【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度総務省「電波資源拡大のための研究開発」委託研究 産業力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【解決手段】送信シンボルが入力され、送信シンボルに対して時間窓を乗じる時間軸ウィンドウイング処理回路を有し、時間窓として、任意の時間窓に任意のフィルタを予め畳み込んだ結果を用いるようになされた送信装置である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の一実施形態について説明する。なお、以下に説明する一実施形態は、この発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特にこの発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限定されないものとする。
【0012】
最初に本発明の比較例として、他の変調方式(eUF-DFTs-OFDM (enhanced Universal Filtered-DFTs-OFDM))について概略的に説明する。
図1にeUF-DFTs-OFDMの送信機の構成を示す。eUF-DFTs-OFDMは、UF-DFTs-OFDM にCP挿入処理が追加された方式である。送信ビットシーケンスがチャネル符号化器1に供給され、チャネル符号化される。チャネル符号化器1の出力がインターリーブ回路2に供給され、インターリーブされる。インターリーブ回路2の出力が変調器3に供給され、複素信号へ変調される。物理層スケジューラ(図示せず)のリソース制御情報(符号化パラメータ、インターリーブパラメータ、変調パラメータ)に従い、チャネル符号化方式とその符号化率、適切なインターリーブ方式並びに適切な一次変調方式が選択される。
【0013】
変調器3の出力がM−point DFT回路4に供給され、DFT処理を受ける。Mは、1つのDFTs-OFDMシンボルに含まれる変調シンボルの数を表す。M−pointDFT回路4の出力がPRB(物理リソースブロック)マッピング回路5に供給される。PRBマッピング回路5による処理の後でサブキャリアがB個のサブバンドに分割される。各サブバンドに対してM_
0のサブキャリアが含まれる。(B=M/M_
0)の関係である。
【0014】
各サブバンドに対応する送信処理部6
1 ,・・・,6
B-1 ,6
B には、IDFT回路7、CP(Cyclic Prefix)付加回路8およびローパスフィルタ(LPF)9がそれぞれ含まれている。IDFT回路7によって時間領域の波形に変換される。CPは、IDFT回路7の出力が受ける伝搬遅延の影響を吸収するための冗長データである。送信処理部6
1 ,・・・,6
B-1 ,6
B の出力が加算され、並列直列変換回路10に供給されることにより送信信号Txが形成される。
【0015】
図2を参照して各サブバンドの時間領域における処理について説明する。
図2(a)は、CP-based discrete Fourier transform (DFT)-spread OFDM (CP-DFTs-OFDM)のM番目のサブバンドのシンボルを示す。CPは、L
CP'の長さを有する。L
CP'=L
CP−(L
F −1)である。L
CPおよびL
F は、既存のCP-DFTs-OFDMにおけるCPの長さ、並びにLPFの時間応答長(
図2(b)参照)である。
【0016】
図2(a)に示すCP-DFTs-OFDMのシンボルが、
図2(b)に示すLPFの時間応答による畳み込み演算の処理を受け、正規化される。そして、
図2(c)に示すM番目のサブバンドのeUF-DFTs-OFDM シンボルが生成される。全てのサブバンドのeUF-DFTs-OFDM シンボルが加算されて、
図2(d)に示すeUF-DFTs-OFDM シンボルが形成される。
【0017】
受信側では、時間領域の処理後に、時間領域の受信信号に対してN
FFT ポイントのFFTの処理がなされる。チャンネル等化の後に、送信機の処理と逆の処理によって周波数領域の受信信号が得られる。上述したeUF-DFTs-OFDM は、各サブバンドにおけるLPFの処理が畳み込み演算を行う必要があるため、信号処理のための回路規模が大きくなる問題があった。なお、これは類似方式である、UF-DFTs-OFDM、UF-OFDM、eUF-OFDM
等においても同様の問題がある。
【0018】
次に、本発明の一実施形態について説明する。一実施形態は、Universal Time-domain
Windowed-DFT-spread OFDM(UTW-DFTs-OFDM) 方式に対して本発明を適用した実施形態である。
図3に本発明の一実施形態による送信機の構成を示す。送信ビット系列がチャネル符号化器11に供給され、チャネル符号化される。チャネル符号化器11の出力がインターリーブ回路12に供給され、インターリーブされる。インターリーブ回路12の出力が変調器13に供給され、複素信号へ変調される。
【0019】
変調器13の出力がPRB(物理リソースブロック)マッピング回路14に供給される。PRBマッピング回路14からのシンボルがMポイントDFT回路15に供給される。MポイントDFT回路15の出力に対してM
1 およびM
2 の0シンボルを付加した送信シンボルがN
FFTポイントIFFT回路16に供給される。N
FFTポイントIFFT回路16の出力が伝搬遅延の影響を吸収するためのCP(Cyclic Prefix)挿入回路17に供給される。
【0020】
CP挿入回路17の出力が時間軸ウィンドウイング処理回路18において、時間軸ウィンドウイング処理がなされ、UTW-DFTs-OFDM 送信シンボルが生成される。後述するような時間窓関数(Universal Time-domain Window; UTW)を乗じることで、帯域外輻射電力を抑圧する。時間軸ウィンドウイング処理回路18に関連してメモリ19が設けられている。
【0021】
メモリ19には、時間軸ウィンドウイング処理のためのルックアップテーブルが格納されており、ルックアップテーブルによって時間軸ウィンドウイング処理に使用される係数が規定される。なお、時間窓はチャネル毎にその種類や窓遷移長を任意に設定できる他、ベースバンドにおける送信電力制御が可能なように任意の規格化係数を乗ずることができるようにしてもよい。また、時間窓の種類と窓遷移長と規格化係数の制御は例えば物理層スケジューラのような制御器によって制御してもよい。
【0022】
図4に示すように、受信機では、まずCP除去回路21にUTW-DFTs-OFDM受信信号が供
給され、CPが除去された後、N
FFTポイントFFT回路22によって受信データシンボ
ルベクトルに対してFFT処理を行う。次に、割り当て帯域に相当する要素を抜き出し、チャネル等化回路23によるチャネル等化を行う。さらに、PRBデマッピング回路24およびMポイントIDFT回路25によるIDFT処理を行うことで受信一次変調シンボルが得られる。
【0023】
MポイントIDFT回路25の出力が復調器26で復調され、デインターリーブ回路27に供給される。デインターリーブ回路27においてデインターリーブ処理がされ、チャネル復号化器28に供給される。チャネル復号化器28の出力に受信系列から取り出される。
【0024】
上述した本発明の一実施形態の送信プロセスについて説明する。
図5は、送信信号の生成を説明するものである。eUF-DFTs-OFDM と同一のプロセスによって
図3のMポイントDFT回路15が周波数領域サブキャリアZk を生成する。サブキャリアがデータ伝送の
割り当てられたリソースブロックに対応するリソースエレメントにマップされ、また、その他の要素に0をマッピングしたベクトルxk (数1)(式1)を生成する。
【0026】
ただし、(式1)でM(>=)0であり、(数1)のゼロは、(数2)で示すようにP行Q列の零行列である。
【0028】
次に、N
FFT ポイントIFFT16によって時間領域の波形に変換される。長さX
CPのCP、および長さX
CSのCS(Cyclic-suffix)が付加される。このCPおよびCSの挿入を含むプロセスは、(数3)の行列によって(数4)(式2)のように表される。
【0031】
(式2)においては、(数5)で示す関係がある。
【0033】
最終的に後述する時間領域の窓を適用することによって、UTW-DFTs-OFDM送信信号が得
られる 。UTW-DFTs-OFDM の送信信号のk番目のシンボルは、(数6)(式3)で表され
る。
【0035】
(式3)において、時間領域の窓行列は、(数7)で表すものである。
【0037】
本発明の一実施形態は、上述したUTW-DFTs-OFDM方式(又はUTW-OFDM方式)に適用する窓関数として、任意の時間窓に任意のフィルタを畳み込んだ結果生成される新たな時間窓を用いる。例えば比較例として挙げた変調方式(eUF-DFTs-OFDM)の処理で使用されるLPF9を矩形窓に畳み込んだ結果を新たな時間窓とする。このLPF9は、例えばDolph-Chebyshev フィルタである。
【0038】
UTW-DFTs-OFDM 方式に対して適用する時間窓関数の生成プロセスについて説明する。既存のUTW-DFTs-OFDM 方式からシンボルをオーバーラップする処理を除くために(式4)で表される制限を導入する。
【0040】
したがって、提案する時間窓行列は、(数9)で示すものとなる。
【0042】
シンボルをオーバーラップする処理を除いているので、波形整形のために必要な乗算器の数は1個でよい。なお、シンボルオーバーラップ処理を行なった場合でも本発明によって生成される窓関数を適用することは可能である。
【0043】
時間窓関数は、
図6に示すように形成される。
図6(a)に示すように、初めに、振幅1、長さN
FFT +L
CP' の矩形窓を準備する。ここで、N
FFT とL
CPは、それぞれ3GPPで定義されたFFTサイズとCP長を示す。L
F は矩形窓に適用されるLPFの時間応答の長さを表す。次に、この矩形窓に
図6(b)に示す時間応答を有するLPFの畳み込みを行うことで提案時間窓関数(
図6(c))を生成する。LPFのインパルス応答は、g(n)(0<=n<L
F )である。従って、提案時間窓行列は対角行列を用いて以下の(数10)(式5)で表される。
【0045】
ここで、(数11)は、矩形窓ベクトルを示す。また、(数12)はLPFの畳み込み積分を表すテプリッツ行列であり、次の(数13)(式6))、(数14)(式7))、(数15) (式8)のように定義される。また、(数16)は対角要素にベクトルaを持つ対角行列であり、Nは正規化係数を示す。
【0052】
このように本発明の一実施形態によって生成された提案時間窓関数(
図6(c))のデータが送信機のメモリ19に格納されており、時間軸ウィンドウイング処理回路18において、時間軸ウィンドウイング処理がなされる。
【0053】
次に、本発明の一実施形態(上述した提案時間窓関数を適用したUTW-DFTs-OFDM方式(以下、提案UTW-DFTs-OFDM方式と呼ぶ))、eUF-DFTs-OFDM方式、従来のCP-DFTs-OFDM方式の規格化電力スペクトラム密度PSD(Relative Power Spectrum Density)、PAPR 特性、BLER特性(blockerror rate)を評価した。計算機シミレーションでは、表1の諸元を適用したLTE信号を用いる。
【0055】
図7はチャンネル端におけるOOBE抑圧性能のグラフである。
図7の横軸が周波数オフセットであり、縦軸が規格化電力スペクトラム密度PSDである。
【0056】
図8はPAPRの相補累積分布関数(CCDF:Complementary Cumulative Distribution Function)の結果を示す。
【0057】
図9はブロック誤り率BLER特性を示すグラフである。
図9の横軸は、Es /No (通信品質)である。QPSK、16QAM、64QAMのそれぞれを用いた時のBLERが示されている。ブロック誤り率BLER特性のシミュレーションのためのパラメータを表2に示す。
【0059】
シミュレーションの結果を下記の表3に示す。
【0061】
図7および
図9に示すように、提案UTW
-DFTs-OFDM方式とeUF-DFTs-OFDM方式のPAPR特性およびBLER特性は同等である一方で、
図7に示すように、この両方式は従来CP-DFTs-OFDM 方式と比較してチャネル端においてOOBEが約20dB 改善されている。また、送信端末の回路規模について、Bをサブバンド数と定義すると、eUF-DFTs-OFDM 方式は、OOBEの抑圧を目的としたLPFの畳み込み積分を実行するために、BL
F 個の乗算器を必要とする。本計算機シミュレーションではB=25、L
F =37であり、BL
F =925個の乗算器が必要となる。これに対して、本発明の一実施形態(提案UTW-DFTs-OFDM 方式)の変調に必要な乗算器は1つのみである。以上の結果より、本発明の一実施形態は、乗算器1つを用いた簡易な変調処理によって、eUF-DFTs-OFDM 方式と同等の送受信特性を実現することができる。
【0062】
以上説明したように、本発明の一実施形態によれば、簡易な送信機構成でOOBEを抑圧することを目的として、UTW-DFTs-OFDM に適用される新たな時間窓関数が提供される。提案時間窓関数は、eUF-DFTs-OFDM 方式に適用されるLPFを矩形窓に畳み込むことで生成される。さらにLTEアップリンクパラメータを用いた計算機シミュレーションによって、提案時間窓関数を適用したUTW-DFTs-OFDM 方式のOOBE特性、PAPR特性、BLER特性および変調に必要な乗算器数を評価した。その結果、本発明の一実施形態は、乗算器1つを用いた簡易な追加処理を現行方式に施すだけで、eUF-DFTs-OFDM 方式と同等の送受信特性を実現することができる。なお本発明によって、類似方式である、UF-DFTs-OFDM、UF-OFDM、eUF-OFDM
等と同等の送受信特性を実現 することもできる。
【0063】
次に、本発明を二乗余弦窓を適用したUTW-OFDMやUTW-DFTs-OFDM)方式に対して適用した他の実施形態について説明する。送信機の構成は、
図3と同様であり、受信機の構成は、
図4と同様である。他の実施形態では、二乗余弦窓にDolph-Chebyshev フィルタを畳み込んで新しい時間窓が生成される。
【0064】
送信プロセスについて説明すると、まず、(数17)の複数シンボルがMポイントの離散フーリエ変換(Discrete Fourier transform; DFT)処理され、また、(数18)で示すサブキャリアの周波数領域に変換され、(数19)(式11)および(数20)(式12)で表すものとなる。
【0069】
(式11)および(式12)において、DFT行列が(数21)で表される。また、(0<=p1 <M)および(0<=p2 <M)の関係がある。
【0071】
次に、DFT処理後の送信ベクトルZ
k を割り当てられた周波数帯域に相当する要素にマッピングし、さらにその他の要素に0をマッピングしたベクトルx
k (数22)(式13))を生成する。式(13)にはP行Q列の零行列が含まれる。
【0073】
ベクトルx
k に対しNポイントの逆高速フーリエ変換(Inversed fast Fourier transform; IFFT)処理がなされる。さらに、
図10(a)に示すように、長さL
CPのCPが挿入され、さらに、隣接するDFTs-OFDM 送信シンボルの間に長さL
OMおよびL
OM+1のOMs(Overlap Margins)が挿入される。
【0074】
(N
GM=N
FFT +L
CP+2L
OM+1)と定義すると、
図10(b)で示す時間窓が乗算され、(数23)のk番目のUTW-DFTs-OFDMシンボルが生成される。このシンボルは、(数24)(式14)および(数25)(式15)で表される。
【0078】
ここで、時間窓行列は(数26)で示すものである。
【0080】
また、CPおよびOMsが挿入されたIDFT行列は(数27)で示すものである。ここで、(0<=l<NGM)および(0<=m<M)の関係とされている。
【0082】
最終的に、
図10(c)に示すように、隣接する送信シンボル前後のOMが重なるように結合し、UTW-DFTs-OFDM 送信信号が生成される。なお、受信機の構成は、上述したものと同様であるので、その説明を省略する。
【0083】
従来の二乗余弦窓(Raised Cosine Window;RCW)を適用したUTW-DFTs-OFDM方式は、強力にOOBEを抑圧するため時間窓の遷移長NTRを延長する必要があるが、波形の歪
みが大きくなり深刻な通信品質の劣化を招く。本発明を適用することによって、短い窓遷移長でも大きなOOBE抑圧性能を持つことができる。この新たな提案時間窓をf-RCW と呼ぶこととする。
【0084】
従来のRCWを時間窓として使用する方式は、時間窓の乗算を表す行列として、(数28)で示すRCW行列として(数29)(式16)および(数30)(式17)で示すものが適用される。また、(数31)(式18)、(数32)(式19)並びに(数33)(式20)の関係がある。
【0091】
(数29)において、diag(a) はベクトルaを対角要素に持つ対角行列であり、(数34)は全ての成分が1の行列である。また、(数35)と(数36)はそれぞれRCWの遷移ベクトル及び逆遷移ベクトルである。
【0095】
従って、従来RCWを適用するUTW-DFTs-OFDM方式の第k 番目UTW-DFTs-OFDMシンボルは(数37)(式21)で表される。
【0097】
次に本発明の他の実施形態による提案時間窓f-RCW の生成プロセスについて
図11を参照しながら説明する。まず初めに、(数39)(式22)で定義される長さNGM−(LF
−1)のRCWベクトル(数38)を準備する。
【0100】
ここで、LF はLPFの時間応答の長さである。最後にRCWベクトルにLPFを時
間軸上で畳み込むことによって提案RCWベクトル(数40)が生成される。
【0102】
この時間軸上におけるLPFの畳み込みは、(数41)(式23)で表される。
【0104】
ここで、Nは、正規化係数である。また、(数42)は、時間軸上でのLPFの畳み込み積分を表すテプリッツ行列であり、(数43)(式24)(式25)(式26)によって定義される。
【0107】
ここで、g(n)(0<=n<LP )はLPFのインパルス応答である。したがって、提案f−RCWを適用したUTW-DFTs-OFDM方式の第k番目のシンボルは(数44)(式27)および(数45)(式28)で表される。最後に、
図10 (c)に示すように隣接シンボルを結合することで送信シンボルが生成される。
【0108】
図12は、N
TR/N
FFT =1/8,1/4,1/2,1の条件での従来RCWを適用したUTW-DFTs-OFDM 方式(以下、従来RCW方式と呼ぶ)と、提案f−RCWを適用したUTW-DFTs-OFDM方式(以下、提案f−RCW方式と呼ぶ)のそれぞれの波形を示す。提案f−RCWは、従来RCWと比較して波形の両端の変化がよりなだらかであり、シンボル間の信号不連続性をさらに緩和することができる。
【0109】
以下にシミュレーションについて説明する。シミュレーションでは、従来CP-DFTs-OFDM方式、従来RCW方式、そして提案f−RCW方式のOOBE特性、PAPR特性、BLER特性をLTEアップリンクのパラメータを用いて計算機シミュレーションにより評価する。チャネルモデルとして、遅延波の最大遅延時間が5.0μsの長遅延伝搬環境を想定した3GPP Extended Typical Urban(ETU)モデルを用いた。そのため、本シミュレーションでは、通常のCPよりも長い拡張CPモードを適用した。
【0110】
A.OOBE抑圧について
提案f−RCW方式、従来RCW方式、従来CP-DFTs-OFDM方式の送信信号を表4の評価諸元に従って生成し、規格化電力スペクトラム密度(Relative Power Spectrum Density;PSD)のMax-hold値を評価した結果を
図13に示す。ただし、分解能帯域幅は100kHzとし、4倍のオーバーサンプリングで評価した。
【0112】
提案f−RCW方式は、従来RCW方式と比較して、窓遷移長(N
TR/N
FFT =1/32,N
TR/N
FFT =1/16,N
TR/N
FFT =1/8,N
TR/N
FFT =1/4,N
TR/N
FFT =1/2,N
TR/N
FFT =1)に対してチャネル端(つまり中心周波数からのオフセット周波数が2.5MHz)において、OOBEを約12dB改善することができる。また、中心周波数からのオフセット周波数が2.65MHzより大きい周波数領域においては、OOBEを約40dB改善することができる。その結果、提案f−RCW方式は、従来CP-DFTs-OFDM方式と比較して、チャネル端では最大82dB改善することができ、中心周波数からのオフセット周波数が2.65MHzより大きい周波数領域においては、最大150dB改善することができる。これは時間窓の生成過程において、RCWに対してさらにLPFを時間軸上において畳み込むことで、時間窓の遷移部分の立ち上がり方がよりなだらかになり、より強力に信号不連続点を緩和することができるためである。また、周波数領域の観点では、LPFを乗算することにより、従来RCW方式のサイドローブを直接的に小さくすることができるためである。
【0113】
B.PAPR(ピーク対平均電力特性)
表4の評価諸元に従って、提案f−RCW方式、従来RCW方式及び従来CP-DFTs-OFDM方式の送信信号のPAPR特性を評価した。ただし、変調方式はQPSKとする。
図14に計算機シミュレーションで求めたPAPRの相補累積分布関数(CCDF:Complementary Cumulative Distribution Function)の結果を示す。提案f−RCW方式は従来RCW方式と比較して、各窓遷移長に対してそれぞれPAPR特性がほぼ同等であることがわかる。
【0114】
C.BLER(ブロック誤り率特性)
BLERの特性評価に用いた諸元を表5に示す。
【0116】
シミュレーションでは簡単のため、1トランスポートブロックを1サブフレームに割り当て、全てのリソースブロックを1ユーザが占有しているものとする。また、チャネルモデルは、長遅延伝搬環境を想定してドップラー周波数が70HzのETU モデルを用いた。また、受信側において、提案f−RCW方式、従来RCW方式及び従来CP-DFTs-OFDM方式は、いずれの方式も周波数領域等化を行い、マルチパスフェージングによるチャネル変動を補償する。Extended CP を用いるLTEのアップリンクでは、復調用基準信号は、各スロットの第3シンボルを使って送信される。この復調用基準信号を用いてチャネル変動を推定した後、時間方向に線形補間し、全シンボルの変動を推定する。また、受信側でのチャネル等化は、MMSE(Minimum Mean Square Error)フィルタを用いた。MMSE フィルタは、
送信信号とチャネル等化後の信号間の平均二乗誤差(Mean Square Error; MSE)が最小となるように設計されている。
【0117】
QPSKを用いた時、提案f−RCW方式のBLER=10
-3を達成するEs /No (通信品質)は、各窓遷移長N
TRに対して従来RCW方式および従来CP-DFTs-OFDM方式と同等の値を示している(
図15参照)。
16QAMを用いた場合、提案f−RCW方式のBLER=10
-3を達成するEs /No は、N
TR/N
FFT <=1/2の時、従来RCW方式および従来CP-DFTs-OFDM方式と同等の値を示している(
図16参照)。
64QAMを用いた場合、提案f−RCW方式のBLER=10
-3を達成するEs /No は、N
TR/N
FFT <=1/4の時、従来RCW方式および従来CP-DFTs-OFDM方式と同等の値を示している(
図17参照)。
16QAMや64QAMにおいて窓遷移長が大きい時にフロア誤りが生じているのは、時間窓によって生じるシンボル間干渉やキャリア間干渉の影響を受けるからである。
【0118】
次に提案f−RCW方式の有効性を総合的に示すために、提案f−RCW方式をOOBE特性とBLER特性の両観点から評価した。
図18にN
TR/N
FFT を変化させた時のBLER=10
-3を達成するEs /No (通信品質)とチャネル端におけるRelative PSD(OOBE抑圧性能)の関係を示す。
【0119】
QPSKを用いた場合、BLER=10
-3を達成するEs /No が0.8dB劣化することを許容すれば、提案f−RCW方式は従来CP-DFTs-OFDM方式と比較してOOBEを約90dB、従来RCW方式と比較して約12dB改善することができる。
16QAMを用いた場合、BLER=10
-3を達成するEs /No が0.1dB劣化することを許容すれば、提案f−RCW方式は従来CP-DFTs-OFDM方式と比較してOOBEを約75dB、従来RCW方式と比較して約12dB改善することができる。
64QAMを用いた場合、BLER=10
-3を達成するEs /No が0.2dB劣化することを許容すれば、提案f−RCW方式は従来CP-DFTs-OFDM方式と比較してOOBEを約65dB、従来RCW方式と比較して約12dB改善することができる。
【0120】
図19にN
TR/N
FFT を変化させた時のBLER=10
-3を達成するEs /No (通信品質)と中心周波数からのオフセット周波数が2.65MHzより大きい周波数領域におけるRelative PSD(OOBE抑圧性能)の関係を示す。
【0121】
QPSKを用いた場合、BLER=10
-3を達成するEs /No が0.8dB劣化することを許容すれば、提案f−RCW方式は従来CP-DFTs-OFDM方式と比較してOOBEを約115dB、従来RCW方式と比較して約42dB改善することができる。
16QAMを用いた場合、BLER=10
-3を達成するEs /No が0.1dB劣化することを許容すれば、提案f−RCW方式は従来CP-DFTs-OFDM方式と比較してOOBEを約100dB、従来RCW方式と比較して約42dB改善することができる。
64QAMを用いた場合、BLER=10
-3を達成するEs /No が0.2dB劣化することを許容すれば、提案f−RCW方式は従来CP-DFTs-OFDM方式と比較してOOBEを約90dB、従来RCW方式と比較して約42dB改善することができる。
【0122】
以上説明したように、本発明の他の実施形態は、LTEのアップリンクにおいて有用であった従来RCWを適用したUTW-DFTs-OFDM
方式のOOBE抑圧性能をさらに高めるために、RCWとLPFを組み合わせて生成した新たな時間窓を提案した。新たな時間窓を適用したUTW-DFTs-OFDM 方式のOOBE抑圧特性、PAPR特性およびBLER特性を計算機シミュレーションによって評価した。その結果、提案時間窓を適用したUTW-DFTs-OFDM
方式は時間窓の窓遷移長がN
TR/N
FFT <=1/4の時、変調方式にかかわらず、従来RCWを適用するUTW-DFTs-OFDM 方式と同等の通信品質を保ちつつ、OOBEをチャネル端において約12dB抑圧することができ、オフセット周波数が2.65MHzより大きい周波数領域において約40dBさらに抑圧することができる。以上の結果より、提案時間窓を適用したUTW-DFTs-OFDM 方式は従来RCWを適用したUTW-DFTs-OFDM 方式と同等の通信品質を保ちつつ、大幅にOOBE抑圧性能を高めることができる有用な方式であることが分かる。
【0123】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば本発明は、矩形窓および二乗余弦窓RCW以外の窓に対しても適用することができる。また、LPF以外の特性のフィルタを畳み込むようにしてもよい。