【解決手段】電動車両は、モーターの駆動によって走行する電動車両であって、電動車両の進行方向の状態を検出する検出部と、電動車両を制御する制御部と、電動車両を制動させる制動部と、を備え、制御部は、電動車両を制動させる条件として予め決められた制動条件を検出部により検出された検出結果が満たす場合、制動部による電動車両の制動が行われる第1タイミング以前の第2タイミングにおいて、モーターの状態をニュートラル状態に変化させる。
前記制動条件には、前記電動車両が走行中の道路上に設けられている信号機が前記電動車両の減速指示又は停止指示を示す情報を表示している状態であることを前記検出結果が示すこと、が含まれている、
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の電動車両。
前記制動条件には、前記電動車両が走行中の道路上に設けられている標識が前記電動車両の減速指示又は停止指示を示す情報を表示している状態であることを前記検出結果が示すこと、が含まれている、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の電動車両。
前記モーターの状態をニュートラル状態に変化させた後に、前記制動部による前記電動車両の制動が開始された場合、前記モーターの状態をニュートラル状態からドライブ状態に変化させる、
請求項7又は8に記載の電動車両。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電動車両1の概要を示すブロック図である。この例では、電動車両1は、運転者がアクセルペダルやブレーキペダルを操作することなく、車速の制御が自動的に行える自動運転の車両を想定している。勿論、電動車両1は、車速の制御だけでなく、ステアリング操作を自動的に行うようにしても良い。
【0013】
図1において、ECU(Electronic Control Unit)10は、車両の各種の制御を総合的に行っている。ECU10には、アクセルペダルセンサ11、ブレーキペダルセンサ12、シフトレバーセンサ13等、運転操作に基づく情報が入力される。アクセルペダルセンサ11は、運転者がアクセルペダルに足を載せて操作している情報を検出している。ブレーキペダルセンサ12は、運転者がブレーキペダルに足を載せて操作している情報を検出している。シフトレバーセンサ13は、運転者が操作したシフトレバーの設定状態を検出している。シフトレバーの設定位置としては、通常走行時のD(ドライブ)レンジと、後退走行時のR(リバース)レンジと、N(ニュートラル)レンジと、P(パーキング)レンジ等がある。
【0014】
また、ECU10には、車速センサ14、加速度センサ15等、電動車両1に取り付けられた各種のセンサからの情報が入力される。車速センサ14は、電動車両1の走行速度を検出している。加速度センサ15は、3軸方向の加速度を検出している。なお、電動車両1は、加速度センサ15の他にジャイロセンサを設けても良い。
【0015】
また、ECU10には、カメラ16やレーダー17から、道路や障害物等の外界の情報が入力される。カメラ16は、電動車両1の前方の画像を撮像している。ECU10は、カメラ16の撮像画像を解析することで、走行している道路の状態、障害物の検知等が行える。レーダー17は、電動車両1の前方にある物体までの距離を検出している。
【0016】
また、ECU10には、GPS(Global Positioning System)端末18より取得された現在地情報や、地図情報19が入力される。GPS端末18は、GPS衛星を用いて電動車両1の現在位置を測位している。地図情報19には、地図情報が格納されている。
【0017】
また、ECU10は、ステアリング20や機械ブレーキ21を制御できる。ステアリング20は、電動車両1の走行方向を制御する。機械ブレーキ21は、ドラムブレーキやディスクブレーキにより、車輪の制動を機械的に行う。
【0018】
また、ECU10は、ディスプレイ22に各種の情報を表示させる。ディスプレイ22は、速度計、距離計等、インストルメントパネルに配置された表示計や、バッテリーの残量、各種の警告灯を含む。
【0019】
また、ECU10は、通信部23を介して、外部機器と通信を行うことができる。また、ECU10は、通信部23により、車車間通信を行うことができる。
【0020】
また、ECU10は、インバーター30に制御信号を供給する。インバーター30は、バッテリ40からの直流電源をアクセル開度に応じた周波数の交流電源に変換して、モーター50に供給する(力行動作)。また、インバーター30は、減速時にモーター50で発電した交流電源を直流電源に変換して、バッテリ40に充電する(回生動作)。回生動作では、電動車両1は、回生ブレーキにより制動される。ドライブ状態に設定されると、モーター50の力行動作と回生動作とが行われ、運転者のアクセル操作やブレーキ操作に応じて、加速や減速が行われ、車速が制御される。ニュートラル状態に設定されると、モーター50の力行動作と回生動作とは共に行われなくなり、モーター50はフリーラン状態となる。
【0021】
モーター50は車両駆動用のモーターである。モーター50の回転軸は、ディファレンシャルギア60を介して、駆動輪の車軸61に接続されている。これにより、モーター50の回転に伴って、車輪70が回転される。
【0022】
このように、本発明の実施の形態に係る電動車両1は、モーター50を駆動して走行する電気自動車の構成となっている。また、本発明の実施の形態に係る電動車両1は、ECU10の制御により、運転サポートや自動運転が可能である。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態に係る電動車両1における制動操作を説明するためのフローチャートである。この例では、電動車両1は、運転者の操作を必要とせず、ペダル操作やステアリング操作を自動で行う自動運転を想定している。また、ステップS101以前では、電動車両1は、ドライブレンジで、一定速度で走行を行っているとする。
【0024】
この実施形態は、このような電動車両1において、ECU10は、電動車両1を制動させる条件として予め決められた制動条件を満たす場合、電動車両1の制動が行われる第1のタイミング(ブレーキングポイント)以前の第2のタイミング(惰力走行開始ポイント)において、モーター50の状態をニュートラル状態に変化させることで、自動運転を行う場合に、電動車両1のエネルギー効率を向上させるものである。
【0025】
(ステップS101)ECU10は、電動車両1の進行方向の状態を検出し、電動車両1を制動させる条件として予め決められた制動条件になったか否かを検出する。
【0026】
ここで、電動車両1の進行方向の状態は、電動車両1が走行を継続してもよい状態か、電動車両1を制動させなければならない状態かである。
【0027】
電動車両1を制動させる条件は、例えば、進行方向の先に信号機があり、その信号機が黄色又は赤色になっていること、進行方向の先に一時停止を示す標識が検出されたこと、又は進行方向において人若しくは人以外の物体が検出されたこと等がある。
【0028】
より詳細には、制動条件には、電動車両1が走行中の道路上に設けられている信号機が電動車両の減速指示又は停止指示を示す情報を表示している状態であることを電動車両1の進行方向の状態の検出結果が示すことが含まれている。例えば、進行方向の先の道路上に信号機があり、その信号機が黄色又は赤色になっているような場合である。
【0029】
また、制動条件には、電動車両1が走行中の道路上において、電動車両1と衝突する物体が位置している状態であることを電動車両1の進行方向の状態の検出結果が示すことが含まれている。例えば、進行方向の道路上に、停止中の車両があるような場合である。また、例えば、進行方向の道路上を人が横断しているような場合である。
【0030】
また、制動条件には、電動車両1が走行中の道路上に設けられている標識が電動車両の減速指示又は停止指示を示す情報を表示している状態であることを電動車両1の進行方向の状態の検出結果が示すことが含まれている。この制動条件は、例えば、進行方向の先の道路脇に、一時停止の標識が建てられている場合である。
【0031】
制動条件になったか否かを検出する検出部は、カメラ16、レーダー17等である。また、電動車両1を制御する制御部は、ECU10である。
【0032】
すなわち、ECU10は、カメラ16の撮像画像を解析して、信号機や標識の存在、信号機の色、前方の車両の有無、歩行者の有無等を判定する。また、ECU10は、レーダー17により、信号機や標識、前方の車両等までの距離を計測する。そして、ECU10は、例えば、進行方向に信号機が存在し、その信号機が赤色であると判定すると、電動車両1を制動させる制動条件になったことを検出する。また、通信部23による車車間通信を、制動条件になったか否かを検出する検出部として用いても良い。
【0033】
(ステップS102)電動車両1を制動させる条件になったことが検出されたら、ECU10は、電動車両1の停車位置までの距離を計測する。停車位置までの距離は、例えばカメラ16及びレーダー17の情報から取得できる。また、停車位置までの距離をGPS端末18の情報から取得しても良い。
【0034】
(ステップS103)次に、ECU10は、現在の電動車両1の速度を計測する。現在の電動車両1の速度は、例えば車速センサ14により検出できる。また、現在の電動車両1の速度をGPS端末18の情報から取得しても良い。
【0035】
(ステップS104)次に、ECU10は、車両の減速度を設定する。車両の減速度は、目的とする停車位置で停車するために制動するときの減速度である。
【0036】
(ステップS105)次に、ECU10は、惰力走行開始ポイント及びブレーキングポイントを算出する。ここで、惰力走行開始ポイントは、モーター50をフリーラン状態とする制御を開始する位置である。ブレーキングポイントは、電動車両1の制動を開始する位置である。ブレーキングポイントは、停車位置と、減速度と、ブレーキングポイントでの速度とから算出できる。惰力走行開始ポイントは、停車位置までの距離と、現在の速度と、減速度とから、例えば以下のようにして算出できる。
【0038】
ここで、上記の式(1)に示したT1は、惰力走行開始ポイントを示す。また、式(1)に示したL1は、停車位置までの距離を示す。また、式(1)に示したV1は、現在の速度を示す。また、式(1)に示したD1は、減速度を示す。また、式(1)に示したΔVは、惰力走行による速度の変化分を示す。惰力走行による速度の変化分ΔVは、現在の速度V1に応じて算出される。例えば、ECU10は、現在の速度V1に予め決められた割合を乗じることによって、惰力走行による速度の変化分ΔVを算出する。当該予め決められた割合は、例えば、10%であるが、10%より低い割合であってもよく、10%より高い割合であってもよい。なお、ECU10は、当該予め決められた割合を、外部の環境変化(例えば、風向き、風速、気温等の変化)に応じて決められる構成であってもよい。また、ECU10は、現在の速度V1に応じた他の方法によって惰力走行による速度の変化分ΔVを算出する構成であってもよい。
【0039】
また、惰力走行開始ポイントT1は、予め、停車位置までの距離L1、現在の速度V1、減速度D1等に対応する最適な惰力走行開始ポイントを実験により求めておき、この実験で求めた最適な惰力開始ポイントからルックアップテーブルを作成し、このルックアップテーブルを用いて算出しても良い。
【0040】
(ステップS106)ECU10は、惰力走行開始ポイントに達したか否かを判定し、惰力走行開始ポイントに達したら(ステップS106:Yes)、処理をステップS107に進める。なお、ECU10は、ステップS105において算出した惰力走行開始ポイントが負の値である場合も、処理をステップS107に進める。当該場合、当該負の値は、車両がすでに惰力走行開始ポイントを通過していることを意味するからである。
【0041】
(ステップS107)ECU10は、インバーター30に指令を与えて、ニュートラル状態に設定する。ここで、ニュートラル状態は、モーター50の状態のうち電動車両1を惰行させることが可能な状態のことである。すなわち、ECU10は、モーター50が力行動作も回生動作も行わず、フリーラン状態となるようにインバーター30を制御する。
【0042】
(ステップS108)ECU10は、ブレーキングポイントに達したか否かを判定し、ブレーキングポイントに達したら(ステップS108:Yes)、処理をステップS109に進める。
【0043】
(ステップS109)ECU10は、インバーター30に指令を与えて、ドライブ状態に設定し、処理をステップS110に進める。すなわち、ECU10は、減速時にモーター50が回生動作するように、インバーター30を制御する。
【0044】
(ステップS110)ECU10は、目標位置で車両が停止するように、ブレーキ制御を行う。すなわち、ECU10は、目標位置で車両が停止するように、モーター50を回生動作させるとともに、機械ブレーキ21を制御する。モーター50の回生動作による回生ブレーキと機械ブレーキ21との少なくとも一方が、電動車両1を制動させる制動部となる。
【0045】
このように、本発明の第1の実施の形態に係る電動車両1では、ECU10は、前方の信号機が赤である等、電動車両1の進行方向に制動させる条件があるかを検出している(ステップS101)。そして、電動車両1を制動させる条件になったことを検出すると、ECU10は、停止位置までの距離と、速度と、減速度とから、惰力走行開始ポイントを算出している(ステップS105)。惰力走行開始ポイントに達したら(ステップS106)、ECU10は、電動車両1をニュートラル状態にして(ステップS107)、惰力走行させている。そして、ブレーキングポイントに達したら(ステップS108)、ECU10は、電動車両1をドライブ状態に設定して(ステップS109)、ブレーキ制御を行っている(ステップS110)。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態に係る電動車両1における制動操作を説明するためのグラフである。
【0047】
図3において、位置P2は停止位置であり、電動車両1は、速度V1で定速で位置P1を通過するときに、停止位置P2を検出したとする。具体的には、停止位置P2は、例えば、赤色に点灯している信号機により車両が停止すべき位置である。この場合、ECU10は、位置P1から位置P2までの距離L1と、位置P1での速度V1と、ブレーキ制御したときの減速度D1とから、惰力走行開始ポイントT1を算出する。
【0048】
電動車両1は、惰力走行開始ポイントT1に到達する前の区間t1では、ドライブ状態で車速一定で走行しており、惰力走行開始ポイントT1に達すると、ニュートラル状態になり、惰力走行となる。惰力走行開始ポイントT1からブレーキングポイントT2までの区間t2では、電動車両1は、惰力走行となり、車速は徐々に下降していく。ブレーキングポイントT2では、電動車両1の速度V2は、速度V1より僅かな速度ΔVだけ低下した速度(V2=V1−ΔV)となっている。
【0049】
ブレーキングポイントT2に到達すると、電動車両1はドライブ状態に設定され、モーター50の回生動作と機械ブレーキ21により、ブレーキ制御が行われる。これにより、ブレーキングポイントT2から後の期間t3では、所定の減速度D1で電動車両1の速度は低下していき、停止位置P2で、電動車両1は停止する。
【0050】
このような制御を行った場合、惰力走行開始ポイントT1に到達する前の区間t1では、速度を一定にするために、エネルギーが消費される。ここで、エネルギーの消費は、バッテリ40を放電して電力を消費することを意味する。惰力走行開始ポイントT1からブレーキングポイントT2までの区間t2では、電動車両1は惰力走行となり、エネルギーは殆ど消費されない。ブレーキングポイントT2に達してから、電動車両1が停止するまでの期間t3では、モーター50の回生動作により、エネルギーが回収される。ここで、エネルギーの回収は、バッテリ40を充電して電力を蓄積することを意味する。
【0051】
このように、本実施形態に係る電動車両1は、ブレーキングポイントT2の前に、惰力走行開始ポイントT1を設け、電動車両1をニュートラル状態に設定して、惰力走行させる期間を設けている。これにより、電動車両1は、自動運転を行う場合に、エネルギー効率を向上させることができる。このことについて、更に説明する。
【0052】
図4A及び
図4Bは、電動車両1をドライブ状態から制動させた場合とニュートラル状態から制動させた場合とで、走行状態を比較したものである。
【0053】
図4Aに示すように、電動車両1は一定速度(例えば40km/h)で位置P101を走行しており、その進行方向に距離L101だけ離れた位置P102に、赤が点灯している信号機2があるとする。信号機2が赤であることから、電動車両1は、信号機2の位置P102で停止する必要がある。この場合、運転者が電動車両1を運転している場合、運転者は、通常、シフトレバーをDレンジに設定したまま、ブレーキングポイントまで一定速度を維持して走行し、ブレーキングポイントとなる位置からブレーキ操作して、電動車両1を停止させる。電動車両1を自動運転させる場合も、運転者が行っている操作と同様に、電動車両1をドライブ状態に設定したまま、ブレーキングポイントまで一定速度を維持して走行し、ブレーキングポイントとなる位置から、所望の減速度となるように、ブレーキ制御して、電動車両1を停止させることが考えられる。
【0054】
図4Aは、このように、電動車両1をドライブ状態からブレーキ操作を行って制動させる場合を示している。すなわち、
図4Aにおいて、区間t101では、電動車両1はドライブ状態で一定速度で走行されている。電動車両1を自動停止させるために、所望の減速度(例えば−0.1Gである。ここで、Gは、重力加速度を示す)で電動車両1を位置P102で停車させるためのブレーキングポイントT101が設定され、このブレーキングポイントT101から、区間t102の間、回生動作による回生ブレーキと機械ブレーキにより電動車両1が制動され、電動車両1は位置P102で停止される。
【0055】
これに対して、
図4Bは、ニュートラル状態に設定してから、ブレーキ操作を行って制動させる場合を示している。すなわち、
図4Bにおいて、電動車両1は一定速度(例えば40km/h)で位置P101を走行しており、その進行方向に距離L101だけ離れた位置P102に、赤が点灯している信号機2があるとする。これは、
図4Aに示した電動車両1をドライブ状態から制動させた場合の条件と同様である。位置P101から区間t201の間では、電動車両1はニュートラル状態となり、惰力で走行している。電動車両1が惰力走行であることから、電動車両1の速度は、それまでの速度(例えば40km/h)より僅かに低下していく。電動車両1を自動停止させるために、所望の減速度(例えば−0.1G)で電動車両1を位置P202で停車させるためのブレーキングポイントT201が設定され、このブレーキングポイントT201から、区間t202の間、回生動作による回生ブレーキと機械ブレーキにより、電動車両1が制動され、電動車両1は位置P102で停止される。
【0056】
図5A及び
図5Bは、このように電動車両1をドライブ状態から制動させた場合とニュートラル状態から制動させた場合とで、エネルギー消費量を比較したものである。
【0057】
図5Aに示すように、電動車両1をドライブ状態から制動させた場合、ドライブ状態で走行している区間t101では、一定速度を維持して電動車両1を走行させるために、エネルギーが消費される。この区間t101でのエネルギー消費量をE101とする。そして、ブレーキ制御を行っている区間t102では、回生動作によりエネルギーが回収される。このとき回収されるエネルギー回収量をE102とする。この場合、距離L101を走行するのに要したエネルギーEaは、(Ea=E101−E102)となる。
【0058】
これに対して、
図5Bに示すように、電動車両1をニュートラル状態から制動させた場合、ドライブ状態で走行している区間t201では、エネルギーは殆ど消費されない。この区間t201でのエネルギー消費量をE201とする。そして、区間t202では、回生動作によりエネルギーが回収される。このとき回収されるエネルギー回収量をE202とする。この場合、距離L101を走行するのに要したエネルギーEbは、(Eb=E201−E202)となる。
【0059】
電動車両1をドライブ状態から制動させた場合に要したエネルギーEaと、ニュートラル状態から制動させた場合に要したエネルギーEbとを比較すると、車速を維持するためにエネルギーを消費することから、区間t101でのエネルギー消費量E101は区間t201でのエネルギー消費量E201より大きくなる(E101>E201)。また、惰力走行の場合には車速が落ちることから、区間t102で回収するエネルギー回収量E102は区間t202で回収するエネルギー回収量E202より大きい(E102>E202)。このように、電動車両1をドライブ状態から制動させた場合には、エネルギー消費量も大きいが、エネルギーの回収量も大きい。しかしながら、電動車両1をドライブ状態から制動させた場合とニュートラル状態から制動させた場合とでは、エネルギーの消費量の差(E101−E201)は非常に大きいが、エネルギーの回収量の差(E102−E202)は僅かである。このことから、電動車両1をドライブ状態から制動させた場合とニュートラル状態から制動させた場合とでエネルギー量を比較すると、電動車両1をニュートラル状態から制動させた場合の方が、ドライブ状態から制動させた場合より、同一距離走行するのに要するエネルギーが小さくなり(Ea>Eb)、エネルギー効率の向上が期待できる。
【0060】
図6A及び
図6Bは、電動車両1をドライブ状態から制動させた場合とニュートラル状態から制動させた場合とのエネルギー量を実験値で比較したものである。
【0061】
図6Aにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は車速を示す。また、曲線101はドライブ状態から制動させた場合の車両の速度変化を示し、曲線102はニュートラル状態から制動させた場合の車両の速度変化を示している。
【0062】
曲線101で示すように、ドライブ状態から制動させた場合には、ブレーキングポイントまで、速度は一定となっている。ブレーキングポイントからは、所望の減速度で速度が減少していく。これに対して、曲線102で示すように、ニュートラル状態から制動させた場合には、ブレーキングポイントに達する前に、速度は僅かに低下する。そして、ブレーキングポイントからは、所望の減速度で速度が減少していく。
【0063】
図6Bにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は電力を示す。ここで、電力はプラスの側が電力の消費を示し、マイナス側が電力の回収を示す。また、曲線111はドライブ状態から制動させた場合の電力の変化を示し、曲線112はニュートラル状態から制動させた場合の電力の変化を示している。
【0064】
曲線111で示すように、ドライブ状態から制動させた場合には、ブレーキングポイントまで、速度を維持するための電力を消費している。この例では、このときの平均消費電力は3.2kWであり、この間でのエネルギー消費量は、48kJである。ブレーキングポイントからは、回生動作により、電力を回収している。このときの平均発電電力は4.7kWであり、この間でのエネルギー回収量は、64kJである。これに対して、曲線112で示すように、ニュートラル状態から制動させた場合には、惰力走行となるので、電力は殆ど消費しない。この例では、このときの平均消費電力は0.28kWであり、この間でのエネルギー消費量は、4kJである。ブレーキングポイントからは、回生動作により、電力は回収される。このときの平均発電電力は3.8kWであり、この間でのエネルギー回収量は、50kJである。
【0065】
電動車両1をニュートラル状態から制動させた場合の方が、ドライブ状態から制動させた場合より、同一距離走行するのに要するエネルギーが小さくなることは、
図6A及び
図6Bに示す実験値からも明らかである。
【0066】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る電動車両1では、電動車両1の進行方向の状態を検出し、電動車両1を制動させる条件になったことを検出すると、所定の惰力走行開始ポイントからニュートラル状態にして、惰力走行させた後、ブレーキ制御を行っている。これにより、電動車両1のエネルギー効率が向上される。
【0067】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る電動車両について説明する。前述の第1の実施形態では、電動車両1は、車速制御を自動で行う自動運転を想定している。これに対して、この第2の実施形態では、運転者から運転操作を受け付け、受け付けた運転操作に応じて走行する車両を想定している。すなわち、この第2の実施形態では、運転者がペダルやステアリングをマニュアルで操作して運転する。なお、電動車両1の基本構成は、
図1に示した電動車両1と同様に構成できる。
【0068】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る電動車両における制動操作を説明するためのフローチャートである。なお、ステップS201以前では、電動車両1は、ドライブレンジで、一定速度で走行を行っているとする。
【0069】
(ステップS201)ECU10は、電動車両1の進行方向の状態を検出し、電動車両1を制動させる条件になったことを検出する。
【0070】
(ステップS202)電動車両1を制動させる条件になったことが検出されたら、ECU10は、電動車両1の停車位置までの距離を計測する。
【0071】
(ステップS203)次に、ECU10は、現在の電動車両1の速度を計測する。
【0072】
(ステップS204)次に、ECU10は、車両の減速度を設定する。
【0073】
(ステップS205)次に、ECU10は、電動車両1の停車位置までの距離と、現在の速度と、減速度の情報から、惰力走行開始ポイントを算出する。
【0074】
(ステップS206)ECU10は、惰力走行開始ポイントに達したか否かを判定し、惰力走行開始ポイントに達したら(ステップS206:Yes)、処理をステップS207に進める。
【0075】
(ステップS207)ECU10は、ディスプレイ22にニュートラル指示の表示を行う。すなわち、
図8は、本発明の第2の実施形態に係る電動車両における表示の一例である。この例では、ディスプレイ22は、インストルメントパネルであり、速度表示81等を行っている。このディスプレイ22に、ニュートラルレンジに設定することを促すニュートラル指示82の表示が行われる。
【0076】
(ステップS208)ECU10は、運転者がシフトレバーをニュートラルレンジに設定したか否かを判定する。ニュートラルレンジに設定したら(ステップS208:Yes)、処理をステップS209に進め、ニュートラルレンジに設定していなければ(ステップS208:No)、処理をステップS214に進める。
【0077】
(ステップS209)ステップS208で、ニュートラルレンジに設定されていれば(ステップS208:Yes)、ECU10は、ニュートラル状態に設定し、処理をステップS210に進める。
【0078】
(ステップS210)ECU10は、運転者がブレーキペダルを操作したか否かを判定する。ブレーキペダルを操作していたら(ステップS210:Yes)、処理をステップS211に進める。
【0079】
(ステップS211)ECU10は、ニュートラル指示の表示を消灯して、処理をステップS212に進める。
【0080】
(ステップS212)ECU10は、ドライブ状態に設定し、処理をステップS213に進める。
【0081】
(ステップS213)ECU10は、運転者のブレーキ操作に応じて、モーター50を回生動作させるとともに、機械ブレーキ21を制御する。
【0082】
(ステップS214)ステップS208で、ニュートラルレンジに設定されていなければ(ステップS208:No)、ECU10は、運転者がブレーキペダルを操作したか否かを判定する。ブレーキペダルを操作していなければ(ステップS214:No)、処理をステップS208に戻し、ブレーキペダルを操作していたら(ステップS214:Yes)、処理をステップS215に進める。
【0083】
(ステップS215)ECU10は、ニュートラル指示の表示を消灯して、処理をステップS213に進め、ブレーキ制御を行う。
【0084】
このように、本発明の第2の実施の形態に係る電動車両では、ECU10は、前方の信号機が赤である等、電動車両1の進行方向に制動させる条件があるかを検出し(ステップS201)、電動車両1を制動させる条件になったことを検出すると、停止位置までの距離と、速度と、減速度とから、惰力走行開始ポイントを算出している(ステップS205)。そして、ECU10は、惰力走行開始ポイントに達したら(ステップS206)、ニュートラルに設定した方がエネルギー効率が向上することを促すニュートラル指示を表示している(ステップS207)。そして、ECU10は、運転者がニュートラルに操作した場合には(ステップS208:Yes)、ニュートラル状態に設定して電動車両1を惰力走行させ(ステップS209)、ブレーキングポイントに達して運転者がブレーキ操作を行うと(ステップS210:Yes)、電動車両1をドライブ状態に設定して(ステップS212、ブレーキ制御を行っている(ステップS213)。
【0085】
なお、ステップS207でニュートラル指示を表示しても、運転者がニュートラルに設定しない場合には(ステップS208:No)、ECU10は、ブレーキングポイントに達して運転者がブレーキ操作を行うと(ステップS214:Yes)、そのままブレーキ制御を行うようにしている(ステップS213)。
【0086】
このように、本実施形態では、運転者がブレーキ操作する場合でも、ブレーキ制御の前に惰力走行が行われることから、電動車両1のエネルギー効率を向上させることができる。
【0087】
なお、上述の例では、惰力走行開始ポイントに達したら、ニュートラル指示を表示し、ニュートラルに設定することを運転者に促しているが、運転者がブレーキ操作する場合でも、惰力走行開始ポイントに達したら、ECU10の制御により、ニュートラル状態に自動的に設定するようにしても良い。
【0088】
上述した実施形態における電動車両1の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0089】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。