(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-90880(P2020-90880A)
(43)【公開日】2020年6月11日
(54)【発明の名称】エンボス模様を有する畳表及びその畳表を使用した畳
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20200515BHJP
【FI】
E04F15/02 104A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-237749(P2018-237749)
(22)【出願日】2018年12月4日
(71)【出願人】
【識別番号】398067650
【氏名又は名称】アゼアス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508285905
【氏名又は名称】有限会社成島畳店
(72)【発明者】
【氏名】成島 康夫
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA45
2E220AD03
2E220AD13
2E220FA02
2E220GA24X
2E220GB33X
(57)【要約】
【課題】すべり抵抗の適切な畳を提供する。
【解決手段】畳表の表面にエンボス模様を形成した畳表であって、前記エンボス模様が互いに独立しており、前記エンボス模様に外接する円の直径が0.5mm以上20mm以下であり、前記外接円の合計面積が前記畳の表面積の5%以上50%以下であり、深さが0.3mm以上とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にエンボス模様を形成した畳表であって、前記エンボスの深さが0.3mm以上であることを特徴とするエンボス模様を有する畳表。
【請求項2】
表面にエンボス模様を形成した畳表であって、前記エンボス模様が互いに独立しており、前記エンボス模様に外接する円の直径が0.5mm以上20mm以下であり、前記外接円の合計面積が前記畳の表面積の5%以上50%以下であり、深さが0.3mm以上であることを特徴とするエンボス模様を有する畳表。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の畳表を使用した畳であって、畳目方向及び畳目方向に直行する方向の素足でのすべり抵抗が0.5以上であることを特徴とする畳。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にエンボス模様を形成した畳表及びその畳表を使用した畳に関する。特に、畳目の方向のすべり抵抗を適正にした畳表及び畳に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の合成樹脂製の畳表には、合成樹脂シートの表面に畳模様を形成した畳表や、合成樹脂製の模造イ草を織って構成した畳表がある。合成樹脂シートの表面に畳模様を形成した畳表としては、畳模様を形成するための溝が形成されたポリウレタン成形用の金型装置により合成樹脂シートに畳模様を形成した畳表がある(例えば、特許文献1参照。)。畳模様には、イ草を用いた畳表に現れるイ草の長さ方向への線状の凹凸模様がある。ちなみにこの方向を畳目と称する。
また、合成樹脂製の模造イ草を織って構成した畳表としては、古くから使われてきたイ草を用いた畳表と感触を似せたものにし、またダニ等の害虫の発生を防ぎ耐久性を増したものとして、合成樹脂製の模造イ草を織って構成した畳表も知られている。(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
以下、従来の表面材に畳模様を形成した合成樹脂製畳表について説明する。この畳表においては、表面材に吸湿性がないため、特に夏場には素足で歩いたとき等にはべた付き感があり、イ草を使用した畳表に比べて感触が悪いものであった。また、畳模様を形成するため、畳表のすべり抵抗は畳目方向で小さく、畳目に直角の方向で大きくなる。
次に、合成樹脂製の模造イ草について説明する。この模造イ草には皺が設けてあり、皺の間に水分等を吸収できるようになされており、天然のイ草に近い感触がえられるようになされている。しかし、この模造イ草を使用した畳表であっても、畳表のすべり抵抗は畳目方向で小さく、畳目に直角の方向で大きくなる。このことは、イ草を使用した畳表でも同様である。
【0004】
畳を含む床では、すべり抵抗は要求される重要な性能である。床のすべり抵抗が適切でない場合には、すべって転倒する、すべらなさ過ぎてつなずくなどの不都合が生じ、特に高齢者においては大きな事故につながるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−141574号公報
【特許文献2】特開平5−220870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上述べたように、従来の畳表では、すべり抵抗は特に畳目の方向で小さいものであった。また、歩行用の床としては、すべり抵抗は適切な範囲にあることに加え、方向によってすべり抵抗が大きく異ならないことが重要である。特に高齢者には歩行時の安全性にとってはこのことに配慮されなければならない。
【0007】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、畳目を有するいわゆる畳表、特に、合成樹脂製の畳模様を有する畳表や合成樹脂製の模造イ草を使用した畳表にエンボス模様を形成し、畳表の縦横の滑り抵抗を適正にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は上記目的を達成するために、畳表の表面にエンボス模様を形成した畳表であって、前記エンボスの深さが0.3mm以上とした。
【0009】
エンボス模様としては特に限定されないが、幾何学的で独立した模様でもよいし、木目のような連続したものでもよい。エンボスの深さが0.3mm以上とは畳表の表面に0.3mm以上のへこみが形成されているものや、浅く形成されたエンボス模様からさらに0.3mm以上へこみが形成されたものを含む。
【0010】
また第2の解決手段として、表面にエンボス模様を形成した畳表であって、前記エンボス模様が互いに独立しており、前記エンボス模様に外接する円の直径が0.5mm以上20mm以下であり、前記外接円の合計面積が前記畳の表面積の5%以上50%以下であり、深さが0.3mm以上とした。
【0011】
畳表としては合成樹脂製のものが簡単に熱ロールなどでエンボス模様が形成できるので適している。合成樹脂としては、特に限定はされないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等の熱可塑性合成樹脂を使用することができる。
エンボス模様は互いに独立しているが、エンボス模様が外接する円の直径が0.5mmより小さければすべり抵抗を小さくする効果が小さく、20mmより大きいと畳表が固くなり、感触の悪いものになる。また、外接円の合計面積が5%より小さいと必要なすべり抵抗が得られず、50%より大きいと畳表が固くなり、感触の悪いものになる。また、エンボス模様は独立していることにより、必要なすべり抵抗を大きくすることができる。また、エンボス模様の深さが0.3mmより小さくなると必要なすべり抵抗が得られない。また、限定はされないが、エンボスの深さを0.8mm以下とするとエンボス加工が容易で好ましい。
【0012】
エンボス模様としては、直径1mm以上3.0mm以下の円形のものが、畳として使用した際にべたつきがなく特に好ましい。円形の合計面積の割合は10%以上35%以下がさらに好ましい。
【0013】
また、第3の問題解決手段は、上述の畳表を使用した畳であって、畳目方向及び畳目方向に直行する方向の素足でのすべり抵抗が0.5以上とした。
【0014】
ここですべり抵抗とは、日本建築学会の床性能評価指針による、すべり片として運動施設床等および一般床用共通の素足のすべり片を取り付けたすべり測定装置「O−Y・PSM」を用いて測定・算出したすべりの性能値C.S.R・BFである。
【0015】
上記第1および第2の解決手段による作用は次の通りである。すなわち、畳表の表面にエンボス模様を形成することにより方向に関わらず、滑り抵抗を適切にすることができる。
【0016】
また、第2の解決手段による作用は、畳を構成した際に、畳目方向及び畳目方向に直行する方向の素足でのすべり抵抗が0.5以上としたので、高齢者にとっても歩行しやすく安全な畳とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
上述したように本発明のエンボス模様を形成した畳表を使用することにより、高齢者にとっても歩行の安全な畳を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を
図1、
図2に基づいて説明する。
【0020】
図1において、1は合成樹脂製畳表であり、2a、2bはエンボス模様であり、3はその外接円である。
【0021】
エンボス模様2aはハートの形をしているが、形状は任意である。外接する円3の直径は0.5mm以上20mm以下であるが、エンボス模様が円である場合はエンボス模様と外接円とは同形状である。
【0022】
外接円3の合計面積は畳表の表面積の5%以上50%以下となされており、外接円はほぼ均等に分布していることが好ましい。
エンボス模様は、畳表全体に同じ形状のものが形成されても良いし、異なる形状のものが形成されて良い。
【0023】
エンボス模様2a、2bの深さは0.3mm以上であるが、畳表の厚さは一般的に2mm以下なので1mm以下が好ましく、さらに好ましくは0.8mm以下である。
【実施例1】
【0024】
エンボス模様として外接円14mmのハートの形を深さ0.5mmで合成樹脂製畳表に形成した。合成樹脂製畳表としては、ポリプロピレン樹脂をい草状に成型し、畳表に編ん
成した。
【0025】
この畳表をJIS A 5914に定められたKT−III型の畳床を用いて製畳した。
この畳の畳目方向のすべり抵抗は0.50、畳目と垂直方向のすべり抵抗は0.51であった。
【実施例2】
【0026】
エンボス模様として1.5mmの円の形を深さ0.5mmで合成樹脂製畳表に形成した。合成樹脂製畳表としては、実施例1と同じものを用い、熱ロールでエンボス模様を形成した。
【0027】
この畳表を実施例1と同じ畳床を用いて製畳した。
この畳の畳目方向のすべり抵抗は0.56、畳目と垂直方向のすべり抵抗は0.60であった。
【実施例3】
【0028】
エンボス模様として木目模様を深さ0.7mmで合成樹脂製畳表に形成した。合成樹脂製畳表としては、実施例1と同じものを用い、熱ロールでエンボス模様を形成した。
【0029】
この畳表をJISA5917に示される衝撃緩和型畳床を用いて製畳した。
この畳の畳目方向のすべり抵抗は0.53、畳目と垂直方向のすべり抵抗は0.53であった。
(比較例1)
【0030】
い草製の畳表を実施例1と同じ畳床を用いて製畳した。
この畳の畳目方向のすべり抵抗は0.45、畳目と垂直方向のすべり抵抗は0.53であった。
(比較例2)
【0031】
実施例1に記載した合成樹脂製畳表松露と、実施例1と同じ畳床を用いて製畳した。
この畳の畳目方向のすべり抵抗は0.48、畳目と垂直方向のすべり抵抗は0.51であった。
(比較例3)
【0032】
い草製の畳表をJIS A 5917に定められた衝撃緩和型畳床を用いて製畳した。
この畳の畳目方向のすべり抵抗は0.45、畳目と垂直方向のすべり抵抗は0.59であった。
【符号の説明】
【0033】
1 樹脂製畳表
2a エンボス模様
2b エンボス模様
3 外接円