【解決手段】本発明の方法は、サンプルを多孔質の絡み合ったナノファイバーの床と接触させることを含み、前記多孔質の絡み合ったナノファイバーは、重合体とポロゲンとのブレンドを溶融押出し、押出生成物を目標直径まで延伸し、且つ高分子又は無機ポロゲンを抽出することによって製造され、前記床中の多孔質の絡み合ったナノファイバーの各々は、その断面全体にわたって細孔を有し、1ミクロン以下の直径を有し、前記多孔質の絡み合ったナノファイバーは、個別の多孔質の束の形に配置され、前記多孔質の絡み合ったナノファイバーは、クロマトグラフィーを可能にする官能基をその上に付与されている。
前記溶融加工可能な熱可塑性ポリマーがポリアミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルウレタン、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリスルホン、ポリトリメチレンテレフタレートより成る群から選択される、請求項5に記載の方法。
前記官能基がイオン交換クロマトグラフィー官能基、疎水性相互作用クロマトグラフィー官能基及び親和性クロマトグラフィー官能基より成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で開示される実施形態は、タンパク質の結合/溶離精製に好適な高表面積繊維を含む。繊維は多孔質であり、その製造中に溶融押出プロセスで繊維に埋め込まれた溶解性無機又は高分子ポロゲンを抽出することによって製造できる。溶解性無機ポロゲンは、沈降炭酸カルシウム、シリカゲル又は他の任意の溶解性固体無機粒子を含むことができる。溶解性高分子ポロゲンの例は、ポリ乳酸PLAである。この重合体は、例えば、水酸化ナトリウム水溶液に溶解する。溶解性高分子ポロゲンは、10〜90重量%の範囲の添加量で、好ましくは35〜60重量%の範囲の添加量で繊維に配合できる。溶解性高分子ポロゲンの添加量が約25重量%未満であると、最小限の繊維表面積増大しか得られず、また、これらの繊維は、ポロゲン抽出後に所望の多孔質又はフィブリル化表面特徴も欠く。溶解性高分子ポロゲンの添加量が約65重量%よりも高いと、ポロゲン抽出後の繊維の構造的完全性が損なわれる場合がある。溶解性無機ポロゲンは、5〜40重量%の範囲の添加量で、好ましくは15〜25重量%の範囲の装填量で繊維に配合できる。溶解性無機ポロゲンの添加量が約15重量%未満であると、最小限の繊維表面積増大しか得られず、また、これらの繊維はポロゲン抽出後に所望の多孔質表面特徴も欠く。溶解性無機ポロゲンの添加量が約30重量%よりも高いと、押出中又はポロゲン抽出後の繊維の構造的完全性が損なわれる場合がある。添加量は、押出機に導入される様々な材料の前処理乾燥重量によって又はポロゲン除去前後の繊維重量を比較することによって測定できる。
【0016】
繊維に好適な材料としては、ナイロンPA6が挙げられるが、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ乳酸、共重合体、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、又は熱可塑性ウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリトリメチレンテレフタレート、コポリエステル、又は液晶重合体などの他の任意の溶融加工可能な熱可塑性重合体を使用することができる。これらの熱可塑性材料は、ペレット又は粉末として得ることができ、その後、これらの材料を市販の溶融配合及び繊維溶融押出加工装置によって製品繊維に処理加工することができる。これらの繊維は、それぞれ
図1A及び
図1Bに示されるように、通常の円形マイクロファイバー又は翼状繊維よりもはるかに高い表面積を与える。所定の実施形態において、繊維は、タンパク質、モノクローナル抗体その他の対象生体分子の結合/溶離又はフロースルー精製のための適切なペンダント陽イオン交換リガンド官能基を導入するように表面変性できる。繊維表面に配置できる好適なリガンドとしては、陽イオン交換クロマトグラフィー用途のためのスルホプロピル基、陰イオン交換クロマトグラフィー用途のためのハロゲン化テトラアルキルアンモニウム、第一級アミン及び第二級アミン、並びに逆相クロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィー用途のためのn−アルキル鎖、フェニル、ベンジル又は他の芳香族基が挙げられる。リガンドは、セリウム酸化還元グラフト重合、ATRP、RAFT、又は電子線、UV若しくはガンマ線源によって開始されるフリーラジカル重合によって繊維表面に導入することができる。
【0017】
所定の実施形態において、好適な熱可塑性重合体は、配合押出機などで1種以上の好適なポロゲン添加剤とブレンドされる。重合体及び/又はポロゲンは、予備乾燥及びドライブレンドされる。その後、このブレンド物を押出機に導入し、単一ストランドダイから水浴に押出し、続いてペレット化することができる。あるいは、ベース重合体及びポロゲンペレット又は粉末をドライブレンドし、予め配合することなく繊維又はフィラメント紡績機に直接供給することができる。その後、適切に装備された繊維紡糸機を使用して、ペレットを二成分フィラメントに溶融紡糸することができる。ブレンドされたベース重合体/ポロゲン材料はコアを形成し、ポロゲン重合体は外部シースを形成する。繊維を紡糸し、延伸し及び巻取った後に、ポロゲンを、使用されるポロゲンの性質に応じて、1M塩酸溶液又は1.5N水酸化ナトリウム溶液といった好適な抽出剤で二成分フィラメントから抽出することができる。
【0018】
図1C〜
図1Fにおいて、所定の実施形態に係る高表面積繊維のいくつかの例が示されている。
図1Cは、溶解性無機ポロゲンアプローチを利用して製造された多孔質マイクロファイバーの表面SEM画像である。この押出モノフィラメントは、ナイロンと25重量%の沈降炭酸カルシウム(Albafil(登録商標)PCC)との溶融配合ブレンドから製造した。繊維を紡糸し、延伸し、そして炭酸カルシウムポロゲンを塩酸で抽出した後に、繊維の表面上に多数の細孔が観察可能である。Kr BET表面積測定から、ほぼ同じ繊維直径の通常の非多孔質ナイロン繊維よりも、この材料についてのBET表面積が約300%の増加することを示す。
【0019】
図1Dは、溶解性高分子ポロゲンアプローチを利用して製造された多孔質15翼状繊維の低温SEM断面画像を示す。この押出二成分繊維は、翼状繊維コアを構成するナイロン及び30重量%のPLAの溶融配合ブレンドと、繊維コアを取り囲み、溶融紡糸中に翼状突起を安定化させる溶解性PLAシース(図示せず)とから製造された。繊維を紡糸し、延伸し、そして繊維シースと繊維コア内とからPLA高分子ポロゲンを水酸化ナトリウム溶液で抽出した後に、翼状繊維の断面全体にわたって多数の細孔が観察可能である。
【0020】
図1Eは、溶融性高分子ポロゲンアプローチを利用して製造された多孔質コア/シース繊維の低温SEM断面画像を示す。この繊維構造を、表面積増大化(SAE)型繊維という。この押出二成分繊維は、繊維コアを構成するナイロン及び40重量%のPLAの溶融配合ブレンドと、繊維コアを取り囲み、かつ、溶融紡糸中に材料を安定化させる溶解性PLAシース(図示せず)とから製造された。繊維を紡糸し、延伸し、そして繊維シースと繊維コア内とからPLA高分子ポロゲンを水酸化ナトリウム溶液で抽出した後に、緩やかに整列したナイロンナノフィブリルの束ねられた構造が、SAE繊維の断面全体にわたって観察される。この表面積増大化構造によって繊維表面積が大幅に増大し、Kr BET表面積測定から、このアプローチによって10.6m
2/g程度に高い値が達成可能であることが示される。対照的に、非多孔質の15翼状繊維は、わずか1.4m
2/gのそれほど高くない表面積を有する。
【0021】
図1Fは、溶解性高分子ポロゲンアプローチを利用して製造された別のタイプの多孔質二成分繊維の低温SEM断面画像を示す。この繊維構造を「海中連結島」(CIST)型繊維という。この押出二成分繊維は、繊維の「海」領域と、連続する36のナイロン「島」の配列を構成するナイロンと45重量%のPLAとの溶融配合ブレンドから製造された。繊維を紡糸し、延伸し、そして繊維の「海」領域からPLA高分子ポロゲンを水酸化ナトリウム溶液で抽出した後に、緩やかに整列したナイロンナノフィブリル及びそれより大きなミクロンサイズのナイロン島の構造が、CIST繊維の断面全体にわたって観察される。この「海中連結島」の構造によって繊維の表面積が大幅に増大し、またN
2BET表面積の測定値から、このアプローチによって7m
2/g程度に高い値が達成可能であることが示される。
【0022】
所定の実施形態では、本明細書に開示される多孔質繊維は、規則的又は不規則な形状の断面を有することができる。例示的な形状としては、円形、楕円形及び多角形、並びに中央本体がそこから延びる複数の半径方向突起を有する翼形状が挙げられる。所定の実施形態では、繊維断面は、略翼形状であり、中間領域は、繊維の中心を通って延下する長手方向軸を含み、中間領域から外側に延びる複数の突起を有する。所定の実施形態では、複数の突起は、中間領域から略半径方向に延びる。この構成の結果として、複数のチャネルが突起によって画定される。突起間の好適なチャネル幅は、約200〜約1000ナノメートルの範囲である。好適な繊維は、米国特許出願公開第2008/0105612号に開示されており、その開示は、参照により本明細書において援用する。所定の実施形態では、繊維は、
図13Aに示すように、長手方向軸から延びる少なくとも3つの分岐した突起を有するフラクタル状繊維である。所定の実施形態では、繊維は、
図13B及び13Dに示すように、長手方向軸から延びる少なくとも3つの分岐した突起を有するフラクタル状繊維であり、それぞれの分岐した突起は、そこから延びる副突起を有する。所定の実施形態では、繊維は、
図13C及び13Eに示すように、長手方向軸から延びる少なくとも6つの突起を有する雪片状繊維であり、それぞれの突起は、そこから延びる少なくとも4つの副突起を有する。
【0023】
所定の実施形態では、タンパク質の結合/溶離精製に好適な高表面積繊維は、異なる形状の断面を有する中実繊維である。イオン交換リガンドを有するこれらの形状の繊維は、クロマトグラフィー分離に使用されるに十分な表面積と許容可能な流動特性を示す。これらの形状の繊維は、BETガス吸着により1グラム当たり0.5〜5平方メートルの表面積を有する。繊維は二成分繊維として製造される。シース材料を除去して、高表面積のコアを露出させる。このコアはイオン交換リガンドで変性され、タンパク質分離に使用される。使用可能な断面の例を
図13に示す。
【0024】
高表面積多孔質繊維の表面官能化は、例えば、エポキシ官能性重合体コーティングを繊維表面に付着させ、続いて加熱して重合体コーティングを繊維表面に共有結合させ、その後エポキシ開環プロセスを行って繊維表面にスルホン酸官能基を導入させることにより実施することができる。
【0025】
他の実施形態では、結合/溶離陽イオン交換クロマトグラフィー用途のための表面グラフトイオン交換リガンドを有するSAE型繊維の変性を行うことができる。SAE繊維の表面を架橋HPA/MBAm 95/5重合体コーティングで活性化して繊維表面上に高反応性ヒドロキシ官能性コーティングを与え、続いて2−(アクリルアミド)−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩などと共にセリウム酸化還元重合を行って重合体グラフト繊維基材を与える。
【0026】
約0.1〜0.4g/ml、好ましくは約0.35g/mlの好適なカラム充填密度により、クロマトグラフィー評価において許容可能な性能のために十分な流動均一性が得られる。
【0027】
所定の実施形態では、媒体(官能化充填繊維)は、ビーズ系媒体とは異なり、予め充填された形式でユーザに供給できる。繊維を熱的手段又は化学的手段のいずれかによって融合させて、圧力容器内に収容することができる半剛性構造を形成させることができる。このような構造により、媒体及び付属装置を使用準備済みにすることができる。クロマトグラフィービーズ系媒体は、一般にばら材料(湿潤)として供給され、そこでユーザが必要とするのは圧力容器(カラム)を装填して、様々な手段により、空隙又はチャネルのない十分に充填された層を作製することである。充填の均一性を確保するために、一般的にフォローアップテストを必要とする。対照的に、所定の実施形態によれば、製品が使用できる状態で到着するので、ユーザは充填を必要としない。
【0028】
本明細書に開示される実施形態の表面官能化多孔質繊維媒体は、充填層形式で高い透過率を示す。充填密度に応じて、層透過率は2500mDarcy〜100mDarcy未満の範囲とすることができる。充填繊維層は、高い線速度では圧縮されない。
【0029】
本明細書に開示される実施形態の表面積増大化繊維媒体は、クロマトグラフィーカラム又は他の装置といった好適なハウジング内の充填層形式に構成することができる。表面積増大化短繊維の充填繊維層は、短繊維の希釈水性懸濁液をクロマトグラフィーカラムに装填し、続いてクロマトグラフィーカラムの上部溶媒分配ヘッダーを1〜10cmの目標層深さまで軸方向に圧縮することにより製造できる。軸方向に圧縮するとは、短繊維充填の充填密度を0.1〜0.4g/mLの目標値にまで増大させるために、クロマトグラフィーカラム又は他の適切なハウジング内に装填された短繊維充填の層深さを減少させることであると定義される。この圧縮を流れ分配ヘッダーの機械的変位によって達成して、カラム又は装置の体積をより小さくし、それに応じてクロマトグラフィー媒体の充填密度を増加させる。この文脈において、圧縮される軸は、短繊維が充填されるカラムの垂直軸である。短繊維は圧縮可能であるので、短繊維の充填密度は、このような軸方向の圧縮が行われると、それに対応して増大する。対照的に、半径方向に圧縮するとは、短繊維充填の充填密度を0.1〜0.4g/mLの目標値に増大させるために、クロマトグラフィーカラム又は他の適切なハウジング内の短繊維充填の内径を縮小させることであると定義される。半径方向の圧縮操作は、繊維媒体充填の層深さを変化させない。
【0030】
実施例
実施例1.無機又は高分子ポロゲンの溶融配合。
この実験では、ナイロンと、炭酸カルシウム、シリカ又はポリ乳酸重合体(PLA)などの様々な無機又は高分子ポロゲン添加剤とをブレンドした。ナイロンと無機及びPLA高分子ポロゲンとの三元混合物も製造した。その後、これらのブレンド物を繊維押出実験のために使用した。
【0031】
ナイロン6と無機充填剤との数種のブレンド物を、配合押出機を使用して作製した。ナイロンとPLAと無機ポロゲンとの三元混合物を含有する追加のブレンド物も製造した。4つの異なるタイプの無機充填剤を試験した:SMI社製のAlbafil A−O−255−12、SMI社製のVicality Heavy、SMI社製のMultifex−MM(商標)、W.R.Grace社製のSyloid 244FP。予備乾燥した材料を秤量し、ドライブレンドした。このドライブレンド物を、マイクロトルーダーに十分に供給されるように調節された供給コンベア上に置いた。この材料を単一ストランドダイから水浴中に押出し、次いでペレット化した。この作業で使用された特定のナイロン/ポロゲン配合物を以下の表1に要約する。
【0033】
実施例2.無機ポロゲンを装填したモノフィラメントの溶融押出。
この実験では、ブレンドされたナイロン/無機ポロゲンペレットを直径約20ミクロンのモノフィラメント繊維に溶融紡糸するための方法の一般的な説明を提供する。
【0034】
ブレンドされたナイロン/無機ポロゲンペレットを、繊維紡績機を使用してモノフィラメントに溶融紡糸した。繊維紡績機は、Hills Inc.社(米国フロリダ州メルボルン)製のLBSシステムである。押出したモノフィラメント繊維サンプルを約20ミクロンの直径にまで延伸した。繊維を紡糸し、延伸し、巻取った後、無機ポロゲンを、続いて以下に記載の手順に従ってモノフィラメントから抽出した。
【0035】
実施例3.押出モノフィラメントからの無機ポロゲンの抽出。
この実験では、1M塩酸溶液を使用して、押出モノフィラメント繊維から無機ポロゲンを抽出するための方法を説明する。その後、繊維を中和し、洗浄し、そして繊維の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により検査する。Kr BET表面積測定も実施する。
【0036】
蓋付きの100mLガラスジャーに、1.0gの押出モノフィラメント(直径約20μm)と、50mLの1.0M塩酸(50mmol)とを加えた。懸濁液を30℃で一晩撹拌した。繊維固体を真空濾過により単離し、0.5MのTris−HCl(1×100mL)、脱イオン水(1×100mL)及びエタノール(1×100mL)で洗浄した。材料をオーブンに入れて40℃で18時間乾燥させた。無機ポロゲン抽出実験の結果を以下の表2に示す。無機ポロゲンの抽出後に、繊維表面形態のSEM検査を実施した。これらの画像を
図2に示す。Albafil(登録商標)含有モノフィラメントは、ポロゲン抽出後の繊維表面に大きなミクロンサイズの細孔又は空洞をもたらす。Multifex−MM(商標)−ポロゲンの粒径はそれよりも小さい(<0.2ミクロン)ため、ポロゲン抽出後の繊維表面にかなり小さな細孔が観察される。同様に処理されたナイロン繊維対照サンプルでは、そのような細孔は明らかではない。Kr BET表面積測定から、非多孔質ナイロン繊維対照サンプルよりも、Albafil(登録商標)ポロゲンを用いて製造された材料のBET表面積が有意に増大(約300%)することが明らかになった。
【0038】
実施例4.高分子ポロゲンとの溶融配合。
この実験では、ナイロンと、高分子ポロゲン、ポリ乳酸重合体とを様々な量でブレンドした。その後、これらのブレンド物を繊維押出実験のために使用した。
【0039】
様々なナイロン/PLAブレンドサンプルを、配合押出機を使用して作製した。所定の範囲のPLAとナイロン6とのブレンドを作製した。これらを以下の表3に示す。適切な量の乾燥ペレットを秤量し、ドライブレンドした。その後、このドライブレンド混合物を配合押出機上の供給コンベアベルトに添加した。供給ベルトを、配合押出機に十分に供給されるように調節した。材料を単一ストランドダイから水浴中に押出し、次いでペレット化した。
【0041】
実施例5.押出フィラメントからのPLAポロゲンの抽出。
この実験では、1.5N水酸化ナトリウム溶液を使用して、溶融配合機から押出したフィラメントからPLAポロゲンを抽出するための方法を説明する。その後、繊維を中和し、洗浄し、重量測定アッセイを実施し、そして繊維の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により検査する。
【0042】
蓋付の250mLガラスジャーに、2.0gの押出フィラメント(直径約2.0mm)と、0.2Lの1.5N水酸化ナトリウム(0.75mol)とを加えた。この懸濁液を室温で一晩撹拌した。繊維固体を真空濾過により単離し、脱イオン水(3×250mL)及びエタノール(1×250mL)で洗浄した。材料をオーブンに入れて60℃で3時間乾燥させた。2mmの押出フィラメントからのPLA高分子ポロゲン抽出実験の結果を以下の表4に示す。これらのデータから、PLAポロゲンは、低PLA充填サンプル(35重量%PLA)よりも高PLA充填サンプル(50重量%PLA)に対して容易に抽出されることが分かる。実際の収率と予想収率との大きな差は、これらの大きな2mm直径のフィラメントの内部へのアクセスが制限されているためである。PLA高分子ポロゲンの抽出後にフィラメント表面形態のSEM検査を実施した。これらの画像を
図3に示す。これらのデータは、フィラメントからPLAポロゲンを抽出した後のフィブリル化表面形態の様相を示す。これらの表面特徴は、40重量%以上のPLA添加量について顕著である。これらのようなフィブリル化表面形態は、繊維基材の表面積を大きく増大させることが予想される。
【0044】
実施例6.高分子ポロゲンを充填した繊維の溶融押出。
この実験では、配合されたナイロン/PLA高分子ポロゲンペレットを、直径約20ミクロンのコア/シース又は15翼状二成分繊維に溶融紡糸するための方法の一般的な説明を提供する。
【0045】
ブレンドされたナイロン/PLAペレットを、二成分繊維紡績機を使用して繊維に溶融紡糸した。この二成分繊維紡績機は、Hills Inc.社(米国フロリダ州メルボルン)製のLBS Systemである。押出繊維サンプルは、PLAのシースと、コア中にブレンドペレットとを有する(又はその逆)コア/シース及び15翼状繊維である。サンプルを以下の表5に要約する。
【0047】
実施例7.手作業でブレンドされたサンプルを使用した溶融押出。
この実験では、ナイロンとPLA高分子ポロゲンペレットとの手作業でブレンドされた混合物を直径約20ミクロンのコア/シース二成分繊維に溶融紡糸するための方法の一般的な説明を提供する。
【0048】
様々な溶融押出繊維サンプルを、コア/シース紡糸パックを取り付けたHills Inc.社(米国フロリダ州メルボルン)製の実験室規模の二成分押出機を使用して、溶融紡糸により作製した。ダイのシース側にポリ乳酸(PLA)ペレットを供給した。ダイのコア側については、重合体ペレットを、押出機に供給する前にバッグ中で単に攪拌することによって様々な比率で混合した。後の処理加工及び分析のために、繊維を延伸してコアに巻取った。サンプルを以下の表6に要約する。
【0050】
実施例8.PLA抽出の一般的手順。
この実験では、1.5N水酸化ナトリウム溶液を使用して、押出二成分コア/シース繊維からのPLAポロゲン抽出の方法を説明する。その後、繊維を中和し、洗浄し、重量測定アッセイを行い、そして繊維の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により検査する。Kr BET表面積測定も実施する。
【0051】
蓋付きの1リットルのパイレックス(登録商標)ボトルに、5.0gの切断短繊維(長さ1.0mm)と、0.5Lの1.5N水酸化ナトリウム(0.75mol)とを加えた。この懸濁液を室温で一晩撹拌した。繊維固体を真空濾過により単離し、脱イオン水(3×250mL)及びエタノール(1×250mL)で洗浄した。材料をオーブンに入れて60℃で18時間乾燥させた。押出二成分繊維(直径20ミクロン)からのPLA高分子ポロゲンの抽出実験の結果を以下の表7に示す。これらのデータから、PLAポロゲンが、全ての繊維サンプルについて繊維シースと繊維コア内との両方から抽出されたことが分かる。実際の収率と予想収率との小さな差は、二成分繊維内からPLAポロゲンが完全に抽出されたという証拠である。PLA高分子ポロゲンの抽出後に繊維表面形態のSEM検査を実施した。これらの画像を
図4に示す。これらのデータから、35重量%を超えるPLA添加量を有する繊維からPLAポロゲンを抽出した後に、フィブリル化された表面形態の様相が見出される。これらの繊維は、高度に絡み合ったナイロンナノフィブリルの束から構成されているように見える。約50重量%を超えるPLAポロゲン添加量の場合には、個々のナイロンナノファイバーを与える繊維構造が明らかに示されている。40重量%のPLAサンプルに関する低温SEM断面画像を
図5に示す。これらの断面画像から、この繊維が、数百の緩く軸方向に整列したナイロンナノフィブリルから構成されるように見え、繊維断面内にはかなりの空隙が存在することが分かる。これらのようなフィブリル化された表面形態は、繊維基材の表面積を大きく増大させることが予想される。
図6において、25重量%を超えるPLA高分子ポロゲン添加量で構成された抽出ナイロン繊維サンプルについて、高いKr BET表面積が測定されることが示されている。
【0053】
実施例9.多孔質コアを有する翼状繊維の溶融押出。
この実験では、配合されたナイロン/PLA高分子ポロゲンペレットを直径約15ミクロンの15翼状二成分繊維に溶融紡糸する方法の一般的な説明を提供する。続いて、PLAを、繊維シースのみならず繊維コア内からも抽出する。結果として、これらの15翼状繊維は、多孔質のコア構造を与える。
【0054】
ブレンドされたナイロン/PLAペレットを、二成分繊維紡績機を使用して繊維に溶融紡糸した。二成分繊維紡績機は、Hills Inc.社(米国フロリダ州メルボルン)製のLBSシステムである。押出繊維サンプルは15翼状繊維であり、これをPLAのシースと繊維コアとしてのブレンドペレットとで製造した。繊維シースと繊維コア内とからPLAを抽出した後に、多孔質構造を有する15翼状繊維が得られる。PLA高分子ポロゲンの抽出の一般的手順は、上記の実施例に記載されている。繊維コア組成物としてナイロン/PLA 70/30及び60/40ブレンドを使用して製造された様々な15翼状繊維サンプルを
図7及び
図8に示す。これらの画像は、翼状繊維の断面内で延在する円筒形の孔又は空洞の様相を示す。このような特徴は、翼状繊維の表面積をさらに増大させることが予想される。
【0055】
実施例10.SAE繊維の表面変性のための一般的手順。
この実験では、SAE繊維をペンダント強陽イオン交換官能基で表面変性させるための一般的手順を説明する。この手順は、エポキシ官能性重合体コーティングの繊維表面への付着、重合体コーティングを繊維表面に共有結合させるための加熱工程、その後の繊維表面にスルホン酸官能性を導入させるためのエポキシ開環プロセスを含む。
【0056】
ポリメタクリル酸グリシジルをメチルエチルケトン(MEK)に溶解してなる1重量%溶液の25gを30mLのガラスバイアル中で調製した。別の30mLのガラスバイアルに、繊維0.2グラムと1%ポリメタクリル酸グリシジル重合体溶液12.5gとを加えた。この懸濁液を室温で一晩撹拌した。その後、繊維固体を真空濾過により単離し、100℃のオーブンに30分間置いた。繊維固体をオーブンから取り出し、40mLのMEKに室温で1時間にわたって再懸濁した。繊維固体を真空濾過により単離し、次いで、1M亜硫酸ナトリウム/0.4Mテトラ−n−ブチルアンモニウム硫酸水素塩溶液15mLに懸濁した。この懸濁液にN
2を5分間スパージし、バイアルを密封し、80℃で一晩加熱した。この懸濁液を室温にまで冷却した。繊維固体を真空濾過により単離し、脱イオン水(5×30mL)及びエタノール(1×30mL)で洗浄した。繊維を60℃で2時間乾燥させた。表面積増大化(SAE)コア/シース繊維、並びに非多孔質15翼状対照サンプルの表面変性の結果を以下の表8に示す。また、これらのスルホン酸官能化繊維の両方について、それぞれIgGと、リゾチームと、大型タンパク質、小型タンパク質及び小分子プローブとしてのメチレンブルーとを使用して、静的結合容量の測定も実施した。標準的な陽イオン交換結合条件をこれらの静的結合容量試験の全てについて使用し、その結果を
図9、10、11及び以下の表9にまとめる。これらのデータから、15翼状繊維についてSAE繊維の静的結合容量が増大したことを示しており、また分子サイズの減少に伴ってSAE繊維の結合容量の利点が増大する。
【0058】
【表9】
11.4m
2/gの100%露出表面積の15翼状繊維に基づく。
【0059】
実施例11.SAE繊維の表面変性(7895−136)。
この実験では、結合/溶離陽イオン交換クロマトグラフィー用途のための表面グラフトイオン交換リガンドでSAE型繊維を変性する手順を説明する。このプロセスの第一工程は、架橋HPA/MBAm 95/5重合体コーティングを用いてSAE繊維表面を活性化することを含む。この工程により、後の重合体グラフトプロセスによく適した、繊維表面上に高反応性ヒドロキシル官能性コーティングが得られる。第二工程では、HPA/MBAm変性繊維を、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩とセリウムイオン酸化還元重合させて重合体グラフト繊維基材を得る。グラフト重合体は、陽イオン交換クロマトグラフィー用途のためのペンダントスルホン酸官能基を提供する。
【0060】
HPA/MBAm 95/5によるSAEナイロン繊維表面変性。500mLのパイレックス(登録商標)ボトルに、アクリル酸ヒドロキシプロピル(HPA、4.9g、38mmol)と、N、N’−メチレンビス(アクリルアミド)(MBAm、0.28g、2mmol)と、水(253mL)とを加えた。表面積増大化(SAE)ナイロン繊維6.0gをこの混合物に添加した。過硫酸アンモニウム(0.63g、3mmol)を添加した。湿った固形物を80℃で4時間加熱した。
【0061】
室温にまで冷却した後、固形物をブフナー漏斗に移し、温水(4×200mL)及びエタノール(1×200mL)で洗浄した。材料を真空下で20分間乾燥させた。この材料をオーブンに移し、60℃で18時間乾燥させた。
白色繊維として6.46gを得た。
【0062】
HPA/MBAm変性ナイロン繊維のグラフト重合。3個の125mLガラスジャーに、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩(AMPS−Na)と、水と、HPA/MBAm変性SAEナイロン繊維(上記参照)と、1MのHNO
3溶液とを(以下の表に記載の量で)加えた。硝酸アンモニウムセリウム(IV)(CAN)を1MのHNO
3に溶解してなる0.4M溶液を各ボトルに加えた。反応ボトルに蓋をし、窒素をスパージし、混合物を35℃で18時間加熱した。
【0063】
室温にまで冷却した後に、固形物を、0.2Mアスコルビン酸の0.5M硫酸(3×80mL)溶液、脱イオン水(3×80mL)、0.5M水酸化ナトリウム溶液(3×80mL)、脱イオン水(3×80mL)及びエタノール(1×80mL)で洗浄した。この材料をオーブンに入れて60℃で18時間乾燥させた。
白色繊維状固体のサンプルを得た(回収及び重量付加データについては表を参照)。
【0065】
実施例12.静的結合容量の測定。
この実験では、陽イオン交換モードにおけるSP表面変性SAE繊維のIgG静的結合容量を提示する。
【0066】
SP変性SAEナイロン繊維のIgG静的結合容量測定の結果を以下の表11に示す。これらのデータから、SP表面変性SAE繊維についてかなりのIgG静的結合容量が示され、これらのIgG SBC値は市販のビーズ系陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂に匹敵する。
【0068】
実施例13.動的結合容量の測定。
この実験では、SP表面変性SAE繊維のクロマトグラフィーカラムへの充填及び充填された繊維層の透過性を説明する。陽イオン交換モードにおけるSP表面変性SAE繊維のIgG動的結合容量も提示する。
【0069】
例7895−136BのSP官能化SAE繊維媒体についてのIgG動的結合容量測定の結果を以下の表12に示す。媒体1.0gを11mm内径のVantageカラムに充填し、3.0cmの層深さ(2.85mLのカラム容量、0.35g/mLの繊維充填密度)に圧縮した。0.35g/mLでの充填繊維透過率を、50mM酢酸塩緩衝液(pH5)を使用して200mDaであると決定した。動的結合容量の測定を、200cm/時間〜60cm/時間の範囲の線速度で実施した。これらの速度は、54秒〜3分の滞留時間に相当する。例7895−136Bの繊維媒体は、50mg/mLの範囲のIgG動的結合容量を示す。
【0071】
実施例14.「海中連結島」(CIST)繊維の溶融押出。
この実験では、ナイロンとPLA高分子ポロゲンペレットとを手作業でブレンドした混合物を、直径約20ミクロンの「海中連結島」(CIST)型繊維に溶融紡糸するための方法の一般的な説明を提供する。その後、繊維を中和し、洗浄し、重量測定アッセイを行い、そして繊維の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により検査する。N
2 BET表面積測定も実施する。
【0072】
様々な溶融押出繊維サンプルを、「海中連結島」紡糸パック(36の島構成)を取り付けたHills Inc.社(米国フロリダ州メルボルン)製の実験室規模二成分押出機を使用して溶融紡糸により作製した。ダイの「島」側にナイロン6ペレットを供給した。ダイの「海」側については、重合体ペレットを、押出機に供給する前に、バッグ中で単に撹拌することによって様々な比率で混合した。この実施例においては、ブレンド組成はPLA及びナイロン6であった。後の処理加工及び分析のために、繊維を延伸し、コアに巻き取った。サンプルを以下の表に要約する。押出二成分繊維の「海」領域内からPLA高分子ポロゲンを抽出した後に、多孔質構造を有するCIST繊維が得られる。CIST型繊維のいくつかの例を、以下の表14に要約する。PLA高分子ポロゲンの抽出の一般的手順は、上記の実施例に記載されている。繊維「海」領域組成物として製造された様々な範囲のナイロン/PLAポロゲンブレンドを使用して、様々なCIST繊維サンプルを製造した。CIST繊維及びSAE型繊維の表面の低温SEM断面画像を
図12に示す。断面画像から、大きなチャネル又は隙間がCIST繊維の内部全体に広がっており、そしてこれらの特徴は、SAE型繊維よりも内部表面にかなり近づきやすくすることが分かる。当該特徴は、このようなナノフィブリル化繊維支持体の内部表面領域に対する大型タンパク質及び生体分子のアクセスを向上させることが予想される。
【0075】
実施例15.SAE、CIST、15翼状、円形ナイロン繊維の表面変性。
この実験では、結合/溶離陽イオン交換クロマトグラフィー用途のための表面グラフトイオン交換リガンドでSAE、CIST、及び15翼状繊維を変性するための手順を説明する。このプロセスでは、繊維表面を、3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩とのセリウムイオン酸化還元重合を使用して一工程で変性させて、重合体グラフト繊維基材を得る。グラフト重合体は、陽イオン交換クロマトグラフィー用途のためのペンダントスルホン酸官能基を提供する。
【0076】
125mLのボトルに、3−スルホプロピルメタクリレートカリウム塩(3−SPMA)と、水と、CISTナイロン繊維と、1MのHNO
3溶液とを加えた(以下の表に記載の量で)。硝酸アンモニウムセリウム(IV)(CAN)を1MのHNO
3に溶解してなる0.4M溶液をボトルに添加した。反応ボトルに蓋をし、混合物を5時間にわたって35℃に加熱した。
【0077】
室温にまで冷却した後に、ボトルからの繊維固体を、0.2Mアスコルビン酸の0.5M硫酸溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)、0.5M水酸化ナトリウム溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)及びエタノール(1×50mL)で洗浄した。この材料をオーブンに入れて60℃で18時間乾燥させた。
白色繊維状固体のサンプルを得た(回収及び付加重量データについては表を参照)。
【0079】
実施例16.静的結合容量の測定。
この実験では、陽イオン交換モードにおけるSP表面変性SAE、CIST、15翼状、及び単純な円形繊維のIgG静的結合容量を提示する。SAE繊維(サンプル#7895−142A及び7895−142B)について、グラフト工程において3−SPMA単量体を7.5mmolから19mmolに増加させると、IgG静的結合容量が47mg/gから212mg/gに実質的に増加することが分かった。CIST繊維(エントリー7993−2A−1、7993−2A−2)は、低3−SPMA単量体充填条件(7.5mmol)で、SAE型繊維に匹敵するIgG SBC値を与える。15翼状繊維(エントリー7895−62D)を3−SPMA単量体38mmolを用いて変性させると、このサンプルでは130mg/gのIgG SBC値が得られる。これに対し、単純な15ミクロンの円形繊維では、評価した全てのグラフト条件下で、非常に低いIgG SBC値が得られる。これは、突起又は内部多孔質構造を欠く円形繊維の非常に低い表面積に起因すると考えられる。
【0080】
SP変性表面積増大化(SAE)、「海中連結島」(CIST)、非多孔質15翼状及び円形対照繊維(直径15μm)のIgG静的結合容量の測定結果を以下の表16に示す。
【0082】
実施例17.成形繊維の溶融押出。
成形繊維を、二成分溶融紡糸プロセスを使用して製造する。この二成分繊維は、第1の材料のコアと第2の重合体のシースとを有する。これらのコア及びシース材料は、当業者に知られている任意の種類の溶融加工可能な熱可塑性樹脂とすることができる。一連のダイプレートを使用して、二つの重合体供給流れを、所与の数の繊維及び所望の断面形状に分割し向け直す(redirect)。繊維を、溶融紡糸後に適当なサイズに延伸する。繊維の特性を表17に要約する。
【0084】
実施例18.成形繊維の表面変性の一般的手順。
成形繊維を実施例10に従って製造した。IgG静的結合容量データについては表を参照されたい。
【0086】
実施例19.成形ナイロン繊維の表面変性。
成形繊維を、実施例11に従って製造した。回収及び付加重量データについては表を参照されたい。
【0088】
実施例20.動的結合容量の測定。
上記実施例19からの表面変性フラクタル状繊維を、実施例13に記載の方法に従って充填した。
動的結合容量の測定を、200cm/時間〜600cm/時間の範囲の線速度で実施した。これらの速度は、54秒〜18秒の滞留時間に相当する。実施例19の繊維媒体は、72mg/mLの範囲のIgG動的結合容量を示す。
【0090】
実施例21.未変性SAE繊維のグラフト重合。
陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)用途のためのテトラアルキルアンモニウム(Q型)高分子リガンド官能基によるSAE繊維の表面変性。500mLのボトルに、メタクリル酸グリシジル(GMA、1.70g、12mmol)と水(232.8mL)とを加える。この溶液にSAE繊維5gを添加する。この反応混合物に1MのHNO
3溶液(7.22mL、7.2mmol)を添加し、次いで硝酸アンモニウムセリウム(IV)を1MのHNO
3に溶解してなる0.4M溶液(0.602mL、0.240mmol)を添加する。
この反応混合物を1時間にわたって35℃に加熱する。
室温にまで冷却した後に、固形物を脱イオン水(3×100mL)で洗浄し、この湿った材料(12.21g)を次の工程で直ちに使用する。
【0091】
エポキシ官能化SAE繊維のQ官能化。
250mLのボトルに、上記実施例からの湿ったGMA官能化SAE繊維と、50重量%トリメチルアミン(水性)のメタノール溶液とを添加する(以下の表21に記載の量で)。この混合物を室温で18時間撹拌する。
続いて、0.2Mアスコルビン酸の0.5M硫酸溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)、1M水酸化ナトリウム溶液(3×50mL)、脱イオン水(3×50mL)及びエタノール(1×50mL)で繊維固体を洗浄する。この材料をオーブンに入れて40℃で12時間乾燥させる。
白色繊維状固体のサンプルを得る。
【0093】
実施例22.非変性SAE繊維のグラフト重合。
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)用途のためのポリメタクリル酸ヒドロキシエチル重合体官能基によるSAE繊維の表面変性。500mLのボトルに、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA、1.69g、13mmol)と水(232.5mL)とを加える。この溶液にSAE繊維5.00gを添加する。この反応混合物に1MのHNO
3溶液(7.21mL、7.2mmol)を添加し、次いで硝酸アンモニウムセリウム(IV)を1MのHNO
3に溶解してなる0.4M溶液(0.601mL、0.240mmol)を添加する。
この反応混合物を1時間にわたって35℃に加熱する。
室温にまで冷却した後に、固形物を、0.2Mアスコルビン酸の0.5M硫酸溶液(3×100mL)、脱イオン水(3×100mL)、1M水酸化ナトリウム溶液(3×100mL)、脱イオン水(3×100mL)及びエタノール(1×100mL)で洗浄した。この材料をオーブンに入れて40℃で12時間乾燥させる。
【0094】
実施例23.組換えAタンパク質親和性リガンドrSPAによるSAE繊維表面変性。
アフィニティークロマトグラフィー用途のための組換えAタンパク質親和性リガンドによるSAE繊維の表面変性。250mLのボトルに、1M重炭酸ナトリウム(100mL)と、組換えAタンパク質(rSPA#RN091139、150mg、47.5mg/mLの水溶液として)と、水(90mL)とを加える。この反応混合物に上記実施例21からのGMAグラフトSAE繊維(350mg)を添加する。この混合物を37℃で2.5時間加熱する。
室温にまで冷却した後に、固形物をブフナー漏斗に移し、0.1M重炭酸ナトリウム(3×100mL)で洗浄する。湿繊維固体を、0.2M重炭酸ナトリウム/0.5M塩化ナトリウム溶液中10重量%チオグリセロール溶液の100mLに懸濁する。この混合物を室温で一晩撹拌する。
【0095】
固形物をブフナー漏斗に移し、0.15M塩化ナトリウムを有する0.1MのTRIZMA塩基溶液(1×75mL)、0.05M酢酸溶液(1×75mL)で洗浄した。TRIZMA塩基及び酢酸の洗浄サイクルをさらに2回繰り返す。最後に、SAE繊維固体を脱イオン水(1×75mL)及び20重量%エタノール(1×75mL)で洗浄する。SAE繊維固体を、20重量%のエタノール溶液中で保存する。
【0096】
実施例24.エポキシ官能化繊維のポリアリルアミン変性。
陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)用途のポリアリルアミン高分子リガンド官能基によるSAE繊維の表面変性。30mlのボトルに、上記実施例21からのGMAグラフトSAE繊維(0.5g)と、水(10mL)と、40重量%ポリアリルアミン塩酸塩溶液(40重量%溶液の1.25g)と、1.0M水酸化ナトリウム(10mL)とを加える。この反応混合物を18時間にわたって35℃に加熱する。
室温にまで冷却した後に、固形物を脱イオン水(3×50mL)及びアセトン(1×50mL)で洗浄する。
この湿った材料をオーブンに入れて40℃で12時間乾燥させる。
【0097】
実施例25.フロースルー宿主細胞タンパク質除去。
実施例21に従って製造したQ官能化SAE繊維媒体を、フロースルー精製(polishing)モードにおけるHCP除去活性について評価する。Q官能化繊維媒体0.34gを、14.5mm内径カラムに充填し、0.6cmの層深さ(1.00mLのカラム容量、0.34g/mLの繊維充填密度)に圧縮する。
【0098】
モノクローナル抗体を含む細胞培養培地を清澄化し、次いでAタンパク質カラムクロマトグラフィーを用いて分離し、溶液のpHをpH5に調整する。続いて、Aタンパク質溶離液のpHをTRIZMA塩基でpH8に調整し、その後0.2ミクロンの膜を通して濾過する。
【0099】
Q官能化SAE繊維媒体カラムを、緩衝液(25mMのTris、pH8)で平衡化する。8.2g/Lのモノクローナル抗体Aタンパク質溶離液(pH8)100ミリリットルを、流速1.0mL/分でカラムに通す。10個の10mL画分を集める。溶離緩衝液として25mMのTris(pH8)中1M塩化ナトリウム溶液を使用して、結合した宿主細胞タンパク質(HCP)を溶離する。2個の10mL溶離画分も集める。10個のフロースルー画分と2個の溶離画分とを、それぞれHCP−ELISAとAタンパク質HPLCにより分析して、HCP除去及びモノクローナル抗体回収レベルを決定する。
【0100】
実施例26.ウイルスの結合/溶離精製のためのSAE繊維媒体性能。
バクテリオファージΦ6についての静的結合容量及び溶離回収実験を以下に示される通りに実施する。陰イオン交換モード結合/溶離操作も、実施例13に記載されたのと同様の手順に従って、充填カラム形式で実施できる。5個のプラスチック遠心管に、実施例21のQ官能化SAE繊維媒体を加える。SAE繊維サンプルのそれぞれを、25mMのTris緩衝液(pH8、0.18mg/mLのHSAを有する)5mLで10分間にわたって撹拌しながら平衡化する。これらの管を室温で卓上遠心機において10分間にわたり4000rpmで回転させて、SAE繊維媒体をペレット化する。上清2.5mLを除去し、そして25mMのTris緩衝液(pH8、0.18mg/mL HSA)中1.7×10
7pfu/mLΦ6溶液2.5mLを各管に加える。サンプルを室温で1時間撹拌する。その後、管を室温で卓上遠心分離機において4000rpmで15分間回転させてSAE繊維媒体をペレット化する。上清2.5mLを除去し、そしてこれらのサンプルについて、プラーク形成アッセイにより、結合していないΦ6のアッセイを行う。これらの管を、遠心分離しながら25mMのTris緩衝液(pH8、0.18mg/mL HSAを有する)の2.5mL洗浄液で3回洗浄し、各洗浄と上清2.5mLの除去との合間にSAE繊維媒体をペレット化する。洗浄後、25mMのTris緩衝液(pH8、0.18mg/ml HSAを有する)中1.0M塩化ナトリウム溶液2.5mLを各管に加える(5mLの総容量、最終塩化ナトリウム濃度は0.5Mである)。これらのサンプルを室温で10分間撹拌する。その後、これらの管を室温で卓上遠心分離機において4000rpmで10分間遠心して、SAE繊維媒体をペレット化する。上清2.5mLを除去し、そしてこれらの溶離サンプルを、溶離したΦ6についてプラーク形成アッセイによりアッセイした。Q官能化SAE繊維媒体は、フロースルーウイルス除去又は結合/溶離ウイルス精製用途のための予備充填装置形式又はクロマトグラフィーカラムに一体化できる。