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特開2020-90684低硫黄マリンバンカー燃料およびそれを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-90684(P2020-90684A)
(43)【公開日】2020年6月11日
(54)【発明の名称】低硫黄マリンバンカー燃料およびそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/04 20060101AFI20200515BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20200515BHJP
【FI】
   C10L1/04
   C10G45/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】76
(21)【出願番号】特願2020-21596(P2020-21596)
(22)【出願日】2020年2月12日
(62)【分割の表示】特願2017-529330(P2017-529330)の分割
【原出願日】2015年11月17日
(31)【優先権主張番号】62/087,428
(32)【優先日】2014年12月4日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・イー・ロビンソン
(72)【発明者】
【氏名】サラ・ドウ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・カールソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘディ・グラティ
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA09
4H129DA16
4H129KA07
4H129NA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】比較的低い硫黄含有量を有するマリンバンカー燃料を製造するための方法、およびそのような方法に従って製造された低硫黄含有量燃料組成物の提供。
【解決手段】減圧残渣を実質的に分解することなく、約1500wppm以下まで硫黄を減少させるために、水素処理触媒の存在下で、減圧残渣供給流を水素により水素処理することと、水素処理された減圧残渣と、約10体積%以下の第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流および約40体積%以下の第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流とを混合することとを含む、低硫黄バンカー燃料組成物を製造するための方法であって、減圧残渣供給流が、約1000〜約10000wppmの硫黄を有し、第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約20wppm以下の硫黄を有し、第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約10wppm以下の硫黄を有する、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧残渣を実質的に分解することなく、約1500パーツパーミリオン(wppm)以下まで硫黄を減少させるために、水素処理触媒の存在下で、減圧残渣供給流を水素により水素処理することと、
前記水素処理された減圧残渣と、約10体積%以下の第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流および約40体積%以下の第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流とを混合することと
を含む、低硫黄バンカー燃料組成物を製造するための方法であって、
前記減圧残渣供給流が、約1000〜約10000wppmの硫黄を有し、前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約20wppm以下の硫黄を有し、前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約10wppm以下の硫黄を有する、方法。
【請求項2】
前記減圧残渣供給流が、約6000〜約10000wppmの硫黄を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記減圧残渣供給流が、約6000〜約8000wppmの硫黄を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水素処理された減圧残渣の前記硫黄が、約1400wppm以下まで減少される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水素処理された減圧残渣の前記硫黄が、約1300wppm以下まで減少される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水素処理された減圧残渣の前記硫黄が、約1200wppm以下まで減少される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水素処理された減圧残渣の前記硫黄が、約1000wppm以下まで減少される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記水素処理された減圧残渣が、約25体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水素処理された減圧残渣が、約20体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記水素処理された減圧残渣が、約15体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水素処理された減圧残渣が、約7.5体積%以下の前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記水素処理された減圧残渣が、約5体積%以下の前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記減圧残渣供給流が、少なくとも130バールの圧力下で水素処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
最大で約1500wppmの硫黄と50℃において少なくとも約350cStの動粘度とを有する約50体積%〜約100体積%の未分解の水素処理された減圧残渣と、
約10体積%までの第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と、
約40体積%までの第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と
を含む、低硫黄バンカー燃料組成物であって、
前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約20wppm以下の硫黄を有し、前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約10wppm以下の硫黄を有し、
(1)50℃における約20cSt〜約100cStの動粘度、
(2)15℃における約800kg/m〜1000kg/mの密度、および
(3)25℃〜35℃の流動点
からなる群から選択される1つ以上の特性を有する、
低硫黄バンカー燃料組成物。
【請求項15】
50℃において約380cStの動粘度を有する、請求項14に記載の燃料組成物。
【請求項16】
6mg/kg以下の全金属含有量を有する、請求項14に記載の燃料組成物。
【請求項17】
3mg/kg以上の全金属含有量を有する、請求項14に記載の燃料組成物。
【請求項18】
1200wppm未満の硫黄を有する、請求項14に記載の燃料組成物。
【請求項19】
1000wppm未満の硫黄を有する、請求項18に記載の燃料組成物。
【請求項20】
900wppm未満の硫黄を有する、請求項19に記載の燃料組成物。
【請求項21】
850wppm未満の硫黄を有する、請求項20に記載の燃料組成物。
【請求項22】
800wppm未満の硫黄を有する、請求項21に記載の燃料組成物。
【請求項23】
500wppm未満の硫黄を有する、請求項22に記載の燃料組成物。
【請求項24】
少なくとも500wppmの硫黄を有する、請求項14に記載の燃料組成物。
【請求項25】
約25体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、請求項14に記載の燃料組成物。
【請求項26】
約20体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、請求項25に記載の燃料組成物。
【請求項27】
約15体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、請求項26に記載の燃料組成物。
【請求項28】
約10体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、請求項27に記載の燃料組成物。
【請求項29】
約7.5体積%以下の前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、請求項14に記載の燃料組成物。
【請求項30】
約5体積%以下の前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、請求項29に記載の燃料組成物。
【請求項31】
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の60体積%以上を提供する、請求項14に記載の燃料組成物。
【請求項32】
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の65体積%以上を提供する、請求項31に記載の燃料組成物。
【請求項33】
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の70体積%以上を提供する、請求項32に記載の燃料組成物。
【請求項34】
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の80体積%以上を提供する、請求項33に記載の燃料組成物。
【請求項35】
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の90体積%以上を提供する、請求項34に記載の燃料組成物。
【請求項36】
少なくとも600℃のT50と約1500wppm以下の硫黄とを有する、未分解の減圧残渣。
【請求項37】
約1300wppm以下の硫黄を有する、請求項36に記載の未分解の減圧残渣。
【請求項38】
約1200wppm以下の硫黄を有する、請求項37に記載の未分解の減圧残渣。
【請求項39】
約1000wppm以下の硫黄を有する、請求項38に記載の未分解の減圧残渣。
【請求項40】
約800wppm以下の硫黄を有する、請求項39に記載の未分解の減圧残渣。
【請求項41】
約500wppm以下の硫黄を有する、請求項40に記載の未分解の減圧残渣。
【請求項42】
少なくとも約500wppmの硫黄を有する、請求項36に記載の未分解の減圧残渣。
【請求項43】
6mg/kg wppm以下の全金属含有量を有する、請求項36に記載の未分解の減圧残渣。
【請求項44】
3mg/kg wppm以上の全金属含有量を有する、請求項36に記載の未分解の減圧残渣。
【請求項45】
約6000mg/kg以下の窒素を有する、請求項36に記載の未分解の減圧残渣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
本発明は、概して、比較的低い硫黄含有量を有するマリンバンカー燃料(marine bunker fuels)を製造するための方法、およびそのような方法に従って製造された結果として生じる低硫黄含有量燃料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
国際海事機構(IMO)によって公布され、非特許文献1として発行されていように、船舶用燃料は、硫黄含有量において一層より厳しい必要条件により世界的規模で制限が加えられるであろう。加えて、個々の国および地域では、排出規制海域(Emission Control Area)またはECAとして知られる地域において船舶で使用される硫黄濃度が制限され始めている。
【0003】
世界的に輸送で使用される燃料は、より大きい船舶用に典型的にはマリンバンカー燃料である。バンカー燃料は、それらが他の燃料ほど高価ではないため、有利ではあるが、それらは典型的に分解燃料および/または残渣燃料から構成されており、したがって、より高い硫黄濃度を有する。船舶用のより低硫黄規格への適合は、慣習的に蒸留物の使用によって達成することができる。しかしながら、蒸留燃料は、様々な理由のため、高い費用プレミアムで取引されている。そのような理由のなかでも、圧縮着火エンジンを利用する様々な輸送用途での利用が少なからず挙げられる。それらは、IMO規制で指定された硫黄濃度より典型的に有意に低い、低硫黄濃度で製造される。
【0004】
それらの規則は、とりわけ、残渣または蒸留燃料に関して、ECA燃料において1.0重量%の硫黄含有量(2010年7月から有効)、現在の残渣燃料供給元の約15%に影響を与える可能性のある3.5重量%の硫黄含有量上限(2012年1月から有効)、主に水素処理された中間蒸留燃料に関して、ECA燃料において0.1重量%の硫黄含有量(2015年1月から有効)、および主に蒸留燃料または蒸留物/残渣燃料混合物を中心として0.5重量%の硫黄含有量上限(約2020年〜2025年)を指定する。ECA硫黄限度および硫黄上限が低下すると、様々な反応が生じ、低硫黄燃料が供給され得る。運輸会社は、典型的に、蒸留燃料に対して法外な価格割引で船舶用途に適切な特性を有する低硫黄燃料を購入するため、0.1%硫黄ECA燃料は供給が困難となる可能性がある。
【0005】
一般にCFHTと呼ばれる燃料触媒分解(FCC)ユニットの前の水素処理装置により、典型的に、製品燃料が、さらなる処理を用いずにまたは最小の逐次的な水素処理を用いる燃料として販売されるために十分であるように、十分低い硫黄濃度まで石油ガソリンおよび残渣は水素処理される。
【0006】
船舶用途において、高エネルギー含有量で低硫黄である、慣習的に分解蒸留物を含む燃料を利用することは有利であろう。蒸留物は、典型的に、マリンバンカー燃料よりさらに高い価値を得ることができる。正しい燃料品質特徴を有する別の低硫黄マリンバンカー燃料は、市場において高いプレミアムを得ることができる。
【0007】
実際に、マリンバンカー燃料の硫黄含有量を低下させることの望ましさを開示するいくつかの刊行物がある。そのような刊行物の非排他的なリストとしては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4および特許文献5、特許文献6および特許文献7、特許文献8および特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、ならびに以下の文献:非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5および非特許文献6が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,006,076号明細書
【特許文献2】米国特許第4,420,388号明細書
【特許文献3】米国特許第6,187,174号明細書
【特許文献4】米国特許第6,447,671号明細書
【特許文献5】米国特許第7,651,605号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0093262号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2013/0340323号明細書
【特許文献8】国際公開第1999/057228号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2009/001314号パンフレット
【特許文献10】英国特許第GB 1209967号明細書
【特許文献11】ロシア特許第RU 2213125号明細書
【特許文献12】特開2006000726号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Revised MARPOL Annex VI
【非特許文献2】Chem.&Tech.of Fuels and Oils(2005),41(4),287−91
【非特許文献3】Ropa a Uhlie(1979),21(8),433−40
【非特許文献4】Godishnik na Visshya Khim.heski Institut,Sofiya(1979),25(2),146−48
【非特許文献5】Energy Progress(1986),6(1),15−19
【非特許文献6】Implications Across the Supply Chain(30 September 2009)Sustainable Shipping Conference in San Francisco,California
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明を参照して記載されるようなマリンバンカー燃料において、水素処理されたかつ/または未分解のガソリン製品を使用し得る組成物(およびそれを製造する方法)を見出すことが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(要旨)
本発明の一態様は、分解された成分の濃度が減少した低硫黄マリンバンカー燃料組成物(low sulfur marine bunker fuel composition)を製造するための方法に関し、当該方法は、マリンバンカー燃料組成物を形成するために、その製品が実質的な量の分解を受けることなく、その製品が最大で約5000wppm、例えば、最大で約1500wppmの硫黄、少なくとも約20℃の流動点および50℃において少なくとも約350cStの動粘度を示すように、触媒供給水素処理装置(catalytic feed hydrotreater)において、有効な水素処理の条件(effective hydrotreating conditions)のもと、水素処理触媒(hydrotreating catalyst)の存在下、少なくとも約2000wppm、例えば、少なくとも約2000wppm、少なくとも約5000wppm、少なくとも約7500wppmまたは少なくとも約10000wppmの硫黄を有する減圧残渣供給流(vacuum resid feed stream)を水素含有ガスと接触させること(又はステップ)と;任意選択的に、その未分解製品の少なくとも一部を、粘度変性剤(viscosity modifiers)、流動点降下剤(pour point depressants)、潤滑性変性剤(lubricity modifiers)、酸化防止剤(antioxidants)およびそれらの組合せから選択される0〜60体積%の他の成分と混合(又はブレンド(blending))することを含む。得られるマリンバンカー燃料組成物は、以下を含む。
(1)最大で約2000wppm、例えば、最大で約1500wppmまたは最大で約1000wppmの硫黄を有する未分解製品;
(2)約20wppm以下の硫黄を有する約10体積%以下の第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流;および
(3)約10wppm以下の硫黄を有する約50体積%以下の第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流。
【0012】
本発明の別の態様は、低硫黄マリンバンカー燃料組成物に関し、当該組成物は、最大で約5000wppm、例えば、最大で約2000wppm、最大で約1500wppmまたは最大で約1000wppmの硫黄を有する40体積%〜100体積%の未分解の水素処理された減圧残渣(uncracked, hydrotreated vacuum resid)と;粘度変性剤、流動点降下剤、潤滑性変性剤、酸化防止剤およびそれらの組合せから選択される最大で60体積%までの他の成分とを含む。低硫黄マリンバンカー燃料組成物は、最大で約5000wppm、例えば、最大で約1000wppmの硫黄;ならびに約50℃において約20cSt〜約400cStの動粘度、15℃において約800kg/m〜約1000kg/mの密度および約20℃〜約35℃の流動点の少なくとも1つを有する。
【0013】
本発明の別の態様は、低硫黄で未分解の水素処理された減圧残渣(low sulfur, uncracked, hydrotreated vacuum resid)(又は残油)に関し、当該減圧残渣は、最大で約5000wppm、例えば、最大で約2000wppm、最大で約1500wppmまたは最大で約1000wppmの硫黄、少なくとも600℃のT50、少なくとも約20℃の流動点および約50℃において少なくとも約100cStの動粘度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本明細書に記載される通り、減圧残渣供給原料から低硫黄マリンバンカー燃料を製造するための代表的なプロセスを概説するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(詳細な説明)
本発明の一態様において、低硫黄マリンバンカー燃料組成物を製造する方法が記載されるが、他方、本発明の別の態様は、そのように製造された低硫黄マリンバンカー燃料組成物を記載する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「マリンバンカー燃料(marine bunker fuel)」、「バンカー燃料(bunker fuel)」または「船舶用燃料(marine fuel)」という用語は、(1)船舶のエンジンでの使用に適切であり、かつ(2)大気または減圧蒸留カラムのいずれにおいても蒸留除去されない、少なくとも40体積%の石油精製の製品を有する燃料組成物を指す。さらに、「マリンバンカー燃料」は、本明細書で記載される場合、「船舶用蒸留燃料(marine distillate fuel)」と対照的に使用される。蒸留物および重質の非蒸留物燃料の両方を含有するブレンドは、重質の非蒸留物成分がブレンドの全体積の40%より多くを構成する場合、「バンカー燃料」と明示されてもよい。
【0017】
分解の減少
有利にはかつ従来の慣習とは対照的に、本組成物および方法は、(精製)分解プロセスを受けた成分の使用/濃度の減少に焦点を合わせる。本明細書で使用される場合、「実質的に未分解」または「実質的に分解がない」という用語は、その第1のまたは有意な焦点が分解である工程(又はステップ)/段階(例えば、FCCプロセス、水蒸気分解プロセス、ビスブレーキングおよび/またはコーキングなどの熱分解プロセスであるが、典型的に水素化分解ではない)によって燃料を加工することを排除するように理解されるが、分解が非常にわずかに焦点をあてられるか、または副反応である工程(又はステップ)/段階(例えば、水素処理プロセス、芳香族飽和プロセス、水素仕上プロセスなど)を排除するように理解されるべきではない。理論によって拘束されないが、燃料組成物中の分解原料の量を減少させることは、燃料組成物の酸化安定性および/または着火品質の改善という利点を有し得ると考えられる(例えば、水素分解原料は、そのような分解プロセスにおいて水素が果たす役割のため、酸化安定性および/または着火品質などのそれらの品質が容認可能となるか、またはさらに比較的高くなる傾向がある可能性がある点で、他の分解原料と区別される傾向がある可能性がある)。結果として、サイクル油(例えば、軽質および重質)、スラリー油(すなわち、FCCボトム)などのマリンバンカー燃料の従来の分解成分は、有利に減少/最小化され得るか、または少なくとも比較的低濃度に保持され得る。
【0018】
組成物の硫黄含有量
低硫黄マリンバンカー燃料組成物は、5000wppm、より限定的に1500wppm、さらにより限定的に1200wppm、またはなおより限定的に1000wppmの最大硫黄含有量を有することにより、マリンバンカー燃料に関して現在必要とされるよりも厳しい基準を有利に満たすことができる。燃料の硫黄含有量基準は一般に最小限で与えられないが、多くの場合、限定されないが、比較的高硫黄の比較的低価値の流れを、その規格に他に悪影響を及ぼし得ない組成物に組み込ませることにより、追加的な費用のかかる処理を必要とする厳しい硫黄基準を低減/最小化することができることを含む、いずれかの多数の理由のため、可能な限り基準の最大限に近くなることが望ましくなる可能性がある。そのようなものとして、より限定的な1000wppmの規格に適合する多くの実施形態において、例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料は、900wppm〜1000wppmの硫黄含有量を示し得る。それにもかかわらず、より限定的な1000wppmの規格に適合する他の実施形態において、例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料は、約850wppm未満、例えば、約800wppm未満、約750wppm未満、約700wppm未満、約650wppm未満、約600wppm未満、約550wppm未満、約500wppm未満、約450wppm未満、約400wppm未満、約350wppm未満、約300wppm未満、約250wppm未満、約200wppm未満、約150wppm未満、約100wppm未満、約75wppm未満、約50wppm未満、約30wppm未満、約20wppm未満、約15wppm未満、約10wppm未満、約8wppm未満または約5wppm未満の硫黄含有量を示し得る。さらに、5000wppmの規格に適合する他の実施形態において、例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料は、最大で約4900wppm、例えば、最大で約4800wppm、最大で約4700wppm、最大で約4600wppm、最大で約4500wppm、最大で約4400wppm、最大で約4300wppm、最大で約4200wppm、最大で約4100wppm、最大で約4000wppm、最大で約3750wppm、最大で約3500wppm、最大で約3250wppm、最大で約3000wppm、最大で約2750wppm、最大で約2500wppm、最大で約2250wppm、最大で約2000wppm、最大で約1750wppm、最大で約1500wppm、最大で約1250wppm、最大で約1000wppm、最大で約750wppm、最大で約500wppm、最大で約250wppm、最大で約100wppm、最大で約75wppm、最大で約50wppm、最大で約30wppm、最大で約20wppm、最大で約15wppm、最大で約10wppm、最大で約8wppmまたは最大で約5wppmの硫黄含有量を示し得る。
【0019】
そのような様々な他の実施形態において、例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料は、追加的に、少なくとも約5wppm、例えば、少なくとも約10wppm、少なくとも約15wppm、少なくとも約20wppm、少なくとも約30wppm、少なくとも約50wppm、少なくとも約75wppm、少なくとも約100wppm、少なくとも約150wppm、少なくとも約200wppm、少なくとも約250wppm、少なくとも約300wppm、少なくとも約350wppm、少なくとも約400wppm、少なくとも約450wppm、少なくとも約500wppm、少なくとも約550wppm、少なくとも約600wppm、少なくとも約650wppm、少なくとも約700wppm、少なくとも約750wppm、少なくとも約800wppm、少なくとも約850wppm、少なくとも約900wppm、少なくとも約950wppm、少なくとも約1000wppm、少なくとも約1250wppm、少なくとも約1500wppm、少なくとも約1750wppm、少なくとも約2000wppm、少なくとも約2250wppm、少なくとも約2500wppm、少なくとも約2750wppm、少なくとも約3000wppm、少なくとも約3250wppm、少なくとも約3500wppm、少なくとも約3750wppm、少なくとも約4000wppm、少なくとも約4100wppm、少なくとも約4200wppm、少なくとも約4300wppm、少なくとも約4400wppm、少なくとも約4500wppm、少なくとも約4600wppm、少なくとも約4700wppm、少なくとも約4800wppmまたは少なくとも約4900wppmの硫黄含有量を示し得る。
【0020】
明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、1000〜500wppm、850〜550wppmまたは500〜100wppmが含まれる。
【0021】
組成物の特徴
追加的にまたは代わりとして、例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料は、以下の特徴の少なくとも1つを示し得る:少なくとも約20cSt、例えば、少なくとも約25cSt、少なくとも約30cSt、少なくとも約35cSt、少なくとも約40cSt、少なくとも約45cSt、少なくとも約50cSt、少なくとも約55cSt、少なくとも約60cSt、少なくとも約65cSt、少なくとも約70cSt、少なくとも約75cSt、少なくとも約80cSt、少なくとも約85cSt、少なくとも約90cSt、少なくとも約95cSt、少なくとも約100cSt、少なくとも約110cSt、少なくとも約120cSt、少なくとも約130cSt、少なくとも約140cSt、少なくとも約150cSt、少なくとも約160cSt、少なくとも約170cSt、少なくとも約180cSt、少なくとも約190cSt、少なくとも約200cSt、少なくとも約210cSt、少なくとも約220cSt、少なくとも約230cSt、少なくとも約240cSt、少なくとも約250cSt、少なくとも約260cSt、少なくとも約270cSt、少なくとも約280cSt、少なくとも約290cSt、少なくとも約300cSt、少なくとも約310cSt、少なくとも約320cSt、少なくとも約330cSt、少なくとも約340cSt、少なくとも約350cSt、少なくとも約360cSt、少なくとも約370cSt、少なくとも約380cSt、少なくとも約390cStまたは少なくとも約400cStの(標準試験法ISO 3104による)50℃における動粘度;最大で約390cSt、例えば、最大で約380cSt、最大で約370cSt、最大で約360cSt、最大で約350cSt、最大で約340cSt、最大で約330cSt、最大で約320cSt、最大で約310cSt、最大で約300cSt、最大で約290cSt、最大で約280cSt、最大で約270cSt、最大で約260cSt、最大で約250cSt、最大で約240cSt、最大で約230cSt、最大で約220cSt、最大で約210cSt、最大で約200cSt、最大で約190cSt、最大で約180cSt、最大で約170cSt、最大で約160cSt、最大で約150cSt、最大で約140cSt、最大で約130cSt、最大で約120cSt、最大で約110cSt、最大で約100cSt、最大で約90cSt、最大で約80cSt、最大で約70cSt、最大で約60cSt、最大で約50cSt、最大で約40cSt、最大で約30cStまたは最大で約25cStの(標準試験法ISO 3104による)50℃における動粘度;最大で約1500kg/m、例えば、最大で約1400kg/m、最大で約1300kg/m、最大で約1200kg/m、最大で約1100kg/m、最大で約1000kg/m、最大で約990kg/m、最大で約980kg/m、最大で約970kg/m、最大で約960kg/m、最大で約950kg/m、最大で約940kg/mまたは最大で約930kg/mの(標準試験法ISO 3675またはISO 12185による)15℃における密度;少なくとも約800kg/m、少なくとも約810kg/m、少なくとも約820kg/m、少なくとも約830kg/m、少なくとも約840kg/m、少なくとも約850kg/m、少なくとも約860kg/m、少なくとも約870kg/m、少なくとも約880kg/m、少なくとも約890kg/mまたは少なくとも約900kg/mの(標準試験法ISO 3675またはISO 12185による)15℃における密度;最大で約45℃、例えば、最大で約40℃、最大で約35℃、最大で約30℃、最大で約25℃、最大で約20℃、最大で約15℃、最大で約10℃、最大で約6℃、最大で約5℃または最大で約0℃の(標準試験法ISO 3016による)流動点;少なくとも約−50℃、例えば、少なくとも約−35℃、少なくとも約−30℃、少なくとも約25℃、少なくとも約−20℃、少なくとも約−15℃、少なくとも約−10℃、少なくとも約−5℃、少なくとも約0℃、少なくとも約5℃、少なくとも約7℃、少なくとも約10℃、少なくとも約15℃、少なくとも約18℃、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃または少なくとも約40℃の(標準試験法ISO 3016による)流動点;約880以下、例えば、約865以下、約850以下、約840以下、約830以下、約820以下、約810以下または約800以下の計算された炭素芳香族性指数(本明細書中、方程式F.1を含む標準試験法ISO 8217 Annex Fに従って決定された「CCAI」);および約780以上、例えば、約800以上、約810以上、約820以上、約830以上、約840以上、約850以上、約860以上、約870以上または約880以上の(方程式F.1を含む標準試験法ISO 8217 Annex Fによる)計算された炭素芳香族性指数。明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、50〜100cStの50℃における動粘度または−10℃〜40℃の流動点が含まれる。
【0022】
さらに追加的にまたは代わりとして、例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料は、以下の特徴の少なくとも1つを示し得る:少なくとも約60℃の(標準試験法ISO 2719による)引火点;最大で約2.0mg/kgの(標準試験法IP 570による)硫化水素含有量;1グラムあたり最大で約0.5mg KOHの(標準試験法ASTMD−664による)酸価;最大で約0.1重量%の(標準試験法ISO 10307−1による)沈殿物含有量;最大で約0.10質量%の(標準試験法ISO 12205と同一条件下で老化させ、続いて標準試験法ISO10307−1によってろ過することによって測定された)酸化安定性;最大で約0.3体積%の(標準試験法ISO 3733による)水含有量;および最大で約0.01重量%の(標準試験法ISO 6245による)灰含有量。
【0023】
減圧残渣製品
本発明によるおよび/または本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料組成物の1つの重要な成分は、有効な水素処理の条件のもと(触媒供給水素処理装置反応器中)、水素処理触媒の存在下で水素含有ガスとの接触によって(キャットフィード(cat feed))水素処理された残渣供給流(例えば、減圧残渣)を表す、実質的に未分解の水素処理された減圧残渣製品である。この実質的に未分解の水素処理された減圧残渣製品は、一般に、(FCCユニットなどの)精製分解ユニットに送る前のキャットフィード水素処理装置(CFHT)からの流出物である。
【0024】
本発明において、例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料組成物は、少なくとも約50体積%、例えば、少なくとも約50体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約70体積%、少なくとも約80体積%、少なくとも約85体積%、少なくとも約86体積%、少なくとも約87体積%、少なくとも約88体積%、少なくとも約89体積%、少なくとも約90体積%、少なくとも約91体積%、少なくとも約92体積%、少なくとも約93体積%、少なくとも約94体積%、少なくとも約95体積%、少なくとも約96体積%、少なくとも約97体積%、少なくとも約98体積%、少なくとも約99体積%、少なくとも約99.9体積%または少なくとも約99.99体積%の、このような未分解の水素処理された減圧残渣製品から構成され得る。追加的にまたは代わりとして、例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料組成物は、100体積%以下、例えば、最大で約99.99体積%、最大で約99.9体積%、最大で約99体積%、最大で約98体積%、最大で約97体積%、最大で約95体積%、最大で約90体積%、最大で約85体積%、最大で約80体積%、最大で約70体積%、最大で約60体積%、最大で約50体積%または最大で約40体積%の、このような未分解の水素処理された減圧残渣製品から構成され得る。明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、50〜99.99体積%、60〜85体積%または70〜80体積%が含まれる。
【0025】
水素処理の前に、減圧残渣流は、一般に、水素処理後よりも有意に高い硫黄含有量を有する可能性がある。例えば、水素処理の前の減圧残渣供給流は、少なくとも約2000wppm、例えば、少なくとも約3000wppm、少なくとも約5000wppm、少なくとも約7500wppm、少なくとも約1重量%、少なくとも約1.5重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約2.5重量%または少なくとも約3重量%の硫黄含有量を有する可能性がある。
【0026】
水素処理後および(精製)分解の工程(又はステップ)を受けることなく、未分解の水素処理減圧残渣製品は、以下の特徴の少なくとも1つを示し得る:
・最大で約5000wppm、例えば、最大で約4900wppm、例えば、最大で約4800wppm、最大で約4700wppm、最大で約4600wppm、最大で約4500wppm、最大で約4400wppm、最大で約4300wppm、最大で約4200wppm、最大で約4100wppm、最大で約4000wppm、最大で約3750wppm、最大で約3500wppm、最大で約3250wppm、最大で約3000wppm、最大で約2750wppm、最大で約2500wppm、最大で約2250wppm、最大で約2000wppm、最大で約1750wppm、最大で約1500wppm、最大で約1250wppm、最大で約1000wppm、最大で約900wppm、最大で約800wppm、最大で約750wppm、最大で約700wppm、最大で約650wppm、最大で約600wppm、最大で約550wppm、最大で約500wppm、最大で約450wppm、最大で約400wppm、最大で約350wppm、最大で約300wppm、最大で約250wppm、最大で約200wppm、最大で約150wppm、最大で約100wppm、最大で約75wppm、最大で約50wppm、最大で約30wppm、最大で約20wppm、最大で約15wppm、最大で約10wppm、最大で約8wppmまたは最大で約5wppmの硫黄含有量;
・少なくとも約5wppm、例えば、少なくとも約10wppm、少なくとも約15wppm、少なくとも約20wppm、少なくとも約30wppm、少なくとも約50wppm、少なくとも約75wppm、少なくとも約100wppm、少なくとも約150wppm、少なくとも約200wppm、少なくとも約250wppm、少なくとも約300wppm、少なくとも約350wppm、少なくとも約400wppm、少なくとも約450wppm、少なくとも約500wppm、少なくとも約550wppm、少なくとも約600wppm、少なくとも約650wppm、少なくとも約700wppm、少なくとも約750wppm、少なくとも約800wppm、少なくとも約850wppm、少なくとも約900wppm、少なくとも約950wppm、少なくとも約1000wppm、少なくとも約1250wppm、少なくとも約1500wppm、少なくとも約1750wppm、少なくとも約2000wppm、少なくとも約2250wppm、少なくとも約2500wppm、少なくとも約2750wppm、少なくとも約3000wppm、少なくとも約3250wppm、少なくとも約3500wppm、少なくとも約3750wppm、少なくとも約4000wppm、少なくとも約4100wppm、少なくとも約4200wppm、少なくとも約4300wppm、少なくとも約4400wppm、少なくとも約4500wppm、少なくとも約4600wppm、少なくとも約4700wppm、少なくとも約4800wppmまたは少なくとも約4900wppmの硫黄含有量;明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、500〜1500wppm、650〜1000wppmまたは800〜900wppmが含まれる。
・最大で約7500mg/kg、例えば、約7000mg/kg未満、約6500mg/kg未満、約6000mg/kg未満、約5500mg/kg未満、約5000mg/kg未満、約4500mg/kg未満、約4000mg/kg未満、約3000mg/kg未満、約2500mg/kg未満、約2000mg/kgまたは約1500mg/kgの窒素含有量;
・少なくとも約1000mg/kg、例えば、少なくとも約1500mg/kg、少なくとも約2000mg/kg、少なくとも約2500mg/kg、少なくとも約3000mg/kg、少なくとも約3500mg/kg、少なくとも約4000mg/kg、少なくとも約4500mg/kg、少なくとも約5000mg/kg、少なくとも約5500mg/kgまたは少なくとも約6000mg/kgの窒素含有量;明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、2500〜7000mg/kg、3000〜5000mg/kgまたは4000〜4500mg/kgが含まれる。
・最大で約10mg/kg、例えば、最大で約9mg/kg、最大で約8mg/kg、最大で約7mg/kg、最大で約6mg/kg、最大で約5mg/kgまたは最大で約4mg/kgの、組み合わせた金属(Al、Ca、Na、Ni、VおよびZn)の含有量;
・少なくとも約1mg/kg、例えば、少なくとも約2mg/kg、少なくとも約3mg/kg、少なくとも約4mg/kg、少なくとも約5mg/kgまたは少なくとも約6mg/kgの組み合わせた金属(Al、Ca、Na、Ni、VおよびZn)の含有量;明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、約1〜6mg/kg、約2〜5mg/kgまたは約3〜4mg/kgが含まれる。
・少なくとも約30cSt、例えば、少なくとも約40cSt、少なくとも約50cSt、少なくとも約100cSt、少なくとも約150cSt、少なくとも約200cSt、少なくとも約250cSt、少なくとも約300cSt、少なくとも約350cSt、少なくとも約380cStまたは少なくとも約400cStの(標準試験法ISO 3104による)50℃における動粘度;
・最大で約400cSt、例えば、最大で約380cSt、最大で約350cSt、最大で約300cSt、最大で約250cSt、最大で約200cSt、最大で約150cSt、最大で約100cSt、最大で約50cSt、最大で約45cSt、最大で約40cSt、最大で約35cSt、最大で約30cSt、最大で約25cSt、最大で約20cSt、最大で約15cStまたは最大で約12cStの(標準試験法ISO 3104による)50℃における動粘度;明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、50〜250cSt、100〜350cStまたは250〜400cStが含まれる。
・最大で約1.000g/cm、例えば、最大で約0.950g/cm、最大で約0.940g/cm、最大で約0.935g/cm、最大で約0.930g/cm、最大で約0.925g/cm、最大で約0.920g/cm、最大で約0.915g/cm、最大で約0.910g/cm、最大で約0.905g/cm、最大で約0.900g/cm、最大で約0.895g/cm、最大で約0.890g/cm、最大で約0.885g/cmまたは最大で約0.880g/cmの(標準試験法ISO 3675またはISO 12185による)15℃における密度;
・少なくとも約0.870g/cm、少なくとも約0.875g/cm、少なくとも約0.880g/cm、少なくとも約0.885g/cm、少なくとも約0.890g/cm、少なくとも約0.895g/cm、少なくとも約0.900g/cm、少なくとも約0.905g/cm、少なくとも約0.910g/cm、少なくとも約0.915g/cm、少なくとも約0.920g/cm、少なくとも約0.925g/cm、少なくとも約0.930g/cmまたは少なくとも約0.935g/cmの(標準試験法ISO 3675またはISO 12185による)15℃における密度;明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、0.870〜0.925g/cm、0.890〜0.930g/cmまたは0.910〜1.000g/cmが含まれる。
・最大で約45℃、例えば、最大で約40℃、最大で約35℃、最大で約30℃、最大で約25℃、最大で約20℃、最大で約15℃、最大で約10℃、最大で約6℃、最大で約5℃または最大で約0℃の(標準試験法ISO 3016による)流動点;
・少なくとも−50℃、例えば、少なくとも−35℃、少なくとも−30℃、少なくとも−25℃、少なくとも−20℃、少なくとも15℃、少なくとも−10℃、少なくとも−5℃、少なくとも約0℃、少なくとも約5℃、少なくとも約7℃、少なくとも約10℃、少なくとも約15℃、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃または少なくとも約40℃の(標準試験法ISO 3016による)流動点;明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、−15〜15℃、10〜30℃または20〜40℃が含まれる。
・約880以下、例えば、約865以下、約850以下、約840以下、約830以下、約820以下、約810以下または約800以下の(方程式F.1を含む標準試験法ISO 8217 Annex Fによる)計算された炭素芳香族性指数;および
・約780以上、例えば、約800以上、約810以上、約820以上、約830以上、約840以上、約850以上、約860以上、約870以上または約880以上の(方程式F.1を含む標準試験法ISO 8217 Annex Fによる)計算された炭素芳香族性指数;明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、780〜880、800〜865または810〜840が含まれる。
【0027】
本明細書で使用される場合、組成物の「T[数]」沸点は、少なくとも[数]重量%のその組成物を沸騰させるために必要とされる温度に相当する。例えば、少なくとも約25重量%の供給物を沸騰させるために必要とされる温度は、本明細書中、「T25」沸点と示される。本明細書で使用される全ての沸騰温度は、1気圧の圧力における温度を示す。いずれかの供給原料、いずれかの燃料成分、および/または本発明に従って製造されたいずれかの燃料組成物の沸点または範囲を決定する基本的試験法は、標準試験法IP 480に従って、および/またはASTM D86−09e1によるバッチ蒸留によって実行可能である。
【0028】
水素処理後および(精製)分解の工程(又はステップ)を受けることなく、未分解の水素処理減圧残渣製品は、任意選択的に以下の沸点特徴の少なくとも1つを示し得る:
・少なくとも約250℃、例えば、少なくとも約255℃、少なくとも約260℃、少なくとも約265℃、少なくとも約270℃、少なくとも約275℃、少なくとも約280℃、少なくとも約285℃、少なくとも約290℃、少なくとも約295℃、少なくとも約300℃、少なくとも約305℃または少なくとも約310℃の初期沸点(IBP);
・最大で約315℃、例えば、最大で約310℃、最大で約305℃、最大で約300℃、最大で約295℃、最大で約290℃、最大で約285℃、最大で約280℃、最大で約275℃、最大で約270℃または最大で約265℃のIBP;明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、280〜310℃、290〜300℃または300〜310℃が含まれる。
・少なくとも約300℃、少なくとも約305℃、少なくとも約310℃、少なくとも約315℃、少なくとも約320℃、少なくとも約325℃、少なくとも約330℃、少なくとも約335℃、少なくとも約340℃、少なくとも約345℃、少なくとも約350℃、少なくとも約355℃、少なくとも約360℃、少なくとも約365℃、少なくとも約370℃、少なくとも約375℃または少なくとも約380℃のT5沸点;
・最大で約370℃、例えば、最大で約365℃、最大で約360℃、最大で約355℃、最大で約350℃、最大で約345℃、最大で約340℃、最大で約335℃、最大で約330℃、最大で約325℃、最大で約320℃、最大で約315℃、最大で約310℃、最大で約305℃または最大で約300℃のT5沸点;明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、300〜370℃、350〜360℃または345〜365℃が含まれる。
・少なくとも約450℃、例えば、少なくとも約455℃、少なくとも約460℃、少なくとも約465℃、少なくとも約470℃、少なくとも約475℃、少なくとも約480℃、少なくとも約485℃、少なくとも約490℃、少なくとも約495℃、少なくとも約500℃、少なくとも約505℃、少なくとも約510℃、少なくとも約515℃または少なくとも約520℃のT50沸点;
・最大で約535℃、例えば、最大で約530℃、最大で約525℃、最大で約520℃、最大で約515℃、最大で約510℃、最大で約505℃、最大で約500℃、最大で約495℃、最大で約490℃、最大で約485℃、最大で約480℃、最大で約475℃、最大で約470℃または最大で約465℃のT50沸点;明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、450〜520℃、480〜500℃または470〜485℃が含まれる。
・少なくとも約670℃、例えば、少なくとも約675℃、少なくとも約680℃、少なくとも約685℃、少なくとも約690℃、少なくとも約695℃、少なくとも約700℃、少なくとも約705℃、少なくとも約710℃、少なくとも約715℃、少なくとも約720℃、少なくとも約735℃、少なくとも約740℃、少なくとも約745℃、少なくとも約750℃、少なくとも約755℃または少なくとも約760℃のT95沸点;
・最大で約755℃、例えば、最大で約750℃、最大で約745℃、最大で約740℃、最大で約735℃、最大で約730℃、最大で約725℃、最大で約720℃、最大で約715℃、最大で約710℃、最大で約705℃、最大で約700℃、最大で約695℃、最大で約690℃、最大で約685℃、最大で約680℃または最大で約675℃のT95沸点;明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、690〜760℃、630〜680℃または750〜760℃が含まれる。
・少なくとも約760℃、例えば、少なくとも約765℃、少なくとも約770℃、少なくとも約775℃、少なくとも約780℃、少なくとも約785℃、少なくとも約790℃、少なくとも約795℃、少なくとも約800℃、少なくとも約805℃、少なくとも約810℃、少なくとも約815℃、少なくとも約820℃、少なくとも約825℃、少なくとも約830℃、少なくとも約835℃または少なくとも約840℃の最終沸点(FBP);および
・最大で約845℃、例えば、最大で約840℃、最大で約835℃、最大で約830℃、最大で約825℃、最大で約820℃、最大で約815℃、最大で約810℃、最大で約805℃、最大で約800℃、最大で約795℃、最大で約790℃、最大で約785℃、最大で約780℃、最大で約775℃、最大で約770℃または最大で約765℃のFBP;明白に開示された範囲には、上記の列挙された上限および下限の組合せ、例えば、860〜740℃、790〜730℃または800〜810℃が含まれる。
【0029】
追加的にまたは代わりとして、未分解の水素処理減圧残渣製品は、以下の特徴の少なくとも1つを示し得る:少なくとも約60℃の(標準試験法ISO 2719による)引火点;最大で約2.0mg/kgの(標準試験法IP 570による)硫化水素含有量;1グラムあたり最大で約0.5mg KOHの(標準試験法ASTMD−664による)酸価;最大で約0.1重量%の(標準試験法ISO 10307−1による)沈殿物含有量;最大で約0.10質量%の(標準試験法ISO 12205と同一条件下で老化させ、続いて標準試験法ISO10307−1によってろ過することによって測定された)酸化安定性;最大で約0.3体積%の(標準試験法ISO 3733による)水含有量;および最大で約0.01重量%の(標準試験法ISO 6245による)灰含有量。
【0030】
組成物の他の成分
例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料組成物中に他の成分が存在する場合、未分解の水素処理された減圧残渣製品は別として、個々にまたは全体で70体積%まで、例えば、65体積%まで、60体積%まで、55体積%まで、50体積%まで、45体積%まで、40体積%まで、35体積%まで、30体積%まで、25体積%まで、20体積%まで、15体積%まで、10体積%まで、7.5体積%まで、5体積%まで、3体積%まで、2体積%まで、1体積%まで、0.8体積%まで、0.5体積%まで、0.3体積%まで、0.2体積%まで、1000vppmまで、750vppmまで、500vppmまで、300vppmまで、または100vppmまでの他の成分が存在し得る。
【0031】
追加的にまたは代わりとして、例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料中に他の成分が存在する場合、未分解の水素処理された減圧残渣製品は別として、個々にまたは全体で少なくとも約100vppm、例えば、少なくとも約300vppm、少なくとも約500vppm、少なくとも約750vppm、少なくとも約1000vppm、少なくとも約0.2体積%、少なくとも約0.3体積%、少なくとも約0.5体積%、少なくとも約0.8体積%、少なくとも約1体積%、少なくとも約2体積%、少なくとも約3体積%、少なくとも約5体積%、少なくとも約7.5体積%、少なくとも約10体積%、少なくとも約15体積%、少なくとも約20体積%、少なくとも約25体積%、少なくとも約30体積%、少なくとも約35体積%、少なくとも約40体積%、少なくとも約45体積%、少なくとも約50体積%、少なくとも約55体積%、少なくとも約60体積%または少なくとも約65体積%の他の成分が存在し得る。そのような他の成分の例としては、限定されないが、粘度変性剤、流動点降下剤、潤滑性変性剤、酸化防止剤およびそれらの組合せを含み得る。そのような他の成分の他の例としては、限定されないが、直留常圧(分留)蒸留物流、直留減圧(分留)蒸留物流、水素分解蒸留物流など、およびそれらの組合せなどの蒸留物沸騰範囲成分を含み得る。そのような蒸留物沸騰範囲成分は、上記低硫黄マリンバンカー燃料中で、粘度変性剤として、流動点降下剤として、潤滑性変性剤として、それらのいくつかの組合せとして、またはいくつかの他の機能的性能において作用し得る。
【0032】
流動点降下剤の例としては、限定されないが、エチレンおよび1種以上のコモノマー(例えば、Linden,N.J.のInfineumから商業的に入手可能であるもの)のオリゴマー/コポリマーであって、任意選択的に、重合後に少なくとも部分的に官能化されるように(例えば、それぞれのコモノマーに本来存在しない酸素含有および/または窒素含有官能基を示すように)変性されていてもオリゴマー/コポリマーを含み得る。未分解の水素処理された減圧残渣製品、および/または例えば本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料組成物の物理的−化学的性質次第であるが、いくつかの実施形態において、オリゴマー/コポリマーは、約500g/モル以上、例えば、約750g/モル以上、約1000g/モル以上、約1500g/モル以上、約2000g/モル以上、約2500g/モル以上、約3000g/モル以上、約4000g/モル以上、約5000g/モル以上、約7500g/モル以上または約10000g/モル以上の数平均分子量(Mn)を有し得る。追加的にまたは代わりとして、そのような実施形態において、オリゴマー/コポリマーは、約25000g/モル以下、例えば、約20000g/モル以下、約15000g/モル以下、約10000g/モル以下、約7500g/モル以下、約5000g/モル以下、約4000g/モル以下、約3000g/モル以下、約2500g/モル以下、約2000g/モル以下、約1500g/モル以下または約1000g/モル以下のMnを有し得る。流動点降下剤の量は、例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料組成物に添加される必要がある場合、流動点を上記の一般的な範囲内などの所望のレベルまで減少させるために有効であるいずれの量も含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、未分解の水素処理された減圧残渣製品に加えて、例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された低硫黄マリンバンカー燃料は、15体積%まで(例えば、10体積%まで、7.5体積%または5体積%まで;追加的にまたは代わりとして、少なくとも約1体積%、例えば、少なくとも約3体積%、少なくとも約5体積%、少なくとも約7.5体積%または少なくとも約10体積%)のスラリー油、分留(未処理)原油、またはそれらの組合せから構成され得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、低硫黄マリンバンカー燃料組成物の約50体積%までは、ディーゼル添加剤であり得る。これらのディーゼル添加剤は、分解または未分解であり得るか、または分解および未分解ディーゼル燃料のブレンドであり得る。特定の実施形態において、ディーゼル添加剤は、第1のディーゼル添加剤および第2のディーゼル添加剤を含み得、これらは本明細書中、「第1のディーゼル沸騰炭化水素流」および「第2のディーゼル沸騰炭化水素流」としても記載される。ディーゼル燃料は、典型的に、約180℃〜約360℃の範囲で沸騰する。
【0035】
第1のディーゼル添加剤は、30wppm以下の硫黄、例えば、約25wppm以下、約20wppm以下、約15wppm以下、約10wppm以下または約5wppm以下の硫黄を有する、低硫黄の水素処理されたディーゼル添加剤であり得る。いくつかの実施形態において、第1のディーゼル添加剤は、全燃料組成物の約40体積%まで、例えば、例えば、約35体積%まで、約30体積%まで、約25体積%まで、約20体積%まで、約15体積%まで、約10体積%まで、または約5体積%までを提供し得る。
【0036】
第2のディーゼル添加剤は、20wppm以下の硫黄、例えば、約15wppm以下、約10wppm以下、約5wppm以下、約3wppm以下または約2wppm以下の硫黄を有する、低硫黄の水素処理されたディーゼル添加剤であり得る。いくつかの実施形態において、第2のディーゼル添加剤は、全燃料組成物の約50体積%まで、例えば、例えば、約45体積%まで、約40体積%まで、約35体積%まで、約30体積%まで、約25体積%まで、約20体積%まで、約15体積%まで、約10体積%まで、または約5体積%までを提供し得る。
【0037】
減圧残渣供給流の水素処理
未分解の水素処理された減圧残渣製品を得るための減圧残渣供給流の(キャットフィード)水素処理は、単一段階においてまたは複数の段階において、いずれの適切な反応器または反応器の組合せにおいても達成可能である。このような水素処理工程(又は水素処理ステップ)は、典型的に、有効な水素処理条件下での水素処理触媒への供給流の暴露を含む。水素処理触媒は、いずれかの適切な水素処理触媒、例えば、少なくとも1種の第VIII族金属(例えば、Ni、Coおよびそれらの組合せから選択される)および少なくとも1種の第VIB族金属(例えば、Mo、Wおよびそれらの組合せから選択される)を含み得、かつ任意選択的に、適切な担体および/または充てん剤材料(例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアまたはそれらの組合せを含む)を含む触媒を含み得る。水素処理触媒の第VIII族金属は、約0.1重量%〜約20重量%、例えば、約1重量%〜約12重量%の範囲の量で存在し得る。第VIB族金属は、約1重量%〜約50重量%、例えば、約2重量%〜約20重量%または約5重量%〜約30重量%の範囲の量で存在し得る。本発明の態様による水素処理触媒は、バルク触媒または担持触媒であり得る。金属の全重量パーセントは、担体上の酸化物の形態で与えられる。「担体上」とは、パーセントが担体の重量に基づくことを意味する。例えば、担体の重量が100グラムである場合、20重量%の第VIII族金属とは、20グラムの第VIII族金属の酸化物が担体上にあることを意味するであろう。同一反応容器中で2種以上の水素処理触媒が使用されることは、本発明の範囲内である。
【0038】
担持触媒の製造技術は、当該技術分野において周知である。バルク金属触媒粒子の製造技術は既知であり、かつ例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,162,350号明細書において以前に記載されている。バルク金属触媒粒子は、全ての金属触媒粒子が溶液中にある方法を介して、または少なくとも1種の前駆体が少なくとも部分的に固体状態であるが、任意選択的に、好ましくは少なくとも別の1種の前駆体が溶液状態でのみ提供される方法を介して製造可能である。少なくとも部分的に固体状態で金属前駆体を提供することは、例えば、懸濁粒子の形態など、溶液中に固体および/または沈殿金属も含む金属前駆体の溶液を提供することによって達成され得る。例証として、適切な水素処理触媒のいくつかの例は、特に、米国特許第6,156,695号明細書、同第6,162,350号明細書、同第6,299,760号明細書、同第6,582,590号明細書、同第6,712,955号明細書、同第6,783,663号明細書、同第6,863,803号明細書、同第6,929,738号明細書、同第7,229,548号明細書、同第7,288,182号明細書、同第7,410,924号明細書および同第7,544,632号明細書、米国特許出願公開第2005/0277545号明細書、同第2006/0060502号明細書、同第2007/0084754号明細書および同第2008/0132407号明細書、ならびに国際公開第04/007646号パンフレット、同第2007/084437号パンフレット、同第2007/084438号パンフレット、同第2007/084439号パンフレットおよび同第2007/084471号パンフレットの1つ以上に記載されている。
【0039】
特定の実施形態において、本発明の実施において使用される水素処理触媒は、担持触媒である。いずれの適切な耐火性触媒担体材料、例えば、金属酸化物担体材料も触媒用の担体として使用され得る。適切な担体材料の非限定的な例としては、以下のものを含み得る:アルミナ、シリカ、チタニア、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、熱的に(少なくとも部分的に)分解した有機媒体、ジルコニア、マグネシア、ケイソウ土、酸化ランタニド(酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化イットリウムおよび酸化プラセオジムを含む)、クロミア、二酸化トリウム、ウラニア、ニオビア、タンタラ、酸化スズ、酸化亜鉛、相当するホスフェートなどおよびそれらの組合せ。特定の実施形態において、担体は、アルミナ、シリカおよびシリカ−アルミナを含み得る。担体材料は、担体材料の調製の間に導入される可能性のある、Fe、スルフェートおよび種々の金属酸化物などの汚染物質を少量含有し得ることは理解されるべきである。これらの汚染物質は、典型的に、担体を調製するために使用される原材料に存在し、好ましくは担体の全重量に基づいて約1重量%未満の量で存在し得る。担体材料がそのような汚染物質を実質的に含まないことが好ましい。別の実施形態において、約0重量%〜約5重量%、例えば、約0.5量%〜約4重量%または約1量%〜約3重量%の添加剤が担体中に存在し得る。添加剤は、リンと、元素周期表の第IA族(アルカリ金属)からの金属または金属酸化物とからなる群から選択され得る。
【0040】
本発明による水素処理工程(又は水素処理ステップ)における触媒は、任意選択的に、例えば、他の遷移金属(例えば、ニオブなどの第V族金属)、希土類金属、有機配位子(例えば、添加されるか、または酸化および/もしくは硫化の工程(又はステップ)から残った前駆体として)、リン化合物、ホウ素化合物、フッ素含有化合物、ケイ素含有化合物、促進因子、結合剤、充てん剤など、またはそれらの組合せなどの追加的な成分を含有していてもよい。本明細書で参照される群は、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary,13th Editionの周期表に見られるCAS Versionの群を参照する。
【0041】
いくつかの実施形態において、有効な水素処理条件は、以下の1つ以上を含み得る:約550°F(約288℃)〜約800°F(約427℃)の重量平均床温度(WABT);約300psig(約2.1MPag)〜約3000psig(約20.7MPag)、例えば、約700psig(約4.8MPag)〜約2200psig(約15.3MPag)、例えば、約150bar(約15.1MPag)の全圧力;約0.1時間−1〜約20時間−1、例えば、約0.2時間−1〜約10時間−1のLHSV;および約500scf/bbl(約85Nm/m)〜約10000scf/bbl(約1700Nm/m)、例えば、約750scf/bbl(約130Nm/m)〜約7000scf/bbl(約1200Nm3/m3)または約1000scf/bbl(約170Nm/m)〜約5000scf/bbl(約850Nm/m)の水素処理ガス速度。
【0042】
水素含有(処理)ガスは、本明細書に記載される場合、任意選択的に、一般に反応または製品のいずれかに反対に干渉しないか、または悪影響を及ぼさない1種以上の他のガス(例えば、窒素、軽質炭化水素、例えば、メタンなど、およびそれらの組合せ)に加えて、意図された反応目的のために少なくとも十分な量の、純粋な水素または水素を含有するガスのいずれかであり得る。HSおよびNHなどの不純物は、典型的に望ましくなく、かつ典型的に、処理ガスが反応段階に導入される前に処理ガスから除去されるか、または処理ガス中で望ましい低濃度まで低下されるであろう。反応段階に導入される処理ガス流は、好ましくは、少なくとも約50体積%、例えば、少なくとも約75体積%、少なくとも約80体積%、少なくとも約85体積%または少なくとも約90体積%の水素を含有し得る。
【0043】
本発明による水素処理ステップに提供される供給原料は、いくつかの実施形態において、減圧残渣供給部分およびバイオフィード(biofeed)(脂質材料)部分の両方を含み得る。一実施形態において、脂質材料および減圧残渣供給物を、水素処理ステップの前に一緒に混合し得る。別の実施形態において、脂質材料および減圧残渣供給物を1つ以上の適切な反応器中に個々の流れとして提供することができる。
【0044】
「脂質材料」という用語は、本発明に従って使用される場合、生体物質から構成される組成物である。一般に、これらの生体物質は、植物脂/油、動物脂/油、魚油、熱分解油および藻脂/油、ならびにそのような材料の成分を含む。より特に、脂質材料は、1種以上の脂質化合物を含む。脂質化合物は、典型的に、水に不溶性であるが、非極性(または脂肪)溶媒に可溶性である生物学的化合物である。そのような溶媒の非限定的な例には、アルコール、エーテル、クロロホルム、アルキル酢酸エステル、ベンゼンおよびそれらの組合せが含まれる。
【0045】
脂質の主要な種類としては、限定されないが、脂肪酸、グリセロール誘導脂質(脂、油およびリン脂質を含む)、スフィンゴシン誘導脂質(セラミド、セレブロシド、ガングリオシドおよびスフィンゴミエリンを含む)、ステロイドおよびそれらの誘導体、テルペンおよびそれらの誘導体、脂溶性ビタミン、特定の芳香族化合物ならびに長鎖アルコールおよびワックスが含まれる。
【0046】
生体において、脂質は、一般に、細胞膜の基盤として、および燃料貯蔵の形態として有用である。脂質は、リポタンパク質およびリポ多糖の形態などで、タンパク質または炭水化物と結合して見られ得る。
【0047】
本発明に従って使用され得る植物油の例としては、限定されないが、菜種(キャノーラ)油、大豆油、やし油、ひまわり油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、亜麻仁油、トール油、コーン油、ひまし油、ジャトロファ油、ホホバ油、オリーブ油、フラックスシード油、カメリナ油、バニバナ油、ババス油、牛脂油および米糠油が含まれる。
【0048】
植物油は、本明細書に記載される場合、加工された植物油材料も含み得る。加工された植物油材料の非限定的な例としては、脂肪酸および脂肪酸アルキルエステルが含まれる。アルキルエステルは、典型的に、C〜Cアルキルエステルを含む。メチル、エチル、プロピルエステルの1種以上が好ましい。
【0049】
本発明に従って使用可能な動物脂の例としては、限定されないが、牛脂肪(牛脂)、豚脂肪(ラード)、七面鳥脂肪、魚脂/油および鶏脂が含まれる。動物脂は、レストランおよび精肉工場を含む、いずれかの適切な供給源から入手され得る。
【0050】
動物脂は、本明細書に参照される場合、加工された動物脂材料も含む。加工された動物脂肪材料の非限定的な例としては、脂肪酸および脂肪酸アルキルエステルが含まれる。アルキルエステルは、典型的に、C〜Cアルキルエステルを含む。メチル、エチル、プロピルエステルの1種以上が好ましい。
【0051】
藻油または脂質は、典型的に、膜成分、貯蔵生成物および代謝産物の形態で藻類に含まれる。特定の藻類の種、特に、ケイ藻およびラン藻などの微細藻類が相対的に高レベルの脂質を含む。藻油の藻類供給源は、様々な量、例えば、バイオマスの全重量に基づき、2重量%〜40重量%の脂質を含むことができる。
【0052】
藻油の藻類供給源としては、限定されないが、単細胞藻および多細胞藻が含まれる。そのような藻類の例には、紅藻(rhodophyte)、緑藻(chlorophyte)、ヘテロコント藻(heterokontophyte)、トリボ藻(tribophyte)、灰色藻(glaucophyte)、クロララクニオ藻(chlorarachniophyte)、ユーグレナ藻(euglenoid)、ハプト藻(haptophyte)、クリプトモナド(cryptomonad)、ジノフラゲラム(dinoflagellum)、植物プランクトン(phytoplankton)など、およびそれらの組合せが含まれる。一実施形態において、藻類は、緑藻綱(Chlorophyceae)および/またはハプトフィタ(Haptophyta)のものであり得る。具体的な種としては、限定されないが、ネオクロリス・オレオアバンダンス(Neochloris oleoabundans)、スセネデスムス・ジモルファス(Scenedesmus dimorphus)、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)、海洋性珪藻(Phaeodactylum tricornutum)、プレウロクリシス・カルテラエ(Pleurochrysis carterae)、プリムネシウム・パルバム(Prymnesium parvum)、テトラセルミス・チュイ(Tetraselmis chui)およびクラミドモナス・レインハルトチイ(Chlamydomonas reinhardtii)を含み得る。
【0053】
供給原料の脂質材料部分は、存在する場合、トリグリセリド、脂肪酸アルキルエステル、または好ましくはそれらの組合せから構成され得る。脂質材料が存在する一実施形態において、供給原料は、燃料に加工するために提供された供給原料の全重量に基づき、少なくとも約0.05重量%、好ましくは少なくとも約0.5重量%、例えば、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%または少なくとも約4重量%の脂質材料を含み得る。追加的にまたは代わりとして、脂質材料が存在する場合、供給原料は、供給原料の全重量に基づき、約40重量%以下、好ましくは約30重量%以下、例えば、約20重量%以下または約10重量%以下の脂質材料を含み得る。
【0054】
脂質材料が存在する実施形態において、供給原料は、供給原料の全重量に基づき、約99.9重量%以下、例えば、約99.8重量%以下、約99.7重量%以下、約99.5重量%以下、約99重量%以下、約98重量%以下、約97重量%以下、約95重量%以下、約90重量%以下、約85重量%以下または約80重量%以下の鉱油を含み得る。追加的にまたは代わりとして、脂質材料が存在する実施形態において、供給原料は、供給原料の全重量に基づき、少なくとも約50重量%、例えば、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%または少なくとも約80重量%の鉱油を含み得る。
【0055】
脂質材料が存在するいくつかの実施形態において、脂質材料は、限定されないが、脂肪酸メチルエステル(FAME)、脂肪酸エチルエステル(FAEE)および/または脂肪酸プロピルエステルなどの脂肪酸アルキルエステルを含み得る。
【0056】
水素処理された減圧残渣のブレンド(blending)
燃料成分をブレンドするための手段およびプロセスは、当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第3,522,169号明細書、同第4,601,303号明細書、同第4,677,567号明細書を参照されたい。例えば、本明細書に開示される方法に従って製造された減圧残渣を水素処理したら、それを、必要に応じて、(例えば、)粘度変性剤、流動点降下剤、潤滑性変性剤、酸化防止剤およびそれらの組合せを含む様々な添加剤のいずれかとブレンドし得る。所望の船舶用燃料規格の組合せを有するマリンバンカー燃料組成物を製造するために、必要に応じて、未分解の水素処理された減圧残渣を第1および第2の低硫黄沸騰範囲炭化水素流とブレンドし得る。
【0057】
さらなる実施形態
追加的にまたは代わりとして、本発明は、以下の実施形態の1つ以上を含み得る。
【0058】
実施形態1
減圧残渣(vacuum resid)を実質的に分解することなく、約1500パーツパーミリオン(parts per million)(ppm)以下まで硫黄を減少させるために、水素処理触媒(hydrotreating catalyst)の存在下で、減圧残渣供給流(vacuum resid feed stream)を水素により水素処理(hydrotreating)すること(又はステップ)と;
前記水素処理された減圧残渣と、約10体積%以下の第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流(first diesel boiling range hydrocarbon stream)および約40体積%以下の第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流(second diesel boiling range hydrocarbon stream)とを混合(又はブレンド(blending))すること(又はステップ)と
を含む、低硫黄バンカー燃料組成物(low-sulfur bunker fuel composition)を製造するための方法であって、
前記減圧残渣供給流が、約1000〜約10000ppmの硫黄を有し、前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約20ppm以下の硫黄を有し、前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約10ppm以下の硫黄を有する、方法。
【0059】
実施形態2
前記減圧残渣供給流が、約6000〜約10000ppmの硫黄を有する、実施形態1の方法。
【0060】
実施形態3
前記減圧残渣供給流が、約6000〜約8000ppmの硫黄を有する、実施形態1または実施形態2のいずれかの方法。
【0061】
実施形態4
前記水素処理された減圧残渣の前記硫黄が、約1400ppm以下まで減少される、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0062】
実施形態5
前記水素処理された減圧残渣の前記硫黄が、約1300ppm以下まで減少される、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0063】
実施形態6
前記水素処理された減圧残渣の前記硫黄が、約1200ppm以下まで減少される、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0064】
実施形態7
前記水素処理された減圧残渣の前記硫黄が、約1000ppm以下まで減少される、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0065】
実施形態8
前記水素処理された減圧残渣が、約25体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0066】
実施形態9
前記水素処理された減圧残渣が、約20体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0067】
実施形態10
前記水素処理された減圧残渣が、約15体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0068】
実施形態11
前記水素処理された減圧残渣が、約7.5体積%以下の前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0069】
実施形態12
前記水素処理された減圧残渣が、約5体積%以下の前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0070】
実施形態13
前記減圧残渣供給流が、少なくとも150バールの圧力下で水素処理される、上記実施形態のいずれか1つの方法。
【0071】
実施形態14
最大で約1500ppmの硫黄と50℃において少なくとも約350cStの動粘度(kinematic viscosity)とを有する約50体積%〜約100体積%の未分解の水素処理された減圧残渣(uncracked, hydrotreated vacuum resid)と、
最大で約10体積%までの第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と、
最大で約40体積%までの第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と
を含む、低硫黄バンカー燃料組成物であって、
前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約20ppm以下の硫黄を有し、前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約10ppm以下の硫黄を有し、
(1)50℃における約20cSt〜約100cStの動粘度(kinematic viscosity)、
(2)15℃における約800kg/m〜1000kg/mの密度(density)、および
(3)25℃〜35℃の流動点(pour point)
からなる群から選択される1つ以上の特性を有する、
低硫黄バンカー燃料組成物(low sulfur bunker fuel composition)。
【0072】
実施形態15
50℃において約380cStの動粘度を有する、実施形態14の燃料組成物。
【0073】
実施形態16
6mg/kg以下の全金属含有量(total metal content)を有する、実施形態14または実施形態15のいずれかの燃料組成物。
【0074】
実施形態17
3mg/kg以上の全金属含有量を有する、実施形態14〜16のいずれか1つの燃料組成物。
【0075】
実施形態18
1200ppm未満の硫黄を有する、実施形態14〜17のいずれか1つの燃料組成物。
【0076】
実施形態19
1000ppm未満の硫黄を有する、実施形態14〜18のいずれか1つの燃料組成物。
【0077】
実施形態20
900ppm未満の硫黄を有する、実施形態14〜19のいずれか1つの燃料組成物。
【0078】
実施形態21
850ppm未満の硫黄を有する、実施形態14〜20のいずれか1つの燃料組成物。
【0079】
実施形態22
800ppm未満の硫黄を有する、実施形態14〜21のいずれか1つの燃料組成物。
【0080】
実施形態23
500ppm未満の硫黄を有する、実施形態14〜22のいずれか1つの燃料組成物。
【0081】
実施形態24
少なくとも500ppmの硫黄を有する、実施形態14〜23のいずれか1つの燃料組成物。
【0082】
実施形態25
約25体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、実施形態14〜24のいずれか1つの燃料組成物。
【0083】
実施形態26
約20体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、実施形態14〜25のいずれか1つの燃料組成物。
【0084】
実施形態27
約15体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、実施形態14〜26のいずれか1つの燃料組成物。
【0085】
実施形態28
約10体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、実施形態14〜27のいずれか1つの燃料組成物。
【0086】
実施形態29
約7.5体積%以下の前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、実施形態14〜28のいずれか1つの燃料組成物。
【0087】
実施形態30
約5体積%以下の前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、実施形態14〜29のいずれか1つの燃料組成物。
【0088】
実施形態31
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の60体積%以上を提供する、実施形態14〜30のいずれか1つの燃料組成物。
【0089】
実施形態32
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の65体積%以上を提供する、実施形態14〜31のいずれか1つの燃料組成物。
【0090】
実施形態33
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の70体積%以上を提供する、実施形態14〜32のいずれか1つの燃料組成物。
【0091】
実施形態34
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の80体積%以上を提供する、実施形態14〜33のいずれか1つの燃料組成物。
【0092】
実施形態35
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の90体積%以上を提供する、実施形態14〜34のいずれか1つの燃料組成物。
【0093】
実施形態36
少なくとも600℃のT50と約1500ppm以下の硫黄とを有する、未分解の減圧残渣。
【0094】
実施形態37
約1300ppm以下の硫黄を有する、実施形態36の未分解の減圧残渣。
【0095】
実施形態38
約1200ppm以下の硫黄を有する、実施形態36または実施形態37のいずれかの未分解の減圧残渣。
【0096】
実施形態39
約1000ppm以下の硫黄を有する、実施形態37〜38のいずれか1つの未分解の減圧残渣。
【0097】
実施形態40
約800ppm以下の硫黄を有する、実施形態37〜39のいずれか1つの未分解の減圧残渣。
【0098】
実施形態41
約500ppm以下の硫黄を有する、実施形態37〜40のいずれか1つの未分解の減圧残渣。
【0099】
実施形態42
少なくとも約500ppmの硫黄を有する、実施形態37〜41のいずれか1つの未分解の減圧残渣。
【0100】
実施形態43
6mg/kg以下の全金属含有量を有する、実施形態37〜42のいずれか1つの未分解の減圧残渣。
【0101】
実施形態44
3mg/kg以上の全金属含有量を有する、実施形態37〜43のいずれか1つの未分解の減圧残渣。
【0102】
実施形態45
約6000mg/kg以下の窒素を有する、実施形態37〜44のいずれか1つの未分解の減圧残渣。
【実施例】
【0103】
以下の実施例は、単に説明であり、かつ決して本開示を限定するものではない。
【0104】
実施例1 水素処理およびブレンドプロセス
予言的な実施例1において(図1を参照されたい)、原油から分留され、かつ以下の表1に開示される特性を示す高硫黄(例えば、約0.5〜約0.8重量%)の減圧残渣は、商業的に入手可能なアルミナ担持第VIB族/第VIII族(例えば、NiMo)水素処理触媒が装填された(キャットフィード)水素処理ユニット中に約106m/時間の速度で供給される。
【0105】
水素処理ユニットにおいて、減圧残渣は両方とも水素処理されて、大部分(例えば、硫黄含有量の少なくとも約80重量%、例えば、少なくとも約90重量%または少なくとも約95重量%)が除去される。この処理は、約80.6%水素であるガスの流れを利用する。この処理は、例えば、約101バールの圧力下で、かつ例えば、約378℃において生じる。EITは、約315℃〜約455℃、例えば、約360℃〜395℃であってよい。全圧力は、約90バール〜約150バール、例えば、約120バールであってよい。
【0106】
水素処理ユニットからの生成物は、FCCユニットに供給される前の未分解の水素処理された減圧残渣生成物(詳細は以下の表4)である。水素処理プロセスの終わりに、結果として生じる未分解の減圧残渣は、約0.12重量%〜約0.14重量%の硫黄を含有する。この未分解の水素処理された減圧残渣生成物の少なくとも一部は、FCCユニットから流れを変えられて、第1のディーゼル添加剤供給物(表2)および第2のディーゼル添加剤供給物(表3)の組合せとブレンドされて、約1000wppmの硫黄および約380cStの50℃における動粘度を有するバンカー燃料組成物が得られる。マリンバンカー燃料組成物の少なくとも40体積%および100体積%までが、未分解の水素処理された減圧残渣生成物から構成され得る。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
実施例2 バンカー燃料組成物
実施例1に記載されたプロセスにより、バンカー燃料組成物が得られる。4つの例示的な非限定的な実施例において、減圧残渣は、(例えば)約63:約27:約10(「ベースブレンド」);約50:約40:約10(「低ブレンド」);約60:約40:約0(「中間ブレンド」);および約70:約20:約10(「高ブレンド」)の体積%:体積%:体積%比で第1および第2の水素処理されたディーゼル添加剤と組み合わせることができる。結果として生じるマリンバンカー燃料組成物の個々の特徴は、以下の表5に示される。
【0112】
【表5】
【0113】
実施例3 減圧残渣蒸留特徴
2つの減圧残渣は、本明細書に記載される通りに水素処理された。それぞれの残渣バッチのIP507蒸留プロフィールを表6に示す。
【0114】
【表6】
【0115】
実施例4 窒素含有量を低下させるための水素処理
4日間の別々の日に減圧残渣の4つのバッチを水素処理した。これらの4つのバッチの窒素含有量を水素処理の前後に測定した。適切なデータを以下の表7に示す。
【0116】
【表7】
【0117】
上記の実施例は、厳密に例示的であり、本発明の範囲または理解を限定するものとして解釈されるべきではない。様々な変更形態がなされてもよく、かつ均等物が本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく代用され得ることを当業者は理解するべきである。加えて、特定の状況、材料、物質の組成、処理(又はプロセス)、処理工程(又はプロセスステップ)または工程(又はステップ)を順応させるために、記載された本発明の対象、趣旨および範囲に対する多くの修正形態がなされてもよい。全てのそのような修正形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれるように意図される。本明細書および添付の図面で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上、明らかに他に規定されない限り、複数形の指示対象を含む。本明細書で使用される各技術用語および科学用語は、それが使用されるたびに同一の意味を有する。2つ以上の項目のリストにおける「または」の使用は、項目のいずれの組合せも考えられることを示し、例えば、「AまたはB」は、Aのみ、Bのみ、またはAおよびBの両方が意図されることを示す。本明細書で議論された刊行物は、本出願の出願日より前にそれらの開示に関して単に提供される。本明細書には、記載された発明が、従来の発明によるそのような刊行物に先行する権利を有さないという承認として解釈されるものではない。さらに、提供された刊行物の日付は、独立して確認される必要があり得る実際の公開日と異なり得る。
図1
【手続補正書】
【提出日】2020年2月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも600℃のT50と約1500wppm以下の硫黄とを含む、未分解の水素処理された減圧残渣。
【請求項2】
約1300wppm以下の硫黄を有する、請求項に記載の未分解の水素処理された減圧残渣。
【請求項3】
約1200wppm以下の硫黄を有する、請求項に記載の未分解の水素処理された減圧残渣。
【請求項4】
約1000wppm以下の硫黄を有する、請求項に記載の未分解の水素処理された減圧残渣。
【請求項5】
約800wppm以下の硫黄を有する、請求項に記載の未分解の水素処理された減圧残渣。
【請求項6】
約500wppm以下の硫黄を有する、請求項に記載の未分解の水素処理された減圧残渣。
【請求項7】
少なくとも約500wppmの硫黄を有する、請求項に記載の未分解の水素処理された減圧残渣。
【請求項8】
6mg/kg wppm以下の全金属含有量を有する、請求項に記載の未分解の水素処理された減圧残渣。
【請求項9】
3mg/kg wppm以上の全金属含有量を有する、請求項に記載の未分解の水素処理された減圧残渣。
【請求項10】
約6000mg/kg以下の窒素を有する、請求項に記載の未分解の水素処理された減圧残渣。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0117
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0117】
上記の実施例は、厳密に例示的であり、本発明の範囲または理解を限定するものとして解釈されるべきではない。様々な変更形態がなされてもよく、かつ均等物が本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく代用され得ることを当業者は理解するべきである。加えて、特定の状況、材料、物質の組成、処理(又はプロセス)、処理工程(又はプロセスステップ)または工程(又はステップ)を順応させるために、記載された本発明の対象、趣旨および範囲に対する多くの修正形態がなされてもよい。全てのそのような修正形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれるように意図される。本明細書および添付の図面で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上、明らかに他に規定されない限り、複数形の指示対象を含む。本明細書で使用される各技術用語および科学用語は、それが使用されるたびに同一の意味を有する。2つ以上の項目のリストにおける「または」の使用は、項目のいずれの組合せも考えられることを示し、例えば、「AまたはB」は、Aのみ、Bのみ、またはAおよびBの両方が意図されることを示す。本明細書で議論された刊行物は、本出願の出願日より前にそれらの開示に関して単に提供される。本明細書には、記載された発明が、従来の発明によるそのような刊行物に先行する権利を有さないという承認として解釈されるものではない。さらに、提供された刊行物の日付は、独立して確認される必要があり得る実際の公開日と異なり得る。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
減圧残渣を実質的に分解することなく、約1500パーツパーミリオン(wppm)以下まで硫黄を減少させるために、水素処理触媒の存在下で、減圧残渣供給流を水素により水素処理することと、
前記水素処理された減圧残渣と、約10体積%以下の第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流および約40体積%以下の第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流とを混合することと
を含む、低硫黄バンカー燃料組成物を製造するための方法であって、
前記減圧残渣供給流が、約1000〜約10000wppmの硫黄を有し、前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約20wppm以下の硫黄を有し、前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約10wppm以下の硫黄を有する、方法。
(態様2)
前記減圧残渣供給流が、約6000〜約10000wppmの硫黄を有する、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記減圧残渣供給流が、約6000〜約8000wppmの硫黄を有する、態様2に記載の方法。
(態様4)
前記水素処理された減圧残渣の前記硫黄が、約1400wppm以下まで減少される、態様1に記載の方法。
(態様5)
前記水素処理された減圧残渣の前記硫黄が、約1300wppm以下まで減少される、態様4に記載の方法。
(態様6)
前記水素処理された減圧残渣の前記硫黄が、約1200wppm以下まで減少される、態様5に記載の方法。
(態様7)
前記水素処理された減圧残渣の前記硫黄が、約1000wppm以下まで減少される、態様6に記載の方法。
(態様8)
前記水素処理された減圧残渣が、約25体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、態様1に記載の方法。
(態様9)
前記水素処理された減圧残渣が、約20体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、態様8に記載の方法。
(態様10)
前記水素処理された減圧残渣が、約15体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、態様9に記載の方法。
(態様11)
前記水素処理された減圧残渣が、約7.5体積%以下の前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、態様1に記載の方法。
(態様12)
前記水素処理された減圧残渣が、約5体積%以下の前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と混合される、態様11に記載の方法。
(態様13)
前記減圧残渣供給流が、少なくとも130バールの圧力下で水素処理される、態様1に記載の方法。
(態様14)
最大で約1500wppmの硫黄と50℃において少なくとも約350cStの動粘度とを有する約50体積%〜約100体積%の未分解の水素処理された減圧残渣と、
約10体積%までの第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と、
約40体積%までの第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流と
を含む、低硫黄バンカー燃料組成物であって、
前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約20wppm以下の硫黄を有し、前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流が、約10wppm以下の硫黄を有し、
(1)50℃における約20cSt〜約100cStの動粘度、
(2)15℃における約800kg/m〜1000kg/mの密度、および
(3)25℃〜35℃の流動点
からなる群から選択される1つ以上の特性を有する、
低硫黄バンカー燃料組成物。
(態様15)
50℃において約380cStの動粘度を有する、態様14に記載の燃料組成物。
(態様16)
6mg/kg以下の全金属含有量を有する、態様14に記載の燃料組成物。
(態様17)
3mg/kg以上の全金属含有量を有する、態様14に記載の燃料組成物。
(態様18)
1200wppm未満の硫黄を有する、態様14に記載の燃料組成物。
(態様19)
1000wppm未満の硫黄を有する、態様18に記載の燃料組成物。
(態様20)
900wppm未満の硫黄を有する、態様19に記載の燃料組成物。
(態様21)
850wppm未満の硫黄を有する、態様20に記載の燃料組成物。
(態様22)
800wppm未満の硫黄を有する、態様21に記載の燃料組成物。
(態様23)
500wppm未満の硫黄を有する、態様22に記載の燃料組成物。
(態様24)
少なくとも500wppmの硫黄を有する、態様14に記載の燃料組成物。
(態様25)
約25体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、態様14に記載の燃料組成物。
(態様26)
約20体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、態様25に記載の燃料組成物。
(態様27)
約15体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、態様26に記載の燃料組成物。
(態様28)
約10体積%以下の前記第2のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、態様27に記載の燃料組成物。
(態様29)
約7.5体積%以下の前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、態様14に記載の燃料組成物。
(態様30)
約5体積%以下の前記第1のディーゼル沸騰範囲炭化水素流を含む、態様29に記載の燃料組成物。
(態様31)
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の60体積%以上を提供する、態様14に記載の燃料組成物。
(態様32)
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の65体積%以上を提供する、態様31に記載の燃料組成物。
(態様33)
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の70体積%以上を提供する、態様32に記載の燃料組成物。
(態様34)
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の80体積%以上を提供する、態様33に記載の燃料組成物。
(態様35)
前記未分解の水素処理された減圧残渣が、前記組成物の90体積%以上を提供する、態様34に記載の燃料組成物。
(態様36)
少なくとも600℃のT50と約1500wppm以下の硫黄とを有する、未分解の減圧残渣。
(態様37)
約1300wppm以下の硫黄を有する、態様36に記載の未分解の減圧残渣。
(態様38)
約1200wppm以下の硫黄を有する、態様37に記載の未分解の減圧残渣。
(態様39)
約1000wppm以下の硫黄を有する、態様38に記載の未分解の減圧残渣。
(態様40)
約800wppm以下の硫黄を有する、態様39に記載の未分解の減圧残渣。
(態様41)
約500wppm以下の硫黄を有する、態様40に記載の未分解の減圧残渣。
(態様42)
少なくとも約500wppmの硫黄を有する、態様36に記載の未分解の減圧残渣。
(態様43)
6mg/kg wppm以下の全金属含有量を有する、態様36に記載の未分解の減圧残渣。
(態様44)
3mg/kg wppm以上の全金属含有量を有する、態様36に記載の未分解の減圧残渣。
(態様45)
約6000mg/kg以下の窒素を有する、態様36に記載の未分解の減圧残渣。
【外国語明細書】