(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-91154(P2020-91154A)
(43)【公開日】2020年6月11日
(54)【発明の名称】距離測定装置
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20200515BHJP
G03B 35/10 20060101ALI20200515BHJP
【FI】
G01C3/06 110V
G03B35/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-227485(P2018-227485)
(22)【出願日】2018年12月4日
(71)【出願人】
【識別番号】596117887
【氏名又は名称】株式会社テクノホロン
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100211465
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【弁理士】
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 知行
(72)【発明者】
【氏名】三浦 元
【テーマコード(参考)】
2F112
2H059
【Fターム(参考)】
2F112AC03
2F112AC06
2F112BA11
2F112CA12
2F112DA28
2F112FA35
2H059AA09
2H059CA00
(57)【要約】
【課題】従来と比べて少ない部品数で構成できる距離測定装置を提供する。
【解決手段】プリズム、レンズ、撮像素子を備える。プリズムには、被写体からの光が異なる2方向から入射する。また、プリズムは、異なる2方向から入射した第1光及び第2光をそれぞれレンズに送る。レンズは、プリズムから送られる第1光及び第2光を、撮像素子の撮像面に結像させる。撮像面は、この撮像面を等分した領域として、隣り合う右側領域と左側領域を含む。そして、右側領域には、レンズから送られる第1光が結像され、左側領域には、レンズから送られる第2光が結像される。撮像素子は、第1光が結像された右側画像、及び第2光が結像された左側画像を制御部に送る。制御部は、撮像素子から送られる右側画像及び左側画像に基づいて、被写体と当該距離測定装置との間の距離を測定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心線を一致させて、この順に直線状に並んで配置されているプリズム、レンズ及び撮像素子と、
前記撮像素子と接続された制御部と
を備え、
前記プリズムには、被写体からの光が異なる2方向から入射し、
前記プリズムは、異なる2方向から入射した第1光及び第2光をそれぞれ前記レンズに送り、
前記レンズは、前記プリズムから送られる前記第1光及び前記第2光を、前記撮像素子の撮像面に結像させ、
前記撮像面は、当該撮像面を等分した領域として、隣り合う右側領域と左側領域を含み、前記右側領域には、前記レンズから送られる前記第1光が結像され、前記左側領域には、前記レンズから送られる前記第2光が結像され、
前記撮像素子は、前記第1光が結像された右側画像、及び前記第2光が結像された左側画像を前記制御部に送り、
前記制御部は、前記撮像素子から送られる前記右側画像及び前記左側画像に基づいて、前記被写体と当該距離測定装置との間の距離を測定する
ことを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記右側画像に含まれる前記被写体の像である右側部分画像の、前記右側画像内における第1位置座標、及び前記左側画像に含まれる前記被写体の像である左側部分画像の、前記左側画像内における第2位置座標を取得し、
前記第1位置座標と前記第2位置座標との差を視差として取得し、
前記視差を距離に変換する
ことによって、前記被写体と当該距離測定装置との間の距離を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の距離測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステレオカメラを用いた距離測定装置に関する
【背景技術】
【0002】
例えば自車両と先行車両との車間距離や自車両と障害物との離間距離を測定する技術として、ステレオカメラがある。従来のステレオカメラでは、被写体に対して視差を有する2つの撮像素子の撮影画像に基づいて、被写体の位置情報を演算していた。
【0003】
近年では、1つの撮像素子によって、2つ撮像素子を備えるステレオカメラと同等の三次元映像を撮影するステレオカメラが提案されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に係るステレオカメラでは、一対のミラー(第1ミラー及び第2ミラー)を設け、かつ1つの撮像素子の撮影領域を第1領域および第2領域に区画することによって、第1ミラーで反射された第1映像を撮像素子の第1領域で撮影し、第2ミラーで反射された第2映像を撮像素子の第2領域で撮影する。
【0005】
また、特許文献2に係るステレオカメラでは、プリズムや偏光ビームスプリッタを組み合わせることによって、直交する方向に偏光方向が異なる視差を有する2つの画像の光路を1つに重ね合わせ、重ね合わされた画像を1つの撮像素子に結像させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−199241号公報
【特許文献2】特開2002−347517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上述した特許文献1及び特許文献2に係るステレオカメラ(以下、従来のステレオカメラとも称する)は、主に自動車に設置され、車間距離等の測定に用いられる。しかしながら、ステレオカメラによって距離を測定するアプリケーションは、車載用途のみならず様々な産業分野に需要がある。車載用途以外には、例えば微細な部品の製造に用いられる産業ロボットのロボットハンド先端にステレオカメラを取り付け、ロボットハンドとロボットが扱う対象物(被写体)との間の距離を測定する等の用途が想定される。
【0008】
そして、車載用のステレオカメラが測定する車間距離等が例えば数m〜数十mの距離であるのに対して、ロボットハンド用のステレオカメラが測定する被写体までの距離は、例えば数十cmの短い距離である。そして、ロボットハンド用のステレオカメラでは、誤差範囲として例えば数mm又は数百μm程度の微少な測定精度が要求される。
【0009】
従来のステレオカメラでは、1つの撮像素子で視差を有する画像を取得するに当たり、光学系を構成する部品数が多くなる。この結果、従来のステレオカメラでは、ステレオカメラ全体としてのサイズが大きくなる。このため、コスト面で不利であり、かつ例えばロボットハンド先端に取り付けるに際して、空間的な制約が生じる。また、従来のステレオカメラでは、使用する部品数が多いため、各部品を組み合わせる際に、各部品間での光軸合わせが必要となり、精度調整に時間がかかる上に、上述した微少な測定精度を実現することが困難である。
【0010】
そこで、この発明の目的は、1つの撮像素子を備えるステレオカメラを利用した距離測定装置であって、従来と比べて少ない部品数で構成でき、短い距離の測定に適したステレオカメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、この発明による距離測定装置は、中心線を一致させて、この順に直線状に並んで配置されているプリズム、レンズ及び撮像素子と、撮像素子と接続された制御部とを備えて構成されている。プリズムには、被写体からの光が異なる2方向から入射する。また、プリズムは、異なる2方向から入射した第1光及び第2光をそれぞれレンズに送る。レンズは、プリズムから送られる第1光及び第2光を、撮像素子の撮像面に結像させる。撮像面は、この撮像面を等分した領域として、隣り合う右側領域と左側領域を含む。そして、右側領域には、レンズから送られる第1光が結像され、左側領域には、レンズから送られる第2光が結像される。撮像素子は、第1光が結像された右側画像、及び第2光が結像された左側画像を制御部に送る。制御部は、撮像素子から送られる右側画像及び左側画像に基づいて、被写体と当該距離測定装置との間の距離を測定する。
【発明の効果】
【0012】
この発明の距離測定装置では、1つのプリズム、1つのレンズ及び1つの撮像素子を用いることで、従来と比べて少ない部品数であっても、被写体との間の距離を測定することができる。このため、この発明の距離測定装置では、小型化に有利である。また、この発明の距離測定装置では、プリズム及びレンズ間、並びにレンズ及び撮像素子間の光軸を合わせれば良く、従来と比べて精度維持が容易である。従って、この発明の距離測定装置は、例えばロボットハンド先端に取り付けて使用する等、空間的に制約され、かつ微少な測定精度が要求される、短い距離の測定においても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】(A)及び(B)は、距離測定装置が備えるプリズムを示す概略図である。
【
図3】距離測定装置の制御部が行う処理フローを示すフローチャートである。
【
図4】距離測定装置の制御部が取得する画像を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例に過ぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0015】
(構成)
図1、
図2を参照して、この発明の距離測定装置の構成について説明する。
図1は、距離測定装置を示す概略図である。
図2(A)及び(B)は、距離測定装置が備えるプリズムを示す概略図である。
図2(A)は、プリズムを、
図1に示す矢印A1の方向から見た正面図であり、
図2(B)は、プリズムを、
図1に示す矢印A2の方向から見た側面図である。
【0016】
距離測定装置100は、プリズム10とレンズ20と本体部50と制御部40とを備えて構成される。本体部50は、撮像素子30を含んでいる。
【0017】
プリズム10、レンズ20及び撮像素子30は、中心線を揃えて、この順に直線状に並んで配置されている。
【0018】
プリズム10は、対向する一対の底面(上底面111及び下底面112)が二等辺三角形の三角柱形状である。従って、プリズム10は、高さ方向に沿った3つの面、すなわち各底面111及び112間において、対向する等辺の一方同士の間に挟まれた第1面101、対向する等辺の他方同士の間に挟まれた第2面102、及び対向する底辺同士の間に挟まれた第3面103を有している。
【0019】
なお、以下の説明では、プリズム10の上底面111及び下底面112並びに第3面103に沿った方向をX軸方向とし、プリズム10の第3面103に直交する方向をY軸とし、プリズム10の第1面101、第2面102及び第3面103に沿った方向(プリズム10の高さ方向)をZ軸方向とする。
【0020】
ここで、距離測定装置100を使用して被写体200と当該距離測定装置100との間の距離を測定するに際しては、プリズム10の第1面101及び第2面102側(X軸−Y軸平面視における上底面111及び下底面112の頂角側)を、被写体200に向ける。プリズム10には、被写体200からの光が、異なる2方向から入射される。被写体200からの光のうち、一方の方向からの第1光R1は、第1面101からプリズム10に入射する。また、被写体200からの光のうち、他方の方向からの第2光R2は、第2面102からプリズム10に入射する。
【0021】
第1面101から入射した第1光R1は、この第1面101で屈折し、第3面103から出射される。第1面101を経て第3面103から出射される光の経路を第1経路とする。また、第2面102から入射した第2光R2は、この第2面102で屈折し、第3面103から出射される。第2面102を経て第3面103から出射される光の経路を第2経路とする。
【0022】
また、第3面103がレンズ20の入射側面21と対向するように、プリズム10は配置されている。そして、プリズム10は、第3面103側でレンズ20と光学的に接続されている。第1経路を経てプリズム10から出射される光及び第2経路を経てプリズム10から出射される光は、ともにレンズ20に送られる。なお、プリズム10は、第3面103とレンズ20の入射側面21とが正対するように、また、後述する撮像素子30が撮影する画像内における被写体の位置を調整するために、レンズ20に対する相対的な配置を微調整することができる。
【0023】
レンズ20は、後述する撮像素子30の撮像面31に第1光R1及び第2光R2が結像される位置に設置されている。レンズ20は、プリズム10から送られる光(第1光R1及び第2光R2)を撮像素子30の撮像面31に結像させる。
【0024】
本体部50は撮像素子30を備える、例えばデジタルカメラであり、制御部40と接続されている。撮像素子30は、撮影した画像(撮像面31に結像された画像)をデジタルデータとして制御部40に送る。
【0025】
撮像面31は、X軸−Z軸平面視に沿った平面である。撮像面31は、この撮像面31を等分した領域として、X軸方向に沿って隣り合う右側領域と左側領域を含んでいる。そして、撮像面31の右側領域には、第1経路を経てプリズム10から出射される第1光R1が結像される。また、撮像面31の左側領域には、第2経路を経てプリズム10から出射される第2光R2が結像される。従って、撮像素子30が撮影する画像は、撮像面31の右側領域に結像された右側画像、及び左側領域に結像された左側画像を含む。
【0026】
制御部40は、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成されており、距離測定装置100全体の動作を制御する。制御部40は、所定の制御プログラムに従って各種処理を実行する。これら処理の結果等は、適宜RAM等の記憶手段に格納される。
【0027】
制御部40は、撮像素子30から送られる右側画像及び左側画像に基づいて、被写体200と距離測定装置100との間の距離を測定する。
【0028】
ここで、
図1では図示を省略しているが、制御部40とは別に、本体部50内に、撮像素子30の画像を適宜処理する制御手段を設けることもできる。この場合には、本体部50の制御手段と制御部40を接続し、本体部50の制御手段からデジタルデータ化した画像を制御部40に送る構成とすることができる。
【0029】
(動作)
図1、
図2に追加して、
図3及び
図4を参照して、この発明の距離測定装置の動作について説明する。
図3は、距離測定装置の制御部が行う処理フローを示すフローチャートである。また、
図4は、距離測定装置の制御部が取得する画像を示す概略図である。
【0030】
まず、制御部40は、撮像素子30から送られる、右側画像61及び左側画像62を含む画像60を取得する(S1)。
【0031】
既に説明したように、右側画像61は、第1経路を経てプリズム10から出射される光が、撮像面31の右側領域に結像された画像である。また、左側画像62は、第2経路を経てプリズム10から出射される光が、撮像面31の左側領域に結像された画像である。従って、右側画像61及び左側画像62は、異なる2方向から被写体200を撮影した画像である。このため、右側画像61に含まれる被写体200の像の位置と、左側画像62として取得された被写体200の像の位置とには、ずれ(すなわち視差)が生じている。
【0032】
次に、制御部40は、右側画像61内における右側部分画像611の位置、及び左側画像62内における左側部分画像612の位置を、それぞれ取得する(S2)。
【0033】
右側部分画像611は、右側画像61に含まれる被写体200の像である。また、左側部分画像612は、左側画像62に含まれる被写体200の像である。
図4では、被写体200に記された「A」の文字の部分を、右側部分画像611及び左側部分画像612としている。
【0034】
右側画像61及び左側画像62から右側部分画像611及び左側部分画像612を抽出するに際しては、例えばBlob等の画像を処理するソフトウェアを用いることができる。
【0035】
この過程では、右側部分画像611及び左側部分画像612の、X軸方向に沿った位置座標をそれぞれ取得する。
図4では、各画像61及び62の左端から右端へ向かう方向の位置座標を、右側部分画像611の第1位置座標CR及び左側部分画像612の第2位置座標CLとして取得する例を示している。
【0036】
次に、制御部40は、右側部分画像611の第1位置座標CRと左側部分画像612の第2位置座標CLとの差を視差として取得する(S3)。
【0037】
次に、制御部40は、上述した視差を距離に変換する(S4)。この結果、距離測定装置100では、取得した画像60に基づいて、被写体200と距離測定装置100との間の距離(被写体200とプリズム10との離間距離)を測定することができる。
【0038】
以上に説明したように、距離測定装置100では、1つのプリズム10、1つのレンズ20及び1つの撮像素子30を用いることで、従来と比べて少ない部品数であっても、被写体200との間の距離を測定することができる。このため、距離測定装置100では、小型化に有利である。また、距離測定装置100では、プリズム10及びレンズ20間、並びにレンズ20及び撮像素子30間の光軸を合わせれば良く、従来と比べて精度維持が容易である。従って、距離測定装置100は、例えばロボットハンドの先端に取り付けて使用する等、空間的に制約され、かつ微少な測定精度が要求される、短い距離の測定においても使用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10:プリズム
20:レンズ
30:撮像素子
40:制御部
50:本体部
100:距離測定装置
200:被写体