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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-89871(P2020-89871A)
(43)【公開日】2020年6月11日
(54)【発明の名称】シムおよびスロットダイヘッド
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20200515BHJP
【FI】
   B05C5/02
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-75941(P2019-75941)
(22)【出願日】2019年4月11日
(31)【優先権主張番号】201811493421.7
(32)【優先日】2018年12月7日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201822049834.8
(32)【優先日】2018年12月7日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ピン−ヤオ ウ
(72)【発明者】
【氏名】ウェン−ビン チュウ
【テーマコード(参考)】
4F041
【Fターム(参考)】
4F041AB01
4F041BA12
4F041BA13
4F041CA03
4F041CA25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】塗工液の淀み領域を防止できるシムおよびスロットダイヘッドを提供する。
【解決手段】シムは、第1部分100a、第2部分200aおよび第3部分を含んでよい。第2部分200aおよび第3部分は、第1部分100aに連結されて同じ側に突出する。第2部分200aおよび第3部分は離間させられ、第1分配室2101aに連結される主要流路C1aを形成する。第2部分200aは、開放端C2a2および閉鎖端C2a1を含む第1バイパスC2aを有する。開放端C2a2は、主要流路C1aに連結される。開放端C2a2と第1部分100aとの間の最短距離は、閉鎖端C2a1と第1部分100aとの間の最短距離より大きい。第2部分200aは、第1分配室2101aを部分的に覆い、閉鎖端C2a1は、第1分配室2101aを部分的に露出させる。本開示は前述のシムを有するスロットダイヘッドにも関する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットダイ本体の実装面に配設されて前記実装面上の第1分配室を部分的に覆うことで、前記スロットダイ本体の塗工幅を変更するように構成されているシムであって、前記シムは、
第1部分、第2部分および第3部分を備え、前記第2部分および前記第3部分は、前記第1部分の側面に連結されて同一方向に突出し、前記第2部分および前記第3部分は、前記第2部分と前記第3部分との間に主要流路が形成されるように、ある距離だけ離間させられ、前記主要流路は、前記第1分配室に連結するように構成され、前記第2部分は、第1バイパスを有し、前記第1バイパスは、互いに対向する第1開放端および第1閉鎖端を含み、前記第1開放端は、前記主要流路に連結され、前記第1開放端と前記第1部分との間の最短距離が、前記第1閉鎖端と前記第1部分との間の最短距離より大きく、
前記第2部分は、前記第1分配室を部分的に覆うように構成され、前記第2部分の前記第1バイパスの前記第1閉鎖端は、前記第1分配室を部分的に露出させるように構成される、シム。
【請求項2】
前記第3部分は、第2バイパスを有し、前記第2バイパスは、互いに対向する第2開放端および第2閉鎖端を含み、前記第2開放端は、前記主要流路に連結され、前記第2開放端と前記第1部分との間の最短距離が、前記第2閉鎖端と前記第1部分との間の最短距離より大きく、前記第3部分は、前記第1分配室を部分的に覆うように構成され、前記第3部分の前記第2バイパスの前記第2閉鎖端は、前記第1分配室を部分的に露出させるように構成される、請求項1に記載のシム。
【請求項3】
実装面と、前記実装面上の第1分配室とを有するスロットダイ本体と、
前記実装面に配設されるシムと
を備えるスロットダイヘッドであって、前記シムは、
第1部分、第2部分および第3部分を有し、前記第2部分および前記第3部分は、前記第1部分の側面に連結されて同一方向に突出し、前記第2部分および前記第3部分は、前記第2部分と前記第3部分との間に主要流路が形成されるように、ある距離だけ離間させられ、前記主要流路は、前記第1分配室に連結するように構成され、前記第2部分は、第1バイパスを有し、前記第1バイパスは、互いに対向する第1開放端および第1閉鎖端を含み、前記第1開放端は、前記主要流路に連結され、前記第1開放端と前記第1部分との間の最短距離が、前記第1閉鎖端と前記第1部分との間の最短距離より大きく、
前記第2部分は、前記第1分配室を部分的に覆うように構成され、前記第2部分の前記第1バイパスの前記第1閉鎖端は、前記第1分配室を部分的に露出させるように構成される、スロットダイヘッド。
【請求項4】
前記第3部分は、第2バイパスを有し、前記第2バイパスは、互いに対向する第2開放端および第2閉鎖端を含み、前記第2開放端は、前記主要流路に連結され、前記第2開放端と前記第1部分との間の最短距離が、前記第2閉鎖端と前記第1部分との間の最短距離より大きく、前記第3部分は、前記第1分配室を部分的に覆うように構成され、前記第3部分の前記第2バイパスの前記第2閉鎖端は、前記第1分配室を部分的に露出させるように構成される、請求項3に記載のスロットダイヘッド。
【請求項5】
前記スロットダイ本体は更に、前記実装面に位置する第2分配室を有し、前記第2分配室および前記第1分配室は、ある距離だけ離間させられ、前記第2分配室は、前記第1バイパスを介して前記第1分配室に連結される、請求項3または4に記載のスロットダイヘッド。
【請求項6】
前記スロットダイ本体は、旋回可能に互いに連結される第1ダイ本体および第2ダイ本体を有し、前記第1ダイ本体は、第1リップ部および前記実装面を含み、前記第2ダイ本体は、第2リップ部を含み、前記第1リップ部と前記第2リップ部との間には、スロット間隙が形成され、前記第2分配室は、前記第1分配室よりも、前記第1リップ部の近くに位置する、請求項5に記載のスロットダイヘッド。
【請求項7】
前記第1分配室および前記第2分配室の断面積の値が、固定値または可変値である、請求項5または6に記載のスロットダイヘッド。
【請求項8】
前記第1分配室と前記第2分配室との間の距離が、前記第1リップ部の幅より小さい、請求項6に記載のスロットダイヘッド。
【請求項9】
前記第1分配室の、前記第1リップ部に近い面の第1出射角度が、前記実装面に対して40〜90度であり、前記第2分配室の、前記第1リップ部に近い面の第2出射角度が、前記実装面に対して30〜90度である、請求項6または8に記載のスロットダイヘッド。
【請求項10】
前記スロットダイ本体は、前記第1分配室に連結される供給口を有する、請求項3から9の何れか一項に記載のスロットダイヘッド。
【請求項11】
前記スロットダイ本体は、互いに連結される少なくとも1つのスロット間隙および少なくとも1つの供給口を有し、前記少なくとも1つのスロット間隙および前記少なくとも1つの供給口は、前記第1分配室に連結される、請求項3から10の何れか一項に記載のスロットダイヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シムおよびスロットダイヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
精密塗工技術は、未来における薄膜技術の進歩に重要である。多くの塗工技術の中でも、スロットダイ塗工技術が広く使用されている。電子産業の発達に伴い、塗工厚みの要求が非常に厳しくなってきている。
【0003】
しかしながら、従来のスロットダイヘッドでは大抵、シムを用いて塗工幅を変更するときに不具合が生じた。詳しく言うと、様々なサイズのシムをスロットダイのスロットに配置して分配室の一部を覆うことにより塗工幅を変更することができるが、シムの下にある分配室の領域で塗工液が蓄溜および遮断されやすい。その結果、塗工液の一部が減速し、流れなくなって淀み流れに変化しさえする。これは、塗工液の品質劣化、例えば、凝固につながり、ひいては、塗工処理に悪影響を及ぼし、不良率を上げる。
【発明の概要】
【0004】
これに応じて、本開示は、従来のシムであれば生じていた塗工液の淀み領域を防止できるシムおよびスロットダイヘッドを提供する。
【0005】
本開示の一実施形態は、スロットダイ本体の実装面に配設されて実装面上の第1分配室を部分的に覆うことで、スロットダイ本体の塗工幅を変更するように構成されているシムを提供する。シムは、第1部分、第2部分および第3部分を含む。第2部分および第3部分は、第1部分の側面に連結されて同一方向に突出し、第2部分および第3部分は、第2部分と第3部分との間に主要流路が形成されるように、ある距離だけ離間させられ、主要流路は、第1分配室に連結するように構成され、第2部分は、第1バイパスを有し、第1バイパスは、互いに対向する第1開放端および第1閉鎖端を有し、第1開放端は、主要流路に連結され、第1開放端と第1部分との間の最短距離が、第1閉鎖端と第1部分との間の最短距離より大きい。第2部分は、第1分配室を部分的に覆うように構成され、第2部分の第1バイパスの第1閉鎖端は、第1分配室を部分的に露出させるように構成される。
【0006】
本開示の別の実施形態は、スロットダイ本体およびシムを含むスロットダイヘッドを提供する。スロットダイ本体は、実装面と、当該実装面上の第1分配室とを有する。シムは、実装面に配設される。シムは、第1部分、第2部分および第3部分を含み、第2部分および第3部分は、第1部分の側面に連結されて同一方向に突出し、第2部分および第3部分は、第2部分と第3部分との間に主要流路が形成されるように、ある距離だけ離間させられ、主要流路は、第1分配室に連結するように構成され、第2部分は、第1バイパスを有し、第1バイパスは、互いに対向する第1開放端および第1閉鎖端を有し、第1開放端は、主要流路に連結され、第1開放端と第1部分との間の最短距離が、第1閉鎖端と第1部分との間の最短距離より大きい。第2部分は、第1分配室を部分的に覆うように構成され、第2部分の第1バイパスの第1閉鎖端は、第1分配室を部分的に露出させるように構成される。
【0007】
シムおよびスロットダイヘッドによると、第1分配室を覆っているシムの第2部分は、第1バイパスを有し、第1バイパスは、主要流路に連結される開放端と、第1分配室を露出させる閉鎖端とを有する。従って、塗工幅を変更するために第1分配室がシムの第2部分で部分的に覆われているとき、第1分配室にあり、かつ、第2部分で覆われている、塗工液は、第1バイパスに流入した後、主要流路内の塗工液と合流することができる。故に、分配室内の塗工液が遮断または阻害されて淀み流れをもたらすことはない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示は、以下に示す詳しい説明、および、添付の図面からより良く理解されるであろう。これらは単に例示として示されているものであり、ひいては、本開示の限定を意図するものではない。
図1】本開示の第1実施形態に係るスロットダイヘッドの斜視図である。
図2図1のスロットダイヘッドの分解図である。
図3】本開示の第1実施形態に係るスロットダイヘッドの断面図である。
図4図3の第1ダイ本体を部分的に拡大した断面図である。
図5図1のシムおよび第1ダイ本体の上面図である。
図6図1のシムの平面図である。
図7】本開示の第1実施形態に係るスロットダイヘッドを部分的に拡大した図である。
図8】本開示の第1実施形態に係るスロットダイヘッドの流動シミュレーションである。
図9】従来のスロットダイヘッドの流動シミュレーションである。
図10】本開示の第2実施形態に係るスロットダイヘッドの平面図である。
図11】本開示の第3実施形態に係るスロットダイヘッドの平面図である。
図12】本開示の第3実施形態に係るスロットダイヘッドを部分的に拡大した図である。
図13】本開示の第3実施形態に係るスロットダイヘッドの流動シミュレーションである。
図14】従来のスロットダイヘッドの流動シミュレーションである。
図15】本開示の第4実施形態に係るスロットダイヘッドの断面図である。
図16】本開示の第5実施形態に係るスロットダイヘッドの断面図である。
図17】本開示の第6実施形態に係るスロットダイヘッドの断面図である。
図18】本開示の第7実施形態に係るスロットダイヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳しい説明では、説明を目的として、開示される実施形態を十分に理解できるように多数の具体的な詳細を記載する。しかしながら、これらの具体的な詳細なしに1つまたは複数の実施形態が実施され得ることが明らかになるであろう。他の事例では、図面を簡略化すべく、周知の主要な構造およびデバイスが概略的に示されている。
【0010】
加えて、本開示で使用されている用語、例えば、技術用語および科学用語は、独自の意味を持ち、これらの用語が本開示で更に定義されない限りは、当業者により理解され得る。すなわち、以下の段落で使用されている用語は、関連分野で通常使用されている意味に基づいて解釈されるべきであり、これらの用語が本開示において具体的な意味を持たない限りは、過度に説明しないことにする。更には、図面を簡略化すべく、幾つかの従来の構造および構成要素は、図面をきれいに保つため簡略的に描かれている。
【0011】
更には、図によって以下の実施形態が開示され、以下の段落において幾つかの実用的な詳細が説明されているが、本開示がこれに限定されるわけではない。更には、例示を目的として、図中の構造および構成要素のうちの幾つかが簡略化され、これらの図のうちの幾つかにおいて配線、回線またはバスが省略されている。本開示の図面中の構成要素のサイズ、比率および角度は、例示を目的として誇張されているかもしれないが、本開示がこれに限定されるわけではなく、本開示の趣旨から逸脱しない限り、様々な修正が認められており、これらの修正は以下の開示に従って行われ得る。本開示に基づいて製造される製品の実際のサイズおよび設計は、任意の実際の要件に従って修正されてもよいことに留意されたい。
【0012】
更に、以下では、「端部」、「部分(portion)」、「部分(part)」および「領域」などといった用語が、具体的な構成要素および構造、または、それらに関する、もしくは、それらの間にある具体的な特徴を説明するために使用されているかもしれないが、これらの構成要素および構造の限定を意図するものではない。以下では、「実質的に」、「およそ」または「約」などの用語が使用されているかもしれないが、これらの用語がサイズ、濃度、温度、または、他の物理的もしくは化学的な性質もしくは特性と組み合わせて使用されるとき、これらの用語は、これらの性質または特性の範囲の上限および/または下限にずれが存在しても、または、製造上の公差または分析処理により許容公差が生じても、依然として所望の効果を実現できることを表すために使用される。
【0013】
更に、特に定義されない限り、本開示で使用されている全ての用語は、技術用語および科学用語を含めて、当業者により理解され得る普通の意味を持つ。更に、上記用語の定義は、本開示に関連する技術分野に矛盾しないものと解釈されるべきである。特に定義されない限り、これらの用語は、過度に理想的または形式的な意味と解釈されるべきではない。本開示における構成要素の用語は、記載要件に応じてより簡潔に言及されることがあり、読者によって理解されるはずである。
【0014】
初めに、図1および図2を参照されたい。ここでは、本開示の第1実施形態がスロットダイヘッド1aを提供する。スロットダイヘッド1aは、シム(別名、シムプレート)10aおよびスロットダイ本体(別名、スロットダイ)20aを含む。
【0015】
スロットダイ本体20aは、第1ダイ本体201aおよび第2ダイ本体202aを含む。シム10aは、第1ダイ本体201aの実装面Sに配設される。第2ダイ本体202aは、第1ダイ本体201aに対して第2ダイ本体202aを旋回させることで第1ダイ本体201aにシム10aを保持または露出させることができるように、第1ダイ本体201aの側面に旋回可能に連結される。スロットダイ本体20aは、本開示を説明するための例であり、本開示の限定を意図するものではないことに留意されたい。例えば、幾つかの他の実施形態において、第1ダイ本体および第2ダイ本体は、図1に示されているヒンジではなく、ネジなどの他の手段を介して互いに連結され得る。
【0016】
より詳しく言うと、この実施形態において、第1ダイ本体201aは、実装面Sに形成される、第1分配室2101aおよび第2分配室2102aを有する。第1分配室2101aおよび第2分配室2102aの長さは実質的に同じである。一般に、第1分配室2101aおよび第2分配室2102aの長さは、スロットダイ本体20aの最大塗工幅と実質的に同じであるが、本開示がこれに限定されるわけではない。第1分配室または第2分配室の当該「長さ」は、第1分配室または第2分配室の長辺の長さを意味する。加えて、第1分配室2101aは、第2分配室2102aよりも、第1ダイ本体201aが第2ダイ本体202aに連結される部分の近くに位置する。このような配置において、第1分配室2101aは、内側分配室または内側空洞と呼ばれてもよく、第2分配室2102aは、外側分配室または外側空洞と呼ばれてもよい。
【0017】
更に、第1ダイ本体201aは、第1分配室2101aに連結される供給口Fを有する。供給口Fは、塗工液(別名、塗料)が供給口Fから第1分配室2101aに注入され得るように、塗工液貯蔵器(図示せず)に連結されてよい。
【0018】
次に、図3は、スロットダイヘッド1aの断面図を示している。この実施形態において、第1ダイ本体201aおよび第2ダイ本体202aは、ヒンジ(付番せず)から離れて位置する第1リップ部2011aおよび第2リップ部2021aをそれぞれ有し、第1リップ部2011aおよび第2リップ部2021aはくさび形になっている。スロットダイヘッド1aが閉じているとき、第1リップ部2011aと第2リップ部2021aとの間には、塗工液を形作るためのスロット間隙Gが形成される。スロット間隙Gの幅および高さは、実際の要件に従って調整され得るが、本開示がこれに限定されるわけではない。図示の通り、シム10aはスロット間隙Gに配置される。
【0019】
加えて、第1分配室2101aと第2分配室2102aとの間に、中央ランド2103が位置する。言い換えると、第1分配室2101aおよび第2分配室2102aは、中央ランド2013により離間させられる。第2分配室2102aは、第1分配室2101aよりも、第1リップ部2011aの近くに位置する。すなわち、第2分配室2102aは、第1分配室2101aよりも、スロット間隙Gの開口の近くに位置する。塗工液は、供給口Fから第1分配室2101aに供給されることで中央ランド2103に溢れ出し、第2分配室2102aに流入した後、スロット間隙Gを流れてスロットダイ本体20aから流出することができる。
【0020】
次に、図4は、図3の第1ダイ本体201aを部分的に拡大した図を示している。この実施形態では、第1分配室2101aが断面積A1、第1深さD1、第1出射角度R1および第1幅W1を有するものと定義し、第2分配室2102aが断面積A2、第2深さD2、第2出射角度R2および第2幅W2を有するものと定義する。第1分配室2101aまたは第2分配室2102aの当該断面積は、その中央部において測定され、当該深さは、第1分配室2101aまたは第2分配室2102aの底と、第1ダイ本体201aの実装面Sが位置する平面(例えば、図に示されている基準面P)との間の垂直距離であり、当該出射角度は、第1分配室2101aまたは第2分配室2102aの、第1リップ部2011aに近い傾斜面から第1ダイ本体201aの実装面Sまでの角度であり、当該幅は、第1分配室2101aまたは第2分配室2102aの長辺同士の距離である。加えて、図示の通り、第1分配室2101aは、第1リップ部2011aから離れて位置する第1長辺21011と、第1リップ部2011aの近くに位置する第2長辺21012とを有し、第2分配室2102aは、第1リップ部2011aから離れて位置する第1長辺21021と、第1リップ部2011aの近くに位置する第2長辺21022とを有する。当該第1幅W1は、第1分配室2101aの第1長辺21011と第2長辺21012との間の距離であり、当該第2幅W2は、第2分配室2102aの第1長辺21021と第2長辺21022との間の距離である。
【0021】
この実施形態において、第1分配室2101aの中央部の断面積A1は、第2分配室2102aの中央部の断面積A2より大きくてよく、第1分配室2101aの第1出射角度R1は、第2分配室2102aの第2出射角度R2より大きくてよい。第1出射角度R1および第2出射角度R2はどちらも、例えば、0〜90度、一般には、30〜90度であってよい。例えば、一実施形態において、第1出射角度R1は、40〜90度であってよく、第2出射角度R2は、30〜90度であってよく、第1分配室2101aの第1深さD1は、第2分配室2102aの第2深さD2より大きくてよく、第1分配室2101aの第1幅W1は、第2分配室2102aの第2幅W2より大きくてよい。上記の構成は、第1分配室2101a内の塗工液の流れを緩和および安定化するのに役立ち、ひいては、スロット間隙Gが的確な圧力および一定の速度で塗工液を最終分配に必要とされる形にすることで塗工の均一性を確保するのに役立つ。
【0022】
なお、第1分配室2101aの対向する2つの端部の断面積は、第2分配室2102aの対向する2つの端部の断面積と等しくてもよいし、それより小さくてもよいし、それより大きくてもよいが、本開示がこれに限定されるわけではない。加えて、この実施形態において、第1分配室2101aおよび第2分配室2102aの断面積はそれぞれ、一方の端部からもう一方の端部に至るまで固定値であり、すなわち、第1分配室2101aおよび第2分配室2102aの断面積は、一方の端部からもう一方の端部に至るまでの間で変化しないが、本開示が第1分配室および/または第2分配室の形状によって制限されるわけではない。例えば、一実施形態において、第1分配室および/または第2分配室の断面積は、一方の端部からもう一方の端部に至るまでの間で変化してよく、例えば、中央部での断面積は、どちらか一方の端部より大きくてよく、第1分配室の端部の断面積は、第2分配室の端部の断面積と等しくてもよいし、それより小さくてもよく、第1分配室の端部の出射角度、深さ、および幅は、第2分配室の端部の出射角度、深さ、および幅と等しくてもよいし、それより小さくてもよい。
【0023】
加えて、この実施形態において、中央ランド2103は、第3幅W3を有し、第1リップ部2011aは、第4幅W4を有する。シム10aは、塗工液がスロット間隙Gを流れて中央ランド2103および第1リップ部2011aに溢れ出すように誘導することができる。従って、第3幅W3は、第1スロット長さとみなされてよく、第4幅W4は、第2スロット長さとみなされてよい。第3幅W3は、第1分配室2101aと第2分配室2102aとの間の距離である。第4幅W4は、第2分配室2102aと第1リップ部2011aの先端(付番せず)との間の距離であり、すなわち、第4幅W4は、第1リップ部2011aの幅である。第4幅W4は、塗工液が第2分配室2102aから第1リップ部2011aの先端まで移動する、移動距離とみなされてもよい。この実施形態において、中央ランド2103の第3幅W3は少なくとも、第1リップ部2011aの第4幅W4より小さく、すなわち、第1分配室2101aと第2分配室2102aとの間の距離は、第1リップ部2011aの幅より小さい。これは、第2分配室2102aからの塗工液の流速を緩和し、ひいては、塗工液が第2分配室2102aから第1リップ部2011aの先端まで過度に速く流れるのを防止するのに役立つが、本開示がこれに限定されるわけではない。
【0024】
実際、第1分配室2101aおよび第2分配室2102aの寸法、ならびに、これらの寸法と、隣接する構成要素との構造的関係は全て、塗工液の性質、例えば、材料、温度もしくはレオロジ、および/または、塗工要件に従って修正され得る。例えば、幾つかの他の実施形態において、スロットダイ本体の第1分配室および第2分配室は、断面積A1が断面積A2より大きい、第1出射角度R1が第2出射角度R2より大きいといった幾つかの条件を満たすだけでよく、第1分配室および第2分配室の深さおよび幅は、前述の実施形態で論じた条件に従わなくてもよく、代替的に、他の実施形態において、第2ダイ本体は、上述の第1分配室および第2分配室を有してもよく、更なる別の実施形態において、第1分配室および第2分配室は、第1ダイ本体および第2ダイ本体にそれぞれ形成されてよい。
【0025】
次に、図5および図6を参照されたい。図5は、図1のシム10aおよび第1ダイ本体201aの上面図であり、図6は、図1のシム10aの平面図である。
【0026】
シム10aは、スロットダイ本体20aの塗工幅を変更すべく、スロットダイ本体20aに配設され得る。シム10aの厚みは制限されることなく、実際の要件に従って修正され得ることに留意されたい。加えて、シム10aはプラスチック製または金属製であってよいが、本開示がこれに限定されるわけではない。更に、シム10aは、例えば、ネジを介して、スロットダイ本体20aに固定されるが、本開示がこれに限定されるわけではない。シンプルな例示を目的として、シム10aを固定するためのネジは図から省略されていることに留意されたい。
【0027】
図示の通り、シム10aは、単一片で作られてよく、第1部分100a、第2部分200aおよび第3部分300aを含んでよい。第1部分100aは、ブリッジ側面101aを有する。第2部分200aおよび第3部分300aはどちらも、第1部分100aのブリッジ側面101aに連結され、第1部分100aから外側に向かって延びる。すなわち、第2部分200aおよび第3部分300aは、第1部分100aの同じ側に連結され、同一方向に延びる。第2部分200aおよび第3部分300aは、第2部分200aと第3部分300aとの間に主要流路C1aが形成されるように、ある距離だけ離間させられる。主要流路C1aは、シム10aの流出側11aに位置する開口O1を有する。開口O1は、塗工液がスロットダイ本体20aから流出できる場所であり、すなわち、開口O1は、塗工液の出口とみなされ得る。開口O1は、塗工液の流出幅を限定するように構成されている塗工幅CW1を有し、すなわち、塗工液の流出幅は、主要流路C1aの開口O1の塗工幅CW1によって決まる。当該流出側は、シムが塗工液を押し出す場所である。図示の通り、塗工幅CW1のサイズ(すなわち、開口O1のサイズ)は、流出側11aに位置する第2部分200aの縁部と第3部分300aの縁部との間の距離によって決まり、すなわち、塗工幅CW1のサイズは、第1部分100aから離れて位置する第2部分200aの縁部と第3部分300aの縁部との間の距離によって決まる。
【0028】
更に、この実施形態において、第2部分200aおよび第3部分300aはそれぞれ、第1バリア部210a、第2バリア部220aおよび第3バリア部230aを含む。第3部分300aおよび第2部分200aが鏡面対称になっているので、以下では第2部分200aについてだけ詳しく説明することにし、第2部分200aおよび第3部分300aの同じ特徴については繰り返さないことにする。
【0029】
第2部分200aにおいて、第1バリア部210aおよび第2バリア部220aはどちらも、第1部分100aのブリッジ側面101aに連結され、互いにある距離だけ離間させられる。図示の通り、第1バリア部210aおよび第2バリア部220aは、第1部分100aのブリッジ側面101aから流出側11aに向かって延びる。第3バリア部230aは、第1バリア部210aと向かい合った状態で第2バリア部220aの側面に連結され、第3部分300aに向かって延びる。第3バリア部230aは、第1バリア部210aの、第1部分100aから遠い側面の近傍に位置し、第1バリア部210aから離間させられる。
【0030】
より詳しく言うと、第1バリア部210aは、第1側面211a、第2側面212aおよび第3側面213aを有する。第2側面212aおよび第3側面213aはそれぞれ、第1バリア部210aの対向する2つの側面であり、ブリッジ側面101aに連結される。第1側面211aは、第2側面212aおよび第3側面213aに連結され、それらの間に位置し、第3バリア部230aと向かい合う。第2バリア部220aは、第1バリア部210aの第3側面213aと向かい合う第4側面221aを有し、ブリッジ側面101aおよび第3バリア部230aに連結される。第3バリア部230aは、第5側面231a、第6側面232aおよび第7側面233aを有する。第2バリア部220aの第4側面221aは、ブリッジ側面101aおよび第5側面231aに連結される。第6側面232aは、第3バリア部230aの、ブリッジ側面101aから遠い側面であり、すなわち、第6側面232aは、シム10aの流出側11aに位置する。第7側面233aは、第5側面231aおよび第6側面232aに連結され、第3部分300aと向かい合う。
【0031】
図6に示されているシム10aのように、第1部分100aのブリッジ側面101aと、第2部分200aおよび第3部分300aの第1バリア部210aの第2側面212aと、第2部分200aおよび第3部分300aの第3バリア部230aの第7側面233aとの間に、上述の主要流路C1aが形成される。加えて、この実施形態において、第2バリア部200aは、第1部分100aのブリッジ側面101a、第1バリア部210aの第1側面211aおよび第3側面213a、第2バリア部220aの第4側面221a、および、第3バリア部230aの第5側面231aで形成される第1バイパスC2aを有する。この実施形態および他の実施形態において、第1バイパスC2aは、第1閉鎖端C2a1および第1開放端C2a2を有する。図6に示されている通り、第1閉鎖端C2a1は、第1バリア部210aの第3側面213a、第1部分100aのブリッジ側面101a、および、第2バリア部220aの第4側面221aで包囲および形成され、第1開放端C2a2は、第1バリア部210aの第1側面211a、第3バリア部230aの第5側面231a、および、第2バリア部220aの第4側面221aで包囲および形成され、第1開放端C2a2は、主要流路C1aの側面に連結され、第1開放端C2a2は、第1閉鎖端C2a1よりも、シム10aの第1部分100aから更に離れて位置する。具体的に、第1開放端C2a2と第1部分100aとの間の最短距離は、第1閉鎖端C2a1と第1部分100aとの間の最短距離より大きい。この実施形態または他の実施形態において、第1開放端C2a2と第1部分100aとの間の最短距離は、第1バリア部210aの第2側面212aまたは第3側面213aの長さ(例えば、図6に示されているd1)とみなされてよく、第1閉鎖端C2a1が第1部分100aのブリッジ側面101aに直接連結されることにより、第1閉鎖端C2a1と第1部分100aとの間の最短距離は実質的に0である。
【0032】
同様に、第3部分300aは、第2バイパスC3aを有し、第2バイパスC3aは、第2閉鎖端C3a1および第2開放端C3a2を有する。第2開放端C3a2は、主要流路C1aのもう一方の側面に連結され、第2開放端C3a2は、第2閉鎖端C3a1よりも、シム10aの第1部分100aから更に離れて位置する。図示の通り、第1バイパスC2aおよび第2バイパスC3aが鏡面対称になっているため、第2バイパスC3aの詳細については繰り返さないことにする。
【0033】
次に、図6および図7をどちらも参照されたい。ここで、図7は、スロットダイ本体20aの第1ダイ本体201aの実装面Sに配設されるシム10aを部分的に拡大した図である。シンプルな例示を目的として、図7では第2ダイ本体202aが省略されている。第3部分300aおよび第2部分200aが鏡面対称になっているため、図7では第3部分300aではなく、第2部分200aを示している。
【0034】
図に示されているシム10aのように、第1部分100aのブリッジ側面101aは、第1分配室2101aの第1長辺21011と位置合わせされてよく、第2部分200aの第1バリア部210aは、第1分配室2101aを横断して中央ランド2103を覆い、第1バリア部210aの第1側面211aは、第2分配室2102aの第1長辺21021と位置合わせされてよく、第2部分200aの第2バリア部220aは、第1分配室2101aおよび第2分配室2102aの短辺(付番せず)と位置合わせされてよく、第2部分200aの第3バリア部230aは、第1ダイ本体201aの第1リップ部2011aに位置し、第3バリア部230aの第5側面231aは、第2分配室2102aの第2長辺21022と位置合わせされてよい。
【0035】
故に、シム10aの第2部分200aおよび第3部分300aは、スロットダイ本体20aから流出する塗工液(例えば、図7の矢印)の塗工幅(すなわち、図6のCW1)が変更されてシム10aの主要流路C1aの開口O1と同じ広さになるように、第1分配室2101aの一部を覆うことができる。
【0036】
一方、第2部分200aおよび第3部分300aは、第1分配室2101aの一部を覆っているが、第1閉鎖端C2a1および第2閉鎖端C3a1をそれぞれ介して第1分配室2101aに連結される、第2部分200aの第1バイパスC2a、および、第3部分300aの第2バイパスC3aは、第1分配室2101aの覆われている部分が主要流路C1aに連結することを可能にする。従って、第1分配室2101aの中、および、シム10aの第2部分200aおよび第3部分300aの下にある塗工液は、蓄溜または遮断されることなく、第1バイパスC2aおよび第2バイパスC3aを通じて主要流路C1aと合流することができる。すなわち、シム10aで覆われている、第1分配室2101a内の塗工液が、淀み流れになるのを防止する。言い換えると、第1分配室2101aに塗工液の淀み領域は生じない。
【0037】
従って、シム10aを用いて塗工幅が変更されると、主要流路C1aに直接流入しない、第1分配室2101a内の塗工液は、第1バイパスC2aおよび第2バイパスC3aに流入した後、第1分配室2101aで淀み流れになることなく、主要流路C1aと合流することができる。故に、従来のシムが塗工液の淀み領域をもたらしやすいといった問題が防止される。
【0038】
図8および図9を参照されたい。図8は、スロットダイヘッド1aの流動シミュレーションであり、図9は、従来のスロットダイヘッドの流動シミュレーションである。これらのシミュレーションは、シムを除いて、同じ環境下で、例えば、同じ塗工幅、塗料および流量で、同じスロットダイ本体にて行われたことに留意されたい。加えて、これらの図を比較しやすくするため、図8および図9のスロットダイヘッドは、部分的に拡大して示されており、それぞれのシムは点線で示されている。
【0039】
図8において、主要流路に直接流入しない、第1分配室内の塗料は、第1分配室で蓄溜または遮断されることなく、第1バイパスを通じて主要流路内の塗工液と合流することができる。対照的に、従来のシムはバイパスを全く有していないため、塗工液は、シムで覆われている領域(すなわち、図の矢印で示されている領域)で蓄溜および遮断されやすく、淀み流れになる。これは、凝固などの品質劣化の問題につながるか、または、塗工液の不安定な流量につながり、ひいては、不均一な流れを引き起こす。
【0040】
バイパスの幅の実際のサイズは、塗工液の材料、レオロジ、温度、および/または、塗工液の他の性質といった様々な塗工要件に従って修正され得るが、本開示がこれに限定されるわけではないことに留意されたい。例えば、これらの実施形態のうちの1つにおいて、前述のシムの第1バイパスの幅は、およそ5ミリメートルから15ミリメートルであってよく、代替的に、別の実施形態において、前述のシムの第1バイパスの幅は、およそ1ミリメートルまで狭められてよい。
【0041】
加えて、前述のシムは、第2部分および第3部分にそれぞれバイパスを有するが、本開示がこれに限定されるわけではない。図10を参照されたい。図10は、本開示の第2実施形態に係るスロットダイヘッドの平面図である。明瞭な例示を目的として、第2ダイ本体は図から省略されていることに留意されたい。
【0042】
この実施形態は、スロットダイヘッド1bを提供する。スロットダイヘッド1bは、シム10bおよびスロットダイ本体20bを含む。スロットダイ本体20bは、前述の実施形態のスロットダイ本体20aと実質的に同じであるため、以下ではスロットダイ本体20bの詳細について繰り返さないことにする。この実施形態において、シム10bは、第1部分100b、第2部分200bおよび第3部分300bを含む。シム10bと前述の実施形態のシムとの間の主要な違いのうちの1つは、第3部分300bが第2バリア部220bだけを含み、バイパスを有さないことである。従って、シム10bは依然として主要流路C1bを有し、第2部分200bだけが第1バイパスC2bを有する。図8図9との比較で論じた通り、シム10bは、塗工液を迂回させてから主要流路C1bと合流させることで塗工液の淀み領域を防止することもできることが解る。
【0043】
更に、前述の実施形態のシムは、2つの分配室を有するスロットダイ本体に配設されるが、本開示がこれに限定されるわけではない。例えば、図11および図12を参照されたい。図11は、本開示の第3実施形態に係るスロットダイヘッドの平面図であり、図12は、本開示の第3実施形態に係るスロットダイヘッドを部分的に拡大した図である。例示を目的として、この実施形態では第2ダイ本体が省略されている。
【0044】
図11に示されているように、この実施形態は、スロットダイヘッド1cを提供する。スロットダイヘッド1cは、シム10cおよびスロットダイ本体20cを含む。シム10cは、第1部分100c、第2部分200cおよび第3部分300cを含む。前述の実施形態のシム10bと同様、シム10cはまた、主要流路C1cに連結する第1バイパスC2cを第2部分200cに有する。スロットダイ本体20cの構成が異なるという点から、シム10cは、シム10bとは若干異なる形状を有してよい。従って、これらの実施形態における同様の特徴については繰り返さないことにする。スロットダイ本体20cは、前述の実施形態のスロットダイ本体と比較すると、たった1つの分配室2101cを有する。分配室2101cのサイズは例であり、本開示の限定を意図するものではないことに留意されたい。
【0045】
このような場合、シム10cは、塗料を迂回させることで塗工液の淀み領域を防止することもできる。図12に示されているように、分配室2101cの中、および、シム10cの第2部分200cの第1バリア部210cの下にある塗工液は、蓄溜または遮断されることなく、第1バイパスC2cの第1閉鎖端C2c1から第1バイパスC2cに流入した後、第1バイパスC2cの第1開放端C2c2を介して主要流路C1cと合流することができる。すなわち、塗工幅を変更するためにシム10cが使用されているとき、主要流路C1cに直接流入しない、分配室2101c内の塗工液は、第1バイパスC2cを流れて主要流路C1c内の塗工液と合流することができる。これに応じて、シム10cは、1つの分配室のスロットダイ本体に塗工液の淀み領域が生じるのを防止することもできる。
【0046】
次に、図13および図14を参照されたい。図13は、本開示の第3実施形態に係るスロットダイヘッド1cの流動シミュレーションであり、図14は、従来のスロットダイヘッドの流動シミュレーションである。これらのシミュレーションは、シムを除いて、同じ環境下で、例えば、同じ塗工幅、塗料および流量で、同じスロットダイ本体にて行われたことに留意されたい。加えて、これらの図を比較しやすくするため、図13および図14のスロットダイヘッドは、部分的に拡大して示されており、それぞれのシムは点線で示されている。
【0047】
図13において、主要流路に直接流入しない、分配室内の塗料は、分配室で蓄溜または遮断されることなく、第1バイパスを通じて主要流路内の塗工液と合流することができる。対照的に、図14の従来のシムはバイパスを全く有していないため、塗工液は、シムで覆われている領域(すなわち、図の矢印で示されている領域)で蓄溜、遮断および阻害され、ひいては、淀み流れになる。これは、凝固などの品質劣化の問題につながるか、または、塗工液の不安定な流量につながり、ひいては、可変的な塗工厚みを引き起こす。
【0048】
故に、バイパスが、シムの、分配室を覆うために使用される部分に提供され、かつ、主要流路および分配室の両方に連結できる限り、バイパスは本開示の範囲に属する。その他の点で、シムの形状および材料が特に制限されることはない。従って、当業者は、第2部分および/または第3部分の第1バリア部、第2バリア部および/または第3バリア部のサイズ、形状および割合を修正して、塗工の均一性、分配室の形状および/または数、スロット間隙のサイズ、塗布圧、塗料の粘度、温度および/または他の特性といった実際の要件に従って、1つまたは複数の適切なバイパスを取得することができる。
【0049】
図7のシム10aを例に挙げると、他の実施形態において、第1部分は、第1分配室の第1長辺と位置ずれした状態にありながらも第1分配室の一部を覆うように修正されてよく、代替的に、更なる別の実施形態において、第2部分の第1バリア部の第3側面、第1部分のブリッジ側面、および、第2バリア部の第4側面は共に、連続曲面を形成してよく、すなわち、シムの第1バイパスの第1閉鎖端は、曲面で形成され、代替的に、尚も別の実施形態において、第1バイパスの形状は、L字型から平行四辺形に変更されてよく、または、更なる別の実施形態において、第2部分の第1バリア部は、更に延びて第2分配室の一部を覆ってよく、または、尚も更なる別の実施形態において、第2部分の第3バリア部の第7側面は、主要流路の開口がテーパー状になるように傾斜面であってよく、または、尚も更なる別の実施形態において、第2部分の第1バリア部の第2側面、および、第3バリア部の第7側面は、互いに位置ずれした状態にあってよい。上記のシム修正では、シムのバイパスが分配室の一部を露出させて主要流路に連結できる限り、バイパスは本開示の範囲に属する。同様に、1つの分配室を有するスロットダイ本体に対して適用されるシム(例えば、図12に示されているシム10c)に同様の修正を加えることで、形状を変更することもできる。
【0050】
更に、前述の実施形態のシムは、複数のスロット間隙を有するスロットダイ本体に適用されてもよい。図15を参照されたい。図15は、本開示の第4実施形態に係るスロットダイヘッドの断面図である。図示の通り、この実施形態は、スロットダイヘッド1dを提供し、スロットダイヘッド1dは、2つのスロット間隙G1およびG2を含むスロットダイ本体20dを有する。前述の実施形態のシム10aから10cは、スロット間隙G1およびG2に選択的に配置され得る。例えば、図15では、スロットダイ本体20dのスロット間隙G1およびG2に、2つのシム10cがそれぞれ配設される。従って、スロットダイ本体20dは、同じ幅または異なる幅を有し得る2本の塗工液の流れを作り出すことができる。次に、図16を参照されたい。ここでは、スロットダイヘッド1eが提供されている。スロットダイヘッド1eも2つのスロット間隙G1およびG2を有し、スロット間隙G1およびG2はそれぞれ、前述のスロットダイ本体のもののような2つの分配室を有する。スロットダイ本体20eのスロット間隙G1およびG2には、2つのシム(例えば、シム10aおよび10b)がそれぞれ配置され得る。
【0051】
更には、図17を参照されたい。ここでは、スロットダイヘッド1fが提供されている。スロットダイヘッド1fは、3つのスロット間隙G1、G2およびG3を同時に有し、スロット間隙G1、G2およびG3には、3つのシム(例えば、シム10c)がそれぞれ配置される。次に、図18を参照されたい。ここでは、スロットダイヘッド1gが提供されている。スロットダイヘッド1gも3つのスロット間隙G1、G2およびG3を有し、スロット間隙G1、G2およびG3はそれぞれ、前述のスロットダイ本体のもののような2つの分配室を有する。スロットダイヘッド1gのスロット間隙G1、G2およびG3には、3つのシム(例えば、2つのシム10aおよび1つのシム10c)がそれぞれ配置され得る。
【0052】
上述のシムおよびスロットダイヘッドによると、第1分配室を覆っているシムの第2部分は、第1バイパスを有し、第1バイパスは、主要流路に連結される開放端と、第1分配室を露出させる閉鎖端とを有する。従って、塗工幅を変更するために第1分配室がシムの第2部分で部分的に覆われているとき、第1分配室にあり、かつ、第2部分で覆われている、塗工液は、第1バイパスに流入した後、主要流路内の塗工液と合流することができる。故に、分配室内の塗工液が遮断または阻害されて淀み流れをもたらすことはない。
【0053】
様々な修正例および変形例が本開示に加えられ得ることが、当業者にとって明らかになるであろう。本明細書およびこれらの例は、単に例示的な実施形態とみなされるように意図されたものであり、以下の請求項およびそれらの均等物によって本開示の範囲が示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18