【解決手段】雨樋5が支持される支持具本体10と、建築構造物6に打ち込んで固定される取付足部20とを備えた樋支持具1において、取付足部は、複数の引っ掛け溝部30が長手方向に間隔を空けて刻設されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2のような樋支持具を建築構造物から取り外すためには、取付足部を建築構造物から引き抜く必要がある。しかしながら、例えば支持具本体を手でつかんで取付足部を建築構造物から引き抜こうとすると、大きな力が必要であるため容易ではない。さらに、高所での作業の場合、作業員が取付足部を引き抜こうとして大きな力をかけると、バランスを崩して転落する危険性がある。
【0005】
また、上記特許文献3のようなバールを用いて梃子の原理で樋支持具を建築構造物から引き抜こうとしても、樋支持具は釘のような頭部を有していないため、特許文献3のようなバールでは、樋支持具を取り外すための工具としては用いられなかった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、建築構造物から容易に取り外せる樋支持具及びこれを建築構造物から取り外すために用いられる取り外し工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の樋支持具は、雨樋が支持される支持具本体と、建築構造物に打ち込んで固定される取付足部とを備えた樋支持具において、前記取付足部は、複数の引っ掛け溝部が長手方向に間隔を空けて刻設されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の樋支持具は、前記引っ掛け溝部が、前記取付足部の周方向に、円中心線上の少なくとも二点を含むように刻設されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の樋支持具は、前記建築構造物に対して前記取付足部が前後方向の所望の位置で固定されるための目盛として用いられることを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するために、請求項4に記載の取り外し工具は、請求項1乃至3に記載の樋支持具を建築構造物から取り外すために用いられる取り外し工具において、板状の本体部を有し、該本体部のいずれかの端面に凹状に開口して形成された係合部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の樋支持具は、上述した構成とされているため、引っ掛け溝部に工具を引っ掛けることで、簡単に建築構造物から樋支持具を取り外すことができる。
【0012】
請求項2に記載の樋支持具は、上述した構成とされているため、引っ掛け溝部の少なくとも二点が工具に引っ掛かる。
【0013】
請求項3に記載の樋支持具は、上述した構成とされているため、引っ掛け溝部が建築構造物に対する取付足部の打ち込み深さを測る目安となる。
【0014】
請求項4に記載の取り外し工具は、上述した構成とされているため、係合部を樋支持具の引っ掛け溝部に引っ掛けて、建築構造物から樋支持具を取り外すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。まず、
図1に示した樋支持具の基本構成について説明する。なお、建築構造物に樋支持具を取り付けた状態を基準にして、前後方向(長手方向)、幅方向(建築構造物に対する見付の方向と一致する方向)、上下方向等を規定する。また、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
【0017】
樋支持具1は、雨樋5が支持される支持具本体10と、建築構造物6に打ち込んで固定される取付足部20とを備える。取付足部20は、複数の引っ掛け溝部30が長手方向に間隔を空けて刻設されている。以下、詳しく説明する。
【0018】
図1(a)に示す樋支持具1は、建築構造物6の垂木6Aに取付足部20Aを打ち込むことで固定され、雨樋5である軒樋5Aを支持具本体10Aで受け支持する軒樋支持具1Aである。支持具本体10Aは、軒樋5Aを受け支持できるように、軒樋5Aの外径形状に沿った形状で形成されている。
【0019】
取付足部20Aは、支持具本体10Aの下部より下方に延びた支持部22と、支持部22の下端部22aから上方に傾斜して延び、垂木6Aに打ち込むための尖端部21aを有した固定部21とを備えている。取付足部20Aは支持部22、固定部21が一体となってステンレスなどの丸棒体の金属材料により形成されている。取付足部20Aには、後述する複数の引っ掛け溝部30が長手方向に間隔を空けて刻設されている。
【0020】
続いて、
図1(b)に示す樋支持具1は、建築構造物6の壁面6Bに取付足部20Bを打ち込むことで固定され、雨樋5である竪樋5Bを支持具本体10Bで抱持して支持する竪樋支持具1Bである。支持具本体10Bは、竪樋5Bを抱持して支持できるように、竪樋5Bの外径形状に沿った形状で形成されている。
【0021】
支持具本体10Bは、略半円形の湾曲帯体で形成された本体部11と、同様に湾曲帯体で形成された蓋部12とを備えている。それらの一端どうしがヒンジ結合されることでヒンジ部13が構成され、そのヒンジ部13を支点として蓋部12を回動開閉可能とし、本体部11の他端11aと、蓋部12の他端12aとを係止、連結させて閉止する構造となっている。
【0022】
取付足部20Bは、支持具本体10Bの本体部11の中央部の外面側から直線状に延び、壁面6Bに打ち込むための尖端部21aを有した固定部21を備えている。取付足部20Bは、ステンレスなどの丸棒体の金属材料により形成されている。取付足部20Bには、後述する複数の引っ掛け溝部30が長手方向に間隔を空けて刻設されている。
【0023】
次に、軒樋支持具1A、竪樋支持具1Bに共通する引っ掛け溝部30について、
図2を参照して説明する。
図2(a)に示すように、引っ掛け溝部30は、取付足部20の長手方向に間隔を空けて複数刻設されている。また、引っ掛け溝部30は、取付足部20の周方向に、円中心線A上の少なくとも二点を含むように刻設されている(
図2(c)参照)。さらに、引っ掛け溝部30は、建築構造物6に対して取付足部20が前後方向の所望の位置で固定されるための目盛として用いられる。
【0024】
図2(c)に示すように、断面視して略D字状に形成された引っ掛け溝部30が、円中心線A上に線対称に2つ刻設されている。これにより、後述する取り外し工具4の係合部43が、幅方向に挟み込むように引っ掛け溝部30,30に挿し込まれる。このような引っ掛け溝部30は、
図2(b)の平面図に示すように、長手方向に複数刻設されている。本実施形態では、引っ掛け溝部30の開口幅Dは約2mmであるが、これに限定されることはない。
【0025】
本実施形態では、尖端部21aと尖端部21aに最も近い引っ掛け溝部30との間の寸法Lは30mm以上となっている。樋支持具1を安定して固定させるためには、建築構造物6に対して固定部21の寸法に関わらず30mmは打ち込まれる必要があり、この部分には、引っ掛け溝部30は不要とされる。また、長手方向の引っ掛け溝部30,30間の寸法lは、5mm以上とされている。これは、建築構造物6からの前後方向の出具合調節には、5mm刻みの調整で用を成すことが多いからである。なお、本実施形態では上記の構成とされているが、尖端部21aと尖端部21aに最も近い引っ掛け溝部30との間の寸法Lは30mm未満であってもよく、長手方向の引っ掛け溝部30,30間の寸法lは、5mm未満であってもよい。
【0026】
上述のように、取付足部20に引っ掛け溝部30が刻設される雨樋5は、建築構造物6に取付足部20を打ち込んで固定されるものであれば、軒樋支持具や竪樋支持具など、雨樋の種類を問わない。
【0027】
図2(d)(e)は、引っ掛け溝部30の変形例を図示している。引っ掛け溝部30は、固定部21の周方向に刻設され、
図2(e)に示すように、断面視してドーナツ状に形成されている。
図2(a)(b)の引っ掛け溝部30と同様に、引っ掛け溝部30の開口幅Dは約2mmであるが、これに限定されることはない。
【0028】
次に樋支持具1を建築構造物6に固定させる方法について、
図1(a)の軒樋支持具1Aを例にして説明する。
図3(a)に示すように、軒樋支持具1Aの尖端部21aを、垂木6Aの取付面6aに接触させた状態で、ハンマー等の打ち込み工具7を用いて垂木6Aに打ち込む。取付足部20Aには、複数の引っ掛け溝部30が刻設されており、これらを目盛として用いることによって、建築構造物6に対する打ち込み深さを測ることができる。たとえば、
図3(b)に示すように、固定部21の尖端部21aから数えて3番目の引っ掛け溝部30が取付面6aに接近するようにして、垂木6Aに軒樋支持具1Aを固定する。軒樋支持具1Aは、幅方向に複数設置して使用されるので、他の軒樋支持具1Aも固定部21の尖端部21aから数えて3番目の引っ掛け溝部30が取付面6aに接近するようにして、垂木6Aに固定する。これにより、複数の軒樋支持具1Aは、前後方向の同位置に位置づけされる。
【0029】
上述のようにして垂木6Aに複数の軒樋支持具1Aを固定させて、それらの支持具本体10Aに軒樋5Aを支持させることで、建築構造物6に軒樋5Aが設置される。
なお、竪樋支持具1Bの場合も同様にして、前後方向の同位置に位置づけされた複数の竪樋支持具1Bを壁面6Bの上下方向に固定させて、それらの支持具本体10Bに竪樋5Bを支持させることで、建築構造物6に竪樋5Bが設置される。
また、上述のようにして建築構造物6に設置された樋支持具1は、釘抜き等の工具を用いて建築構造物6から取り外すことができる。
【0030】
次に、建築構造物6から樋支持具1を取り外すために用いられる取り外し工具4について、
図4を参照して説明する。まず、基本構成について説明する。
【0031】
取り外し工具4は、上述したような雨樋5を建築構造物6から取り外すために用いられる。取り外し工具4は、板状の本体部40を有し、本体部40のいずれかの端面に凹状に開口して形成された係合部43を有する。以下、詳しく説明する。
【0032】
図4の取り外し工具4は、ステンレス等の剛性の高い金属製の長尺矩形板材を加工してなり、引っ掛け溝部30の開口幅Dよりも薄い長板状の本体部40を有している。本体部40は、その一方の長辺側の端面40aに開口を有した係合部43を備えている。具体的には、開口から斜め状に本体部40の短手方向の略中央まで延びたガイド部41が形成され、略中央より一方の短辺側の端面40bに近づくように導入路42が形成され、さらにその奥方に凹状の係合部43が形成されている。ガイド部41の開口幅d1は、取付足部20の径sよりも大きく形成されている。導入路42及び係合部43の開口幅d2は、引っ掛け溝部30に係合部43が挿し込むことができる大きさ且つ取付足部20の径sよりも小さい大きさで形成されている。これにより、ガイド部41から取付足部20の引っ掛け溝部30に挿し込むことができ、ガイド部41に沿って取り外し工具4が移動して、係合部43が引っ掛け溝部30,30に引っ掛かる。
【0033】
次に、取り外し工具4を用いて、樋支持具1を建築構造物6から取り外す方法について、
図2(a)〜(c)で示した引っ掛け溝部30を有する軒樋支持具1Aを例にして説明する。
図4(b)に示すように、取付面6aに最も接近している引っ掛け溝部30に側方より取り外し工具4を挿し込む。本実施形態では、引っ掛け溝部30の開口幅Dは約2mmであり、取り外し工具4の厚みtは約1mmである。そのため、取り外し工具4は、引っ掛け溝部30内で前後に遊動できる。この状態で、係合部43から長手方向に最も離れた位置にある他方の短辺側の端面40c付近の本体部40をつかみ、前方に引っ張る(
図4(b)に示した白抜き矢印のような方向)。このとき、取り外し工具4の一部が引っ掛け溝部30の前方下端部31に接触する一方、引っ掛け溝部30に対して取り外し工具4は傾斜した状態となり、取り外し工具4の背面の上端が取付面6aに接触する(
図4(c)参照)。この状態でさらに他方の短辺側の端面40c付近の本体部40を前方に引っ張ることで、取り外し工具4の上端を支点、取り外し工具4の引っ掛け溝部30の前方下端部31に接触した箇所を作用点として、取り外し工具4が梃子となり、軒樋支持具1Aを梃子の原理によって垂木6Aから取り外すことができる。同様にして、壁面6Bに固定された竪樋支持具1Bも、取り外し工具4を用いて取り外すことができる。
【0034】
本実施形態では、引っ掛け溝部30の開口幅Dと取り外し工具4の厚みtとの関係は2:1となっているので、取り外し工具4は、引っ掛け溝部30に対して傾斜した状態となり、梃子の原理によって、垂木6Aから取り外すことができる。なお、引っ掛け溝部30の開口幅Dと取り外し工具4の厚みtとの関係は2:1に限定されることはなく、たとえば3:1であってもよく、1:1に近似であってもよい。
【0035】
取り外し工具4は、釘抜き等の一般に市販されている工具と比べて、取付足部20の側方から移動させるだけで引っ掛け溝部30に引っ掛けることができるので、作業が容易となる。また、釘抜き等と異なり、取り外し工具4を引っ掛け溝部30に引っ掛けたまま放置しても落下しにくいので、作業中に取り外し工具4を引っ掛け溝部30に引っ掛けたまま、他の作業を行うことができる。
【0036】
次に
図5を参照して取り外し工具4の変形例について説明する。
図5(a)に示す取り外し工具4は、
図4の取り外し工具4の短尺の端面40cが挿し込まれた丸棒体の柄部44が設けられている。これにより、柄部44を握って取り外し工具4を使用できる。なお、柄部44は丸棒体に限定されることはなく、たとえば平板体であってもよく、本体部40と柄部44が一体形成されてもよい。
【0037】
図5(b)に示す取り外し工具4は、
図4の取り外し工具4のガイド部41、導入路42及び係合部43に、内側に向けて傾斜して厚みが薄くなるテーパ部45が形成されている。これにより、引っ掛け溝部30にテーパ部45を挿し込んで樋支持具1を建築構造物6から取り外すことができるので、本体部40の厚みを引っ掛け溝部30の開口幅Dよりも厚くして強度を高めることができる。
【0038】
図5(c)に示す取り外し工具4は、本体部40の一方の短辺側の端面40bに矩形状に開口して形成された係合部43と、長辺側の端面40aに三角形状に開口した係合部43が形成されている。このように、取り外し工具4に形成される係合部43は一つに限定されることはない。また、係合部43の開口形状も矩形に限定されることなく、引っ掛け溝部30の形状に合わせて係合部43が形成される。
【0039】
図5(d)に示す取り外し工具4は、
図4等に示すようなガイド部41、導入路42が形成されず、全体形状がフック状になっている。このような取り外し工具4は、丸棒材を折曲して形成されてもよい。
【0040】
樋支持具や取り外し工具は、上述した形状や構成に限定されることはない。たとえば、軒樋支持具は、角樋を保持するために、角樋の外径形状に沿った形状に支持具本体が形成されてもよい。また、竪樋支持具も同様に角形の竪樋を保持するために、角樋の外径形状に沿った形状に支持具本体が形成されてもよい。さらに、竪樋支持具の支持具本体は、蓋部を有さず、本体部のみの構成であってもよい。
【0041】
さらに、引っ掛け溝部も上述したものに限定されることはない。引っ掛け溝部の開口幅の寸法や、引っ掛け溝部が形成される間隔や、引っ掛け溝部が形成される個数も上述したものや図例に限定されることはない。
【0042】
取り外し工具も上述したものに限定されることはない。たとえば、本体部を握りやすいようにさらに長尺に形成されてもよい。また、本体部も長板状でなくてもよく、係合部の開口形状も上述したものに限定されることはない。