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特開2020-87934電気化学蓄電池用のカソード及び関連した蓄電池、エネルギー貯蔵装置、並びに製造する方法
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  • 特開2020087934-電気化学蓄電池用のカソード及び関連した蓄電池、エネルギー貯蔵装置、並びに製造する方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-87934(P2020-87934A)
(43)【公開日】2020年6月4日
(54)【発明の名称】電気化学蓄電池用のカソード及び関連した蓄電池、エネルギー貯蔵装置、並びに製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20200508BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20200508BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20200508BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20200508BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20200508BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20200508BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20200508BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20200508BHJP
【FI】
   H01M4/13
   H01M4/131
   H01M4/525
   H01M4/505
   H01M4/66 A
   H01M4/62 Z
   H01M4/139
   H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-215309(P2019-215309)
(22)【出願日】2019年11月28日
(31)【優先権主張番号】1872042
(32)【優先日】2018年11月29日
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】515170791
【氏名又は名称】アルモール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ギシャール
(72)【発明者】
【氏名】マリー−アンヌ・ブラン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS01
5H017AS10
5H017BB11
5H017BB12
5H017CC01
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE05
5H017EE06
5H017EE07
5H017HH03
5H017HH05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ12
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ07
5H029DJ08
5H029EJ01
5H029EJ04
5H029EJ12
5H029EJ14
5H029HJ04
5H029HJ10
5H029HJ12
5H029HJ14
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA02
5H050DA04
5H050DA08
5H050DA09
5H050DA11
5H050EA02
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA23
5H050EA27
5H050EA28
5H050FA18
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA04
5H050HA10
5H050HA12
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】より容易に製造されるカソード、特に、より迅速、且つより容易に製造することができるカソードを提供する。
【解決手段】
本発明は、
− 集電体(22)、
− 集電体(22)に被覆した、界面層(20)、及び
− 第1の組成物を界面層(20)に堆積させることによって、特に、被覆することによって形成され、第1の組成物が水素イオン指数10以上、好ましくは12以上を有し、水素イオン指数が、温度25℃で測定される、電極(18)
を含む、電気化学蓄電池用のカソード(16)に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 集電体(22)、
− 前記集電体(22)に被覆した界面層(20)、及び
− 第1の組成物(C1)を前記界面層(20)に堆積させることによって形成され、前記第1の組成物(C1)が、水素イオン指数10以上を有し、前記水素イオン指数が、温度25℃で測定される、電極(18)
を含む、電気化学蓄電池(10)用のカソード(16)。
【請求項2】
前記第1の組成物(C1)が、水素イオン指数12以上を有し、前記水素イオン指数が、温度25℃で測定される、請求項1に記載のカソード(16)。
【請求項3】
前記第1の組成物(C1)が、第1の挿入物質(MI1)、第1のバインダー材(ML1)、及び第1の導電性添加材(AC1)を含む水系カソード組成物であり、前記界面層(20)が、第2の組成物(C2)を前記集電体(22)に体積させることによって、特に被覆することによって形成され、前記第2の組成物(C2)が、第2のバインダー材(ML2)及び第2の導電性添加材(AC2)を含み、前記第2のバインダー材(ML2)が、少なくとも1種の化合物を含み、前記化合物が、単独の、又はポリイミドの系列からの少なくとも1種のポリマーとポリビニルアルコールとの混合物の、エチレン−ビニルアルコールコポリマーである、請求項1に記載のカソード(16)。
【請求項4】
前記第1の組成物(C1)が、第1の挿入物質(MI1)、第1のバインダー材(ML1)、及び第1の導電性添加材(AC1)を含む、水系カソード組成物である、請求項1に記載のカソード(16)。
【請求項5】
前記第1の挿入物質(MI1)が、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン酸化物、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム酸化物、及びその混合物の中から選択され、前記第1の挿入物質(MI1)が、溶解した形態で、組成物中に存在する、請求項4に記載のカソード(16)。
【請求項6】
前記第1のバインダー材(ML1)が、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリウレタン、アルギン酸ナトリウム、スチレン−ブタジエン、及びその混合物の中から選択される、請求項4又は5に記載のカソード(16)。
【請求項7】
前記界面層(20)が、第2の組成物(C2)を前記集電体(22)に堆積させることによって、特に、被覆することによって形成され、前記第2の組成物(C2)が、第2のバインダー材(ML2)及び第2の導電性添加材(AC2)を含み、前記第2のバインダー材(ML2)が、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリイミドの系列からのポリマーとエチレン−ビニルアルコールコポリマーとの混合物、ポリイミドの系列からのポリマーとポリビニルアルコールとの混合物、及びポリイミドの系列からのポリマーとエチレン−ビニルアルコールコポリマーとポリビニルアルコールとの混合物の中から選択される、少なくとも1種の化合物を含む、請求項4から6のいずれか一項に記載のカソード(16)。
【請求項8】
前記界面層(20)が、厚さ(e20)1マイクロメートル以上を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項9】
前記集電体(22)が、金属ストリップである、請求項1から8のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のカソード(16)を含む電気化学蓄電池(10)。
【請求項11】
少なくとも1個の蓄電池が、請求項10に記載の蓄電池(10)である、蓄電池一式を含むエネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
バッテリーである、請求項11に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項13】
− 第1の組成物(C1)を調製する工程であって、前記第1の組成物(C1)が、水素イオン指数10以上を有し、前記水素イオン指数が温度25℃で測定される、調製する工程、並びに
− 前記第1の組成物(C1)を、集電体(22)及び界面層(20)で形成された基材に、特に被覆することによって堆積させる工程であって、前記第1の組成物(C1)を、前記界面層(20)に堆積させる、特に被覆する、堆積させる工程
を含む、電気化学蓄電池(10)用のカソード(16)を製造する方法。
【請求項14】
− 第2のバインダー材(ML2)及び第2の導電性添加材(AC2)を水中に懸濁させることを含む、第2の組成物(C2)を調製する工程、並びに
− 前記第2の組成物(C2)を前記集電体(22)に、特に被覆することによって堆積させて、前記界面層(20)を形成する工程
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電極が、前記第1の組成物を前記界面層に被覆することによって形成されている、請求項1に記載のカソード。
【請求項16】
前記界面層が、厚さ4マイクロメートル以下を有する、請求項8に記載のカソード。
【請求項17】
前記界面層が、厚さ2マイクロメートル以下を有する、請求項16に記載のカソード。
【請求項18】
前記集電体がアルミニウムストリップである、請求項9に記載のカソード。
【請求項19】
リチウムイオンバッテリーである、請求項12に記載のエネルギー貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性カソード組成物を堆積させることによって製造されるカソードに関する。本発明は、前述のカソードを含む、電気化学蓄電池及びエネルギー貯蔵装置にも関する。本発明は、前述のカソードを製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学蓄電池は、従来、正極、負極、電解質、及びそれぞれの電極用の集電体を含む。負極及び集電体のアセンブリはアノードを形成し、正極及び集電体のアセンブリはカソードを形成する。
【0003】
こうした蓄電池の操作原理は、独立し、結び付けられた2つの電気化学反応を用いることによる、電気エネルギーから化学エネルギーへの可逆的貯蔵に基づく。正極及び負極は、電解質に浸され、ファラデー的な反応と称される電気化学反応の拠点である。電極は、特に、活性物質でつくられ、酸化反応及び還元反応によってイオンを貯蔵し、放出することを可能にする。
【0004】
電極は、組成物を堆積させることによって製造され、組成物は、主に、1種又は複数の活性物質、活性物質のセットへの電子の良好な輸送を確実にする導電性粒子、並びに粒子の凝集及び基材の接着を確実にすることができるバインダーを含む。
【0005】
次に、正と負の2つの電極は、液体、ゲル形態、又は固体であり得る電解質によってイオン的に連結される。放電中に、負極の活性物質は酸化し、集電体によって外部の回路へ運ばれる一部の電子を放出し、他方で、電解質を介して正極へ移動するカチオンを放出する。次に、電子及びカチオンは、正極の活性物質によって捕らえられ、正極は還元される。
【0006】
従来、組成物は、有機ベースとも呼ばれる有機溶媒のベース、例えば、頭文字NMPを用いて示されるN−メチルピロリドンを含む分散体である。バインダー、典型的にはポリフッ化ビニリデン(すなわちPVDF)は、溶媒に溶解する。導電性粒子及び活性物質は、溶液中に懸濁する。
【0007】
NMP及びPVDFの混合物のベースを含む組成物は、工業規模で、高い被覆速度で、被覆することができる、良好な粘性−機械的(visco−mechanical)性質を有する。
【0008】
しかし、有機ベースを含む電極を工業的に製造する方法は、その高い費用等、多くの欠点も有する。更に、有機溶媒は、高い蒸発温度を有し、それ故に、電解質(electorate)を乾燥させる間の溶媒の除去は、高温で、典型的には、NMPの場合、120℃で行われる。更に、有機溶媒を使用するには、こうした溶媒の可燃性及び爆発の危険性があることから、特定の保護対策を確立する必要に加えて、複雑で費用のかかる再利用法を確立する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、より容易に製造されるカソード、特に、より迅速、且つより容易に製造することができるカソードが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その目的のために、集電体、集電体に被覆した、界面層、及び第1の組成物を界面層に堆積させることによって、特に被覆することによって形成され、第1の組成物が、水素イオン指数10以上、好ましくは12以上を有し、水素イオン指数が、温度25℃で測定される、電極を含む、電気化学蓄電池用のカソードが提案される。
【0011】
特定の実施形態によれば、カソードは、単独の、又は任意の、技術的に可能な組み合わせで考えられる、以下の特性の1つ又は複数を含む。
− 第1の組成物は、水素イオン指数12以上を有し、水素イオン指数は、温度25℃で測定される。
− 第1の組成物は、第1の挿入物質、第1のバインダー材、及び第1の導電性添加材を含む水系カソード組成物であり、界面層は、第2の組成物を集電体に堆積させることによって、特に被覆することによって形成され、第2の組成物は、第2のバインダー材及び第2の導電性添加材を含み、第2のバインダー材は、少なくとも1種の化合物を含み、化合物は、単独の、又はポリイミドの系列からの少なくとも1種のポリマーとポリビニルアルコールとの混合物の、エチレン−ビニルアルコールコポリマーである。
− 第1の組成物は、第1の挿入物質、第1のバインダー材、及び第1の導電性添加材を含む、水系カソード組成物であり、界面層は、第2の組成物を集電体に堆積させることによって、特に、被覆することによって形成され、第2の組成物は、第2のバインダー材及び第2の導電性添加材を含み、第2のバインダー材は、単独の、又はポリイミドの系列からの少なくとも1種のポリマーとポリビニルアルコールとの混合物の、エチレン−ビニルアルコールコポリマーである。
− 第1の組成物は、第1の挿入物質、第1のバインダー材、及び第1の導電性添加材を含む、水系カソード組成物である。
− 第1の挿入物質は、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン酸化物、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム酸化物、及びその混合物の中から選択され、第1の挿入物質は、溶解した形態で、組成物中に存在する。
− 第1のバインダー材は、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリウレタン、アルギン酸ナトリウム、スチレン−ブタジエン、及びその混合物の中から選択される。
− 界面層は、第2の組成物を集電体に堆積させることによって、特に、被覆することによって形成され、第2の組成物は、第2のバインダー材及び第2の導電性添加材を含み、第2のバインダー材は、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリアクリル酸、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリイミド、特に、ポリアミド−イミド、及びポリエーテル−イミド、ポリウレタン、アクリルスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリルコポリマー、メタクリル酸エステル(methacrylic ester acid)、フッ素化コポリマー、並びにその混合物の中から選択される、少なくとも1種のポリマーを含む。
− 界面層は、第2の組成物を集電体に堆積させることによって、特に、被覆することによって形成され、第2の組成物は、第2のバインダー材及び第2の導電性添加材を含み、第2のバインダー材は、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリイミドの系列からのポリマーとエチレン−ビニルアルコールコポリマーとの混合物、ポリイミドの系列からのポリマーとポリビニルアルコールとの混合物、及びポリイミドの系列からのポリマーとエチレン−ビニルアルコールコポリマーとポリビニルアルコールとの混合物の中から選択される、少なくとも1種の化合物を含む。
− 第2のバインダー材は、ポリアミドを含まない。
− 界面層は、厚さ1マイクロメートル以上を有する。
− 界面層は、厚さ4マイクロメートル以下を有する。
− 界面層は、厚さ2マイクロメートル以下を有する。
− 集電体は、金属ストリップである。
− 集電体は、アルミニウムストリップである。
【0012】
本発明の記述は、前述されたカソードを含む電気化学蓄電池にも関する。
【0013】
本発明の記述では、少なくとも1個の蓄電池が、前述された蓄電池である、蓄電池一式を含むエネルギー貯蔵装置も説明される。
【0014】
特定の一実施形態によれば、エネルギー貯蔵装置はバッテリーである。
【0015】
特定の一実施形態によれば、エネルギー貯蔵装置はリチウムイオンバッテリーである。
【0016】
本発明の記述は、第1の組成物を調製する工程であって、第1の組成物が水素イオン指数10以上を有し、水素イオン指数が温度25℃で測定される、調製する工程、並びに第1の組成物を、集電体及び界面層で形成された基材に、特に被覆することによって堆積させる工程であって、第1の組成物を、界面層に堆積させる、特に被覆する、堆積させる工程を含む、電気化学蓄電池用のカソードを製造する方法にも関する。
【0017】
特定の一実施形態によれば、製造する方法は、第2のバインダー材及び第2の導電性添加材を水中に懸濁させること含む、第2の組成物を調製する工程、並びに第2の組成物を集電体に、特に被覆することによって堆積させて、界面層を形成する工程を含む。
【0018】
本発明の他の特徴及び利点は、例としてのみ提供される、本発明の実施形態の以下の説明を読んで、且つ図面を参照して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】カソードを含むバッテリー蓄電池の模式図である。
図2】蓄電池のカソードの模式的な側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
電気化学蓄電池10を図1に示す。
【0021】
蓄電池10は、エネルギー貯蔵装置、特に、所望の電圧及び容量の発電機を構成するために、他の電気蓄電池に連結することが意図される。
【0022】
こうした発電機は、蓄電池バッテリー、又はより簡潔にはバッテリーと呼ばれる。
【0023】
記載された例によれば、蓄電池10は、リチウムイオンバッテリー用のリチウムイオン蓄電池である。
【0024】
蓄電池10は、可逆エネルギー変換技術を用いて、エネルギーを貯蔵し、後でエネルギーを取り出す。
【0025】
記載された、電気化学反応を用いた蓄電池10、蓄電池10は電気化学蓄電池である。
【0026】
蓄電池10は、電解質12、アノード14、及びカソード16を含む。
【0027】
蓄電池10は、電解質12、アノード14、及びカソード16の間の相互作用のために、電気化学蓄電池のように作動する。
【0028】
電解質12は、炭酸塩の、電荷貯蔵又はファラデー的な反応に用いられるイオンを与える、様々なイオン塩、及びイオンを可溶化させる、溶媒又は溶媒の混合物で構成される。
【0029】
イオン塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、及びその混合物の中から選択される。
【0030】
炭酸塩は、例えば、炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)、又は炭酸ジエチル(DEC)である。
【0031】
より小さい割合で、酢酸メチル若しくはギ酸メチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン若しくはガンマ−ブチロラクトン(gamma−butyroactone)、及びその、二成分混合物若しくは三成分混合物、又は更にその四成分混合物、並びにイオン液体を見出すことも可能である。
【0032】
アノード14は、イオンの挿入物質、例えば、炭素で構成される。炭素は、主に、人工の、又は天然の、黒鉛、又は黒鉛材、例えば、軟質炭素若しくは硬質炭素の形態の、一般に「メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)」と称される、中間相マイクロビーズの形態で用いられる。異型で、挿入物質は、チタン酸リチウム、例えばLiTi12(また頭文字LTOを用いて示される)のベースを含む負極材、又はシリコーン、スズ、若しくは合金のベースを含む負極材の、他の種類の中から選択される。
【0033】
表現「化合物A、化合物B、及び化合物Cの中から選択される化合物」は、上記化合物が、化合物A、化合物B、及び化合物Cで構成される群から選択されることを意味する。
【0034】
カソード16を図2により詳細に示す。
【0035】
カソード16は、電極18、界面層20、及び集電体22を含む。
【0036】
電極18、界面層20、及び集電体22は、Zと示された積層方向に、層の積み重ねを形成し、界面層20は、電極18と集電体22との間に位置する。
【0037】
電極18は、電解質12と接触している。
【0038】
電極18は、例えば、10マイクロメートル〜100マイクロメートルの厚さe18を有し、厚さe18は、積層方向Zで測定される。
【0039】
電極18は、界面層20に第1の組成物C1を堆積させることによって、形成される。
【0040】
第1の組成物C1は、第1の挿入物質MI1、第1のバインダー材ML1、第1の導電性添加材AC1、及び第1の溶媒S1を含む。
【0041】
好ましくは、第1の組成物C1は、第1の挿入物質MI1、第1のバインダー材ML1、第1の導電性添加材AC1、及び第1の溶媒S1で構成される。
【0042】
挿入物質は、「活性物質」とも称される。
【0043】
第1の挿入物質MI1は、リチウム金属酸化物の中から選択される。好ましくは、第1の挿入物質MI1は、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン酸化物LiNiMnCoO(頭文字NMCを用いて示される)、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム酸化物、又はその混合物の中から選択される。
【0044】
第1の組成物C1は、第1の挿入物質MI1の質量含有率80%〜98%を含む。好ましくは、第1の組成物C1は、第1の挿入物質MI1の質量含有率91%〜95%を含む。
【0045】
本文書の残りの部分において、別段の指示がなければ、組成物中の化合物の質量含有率は、上記組成物中の化合物の全質量に対する、上記化合物の質量の比率として定められ、溶媒の質量は除外される。上記含有率はまた、表現「乾燥質量含有率」でも示される。
【0046】
本文書の残りの部分において、「値が、A〜Bからなる」は、値が、A以上、及びB以下であることを意味する。
【0047】
有利なことに、第1の挿入物質MI1は、第1の組成物C1中に、溶解した形態で存在する。
【0048】
これは、第1の組成物C1中の第1の挿入物質MI1の、少なくとも95質量%が、溶解した形態で認められることを意味する。
【0049】
第1のバインダー材ML1の選択は、第1のバインダー材ML1が、電極18の他の材料に対して不活性である限り、かなり多種多様である。第1のバインダー材ML1は、典型的にはポリマー材料であり、その製造中の電極の使用を容易にすることできる。
【0050】
第1のバインダー材ML1は、室温で水に可溶である。「室温で水に可溶である」は、20℃及び圧力0.1MPaでの、第1のバインダー材ML1の水中溶解度が、95質量%以上であることを意味する。
【0051】
第1のバインダー材ML1は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマー、及びその混合物の中から選択される、1種又は複数のポリマーを含む。
【0052】
熱可塑性ポリマーの例には、それらに限定されないが、脂肪族又は脂環式のビニルモノマーの重合から誘導されたポリマー、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン又はポリプロピレンを含む)、芳香族ビニルモノマーの重合から誘導されたポリマー、例えば、ポリスチレン、アクリルモノマー及び/又はメタクリル酸塩の重合から誘導されたポリマー、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリイミドが含まれる。
【0053】
熱硬化性ポリマーの例には、それらに限定されないが、場合により、ポリウレタンと、又はポリオールポリエーテルと混合された熱硬化性樹脂(例えば、エポキシド樹脂又はポリエステル樹脂)が含まれる。
【0054】
エラストマーポリマーの例には、それらに限定されないが、天然ゴム、合成ゴム、スチレン−ブタジエンコポリマー(また略称「SBR」を用いて示される)、エチレン−プロピレンコポリマー(また略称「EPM」を用いて示される)、及びシリコーンが含まれる。
【0055】
特定の一実施形態によれば、第1のバインダー材ML1は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー及び/又はエラストマーポリマーの混合物である。
【0056】
他の適切な第1のバインダー材ML1には、架橋ポリマー、例えば、カルボキシル基を有するポリマー及び架橋剤から製造されたものが含まれる。
【0057】
好ましくは、第1のバインダー材ML1は、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フッ素化ラテックス、ポリウレタン、アルギン酸ナトリウム、スチレン−ブタジエン、及びその混合物の中から選択される。
【0058】
第1の組成物C1は、1%〜10%からなる、第1のバインダー材ML1の質量含有率を含む。第1の組成物C1中の第1のバインダー材ML1の質量含有率は、好ましくは5%以下である。典型的には、第1の組成物C1は、2.5%〜5%からなる、第1のバインダー材ML1の質量含有率を含む。
【0059】
第1の導電性添加材AC1は、電子伝導率を改善するために、1種又は複数の種類の導電性素子を含む。
【0060】
導電性素子の例には、それらに限定されないが、導電性炭素、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、活性炭素繊維、非活性炭素ナノ繊維、金属フレーク、金属粉、金属繊維、及び導電性ポリマーが含まれる。
【0061】
ナノ繊維は、1ナノメートル〜100ナノメートルからなる、最大サイズの直径を有し、上記直径に垂直な方向に引き延ばされた繊維として定められる。
【0062】
ナノチューブは、1ナノメートル〜100ナノメートルからなる、最大サイズの外径を有し、上記外径に垂直な方向に引き延ばされたチューブとして定められる。
【0063】
第1の組成物C1は、1%〜10%からなる、第1の導電性添加材AC1の質量含有率を含む。
【0064】
第1の導電性添加材AC1の質量含有率は、好ましくは4%以下である。例えば、第1の組成物C1は、第1の導電性添加材AC1の質量含有率2.5%以上を含む。
【0065】
第1の溶媒S1は、液体状態の水である。
【0066】
第1の溶媒S1の存在のために、カソード16は、水系カソード、又は水溶液系カソードと称される。
【0067】
第1の組成物C1は、水素イオン指数、又はpH10以上を有する。pHは、温度25℃、圧力0.1メガパスカル(MPa)で測定される。
【0068】
水素イオン指数は、溶液中の、特に、これらのイオンが、水とオキソニウムイオン(ヒドロニウムとも称される)Hを形成する水溶液中の、水素イオンの化学的活性の指標である。水素イオン指数は、一般にpHと略され、溶液の酸性度を示す。希釈水溶液について、pHは、0〜14からなり、値0及び値14が含まれる。例えば、25℃まで希釈された水性媒体では、pH7は中性と称され、厳密に7より高いpHは、塩基性(又はアルカリ性)と称され、厳密に7より低いpHは、酸性と称される。
【0069】
組成物C1のpHは、以下により詳細に説明されるように、第1の組成物C1の界面層20への堆積の瞬間の、組成物C1のpHとして定められる。「堆積の瞬間の」は、堆積が始まる前の1分以内の時間の長さを示す。この時間内に、第1の組成物C1に、化合物は添加されない。
【0070】
好ましくは、第1の組成物C1は、pH12以上を有する。
【0071】
電極18を、界面層20に堆積させる。
【0072】
界面層20は、5マイクロメートル以下の厚さe20を有し、厚さe20は、積層方向Zで測定される。
【0073】
好ましくは、界面層20は、10ナノメートル以上の厚さe20を有する。有利なことに、界面層20は、500ナノメートル〜2マイクロメートルの厚さe20を有する。
【0074】
界面層20は、第2の組成物C2を集電体22に堆積させることによってつくられる。
【0075】
第2の組成物C2は、第2のバインダー材ML2及び第2の導電性添加材AC2を含む。有利なことに、第2の組成物C2は、第2のバインダー材ML2、第2の導電性添加材AC2、及び第2の溶媒S2で構成される。
【0076】
第2のバインダー材ML2は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、及びその混合物の中から選択される、1種又は複数のポリマーを含む。
【0077】
熱可塑性ポリマーの例には、それらに限定されないが、脂肪族又は脂環式のビニルモノマーの重合から誘導されたポリマー、例えば、ポリオレフィン、好ましくは、ポリエチレン及びポリプロピレン、芳香族ビニルモノマーの重合から誘導されたポリマー、例えば、ポリスチレン、アクリルモノマー及び/又はメタクリル酸塩の重合から誘導されたポリマー、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素化ポリマー、ポリアクリロニトリルが含まれる。
【0078】
熱硬化性ポリマーの例には、それらに限定されないが、場合により、ポリウレタンと、又はポリオールポリエーテルと混合された熱硬化性樹脂(例えば、エポキシド樹脂、ポリエステル樹脂)、特にカルボキシル基を有するポリマー及び架橋剤から製造された架橋ポリマーが含まれる。
【0079】
特定の一実施形態によれば、第2のバインダー材ML2は、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、ポリアクリル酸、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリイミド、特に、ポリアミド−イミド、及びポリエーテル−イミド、ポリウレタン、アクリルスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリルコポリマー、メタクリル酸エステル、フッ素化コポリマー、多糖類、エチレン、アクリル酸コポリマー、及びその混合物の中から選択されるポリマーを含む。
【0080】
第2のバインダー材ML2は、ポリアミドを含まないことに留意されたい。
【0081】
好ましくは、第2のバインダー材ML2は、第1のポリマーと第2のポリマーとの混合物を含む。
【0082】
第1のポリマーは、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリアミド−イミド、ポリアミド−イミド前駆体、ポリエーテル−イミド、ポリウレタン、アクリルスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、アクリルコポリマー、メタクリル酸エステル、フッ素化コポリマー、及びその混合物の中から選択される。
【0083】
第2のポリマーは、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(また頭文字PVAを用いて示される)、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(また頭文字EVOHを用いて示される)、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、及びその混合物の中から選択される。
【0084】
有利なことに、第2のバインダー材ML2は、ポリイミドの系列からのポリマーとエチレン−ビニルアルコールコポリマーとの混合物、又はポリイミドの系列からのポリマーとポリビニルアルコールとの混合物を含む。
【0085】
「ポリイミドの系列からのポリマー」は、ポリイミド、ポリアミド−イミド、及びポリエーテル−イミドの中から選択されるポリマーを示す。
【0086】
好ましくは、第2のバインダー材ML2は、既に定められた、第1のポリマーと第2のポリマーとの混合物を含み、第2のバインダー材ML2中の第1のポリマーの質量含有率は、20%以上であり、好ましくは40%以上、及び80%以下である。
【0087】
第2のバインダー材ML2は、非晶性、半結晶性、又は結晶性である。
【0088】
第2の組成物C2は、第2のバインダー材ML2の質量含有率20%以上を含む。
【0089】
第2の組成物C2中の第2のバインダー材ML2の質量含有率は、好ましくは、80%以下である。例えば、第2の組成物C2は、40%〜70%からなる、第2のバインダー材ML2の質量含有率を含む。
【0090】
第2の導電性添加材AC2は、電子伝導率を改善するために、1種又は複数の導電性素子を含む。
【0091】
例えば、第2の導電性添加材AC2は、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、非活性炭素ナノ繊維、及びその混合物の中から選択される。
【0092】
好ましくは、第2の導電性添加材AC2は、カーボンブラックと黒鉛との混合物を含む。
【0093】
第2の組成物C2は、第2の導電性添加材AC2の質量含有率70%以下を含む。
【0094】
第2の組成物C2中の、第2の導電性添加材AC2の質量含有率は、好ましくは、20%以上である。例えば、第2の組成物C2は、30%〜60%からなる、第2の導電性添加材AC2の質量含有率を含む。
【0095】
第2の溶媒S2は、水、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール(イソプロパノールとも称される)、グリコールエーテル、及びその混合物の中から選択される。
【0096】
界面層20は、集電体22と電極18との間に界面を形成する。
【0097】
これは、特に、界面層20が、一方で集電体22と、他方で電極18と接触した層であることを意味する。
【0098】
集電体22は、8マイクロメートル〜30マイクロメートルからなる、好ましくは12μm〜20μmからなる、厚さe22を有する。
【0099】
集電体22は、電極18の基材として機能するために、電子輸送を確実にする十分な導電性であり、軽く、精細で、且つ機械的に強い材料でつくられる。
【0100】
例えば、集電体22は、金属ストリップ、好ましくはアルミニウムストリップである。変型で、集電体22は、アルミニウム合金でつくられる。
【0101】
蓄電池10の操作は、最先端の電気化学蓄電池の操作に従うものである。
【0102】
本発明の蓄電池10の操作は、カソード16とアノード14との間のリチウムイオンLiの可逆的変換に基づく。
【0103】
界面層20は、接着及び接触抵抗を最適化することによって、集電体22と電極18との間の界面を改善することに留意されたい。接触抵抗は、アセンブリの電子伝導率に大きな影響を与え、強い抵抗は、充電/放電サイクルの間に電子の移動に対して障壁として作用する。界面層20は、伝導経路を改善することによって、この現象を低減するのに役立つ。
【0104】
界面層20は、電解質が集電体22へ接近するのを妨げることによって集電体22を保護する。
【0105】
界面層20は、以下に示された実験1の結果によって説明されるように、集電体22と電極18との間の界面の電位の安定化に作用する。
【0106】
界面層20はまた、腐食の原因となるイオンの接近に対する物理的障壁としても作用する。
【0107】
集電体22がアルミニウムでつくられる場合、界面層20は、集電体22の表面の、Al(OH)イオン又はAlOイオンの形成を妨げることによって、集電体22を腐食から保護する。こうしたイオンの形成は、電気的界面抵抗を増大させることによって、且つ電極の挿入物質MI1と反応させることによって、最先端の蓄電池の性能を劣化させる。保護がない場合、金属ストリップは、25℃、0.1メガパスカル(MPa)で、8.5を超えるpHのアルカリ溶液によって、数秒で損傷する。
【0108】
最先端の蓄電池について、性能レベルが改善される。
【0109】
更に、カソード16は、迅速に、且つ容易に製造され、特に大量生産に好適にさせる。特に、第1の組成物C1は、界面層20に堆積させるのに、安定であり、迅速であり、且つ容易である。
【0110】
水系カソード16を使用することにより、有機ベースのカソードと比較して、特に、再利用及び廃棄物管理の方法を簡素化し、可燃性及び爆発の危険性が限定されることによって、費用が削減される。
【0111】
カソード16の製造は、最先端のカソードと比較して、より簡潔に実施される。
【0112】
説明されることになる、カソード16を製造する方法は、容易に大規模で実施される。
【0113】
カソード16を製造する方法は、第1の組成物C1を調製する段階、第2の組成物C2を調製する段階、界面層20を製造する段階、及び電極18を製造する段階を含む。
【0114】
界面層20を製造する段階は、調製された、第2の組成物C2を集電体22に堆積させる工程を含む。集電体22は、好ましくは、金属ストリップ、特に、アルミニウム又はアルミニウム合金でつくられたストリップである。
【0115】
第2の組成物C2の堆積は、被覆技術又は印刷技術から選択される技術によって実施される。
【0116】
例えば、第2の組成物C2は、被覆又はウェットスクローリング印刷(wet scrolling printing)、特に、バーコーター(bare coater)技術、スロットダイ技術、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、及びフレキソ印刷から選択される技術を用いて、集電体22に堆積させる。
【0117】
電極18を製造する段階は、第1の組成物C1を界面層20に堆積させる工程を含む。
【0118】
第1の組成物C1の堆積は、前述された被覆技術又は印刷技術から選択される技術によって実施される。
【0119】
したがって、電極18及びカソード16が得られる。
【0120】
したがって、実験セクションで詳細に説明されるように、カソード18は、十分な電気化学性能を有しながら、腐食に対する良好な耐性を有する。
【0121】
(実験セクション)
様々な界面層の、試料の特性、特に、アルカリ性のpHを有する組成物への耐薬品性に対する影響を調べるために、以下の実験を、カソード組成物を含まない試料で実施した。
【0122】
(実験1)
(材料)
この研究において、アルミニウムのストリップ(シリーズ1000、厚さ20マイクロメートル)を集電体として用いた。
【0123】
界面層を構成するのに好適な、6種の炭素系配合物を調製した。
【0124】
様々な試験配合物の組成(Comp.と略される)を、以下の表1に共に分類した。
【0125】
【表1】
【0126】
7種の試料をつくるために、6種の配合物を、自動薄膜コーターで、裸のアルミニウムストリップに被覆した。様々な集電極に適用される熱的条件は、温度180℃〜220℃で、1〜5分ほどである。表2に報告されたように、乾燥後の界面層の厚さは、1μm〜4μmである。
【0127】
(特性決定)
界面層のアルミニウムストリップへの接着を、幅25ミリメートル及び接着7.5N/cm(ニュートン毎センチメートル)の、銘柄3M(商標)によるScotch(商標)2525接着剤を用いて、剥離試験を実施することによって評価する。接着剤のストリップを、制御された圧力で、界面層で被覆された集電体に塗布する。ストリップを、角度180°で、手作業で剥離する。同様の方法は、AFERA5001標準に説明される。破断プロファイルを裸眼で観測する。破断プロファイルを、基材に残る被覆の品質に基づいて、1〜4の基準で評価する。点数4は、被覆の剥離がないことを意味し、集電体と界面層との、最大限の接着を示す。点数1は、完全な被覆の剥離を意味し、集電体と界面層との最小限の接着を示す。
【0128】
集電極の、横方向の電気抵抗は、界面層に被覆されても、被覆されなくてもよい、集電体を、オーム計に連結され、集電体の横方向の電流の通過を可能にする、2個の導電性チップの間に押し付けて挟むことによって評価される。導電性チップの間に加えた圧力は0.27MPaである。横方向の電気抵抗がより低くなるほど、電流の通過はより良好になる。
【0129】
電解質に対する被覆の耐性は、3センチメートル×2センチメートルを測定し、真空で乾燥させ、次いで1モル/リットルの、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、及び六フッ化リン酸リチウムの混合物で構成された電解質で満たされたバイアルに、60℃で72時間浸漬させた、界面層で被覆された集電極の試料で評価される。浸漬後、試料を手動摩擦試験して、被覆の耐薬品性を評価する。被覆が集電体に存在してとどまる場合、採点は4であり、被覆が、完全に除去される場合、点数は1である。
【0130】
耐アルカリ薬品性は、それぞれ500マイクロリットルの容量の、水酸化ナトリウムの5液滴を、界面層で被覆されても、被覆されなくてもよい集電体に堆積させることによって評価され、初めの気泡が現れるまでの時間に対応する。気泡の出現は、二水素(H)の気泡の放出によって特徴づけられる、水酸化ナトリウムとアルミニウムとの間の酸化還元反応を示す。
【0131】
用いられる水酸化ナトリウム溶液により、アルカリ性電極18と被覆集電体22との接触がシミュレートされ、電極のアルカリ性から集電体を保護する、界面層20の特性を評価することが可能になる。アルカリ性水系電極の最大pHとの関係によって、試験は、12に等しいpH及び13に等しいpHを有する水酸化ナトリウムを用いて実施される。
【0132】
7種の試料E1〜試料E7を試験し、結果を以下の表2に示す。試料E0は、界面層を含まず、界面層の、様々な、試験される特性に対する影響を評価する基準となる。
【0133】
【表2】
【0134】
(結果及び考察)
これらの結果は、界面層がない場合(試料E0)、集電体が、即座に水酸化ナトリウムによって損傷することを明らかに示す。
【0135】
界面層(試料E1〜試料E7)は、pH13で少なくとも1分間、pH12で数分間、水酸化ナトリウムによる集電体の損傷を遅らせる。
【0136】
界面組成物にポリイミドを使用することにより(試料E1)、水酸化ナトリウムによる集電体の損傷を有意に遅らせることが可能になる。
【0137】
エチレン−ビニルアルコールコポリマーを単独で含有する界面層(試料E2及び試料E3)は、集電体をアルカリ性損傷から少なくとも1分間保護する。こうした被覆集電体は、電解質によって引き起こされる腐食にも同様に耐え、電気抵抗を、試料E1の集電体に対し、半減させる。集電体に付与されたアルカリ性保護レベル(分のオーダーで)は、速い被覆速度及び短い乾燥時間が可能になる製造する方法にとって、興味深い。
【0138】
ポリイミド及びエチレン−ビニルアルコールコポリマーを含む界面層で被覆された集電体(試料E4〜試料E6)は、水酸化ナトリウムに対し数十分の耐性時間を有し、多くの被覆法に適合する。更に、金属への接着、電解質への耐薬品性、及び電気抵抗の特性は、エチレン−ビニルアルコールコポリマーを単独で含む界面層で被覆された集電体で観測されるものと同様である。
【0139】
これらの結果によれば、先に定められた、第1のポリマー及び第2のポリマーの少なくとも1種を含む界面層で被覆された集電体を使用することにより、その支持体に水系電極を堆積させる間に発生する腐食から、集電体が保護される。
【0140】
試料E2及び試料E3の比較によれば、エチレン−ビニルアルコールコポリマーで製造された集電極によって、低い、横方向の電気抵抗、及び良好な、電解質への耐薬品性(少なくとも4)を得ることが可能になる。数分より長い耐アルカリ薬品性も認められる。
【0141】
したがって、エチレン−ビニルアルコールコポリマーを使用して被覆集電体を製造することによって、特性に、低い、横方向の電気抵抗、高いレベルの、アルミニウムへの接着、及び良好な、電解質への耐薬品性が含まれ、また水系電極に対して耐アルカリ薬品性が有意に改善された、こうした集電極を得ることが可能となる。
【0142】
エチレン−ビニルアルコールコポリマーと混合したポリイミドを使用することによって(試料E4〜試料E6)、特性に、低い、横方向の電気抵抗、高いレベルの、アルミニウムへの接着、及び良好な、電解質への耐薬品性が含まれ、また水系電極に対して耐アルカリ薬品性が大いに改善された、被覆集電体を得ることが可能となり、それによって、1分を超えて、アルカリ性電極を堆積させることを考えることができる。したがって、電極製造者らに、腐食性部材の被覆法の開発における、より高い柔軟性がもたらされる。
【0143】
ポリアミドを含む界面層で被覆された集電体(試料E7)は、ポリイミド及びエチレン−ビニルアルコールコポリマーを含む界面層で被覆された集電体(試料E4〜試料E6)の特性と同等の、水酸化ナトリウムへの耐性時間、金属への接着特性、及び電解質への耐薬品性の特性を有する。
【0144】
その反面、こうした集電極(試料E7)は、適切な電気的性能レベルに達することが不可能な、非常に高い、横方向の電気抵抗を有する。試料E1〜試料E6とは異なり、試料E7は、高い耐アルカリ特性と低い電気抵抗特性との両方を併せもたない。
【符号の説明】
【0145】
10 電気化学蓄電池
12 電解質
14 アノード
16 カソード
18 電極
20 界面層
22 集電体
e18 厚さ
e20 厚さ
e22 厚さ
図1
図2
【外国語明細書】
2020087934000001.pdf