水素(燃料)の雰囲気(燃料の相対湿度)は、相対湿度95%〜100%の範囲、好ましくは、100%であり、水素の温度は、45℃〜55℃の範囲、好ましくは、49℃〜51℃の範囲にある。燃料極13に供給される水素には、燃料極13に供給される前に蒸気発生器(図示せず)から蒸気が供給され、その雰囲(燃料の相対湿度)が95%〜100%(好ましくは、100%)に上昇するとともに、その温度が45℃〜55℃(好ましくは、49℃〜51℃)に上昇する。
【0064】
燃料極13に供給される水素の供給圧力及び空気極14に供給される空気の供給圧力は、+0.06MPa〜+0.08MPaの範囲、好ましくは、+0.07MPaである。固体高分子形燃料電池10では、燃料極13に供給する水素及び空気極14に供給する空気を(給気)圧送する給気ポンプ(図示せず)が設置され、給気ポンプによって燃料極13に供給される水素の供給圧力が+0.06MPa〜+0.08MPaの範囲、好ましくは、+0.07MPaに昇圧されるとともに、給気ポンプによって空気極14に供給する空気の供給圧力が+0.06MPa〜+0.08MPaの範囲、好ましくは、+0.07MPaに昇圧される。
【0065】
燃料極13(電極)では、水素がH→2H+2eの反応(触媒作用)によってプロトン(水素イオン、H)と電子とに分解される。その後、プロトンが固体高分子電解質膜15内を通って空気極14へ移動し、電子が導線29内を通って空気極14へ移動する。固体高分子電解質膜15には、燃料極13で生成されたプロトンが通流する。空気極14(電極)では、固体高分子電解質膜15から移動したプロトンと導線29を移動した電子とが空気中の酸素と反応し、4H+O+4e→2HOの反応によって水が生成される。
【0066】
燃料極13及び空気極14は、白金族金属31の微粉体を含み、更に、遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、遷移金属32の中から少なくとも2種類の遷移金属32が選択され、選択された遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、白金族金属31の金属微粉体混合物43の全重量に対する重量比が決定され、選択された遷移金属32の微粉体の金属微粉体混合物43の全重量に対する重量比が決定されているから、燃料極13及び空気極14が白金を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0067】
具体例として示した燃料極13及び空気極14は、Pt34の微粉体37を含み、更に、仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、Ni35とFe36とが選択され、選択されたNi35とFe36との仕事関数の合計仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物41の全重量に対するPt34の微粉体37の重量比が決定され、金属微粉体混合物41の全重量に対するNi35の微粉体38の重量比と金属微粉体混合物41の全重量に対するFe36の微粉体39の重量比とが決定されているから、燃料極13や空気極14が白金を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を示し、水素がプロトンと電子とに効率よく分解される。
【0068】
起電圧試験では、水素ガスを注入してから15分の間、燃料極13と空気極14との間の電圧(V)を測定した。図7の起電圧試験の結果を示す図では、横軸に測定時間(min)を表し、縦軸に燃料極13と空気極13との間の電圧(V)を表す。燃料極13及び空気極14を使用した固体高分子形燃料電池10では、図7に示すように、電極間の電圧が1.07(V)〜1.088(V)であった。
【0069】
I−V特性試験では、燃料極13と空気極14との間に負荷30を接続し、電圧と電流との関係を測定した。図8のI−V特性試験の結果を示す図では、横軸に電流(A)を表し、縦軸に電圧(V)を表す。燃料極13及び空気極14を使用した固体高分子形燃料電池10では、図8に示すように、緩やかな電圧降下が認められた。図7の起電圧試験の結果や図8のI−V特性試験の結果に示すように、燃料極13及び空気極13が電子を放出させて水素イオンとなる反応を促進させる優れた触媒作用を有するとともに、優れた酸素還元機能(触媒作用)を有することが確認された。
【0070】
固体高分子形燃料電池10は、それに使用される燃料極13及び空気極14が白金族金属31の微粉体と所定の遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように選択された少なくとも2種類の遷移金属32の微粉体と所定のバインダー33(紛状の樹脂系バインダー)とを均一に混合・分散した金属微粉体混合物41を作り、金属微粉体混合物41に所定の気孔形成材40(発泡剤)を添加し(加え)、気孔形成材40を添加した金属微粉体混合物41を所定面積の薄板状に成形(押し出し成形又は射出成形)して薄板状の金属微粉体成形物42を作り、その金属微粉体成形物42を脱脂及び所定温度で焼結(焼成)することから作られて多数の微細な気孔25や通流口27を有するマイクロポーラス構造の薄板状電極26であり、選択された遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、白金族金属31の微粉体の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比が決定され、選択された遷移金属32の微粉体の金属微粉体混合物41の全重量に対する重量比が決定されているから、燃料極13や空気極14が白金を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極13や空気極14が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極13や空気極14が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、その燃料極13及び空気極14を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池10に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0071】
また、白金族金属31としてPt34(白金)を原料とし、遷移金属32としてNi35(ニッケル)とFe36(鉄)とを原料とした燃料極13及び空気極14を使用した固体高分子形燃料電池10は、遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、Ni35とFe36が選択され、選択されたNi35とFe36との仕事関数の合計仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物41の全重量に対するPt34の微粉体37の重量比が決定され、金属微粉体混合物41の全重量に対するNi35の微粉体38の重量比と金属微粉体混合物41の全重量に対するFe36の微粉体39の重量比とが決定されているから、燃料極13や空気極14が白金を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、燃料極13や空気極14が優れた触媒活性(触媒作用)を有し、燃料極13や空気極14が白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することで、その燃料極13及び空気極14を使用して十分な電気を発電することができ、燃料電池10に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することができる。
【0072】
固体高分子形燃料電池10は、燃料極13及び空気極14が各種の遷移金属32から選択された廉価な遷移金属32(たとえば、Ni35、Fe36)を含み、金属微粉体混合物41の全重量に対するそれら遷移金属32の微粉体の重量比(Ni35の微粉体39の重量比、Fe36の微粉体40の重量比)が前記範囲にあり、金属微粉体混合物41の全重量に対する白金族金属31の微粉体の重量比(Pt34の微粉体37の重量比)が前記範囲にあり、高価な白金族金属31(Pt34)の含有量が少ないから、燃料極13や空気極14の材料費を低減させることができ、固体高分子形燃料電池10を廉価に作ることができるとともに、固体高分子形燃料電池10の運転コストを下げることができる。
【0073】
固体高分子形燃料電池10は、相対湿度95%〜100%の雰囲気の水素(燃料)を燃料極13に供給し、45℃〜55℃の温度の水素を燃料極13に供給し、+0.06MPa〜+0.08MPaの供給圧力で燃料極13に水素を供給するとともに+0.06MPa〜+0.08MPaの供給圧力で空気極14に空気(酸素)を供給することで、燃料極13や空気極14の触媒活性が増加し、燃料電池10の起電力が向上し、非白金の燃料極13や空気極14を使用して十分な電気を確実に発電することができ、燃料電池10に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを確実に供給することができる。
【0074】
図9は、固体高分子形燃料電池10に使用する燃料極13及び空気極14の製造方法を説明する図である。燃料極13及び空気極14は、図9に示すように、金属選択工程S1、金属微粉体作成工程S2、微粉体重量比決定工程S3、金属微粉体混合物作成工程S4、金属微粉体成形物作成工程S5、マイクロポーラス構造薄板電極作成工程S6を有する電極製造方法によって製造される。電極製造方法では、白金族金属31と少なくとも2種類の遷移金属32とを原料として固体高分子形燃料電池10に使用する燃料極13及び空気極14を製造する。
【0075】
金属選択工程S1では、各種の白金族金属31の中から少なくとも1種類の白金族金属31(白金(Pt)、パラジウム(Pb)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os))を選択し、各種の遷移金属32から選択する少なくとも2種類の遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属32の中から少なくとも2種類の遷移金属32(Ti(チタン)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ag(銀))を選択する。なお、燃料極13及び空気極14に使用する白金族金属31としてPt34(白金)が選択され、燃料極13及び空気極14に使用する遷移金属32としてNi35(ニッケル)、Fe36(鉄)が選択されたものとする。
【0076】
金属微粉体作成工程S2では、微粉砕機によって白金34(Pt)を1μm〜100μmの粒径に微粉砕し、粒径が1μm〜100μmのPt34の白金族金属微粉体37を作り、微粉砕機によってNi35(ニッケル)を1μm〜100μmの粒径に微粉砕し、粒径が1μm〜100μmのNi35の遷移金属微粉体38を作るとともに、微粉砕機によってFe36(鉄)を1μm〜100μmの粒径に微粉砕し、粒径が1μm〜100μmのFe36の遷移金属微粉体39を作る。
【0077】
電極製造方法は、Pt34(白金族金属31)やNi35(遷移金属32)、Fe36(遷移金属32)を1μm〜100μmの粒径に微粉砕することで、多数の微細な気孔25(通路孔)を有する多孔質に成形されて比表面積が大きいマイクロポーラス構造かつ薄板状の燃料極13や空気極14を作ることができ、それら気孔25をガス(気体)が通流しつつ気体を燃料極13や空気極14のそれら気孔25における接触面に広範囲に接触させることが可能な燃料極13及び空気極14を作ることができる。
【0078】
微粉体重量比決定工程S3では、金属微粉体作成工程S2によって作られたNi35の微粉体38とFe36の微粉体39との仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物41の全重量に対するPt34の微粉体37の重量比を決定し、金属微粉体混合物41の全重量に対するNi35の微粉体38の重量比を決定するとともに、金属微粉体混合物41の全重量に対するFe36の微粉体39の重量比を決定する。
【0079】
微粉体重量比決定工程S3では、金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するPt34(白金族金属31)の微粉体37の重量比を4%〜10%の範囲、好ましくは、5%〜8%の範囲で決定する。微粉体重量比決定工程S3では、金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するNi35(遷移金属32)の微粉体38の重量比を45%〜48%の範囲で決定し、金属微粉体混合物41の全重量(100%)に対するFe36(遷移金属32)の微粉体39の重量比を45%〜48%の範囲で決定する。
【0080】
電極製造方法は、合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように遷移金属32のNi35(ニッケル)とFe36(鉄)とを選択するとともに、合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、金属微粉体混合物41の全重量に対するPt34の微粉体38の重量比や金属微粉体混合物41の全重量に対するNi35の微粉体39の重量比、金属微粉体混合物41の全重量に対するFe36の微粉体39の重量比を前記範囲において決定することで、Ni35の微粉体38とFe36の微粉体39との仕事関数の合成仕事関数を白金族金属の仕事関数に近似させることができ、白金族金属31(Pt34)の含有量が少ないにもかかわらず、白金を担持した電極と略同一の仕事関数を備え、白金を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮することができ、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な白金族金属少含有の燃料極13及び空気極14を作ることができる。
【0081】
電極製造方法は、金属微粉体混合物41の全重量に対するNi35(遷移金属32)の微粉体38の重量比や金属微粉体混合物41の全重量に対するFe36(遷移金属32)の微粉体39の重量比が前記範囲にあり、金属微粉体混合物41の全重量に対するPt34(白金族金属31)の微粉体37の重量比が前記範囲にあるから、高価な白金族金属31(Pt34)の含有量が少なく、燃料極13及び空気極14を廉価に作ることができる。
【0082】
金属微粉体混合物作成工程S4では、微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比のPt34の微粉体37と微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比のNi35の微粉体38と微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比のFe36の微粉体39とバインダー33(粉状の樹脂系バインダー)とを混合機に投入し、混合機によってPt34の微粉体37、Ni35の微粉体38、Fe36の微粉体39、バインダー33を攪拌・混合し、Pt34の微粉体37、Ni35の微粉体38、Fe36の微粉体39、バインダー33が均一に混合・分散した金属微粉体混合物41(発泡金属成形材)を作る。次に、金属微粉体混合物41に所定量の気孔形成材42(粉体の発泡剤)を添加する。所定量の気孔形成材42を混合機又は攪拌機に投入し、混合機又は攪拌機によって金属微粉体混合物41に気孔形成材42を均一に混合・分散させた金属微粉体混合物41(発泡金属成形材料)を作る。気孔形成材42(粉体の発泡剤)の添加量によって燃料極13及び空気極14に形成される気孔25の平均径や気孔率が決まる。
【0083】
金属微粉体成形物作成工程S5では、金属微粉体混合物作成工程S4によって作られた金属微粉体混合物41(発泡金属成形材料)を射出成形機(図示せず)や押出成形機(図示せず)に投入し、金属微粉体混合物41を射出成形機によって射出成形(金属粉末射出成形)し、又は、金属微粉体混合物41を押出成形機によって押し出し成形(金属粉末押出成形)し、金属微粉体混合物41を所定面積の薄板状(厚み寸法L1が0.03mm〜1.5mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜1.0mmの範囲)に成形した金属微粉体成形物42(発泡金属成形物)を作る。
【0084】
マイクロポーラス構造薄板電極作成工程S6では、金属微粉体成形物作成工程S5の金属粉末射出成形や金属粉末押出成形によって作られた金属微粉体成形物42(発泡金属成形物)を脱脂し、脱脂した金属微粉体成形物42を焼成炉(燃焼炉、電気炉等)に投入し、金属微粉体成形物42を焼成炉において所定温度で所定時間焼結(焼成)して多数の微細な気孔25(通路孔)を形成したマイクロポーラス構造かつ薄板状(厚み寸法L1が0.03mm〜1.5mmの範囲、好ましくは、0.05mm〜1.0mmの範囲)の燃料極13及び空気極14を作る。
【0085】
焼結温度は、900℃〜1400℃である。焼結(焼成)時間は、2時間〜6時間である。マイクロポーラス構造薄板電極作成工程S6では、所定面積の薄板状に成形した金属微粉体成形物42の焼結時において、金属微粉体成形物42の内部において気孔形成材40(粉体の発泡剤)が発泡した後、気孔形成材40が金属微粉体成形物42の内部から消失し、多数の微細な気孔25(流路)(連続かつ独立通路孔)が形成されたマイクロポーラス構造かつ薄板状の燃料極13及び空気極14が製造される。
【0086】
電極製造方法は、金属粉末射出成形や金属粉末押出成形によってPt34の微粉体37とNi35の微粉体38とFe36の微粉体39とがバインダー40を介して連結され、金属粉末射出成形や金属粉末押出成形によって作られた金属微粉体成形物42(発泡金属成形物)が所定の強度を有するとともに、金属微粉体成形物42を焼結することで、多数の微細な気孔25(通路孔)を有するマイクロポーラス構造かつ薄板状の燃料極13及び空気極14を作ることができるとともに、高い強度を有して形状を維持することができ、衝撃が加えられたときの破損や損壊を防ぐことが可能な非白金の燃料極13及び空気極14を作ることができる。
【0087】
電極製造方法は、各種の白金族金属31の中から少なくとも1種類の白金族金属31(Pt34)を選択し、各種の遷移金属32から選択する少なくとも2種類の遷移金属32の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、各種の遷移金属32の中から少なくとも2種類の遷移金属32(たとえば、Ni35、Fe36)を選択する金属選択工程S1と、金属選択工程S1によって選択された少なくとも1種類の白金族金属31(Pt34)を微粉砕して白金族金属微粉体(Pt34の微粉体37)を作り、金属選択工程S1によって選択された少なくとも2種類の遷移金属32を微粉砕して遷移金属微粉体(Ni35の微粉体38、Fe36の微粉体39)を作る金属微粉体作成工程S2と、金属微粉体作成工程S2によって作られた少なくとも2種類の遷移金属微粉体の仕事関数の合成仕事関数が白金族金属の仕事関数に近似するように、白金族金属微粉体(Pt34の微粉体37)の重量比と少なくとも2種類の遷移金属微粉体(Ni35の微粉体38、Fe36の微粉体39)の重量比とを決定する微粉体重量比決定工程S3と、微粉体重量比決定工程S3によって決定した重量比の白金族金属微粉体(Pt34の微粉体37)及び少なくとも2種類の遷移金属微粉体(Ni35の微粉体38、Fe36の微粉体39)に所定のバインダー33を加え、それらを均一に混合・分散して金属微粉体混合物41(発泡金属成形材料)を作り、金属微粉体混合物41に所定の気孔形成材40を添加する金属微粉体混合物作成工程S4と、金属微粉体混合物作成工程S4によって作られた金属微粉体混合物41を薄板状に成形(金属粉末押出成形又は金属粉末射出成形)して金属微粉体成形物42(発泡金属成形物)を作る金属微粉体成形物作成工程S5と、金属微粉体成形物作成工程S5によって作られた金属微粉体成形物42を脱脂するとともに金属微粉体成形物42を所定温度で焼結して多数の微細な気孔25が形成されたマイクロポーラス構造の薄板状の燃料極13及び空気極14を作るマイクロポーラス構造薄板電極作成工程S6との各工程によって燃料極13及び空気極14を製造するから、それら工程S1〜S6によって厚み寸法L1が0.03mm〜1.5mmの範囲(好ましくは、0.05mm〜1.0mmの範囲)であって多数の微細な気孔25(通路孔)を形成した燃料極13及び空気極14(マイクロポーラス構造薄板状電極)を製造することができ、燃料極13や空気極14を廉価に作ることができるとともに、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な白金族金属少含有の燃料極13及び空気極14を作ることができる。
【0088】
電極製造方法は、優れた触媒活性(触媒作用)を有して触媒機能を十分かつ確実に利用することが可能な白金族金属少含有の燃料極13及び空気極14を作ることができ、固体高分子形燃料電池10に好適に使用することが可能な燃料極13及び空気極14を作ることができる。電極製造方法は、工程S1〜S6によって作られた燃料極13及び空気極14が白金族金属を担持した電極と略同様の触媒活性(触媒作用)を発揮するから、固体高分子形燃料電池10において十分な電気を発電することが可能であって固体高分子形燃料電池10に接続された負荷30に十分な電気エネルギーを供給することが可能な白金族金属少含有の燃料極13及び空気極14を作ることができる。
【符号の説明】
【0089】
10 固体高分子形燃料電池
11 セル
12 セルスタック
13 燃料極
14 空気極
15 固体高分子電解質膜(電極接合体膜)
16 セパレータ
17 セパレータ
18 膜/電極接合体
19 ガス拡散層
20 ガス拡散層
21 ガスシール
22 ガスシール
23 前面
24 後面
25 流路(連続かつ独立通路孔)
26 薄板金属電極
27 通流口
28 外周縁
29 導線
30 負荷
31 白金族金属
32 遷移金属
33 バインダー
34 Pt(白金)
35 Ni(ニッケル)
36 Fe(鉄)
37 Pt(白金)の微粉体(白金族金属微粉体)
38 Ni(ニッケル)の微粉体(遷移金属微粉体)
39 Fe(鉄)の微粉体(遷移金属微粉体)
40 気孔形成材(発泡剤)
41 金属微粉体混合物
42 金属微粉体成形物
L1 厚み寸法
S1 金属選択工程
S2 金属微粉体作成工程
S3 微粉体重量比決定工程
S4 金属微粉体混合物作成工程
S5 金属微粉体成形物作成工程
S6 マイクロポーラス構造薄板電極作成工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9