【解決手段】反力発生装置(100)は、運転者が操舵操作する操舵部材(200)に接続されたステアリングシャフト(104)と、前記ステアリングシャフトに接続されたダイレクトドライブモータ(110)と、前記ステアリングシャフトに接続された電磁ブレーキ(120)とを備えている。
前記回転基板において、前記電磁部の前記第2の摩擦部とは反対側の面に対向する面に前記らせん状の溝が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の反力発生装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
実施形態1に係る操舵装置1について
図1〜
図4を参照して説明する。
【0013】
図1は、操舵装置1の要部構成を模式的に示す模式図である。
図1に示すように、操舵装置1は、操舵部10、転舵部20、操舵部材200、及び制御部300を備えており、運転者による操舵部材200を介した操舵操作に応じて車輪400を転舵するために用いられる。
【0014】
操舵装置1は、
図1に示すように、操舵部材200と転舵部20との間の機械的なトルク伝達経路を有しない一方で、操舵部材200を介した操舵操作に応じて車輪400の転舵角を電気的に制御可能であるステアバイワイヤ方式の操舵装置である。
【0015】
なお、操舵部材200として、
図1に示すように、ホイール形状を有するステアリングホイールを例に挙げるが、これは本実施形態を限定するものではなく、運転者による操舵操作を受け付けることができるものであれば他の形状や機構を有するものであってもよい。
【0016】
(操舵部10)
操舵部10は、運転者による操舵部材200を介した操舵操作を受け付ける機能と、操舵操作に対する反力を発生させ、当該反力を操舵部材200に伝達する機能とを併せ持っている。
図1に示すように、操舵部10は、反力発生装置100、ステアリングシャフト101、及び、トルクセンサ102を備えている。
【0017】
以下の説明において、「上端」とは、操舵部材200に近い側の端部のことを指し、「下端」とは、操舵部材200から遠い側の端部のことを指す。
【0018】
ステアリングシャフト101の上端は、操舵部材200に対してトルク伝達可能に接続されている。ここで、「トルク伝達可能に接続」とは、一方の部材の回転に伴い他方の部材の回転が生じるように接続されていることを指し、例えば、一方の部材と他方の部材とが一体的に成形されている場合、一方の部材に対して他方の部材が直接的又は間接的に固定されている場合、及び、一方の部材と他方の部材とが継手部材等を介して連動するよう接続されている場合を少なくとも含む。
【0019】
本実施形態では、ステアリングシャフト101の上端は、操舵部材200に対して固定されており、操舵部材200とステアリングシャフト101とは一体的に回転する。
【0020】
ステアリングシャフト101と反力発生装置100とはトルク伝達可能に接続されており、ステアリングシャフト101において生じる捩れをトルクセンサ102によって検出する。
【0021】
より具体的には、運転者が操舵部材200を介した操舵操作を行うと、ステアリングシャフト101内に設けられたトーションバーにおいて、操舵操作のトルクTの大きさに応じた捩れ角θ
Tが生じる。トルクセンサ102は、この捩れ角θ
Tを検出し、検出結果を示すトルクセンサ信号を制御部300に供給する。なお、操舵部10は、操舵部材200の操舵角を検出するための操舵角センサを更に備え、検出した操舵角又は操舵角速度を示す信号を制御部300に供給する構成としてもよい。また、操舵部10は、トルクセンサ102に替えて上記操舵角センサを備え、検出した操舵角又は操舵角速度を示す信号を制御部300に供給する構成としてもよい。
【0022】
反力発生装置100は、制御部300から供給されるトルク制御信号に従い、トルクを発生する。反力発生装置100の具体的な構成については後述する。
【0023】
(制御部300)
制御部300は、運転者による操舵操作に応じて、転舵力発生部220が発生させる転舵力及び反力発生装置100が発生させるトルクを制御する。
【0024】
より具体的には、制御部300は、トルクセンサ102から供給されるトルクセンサ信号を参照して、反力発生装置100が発生させるトルクを制御するためのトルク制御信号と、転舵力発生部220が発生させる転舵力を制御するための転舵力制御信号とを生成し、それぞれ、反力発生装置100と転舵力発生部220とに供給する。
【0025】
制御部300は、操舵部材200の操舵角を示す信号、及び車速センサからの車速信号などを更に参照して、トルク制御信号及び転舵力制御信号を生成する構成としてもよい。
【0026】
制御部300は、操舵部材200を介して入力された運転者の操舵トルクとは逆向きの反力トルクがステアリングシャフト101に伝達されるように反力発生装置100を制御する。これにより、運転者は、操舵操作に対する操作感を得ることができる。
【0027】
(転舵部20)
転舵部20は、操舵部10が受け付けた運転者の操舵操作に応じて、車輪400を転舵させるための構成である。
【0028】
図1に示すように、転舵部20は、ラック軸211、タイロッド212、ナックルアーム213、及び、転舵力発生部220を備えている。
【0029】
転舵力発生部220は、制御部300からの転舵力制御信号に従って転舵力を発生させ、ラック軸211を軸方向に変位させる。
【0030】
ラック軸211が軸方向に変位することにより、ラック軸211の両端に設けられたタイロッド212、及び、タイロッド212に連結されたナックルアーム213を介して、車輪400が転舵される。
【0031】
なお、転舵力発生部220の具体的構成は本実施形態を限定するものではないが、例えば、以下の構成例が挙げられる。
【0032】
[構成例1]
転舵力発生部220は、モータと、当該モータの出力軸の回転運動をラック軸211の軸方向の直線運動に変換する変換機構とを備える。ここで、変換機構として、例えば、螺旋溝が形成された内周面を有するナットであって、モータによって回転駆動されるナットと、ラック軸の外周面に形成され、ナットの螺旋溝と同じピッチを有する螺旋溝と、ナットの螺旋溝及びラック軸の螺旋溝によって挟持された複数の転動用ボールとによって構成される所謂ボールねじ機構を用いることができる。
【0033】
更に言えば、転舵力発生部220は、ラック軸211に沿って配置されたモータの出力軸に対してトルク伝達可能に接続された駆動プーリと、ナットに対してトルク伝達可能に接続された従動プーリと、駆動プーリと従動プーリとに懸架され、駆動プーリから従動プーリにトルクを伝達する懸架部材を備える構成とすることができる。
【0034】
[構成例2]
転舵力発生部220は、ラック軸211と同軸に配置された中空モータを備え、当該中空モータによって構成例1におけるナットを回転駆動する構成としてもよい。このような構成とすれば、構成例1における駆動プーリと従動プーリとが不要になるため、省スペース化を図ることができる。
【0035】
[構成例3]
転舵力発生部220は、ボールねじ機構に替えて、モータによって回転駆動される第2のピニオンシャフトと、第2のピニオンシャフトに対してトルク伝達可能に接続されたピニオンギヤであって、ラック軸211に形成された第2のラックに噛み合うピニオンギヤとを備える構成としてもよい。
【0036】
[構成例4]
転舵力発生部220は、左右前後の車輪400のそれぞれについて備えられる構成であってもよい。このような構成とすれば、車輪400を、それぞれ独立して転舵することができる。
【0037】
(反力発生装置100)
続いて、
図2及び
図3を参照して、反力発生装置100の構成例についてより具体的に説明する。
図2は、反力発生装置100の一構成例を示す断面図である。
【0038】
図2は、後述する電磁ブレーキ120が動作していない状態での反力発生装置100の断面を示しており、
図3は、電磁ブレーキ120が動作している状態での反力発生装置100の断面を示している。
【0039】
図2に示すように、反力発生装置100は、ダイレクトドライブモータ110、電磁ブレーキ120、ハウジング130、回転角センサ150及び第2のスプリング172を備えている。
【0040】
ダイレクトドライブモータ110は、モータロータ111と、モータコア112と、によって構成されている。モータロータ111は、ステアリングシャフト101に固定的に接続されており、モータロータ111とステアリングシャフト101とが一体的に回転する。モータロータ111は、一例として複数の永久磁石を備えた構成とすることができるがこれは本実施形態を限定するものではない。モータコア112は、ハウジング130に固定的に接続されており、モータロータ111に対して反力トルクを与えるための電磁的構成要素である。モータコア112は、一例として、制御部300から供給されるトルク制御信号によって電場の極性及び大きさが制御される複数の電磁石を備えた構成とすることができるがこれは本実施形態を限定するものではない。
【0041】
以上のように構成されたダイレクトドライブモータ110は、制御部300から供給されるトルク制御信号に従い、モータロータ111を回転させ、モータロータ111とステアリングシャフト101とを一体的に回転させる。これにより、ダイレクトドライブモータ110は、運転者による操舵操作に応じて、反力トルクを発生する。
【0042】
回転角センサ150は、ステアリングシャフト101の回転角を検出し、検出した結果を示す回転角信号を、制御部300に供給する。なお、当該回転角信号は、電磁ブレーキ120に直接供給される構成としてもよい。
【0043】
電磁ブレーキ120は、電磁部121と、第1の摩擦部123と、第2の摩擦部122と、支持ピン124とによって構成されている。第1の摩擦部123は、第1の摩擦プレート支持部123aと第1の摩擦プレート123bとを備えている。第1の摩擦プレート支持部123aは、ステアリングシャフト101に固定的に接続されており、第1の摩擦プレート支持部123aとステアリングシャフト101とは一体的に回転する。また、第1の摩擦プレート支持部123aの第2の摩擦部122に対向する側には、第1の摩擦プレート支持部123aに対して固定的に第1の摩擦プレート123bが設けられている。
【0044】
一方、第2の摩擦部122は、第2の摩擦プレート支持部122aと第2の摩擦プレート122bとを備えている。第2の摩擦プレート支持部122aは、ステアリングシャフト101の軸方向に関する軸周り回転不能に、かつ、当該軸方向にスライド可能に、支持ピン124によって支持されている。より具体的には、第2の摩擦プレート支持部122aには貫通孔が形成されており、当該貫通孔には、一端がハウジング130に対して固定的に接続され、ステアリングシャフト101の軸方向に沿って延伸する支持ピン124が貫通している。第2の摩擦プレート支持部122aの第1の摩擦プレート123bに対向する側には、第2の摩擦プレート支持部122aに対して固定的に第2の摩擦プレート122bが設けられている。
【0045】
電磁部121は、ハウジング130にステアリングシャフト101の軸方向に関する軸周り回転不能、かつ、当該軸方向にスライド不能に固定されている。より具体的には、電磁部121には貫通孔が形成されており、当該貫通孔には、支持ピン124が貫通している。
【0046】
電磁部121は、回転角センサ150が検出した回転角信号に応じて、第2の摩擦部122をステアリングシャフト101の軸方向にスライドさせる。電磁部121は、第1の摩擦部123側に第2の摩擦部122をスライドさせることによって、第2の摩擦プレート122bを第1の摩擦プレート123bに押し付ける。これにより、第1の摩擦プレート123bと第2の摩擦プレート122bとが当接し、摩擦トルクを発生させる。これにより、電磁ブレーキ120に起因した反力トルクがステアリングシャフト101に対して印加されることになる。
【0047】
なお、電磁部121は、回転角信号に換えて、操舵部材200の舵角センサ(不図示)の舵角信号に応じて動作する構成であってもよい。また、第1の摩擦プレート123b及び第2の摩擦プレート122bに用いられる部材は、電磁ブレーキ120の動作時の動作音が静かであり、電磁ブレーキ120の解除性に優れ、かつ、電磁ブレーキ120の動作時における弾かれ等の現象を抑制するものであることが好ましいが、これは本実施形態を限定するものではない。
【0048】
ハウジング130は、ダイレクトドライブモータ110と、電磁ブレーキ120とを収容するように構成されている。ハウジング130にダイレクトドライブモータ110と、電磁ブレーキ120とを収容するように構成することにより、反力発生装置100の小型化を図ることができる。
【0049】
第2のスプリング172は、第1の摩擦部123と、第2の摩擦部122との間に配置されている。より具体的には、第2のスプリング172の一方の端部は、第1の摩擦プレート支持部123aのダイレクトドライブモータ110とは反対側の面に回転摺動可能な部材173を介して接続され、第2のスプリング172の他方の端部は、第2の摩擦プレート支持部122aの電磁部121とは反対側の面に接続されている。
【0050】
続いて、
図4を参照して、反力発生装置100において生じる反力トルクについて説明する。
【0051】
図4に示す折れ線グラフは、操舵部材200の操舵角と反力発生装置100において生じる反力トルクとの対応関係を示している。
図4の折れ線グラフにおいて、横軸は操舵部材200の操舵角を表し、縦軸は反力発生装置100において生じる反力トルクを表す。操舵角θ
0は、操舵部材200の初期位置の角度を示し、操舵角θ
1〜θ
3は、操舵角θ
0を起点とし、操舵部材200を時計回り、または反時計まわりに転舵させた際の角度を示す。ここで、本実施例において、操舵角θ
2は転舵部20の最大転舵角に対応した操舵部材200の操舵角である。また、本実施例において、操舵角θ
1を所定の舵角、操舵角θ
2を規定操舵角(請求の範囲における第1の操舵角)と呼んでもよい。操舵角θ
0からθ
2までの範囲は、操舵部材200の操舵角に対応した転舵部20の転舵が可能である通常転舵域を示し、操舵角θ
2からθ
3までの範囲は、操舵部材200の操舵角に対応した転舵部20の転舵が不可能な異常転舵領域である。反力トルクf
0からf
2までの範囲は、ダイレクトドライブモータ110によって生じる反力トルクである通常操舵反力の値を示し、反力トルクf
0からf
3までの範囲は、ダイレクトドライブモータ110によって生じる反力トルクと電磁ブレーキ120によって生じる摩擦トルクとを合わせた反力トルクである通常壁反力の値を示す。また、反力トルクf
4は、操舵部材200に対して運転者が過大入力した際に、当該過大入力に対抗できる反力トルクの値を示す。
【0052】
ここで、通常転舵域で生じる反力トルクはダイレクトドライブモータ110によって生じる反力トルクに基づくものであり、空転域で生じる反力トルクは、ダイレクトドライブモータ110によって生じる反力トルクと電磁ブレーキ120によって生じる摩擦トルクとに基づくものである。
図4に示すように、ダイレクトドライブモータ110は、操舵角θ
0からθ
1までの範囲において反力トルクをf
0からf
1まで一定の増加率で反力トルクを増加させた後、操舵角θ
1からθ
2までの範囲において反力トルクの増加率を低減させた上で反力トルクをf
1からf
2まで増加させる。また、
図4に示すように、電磁ブレーキ120は、摩擦トルクを生じさせることによって、反力トルクの値をf
3まで急激に増加させた後、当該反力トルクの値をf
3に維持する。
【0053】
図4に示す積層グラフは、反力発生装置100が備える機構毎の反力トルクを示すグラフであり、反力トルクF1は、ダイレクトドライブモータ110によって生じる反力トルクを示し、反力トルクF2は、電磁ブレーキ120によって生じる摩擦トルクを示す。なお、
図4に示すように、反力トルクF1及びF2の反力の割合は、反力発生装置100において用いられるダイレクトドライブモータ110及び電磁ブレーキ120のサイズ等の構成を変更することによって、反力トルクF1’及びF2’の反力の割合のように変化する。
【0054】
このように、反力発生装置100は、ダイレクトドライブモータ110によって生じる反力トルクに加えて、電磁ブレーキ120によって生じる摩擦トルクを用いることで、運転者の入力に対抗できる反力を確保することができる。
〔実施形態2〕
以下、実施形態2に係る反力発生装置100aについて、
図5〜8を参照して説明する。
【0055】
図5は、反力発生装置100aの一構成例を示す断面図である。本実施形態に係る反力発生装置100aは、実施形態1に係る反力発生装置100において、舵角規制機構160を更に備える構成である。以下の説明では、すでに説明した部材と同様の部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0056】
舵角規制機構160は、ステアリングシャフト101に固定的に接続された回転基板であって、ステアリングシャフト101と一体的に回転する回転基板161と、少なくとも1つのガイド球162とを備えている。舵角規制機構160は、操舵部材200の操舵角が規定操舵角に達した場合に操舵部材200の操舵を規制する。舵角規制機構160による操舵部材200の操舵の規制方法については後述する。
【0057】
ここで、本実施形態に係るハウジング130は、ダイレクトドライブモータ110と、電磁ブレーキ120とに加えて、舵角規制機構160を収容するように構成されている。ハウジング130にダイレクトドライブモータ110と、電磁ブレーキ120と、舵角規制機構160とを収容するように構成することにより、反力発生装置100の小型化を図ることができる。
【0058】
なお、電磁ブレーキ120の電磁部121は、ハウジング130にステアリングシャフト101の軸方向に関する軸周り回転不能、かつ、当該軸方向にスライド不能に固定されている。より具体的には、電磁部121には貫通孔が形成されており、当該貫通孔には、支持ピン124が貫通している。また、電磁部121は、ステアリングシャフト101の半径方向と交わる面において、ハウジング130に対して固定されている。
【0059】
電磁部121は、実施形態1と同様に、回転角センサ150が検出した回転角信号に応じて、第2の摩擦部122をステアリングシャフト101の軸方向にスライドさせる。電磁部121は、第1の摩擦部123側に第2の摩擦部122をスライドさせることによって、第2の摩擦プレート122bを第1の摩擦プレート123bに押し付ける。これにより、第1の摩擦プレート123bと第2の摩擦プレート122bとが当接し、摩擦トルクを発生させる。これにより、電磁ブレーキ120に起因した反力トルクがステアリングシャフト101に対して印加されることになる。
(舵角規制機構160)
続いて、
図6及び7を参照して、舵角規制機構160の構成例についてより具体的に説明する。
図6は、舵角規制機構160の上面斜視図である。
【0060】
図6に示すように、舵角規制機構160が備える回転基板161は、電磁部121の第2の摩擦部122とは反対側の面に対向する面170において、両端部164、165を有するらせん状の溝163が形成されている。また、
図6に示すように、回転基板161には、らせん状の溝163上に少なくとも1つ以上のガイド球162が配置されている。ガイド球162は、操舵部材200の操舵に応じて、らせん状の溝163上を移動する。
【0061】
続いて、
図7を参照して、舵角規制機構160におけるガイド球162の動きを説明する。
図7は、操舵部材200を反時計回り(左転舵)に規定操舵角θ
2まで転舵した場合と、操舵部材200を転舵しない場合と、操舵部材200を時計回り(右転舵)に規定操舵角θ
2まで転舵した場合とにおける、らせん状の溝163上のガイド球162の配置を示している。
【0062】
図7に示すように、θ
0からθ
2未満までの中立の位置にガイド球162が配置される場合では、ガイド球162がらせん状の溝163の両端部164、165に当接することがなく、操舵部材200の操舵を規制することはない。また、操舵部材200を反時計回りに規定操舵角θ
2まで転舵すると、
図7の「左転舵後」の示す位置にガイド球162が配置され、ガイド球162がらせん状の溝163の端部165に当接する。また、操舵部材200を時計回りに規定操舵角θ
2まで転舵すると、
図7の「右転舵後」の示す位置にガイド球162が配置され、ガイド球162がらせん状の溝163の端部164に当接する。このように、操舵部材200の操舵角が上記規定操舵角θ
2に達した場合には、ガイド球162は、らせん状の溝163の端部164、165に当接する。これにより操舵部材200の操舵を規制することができる。なお、
図7において、らせん状の溝163が平らな形状を用いて説明したが、これは本実施形態を限定するものではなく、例えば、らせん状の溝163の両端部164、165における溝の深さが、当該両端部164、165以外の箇所よりも深い構成であってもよい。
【0063】
より具体的には、らせん状の溝163の両端部164、165において、溝の深さが相対的に深くなる深溝部164a、165aが形成されている。深溝部164a、165aは、らせん状の溝163の各端部164、165から所定の長さに亘って設けられている。ガイド球162は、操舵部材200の操舵角が予め定められた操舵角θ
4(請求の範囲における第2の操舵角)以上になった場合、深溝部164a、165aに配置され、電磁部121から離れる方向に移動する。ここで操舵角θ
4は、規定操舵角θ
2未満である。
【0064】
なお、電磁部121の第2の摩擦部122とは反対側の面に放射状の溝125を形成し、らせん状の溝163と放射状の溝125との交差位置にガイド球162を配置することによって、らせん状の溝163上におけるガイド球162の位置ズレを抑制することができる。
【0065】
続いて、
図8を参照して、反力発生装置100aにおいて生じる反力トルクについて説明する。
【0066】
図8に示す積層グラフは反力発生装置100aが備える機構毎の反力トルクを示すグラフであり、反力トルクF5及び反力トルクF6は舵角規制機構160によって生じる反力トルクを示す。
【0067】
より具体的には、反力発生装置100aは、操舵部材200の操舵角が上記所定の舵角未満である場合、
図8の(a)に示すように、ダイレクトドライブモータ110によって生じる反力トルクF1と、電磁ブレーキ120によって生じる反力トルクF2とを合わせた反力トルクを発生させる。
【0068】
また、反力発生装置100aは、操舵部材200の操舵角が規定操舵角に達した場合、
図8の(b)に示すように、上記反力トルクF1と上記反力トルクF2とに加えて、舵角規制機構160によって生じる反力トルクF5を合わせた反力トルクを発生させる。ここで、反力トルクF5は、ガイド球162が上記端部164、165に当接することによって生じる反力トルクを示す。ここで、上記反力トルクF1と上記反力トルクF2と上記反力トルクF5とを合わせた反力トルクは、操舵部材200に対して上記過大入力に対抗できる反力トルクf
4に相当する。なお、
図8の(b)に示すように、ダイレクトドライブモータ110と電磁ブレーキ120とが動作していない場合であっても、上記過大入力に対抗できる反力トルクf
4に相当する反力トルクF6を舵角規制機構160において生じさせることができる。ここで反力トルクF6は、ガイド球162が上記端部164、165に当接することによって生じる反力トルクを示す。
【0069】
このように、反力発生装置100aは、ダイレクトドライブモータ110によって生じる反力トルク及び電磁ブレーキ120によって生じる摩擦トルクに加えて、舵角規制機構160によって生じる反力トルクを用いることで、運転者の入力に対抗できる反力を確保することができる。
〔実施形態3〕
以下、実施形態3に係る反力発生装置100bについて、
図9〜11を参照して説明する。
【0070】
図9は、反力発生装置100bの一構成例を示す断面図である。本実施形態に係る反力発生装置100bは、実施形態2に係る反力発生装置100aにおいて、舵角規制機構160に替えて舵角規制機構160bを備え、第1のスプリング171を更に備える構成である。以下の説明では、すでに説明した部材と同様の部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0071】
第1のスプリング171は、電磁部121と、第1の摩擦部123との間に配置されている。より具体的には、第1のスプリング171の一方の端部は、電磁部121の舵角規制機構160bとは反対側の面に接続され、第1のスプリング171の他方の端部は、第1の摩擦プレート支持部123aのダイレクトドライブモータ110とは反対側の面に回転摺動可能な部材173を介して接続されている。
【0072】
第1のスプリング171は、スプリングが縮む際の反発力によって、電磁部121を回転基板161へ押し付ける力を増加させ、ボール摺動抵抗を増加させることができる。
【0073】
続いて、
図10を参照して、舵角規制機構160bにおけるガイド球162の動きを説明する。
【0074】
本実施形態に係る舵角規制機構160bは、
図10に示すように、らせん状の溝163aの両端部164、165において、溝の深さが相対的に浅くなる第1の浅溝部168、166と、溝の深さが第1の浅溝部168、166よりも浅い第2の浅溝部169、167が形成されている。第1の浅溝部168、166は、らせん状の溝163aの各端部164、165から第1の所定の長さに亘って設けられている。また、第2の浅溝部169、167は、らせん状の溝163aの各端部164、165から第2の所定の長さに亘って設けられている。ここで、第2の所定の長さは、らせん状の溝163aにおいて、第1の所定の長さよりも短くなるように設けられている。
【0075】
図10に示すように、操舵部材200の操舵角が所定の舵角θ
1未満である場合、ガイド球162は、らせん状の溝163aの両端部164、165以外の箇所に配置される。また、操舵部材200の操舵角が規定操舵角θ
2未満の所定の舵角θ
1(請求の範囲における第3の操舵角)以上になった場合に、ガイド球162は、らせん状の溝163aの第1の浅溝部168、166に配置される。ガイド球162が第1の浅溝部168、166に配置されることによって、ガイド球162は電磁部121を第2の摩擦部122に押し付けることができる。これにより、電磁ブレーキ120による摩擦トルクが増大する。また、操舵部材200を反時計回りに規定操舵角θ
2まで転舵すると、
図10の「左転舵後」の示す位置にガイド球162が配置される。これにより、ガイド球162がらせん状の溝163aの第2の浅溝部169に配置されると共に、らせん状の溝163aの端部165に当接する。また、操舵部材200を時計回りに規定操舵角θ
2まで転舵すると、
図10の「右転舵後」の示す位置にガイド球162が配置される。これにより、ガイド球162がらせん状の溝163aの第2の浅溝部167に配置されると共に、らせん状の溝163aの端部164に当接する。ガイド球162が第2の浅溝部169、167に配置されることによって、ガイド球162は第1の摩擦部123と第2の摩擦部122とが完全に密着するまで電磁部121を押し付けることができる。これにより、電磁ブレーキ120における摩擦トルクが更に増大する。また、ガイド球162がらせん状の溝163aの端部164、165に当接することによって、操舵部材200の操舵が規制される。
【0076】
なお、ガイド球162が上記端部164、165に当接することによって上記過大入力に対抗できる反力トルクを生じさせる場合、第1の摩擦部123と第2の摩擦部122との接触荷重を下げる、または接触を解除するようにらせん状の溝163aの第2の浅溝部169、167の深さを設定してもよい。
【0077】
より具体的には、
図10に示すように、らせん状の溝163bは、第2の浅溝部169a、167aの溝の深さを第1の浅溝部168、166の溝の深さよりも深くなるように設定してもよい。ガイド球162は、操舵部材200の操舵角が予め定められた操舵角θ
5(請求の範囲における第4の操舵角)以上になった場合、第2の浅溝部169a、167aに配置され、電磁部121から離れる方向に移動する。これにより、第1の摩擦部123と第2の摩擦部122のダメージを抑制することができる。ここで操舵角θ
5は、規定操舵角θ
2未満であり、かつ、所定の舵角θ
1以上である。
【0078】
舵角規制機構160bは、らせん状の溝163aの端部164と端部165の間の長さ、換言すれば、らせん状の溝の両端部164、165の位置を設定することによって、操舵部材の操舵角の規定操舵角を任意の角度に設定することができる。そのため、らせん状の溝163aの両端部164、165は任意角ストッパーと言い換えることができる。
【0079】
続いて、
図11を参照して、反力発生装置100bにおいて生じる反力トルクについて説明する。
【0080】
図11に示す積層グラフは反力発生装置100bが備える機構毎の反力トルクを示すグラフであり。
図11における反力トルクF3は、舵角規制機構160bによって生じる反力トルクを示し、
図11における反力トルクF4は第1のスプリング171によって生じる反力トルクを示す。
【0081】
より具体的には、反力発生装置100bは、操舵部材200の操舵角が上記所定の舵角未満である場合、
図11の(a)に示すように、ダイレクトドライブモータ110によって生じる反力トルクF1と、電磁ブレーキ120によって生じる反力トルクF2と、第1のスプリング171によって生じる反力トルクF4とを合わせた反力トルクを発生させる。ここで、反力トルクF4は、第1のスプリング171のスプリングが縮む際の反発力により生じる反力トルクを示す。
【0082】
また、反力発生装置100bは、操舵部材200の操舵角が上記規定操舵角未満かつ上記所定の舵角以上である場合、
図11の(b)に示すように、上記反力トルクF1と上記反力トルクF2と、上記反力トルクF4とに加えて、舵角規制機構160bによって生じる反力トルクF3を合わせた反力トルクを発生させる。ここで、反力トルクF3は、舵角規制機構160bの電磁部121がスライドし、第2の摩擦プレート支持部122aとのクリアランスが減少することによる電磁力の増加によって生じる反力トルクを示す。
【0083】
また、反力発生装置100bは、操舵部材200の操舵角が規定操舵角に達した場合、
図11の(c)に示すように、上記反力トルクF1と上記反力トルクF2とに加えて、舵角規制機構160bによって生じる反力トルクF5を合わせた反力トルクを発生させる。なお、
図11の(c)に示すように、ダイレクトドライブモータ110と電磁ブレーキ120とが動作していない場合であっても、上記過大入力に対抗できる反力トルクf
4に相当する反力トルクF6を舵角規制機構160bにおいて生じさせることができる。
【0084】
このように、反力発生装置100aは、ダイレクトドライブモータ110によって生じる反力トルク、電磁ブレーキ120によって生じる摩擦トルク、及び舵角規制機構160bによって生じる反力トルクに加えて、第1のスプリング171及び第2のスプリング172によって生じる反力トルクを用いることで、運転者の入力に対抗できる反力を確保することができる。
【0085】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0086】
また、操舵角θ
2は転舵部20の最大転舵角に対応した操舵部材の操舵角である構成について例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、転舵部20の最大転舵角が規制状態である場合、操舵角θ
2を最大転舵角に達する前の角度に設定することができる。また、本実施形態において、「最大転舵角」とは、必ずしも転舵部20の機械的構造によって決定される最大転舵角だけでなく、制御部300において設定される最大転舵角も含まれる。
前記回転基板において、前記電磁部の前記第2の摩擦部とは反対側の面に対向する面に前記らせん状の溝が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の反力発生装置。