【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、次のような課題があった。
(1)特許文献1は原料油脂に対して、水素化脱酸素反応を行い、次いで、異性化分解反応を行う2段階の反応工程なので、水素化脱酸素反応で大量の水素を消費するとともに、この方法では、遊離脂肪酸の骨格構造を備えたノルマルパラフィンが生成することになり、その結果、異性化分解反応が厳しい反応条件となり反応が複雑で省エネルギー性に欠けるという課題を有していた。
(2)特許文献2は、原料油脂に対して、水素化脱酸素反応工程を有するので、大量の水素を消費し、かつ明細書の段落[0086]の実施例1で示された第1の異性化から第2の異性化(重質再循環流)までに得られる生成物はともに凝固点が−40℃を達成しておらず、流動点が高く、ジェット燃料の流動点−40℃を満たすことが困難という課題を有していた。
(3)特許文献3は、油脂を水、水素の存在下、高温高圧の水熱反応を行い、次いで水素化反応を行って、ジェット燃料を得る方法であり、省エネルギー性に欠けるとともに水素の消費量が大きいという課題や、明細書の段落[0052]および[0053]より芳香族収率32.6重量%と大きく、ASTMの0.5質量%以下を満たしていないとい課題を有している。また、流動点に関する記述や生成物の化合物に関する記述がなく、芳香族の含有率だけでなく、流動点等の他の規格を満たしているか不明である。
(4)特許文献4は明細書の段落[0014]にて約400〜約2000psig(2.86〜13.89MPa) の圧力を含む水素化異性化条件下とあり、また明細書の段落[0047]及び[0048]の実施例3の反応圧力が580psig(3.55MPa)と高圧であることから、高圧ガス対策が必要であるという課題を有していた。
(5)特許文献5は、芳香族化合物が実施例2では60.7%、実施例3のβゼオライト触媒を用いたものは69%、Yゼオライト触媒を用いたものは36.2%と、煤の元となるアロマ留分が多くジェット燃料として燃焼性に欠けるという課題を有していた。
【0005】
本件発明者は、上記従来の課題を解決すべく、生物由来の油脂や廃食用油等のトリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱酸素処理して得られた粗製油を原料としたバイオジェット燃料の製造方法について鋭意研究を行った。
脱酸素処理の中でも、特に油脂脱炭酸分解触媒を用いて脱炭酸処理して得られる粗製油について種々分析した結果、以下の物性を有していることがわかった。
(1)脱炭酸工程において得られる粗製油は、炭素数15〜17を主とした山なりの炭素数分布を持つ炭素数6〜25の炭化水素化合物から成る油であり、炭素数9〜15の炭化水素化合物を主とするジェット燃料より炭素数が大きく、ジェット燃料留分の収率は低いという課題があった。
(2)主となる炭化水素化合物は直鎖飽和炭化水素であり、析出点、流動点が−15℃以上なのでジェット燃料としては高過ぎるという課題があった。
(3)脱炭酸工程において、一部芳香族炭化水素が生成され、含有率が1〜20%ほどあるので、バイオジェット燃料の芳香族炭化水素含有率がMAX0.5%であることの条件を満たしていないという課題があった。
(4)脱炭酸工程にて、脂肪酸の含有量を示す酸価値が0〜20mg−KOH/g‐oilの生成油が得られ、脂肪酸は燃料の酸化安定性に著しく影響を与えるため、ほぼ0mg−KOH/g‐oilにする必要があるという課題があった。
【0006】
本件発明は、上記物性を有する粗製油から以下の基準(ASTM D7566−Annex2)を達成できるバイオジェット燃料を低原価で量産することができるバイオジェット燃料の製造方法を提供することを目的とする。
a.炭素数9〜15を持つ炭化水素化合物を主とする精製油である
b.流動点が−40℃以下である
c.芳香族炭化水素含有率が0.5質量%以下である
d.酸価値がほぼ0mg−KOH/g‐oil(0.015mg−KOH/g‐oil以下)である
e.シクロパラフィン含有率が15質量%以下である
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本件発明のバイオジェット燃料の製造方法は、以下の構成を有している。
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈1〉は、トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱酸素処理して得られる粗製油を、反応温度180℃〜350℃、圧力0.1MPa〜30MPaの条件下、水素化触媒及び異性化触媒を用いて、水素雰囲気下で、水素化、異性化、分解する反応工程を有する構成を有している。
【0008】
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)水素化により芳香族成分の二重結合を飽和しシクロアルカン等に転化し芳香族成分の含有量を低下させることができる。
(2)水素化により原料油(粗製油)に由来する遊離脂肪酸を脱酸素し酸価値を低くすることができる。
(3)異性化や水素化分解により粗製油中の成分をシクロパラフィン、イソパラフィン、ノルマルパラフィンに転化するので、析出点及び流動点を低下させることができる。
(4)反応温度や反応圧力が低い条件での装置の運転が可能であるので、省エネルギー性に優れるとともに、装置の製造コストも大幅に低減することができる。
(5)水素化によりオレフィン類の二重結合を飽和し、パラフィン類に転化することができる。
以上の作用が得られることにより、反応工程において、バイオジェット燃料組成(又はこれに近い組成)を効率的に得ることができる。
【0009】
ここで、トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油としては、植物油、植物脂肪、遺伝子操作によって得られた植物油や植物脂肪、動物脂肪、魚油又はこれらの混合物を挙げることができる。
具体的には、廃食用油、植物油や植物脂肪としては、ヒマワリ油、菜種油、カノーラ油、パーム油、パーム核油、大豆油、ヘンプ油、オリーブ油、荏胡麻油、リシンシード油、辛子葉油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ココナツ油、ヤトロファ油、松の木のパルプに含有されるトール油、食品産業から排出される油や脂肪又はこれらの混合物等の廃棄物が挙げられる。
また、動物油や動物脂肪としては、ベーコン脂肪、ラード、獣脂、乳脂、食品産業から排出される油や脂肪又はこれらの混合物等の廃棄物が挙げられる。
その他、テルペン油、魚油、ある種の藻類から採取された油脂、ダーク油、汚泥、油ヤシの果肉や種子、ココヤシの胚乳、菜種、オリーブの果実、荏胡麻やトウゴマ等の種子、ヤトロファやコウヒジュの種子等の搾油前の果実や種子廃搾油原料も挙げることができる。
【0010】
また、本件発明の反応工程において反応に供する粗製油は、上記トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱酸素処理して得られる。脱酸素処理としては、油脂脱炭酸分解触媒を用いて原料油を脱炭酸する処理(例えば、特許第5353893号公報記載の方法)や、原料油にメタノールを加えてメチルエステル化する処理や、原料油を高圧下で水素化して脱酸素する処理を挙げることができるが、反応工程において所望のバイオジェット燃料組成(又はこれに近い組成)が得られ易いことから、油脂脱炭酸分解触媒を用いた脱炭酸処理が好ましい。この脱炭酸化処理については、後述する。
【0011】
反応温度としては、180℃〜350℃、好ましくは、200℃〜320℃が用いられる。200℃よりも低くなるにつれ高級飽和炭化水素が未分解のまま残留する傾向がみられ、また、320℃よりも高くなるにつれ、過分解によるバイオジェット燃料留分の収率が減少する傾向がみられ、特に、180℃よりも低くなるか、350℃よりも高くなるにつれこの傾向が著しいので好ましくない。
【0012】
圧力としては、0.1MPa〜30MPaが用いられる。好ましくは0.5MPa〜3MPa、より好ましくは、0.5MPa〜2.5MPa、さらに好ましくは1MPa〜2.5MPaが用いられる。1MPaよりも低くなるにつれ、水素化が不十分となり芳香族炭化水素の含有率が増加する傾向がみられ、特に0.1MPaよりも低くなるにつれこの傾向が著しい。また、2.5MPaよりも高くなるにつれ、組成の改善が小さく、省エネルギー性を低下させる傾向がみられる。なお、本件発明の方法においては、2.5MPa以下でもバイオジェット燃料組成(又はこれに近い組成)が得られる。
【0013】
用いる触媒は、水素化触媒及び異性化触媒であり、別々に用いても混合して用いてもよい。詳細は、後述する。
【0014】
反応槽は、固定床方式が用いられることが好ましい。反応は連続反応で行うことが好ましい。また、水素化反応と、異性化反応は、別々の反応槽で行ってもよいが、同一の反応槽で行うことが好ましい。
【0015】
水素ガスと粗製油の反応器への供給は、H
2/原料油=500〜5000vol/vol、好ましくは1000〜2000vol/volである。1000vol/volよりも低くなるにつれ、水素化が不十分となり反応生成物の芳香族炭化水素の含有率が増加する傾向がみられ、また、2000vol/volよりも高くなるにつれ、反応物の滞留時間が短くなり未反応物が増え水素の浪費が多くリサイクルが必要とし装置が複雑になる傾向がある。特に、500vol/volよりも低くなるか、5000vol/volよりも高くなるにつれこれらの傾向が著しい。
なお、本件発明における水素雰囲気下とは、水素ガスのみからなる雰囲気下が好ましいが、反応に影響しない範囲で、窒素、アルゴン等の不活性ガスを含んでいてもよい。
【0016】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈2〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉において、前記反応工程で、水素化触媒及び異性化触媒を含む水素化異性化触媒を用いて水素化、異性化、分解を行う構成を有している。
この構成により、水素化触媒及び異性化触媒を別々に用いるよりも効率的にバイオジェット燃料を製造することができる。なお、後述の本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈3〉のように、1の反応槽内で反応を行ってもよいが、それぞれ反応条件(温度、圧力等)が異なる2以上の反応槽を用いて水素化を主とする反応と異性化・分解を主とする反応とを別々に行ってもよい。
【0017】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈3〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈2〉において、前記反応工程で、水素化触媒及び異性化触媒を含む水素化異性化触媒を用いて水素化、異性化、分解を同時に行う構成を有している。
この構成により、一段反応で、より効率的にバイオジェット燃料を製造することができる。なお、水素化、異性化、分解を同時に行うとは、反応が厳密に同時に起こることを意味するものではなく、水素化異性化触媒相の通過と共に、水素化、異性化及び分解が起こることを意味する。
【0018】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈4〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈3〉のいずれかにおいて、脱酸素処理が、油脂脱炭酸分解触媒を用いた脱炭酸処理である構成を有している。
【0019】
油脂脱炭酸分解触媒を用いた脱炭酸処理は、例えば、特許第5353893号公報に具体的に記載されている。具体的には、350℃〜475℃において、反応容器内で油脂脱炭酸分解触媒と油脂(トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油)を接触させる方法である。この方法では、下記の反応式により、炭素数8〜24の脂肪族炭化水素が主として生成する。
【0020】
【化1】
【0021】
また、本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈5〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈4〉において、油脂脱炭酸分解触媒が、マグネシウムの水酸化物、酸化物、及び炭酸塩のいずれかを含む構成を有している。
【0022】
具体的には、例えば、活性化された炭素、活性コークス、及びこれらの混合物のいずれかがマグネシウムの水酸化物、酸化物、及び炭酸塩のいずれかによってコーティングされたものを挙げることができる。
このような触媒を用いることにより、効率的に原料油の脱炭酸化を図ることができる。
【0023】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈6〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈4〉又は〈5〉において、トリグリセリド及び/又は遊離脂肪酸を含有する原料油を脱炭酸処理して得られる粗製油が、以下のa.〜e.の要件を満たす構成を有している。
a.炭素数16以上を持つ炭化水素化合物を含むこと
b.流動点が−15℃以上であること
c.芳香族炭化水素含有率が1〜15質量%であること
d.酸価値が0〜20mg−KOH/g‐oilであること
e.環状化合物含有率が15質量%以下であること
これらの構成により、バイオジェット燃料の製造により適した粗製油を得ることができる。
【0024】
a.の条件においては、例えば、炭素数16以上を持つ炭化水素化合物を5%以上含み、10%以上含み得る。
b.の条件においては、流動点の上限は、10℃程度である。
c.の条件においては、芳香族炭化水素含有率は、1〜10質量%であり得る。
d.の条件においては、酸価値は、0〜10mg−KOH/g‐oilであり得る。
e.の条件においては、環状化合物含有率は、10質量%以下であり得る。
【0025】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈7〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈6〉のいずれかにおいて、反応工程において、0.5MPa〜3MPaで反応を行う構成を有している。
本件発明の方法は、このような低圧反応でも、効率的にバイオジェット燃料組成(又はこれに近い組成)を得ることができる。
【0026】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈8〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈7〉のいずれかにおいて、水素化触媒が、第9族及び/又は第10族の金属を含む構成を有している。
第9族の金属としては、Coを挙げることができる。また、第10族の金属としては、Ni、Pd、Ptを挙げることができ、2種以上用いることが好ましい。例えば、Ni及びPdを用いることが好ましい。さらに、これらの触媒の担体として、アルミナ、シリカ、活性炭等の表面積の大きな多孔質体を用いることが好ましい。なお、Mo、W等の第6族の金属や、Ru等の第8族の金属や、Cu等の第11族の金属をさらに含んでいてもよい。
【0027】
また、本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈9〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈8〉のいずれかにおいて、異性化触媒が、固体酸触媒を含む構成を有している。
異性化触媒としては、ハロゲン化アルミニウム等のハロゲン化金属を含む触媒や、シリカアルミナ、活性アルミナ、活性白土、ゼオライト等を含む固体酸触媒などが用いられるが、ゼオライトを含む固体酸触媒が好ましい。これにより、安価な触媒で、高級オレフィンや高級パラフィンを、低級パラフィンに効率よく異性化及び/又は分解することができる。
ゼオライトとしては、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、MFIゼオライト、モルデナイト、L型ゼオライト等が挙げられる。耐熱性や遊離脂肪酸の水素化により発生する水等に対する耐水性に優れるとともに、コーキングの抑制効果が期待できるため、β型ゼオライト、Y型ゼオライト、MFIゼオライトが好ましく、β型ゼオライトがより好ましい。
【0028】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈10〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈2〉〜〈9〉のいずれかにおいて、水素化異性化触媒が、水素化触媒:異性化触媒=5:95〜95:5の混合比(質量比)からなる混合触媒である構成を有している。
【0029】
ここで、水素化異性化触媒としては、水素化触媒:異性化触媒=5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10の混合比で混合した触媒が用いられる。水素化触媒の混合比が低くなるにつれ、水素化が不十分となり反応生成物の芳香族炭化水素の含有率が増加し、過分解によるバイオジェット燃料留分の収率が減少する傾向がみられ、又、水素化触媒の混合比が高くなるにつれ、異性化反応が抑制され、高級飽和炭化水素が未反応のまま残留し、析出点や流動点が降下しない傾向がみられる。
また、不活性物質が、水素化異性化触媒:不活性物質=10〜90:90〜10の混合比で混合されていてもよい。水素化異性化触媒が結晶性物質なので、不活性物質を介在させ、結晶性の水素化異性化触媒を分散させ水素化異性化触媒の触媒活性を高めるためである。ここで、不活性物質としては、ガラスビーズ、シリカビーズ、アルミナビーズを挙げることができる。
【0030】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈11〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈2〉〜〈10〉のいずれかにおいて、水素化異性化触媒が、水素化触媒及び異性化触媒の複合体である構成を有している。
本件発明の水素化異性化触媒は、単に混合した状態のものであってもよいが、一体化した複合体が好ましい。複合体としては、例えば、水素化触媒粒子の表面に異性化触媒粒子を付着又は担持させたものであってもよいし、異性化触媒粒子表面に水素化触媒粒子を付着又は担持させたものであってもよいし、水素化触媒粒子及び異性化触媒粒子を混合してバインダを用いて一体化させたものであってもよい。
【0031】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈12〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈2〉〜〈11〉のいずれかにおいて、水素化触媒の粒子の粒径が異性化触媒の粒子の粒径よりも小さく粉化され、異性化触媒の粒子表面に付着又は担持されている構成を有している。
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)水素化触媒の微細粒子が異性化触媒の粒子表面に付着又は担持されていることにより、異性化触媒の粒子表面に近接した高級パラフィンの活性点が水素化触媒に移動し高級パラフィンが効率的に水素化分解され低分子パラフィン化や、異性化されイソパラフィン化される。これにより、炭素数が9〜15の炭化水素化合物の含有率を効果的に増加させることができる。
(2)芳香族炭化水素を効果的に水素化することにより、芳香族炭化水素の含有率を低下させることができる。
(3)また、水素化により、遊離脂肪酸を効果的に分解し、酸価値を低下させることができる。
【0032】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈13〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈12〉のいずれかにおいて、水素化触媒にCuが1〜10質量%添加されている構成を有している。
この構成により、以下の作用が得られる。
(1)水素化触媒にCuが添加されているので、水素化分解によるパラフィンの末端のメチル基のメタン化が抑制されオレフィンの水素化をスムーズに行うことができる。
(2)水素化触媒にCuが添加されているので、直鎖パラフィンをランダムに分解し、高級パラフィンを低級化させ流動点を下げることができる。
(3)トルエンを水添しシクロヘキサン、更にはジメチルシクロペンタンに、またヘキサデカン(C
16H
34)をオクタン、ジメチルシクロヘキサン、2-メチルオクタン等に分解、異性化し低分子化することにより流動点も下げることができる。
(4)遊離脂肪酸のカルボキシル基やカルボニル基の脱酸素反応を行うことができる。
【0033】
ここで、Cuの添加量は1〜10質量%、好ましくは2〜5質量%が用いられる。2質量%よりも少なくなるにつれパラフィンの末端のメチル基の解離によるメタンの生成量が増加するという傾向があり、5質量%を超えるにつれNiの水素化能力を低下させるという傾向があり、1質量%よりも少ないか10質量%よりも多いときは、これらの傾向が強いので好ましくない。なお、Cuの代わりにFeを用いてもよい。
【0034】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈14〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈13〉のいずれかにおいて、反応工程において、触媒相での液空間速度が、0.1〜10h
−1である構成を有している。
触媒相での液空間速度(LHSV)を0.1〜10.0h
−1に設定することにより、粗製油が水素雰囲気の中で十分な水素化、水素化分解、脱酸素分解、芳香族のナフテン化反応等を行うことができる。
【0035】
ここで、触媒相での液空間速度としては、0.1〜10.0h
−1が好ましいが、より好ましくは0.2〜4.0h
−1、さらに好ましくは0.2〜2.0h
−1が適用される。0.2h
−1よりも少なくなるにつれ過分解によるバイオジェット燃料留分の収率が減少する傾向があり、2.0h
−1を超えるにつれ、高級飽和炭化水素が未反応のまま残留するという傾向があり、0.1h
−1よりも少ないか10.0h
−1よりも多いときは、これらの傾向が強い。
【0036】
本件発明のバイオジェット燃料の製造方法〈15〉は、上記バイオジェット燃料の製造方法〈1〉〜〈14〉のいずれかにおいて、反応工程において得られる精製油が、以下のA.〜E.の要件を満たす構成を有している。
A.炭素数9〜15を持つ炭化水素化合物を60質量%以上含む
B.流動点が−40℃以下である
C.芳香族炭化水素含有率が0.5質量%以下である
D.酸価値が0.015mg−KOH/g‐oil以下である
E.シクロパラフィン含有率が15質量%以下である
【0037】
A.の条件においては、炭素数9〜15を持つ炭化水素化合物を70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。