特開2020-90735(P2020-90735A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-90735(P2020-90735A)
(43)【公開日】2020年6月11日
(54)【発明の名称】シート形成装置
(51)【国際特許分類】
   D21C 5/02 20060101AFI20200515BHJP
【FI】
   D21C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-227675(P2018-227675)
(22)【出願日】2018年12月4日
(71)【出願人】
【識別番号】390002129
【氏名又は名称】デュプロ精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138014
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 香織
(72)【発明者】
【氏名】東本 佳久
(72)【発明者】
【氏名】長田 優輔
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA11
4L055AC09
4L055BD03
4L055CE45
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シートに凹凸の形状を有する透かし模様を容易に形成できるシート形成装置の提供を目的とする。
【解決手段】シート形成装置は、繊維含有物を保持しつつ走行する無端状のメッシュベルト23と、前記メッシュベルト23へ繊維含有物を供給する供給部19と、前記繊維含有物を所定圧力で押圧する押圧部14とを備え、前記押圧部14において繊維含有物を押圧して得られるシートに、透かし模様を形成するための透かし部59が設けられ、前記透かし部59は、所定の厚さを有し、透かし模様の形状を有する透かし材96が前記メッシュベルト23の繊維含有物保持面に設けられ、押圧部14は、透かし材が設けられたメッシュベルト23に対し繊維含有物を押圧する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維含有物を保持しつつ走行する無端状のメッシュベルトと、
前記メッシュベルトへ繊維含有物を供給する供給部と、
前記繊維含有物を所定圧力で押圧する押圧部とを備え、
前記押圧部において繊維含有物を押圧して得られるシートに、透かし模様を形成するための透かし部が設けられ、
前記透かし部は、所定の厚さを有し、透かし模様の形状を有する透かし材が前記メッシュベルトの繊維含有物保持面に設けられ、
押圧部は、透かし材が設けられたメッシュベルトに対し繊維含有物を押圧するシート形成装置。
【請求項2】
透かし模様の形態に応じて、異なる厚さの透かし材に交換可能である請求項1に記載のシート形成装置。
【請求項3】
透かし模様の形態に応じて、メッシュベルトの走行速度を変更可能である請求項1または請求項2に記載のシート形成装置。
【請求項4】
押圧部は押圧ローラを備え、
前記押圧ローラは、メッシュベルトの走行経路に複数設置される請求項1乃至は請求項3のいずれか一項に記載のシート形成装置。
【請求項5】
メッシュベルトを介して、繊維含有物を吸引する吸引部を備えた請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のシート形成装置。
【請求項6】
メッシュベルトは0.1m/分〜100m/分の速度で走行する請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のシート形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙に透かし模様を形成するため、抄紙網上に透かし模様形成部を設ける技術が知られている。下記特許文献1では、抄紙網上に感光性樹脂を使用して厚みが段階的に変化する透かし材を形成した模様網を円網抄紙機に用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3198488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の機械のように透かし材を形成した模様網で紙料を濾過するだけでは凹凸の形状を有する鮮明な透かし模様を形成することが困難である。
【0005】
本発明は上記した課題を解決するものであり、シートに凹凸の形状を有する透かし模様を容易に形成できるシート形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかるシート形成装置は、繊維含有物を保持しつつ走行する無端状のメッシュベルトと、前記メッシュベルトへ繊維含有物を供給する供給部と、前記繊維含有物を所定圧力で押圧する押圧部とを備え、前記押圧部において繊維含有物を押圧して得られるシートに、透かし模様を形成するための透かし部が設けられ、前記透かし部は、所定の厚さを有し、透かし模様の形状を有する透かし材が前記メッシュベルトの繊維含有物保持面に設けられ、押圧部は、透かし材が設けられたメッシュベルトに対し繊維含有物を押圧する。
【0007】
また、前記構成において、透かし模様の形態に応じて、異なる厚さの透かし材に交換可能である。
【0008】
そして、前記各構成において、透かし模様の形態に応じて、メッシュベルトの走行速度を変更可能である。
【0009】
更に、前記各構成において、押圧部は押圧ローラを備え、前記押圧ローラは、メッシュベルトの走行経路に複数設置される。
【0010】
更に、前記各構成において、メッシュベルトを介して、繊維含有物を吸引する吸引部を備えた。
【0011】
更に、前記各構成において、メッシュベルトは0.1m/分〜100m/分の速度で走行する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるシート形成装置によれば、押圧部において繊維含有物を押圧して得られるシートに、透かし模様を形成するための透かし部が設けられ、前記透かし部は、所定の厚さを有し、透かし模様の形状を有する透かし材が前記メッシュベルトの繊維含有物保持面に設けられ、押圧部は、透かし材が設けられたメッシュベルトに対し繊維含有物を押圧するので、シートに凹凸の形状を有する透かし模様を容易に形成できる。
【0013】
また、透かし模様の形態に応じて、異なる厚さの透かし材に交換可能である場合は、透かし模様の凹凸の程度を適宜調整することができる。
【0014】
そして、透かし模様の形態に応じて、メッシュベルトの走行速度を変更可能である場合は、凹凸の差を容易に調整できる。
【0015】
更に、押圧部は押圧ローラを備え、前記押圧ローラは、メッシュベルトの走行経路に複数設置される場合は、鮮明で美しい透かし模様を形成することができる。
【0016】
更に、メッシュベルトを介して、繊維含有物を吸引する吸引部を備えた場合は、透かし模様を鮮明に形成することができる。
【0017】
更に、メッシュベルトは0.1m/分〜100m/分の速度で走行する場合は、メッシュベルトが高速で走行するときに比較して透かし模様を鮮明に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るシート形成装置を備えた製紙装置の構成概略図である。
図2】前記シート形成装置の概略構成を示す縦断面図である。
図3】前記シート形成装置の透かし材の拡大斜視図である。
図4】前記シート形成装置の吸引部及びその周辺の斜視図である。
図5】前記シート形成装置の吸引ポンプ及びその周辺の構成概略図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るシート形成装置の概略構成を示す縦断面図である。
図7】本発明の更に他の実施形態に係るシート形成装置の概略構成を示す縦断面図である。
図8】本発明の更に他の実施形態に係る透かし材の拡大図である。
図9】本発明の更に他の実施形態に係る透かし材の拡大図である。
図10】本発明の更に他の実施形態に係る吸引部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態にかかるシート形成装置を備えた製紙装置の構成概略図である。図1に示す製紙装置は、古紙を製紙原料とする古紙再生処理装置100である場合を示している。図1において、古紙再生処理装置100は、繊維含有物製造部1、脱墨部2、抄紙部3、仕上部4及び各部を制御する制御部8を備えてなる。尚、本実施形態では、本発明にかかるシート形成装置Qが、古紙10を原料として再生紙のシート7を製造する古紙再生処理装置100の抄紙部3に用いられる場合について記載するが、必ずしもこれに限定されず、木材等の他のパルプ原料を製紙原料とする製紙装置の抄紙部に用いてもよく、繊維含有物に樹脂などの添加剤を添加しシートを形成する装置のシート形成部であっても構わない。
【0020】
繊維含有物製造部1は、古紙10を離解または解繊して繊維含有物を製造する。脱墨部2は、繊維含有物製造部1で製造された繊維含有物を含む繊維含有物を脱墨する。抄紙部3は、脱墨部2において得られた脱墨後の繊維含有物を抄紙してウエブWを形成し、得られたウエブWを押圧し、加熱し、乾燥する。仕上部4は、抄紙部3において得られたウエブWを裁断等することにより仕上げを行って定型サイズのシート7を得る。制御部8は古紙再生処理装置100全体の動作を制御する。繊維含有物製造部1及び脱墨部2は、それぞれ公知の繊維含有物製造装置及び脱墨装置を利用可能である。
【0021】
図2は、抄紙部3を構成するシート形成装置Qの概略構成を示す縦断面図である。尚、以下では、図2に示すシート形成装置Qの右側を「前側」、左側を「後側」、図2の紙面の手前を「右側」、紙面の奥側を「左側」として説明することとする。抄紙部3は、ウエブ形成部11、押圧部14及び加熱部15が図示しない筐体内に収容されてなる。筐体内には、左右一対の図示しない側板が配設されており、この側板が各部を構成するほとんどのローラを、回動自在に軸支している。
【0022】
ウエブ形成部11では、ウエブWが形成される。ウエブ形成部11は、ヘッドボックス12と、ワイヤー部13とを備える。ヘッドボックス12は、脱墨後の繊維含有物をメッシュベルト23上に均一に供給するためのものである。ヘッドボックス12は、貯留部18と、供給部19と、流入部20とを備える。
【0023】
貯留部18は繊維含有物を貯留する。供給部19は、貯留部18に貯留する繊維含有物をメッシュベルト23へ供給する。流入部20は、貯留部18の底部に形成される。流入部20は貯留部18へ繊維含有物を流入させる。流入部20には図示しない輸送ポンプが接続されている。輸送ポンプは脱墨部2から脱墨後の繊維含有物を取出し、貯留部18へ送るためのものである。
【0024】
ワイヤー部13は、メッシュベルト23と、張力調整部36と、図示しないベルト駆動部とを備える。メッシュベルト23は無端状に形成される。メッシュベルト23は繊維含有物を保持しつつ走行する。メッシュベルト23は複数のベルトローラ24に掛け渡され、展張される。メッシュベルト23は上側を走行する往路軌道の下流側端部近傍に設けられた湾曲部21において、上方へ向けて水平面に対し約5°乃至85°程度湾曲して走行する。ベルト駆動部はメッシュベルト23を走行させる。
【0025】
張力調整部36は、メッシュベルト23の張力を調整する。張力調整部36は、供給部19の下方に設置された3個のベルトローラ24のうち、上下方向中央のベルトローラ241の幅方向両端部近傍にそれぞれ設けられる。張力調整部36は、張力調整部材37、軸支部材41及び固定部材42を備える。張力調整部材37は例えば圧縮バネによって構成される。ベルトローラ241は、水平方向へ移動自在に構成されている。このベルトローラ241の回転軸242は、軸支部材41によって軸支される。
【0026】
固定部材42は装置本体を構成する図示しない側板に固定される。張力調整部材37は、固定部材42と軸支部材41との間に圧縮状態で設置される。これより、軸支部材41は、張力調整部材37によって固定部材42に対して前側へ付勢される。軸支部材41が前側へ移動されることで、ベルトローラ241の回転軸242が前側へ所定の押圧力で付勢され、メッシュベルト23に所定量の張力が付与される。
【0027】
メッシュベルト23は、ヘッドボックス12から供給される繊維含有物を保持しつつ走行する。ヘッドボックス12の供給部19からメッシュベルト23の上面に供給された繊維含有物は、メッシュベルト23により濾過されてウエブWに形成される。ウエブWは、所定量の水を含んだ繊維の層をなす湿紙である。
【0028】
メッシュベルト23の材質は、ブロンズ,ステンレス鋼などの金属や、ポリエステル,ポリアミドなどの合成樹脂を用いることができる。線径は100〜1000μmの細線を使用することができる。織り方は、平織、ロングクランプ織、モノプレン織などを用いることができる。目開きは、4〜120メッシュ/インチとすることができる。
【0029】
メッシュベルト23には、透かし部59が設けられる。透かし部59は、ウエブWに文字、図柄、マーク等の透かし模様を形成するためのものである。透かし部59は、シート7に、透かし模様を形成するためのものである。透かし部59は、透かし材96がメッシュベルト23の繊維含有物保持面に取り付けられ形成される。透かし材96は、所定の厚さを有し、透かし模様の形状を有する。
【0030】
透かし部59は、例えば、メッシュベルト23へ針金、金属、樹脂、紙等で作った透かし材96を金属細線で取り付ける方法、ハンダ付けする方法、接着剤で貼り付ける方法、メッシュベルト23に塗料や樹脂で透かし模様を描くことで網目を塞ぐとともに、メッシュベルト23の繊維含有物保持面から透かし模様の一部分または全部分を突出させた透かし材96により構成する方法、メッシュベルト23自体を透かし模様入りで形成するとともに、透かし模様の一部分または全部分をメッシュベルト23の繊維含有物保持面から突出させた透かし材96により構成する方法、感光性樹脂を用いてメッシュベルト23の繊維含有物保持面に形成された透かし材96により構成する方法等により設けることが可能である。
【0031】
メッシュベルト23へ樹脂で作った透かし材96等を接着剤で貼り付ける方法では、例えば、以下の手順により実施可能である。まず、裏面に粘着剤が塗布され、剥離紙等の剥離シート94が貼り合わされたカッティング用シート等の樹脂シート93をカッティングプロッター等を用いて所定の形状に切断する。図3は透かし材96の一例を示す。同図では樹脂シート93をサクラの花の輪郭の形状に切断している。ここで、樹脂シート93上に配置する透かし模様のデザインは、同図に示すように、複数あっても構わない。樹脂シート93上の相互に離間した箇所に、同じまたは異なる文字や図形、画像等を複数配置することで、各々の位置関係を維持し配列順序を変えないで、シート7の広い範囲に複数の透かし模様を形成可能である。
【0032】
次に、切断された樹脂シート93の表面に保護シート7を貼り付ける。これにより樹脂シート93の個々に独立した文字や図形、画像、模様、絵柄等の相互の位置関係が乱れるのを防止できる。そして、裏面から剥離シート94を剥がし、粘着剤によってメッシュベルト23の所定位置に透かし材96を固定する。このとき透かし材96の接着力の向上のため、必要により加熱処理や接着剤の補充を行ってもよい。これより、同図に示すような図柄の輪郭線のみ切り取られることで、線透かし材96のメッシュベルト23への接着面積が小さいときでも、透かし材96がシート形成中に剥離してしまうのを抑制できる。その後、樹脂シート93の表面を覆っていた保護シート7を剥離する。
【0033】
樹脂シート93の材質は、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレンなどのポリアクリル酸エステル樹脂等を単独で又は組み合わせて用いることができる。樹脂シート93は、表面にポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリエステル塗料、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコンゴム等の耐久性、耐水性を有する塗料が塗布されていてもよい。この表面処理により、透かし材の耐久性、耐水性を向上させることができる。樹脂シート93を発泡樹脂により構成することも可能である。また、樹脂シート93を吸水性を有する素材により構成してもよい。
【0034】
また、樹脂シート93の厚さは、0.05mm〜0.5mm程度とすることができ、好ましくは0.70mm〜0.3mmとすることができる。樹脂シート93の厚さを0.05mm以上とすることで、得られるシート7の文字や図形、絵、画像等の透かし模様をより鮮明に形成することができる。また樹脂シート93の厚さを0.5mm以下とすることで、透かし模様の部分で厚さが過度に薄くなり、シート7に穴や亀裂が発生するのを予防できる。
【0035】
更に、所望する透かし模様の形態に応じて、異なる厚さの透かし材96を適宜選択し、交換できるよう構成してもよい。これより、得られるシート7における透かし模様の凹凸の程度を適宜調整することができる。
【0036】
また、感光性樹脂を利用する方法では、メッシュベルト23上に第一の感光性樹脂層を形成してその上に所望パターンを置き露光、現像して第一層の画像を形成し、第一層の画像の上に第二の感光性樹脂層を積層形成してその上に第一層の画像より小さい所望パターンを置き露光、現像して第一層の画像の上に第二層の画像を積層形成し、さらに必要に応じて第二層の画像の上に複数層の画像を順次同様にして積層形成することによって、厚みが段階的に変化する透かし材96をメッシュベルト23上に形成する方法を用いることができる。感光性樹脂の種類は、ポリウレタン、ポリビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル等を用いることができる。
【0037】
メッシュベルト23の動作速度は、製紙装置が小型である場合は、製紙工場に設置される大型の製紙装置に比較して遅く設定される。例えば、メッシュベルト23の走行速度が0.1m/分〜100m/分程度、好ましくは0.5m/分〜50m/分程度に設定される。
【0038】
メッシュベルト23の走行速度は、透かし模様の形態に応じて変更可能に構成される。メッシュベルト23の走行速度が遅いときは、速いときより押圧部14における押圧時間が長くなる。よって、得られるシート7に形成される透かし模様の凹凸の差が大きくなり、鮮明な透かし模様を形成することができる。一方、メッシュベルト23の走行速度が速いときは遅いときよりシート7の凹凸が小さくなる。よって、輪郭のあいまいな透かし模様を意図的に形成可能である。
【0039】
上側を走行する往路軌道のメッシュベルト23の下方には、複数の水切り板26が所定間隔で配置されている。水切り板26は繊維含有物を水切りする。各水切り板26はメッシュベルト23の走行方向と交差する左右幅方向に向けて延在し、メッシュベルト23の下面に摺接される。これにより、水切り板26がメッシュベルト23の網目から流下する液体分である白水を下方へと導くようになっている。
【0040】
また、水切り板26の下方には、該水切り板26より、またはメッシュベルト23の網目から直接流下する白水を受ける受水部27を設けている。白水は、繊維含有物がメッシュベルト23により濾過されて生じる液体であり、微細な繊維やパルプと水とを含む。受水部27は図示しない配管、ガイド等により下方に設置された白水タンク29に接続されている。白水タンク29は、内部に収容する白水を繊維含有物製造部1及び脱墨部2に送るための図示しない配管及び白水循環用ポンプを備え、受水部27において回収した白水を再利用可能に構成している。
【0041】
また、ウエブ形成部11には、メッシュベルト23を介して繊維含有物を吸引する吸引部35が設けられる。吸引部35は、供給部19の下方に設置される。吸引部35は、供給部19からメッシュベルト23上へ繊維含有物が供給される供給領域のうち、メッシュベルト23の走行方向下流側位置に設置される。吸引部35は、供給部19からメッシュベルト上へ繊維含有物が供給される供給端部19aより、該メッシュベルト23の走行方向所定量下流側位置に設けられる。吸引部35は、周回走行するメッシュベルトの内方位置に設置される。
【0042】
吸引部35は、メッシュベルト23を介して、繊維含有物を吸引する。吸引部35は、吸引部材77を備える。吸引部材77は、無端状のメッシュベルト23の内方に、長手方向がメッシュベルト23の幅方向に沿う向きに設置される。そして、吸引部材77は、メッシュベルト23と受水部27との間に設置される。吸引部材77の上面は、上方を走行するメッシュベルト23の下面に摺接する。
【0043】
図4は吸引部材77の斜視図である。吸引部材77は、長尺の箱状に形成された吸引箱80を備える。吸引部材77の上面には、メッシュベルト23の幅方向Hに長く伸びた矩形状の吸引口81が設けられている。吸引口81は、吸引箱80の上板83に所定形状の切込部84が形成され、この切込によってできた切込片85が、吸引箱80の内方へ向けて直角に折り曲げられることで形成される。尚、切込片85が折り曲げられる構成に替えて、矩形状の打ち抜きとしてもよい。
【0044】
上板83が摺接するメッシュベルト23の走行方向は、同図において矢印Fで示す向きである。切込片85が折り曲げられることで形成された折曲部86は、上方を走行するメッシュベルト23の走行方向F下流側となる位置に設置され、一方、折曲部86に対向し、メッシュベルト23の幅方向Hに伸びた切込部84aは、メッシュベルト23の走行方向F上流側となる位置に設置される。吸引口81の幅方向Hの長さは、メッシュベルト23上を繊維含有物が供給される幅と略同程度に形成される。また、吸引箱80の一方の側板72には、吸引元部33が開口して形成されている。
【0045】
吸引部材77は、途中位置に吸引ポンプ79が設けられた吸引用配管78に接続される。図5は、吸引ポンプ79及びその周辺の概略図である。同図に示すように、吸引部材77に設けられた吸引元部33に、吸引用配管78の一端側が接続される。吸引用配管78の他端側は、白水タンク29に接続される。そして、吸引用配管78の途中位置には、吸引ポンプ79が設置される。吸引ポンプ79は、吸引口81より繊維含有物を吸引するために設けられる。吸引ポンプ79は、少なくとも水及び空気を吸引可能に構成される。
【0046】
同図では、吸引ポンプ79としてチューブポンプ87を用いた例を示している。しかし、吸引ポンプ79は、チューブポンプ87に替えて、例えば、ピストンポンプ、プランジャーポンプ、ベーンポンプ、スクイズポンプ等を用いてもよい。チューブポンプ87は、これらの各種ポンプのうち、少なくとも水分と空気とを吸引可能であり、消費電力が小さく、設置スペースが小さい点で好ましい。また、吸引ポンプ79は、吸引した微細パルプ等の固形分を含む液体成分と空気等の気体成分とを分離する気液分離器と、送風機とを組み合わせて用いることも可能である。送風機としては、シロッコファン、ターボファン、リミットロードファンなどの各種送風ファンを用いることができる。
【0047】
チューブポンプ87は、可撓性チューブ88、ケーシング89、押圧部材90、ロータ91、ロータ駆動部(図示省略)を備える。可撓性チューブ88は、ケーシング89内の円弧状のガイド面89aによって支持される。
【0048】
押圧部材90は、略正三角形のロータ91の頂部に回転自在に軸支された押圧ローラにより構成される。押圧部材90は、ロータ91の回転に伴って、ケーシング89のガイド面89aに沿って旋回可能であり、ガイド面89aとの間で可撓性チューブ88を排出側へ向けて押し潰しながら該可撓性チューブ88の内容物を移送する。ロータ駆動部は、ロータ91を回転駆動する。
【0049】
ウエブ形成部11の吸引部35からの吸引力は、例えば、0.01MPa〜1MPa、好ましくは0.05MPa〜0.5MPaとすることができる。ウエブ形成部11の吸引部35による吸引量は、例えば、0.01L/分〜200L/分、好ましくは0.05L/分〜100L/分、更に好ましくは0.3L/分〜50L/分である。
【0050】
図2に示す押圧部14は、繊維含有物を所定圧力で押圧する。そして、押圧部14は、透かし材96が取付けられたメッシュベルト23に対し繊維含有物を押圧する。押圧部14は、押圧ローラ45を備える。押圧ローラ45は湾曲部21に設置される。湾曲部21では、メッシュベルト23の走行方向が略水平から上方へ向けて湾曲している。押圧ローラ45は、メッシュベルト23を掛け渡すベルトローラ24を兼ねて構成される。メッシュベルト23は所定範囲に亘って押圧ローラ45の外周面に沿って走行するよう配置される。この所定範囲で、メッシュベルト23は押圧ローラ45との間でウエブWを挟持する。図2では、押圧ローラ45がメッシュベルト23の上面乃至後側面に接触するよう設置される場合を示す。
【0051】
メッシュベルト23には張力調整部36によって所定量の張力が付与されている。押圧ローラ45は、この張力調整部36によって張力の付与されたメッシュベルト23に所定圧力で接触し、メッシュベルト23上に形成されたウエブWをメッシュベルト23との間で挟持し、押圧する。
【0052】
押圧ローラ45は、ベルト駆動部に連結機構を介して連結される。押圧ローラ45は、メッシュベルト23が掛け渡される他のローラ24と同期して回転駆動される。しかし、これに替えて、押圧ローラ45が連結機構によりベルト駆動部に連結されない構成としてもよい。押圧ローラ45がベルト駆動部に連結されない場合、メッシュベルト23の走行に伴って従動回転される構成としてもよく、別途設けた駆動部により回転駆動されてもよい。
【0053】
押圧ローラ45の材質は、金属、樹脂、ゴム等を用いることができる。金属としては、ステンレス、鉄やアルミ等が挙げられる。樹脂としては、ウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS系樹脂やフッ素系樹脂等の合成樹脂または天然樹脂が挙げられる。ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンイソプレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムまたは天然ゴムが挙げられる。また、これらのうち2種類以上を組み合わせて用いてもよく、その際、層状に形成することも可能である。
【0054】
これらのうち、押圧ローラ45にゴムを用いることで、ウエブWの押圧時押圧ローラ45が容易に弾性変形する。このように押圧ローラ45が弾性変形すると、ウエブWを十分に押圧できる。また、ウエブWの剥離性が向上する。さらに、押圧ローラ45をシリコン樹脂やフッ素系樹脂によって表面加工したものとすることで、ウエブWの剥離性をより向上可能である。
【0055】
図2に示す加熱部15は、挟持用ベルト48、加熱ドラム50、温度センサ66及びスクレーパ55を備えている。挟持用ベルト48は、メッシュベルト23から受け渡されたウエブWを加熱ドラム50との間で挟持して走行する。挟持用ベルト48は、無端状に形成され、加熱ドラム50及び複数のベルトローラ49に掛け渡されている。
【0056】
挟持用ベルト48は、加熱ドラム50の外周の略4分の3の範囲に巻回される。挟持用ベルト48は、上方に向けて突出して走行するメッシュベルト23に対向するよう上方に向けて突出して走行する。メッシュベルト23と挟持用ベルト48とは、対向位置において接触することなく所定量離間して配置される。挟持用ベルト48は、図示しない挟持用ベルト駆動部によって走行駆動される。
【0057】
挟持用ベルト48は、加熱ドラム50に巻回された範囲で、湿潤状態にあるウエブWを加熱ドラム50との間で挟持して搬送する。挟持用ベルト48の材質は特に限定されず、例えば、金属、ポリエステルやポリフェニレンサルファィド等の合成繊維、麻や木綿等の天然繊維が用いられる。挟持用ベルト48は、経糸と緯糸を織り込んだ織物によって形成されることがウエブWの加熱効率が高い点で好ましい。
【0058】
加熱ドラム50は、中空円筒状に形成された筒体58を備え、該筒体58の筒心に直交する左右の側面は、円盤形状の蓋体59により閉塞されている。また、筒体58は、複数の支持ローラ61により回転自在に支持されている。筒体58の内周面には、加熱手段62を備えている。加熱手段62は、柔軟で可撓性を有し、シート状に形成されたシリコンラバーヒータ等の加熱体により構成される。加熱体は、筒体58の内周面に全周に亘って貼着されている。筒体58は、挟持用ベルト48が挟持用ベルト駆動部によって走行駆動されることにより、従動して回転する。
【0059】
温度センサ66は、図2に示すように、加熱ドラム50の上部後方に設置される。温度センサ66は、筒体58の表面温度を検出する。本実施形態では、温度センサ66が、筒体58の表面に摺動接触し、筒体58の温度を検出する構成としたが、筒体58に非接触のセンサを用いてもよい。スクレーパ55は、加熱ドラム50の上部後方であって温度センサ66より加熱ドラム50の回転方向上流側に設置される。スクレーパ55は加熱ドラム50から加熱後のウエブWを剥がし、ウエブWを仕上部4へと案内する。
【0060】
(仕上部)
図1に示す仕上部4は、ウエブWを所定のシートサイズにカットする図示しない裁断刃
を備えている。裁断刃は、左右一対のスリッターとカッターとを備える。スリッターは、丸刃により構成される。カッターは、幅方向に沿って延在する上下一対の直刃により構成される。裁断刃の下方には、裁断により生じた端材を回収する図示しない端材回収箱が設置されている。
【0061】
(制御部)
制御部8は、RAM及びROM等により構成される記憶部、CPU等を備えている。記憶部にはCPUが動作するための各種プログラムが記憶されている。制御部8は、この記憶部に記憶された各種プログラムに従って、各部の動作を制御し、古紙再生処理装置100全体の動作を制御する。
【0062】
以下、上記構成の作用を説明する。製紙装置の運転を開始すると、繊維含有物製造部1では、原料としての古紙が離解または解繊の処理が施され繊維含有物が製造される。得られた繊維含有物は脱墨部2で脱墨処理される。脱墨後の繊維含有物は、流入部20より貯留部18へ流入される。貯留部18に流入した繊維含有物は該貯留部18から溢流され、走行するメッシュベルト23上面へ供給部19から供給される。繊維含有物がメッシュベルト23で濾過されることで、均一な繊維の層であるウエブWが形成される。繊維含有物がメッシュベルト23で濾過されることで生じた白水は、受水部27に受け止められた後、白水タンク29へ送られ、該白水タンク29内に収容される。
【0063】
またこのとき、制御部9が、ロータ駆動部を駆動することで、ロータ91を図5における時計方向Jに回転し、押圧部材90とケーシング89のガイド面89aとの間で可撓性チューブ88を押し潰しつつ押圧部材90を旋回させる。すると、吸引箱80の内部は負圧となり、メッシュベルト23上の繊維含有物を吸引口81から吸引する。これより繊維含有物に含まれる液体成分や空気等の気体成分が吸引され、吸引口81から吸引箱80内へ引き込まれる。吸引される液体成分には、水分のほか、微細な繊維、離解または解繊処理によって繊維含有物中に浮遊または混在するようになったかつて古紙原料に含まれていた炭酸カルシウムやサイジング剤等の添加剤、脱墨処理のために添加された脱墨剤等が含まれる。そして、この吸引により、繊維含有物の自重による濾過を助けて脱水効率を向上させることができる。
【0064】
また、メッシュベルト23には、ウエブWに透かし模様を形成する透かし部59が設けられ、メッシュベルト23を介して繊維含有物を吸引する吸引部35を備えたので、透かし模様をより鮮明に形成することができる。透かし部59の樹脂シート93が吸水性を有する素材である場合、従来のダンディロールのように、針金で形成され、ウエブWの上面を押圧する場合に比較して、透かし部59を柔軟に形成することができ、吸水性を向上可能であり、効率よく透かし模様を形成できる。
【0065】
吸引部35は、供給部19の下方に設置されるので、供給部19により供給された繊維含有物をメッシュベルト23で自重により濾過する際、透かし部59において自重と吸引との相乗効果によって効率よく透かし模様を形成することができる。
【0066】
吸引部35は、供給部19からメッシュベルト23上へ繊維含有物が供給される供給領域のうち、メッシュベルト23の走行方向下流側位置に設置されるので、供給領域のうちメッシュベルト23の走行方向上流側位置に設けられる場合に比較して、より鮮明な透かし模様を形成可能である。繊維含有物に含まれる繊維をメッシュベルト23上で均一に分散させ、品質の高いシートを製造するためには、供給部19からメッシュベルト23上へ供給される繊維含有物の液体分の割合を高い所定値以上の状態とすることが好ましい。このような液体分の割合の高い繊維含有物を供給部19からメッシュベルト23上へ供給する場合、供給領域の上流側位置で、自重により多くの液体が下方に導かれ、メッシュベルト23の網目を通過する。これより、繊維含有物の液体分の割合は急激に低下する。供給領域の下流側位置では、自重によって落下する液体が上流側位置ほども多くなくなる。この下方へ落下する液体分の割合が少なくなった地点で、吸引部35によって強制的に液体分を吸引することで、更に繊維含有物から液体分を取り除くことがき、効率よく脱水できる。
【0067】
また、吸引部35が、供給部19からメッシュベルト23上へ繊維含有物が供給される供給領域のうち、メッシュベルト23の走行方向下流側位置に設置されることにより、メッシュベルト23上の繊維を、鮮明な透かし模様を形成するのに適切な状態にすることができる。前述したように供給領域の上流側位置では、メッシュベルト23上の液体分の割合が非常に高い。このため、繊維含有物は、網目が閉塞されたメッシュベルト23の透かし部59には長く留まろうとせず、透かし部59が設けられていない網目が解放され液体分が網目を通過可能な場所へ素早く移動する。このため供給領域の上流側位置では繊維の移動が激しくなりやすい。よって上流側位置で吸引すると、ウエブに穴が開いてしまう恐れがある。しかし、供給領域の下流側位置では、上流側位置ほど繊維の移動は激しくならず、適切な移動を確保できる。
【0068】
吸引部35は、供給部19からメッシュベルト23上へ繊維含有物が供給される供給端部19aより、該メッシュベルト23の走行方向所定量下流側位置に設けられる場合は、繊維含有物に含まれる液体分の割合がより適切な位置で吸引部35によって吸引することができる。よって、より良好な透かし模様を形成できる。供給部19においてメッシュベルト23が上向きに傾斜して走行する構成とされる場合には、メッシュベルト23が水平に設置される場合よりメッシュベルト23の上流側に繊維の滞留できる領域が形成されやすく地合が向上する。
【0069】
メッシュベルト23は0.1m/分〜100m/分の速度で走行する場合は、製紙工場に設置される大型の製紙装置の場合のように、メッシュベルト23が湾曲しつつ高速で走行することにより、遠心力で繊維含有物から液体分を除去することができない。そこで、吸引部35によって吸引することで、繊維含有物から液体分を効率よく除去し、脱水することができる。また、製紙工場に設置される大型の製紙装置では、従来のダンディロールのように、透かし部が針金で形成され、通水性を有することによって、高速走行するウエブWの水分を遠心力で除去しつつ透かし模様を形成することができるところ、メッシュベルト23の走行速度が大型の製紙装置より低速走行であっても透かし部59を、吸水性を有する素材により構成し、メッシュベルト23に取り付けることで、ウエブWの水分を除去できる。そして、効率よく透かし模様を形成できる。
【0070】
吸引口81を構成する矩形状の開口部のうち、メッシュベルト23の走行方向下流側に摺接する箇所が、切込片85が折り曲げられ形成された折曲部86とされているので、メッシュベルト23の透かし部59が吸引部材77と摺接するとき透かし部59を傷つけ難い。
【0071】
吸引口81から吸引箱80の内部に流入した白水は、吸引元部33から吸引用配管78へ移送され、吸引ポンプ79を経て白水タンク29へ送られ、収容される。
【0072】
濾過によってメッシュベルト23上に形成されたウエブWは、メッシュベルト23の走行に伴って下流側へ搬送される。
【0073】
制御部8は、メッシュベルト23上で形成されるウエブWの先端領域の紙厚を、この先端領域に続く抄紙本領域に設定される抄紙本領域厚より厚い抄紙先端領域厚でウエブWを形成するよう制御する。このため制御部8は、ウエブWの先端領域を形成するときのメッシュベルト23の走行速度を、抄紙本領域を形成するときより遅くするようベルト駆動部を制御する。また、これに替えて、制御部8は、ヘッドボックス12からメッシュベルト23上へ繊維含有物の供給を開始し、ウエブWの先端領域を形成するときにメッシュベルト23の走行を所定時間停止するよう制御してもよい。更に、制御部8は、輸送ポンプの駆動量をウエブWの先端領域を形成するときの方が、抄紙本領域を形成するときより多くするよう制御し、流入部19へ流入させる繊維含有物の量を多くすることで、ウエブWの先端領域を厚くしてもよい。
【0074】
ウエブWの先端領域が形成された後、この先端領域が押圧部14に至ると、ウエブWは、押圧ローラ45の外周面に沿って上方へ向けて湾曲して走行するメッシュベルト23と押圧ローラ45との間で挟持され、押圧される。図3において水平方向へ走行するメッシュベルト23上のウエブWは、押圧ローラ45によって上から押圧され、メッシュベルト23との間で挟持されることで、ウエブWに含まれる液体分がメッシュベルト23の下方へ導かれる。そして、押圧ローラ45の外周面に沿って湾曲して走行するメッシュベルト23との間で徐々に押圧される。ウエブWは、メッシュベルト23の張力によって押圧される。
【0075】
よって、水平方向に走行するメッシュベルト23の上下に対向配置された一対の押圧ローラによってウエブWが挟持される場合に比較して、小さい押圧力で押圧されることとなる。この場合、含水率の高い状態のまま一対の押圧ローラのニップ位置で大きな押圧力で強引に押圧された場合よりウエブWに含まれる繊維の移動が少なくなり、加熱の後に得られるシートの品質を向上可能である。
【0076】
メッシュベルト23に透かし部59が設けられている箇所が押圧部14に至ると、ウエブWは、透かし模様のある状態で押圧ローラ45によって押圧される。透かし材96上のウエブWは繊維量が少なく、薄く形成されている。透かし模様が押圧ローラ45によって押圧されると、十分に押圧される。透かし模様は周辺部分より厚さが薄くかつ十分に圧縮され、凹んで形成される。特に、ウエブWの表裏両面のうち、メッシュベルト23に接触している裏面の方が、透かし材96によってより大きな凹凸が形成される。一方、押圧ローラ45に接触している表面は、凹凸の量は裏面より少なくなる。このようにして透かし模様の部分は、透かして見たときに光の透過率の異なることで輪郭線が形成されるのに加え、凹凸によってこの輪郭線がより鮮明に際立って形成される。
【0077】
そして、透かし部59は、所定の厚さを有し、透かし模様の形状を有する透かし材96がメッシュベルト23の繊維含有物保持面に取り付けられ、押圧部14は、透かし材96が取付けられたメッシュベルト23に対し繊維含有物を押圧するので、透かし模様に凹凸加工を施すことができる。ウエブWに形成される凹凸の形状は、押圧ローラ45による押圧力が所定値以下の場合には、シート7の表裏両面のうち、メッシュベルト23の繊維含有物保持面に接触する一方の面のみとなる。このときウエブWの他方の面は、凹凸の形状があまり見られない比較的平滑な状態に形成される。このように、押圧部14の押圧力を所定値以下に調整することで、シート7の透かし模様形成部分の表裏両面の形態を異なったものとすることができる。
【0078】
一方、押圧部14の押圧力が所定値を超える場合、ウエブWの一方の面のみならず、他方の面にも透かし模様形成位置に凹凸の形状を施すことができる。
【0079】
透かし材96を構成する樹脂シート93の厚さを適宜選択することによって、シート7に形成される透かし模様を所望する形態に調整することができる。透かし材96の厚さが厚いときには薄いときより、押圧ローラ45によって同じ押圧力で押圧した場合に、透かし模様の部分の凹凸の差を大きくすることができる。そして、透かし模様の輪郭をより際立たせることができる。一方、透かし材96の厚さが薄いときには厚いときより、押圧ローラ45によって同じ押圧力で押圧した場合に、透かし模様の凹凸の差が小さくなる。これより、透かし模様の輪郭をあまり目立たせないであいまいな形態とし、シート7の透かし模様の表面を比較的平滑にすることができる。
【0080】
また、必要により透かし模様の形態に応じて、異なる厚さの透かし材96に交換可能としてもよい。このように透かし材96が交換可能であれば、メッシュベルト23自体を透かし模様入りで形成する場合のように、透かし模様の形態を変更したいときにメッシュベルト23をシート形成装置から取り外して交換するという大掛かりな作業の必要がなくなり、作業性が向上する。そして、異なる形態の透かし模様への変更を安価にすることができる。
【0081】
また、透かし模様の形態に応じて、メッシュベルト23の走行速度を変更可能である。メッシュベルト23の走行速度が遅いときには速いときより、押圧ローラ45によって同じ押圧力で押圧した場合でも、ウエブWの押圧時間が長くなる。このため、透かし模様の凹凸の差をより大きくすることができる。そして、透かし模様の輪郭をより際立たせることができる。一方、メッシュベルト23の走行速度が速いときには遅いときより、押圧ローラ45の押圧時間が短くなる。このため、透かし模様の輪郭をあいまいにできる。
【0082】
そして、透かし模様の形態に応じて押圧ローラ45の押圧力を変更することも可能である。押圧ローラ45の押圧力が大きいときには小さいときより、メッシュベルト23の走行速度が同じ場合で、押圧ローラ45によるウエブWの押圧時間が同じでも、透かし模様の凹凸の差をより大きくすることができる。そして、透かし模様の輪郭をより際立たせることができる。一方、押圧ローラ45の押圧力が大きいときには小さいときより、メッシュベルト23の走行速度が同じ場合に、透かし模様の部分の輪郭をあいまいにできる。
【0083】
メッシュベルト23上のウエブWは、押圧ローラ45との間で挟持され、押圧された後、メッシュベルト23の走行に伴って搬送される。そして、図2に示すようにウエブWの先端領域は斜め上へ向けて搬送される。ウエブWの先端領域は厚く形成されており、且つ押圧部14で押圧されることで、該ウエブWはある程度のコシを有している。ベルトローラ24が最も高い位置に設置されたメッシュベルト23の転換位置Tに、ウエブWの先端領域Gが至ったときに、メッシュベルト23から剥離され、図2において実線で示すように斜め右上方へ向けて独立して搬送される。
【0084】
メッシュベルト23から上方へ伸びたウエブWの先端領域Gの長さが、所定長さに至ると、一点鎖線で示すように、ウエブWの先端領域Gは自重によって座屈する。そして、メッシュベルト23に対向する挟持用ベルト48によって支持される。ウエブWの先端領域Gは挟持用ベルト48と加熱ドラム50の間に入り込み、これらの当接部分において挟持用ベルト48と加熱ドラム50との間で挟持され搬送される。
【0085】
ウエブWは、加熱手段62によって加熱された加熱ドラム50に当接される。これより、湿潤状態にあるウエブWは、加熱され、仕上げ前の帯状シートが得られる。尚、加熱ドラム50は、温度センサ66によって温度が検出され、所定温度に維持されている。
【0086】
加熱部15で得られた仕上げ前の帯状シートは、スクレーパ55によって加熱用ベルト47から剥離され、仕上部4に送られる。仕上部4に送られた帯状シートは、裁断刃で所定のシートサイズに裁断されてシート7が完成する。その際、スリッターは、帯状シートの幅方向両端部を長手方向に沿って裁断する。カッターは、上直刃が下直刃に対し、上下動し、シートを幅方向に沿って裁断する。裁断刃により裁断されたシート7の端材は、端材回収箱に回収される。端材回収箱内の端材は、図1に示すように繊維含有物製造部1に戻され、再度古紙原料としてシート7の製造に利用される。
【0087】
吸引ポンプ79としてチューブポンプ87を用いた場合、チューブポンプ87は、真空ポンプ等と比較して小型であり、小さい設置スペースに設置可能である。また、チューブポンプ87は真空ポンプより消費電力が小さく、コストを抑えることも可能である。
【0088】
(第2の実施形態)
図6は第2の実施形態にかかるシート形成装置Qaの概略構成を示す縦断面図である。上記第1の実施形態では、押圧部14が1個の押圧ローラ45によって構成されたが、本第2の実施形態では、押圧部14aは、メッシュベルト23aを介して対向する一対の押圧ローラ45aを備える。この押圧ローラ45aは、メッシュベルト23a上に形成されたウエブWaを挟持し、押圧する。
【0089】
一対の押圧ローラ45aは、第1押圧ローラ67及び第2押圧ローラ68を備える。第1押圧ローラ67は、メッシュベルト23aとの間でウエブWを挟持可能である。第2押圧ローラ68は、第1押圧ローラ67にメッシュベルト23aを介して対向配置される。第1押圧ローラ67は、周回走行するメッシュベルト23aの外方に設置される。第2押圧ローラ68は、メッシュベルト23aの内方に設置される。
【0090】
第1押圧ローラ67及び第2押圧ローラ68の材質は、上記第1の実施形態の押圧ローラ45と同様のものを用いることができる。更に、第2押圧ローラ68は、吸水性を有する構成としてもよい。吸水性を有する構成としては、例えば、スポンジ、発泡体、多孔質体、布地、編地、不織布が挙げられる。
【0091】
第1押圧ローラ67は、装置本体を構成する側板に回動自在に軸支されている。第2押圧ローラ68は、第1押圧ローラ67に近接する方向へ移動可能な状態で、前記側板に回動自在に軸支される。同図に示すように、第2押圧ローラ68の回転軸681の幅方向両端部は、第1押圧ローラ67の回転軸671に押圧力付与部材69により連結される。押圧力付与部材69は、引張りばねによって構成される。この押圧力付与部材69の付勢力により、第2押圧ローラ68は、第1押圧ローラ67に近接する方向に付勢される。
【0092】
第1押圧ローラ67はメッシュベルト23aに接触している間継続して、ウエブWを当該メッシュベルト23aとの間で挟持し押圧している。第1押圧ローラ67と第2押圧ローラ68とのニップ部Nにおいては、ウエブWが両ローラ67,68に挟持され、押圧され、脱水される。脱水により生じた液体分は、メッシュベルト23の網目を通過し、下方へと導かれる。そして、この液体分は第2押圧ローラ68の後側周面を下方へと伝う。
【0093】
これより、第1の実施形態のように第2押圧ローラ68が設置されない場合に比較して、ニップ部NにおいてウエブWを一対の押圧ローラ45aで挟持し、押圧でき、より多くの液体分をウエブWから除去することができる。また、網目を通過した液体分が第2押圧ローラ68によって適正に下方へ案内されることで、より効率よく水分を除去することができる。
【0094】
第2押圧ローラ68が吸水性を有する構成とされる場合、ウエブWからより多くの液体分を素早く除去することができる。このように第2押圧ローラ68の吸水力によってウエブWからより多くの液体分を短時間で取り除くことで、メッシュベルト23の透かし材96の設置位置では、より美しい透かし模様を形成することができる。
【0095】
更に、第1押圧ローラ67がゴムにより構成される場合、ニップ部NにおいてウエブWから生じた液体分は、吸水性のほとんどない第1押圧ローラ67に押圧されることとなる。この場合、第1押圧ローラ67への繊維の付着を抑制でき、これに伴うウエブWの第1押圧ローラ67への巻き付きを抑制できる。そして、第2押圧ローラ68が吸水性を有する場合、液体分を第2押圧ローラ68の設置された下方へとより効率よく案内でき、脱水することができる。
【0096】
第1押圧ローラ67と第1押圧ローラ68のニップ部Nより下流側の領域では、ウエブWが第1押圧ローラ67によってメッシュベルト23aに向けて押圧されることで、ウエブWに含まれる液体分がより多くメッシュベルト23aの下方へ導かれ、網目を通過する。
【0097】
(第3の実施形態)
図7は第3の実施形態にかかるシート形成装置Qbの概略構成を示す縦断面図である。同図に示すメッシュベルト23bは、押圧部14bより下流側の走行経路の傾斜が、図2,6に示すメッシュベルト23,23aに比較して緩くなっている。この緩く傾斜した位置に、メッシュベルト23bを介して対抗する押圧ローラ対71が複数設置されている。各押圧ローラ対71は、上記第2の実施形態と同様に、第1押圧ローラ67b及び第2押圧ローラ68b、押圧力付与部材69bを備える。この複数の押圧ローラ対71は、メッシュベルト23bにより搬送されるウエブWbを順次挟持し、押圧する。
【0098】
メッシュベルト23bの走行方向下流側の押圧ローラ対71dは、上流側の押圧ローラ対71uよりウエブWを強い押圧力で押圧するよう設定される。押圧ローラ対71を複数設置することで、より鮮明で美しい透かし模様を形成することができる。
【0099】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態にかかる透かし材96cを示す。同図(a)は平面図であり、同図(b)は断面図である。透かし材96cは、樹脂シート93cがメッシュベルト23cの繊維含有物保持面に複数枚積層され設置される。下層の樹脂シート93Lは上層の樹脂シート93hよりメッシュベルト23cを塞ぐ面積が大きく形成されている。また、上下の樹脂シート93h,93Lの厚さが異なっている。上層の樹脂シート93hの方が下層の樹脂シート93Lより厚くなっている。これより、透かし模様の凹凸を段階的に形成でき、立体的な透かし模様を形成できる。
【0100】
(第5の実施形態)
図9は、第5の実施形態にかかる透かし材96dを示す。同図(a)は平面図であり、同図(b)は断面図である。透かし材96dは1枚の樹脂シート93dでの厚さが不均一となっている。楕円形に形成された樹脂シート93d。の内側が外側より薄く形成される。これより、透かし模様の外側の輪郭を鮮明にし、凹凸の差を際立たせることができる。一方、内側の輪郭は不鮮明であいまいな形態に形成可能となる。
【0101】
尚、上記実施形態では、製紙装置において脱墨装置により脱墨処理を行ったが、脱墨処理を省略することも可能である。また、ヘッドボックス12は溢流式である場合を示したが、メッシュベルトより上方に設置された貯留部の下部から、貯留部内の繊維含有物を自然落下等により下方のメッシュベルトへ流出させるといったものでもよい。
【0102】
また、吸引部35を備えたが、吸引部を設けなくてもよい。吸引部35は、供給部19の下方に設置されたが、吸引部が供給部と同じ高さに設置されてもよい。例えば、メッシュベルトが傾斜走行するよう設置される場合、供給端部の設置高さと吸引口の設置高さを同じにすることができる。また、吸引部が供給部より高い位置に設置されることとしてもよい。このためメッシュベルトを水平面から所定角度以上傾斜させるよう設置してもよい。
【0103】
また、吸引部35は、供給部からメッシュベルト上へ繊維含有物が供給される供給領域のうち、メッシュベルトの走行方向下流側位置に設置されたが、メッシュベルトの走行方向上流側位置に設置することも可能である。また、吸引部35は、供給部19からメッシュベルト23上へ繊維含有物が供給される供給端部19aより、該メッシュベルト23の走行方向所定量下流側位置に設けられたが、吸引部が供給端部の真下に設けられてもよく、供給端部に隣接して設けられてもよい。
【0104】
また、吸引部材77は、長尺箱状の吸引箱80を備えたが、吸引箱の形状を例えば図10(a)に示す略楕円形の筒状や、同図(b)に示す台形筒状、図示しない三角形筒状、多角形筒状、棒状、球形状等他の形状としてもよい。また、吸引口81は折曲部86を備え、矩形状で幅方向Hに長く伸びて形成されたが、同10(a)(b)に示す吸引口81a、81bのように、打ち抜かれて形成されてもよく、形状が同図(a)に示す楕円形や同図(b)に示す真円形であってもよく、図示しない三角形や四角形、多角形、不揃いな形状またはこれらの組み合わせであってもよい。また、同図(a)(b)に示すように吸引口81a、81bが分割され、複数設けられてもよい。吸引元部33は、吸引箱80の一方の側板72に設けられたが、他のいずれかの側面に設けてもよく、同図(a)に示すように、吸引元部33aが底面に開口して設けられてもよい。また、吸引元部33を1個に替えて複数設けてもよい。折曲部86は、上方を走行するメッシュベルト23の走行方向F下流側となる位置に設置され、折曲部86に対向する切込部84aは、メッシュベルト23の走行方向F上流側となる位置に設置されたが、これとは異なる他の配置であってもよい。
【0105】
また、押圧部14は押圧ローラ部43により構成されたが、これに加え、押圧ベルトを備えてもよい。押圧用ベルトは、無端状に形成され、吸水性を有するフェルト又は毛布等を用いることができる。押圧ベルトはメッシュベルトと加熱ドラムの間に設置される。押圧ベルトはメッシュベルトから転移されたウエブを搬送し、加熱ドラムへ転移するよう構成される。
【0106】
また、製紙装置は、水を用いて古紙を再生処理したが、水を全くまたはほとんど用いることなく再生処理し、シートに調製してもよい。この場合、古紙を解繊し、必要な添加剤を添加し、加熱部により加熱することによってシートに調製することができる。
【0107】
また、透かし模様はサクラの花の形状、円形、楕円形の場合を示したが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0108】
Q、Qa,Qb シート形成装置、14,14a、14b 押圧部、19 供給部、23、23a、23b、23c、23d メッシュベルト、35 吸引部、45,45a、45b 押圧ローラ、59 透かし部、96,96c、96d 透かし材
図1
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図10