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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-90909(P2020-90909A)
(43)【公開日】2020年6月11日
(54)【発明の名称】防音カバーおよびエンジンユニット
(51)【国際特許分類】
   F02B 77/11 20060101AFI20200515BHJP
   F02B 77/13 20060101ALI20200515BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20200515BHJP
【FI】
   F02B77/11 A
   F02B77/13 A
   F02B77/11 D
   F02B77/11 E
   B60R13/08
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-226672(P2018-226672)
(22)【出願日】2018年12月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 修
(72)【発明者】
【氏名】荒井 剛
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA02
3D023BB29
3D023BD21
3D023BE06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】十分な防音性能を有するとともに耐熱性に優れた新規な防音カバーを提供する。
【解決手段】防音用被覆材3と、当該防音用被覆材上に離間して設けられた遮熱板2とを有する防音カバー1であって、好ましくは、上記離間して設けられる防音用被覆材と遮熱板との距離dが0mmを超え30mm以下であるか、上記遮熱板および防音用被覆材の対応する位置に各々設けられた挿通孔に挿通された支柱部材と、上記支柱部材の遮熱板および防音用被覆材間に挿通された金属メッシュからなる中間緩衝部材mbとを少なくとも有する連結具により上記遮熱板および防音用被覆材が離間しつつ保持されてなる防音カバーである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防音用被覆材と、当該防音用被覆材上に離間して設けられた遮熱板とを有することを特徴とする防音カバー。
【請求項2】
前記離間して設けられる防音用被覆材と遮熱板との距離が0mmを超え30mm以下である請求項1に記載の防音カバー。
【請求項3】
前記遮熱板および防音用被覆材の対応する位置に各々設けられた挿通孔に挿通された支柱部材と、
前記支柱部材の遮熱板および防音用被覆材間に挿通された金属メッシュからなる中間緩衝部材とを少なくとも有する連結具により
前記遮熱板および防音用被覆材が離間しつつ保持されてなる
請求項1または請求項2に記載の防音カバー。
【請求項4】
前記防音用被覆材が、開孔率が0.1〜5.0%で開孔径が100〜1000μmである第一の多孔質フィルムと、一以上の弾性多孔質体層と、開孔率が0.1〜5.0%で開孔径が100〜1000μmである第二の多孔質フィルムとが、この順番に積層されてなるものである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の防音カバー。
【請求項5】
前記防音用被覆材が、前記第一の多孔質フィルムの外表面側および第二の多孔質フィルムの外表面側の少なくとも一方にさらに表皮材を有する請求項4に記載の防音カバー。
【請求項6】
前記第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムの通気抵抗が0.1〜10kPa・s/mである請求項4または請求項5に記載の防音カバー。
【請求項7】
前記防音カバーが自動車エンジン用防音カバーである請求項1〜請求項6のいずれかに記載の防音カバー。
【請求項8】
自動車用エンジンと当該自動車用エンジンの少なくとも一部を覆う請求項1〜請求項7のいずれかに記載の防音カバーと、前記自動車用エンジンと防音カバーとを収容するエンジンルームとを有するエンジンユニットであって、前記自動車用エンジンと前記防音カバーを構成する防音用被覆材との間または前記防音カバーを構成する防音用被覆材とエンジンルームとの間に0.1〜30mmの距離の空隙を有すること
を特徴とするエンジンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音用カバーおよびエンジンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車騒音に関する基準調和について、国連の欧州経済委員会(ECE)の自動車基準調和世界フォーラムにおいて検討され、車両構造に関する規則の制定、改訂が行われている。
従来より、自動車メーカー各社は様々な防音仕様について開発を進めており、自動車エンジン用防音カバーとしても種々のものが提案されている(例えば、特許文献1(特開2002−180845号公報)参照)が、自動車の車外騒音については上記ECEの規則51(ECE R51)に規制値が定められ、同規制値を定めたRegulation EU No.540/2014によれば、2016年7月迄に72dB(フェーズ1)、2020年7月迄に70dB(フェーズ2)、2024年7月迄に68dB(フェーズ3)と段階を追って厳しくなる基準が施行され、車外騒音の規制レベルを最終的には2016年7月までの基準に対して4dB、音圧エネルギーとして約1/2.5に低減するという大変厳しい要求がなされている。
【0003】
ところで、上記自動車の騒音は、エンジン、モーター、トランスミッション等駆動系エンジンルームから発生する騒音のみならず、排気音、風切音、タイヤロードノイズ等が合算したものであるため、エンジンルームから発生する騒音の低減のみで上記目標を達成しようとした場合、エンジンルームにおいて5〜6dB、音圧エネルギーとして1/4に低減するという大きな騒音低減が必要になることから、従来の自動車エンジン用防音カバーでは対応が困難になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−180845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来提案されてきた防音カバーでは、益々厳しくなる規制水準に対し必ずしも十分な騒音抑制効果は得られ難い。
【0006】
このような状況下、防音仕様として、例えば、エンジンのほぼ全体、すなわち、エンジン壁面・上面(ボンネット)側・下面(アンダーボディー)側のほぼ全面に防音材を施行し、音源となるエンジン全体を防音材で覆い車外への騒音漏洩を抑制すると同時にその吸音効果によりエンジンルーム内の騒音レベルを低減させる、(ニア)エンジンカプセル化による対応が考えられる。
【0007】
しかしながら、ダウンサイジングを施した最近の車両のエンジンルーム内は各部品が高度に集積され、スペースが狭いために、上記カプセル化を行う場合においても防音材に用意された厚さは10〜20mm程度と極く薄い一方で、防音材による吸音および遮音効果により騒音を低減しようとした場合、特に1kHz以下の比較的低周波数側の騒音は防音材の厚さ及び質量に依存するので、得られる効果は極く限定的なものとなる。そのため、前記の防音材を設置すると、1000Hzを超える高周波側の騒音のみが吸音され、低周波側の騒音が目立つこととなる。
【0008】
防音材が十分な吸音性能を発揮できない場合、エンジンルーム内には大きな反響音が響き、遮音性能も十分でない場合には、減衰しきれないエネルギーがエンジンルームの壁面・上面・下面を振動させ、さらに大きな騒音が発生することもある。
【0009】
薄い防音材厚さで比較的低い周波数に防音効果を得る手段としては、防音材内側とエンジン壁面及び、防音材表面と対向するエンジンルーム内壁の間に空間(背後空気層)を設けたHelmholtz構造等の共鳴を利用したものが考えられるが、防音材が有する積層構造全体の共振現象を原理としているため、比較的低周波数域に吸音ピークがあると裏面側のエンジンルーム壁面はかえって大きく振動してしまい(共鳴透過)、特に、低周波音帯における音圧を抑制し難くなることが判明した。このため、低周波帯における音圧を抑制し得る防音カバーが求められるようになっている。
【0010】
一方、エンジンルーム内においてはエンジンの排気側壁面及び上面(燃焼排ガスが通過するエキゾースト・マニフォールド近傍)等が200〜230℃程度の温度に達し、係る高温の排熱によってエンジン本体の外部に設けられる樹脂部品や電装部品が損傷する場合が考えられる。
【0011】
このような状況下、本発明は、十分な防音性能を有するとともに耐熱性に優れた新規な防音カバーおよび係る防音カバーを有するエンジンユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明者等は、エンジンルーム内の騒音を吸収する防音用被覆材をエンジン上に設けた上で、係る防音用被覆材上に上記高温の排熱によるエンジン部品の損傷を抑制するためにさらに遮熱板を設けることを着想した。
しかしながら、本発明者等がさらに検討したところ、エンジン上に防音用被覆材および遮熱板を順次載置した場合には、エンジンへの放熱による影響(エンジンの温度上昇)は抑制されるものの、エンジンルーム内で反響する音も遮熱板によって反射される結果、防音用被覆材による防音効果(吸音効果)が著しく低減することが判明した。
【0013】
このような状況下、本発明者等がさらに検討したところ、防音用被覆材と、当該防音用被覆材上に離間して設けられた遮熱板とを有することを特徴とする防音カバーにより上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1)防音用被覆材と、当該防音用被覆材上に離間して設けられた遮熱板とを有することを特徴とする防音カバー、
(2)前記離間して設けられる防音用被覆材と遮熱板との距離が0mmを超え30mm以下である前記(1)に記載の防音カバー、
(3)前記遮熱板および防音用被覆材の対応する位置に各々設けられた挿通孔に挿通された支柱部材と、
前記支柱部材の遮熱板および防音用被覆材間に挿通された金属メッシュからなる中間緩衝部材とを少なくとも有する連結具により
前記遮熱板および防音用被覆材が離間しつつ保持されてなる
上記(1)または(2)に記載の防音カバー、
(4)前記防音用被覆材が、開孔率が0.1〜5.0%で開孔径が100〜1000μmである第一の多孔質フィルムと、一以上の弾性多孔質体層と、開孔率が0.1〜5.0%で開孔径が100〜1000μmである第二の多孔質フィルムとが、この順番に積層されてなるものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の防音カバー、
(5)前記防音用被覆材が、前記第一の多孔質フィルムの外表面側および第二の多孔質フィルムの外表面側の少なくとも一方にさらに表皮材を有する上記(4)に記載の防音カバー、
(6)前記第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムの通気抵抗が0.1〜10kPa・s/mである上記(4)または(5)に記載の防音カバー、
(7)前記防音カバーが自動車エンジン用防音カバーである上記(1)〜(6)のいずれかに記載の防音カバー、および
(8)自動車用エンジンと当該自動車用エンジンの少なくとも一部を覆う上記(1)〜(7)のいずれかに記載の防音カバーと、前記自動車用エンジンと防音カバーとを収容するエンジンルームとを有するエンジンユニットであって、前記自動車用エンジンと前記防音カバーを構成する防音用被覆材との間または前記防音カバーを構成する防音用被覆材とエンジンルームとの間に0.1〜30mmの距離の空隙を有すること
を特徴とするエンジンユニット
を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、遮熱板によって外部からの熱を遮蔽して優れた耐熱性を発揮し得るとともに、係る遮熱板が防音用被覆材上に離間して設けられてなることにより、防音用被覆材の下部に設置された被覆対象物から発せられる音はもちろん遮熱板上部から入射する音についても遮熱板と防音用被覆材間に設けた隙間から導入してその反響を抑制しつつ防音用被覆材によって優れた吸音性を発揮することができる。
このため、本発明によれば、十分な防音性能を有するとともに耐熱性に優れた新規な防音カバーおよび係る防音カバーを有するエンジンユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る防音カバーの構成を説明するための形態例の断面図である。
図2】遮熱板および防音用被覆材を連結具により連結した場合の防音カバーの構成を説明するための断面図である。
図3】遮熱板および防音用被覆材を複数の連結具を用いて連結した防音カバーの形態例を示す斜視図である。
図4】本発明に係る防音カバーを構成する防音用被覆材の形態例を示す図である。
図5】本発明の実施例および比較例における吸音特性を示す図である。
図6】本発明の実施例および比較例における耐熱性評価方法を説明するための図である。
図7】本発明の実施例および比較例における耐熱性評価結果を示す図である。
図8】本発明の参考例における吸音特性を示す図である。
図9】本発明の参考例における吸音特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
先ず、本発明に係る防音カバーについて説明する。
本発明に係る防音カバーは、防音用被覆材と、当該防音用被覆材上に離間して設けられた遮熱板とを有することを特徴とするものである。
【0018】
図1(a)は、本発明に係る防音カバー1の構成を説明するための形態例の断面図であって、図1(a)に示すように、本発明に係る防音カバー1は、防音用被覆材3と、当該防音用被覆材3上に離間して設けられた遮熱板2とを有するものである。
【0019】
本発明に係る防音カバーにおいて、遮熱板としては、金属板からなるものを挙げることができる。
上記金属板の構成材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン、ニッケル、金、銀、銅、鉄、モリブデン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、アルミニウムであることが好ましい。
【0020】
遮熱板の厚みは、特に制限されないが、所望の耐熱性(遮熱性)を発揮する上では、通常、0.02〜2mmであり、0.05〜1mmであることが好ましく、0.1〜0.5mmであることがより好ましい。
【0021】
遮熱板の形状も特に制限されないが、通常、後述する防音性被覆材が、被覆対象物に対応した形状を有することから、遮熱板としても、防音性被覆材に対応した形状を有するものであることが好ましい。
遮熱板が防音性被覆材に対応した形状を有することにより、遮熱板および防音性被覆材間を一定距離離間させた状態で容易に保持することができる。
【0022】
上記防音用被覆材と遮熱板との距離(図1に示す形態例における距離d)は、0mmを超え30mm以下であることが好ましく、2〜20mmであることがより好ましく、4〜14mmであることがさらに好ましい。
【0023】
本発明に係る防音カバーにおいて、遮熱板と防音用被覆材との距離が上記範囲内にあることにより、耐熱性に優れるとともに厚さが薄くても十分な防音性能を容易に発揮することができる。
【0024】
上述したように、本発明者等の検討によれば、エンジン上に防音用被覆材を載置した上で係る防音用被覆材上に遮熱板を直接載置した場合には(図1(a)における距離dが0mmである場合には)、エンジンルーム内で反響する音が遮熱板によって反射されてしまうことから、防音用被覆材による防音効果(吸音効果)が著しく低減してしまう。
一方、図1(b)に示すように、遮熱板2と防音用被覆材3とが一定距離だけ離間した状態で配置された場合には、防音用被覆材3の下部に配置したエンジンへの放熱による影響(エンジンの温度上昇)を抑制しつつ、エンジンから発せられる騒音n1はもちろんエンジンルーム内で反響する反射音n2についても遮熱板2と防音用被覆材3間に設けた隙間から導入して防音用被覆材3による防音効果(吸音効果)を効果的に発揮することができる。
また、図1(b)に示すように、遮熱板2によって外部からの熱伝導を遮蔽するとともに、遮熱板2および防音用被覆材3を一定距離だけ離間した状態で配置することにより、遮熱板2と防音用被覆材3間に設けた隙間に存在する空気により効果的に断熱効果を図ることもできる。
【0025】
このように、本発明によれば、遮熱板によって外部からの熱を遮蔽する遮熱性を発揮するとともに、係る遮熱板が防音用被覆材上に離間して設けられてなることにより空気による断熱効果を発揮して優れた耐熱性を発揮することができ、さらに防音用被覆材の下部に設置された被覆対象物から発せられる音はもちろん遮熱板上部から入射する音についても遮熱板と防音用被覆材間に設けた隙間から導入して防音用被覆材によって優れた吸音性を発揮することができる。
【0026】
本発明に係る防音カバーにおいて、遮熱板と防音用被覆材とを離間しつつ配置する手段も特に制限されないが、適宜、遮熱板および防音用被覆材を離間させつつ保持する連結具により保持することが好ましい。
【0027】
本発明に係る防音カバーは、遮熱板および防音用被覆材の対応する位置に各々設けられた挿通孔に挿通された支柱部材と、上記支柱部材の遮熱板および防音用被覆材間に挿通された金属メッシュからなる中間緩衝部材とを少なくも有する連結具により、上記遮熱板および防音用被覆材が離間しつつ保持されてなるものであることが好ましい。
【0028】
図2は、本発明に係る防音カバーの形態例において、遮熱板2および防音用被覆材3を連結具4により連結した場合の防音カバー1の構成を説明するための断面図である。
【0029】
図2に例示する防音カバー1は、遮熱板2および防音用被覆材3の対応する位置に各々設けられた挿通孔に挿通された支柱部材tと、上記支柱部材tの遮熱板2および防音用被覆材3間に挿通された金属メッシュからなる中間緩衝部材mbとを少なくも有する連結具4により、上記遮熱板2および防音用被覆材3が離間しつつ保持されてなるものである。
【0030】
上記連結具を構成する支柱部材は、遮熱板および防音用被覆材を中間緩衝部材を介して挿通し得るものであれば特に制限されない。
支柱部材としては、円筒形状または円柱形状を有するものが好ましい。
支柱部材のサイズは、保持対象となる遮熱板および防音用被覆材のサイズ等に応じて適宜決定すればよい。
【0031】
上記連結具を構成する中間緩衝部材は金属メッシュからなる。
上記金属メッシュを構成する線材の構成材料は、アルミニウム、ステンレス鋼、鉄、銅、真鍮、錫、亜鉛、アルミニウム合金等から選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0032】
上記金属メッシュ(金属網)は、金属線を縦横にニット編みして絡み合わせたものであり、その形態としては、平織金網、綾織金網、平畳織金網、綾畳織金網等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0033】
金属メッシュからなる中間緩衝部材は、上記支柱部材を挿通し得る挿通孔を有するものであればその全体形状は制限されないが、全体形状が中央に挿通孔を有する円板形状(リング形状)であることが好ましい。
【0034】
中間緩衝部材の厚みは、遮熱板および防音用被覆材を離間させる距離に応じて適宜決定すればよい。
【0035】
上記中間緩衝部材を有する連結具を用いて遮熱板および防音用被覆材を一定距離離間しつつ保持することにより、中間緩衝部材を構成する金属メッシュが金属線の絡み合いにより耐熱性を発揮しつつ好適な弾力を示し、振動等を生じた場合であっても遮熱板や防音用被覆材の損傷を好適に抑制することができる。
【0036】
本発明に係る防音カバーが、遮熱板および防音用被覆材を一定距離離間しつつ保持する手段として上記連結具を有する場合、図2に例示するように、連結具4は、遮熱板2の上部(遮熱板2の中間緩衝部材mbを設置する側とは反対側)に別途上部緩衝部材obを有するものであってもよく、防音用被覆材3の下部(防音用被覆材3の中間緩衝部材mbを設置する側とは反対側)に別途下部緩衝部材ubを有するものであってもよい。
【0037】
上部緩衝部材および下部緩衝部材も、中間緩衝部材と同様に金属メッシュからなるものが好ましい。
上記金属メッシュを構成する線材の構成材料や金属メッシュを構成する金属線の織形状の好適な態様は上記中間緩衝部材の説明で述べたとおりである。
また、上部緩衝部材および下部緩衝部材は、上記支柱部材を挿通し得る挿通孔を有するものであればその全体形状は制限されないが、全体形状が中央に挿通孔を有する円板形状(リング形状)であることが好ましい。
【0038】
上部緩衝部材および下部緩衝部材の厚みは、特に制限されない。
上部緩衝部材の厚みは、0.5〜5mmであることが好ましく、1〜3mmであることがより好ましく、1.5〜2.5mmであることがさらに好ましい。
下部緩衝部材の厚みは、0.5〜5mmであることが好ましく、1〜3mmであることがより好ましく、1.5〜2.5mmであることがさらに好ましい。
【0039】
連結具が上記中間緩衝部材を有するとともに、上部緩衝部材または下部緩衝部材を有することにより、振動等を生じた場合であっても中間緩衝部材とともに上記緩衝部材または下部緩衝部材が好適な弾力を示し、遮熱板や防音用被覆材の損傷を好適に抑制することができる。
【0040】
図2においては、連結具4が、緩衝部材として、(1)中間緩衝部材mbとともに上部緩衝部材obおよび下部緩衝部材ubの両者を有する態様について例示しているが、本発明において、連結具は、緩衝部材として、(2)中間緩衝部材mbとともに上部緩衝部材obのみを有する態様であってもよいし、(3)中間緩衝部材mbとともに下部緩衝部材ubのみを有する態様であってもよいし、(4)中間緩衝部材のみを有する(上部緩衝部材obまたは下部緩衝部材ubを有さない)態様であってもよい。
【0041】
本発明に係る防音カバーにおいては、図2に例示するように、連結具4の端部にフランジ形状等の形状を有する蓋部fを有するものが好ましい。
連結具が蓋部を有するものであることにより、蓋部f、f間に遮熱板2、中間緩衝部材mbおよび防音用被覆材3を円筒部材tに挿通した状態で隙間等を生じることなく安定して積層配置することができる。
【0042】
図3は、本発明に係る防音カバーの具体例として、遮熱板2および防音用被覆材3を複数の連結具4を用いて距離dだけ離間させた状態で保持した防音カバー1の斜視図を示すものである。
図3に例示するように、本発明に係る防音カバーにおいては、複数の連結具4を使用することにより、遮熱板2および防音用被覆材3を一定距離離間させた状態で安定して保持することができる。
【0043】
本発明に係る防音カバーにおいて、防音用被覆材としては、無機繊維または有機繊維を含むマット材を有するものであれば特に制限されない。
本発明に係る防音カバーにおいて、防音用被覆材としては、開孔率が0.1〜5.0%で開孔径が100〜1000μmである第一の多孔質フィルムと、一以上の弾性多孔質体層と、開孔率が0.1〜5.0%で開孔径が100〜1000μmである第二の多孔質フィルムとが、この順番に積層されてなるものであることが好ましい。
本発明に係る防音カバーが、上記特定の防音用被覆材を有するものであることにより、厚さが薄くても十分な防音性能を容易に発揮することができる。
【0044】
図4は、本発明に係る防音カバーを構成する防音用被覆材の形態例を示す図(断面図)である。
図4(a)に例示する防音用被覆材5は、第一の多孔質フィルムS1と、弾性多孔質体層Mと、第二の多孔質フィルムS2とが順次積層された積層材からなる。
上記弾性多孔質体層は、複数の弾性多孔質体の積層物からなるものであってもよい。
すなわち、図4(b)に例示するように、防音用被覆材5は、第一の多孔質フィルムS1と、弾性多孔質体m、mからなる弾性多孔質体層Mと、第二の多孔質フィルムS2とが順次積層された積層材からなるものであってもよい。
弾性多孔質体層が複数の弾性多孔質体の積層物からなる場合、弾性多孔質体(図4(b)に例示する弾性多孔質体m)の積層数は、2〜5が好ましい(図4(b)の例示においては弾性多孔質体mの積層数は「2」である)。
【0045】
上記防音用被覆材において、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムの構成材料としては特に制限されず、所望の細孔分布を有するものを適宜選択すればよい。
第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムとしては、柔軟性を有し、後述する弾性多孔質体層を挟持した状態で、使用環境下において著しい熱収縮等を生じないものが好ましい。
【0046】
このような多孔質フィルムとしては、ポリエチレンフィルムや、6−ナイロン製フィルム、6,6−ナイロン製フィルム、11−ナイロン製フィルム、12−ナイロン製フィルム等から選ばれるポリアミド(ナイロン)フィルムや、ポリエステルフィルム等の有機フィルム、短繊維不織布、長繊維クロス及び抄造紙等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0047】
上記防音用被覆材において、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムは、多層フィルムにより構成されていてもよく、多層フィルムとしては、例えば、ポリアミド(ナイロン)フィルムの両面に低圧ポリエチレン接着層が配置されるように製造した共押し出し多層フィルム等を挙げることができる。
上記多層フィルムを使用することにより、後述する弾性多孔質体層への密着性等を容易に向上することができる。
また、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムは、その通気性を制御するために、表面に適宜塗布剤を塗布加工したものであってもよい。
【0048】
上記防音用被覆材において、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムは、開孔率が、0.1〜5.0%であるものであり、0.1 〜1.0%であるものが好ましく、0.1〜0.5%であるものがより好ましい。
また、上記防音用被覆材において、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムは、開孔径が100〜1000μmであるものであり、300〜800μmであるものが好ましく、500〜700μmであるものがより好ましい。
【0049】
本出願書類において、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムの開孔率(%)は、各多孔質フィルムの表面をマイクロスコープ((株)キーエンス、VHX−500)で観察した際に(孔の全面積/多孔質フィルムの面積)×100により算出される開孔割合の任意の50箇所における算術平均値を意味する。
なお、上記孔の全面積は、マイクロスコープにより測定した値を意味する。
【0050】
また、本出願書類において、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムの開孔径は、多孔質フィルムの表面をマイクロスコープで観察した際における50個の孔の最大直径の算術平均値を意味する。
【0051】
上記防音用被覆材を構成する第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムが、上記開孔率および開孔径を有するものであることにより、外部から被覆材を音が通過する際の流れ抵抗を容易に制御し、所望の耐熱性を発揮しつつ、所望周波数、特に周波数400Hz以上800Hz未満における低周波音の音圧を容易に低減することができる。
すなわち、防音用被覆材の両主表面側に微通気性フィルム材(第一の多孔質フィルムおよび第二の多孔質フィルム)を配置することで、防音用積層材全体の流れ抵抗を調節し吸音性能を向上し得ると考えられる。
【0052】
上記防音用被覆材において、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムの開孔部は、多孔質フィルムを構成するフィルム材をニードルパンチ処理したり熱剣山ロールを通過させる等の開孔処理を施すことにより形成することができ、上記多孔質フィルムの開孔率や開孔径も、上記開孔処理時の処理条件を制御することにより容易に制御することができる。
【0053】
上記防音用被覆材において、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムは、通気抵抗が、0.1〜10kPa・s/mであるものが好ましく、0.5〜5.0kPa・s/mであるものがより好ましく、0.5〜1.5kPa・s/mであるものがさらに好ましい。
【0054】
本出願書類において、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムの通気抵抗は、多孔質フィルムの主表面に対して、垂直方向に0.4cc/ cm / sで空気を通過させたときにおける入口側および出口側における気圧を各々流れ抵抗測定器(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック(株)製)で測定したときにおける両者の差(差圧)を流速で除したものを意味する。
【0055】
上記防音用被覆材が、上記通気抵抗を有する第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムを有するものであることにより、外部から被覆材を音が通過する際の流れ抵抗を容易に制御して所望周波数、特に周波数400Hz以上800Hz未満における低周波音の音圧を容易に低減することができる。
【0056】
上記防音用被覆材において、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムのヤング率は、0.5GPa以下が好ましく、0.1GPa以下がより好ましく、0.05GPa以下がさらに好ましく、0.01GPa以下が一層好ましい。
多孔質フィルムのヤング率が上記範囲内にあることにより、多孔質フィルムが所望の柔軟性を有し、可撓性等に優れ、吸音性に優れた防音用被覆材を容易に提供することができる。
【0057】
本出願書類において、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムのヤング率は、JIS K7127の規定に準拠して測定された値を意味する。
【0058】
上記防音用被覆材において、第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムの厚みは、10〜100μmであることが好ましく、10〜80μmであることがより好ましく、30〜70μmであることがさらに好ましい。
第一の多孔質フィルムまたは第二の多孔質フィルムの厚みが上記範囲内にあることにより、柔軟性に優れるとともに防音用被覆材の薄型化(コンパクト化)を容易に図ることができる。
【0059】
上記防音用被覆材は、中央部に弾性多孔質体層を有するとともに、その外側に各々第一の多孔質フィルムおよび第二の多孔質フィルムを有することにより、外部から被覆材を音が通過する際の流れ抵抗を容易に制御して所望周波数、特に周波数400Hz以上800Hz未満における低周波音の音圧を容易に低減することができる。
これは、外部から被覆材中を通過しようとする音に対し、多孔質フィルムに設けられた空孔により、専ら周波数が800〜2000Hz程度の高周波音の音波は多孔質フィルム表面で反射されずに内部に取り込まれ、周波数が400Hz以上800Hz未満の低周波音の音波は多孔質フィルムに遮られて空気中を伝搬する音エネルギーが振動エネルギーに変換され、多孔質フィルムおよび被覆材全体の振動により吸音されるためと考えられる。
【0060】
上記防音用被覆材は、上記弾性多孔質体層の上面側および下面側に各々第一の多孔性フィルムおよび第二の多孔質フィルムを有するものであることから、防音用被覆材の下面側から上面側に通過する音のみならず上面側から下面側に通過する音に対しても吸音特性を発揮することができる。
このため、例えば上記防音用被覆材を自動車エンジン用防音カバーに使用した場合、自動車エンジンから発せられた音が防音用被覆材の下面側から上面側に通過する際に、自動車エンジンから発せられる周波数400Hz以上800Hz未満の低周波音の音波は被覆材の下側に配置された多孔質フィルムに遮られて吸音され、周波数400Hz以上800Hz未満の低周波音の一部が上記防音用被覆材を通過した場合であっても、自動車用エンジンと防音用被覆材とを収容するエンジンルームの壁面等で反射して防音用被覆材の上面側から下面側に通過する際に、同様に被覆材の上側に配置された多孔質フィルムによって振動エネルギーに変換され、効果的に吸音性能を発揮することができる。
【0061】
上記防音用被覆材は、第一の多孔質フィルムと、一以上の弾性多孔質体層と、第二の多孔質フィルムとが、この順番に積層されてなるものである。
【0062】
上記防音用被覆材において、弾性多孔質体層が複数設けられる場合、より効果的に音圧を低減することができる。
【0063】
上記防音用被覆材において、弾性多孔質体層を構成する弾性多孔質体としては、繊維集成体、フェルトおよび樹脂発泡体から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0064】
上記繊維集成体としては、例えば、グラスウール(ガラス繊維)、ロックウール、シリカ繊維、シリカアルミナセラミックファイバー、アルミナ繊維、ムライト繊維等の無機短繊維からなる集成体を挙げることができる。
フェルトとしては、上記各種短繊維の一種以上を混合したものをニードルパンチ等の手段で一体化したものを挙げることができ、具体的には、もう集成体を形成する無機短繊維からなる無機繊維製フェルト(例えば、グラスウールからなるグラスフェルト(ガラス繊維フェルト)等の他、ポリエチレンテレフタレートフェルト等のポリエステル繊維フェルト、ナイロン繊維フェルト、ポリエチレン繊維フェルト、ポリプロピレン繊維フェルト、アクリル繊維フェルト、アラミド繊維フェルト、シリカーアルミナセラミックスファイバーフェルト、シリ力繊維フェルト、綿、羊毛、木毛、クズ繊維等を熱硬化性樹脂でフェルト状に加工したレジンフェルト等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
フェルトとしては、無機繊維製フェルトが好ましく、密度が10〜50kg/mであるものが好ましく、15〜50kg/mであるものより好ましく、20〜35kg/mであるものがさらに好ましく、人造鉱物繊維の吹き付け物や成形物を使用することができる。
上記樹脂発泡体としては、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、フェノールフォーム、メラミンフォーム等の樹脂フォームから選ばれる一種以上や、二トリルブタジエンラバー、クロロプレンラバー、スチレンラバー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム等を連泡状に発泡させるか、発泡後にクラッシング加工などにより連泡化した連続気泡体から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0065】
耐熱性を考慮した場合には、上記弾性多孔質体としては、ガラス繊維等の無機繊維またはアラミド繊維を構成繊維として含むものが好ましく、無機繊維を含むものがより好ましい。
【0066】
上記防音用被覆材において、弾性多孔質体層を構成する弾性多孔質体としては、ガラス繊維を構成繊維として含むものが好ましく、上記ガラス繊維としては、繊維径が、0.1〜4μmであるものが好ましく、0.1〜2μmであるものがより好ましく、0.1〜1μmであるものがさらに好ましい。
上記繊維径を有するガラス繊維は、遠心法または火炎法で製造することができる。
【0067】
なお、本出願書類において、ガラス繊維の繊維径は、マイクロスコープにより測定した20本のガラス繊維の最大径の算術平均値を意味する。
【0068】
上記防音用被覆材において、弾性多孔質体層を構成する弾性多孔質体が上記繊維径を有するガラス繊維を構成繊維として含むことにより、所望の耐熱性、難燃性をより容易に発揮することができる。
【0069】
上記防音用被覆材において、弾性多孔質体層を構成する弾性多孔質体が、構成繊維として上記繊維径を有するガラス繊維を構成繊維として含む場合、弾性多孔質体は、ガラス繊維を、例えばノボラック、レゾール、ベンジリックエーテル系等から選ばれるフェノール樹脂や、尿素変性等の変性フェノール樹脂等からなるバインダーで固定してなるものであってもよいし、または、ニードルパンチ等の処理によりガラス繊維を厚さ方向に絡めることにより製造してなるものであってもよい。
【0070】
上記防音用被覆材において、弾性多孔質体層を構成する弾性多孔質体として、ポリエステル繊維を構成繊維として含むものである場合、当該ポリエステル繊維としては難燃性ポリエステル繊維が好ましい。
【0071】
上記難燃性ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCHDT)またはポリエチレンナフタレート(PEN)等を主たる繰返し単位とするポリエステルを挙げることができる。
【0072】
上記難燃性ポリエステル繊維としては、公知のものを挙げることもでき、例えば、特開昭51−82392号公報、特開昭55−7888号公報、特公昭55−41610号公報等に記載されたものを挙げることができる。
【0073】
上記防音用被覆材において、弾性多孔質体層を構成する弾性多孔質体が、ポリエステル繊維を構成繊維として含むものである場合、当該ポリエステル繊維としては難燃性ポリエステルと熱接着性ポリエステルとが複合されてなる難燃性複合繊維であってもよい。
【0074】
上記難燃性ポリエステルと熱接着性ポリエステルとが複合されてなる難燃性複合繊維において、難燃性ポリエステルとしては、上述した難燃性ポリエステル繊維を構成するものと同様のものを挙げることができる。
また、上記難燃性複合繊維において、熱接着性ポリエステルは、難燃性ポリエステルのバインダーとして機能するものであって、難燃性ポリエステルの融点よりも低い融点を有し、難燃性ポリエステルの融点よりも少なくとも20℃低い融点を有するものが好ましい。
上記融点の差が20℃未満であると、難燃性複合繊維の作製時に高温処理が必要になるために難燃性ポリエステルの配向性が低下し易くなり、熱接着性ポリエステルによる補強効果が低減して難燃剤内添繊維の耐久性が低下し易くなるとともに、母材である難燃性ポリエステルの物性低下を生じ易くなる。
【0075】
上記熱接着性ポリエステルは、融点が110℃〜220℃であるものが好ましく、130℃〜200℃であるものがより好ましい。熱接着性ポリエステルの融点が上記範囲内にあることによって補強効果を発揮し易くなる。
【0076】
なお、本出願書類において、難燃性ポリエステルの融点および熱接着性ポリエステルの融点とは、繊維化物を熱板上に十字状に配置し、室温から5℃/分で昇温したときに、配向により生じる縞模様が焼失する温度を意味するものとする。
【0077】
上記熱接着性ポリエステルとしては、特に制限されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバチン酸、シクロヘキシレンジカルボン酸等から選ばれる一種以上の酸成分と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール等から選ばれる一種以上のグリコール成分とをエステル結合させてなるものが挙げられる。
【0078】
上記防音用被覆材において、弾性多孔質体層を構成する弾性多孔質体が、上記難燃性ポリエステルおよび熱接着性ポリエステルが複合されてなる難燃性複合繊維を構成繊維として有するものである場合、難燃性ポリエステルと熱接着性ポリエステルの複合割合は特に制限されないが、難燃性ポリステルの含有割合が20〜80質量%であるものが好ましく、30〜70質量%であるものがより好ましく、40〜60質量%であるものがさらに好ましい。
難燃性複合繊維を構成する難燃性ポリエステルの含有割合が上記範囲内にあることにより、難燃性複合繊維に対して所望の難燃性を容易に付与することができる。
【0079】
上記難燃性ポリエステルおよび熱接着性ポリエステルの複合形態としては、難燃性ポリエステルをコア成分とし熱接着性ポリエステルをシース成分とするシースコア型、難燃性ポリエステルおよび熱接着性ポリエステルが隣接配置された層状多層構造型やサイドバイサイド型等を挙げることができる。
【0080】
上記防音用被覆材において、弾性多孔質体層の厚みは、0.5〜20mmであることが好ましく、1.5〜15mmであることがより好ましく、3〜10mmであることがさらに好ましい。
上記防音用被覆材において、弾性多孔質体層が複数層からなるものである場合は、複数の弾性多孔質体層の厚みの合計が上記範囲内にあればよい。
【0081】
上記防音用被覆材において、弾性多孔質体層の厚みが上記範囲内にあることにより、柔軟性に優れるとともに防音用被覆材の薄型化(コンパクト化)を図りつつ十分な吸音性を容易に発揮することができる。
【0082】
上記防音用被覆材において、弾性多孔質体層を構成する弾性多孔質体の嵩密度は、0.001〜1.2g/cmであることが好ましく、0.01〜0.5g/cmであることがより好ましく、0.025〜0.1g/cmであることがさらに好ましい。
上記嵩密度は、弾性多孔質体の構造および厚み等に応じて、所望の吸音性を有するものから適宜選択される。
【0083】
上記密度を達成する上で、弾性多孔質体層を構成する弾性多孔質体の目付は、10〜1000g/mであることが好ましく、15〜500g/mであることがより好ましく、25〜250g/mであることがさらに好ましい。
弾性多孔質体の目付が上記範囲内にあることにより、軽量で所望形状を有する防音用被覆材を容易に提供することができる。
【0084】
上記防音用被覆材は、外部から被覆材中を通過しようとする音に対し、専ら周波数が400Hz以上800Hz未満の低周波音を、多孔質フィルムにより振動エネルギーに変換して吸音するとともに、専ら周波数が800〜2000Hz程度の高周波音を、上記多孔質フィルムの空孔を通過させた後、内部に配置した弾性多孔質体層により吸音することができる。
【0085】
上記防音用被覆材は、上記弾性多孔質体層の上面側および下面側に各々第一の多孔性フィルムおよび第二の多孔質フィルムを有するものであることから、防音用被覆材の下面側から上面側に通過する音のみならず上面側から下面側に通過する音に対しても吸音特性を発揮することができる。
このため、例えば上記防音用被覆材を自動車エンジン用防音カバーに使用した場合、自動車エンジンから発せられた音が防音用被覆材の下面側から上面側に通過する際に、自動車エンジンから発せられる周波数800〜2000Hzの音波は被覆材の下側に配置された多孔質フィルムを通過して内部に配置された弾性多孔質体層で吸音され、周波数800〜2000Hzの音波の一部が上記防音用被覆材を通過した場合であっても、自動車用エンジンと防音用被覆材とを収容するエンジンルームの壁面等で反射して防音用被覆材の上面側から下面側に通過する際に、同様に被覆材の上側に配置された多孔質フィルムを通過して同様に内部に配置された弾性多孔質体層で吸音されてさらに効果的に吸音性能を発揮することができる。
そして、本発明に係る防音カバーにおいては、遮熱板が防音用被覆材上に離間して設けられてなることにより、上記反射音が防音用被覆材の上面側から下面側に通過する際に、遮熱板と防音用被覆材間に設けた隙間から反射音を導入してその反響を抑制しつつ防音用被覆材によって優れた吸音性を発揮することができる。
【0086】
上記防音用被覆材は、第一の多孔質フィルムの外表面側および第二の多孔質フィルムの外表面側の少なくとも一方にさらに表皮材を有するものであってもよい。
上記防音用被覆材において、表皮材は、第一の多孔質フィルムの外表面側および第二の多孔質フィルムの外表面側の少なくとも一方に設けられていることが好ましく、両者に設けられていることがより好ましい。
【0087】
上記防音用被覆材において、第一の多孔質フィルムの外表面側および第二の多孔質フィルムの外表面側の両者に表皮材が設けられる場合、両表皮材は同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0088】
表皮材としては、温度150℃で溶融や著しい収縮等の不具合が生じないのであれば、難燃性ポリエステル繊維製不織布、無機長繊維クロス、無機繊維製シートや開孔処理を施した金属箔樹脂シート等から選ばれる一種以上を配置することができる。
【0089】
上記難燃性ポリエステル繊維製不織布を構成する難燃性ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCHDT)またはポリエチレンナフタレート(PEN)等を主たる繰返し単位とするポリエステルを挙げることができる。
上記難燃性ポリエステル繊維としては、公知のものを挙げることもでき、例えば、特開昭51−82392号公報、特開昭55−7888号公報、特公昭55−41610号公報等に記載されたものを挙げることができる。
【0090】
また、無機長繊維クロスとしては、ガラス繊維、シリカ繊維、バサルト繊維、シリカアルミナセラミックファイバー、アルミナ繊維、ムライト繊維等の無機繊維から選ばれる一種以上をクロス状に編み込んだものを挙げることができ、無機繊維製シートとしては、上記無機繊維からから選ばれる一種以上をニードルパンチ等の手段で一体化したものを挙げることができる。
さらに、開孔処理を施した金属箔樹脂シートとしては、表面に微細な開孔を施して音の反射を抑制したアルミニウム箔等の金属箔等が、意匠性や振動による繊維の飛散防止等の観点から好適である。
【0091】
表皮材の通気抵抗は、入射音波の表面側の反射を抑制するために、繊維飛散防止等の効果を妨げない範囲内のものであればよく、1.0kPa・s/m以下であるものが好ましく、0.5kPa・s/m以下であるものがより好ましく、0.3kPa・s/m以下であるものがさらに好ましい。
上記通気抵抗は、繊維も編み方や金属箔の開孔の程度等により適宜調整することができる。
【0092】
本出願書類において、表皮材の通気抵抗は、表皮材の主表面に対して垂直方向に0.4cc/cm/sで空気を通過させたときにおける入口側および出口側における気圧を各々流れ抵抗測定器(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック(株)製)で測定したときにおける両者の差(差圧)を流速で除したものを意味する。
【0093】
無機繊維製シートとしては、例えば、ガラス繊維および樹脂バインダーを含むガラス繊維フェルトを挙げることができ、係るガラス繊維フェルトを構成する樹脂バインダーとしては、含有量が5質量%未満であるノボラック、レゾール、ベンジリックエーテル系等のフェノール樹脂や、含有量が10〜20質量%である尿素変性等の変性フェノール樹脂を挙げることができる。
【0094】
表皮材として無機繊維製シートを用いた場合、所望の吸音性を発揮しつつ、優れた耐熱性および断熱性を容易に発揮することができる。
【0095】
また、表皮材として金属箔を用いた場合、所望の吸音性を発揮するために、開孔率が、3%〜7%であるものが好ましく、4%〜7%であるものがより好ましく、5%〜7%であるものがより好ましい。
また、上記防音用被覆材において、金属箔には止液性が確保できる範囲で、開孔径が、1μm以上であるものが好ましく、5μm以上であるものがより好ましく、10μm以上であるものがさらに好ましい。
表皮材の開孔率や開孔径は、上述した多孔質フィルムの開孔率や開孔径の測定方法と同様の測定方法で測定することができる。
【0096】
上記防音用被覆材が、表皮材を有するものである場合、形状安定性や意匠性を確保し易くなるとともに、使用時において被覆材を構成する繊維等の飛散を抑制し得るとともに、容易に撥水性を発揮することができる。
【0097】
防音用被覆材は、厚さが、5〜20mmであるものが適当であり、10〜20mmであるものがより適当であり、15〜20mmであるものがさらに適当である。
上記防音用被覆材は、厚さが薄くても十分な防音性能を発揮することができる。
【0098】
上記防音用被覆材が、上記通気抵抗を有するものであることにより、流れ抵抗を容易に制御して所望周波数、特に周波数400Hz以上800Hz未満近傍における音圧および周波数800〜2000Hz近傍における音圧を容易に低減することができる。
【0099】
上記防音用被覆材は、例えば、得ようとする防音用被覆材の構成部材に対応する形成材の全部を順次積層した状態で所定形状に熱圧成形することにより作製することができる。
また、上記防音用被覆材は、例えば、得ようとする防音用被覆材の構成部材に対応する全形成材のうち一部のみを順次積層した状態で所定形状に熱圧成形したものと、得ようとする防音用被覆材の構成部材に対応する他の形成材を順次積層した状態で所定形状に熱圧成形したものを、適宜接着剤等で固定することにより作製することができる。
【0100】
具体的には、上記防音用被覆材として、例えば、(1)第一の多孔質フィルム、(2)弾性多孔質体層、(3)第二の多孔性フィルムがこの順番で順次積層されてなる防音用被覆材を形成する場合、これ等を各々形成する形成材をこの順番で順次積層した状態で所定形状に熱圧成形することにより作製することができる。
また、(1)第一の表皮材、(2)第一の多孔質フィルム、(3)弾性多孔質体層、(4)第二の多孔質フィルムがこの順番で順次積層されてなる防音用被覆材を形成する場合、例えば、これ等を各々形成する形成材をこの順番で順次積層した状態で所定形状に熱圧成形することにより作製することができる。
さらに、(1)第一の表皮材、(2)第一の多孔質フィルム、(3)弾性多孔質体層、(4)第二の多孔質フィルム、(5)第二の表皮材がこの順番で順次積層されてなる防音用被覆材を形成する場合、例えば、これ等を各々形成する形成材をこの順番で順次積層した状態で所定形状に熱圧成形することにより作製することができる。
加えて、(1)第一の表皮材、(2)第一の多孔質フィルム、(3)第一の弾性多孔質体層、(4)第二の弾性多孔質体層、(5)第二の多孔質フィルム、(6)第二の表皮材がこの順番で順次積層されてなる防音用被覆材を形成する場合、例えば、これ等を各々形成する形成材をこの順番で順次積層した状態で所定形状に熱圧成形することにより作製することができる。
【0101】
本発明に係る防音カバーは、例えば、自動車エンジン用防音カバーとして好適に使用することができる。
本発明に係る防音カバーを自動車エンジン用防音カバーとして使用する場合、例えば、エンジンの排気側壁面および上面の少なくとも一部に配置することにより、好適な吸音特性を容易に発揮することができる。
【0102】
本発明によれば、遮熱板によって外部からの熱を遮蔽して優れた耐熱性を発揮し得るとともに、係る遮熱板が防音用被覆材上に離間して設けられてなることにより、防音用被覆材の下部に設置された被覆対象物から発せられる音はもちろん遮熱板上部から入射する音についても遮熱板と防音用被覆材間に設けた隙間から導入してその反響を抑制しつつ防音用被覆材によって優れた吸音性を発揮することができる。
このため、本発明によれば、十分な防音性能を有するとともに耐熱性に優れた新規な防音カバーを提供することができる。
【0103】
次に、本発明に係るエンジンユニットについて説明する。
本発明に係るエンジンユニットは、自動車用エンジンと当該自動車用エンジンの少なくとも一部を覆う本発明に係る防音カバーと、上記自動車用エンジンと防音カバーとを収容するエンジンルームとを有するエンジンユニットであって、上記自動車用エンジンと上記防音カバーを構成する防音用被覆材との間または前記防音カバーを構成する防音用被覆材とエンジンルームとの間に0.1〜30mmの距離の空隙を有することを特徴とするものである。
【0104】
本発明に係るエンジンユニットにおいて、本発明に係る防音カバーの詳細は上述したとおりである。
また、本発明に係るエンジンユニットにおいて、自動車用エンジンやエンジンルームは、公知のものを適宜採用することができる。
【0105】
本発明に係るエンジンユニットにおいて、自動車用エンジンと防音カバーを構成する防音用被覆材との間または防音用被覆材とエンジンルームとの間の距離(自動車用エンジンおよび防音用被覆材間に形成される隙間の幅または防音用被覆材およびエンジンルームの壁面間に形成される隙間)は、0.1mm以上であり、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましい。
【0106】
本発明に係るエンジンユニットにおいて、防音カバーを構成する防音用被覆材としては、上述したように、開孔率が0.1〜5.0%で開孔径が100〜1000μmである第一の多孔質フィルムと、一以上の弾性多孔質体層と、開孔率が0.1〜5.0%で開孔径が100〜1000μmである第二の多孔質フィルムとが、この順番に積層されてなるものが好ましい。
防音用被覆材が上記所定の開孔率および開孔径を有する第一の多孔質フィルムおよび第二の多孔質フィルムを有することにより、防音用被覆材を通過する音波に所定の流れ抵抗が生じ、自動車用エンジンと防音用被覆材との間または防音用被覆材とエンジンルームとの間の距離が上記範囲内にあることにより、自動車エンジンから発生して防音用被覆材を通過する音だけではなく、エンジンルームの壁面で反射し防音用被覆材を通過する音に対しても、多孔質フィルムによって効率的に振動へ変換され、エネルギーが減衰されることで、エンジンルーム内の音圧を好適に低減することができると考えられる。
【0107】
本発明によれば、耐熱性を有し、厚さが薄くても十分な防音性能を有する防音用被覆材を有する新規なエンジンユニットを提供することができる。
【0108】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0109】
(実施例1)
1.防音用被覆材の作製
(1)第一の表皮材として、ポリエステル繊維フェルト(前田工繊(株)製125H、繊維径10μm、密度125kg/m、目付量125g/m、厚さ1mm)と、
(2)第一の多孔質フィルムの形成材として、6−ナイロン製フィルム(宇部フィルム(株)製シュペレン35N-LL、密度900kg/m、厚さ0.07mm)を熱剣山ロールを通過させることによって開孔部を設けたフィルム(開孔率4.1%、開孔径290μm、流れ抵抗 0.10kPa・s/m)と、
(3)第一の弾性多孔質体の形成材として、ポリエステル繊維フェルト(高安(株)製S250-HSGYN、ポリエステル繊維の平均繊維径10μm、密度25kg/m、目付量250g/m、厚さ10mm)と、
(4)第二の弾性多孔質体の形成材として、ポリエステル繊維フェルト(高安(株)製S250-HSGYN、ポリエステル繊維の平均繊維径10μm、密度25kg/m、目付量250g/m、厚さ10mm)と、
(5)第二の多孔質フィルムの形成材として、6−ナイロン製フィルム(宇部フィルム(株)製シュペレン35N-LL、密度900kg/m、厚さ0.07mm)を熱剣山ロールを通過させることによって開孔部を設けたフィルム(開孔率4.1%、開孔径290μm、流れ抵抗0.10kPa・s/m)と、
(6)第二の表皮材として、ポリエステル繊維フェルト(前田工繊(株)製125H、繊維径10μm、密度125kg/m、目付量125g/m、厚さ1mm)とを、
この順番で順次配置し、5MPaの加圧力下、185℃で30秒間熱圧成形することにより、最大厚さ10mmの防音用被覆材を得た。
【0110】
2.防音カバーの作製
上記1.で作製した防音用被覆材に対応する形状に成形した厚さ0.4mmのアルミニウム板からなる遮熱板を作製した。
次いで、図2に符号4で示す連結具と対応する形態を有する連結具を用いて上記防音用被覆材と遮熱板とを離間させた状態で固定した。
すなわち、図2に示すように、下端部にフランジ状端部を有する内径21mmの円筒状の支柱部材tに対し、全体形状がリング状の厚さ2mmのSUS製下部緩衝部材ubを挿通した後、所定箇所に挿通孔を設けた上記1.で得た防音用被覆材と、全体形状がリング状の厚さ2mmのSU製中間緩衝部材mbと、所定箇所に挿通孔を設けた上記遮熱板と、全体形状がリング状の厚さ2mmのSUS製上部緩衝部材obとを順次挿通し最後に支柱部材の上側端部に蓋部としてワッシャを嵌挿して上記挿通した各部材を固定することにより、防音用被覆材と、当該防音用被覆材上に離間して設けられた遮熱板とを有する自動車エンジン用防音カバーを作製した。
【0111】
(実施例2〜実施例7)
実施例1の「2.防音カバーの作製」欄において、連結具を構成する中間緩衝部材mbの厚みを、各々、4mm(実施例2)、6mm(実施例3)、8mm(実施例4)、10mm(実施例5)、14mm(実施例6)、20mm(実施例7)に変更して、遮熱板と防音用被覆材との離間距離を変更した以外は各々実施例1と同様にして自動車エンジン用防音カバーを作製した。
【0112】
(比較例1)
実施例1の「2.防音カバーの作製」欄において、連結具で連結する際に中間緩衝部材mbを用いずに遮熱板と防音用被覆材とを連結して(遮熱板と防音用被覆材との距離が0mmとなるように連結して)遮熱板と防音用被覆材とを密着させた以外は、実施例1と同様にして自動車エンジン用防音カバーを作製した。
【0113】
(防音性評価)
実施例1〜実施例7および比較例1で得られた自動車エンジン用防音カバーを各々0.25mの平板状に切り出して測定サンプルとし、日本音響エンジニアリング(株)製残響室Ab−Lossにより、測定サンプルの側面をL字状のアルミ製アンクルを用いてシールした状態で、測定サンプルの背面(防音用被覆材側)に10mmのスペーサーを用いて、背後空気層を10mm設けた状態において、吸音率(残響室法吸音率)を測定した。
吸音率は、遮熱板の上部から音を入射させたときに200Hz〜5000Hzの範囲におけるISO354(2003)に基づくインパルス応答積分法を用いて測定した。結果を図5に示す。
【0114】
図5より、実施例1〜実施例7で得られた自動車エンジン用防音カバーは、遮熱板と防音用被覆材とが離間して設けられていることから、遮熱板上部から入射する音についても遮熱板と防音用被覆材間に設けた隙間から導入してその反響を抑制しつつ防音用被覆材によって優れた吸音性を発揮することができ、このために測定周波数領域全体に亘って十分な防音性能を有することが分かる。
一方、比較例1で得られた自動車エンジン用防音カバーは、遮熱板と防音用被覆材とが密着している(遮熱板と防音用被覆材とが離間していない)ために、500Hz以上の周波数領域における吸音性に劣ることが分かる。
【0115】
(実施例8〜実施例11)
実施例1の「2.防音カバーの作製」欄において、連結具を構成する中間緩衝部材mbの厚みを、各々、5mm(実施例8)、10mm(実施例9)、15mm(実施例10)、20mm(実施例11)に変更して、遮熱板と防音用被覆材との離間距離を変更した以外は各々実施例1と同様にして自動車エンジン用防音カバーを作製した。
【0116】
(比較例2)
実施例1の「1.防音用被覆材の作製」と同様の方法で防音用被覆材を作製し(遮熱板を設けることなくそのまま)自動車エンジン用防音カバーとした。
【0117】
(耐熱性評価)
図6に示すように、上記実施例8〜実施例11および比較例1〜比較例2で得られた自動車エンジン用防音カバーを各々100cmの平板状に切り出して遮熱板2および防音用被覆材3を有する防音カバーの測定サンプルとし、周囲をアルミニウム板で覆った風洞内の熱源Tから防音用被覆材3が30mm離間する位置であって、風洞内の下部との距離が10mm離間する位置に防音カバーを配置した。
熱源Hの下部の温度Toが400℃、風洞下部の防音カバーを配置していない箇所における温度Tが120℃である場合において、遮熱板2の表面温度T、防音用被覆材3の表面温度T、防音用被覆材3の裏面温度T、防音用被覆材3の下部における温度Tを各々測定した。結果を図7に示す。
【0118】
図7より、実施例8で得られた防音カバー(遮熱板2と防音用被覆材との距離dが5mmであるもの)、実施例9で得られた防音カバー(遮熱板2と防音用被覆材との距離dが10mmであるもの)、実施例10で得られた防音カバー(遮熱板2と防音用被覆材との距離dが15mmであるもの)および実施例11で得られた防音カバー(遮熱板2と防音用被覆材との距離dが20mmであるもの)は、特に防音用被覆材表面における温度Tの上昇を抑制し、優れた耐熱性を発揮し得るものであることが分かる。
一方、図7より、比較例1で得られた防音カバー(遮熱板2と防音用被覆材との距離dが0mmであるもの)は、防音用被覆材表面における温度T(=T)の上昇抑制効果が十分でなく、また比較例2で得られた防音カバー(遮熱板なし)は、防音用被覆材表面における温度Tが極端に高くなり、いずれも耐熱性に劣り防音用被覆材等の損傷を招き易いものであることが分かる。
【0119】
(参考例1)
実施例1の「1.防音用被覆材の作製」と同様の方法で防音用被覆材を作製した。
【0120】
(参考例2)
参考例1において、(2)第一の多孔質フィルムの形成材および(5)第二の多孔質フィルムの形成材の開孔率を1.7%、開孔径を438μm、流れ抵抗を0.57kPa・s/mに改めた以外は、参考例1と同様にして最大厚さ10mmの防音用被覆材を得た。
【0121】
(参考例3)
参考例1において、(2)第一の多孔質フィルムの形成材および(5)第二の多孔質フィルムの形成材の開孔率を1.3%、開孔径を690μm、流れ抵抗を1.27kPa・s/mに改めた以外は、参考例1と同様にして最大厚さ10mmの防音用被覆材を得た。
【0122】
(参考例4)
参考例1において、(2)第一の多孔質フィルムの形成材および(5)第二の多孔質フィルムの形成材の開孔率を0.4%、開孔径を308μm、流れ抵抗を9.99kPa・s/mに改めた以外は、参考例1と同様にして最大厚さ10mmの防音用被覆材を得た。
【0123】
(吸音性評価)
参考例1〜参考例4で得られた防音用被覆材を用い、JIS−A−1415の規定に基づきブリュエル・ケアー・ジャパン製4206型音響管を用いて、各自動車エンジン用防音カバーの背後に10mmの空気層を設けた状態で、500〜6400Hzにおける垂直入射吸音率を測定した。結果を図8に示す。
【0124】
図8より、参考例1〜参考例4で得られた本発明の防音カバーを構成し得る防音用被覆材は、耐熱材料からなる十分な耐熱性を有し、800〜2000Hz程度の周波数帯における音圧を抑制し得るとともに、400Hz以上800Hz未満程度の周波数帯における音圧も十分に抑制し得るものであることが分かる。
【0125】
(参考例5)
実施例1の「1.防音用被覆材の作製」と同様の方法で防音用被覆材を作製した。
参考例5で得られた防音用被覆材を用い、0.25mの平板状に切り出して測定サンプルとし、日本音響エンジニアリング(株)製残響室Ab−Lossにより、測定サンプルの側面をL字状のアルミ製アンクルを用いてシールした状態で、測定サンプルの背面(防音用被覆材側)に10mmのスペーサーを用いて、背後空気層を10mm設けた状態において、吸音率(残響室法吸音率)を測定した。
吸音率は、遮熱板の上部から音を入射させたときに200Hz〜5000Hzの範囲におけるISO354(2003)に基づくインパルス応答積分法を用いて測定した。結果を図9に示す。
【0126】
図9より、参考例5で得られた本発明の防音カバーを構成し得る防音用被覆材は、耐熱材料からなる十分な耐熱性を有し、800〜2000Hz程度の周波数帯における音圧を抑制し得るとともに、400Hz以上800Hz未満程度の周波数帯における音圧も十分に抑制し得るものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明によれば、十分な防音性能を有するとともに耐熱性に優れた新規な防音カバーを提供することができる。
【符号の説明】
【0128】
1 防音カバー
2 遮熱材
3、5 防音用被覆材
4 連結具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9