(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-92511(P2020-92511A)
(43)【公開日】2020年6月11日
(54)【発明の名称】プラズマ装置用直流パルス電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 9/04 20060101AFI20200515BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20200515BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20200515BHJP
【FI】
H02M9/04 Z
H02M3/155 H
H02M3/28 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-227879(P2018-227879)
(22)【出願日】2018年12月5日
(11)【特許番号】特許第6603927号(P6603927)
(45)【特許公報発行日】2019年11月13日
(71)【出願人】
【識別番号】392026888
【氏名又は名称】京都電機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 敏一
(72)【発明者】
【氏名】伏谷 周一
(72)【発明者】
【氏名】木村 智
(72)【発明者】
【氏名】辻本 正志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇人
【テーマコード(参考)】
5H730
5H790
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB42
5H730BB43
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE13
5H730FG05
5H790CC01
5H790DD06
5H790EA01
5H790EA02
5H790EA03
5H790EA16
5H790EB01
(57)【要約】
【課題】電力回生により電力効率の改善を図るとともに、容量性負荷回路に印加する直流パルス電圧の波形を広範囲に変化可能とする。
【解決手段】パルス形成部13は、直流電源11の出力電圧とコンデンサ15の充電電圧とを切り替えることで直流パルス電圧を生成し、プラズマ装置を含む容量性負荷回路50に印加する。制御部12は、パルス形成部13における電圧の切替え動作と昇圧/降圧コンバータ14における昇圧/降圧の切替えと充放電のためのPWM制御を担う。コンデンサ15は昇圧/降圧コンバータ14における降圧動作により目標値に充電される。容量性負荷回路50に印加される直流パルス電圧がパルス頂部電圧から底部電圧に変化したとき、その電圧差に対応する余剰電荷が容量性負荷回路50からコンデンサ15に移動して充電電圧が増加すると、昇圧/降圧コンバータ14で昇圧動作が行われ、コンデンサ15の電圧増加分に相当する電力が直流電源11に回生される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを形成する電極を含む容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
a)出力電圧が可変であって、一対の出力端の一端が基準電位に接続された直流電源と、
b)一端が基準電位に接続されたコンデンサと、
c)前記直流電源の出力電圧である第1の電圧と前記コンデンサに保持されている電圧である第2の電圧とを切り替えて、前記容量性負荷回路に印加する略矩形波状の直流パルス電圧を発生させるパルス形成部と、
d)前記直流電源と前記コンデンサとの間に設けられ、前記直流電源側から前記コンデンサ側への直流電圧の降圧動作と前記コンデンサ側から前記直流電圧側への昇圧動作との、双方向の動作が可能である昇圧/降圧コンバータと、
e)前記パルス形成部における第1及び第2の電圧の切替え動作、並びに、前記昇圧/降圧コンバータにおける昇圧動作及び降圧動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの充電電圧が前記第1の電圧と基準電位との間の所定の目標値になるように前記昇圧/降圧コンバータに降圧動作を行わせて前記コンデンサの充電電圧を一定に維持するとともに、前記第1の電圧のレベルの前記直流パルス電圧が前記容量性負荷回路に印加されたのち該直流パルス電圧が第2の電圧のレベルに変化するときに、前記容量性負荷回路に蓄積されていた前記第1の電圧と第2の電圧との電圧差に対応する余剰の電荷の移動によって前記コンデンサの充電電圧が上昇すると、前記昇圧/降圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記コンデンサにおいて増加したエネルギーに基づく電力を前記直流電源に回生させるように、前記パルス形成部及び前記昇圧/降圧コンバータを制御する、ことを特徴とするプラズマ装置用直流パルス電源装置。
【請求項2】
プラズマを形成する電極を含む容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
a)出力電圧が可変であって、一対の出力端の一端が基準電位に接続された第1直流電源と、
b)出力電圧が可変であって、一対の出力端の一端が基準電位に接続された第2直流電源と、
c)一端が基準電位に接続されたコンデンサと、
d)前記直流電源の出力電圧である第1の電圧と前記コンデンサに保持されている電圧である第2の電圧とを切り替えて、前記容量性負荷回路に印加する略矩形波状の直流パルス電圧を発生させるパルス形成部と、
e)前記第1直流電源及び前記第2直流電源と前記コンデンサとの間に設けられ、
前記第1及び第2の直流電源側から前記コンデンサ側への直流電圧の降圧動作と前記コンデンサ側から前記第1直流電圧側への昇圧動作との、双方向の動作が可能である昇圧/降圧コンバータと、
f)前記パルス形成部における第1及び第2の電圧の切替え動作、並びに、前記昇圧/降圧コンバータにおける昇圧動作及び降圧動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの充電電圧が前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の所定の目標値になるように前記昇圧/降圧コンバータに降圧動作を行わせて前記コンデンサの充電電圧を一定に維持するとともに、前記第1の電圧のレベルの前記直流パルス電圧が前記容量性負荷回路に印加されたのち該直流パルス電圧が第2の電圧のレベルに変化するときに、前記容量性負荷回路に蓄積されていた前記第1の電圧と第2の電圧との電圧差に対応する余剰の電荷の移動によって前記コンデンサの充電電圧が上昇すると、前記昇圧/降圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記コンデンサにおいて増加したエネルギーに基づく電力を前記第1の直流電源に回生させるように、前記パルス形成部及び前記昇圧/降圧コンバータを制御する、ことを特徴とするプラズマ装置用直流パルス電源装置。
【請求項3】
プラズマを形成する電極を含む容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
a)出力電圧が可変であって、一対の出力端に並列に出力コンデンサを有し、且つ該出力端の一端が基準電位に接続された直流電源と、
b)一端が基準電位に接続されたコンデンサと、
c)前記コンデンサに保持されている電圧である第1の電圧と前記直流電源の出力電圧である第2の電圧とを切り替えて、前記容量性負荷回路に印加する略矩形波状の直流パルス電圧を発生させるパルス形成部と、
d)前記直流電源と前記コンデンサとの間に設けられ、前記直流電圧側から前記コンデンサ側への昇圧動作が可能である昇圧コンバータと、
e)前記パルス形成部における第1及び第2の電圧の切替え動作、及び、前記昇圧コンバータにおける昇圧動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの充電電圧が前記第2の電圧よりも高い所定の目標値になるように前記昇圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記コンデンサの充電電圧を一定に維持するとともに、前記第1の電圧のレベルの前記直流パルス電圧が前記容量性負荷回路に印加されたのち該直流パルス電圧が第2の電圧のレベルに変化するときに、前記容量性負荷回路に蓄積されていた前記第1の電圧と第2の電圧との電圧差に対応する余剰の電荷の移動によって前記直流電源の出力コンデンサの充電電圧が上昇すると、前記昇圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記出力コンデンサにおいて増加したエネルギーを放出し前記コンデンサを充電するように、前記パルス形成部及び前記昇圧コンバータを制御する、ことを特徴とするプラズマ装置用直流パルス電源装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
前記パルス形成部は、前記容量性負荷回路が接続される当該装置の電圧出力端を基準電位に接続するスイッチを含み、
前記制御部は、前記第1及び2の電圧のいずれも選択しない状態で前記スイッチを閉成するように前記パルス形成部を制御することにより、該第1及び第2の電圧に基準電位を加えた、電圧レベルが三段階に変化する直流パルス電圧を発生させる、ことを特徴とするプラズマ装置用直流パルス電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ装置に用いられる直流パルス電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体プロセスを始めとする様々な分野において、プラズマを利用して対象物を加工したり処理したりするプラズマ装置が用いられている。
図18は、プラズマ装置を駆動する従来の電源装置の一例の概略構成を示す図である。このプラズマ装置は、高周波プラズマにパルス状の直流電力を加えることで処理対象物を加工するものである。
【0003】
図18において、プラズマ装置は、真空排気された減圧雰囲気の下で放電ガスや反応ガスが導入されるチャンバ(図示せず)内に二つの電極が配置された、ごく簡略化されたモデルで示されている。この例では、上側の電極がカソード電極521であり、所定のガスに電力を供給して放電プラズマ523を生成するための電極である。一方、下側の電極は、カソード電極521との間に均一な電場を形成するように該カソード電極521と対向して設置されている対向電極522である。ここでは、対向電極522はチャンバと共に、電気的に接地されている。処理対象物は、カソード電極521又は対向電極522のいずれか一方に固定される。互いに所定距離だけ離して配置されているカソード電極521と対向電極522との間にはキャパシタが形成され、このキャパシタの容量は、その電極521、522の間に生成される放電プラズマ523自体の容量と合成され、プラズマ負荷回路52となる。
【0004】
高周波電源60は、図示しない結合コンデンサやインピーダンス整合回路を介してカソード電極521に高周波電力を供給するものである。一方、直流パルス電源100は、カソード電極521に負極性の直流パルス電圧を与えるものである。直流パルス電源100と高周波電源60はカソード電極521に対して並列に接続されるため、高周波電源60による高周波電圧が直流パルス電源100に印加されないように、カソード電極521と直流パルス電源100との間には、リアクトル511とコンデンサ512とを含むローパスフィルタ51が挿設されている。このため、直流パルス電源100の負荷は、ローパスフィルタ51と上記プラズマ負荷回路52との並列合成回路である容量性負荷回路50である。
【0005】
よく知られているように、高周波電源60により放電プラズマ523を励起するとき、電子電流とイオン電流とがほぼ均等な状態となるように負のセルフバイアス電圧が電極521、522間に生起される。このときのセルフバイアス電圧を高周波電源60に直列に挿入される直流電圧源から印加されるものとみなし、
図18中には、直流電圧源61を等価的に示している。この直流電圧源61によって、容量性負荷回路50は所定のセルフバイアス電圧に充電されるとみなせる。容量性負荷回路50に充電されるセルフバイアス電圧によって、放電プラズマ523は高いイオン加速エネルギーを処理対象物に照射することができる。
【0006】
上述したような容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するための電源装置として、特許文献1に開示されているものがある。この従来の電源装置は、直流パルス電圧を容量性負荷回路に印加するだけでなく、半導体スイッチと共振回路とを用い、容量性負荷回路に蓄積されたエネルギーを電源装置側に回生することができる。
【0007】
具体的に説明すると、上記電源装置は、直流電源と、充放電回路と、電流(電圧)調整回路と、を備える。充放電回路は、第1半導体スイッチとコンデンサとリアクトルと第2半導体スイッチと、を備える。第2半導体スイッチは、単方向スイッチを逆並列に接続したものであり、コンデンサから容量性負荷回路に向かう給電用の回路と容量性負荷からコンデンサに向かう電力回生用の回路とから成る。電流(電圧)調整回路は、直流電源と容量性負荷回路との間に、充放電回路と並列に設けられ、第3半導体スイッチを介して容量性負荷回路に接続される。この電流(電圧)調整回路は、ガスが放電する際の負荷条件に応じて、一定の電流若しくは電圧、又は、所望の波形の電流若しくは電圧を容量性負荷回路(つまりはプラズマ装置)に供給する。
【0008】
上記従来の電源装置では、第1半導体スイッチがオンすることで、直流電源から充放電回路に電流が流れてコンデンサが充電される。該コンデンサが充電された状態で第1半導体スイッチをオフにする一方、第2半導体スイッチの給電用単方向スイッチをオンすることで、コンデンサに蓄積されていた電荷が給電用回路を介して容量性負荷に転送される。そして、電荷の転送が終了すると、給電用単方向スイッチの作用により、容量性負荷回路からコンデンサへ向けての電荷の逆流は阻止され、容量性負荷回路の電圧は維持される。一方、容量性負荷回路が充電された状態で、第2半導体スイッチの給電用単方向スイッチをオフにする一方、回生用単方向スイッチをオンすると、容量性負荷回路に充電されていた電荷が回生用回路を介してコンデンサに転送される。そして、この電荷の転送が終了すると、回生用単方向スイッチの作用により、コンデンサから容量性負荷回路へ向けての電荷の逆流が阻止される。このようにして、容量性負荷回路に充電された電荷と静電エネルギーとを、充放電回路のコンデンサに回生することができる。
【0009】
上記電源装置ではさらに、容量性負荷回路は第4半導体スイッチを介して接地されており、容量性負荷回路の電荷を電源装置側に回生した後に第4半導体スイッチをオンする。これにより、容量性負荷回路に残留している電荷を接地に逃がし、電圧を短時間でゼロにするとともに、放電停止中に電圧をゼロに維持することができる。これにより、容量性負荷回路に負極性の直流パルス電圧が印加された直後に該電圧が速やかにゼロに戻り、矩形状の直流パルス電圧を容量性負荷回路に印加することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2018−107904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記電源装置では、上述したように容量性負荷回路に蓄積されたエネルギーを電源装置側に回生することで電力効率が改善され、使用電力量を抑えることができるという利点がある。しかしながら、この電源装置では次のような問題がある。
【0012】
プラズマ装置におけるセルフバイアス電圧の電圧値は、高周波電源60から容量性負荷回路50に印加される高周波電圧の振幅値やキャリア周波数によって変化する。処理対象物に対する高精度な微細加工を行う際には、高周波電源60において高周波電圧の振幅値を或る変調周波数で以て振幅変調した高周波パルス電圧を生成する場合もあり、その場合には、セルフバイアス電圧も振幅変調の度合いに応じて変化する。直流パルス電源装置では、上記高周波パルス電圧に応じて変化するセルフバイアス電圧に対応して、直流パルス電圧の電圧値を調整する場合が多い。そのため、直流パルス電源装置には、セルフバイアス電圧の広範囲な連続的変化に対応する波形形状の直流パルス電圧を生成することが要求される。
【0013】
しかしながら、上記従来の電源装置では、パルス底部の電圧がゼロに固定されるため、パルス底部の電圧値を連続的に変化させることができない。そのため、セルフバイアス電圧が連続的に変化したときに、それに追従してパルス底部の電圧値が変化するような直流パルス電圧を得ることができない。
【0014】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、比較的簡単な回路構成によって、電力回生により電力効率を改善することができるとともに、容量性負荷回路に印加する直流パルス電圧波形を広範囲に且つ連続的に変化させることができる直流パルス電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するためになされた本発明の第1の態様は、プラズマを形成する電極を含む容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
a)出力電圧が可変であって、一対の出力端の一端が基準電位に接続された直流電源と、
b)一端が基準電位に接続されたコンデンサと、
c)前記直流電源の出力電圧である第1の電圧と前記コンデンサに保持されている電圧である第2の電圧とを切り替えて、前記容量性負荷回路に印加する略矩形波状の直流パルス電圧を発生させるパルス形成部と、
d)前記直流電源と前記コンデンサとの間に設けられ、前記直流電源側から前記コンデンサ側への直流電圧の降圧動作と前記コンデンサ側から前記直流電圧側への昇圧動作との、双方向の動作が可能である昇圧/降圧コンバータと、
e)前記パルス形成部における第1及び第2の電圧の切替え動作、並びに、前記昇圧/降圧コンバータにおける昇圧動作及び降圧動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの充電電圧が前記第1の電圧と基準電位との間の所定の目標値になるように前記昇圧/降圧コンバータに降圧動作を行わせて前記コンデンサの充電電圧を一定に維持するとともに、前記第1の電圧のレベルの前記直流パルス電圧が前記容量性負荷回路に印加されたのち該直流パルス電圧が第2の電圧のレベルに変化するときに、前記容量性負荷回路に蓄積されていた前記第1の電圧と第2の電圧との電圧差に対応する余剰の電荷の移動によって前記コンデンサの充電電圧が上昇すると、前記昇圧/降圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記コンデンサにおいて増加したエネルギーに基づく電力を前記直流電源に回生させるように、前記パルス形成部及び前記昇圧/降圧コンバータを制御する、ことを特徴としている。
【0016】
上記課題を解決するためになされた本発明の第2の態様は、プラズマを形成する電極を含む容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
a)出力電圧が可変であって、一対の出力端の一端が基準電位に接続された第1直流電源と、
b)出力電圧が可変であって、一対の出力端の一端が基準電位に接続された第2直流電源と、
c)一端が基準電位に接続されたコンデンサと、
d)前記直流電源の出力電圧である第1の電圧と前記コンデンサに保持されている電圧である第2の電圧とを切り替えて、前記容量性負荷回路に印加する略矩形波状の直流パルス電圧を発生させるパルス形成部と、
e)前記第1直流電源及び前記第2直流電源と前記コンデンサとの間に設けられ、
前記第1及び第2の直流電源側から前記コンデンサ側への直流電圧の降圧動作と前記コンデンサ側から前記第1直流電圧側への昇圧動作との、双方向の動作が可能である昇圧/降圧コンバータと、
f)前記パルス形成部における第1及び第2の電圧の切替え動作、並びに、前記昇圧/降圧コンバータにおける昇圧動作及び降圧動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの充電電圧が前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の所定の目標値になるように前記昇圧/降圧コンバータに降圧動作を行わせて前記コンデンサの充電電圧を一定に維持するとともに、前記第1の電圧のレベルの前記直流パルス電圧が前記容量性負荷回路に印加されたのち該直流パルス電圧が第2の電圧のレベルに変化するときに、前記容量性負荷回路に蓄積されていた前記第1の電圧と第2の電圧との電圧差に対応する余剰の電荷の移動によって前記コンデンサの充電電圧が上昇すると、前記昇圧/降圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記コンデンサにおいて増加したエネルギーに基づく電力を前記第1の直流電源に回生させるように、前記パルス形成部及び前記昇圧/降圧コンバータを制御する、ことを特徴としている。
【0017】
また上記課題を解決するためになされた本発明の第3の態様は、プラズマを形成する電極を含む容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
a)出力電圧が可変であって、一対の出力端に並列に出力コンデンサを有し、且つ該出力端の一端が基準電位に接続された直流電源と、
b)一端が基準電位に接続されたコンデンサと、
c)前記コンデンサに保持されている電圧である第1の電圧と前記直流電源の出力電圧である第2の電圧とを切り替えて、前記容量性負荷回路に印加する略矩形波状の直流パルス電圧を発生させるパルス形成部と、
d)前記直流電源と前記コンデンサとの間に設けられ、前記直流電圧側から前記コンデンサ側への昇圧動作が可能である昇圧コンバータと、
e)前記パルス形成部における第1及び第2の電圧の切替え動作、及び、前記昇圧コンバータにおける昇圧動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの充電電圧が前記第2の電圧よりも高い所定の目標値になるように前記昇圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記コンデンサの充電電圧を一定に維持するとともに、前記第1の電圧のレベルの前記直流パルス電圧が前記容量性負荷回路に印加されたのち該直流パルス電圧が第2の電圧のレベルに変化するときに、前記容量性負荷回路に蓄積されていた前記第1の電圧と第2の電圧との電圧差に対応する余剰の電荷の移動によって前記直流電源の出力コンデンサの充電電圧が上昇すると、前記昇圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記出力コンデンサにおいて増加したエネルギーを放出し前記コンデンサを充電するように、前記パルス形成部及び前記昇圧コンバータを制御する、ことを特徴としている。
【0018】
本発明において、基準電位とは典型的には接地電位である。第1の態様の直流パルス電源装置において、パルス形成部は例えば、相補的にオン・オフ動作する複数の半導体スイッチを含む。制御部の制御の下でパルス形成部は、コンデンサに保持されている電圧(第2の電圧)を直流パルス電圧のパルス底部の電圧として出力し、直流電源の出力電圧(第1の電圧)を直流パルス電圧のパルス頂部の電圧として出力する。直流パルス電圧が負電圧方向に凸である負極性のパルスである場合、直流電源の出力電圧は負極性である。また、コンデンサの充電電圧の目標値は、直流電源の出力電圧と接地電位との間の適宜の任意の負電圧に設定される。
【0019】
昇圧/降圧コンバータは、例えばチョッパ型の双方向DC/DCコンバータであり、複数の半導体スイッチやリアクトルを含んで構成されるものとすることができる。制御部は、昇圧/降圧コンバータにおいて昇圧動作又は降圧動作させる際に、該昇圧/降圧コンバータに含まれる複数の半導体スイッチをそれぞれオン・オフ動作させることで直流電圧をスイッチングするチョッパ動作を実施する。
【0020】
第1の態様の装置において、具体的には、制御部は、コンデンサの充電電圧を監視し、該充電電圧が所定の目標値から低下した場合には、該充電電圧が目標値まで増加するように昇圧/降圧コンバータに降圧動作を行わせる。それにより、直流電源の出力電圧が昇圧/降圧コンバータで降圧され、コンデンサに充電される。その結果、直流パルス電圧のパルス底部の電圧を目標値に維持することができる。直流パルス電圧のパルス頂部の電圧が容量性負荷回路に印加されると、印加電圧が増加した分だけ容量性負荷回路の電荷量が増加する。そして、直流パルス電圧の電圧がパルス底部の電圧にまで下がると、パルス形成回路において導通した半導体スイッチ等を介してコンデンサと容量性負荷回路とが並列に接続されるため、パルス頂部と底部との電圧差に対応する余剰電荷がコンデンサに移動する。それによりコンデンサの充電電圧はそれだけ高くなる。すると、これを認識した制御部は、該充電電圧が目標値まで下がるように昇圧/降圧コンバータに昇圧動作を行わせる。それにより、上述したような電荷の移動により増加した分の電力が直流電源に回生される。この回生された電力は直流電源の内部のコンデンサに蓄積され、それ以降のパルス頂部のためのエネルギーとして使用される。
【0021】
第2の態様の直流パルス電源装置でも、基本的な動作は第1の態様の直流パルス電源装置と同様である。第1の態様の直流パルス電源装置と異なるのは、第1直流電源とは別に2直流電源が設けられ、昇圧/降圧コンバータでの降圧動作によりコンデンサが充電される際に、第1直流電圧の出力電圧と第2直流電源の出力電圧との両方が用いられる点である。コンデンサの充電電圧の目標値は第1直流電圧の出力電圧と第2直流電源の出力電圧との間で適宜に決めることができ、制御部はその目標値に応じて昇圧/降圧コンバータでの降圧動作(換言すれば定電圧制御動作)を制御する。したがって、例えば第1直流電源の出力電圧が負極性の電圧であるときに、第2直流電源の出力電圧を正極性の電圧とすれば、コンデンサには正極性の電圧を充電することもできる。コンデンサの充電電圧を正極性にすれば、直流パルス電圧のパルス底部の電圧は正極性になり、パルス底部の電圧をパルス頂部の電圧とは逆極性の電圧まで広げることができる。
【0022】
第3の態様の直流パルス電源装置では、第1及び第2の態様の直流パルス電源装置とは異なり、制御部の制御の下でパルス形成部は、直流電源の出力電圧を直流パルス電圧のパルス底部の電圧として出力し、コンデンサに保持されている電圧を直流パルス電圧のパルス頂部の電圧として出力する。また、直流電源とコンデンサとの間には、双方向の昇圧/降圧コンバータではなく、直流電圧側からコンデンサ側への昇圧動作のみが可能である昇圧コンバータが設けられる。直流パルス電圧のパルス底部の電圧は直流電源の出力電圧で決まるから、この出力電圧を適宜に調整することで直流パルス電圧のパルス底部の電圧を変えることができる。
【0023】
制御部は、コンデンサの充電電圧を監視し、該充電電圧が所定の目標値から低下した場合には、該充電電圧が目標値まで増加するように昇圧コンバータに昇圧動作を行わせる。それにより、直流電源の出力電圧が昇圧されコンデンサに充電される。その結果、直流パルス電圧のパルス頂部の電圧を直流電源の出力電圧よりも高い所定値に維持することができる。直流パルス電圧のパルス頂部の電圧が容量性負荷回路に印加されると、印加電圧が増加した分だけ容量性負荷回路の電荷量が増加する。そして、直流パルス電圧の電圧がパルス底部の電圧にまで下がると、パルス形成回路において導通した半導体スイッチ等を介して直流電源と容量性負荷回路とが並列に接続されるため、パルス頂部と底部との電圧差に対応する余剰電荷が直流電源内の出力コンデンサに移動する。それにより該出力コンデンサの両端電圧はそれだけ高くなる。すると、これを認識した制御部は、該電圧が目標値まで下がるように昇圧コンバータに昇圧動作を行わせる。それにより、上述したような電荷の移動により出力コンデンサにおいて増加した分のエネルギーが放出され、該エネルギーによる電圧が昇圧コンバータで昇圧されてコンデンサに充電される。即ち、この構成では、直流パルス電圧の頂部と底部との電圧差に相当する電力はコンデンサに回生される。この分だけ直流電源自体から供給される電力を節約することができる。また、上記出力コンデンサの両端電圧の上昇は、所定の目標値に調整されたパルス底部の電圧に戻る。
【0024】
また、上記第1乃至第3の態様のプラズマ装置用直流パルス電源装置において、
前記パルス形成部は、前記容量性負荷回路が接続される当該装置の電圧出力端を基準電位に接続するスイッチを含み、
前記制御部は、前記第1及び2の電圧のいずれも選択しない状態で前記スイッチを閉成するように前記パルス形成部を制御することにより、該第1及び第2の電圧に基準電位を加えた、電圧レベルが三段階に変化する直流パルス電圧を発生させる、構成とすることができる。
【0025】
この構成によれば、単純な二つの電圧レベルの直流パルス電圧ではなく、接地電位を含む三段階の電圧レベルの直流パルス電圧をプラズマ装置に供給することができる。それにより、プラズマ装置で生成されるプラズマの状態をより細かく制御することができる。また、プラズマ放電を停止させているときにパルス形成部に含まれるスイッチを閉成することで、直流パルス電源装置の出力端を確実に接地電位に保つことができる。
【0026】
なお、本発明において昇圧/降圧コンバータ又は昇圧コンバータは、典型的には上述したチョッパ型の双方向DC/DCコンバータ又は一方向DC/DCコンバータを用いることができる。チョッパ型DC/DCコンバータでは、半導体スイッチのオン・オフ動作を制御するパルス信号のデューティ比を調整する、つまりはPWM制御することで、出力電圧(昇圧後の電圧及び降圧後の電圧)を調整することができる。DC/DCコンバータの構成としては様々なものが従来から知られているが、ここではその構成は問わない。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る直流パルス電源装置によれば、直流パルス電圧を印加する際に容量性負荷回路に生じる、直流パルス電圧の頂部と底部との電圧差に対応する余剰電荷を、比較的簡単な構成の回路によって、直流電源又はコンデンサに電力として回生させ、電力の利用効率を改善することができる。また、容量性負荷回路に印加する直流パルス電圧波形、特にそのパルス底部の電圧を、広範囲に且つ連続的に変化させることができる。さらにまた、容量性負荷回路の余剰電荷によるエネルギーを熱として消費させてしまう必要もないので、無駄な熱の発生を抑制することができ、放熱のための構成を簡素化できるという利点もある。
【0028】
また特に本発明の第2の態様によれば、直流パルス電圧のパルス底部の電圧を、パルス頂部の電圧とは逆の極性にまで広げることができる。それにより、より多様なプラズマ装置に本電源装置を適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略回路構成図。
【
図2】第1実施例のプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略ブロック構成図。
【
図3】本発明の第2実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略回路構成図。
【
図4】本発明の第3実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略回路構成図。
【
図5】第3実施例の変形例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略回路構成図。
【
図6】本発明の第4実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略回路構成図。
【
図7】本発明の第5実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略回路構成図。
【
図8】本発明の第6実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略回路構成図。
【
図9】第1乃至第6実施例のプラズマ装置用直流パルス電源装置における直流電源の概略回路構成図。
【
図10】本発明の第7実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略回路構成図。
【
図11】第1乃至第7実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置において限流抵抗を追加したときの回路構成図。
【
図12】第1、第3、第5及び第7実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置から出力される直流パルス電圧の概略波形図(a)、第2、第4及び第6実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置から出力される直流パルス電圧の概略波形図(b)。
【
図13】本発明の第8実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略回路構成図。
【
図14】第8実施例のプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略ブロック構成図。
【
図15】第8実施例のプラズマ装置用直流パルス電源装置におけるスイッチの概略構成図。
【
図16】本発明の第9実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略回路構成図。
【
図17】第8実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置から出力される直流パルス電圧の概略波形図(a)、第9実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置から出力される直流パルス電圧の概略波形図(b)。
【
図18】一般的なプラズマ装置と該プラズマ装置を駆動する電源部との概略構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置について、添付図面を参照して説明する。
[第1実施例]
<装置の構成>
図1は、第1実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略回路構成図である。
図2は、第1実施例のプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略ブロック構成図である。
図9は、
図1中の直流電源の概略構成図である。
図12(a)は、第1実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置から出力される直流パルス電圧の概略波形図である。
なお、
図1において、既に
図18において説明した構成要素と同じ又は相当する構成要素には同じ符号を付して詳しい説明を略す。これは以下に述べる他の実施例においても同様である。
【0031】
この直流パルス電源装置10Aは容量性負荷回路50に負極性の直流パルス電圧を印加するものであり、
図2に示すように、直流電源11と、パルス形成部13と、昇圧/降圧コンバータ14と、制御部12と、コンデンサ15と、を含む。ここでは、直流パルス電圧は、
図12(a)に示すように、そのパルス全体が負である負極性のパルスである。容量性負荷回路50は例えば、1000pFのコンデンサと5kΩの抵抗との並列等価回路である。
【0032】
図2に示すように、パルス形成部13は、一端が接続された第1、第2なる二つの半導体スイッチ131、132を含み、その接続端と接地電位線20との間に容量性負荷回路50が接続されている。第1半導体スイッチ131の他端は、直流電源11の出力端と昇圧/降圧コンバータ14の一方の入出力端に接続されている。第2半導体スイッチ132の他端は、一端が接地電位線20に接続されたコンデンサ15の他端と昇圧/降圧コンバータ14の他方の入出力端に接続されている。制御部12は、パルス形成部13におけるスイッチの切替え動作と昇圧/降圧コンバータ14の動作とを制御する。
【0033】
図1及び
図9を参照して、より詳しい構成を説明する。
直流電源11は、外部からの指示又は制御に応じて出力電圧が可変である高電圧可変電源である。
図9に示すように、直流電源11は、出力調整部110と、入力整流回路111と、出力整流回路112と、を含む。後述するように、正極性出力端116は接地され、負極性出力端115から直流電圧が出力される。入力整流回路111は、簡易的に半波整流の構成で示す入力整流ダイオード1111と、入力平滑コンデンサ1113、1114と、入力平滑リアクトル1112と、を含む。出力整流回路112は、同様に簡易的に半波整流の構成で示す出力整流ダイオード1121と、出力平滑コンデンサ1124、1125、1126と、出力平滑リアクトル1122、1123と、を含む。
【0034】
出力調整部110は一般的な電圧レギュレータ回路を用いることができるので詳しい説明を省くが、絶縁型と非絶縁型に大別され、非絶縁型では
図9中に一点鎖線で示すように、入力整流回路111の共通線と出力整流回路112の共通線とが直接接続される構成である。なお、
図9においてa〜eで示す各点は、後述する回生電力の供給点を示すものである。
【0035】
制御部12は、パルス信号生成部121と、パルス形成用駆動部122と、出力電圧制御部123と、充放電用駆動部124と、を含む。昇圧/降圧コンバータ14は、第3半導体スイッチ143、第4半導体スイッチ144、及び、リアクトル142、を含む。半導体スイッチ131、132、143、144はいずれも例えばSi−MOSFETであり、好ましくはSiC−MOSFETなどを用いるとよい。
【0036】
制御部12においてパルス信号生成部121は、後述する直流パルス電圧のパルス頂部の期間T1とパルス底部の期間T2とにそれぞれ対応する2系統のパルス信号を生成するものである。それら2系統のパルス信号のパルス幅は、デューティ比が例えば10%から90%までの範囲で相補的に任意に可変である。また、パルス信号の周波数は例えば1kHzから500kHzまで範囲で連続的に可変である。これらは直流パルス電圧の周波数とパルス幅を決めるパラメータであり、外部から設定される。一方、出力電圧制御部123はコンデンサ15の充電電圧を検出する回路を含み、第3半導体スイッチ143と第4半導体スイッチ144とをそれぞれ相補的にオン・オフさせる2系統のパルス信号を生成する。出力電圧制御部123は、半導体スイッチ143、144を相補的にオンさせるパルス信号のパルス幅を調整するPWM制御を行う。
【0037】
第1半導体スイッチ131のゲートと第2半導体スイッチ132のゲートにはそれぞれ、パルス信号生成部121で生成されたパルス信号が、パルス形成用駆動部122を介してオン・オフ駆動信号として印加される。昇圧/降圧コンバータ14中の第3半導体スイッチ143のゲートと第4半導体スイッチ144のゲートにはそれぞれ、出力電圧制御部123で生成されたパルス信号が充放電用駆動部124を介してオン・オフ駆動信号として印加される。
【0038】
コンデンサ15の一端は第2半導体スイッチ132のドレインに接続され、その接続点から、昇圧/降圧コンバータ14中のリアクトル142を介して、第3半導体スイッチ143のドレインと第4半導体スイッチ144のソースとの接続点に接続される。第3半導体スイッチ143のソースは第1半導体スイッチ131のソースに接続されるとともに、直流電源11の負極性出力端115に接続されている。直流電源11の正極性出力端116、コンデンサ15の他端、第4半導体スイッチ144のドレイン、及び、容量性負荷回路50の他端(対向電極522側)は、いずれも接地電位線20に接続されており接地電位に保たれる。
【0039】
<装置の動作>
次に、本実施例の直流パルス電源装置10Aの動作について説明する。
本実施例の直流パルス電源装置10Aは容量性負荷回路50に対して、
図12(a)に示すような負極性パルス電圧を印加することが可能である。ここでは一例として、パルス頂部の電圧V1が−2500[V]、パルス底部の電圧V2が−1500[V]であるものとする。直流電源11の負極性出力端115の電圧値がパルス頂部の電圧になるから、この場合、負極性出力端115の出力電圧は−2500[V]である。このパルス頂部電圧は、直流電源11の出力電圧を調整することで連続的に可変である。また、コンデンサ15の充電電圧がパルス底部の電圧となるから、ここでは定常的な充電電圧の値(つまりは目標値)が−1500[V]である。このパルス底部電圧は、昇圧/降圧コンバータ14におけるPWM制御動作により、原理的には−2500〜0Vの間で連続的に可変である。
【0040】
一例として、昇圧/降圧コンバータ14の動作周波数、つまり出力電圧制御部123で生成されるパルス信号の周波数fは100[kHz]であるものとする。この場合、リアクトル142のインダクタンス値は例えば5[mH]以上とするとよい。また、充電電圧を安定化するために、容量性負荷回路50の容量値が1000[pF]であるときコンデンサ15の容量値は5[μF]以上とするとよい。
【0041】
パルス信号生成部121は外部から設定に基づくデューティ比で上記周波数の2系統のパルス信号を生成する。パルス形成用駆動部122はパルス信号生成部121による2系統のパルス信号に応じたオン・オフ駆動信号を生成し、第1半導体スイッチ131及び第2半導体スイッチ132をオン・オフさせる。なお、両半導体スイッチ131、132が同時にオンすることがないように、上記2系統のパルス信号のオン駆動期間の間には適当なデッドタイムを設けることが好ましい。
【0042】
一方、出力電圧制御部123は、図示しない電圧検出部によりコンデンサ15の充電電圧を検出した結果に基づき、その充電電圧が目標値、ここでは−1500Vに維持されるように、第3半導体スイッチ143と第4半導体スイッチ144とを相補的オン・オフさせるパルス信号のデューティ比を調整する。即ち、コンデンサ15の充電電圧が目標値に保たれるように、PWM制御による定電圧制御を行う。充放電用駆動部124は出力電圧制御部123による2系統のパルス信号に応じたオン・オフ駆動信号を生成し、第3半導体スイッチ143及び第4半導体スイッチ144を相補的にオン・オフさせる。
【0043】
具体的には次のような動作により、コンデンサ15の充電電圧は一定に維持される。
フォワード期間P1には、第3半導体スイッチ143がオン、第4半導体スイッチ144がオフし、これとは重ならない、フリーホイール期間P2には逆に、第4半導体スイッチ144がオンし、第3半導体スイッチ143がオフする。但し、この2系統のパルス信号のオン駆動期間の間にも適当なデッドタイムを設けることが好ましい。フォワード期間P1には、直流電源11の正極性出力端116→コンデンサ15→リアクトル142→オン状態である第3半導体スイッチ143→直流電源11の負極性出力端115、と電流が流れる。次のフリーホイール期間P2には、その直前にリアクトル142に蓄積されたエネルギーによる電流が、リアクトル142→オン状態である第4半導体スイッチ144→コンデンサ15→リアクトル142、と流れる。フォワード期間P1のデューティ比をD1(1>D1>0)、フリーホイール期間P2のデューティ比を1−D1とすると、コンデンサ15の充電電圧V2は、V2=V1・D1、となる。例えばD1=0.6とすれば、V1=−2500V、V2=−1500Vとなり、コンデンサ15の充電電圧を−1500Vに維持することができる。
【0044】
いま、
図12(a)に示すパルス底部に対応するT2期間、つまり第1半導体スイッチ131がオフし第2半導体スイッチ132がオンしている状態を定常的な初期状態と考える。このとき、第2半導体スイッチ132を介して、コンデンサ15の一端(接地側とは反対側の端部)が容量性負荷回路50に接続される。そのため、コンデンサ15の充電電圧V2=−1500[V]が、容量性負荷回路50にパルス底部の電圧として印加される。このとき、容量性負荷回路50には、Q2=CE・V2=1000[pF]×1500[V]=1.5[μC]、の電荷が蓄積される。また、放電プラズマ523には、Ip2=1500[V]/5[kΩ]=0.3[A]、の電流が流れ、放電プラズマ523において、P2=V2・Ip2=1500[V]×0.3[A]=450[W]、の有効電力が消費される。
【0045】
図12(a)に示す期間T2が終了し期間T1に入ると、パルス形成用駆動部122からのオン・オフ駆動信号により第2半導体スイッチ132がまずオフし、次いで第1半導体スイッチ131がオンして、第1半導体スイッチ131を介して直流電源11の負極性出力端115と容量性負荷回路50とが接続される。そのため、負極性出力端115から出力される−2500Vの電圧が容量性負荷回路50に印加される。それにより、直流電源11から容量性負荷回路50に、電流Ic1[A]の時間積分値Q=∫Ic1 dtに相当する電荷を供給するとともに、静電エネルギーE=(1/2)CE(V1−V2)
2=(1/2)×1000[pF]×(2500[V]−1500[V])
2=0.5[mJ]を供給する。その結果、容量性負荷回路50の電荷量はCE(V1−V2)=1000[pF]×(2500[V]−1500[V])=1[μC]だけ増加し、電荷量は2.5[μC]になる。また、放電プラズマ523に供給する電流はIp1=0.5[A]となり、放電プラズマ523における有効電力はP1=V1・Ip1=1250[W]に増加する。なお、このときにも、コンデンサ15の充電電圧は−1500[V]に維持される。
【0046】
期間T1が終了し期間T2に入ると、パルス形成用駆動部122からのオン・オフ駆動信号により第1半導体スイッチ131がまずオフし、次いで第2半導体スイッチ132がオンする。すると、オン状態である第2半導体スイッチ132を介して容量性負荷回路50とコンデンサ15は並列に接続される。すると、容量性負荷回路50の電荷のうち、その直前のパルス頂部の電圧が印加されることで増加した分の電荷、つまりは、パルス頂部の電圧とパルス底部の電圧との電圧差に対応する電荷が余剰電荷となる。具体的には、余剰電荷量はQ1−Q2=CE(V1−V2)=1[μC]、であり、この余剰電荷量に応じた電流が、第2半導体スイッチ132を通して容量性負荷回路50からコンデンサ15に電流時間積分値Q=∫ Ic2 dtとして放出される。また同時に、静電エネルギーE=(1/2)CE(V1−V2)
2=0.5[mJ]が放出される。即ち、容量性負荷回路50からコンデンサ15に余剰電荷量が移動するから、仮にコンデンサ15を放電させる構成が無いとすると、直流パルス電圧の1周期毎にコンデンサ15の充電電圧が増加し(電圧の絶対値が増加し)、最終的には−V2→−V1となって直流パルス電圧波形を得ることができなくなる。
【0047】
これに対し、この電源装置10Aでは、コンデンサ15の充電電圧が−1500Vから増加する(−2500Vに近づく方向に変化する)と、これを検出した出力電圧制御部123は、充電電圧を−1500Vに保つようにパルス信号のデューティ比を調整する。このときのPWM制御は、コンデンサ15の充電電圧を直流電源11の電圧V1=−2500Vにまで昇圧する動作であり、昇圧/降圧コンバータ14は昇圧動作モードとなる。
【0048】
このときには、上記降圧動作モードとは逆に、該降圧動作モードにおいてフォワード期間であった期間P2に、第4半導体スイッチ144がオン、第3半導体スイッチ143がオフされると、その直前にコンデンサ15に蓄積されていた電荷によって、コンデンサ15→オン状態の第4半導体スイッチ144→リアクトル142→コンデンサ15、と電流が流れる。これにより、リアクトル142にエネルギーが蓄積される。そして、降圧動作モードにおいてフォワード期間であった期間P1に、第3半導体スイッチ143がオン、第4半導体スイッチ144がオフされると、リアクトル142はその直前に蓄積されたエネルギーに基づき電流を流し続けようとする。このため、コンデンサ15、直流電源11、オン状態の第3半導体スイッチ143、リアクトル142を含む電流経路によって、リアクトル142に蓄積されていたエネルギーとコンデンサ15から放出されるエネルギーとが共に直流電源11に供給される。こうして、余剰電荷によってコンデンサ15の充電電圧が上昇した分に相当する電力が、直流電源11に回生される。回生された電圧は、後述するように、直流電源11の内部のコンデンサに吸収される。これに伴って、直流電源11自体の動作により放電プラズマ523等へ供給する電力を低減することができる。具体的には、従来は、例えばコンデンサ15の両端に接続される抵抗等において無駄に消費されていた、W=(1/2)CE(V1−V2)
2f=0.5[mJ]×100[kHz]=50[W]の電力が、パルス頂部の供給電力の一部として再利用できることになる。
【0049】
図1では、双方向の昇圧/降圧コンバータにおける降圧電力供給点と昇圧電力回生点はいずれも直流電源11の負極性出力端115(
図9中のa点)であるが、回生電力は、
図9に示す回路において、正極性出力端116に一端が接続されるコンデンサの他端に供給されればよい。したがって、出力調整部110が絶縁型である場合(
図9中の一点鎖線で接続されていない場合)には、コンデンサ1126の他端であるa点の位置のほか、コンデンサ1125の他端であるb点、及び、コンデンサ1124の他端であるc点等の位置に回生電力を供給してもよい。また、出力調整部110が非絶縁型であって、
図9中の一点鎖線で接続されている場合には、コンデンサ1114とコンデンサ1113の一端も直流電源11の正極性出力端116に接続されるので、上述したa点、b点、c点のほかに、コンデンサ1114の他端であるd点、及び、コンデンサ1113の他端であるe点の位置に回生電力を供給してもよい。
【0050】
上述したように電力を回生する位置を変更した場合には、次のような利点がある。
一端が負極性出力端115に接続されたコンデンサ1126は、直流電源11における平滑コンデンサであると同時に出力端のコンデンサでもある。第3半導体スイッチ143のソースから出力端コンデンサであるコンデンサ1126に回生電力を供給した場合、或いは、双方向の昇圧/降圧コンバータにおける降圧電力を供給した場合、仮に該コンデンサ1126で吸収しきれない電圧変動が発生したときに、それはコンデンサ1126が接続される負極性出力端115の電圧にも影響を与えることになる。負極性出力端115は直流電源11自体の電圧制御のための電圧検出点でもあり、この電圧検出点における急激な電圧変化は直流電源11の出力安定性に影響を及ぼすおそれがある。
【0051】
上記問題を避けるには、第3半導体スイッチ143のソースから供給される回生電力の供給点及び双方向の昇圧/降圧コンバータにおける降圧電力の供給点を、直流電源11のコンデンサ1126の他端ではなく、例えばコンデンサ1125の他端(b点の位置)に変更するとよい。このようにした場合、回生電力や降圧電力が供給されることでコンデンサ1125の両端間に電圧変動が生じたとしても、コンデンサ1125自体とリアクトル1122、1123との作用によって、上記電圧検出点における電圧変動は緩和される。これは、回生電力及び降圧電力をa点、b点以外の各点に供給したときでも同様である。このように直流電源11における回生電力及び降圧電力の供給点を変更することによって、電圧制御のための電圧検出点における電圧変動を緩和し、直流電源11の出力安定性を向上させることができる。
【0052】
上記説明のように、本実施例の直流パルス電源装置10Aによれば、制御部12及び昇圧/降圧コンバータ14によって、降圧動作と昇圧動作とを双方向に行えるようにしている。そのため、直流パルス電圧のパルス底部の電圧値を連続的に変化させることができ、例えばセルフバイアス電圧に応じた適切な波形の直流パルス電圧を容量性負荷回路50に印加することができる。また、容量性負荷回路50の余剰電荷による電力を直流電源11に回生させることで、電力の利用効率を向上させることができる。さらにまた、そうした機能を有する回路の構成も比較的簡単であり、大きなコストの増加を伴うことなく、上記のようなこれまでの電源装置にない効果を達成することができる。
【0053】
[第2実施例]
図3は、第2実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置10Bの概略回路構成図である。
図3中の直流電源11、16の構成は第1実施例の装置と同じであり、説明を省略する。また、
図12(b)は、第2実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置10Bから出力される直流パルス電圧の概略波形図である。なお、
図3中で、既に説明した
図1中の構成要素と同じ又は相当する構成要素には同じ符号を付して詳しい説明を略す。これは以下の図面でも同じである。
【0054】
この第2実施例の装置では、第1実施例の装置における直流電源を第1直流電源11とし、新たに同じ構成の第2直流電源16を追加している。第2直流電源16の負極性出力端は第1直流電源11の正極性出力端とともに接地され、第2直流電源16の正極性出力端が第4半導体スイッチ144のドレインに接続されている。上記第1実施例の装置では、第4半導体スイッチ144がオンしたとき、リアクトル142を介してコンデンサ15の一端(接地側とは反対側の端子)は接地電位線20に接続される。これに対し、この第2実施例の装置では、第4半導体スイッチ144がオンしたとき、リアクトル142を介して第2直流電源16の正極性出力端とコンデンサ15の一端(接地側とは反対側の端部)とが接続される。第1直流電源11の負極性出力端の電圧V1は例えば−2500[V]、第2直流電源16の正極性出力端の電圧V3は例えば+500[V]である。この電圧V3も電圧V2と同様に所定の範囲で調整可能である。
【0055】
第1実施例の装置では、コンデンサ15の充電電圧の目標値は原理的に0〜V1の範囲内、つまりは0〜−2500Vの範囲内に限られる。それに対し、第2実施例の装置では、コンデンサ15の充電電圧の目標値は原理的にV3〜V1の範囲内、つまりはここでは、+500V〜−2500Vの範囲内であり、コンデンサ15の充電電圧を正極性の電圧とすることができる。これにより、直流パルス電圧のパルス底部の電圧を正極性の電圧に設定することができる。
【0056】
第1実施例の装置と同様に、出力電圧制御部123は、図示しない電圧検出部によりコンデンサ15の充電電圧を検出した結果に基づき、その充電電圧が目標値、例えば+200Vに維持されるように、第3半導体スイッチ143と第4半導体スイッチ144とを相補的オン・オフさせるパルス信号のデューティ比を調整する。即ち、コンデンサ15の充電電圧が目標値に保たれるように、PWM制御による定電圧制御を行う。
【0057】
具体的には次のような動作により、コンデンサ15の充電電圧は一定に維持される。
フォワード期間P1に、第3半導体スイッチ143がオン、第4半導体スイッチ144がオフされると、第1直流電源11の正極性出力端116→コンデンサ15→リアクトル142→オン状態である第3半導体スイッチ143→第1直流電源11の負極性出力端115、と電流が流れる。これは第1実施例と同じである。一方、次のフリーホイール期間P2に、第4半導体スイッチ144がオン、第3半導体スイッチ143がオフされると、その直前にリアクトル142に蓄積されたエネルギーによる電流が、リアクトル142→オン状態である第4半導体スイッチ144→第2直流電源16の正極性出力端→第2直流電源16の負極性出力端→コンデンサ15→リアクトル142、と流れる。そのため、フォワード期間P1のデューティ比をD2(1>D2>0)、フリーホイール期間P2のデューティ比を1−D2とすると、コンデンサ15の充電電圧V2は、V2=V1・D2+V3・(1−D2)、となる。例えばD2=0.1とすれば、V1=−2500V、V3=+500Vのとき、V2=−2500×0.1+500×0.9=+200、となり、コンデンサ15の充電電圧を+200Vに維持することができる。このときにも、|V1|>|V2|であるから、第1実施例と同じく降圧動作である。
【0058】
図12(b)に示す期間T2には、オン状態である第2半導体スイッチ132を介して、コンデンサ15と容量性負荷回路50とが接続されるから、容量性負荷回路50にV2=+200[V]の逆電圧(パルス頂部の電圧に対し逆極性の電圧)が印加される。これにより、容量性負荷回路50の電荷量は、Q2=CE・V2=1000[pF]×−200[V]=−0.2[μC]、となる。
【0059】
期間T2が終了して期間T1に入ると、第2半導体スイッチ132がオフし、次いで第1半導体スイッチ131がオンする。すると、第1半導体スイッチ131を介して第1直流電源11の負極性出力端115と容量性負荷回路50とが接続されるから、第1実施例の装置と同様に、負極性出力端115から出力される−2500Vの電圧が容量性負荷回路50に印加される。それにより、第1直流電源11から容量性負荷回路50に、電流Ic1[A]の時間積分値Q=∫Ic1 dtに相当する電荷を供給するとともに、静電エネルギーE=(1/2)CE(V1−V2)
2=(1/2)×1000[pF]×(2500[V]+200[V])
2=3.65[mJ]を供給する。その結果、容量性負荷回路50の電荷量はCE(V1−V2)=1000[pF]×(2500[V]+200[V])=2.7[μC]だけ増加する。
【0060】
期間T1が終了し期間T2に入ると、パルス形成用駆動部122からのオン・オフ駆動信号により第1半導体スイッチ131がまずオフし、次いで第2半導体スイッチ132がオンする。すると、オン状態である第2半導体スイッチ132を介して容量性負荷回路50とコンデンサ15は並列に接続される。すると、容量性負荷回路50の電荷のうち、その直前のパルス頂部の電圧が印加されることで増加した分の電荷、つまりは、パルス頂部の電圧とパルス底部の電圧との電圧差に対応する電荷が余剰電荷となる。具体的には、余剰電荷量は2.7[μC]、であり、この余剰電荷量に応じた電流が、第2半導体スイッチ132を通して容量性負荷回路50からコンデンサ15に電流時間積分値Q=∫ Ic2 dtとして放出される。また同時に、静電エネルギーE=(1/2)CE(V1−V2)
2=3.65[mJ]が放出される。即ち、容量性負荷回路50からコンデンサ15に余剰電荷量が移動し、コンデンサ15の充電電圧が+200Vから変化する(−2500Vに近づく方向に変化する)。
【0061】
この電圧変化を検出した出力電圧制御部123は、コンデンサ15の充電電圧を+200Vに保つようにパルス信号のデューティ比を調整する。即ち、上記降圧動作モードとは逆に、該降圧動作モードにおいてフリーホイール期間であった期間P2に、第4半導体スイッチ144がオン、第3半導体スイッチ143がオフされると、その直前にコンデンサ15に蓄積されていた電荷によって、コンデンサ15→第2直流電源16の負極性端子→第2直流電源16の正極性端子→オン状態の第4半導体スイッチ144→リアクトル142→コンデンサ15、と電流が流れる。これにより、リアクトル142にエネルギーが蓄積される。そして、降圧動作モードにおいてフォワード期間であった期間P1に、第3半導体スイッチ143がオン、第4半導体スイッチ144がオフされると、リアクトル142はその直前に蓄積されたエネルギーに基づき電流を流し続けようとする。このため、第1実施例の装置と同様に、コンデンサ15、第1直流電源11、オン状態の第3半導体スイッチ143、リアクトル142を含む電流経路によって、リアクトル142に蓄積されていたエネルギーとコンデンサ15から放出されるエネルギーとが共に直流電源11に供給される。こうして、余剰電荷によってコンデンサ15の充電電圧が上昇した分に相当する電力が、第1直流電源11に回生される。回生された電圧は、第1直流電源11の内部のコンデンサに吸収される。従来は例えば抵抗で熱として消費させる等により無駄になっていた、W=3.65[mJ]×100[kHz]=365[W]の電力が、パルス頂部の供給電力の一部として再利用されることになる。
【0062】
このように第2実施例の装置では、第1実施例と同様に、電力の利用効率を向上させることができる。また、パルス底部の電圧をゼロを超えて逆極性(この例では正極性)の電圧まで広範囲に連続的に可変することができる。それにより、プラズマ装置用直流パルス電源装置の利用範囲を広げることができる。
【0063】
[第3実施例]
図4は、第3実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置10Cの概略回路構成図である。
【0064】
この第3実施例の装置では、第1実施例の装置(
図1)における昇圧/降圧コンバータ14中のリアクトル142を、互いに極性が逆である1次巻線145aと2次巻線145bとを結合した2巻線構造のリアクトル145に置き換えている。直流電源11の負極性出力端115を1次巻線145aの一端に接続し、該1次巻線145aの他端を第3半導体スイッチ143のソースに接続している。一方、コンデンサ15の一端(接地と反対側の端部)を2次巻線145bの一端に接続し、該2次巻線145bの他端を第4半導体スイッチ144のソースに接続している。第3半導体スイッチ143及び第4半導体スイッチ144のドレインはいずれも接地されている。1次巻線145aから2次巻線145bへの電圧の伝達、及び、その逆の2次巻線145bから1次巻線145aへの電圧の伝達は、いずれも2巻線構造のリアクトル145のフライバック動作により達成されるが、それ以外の動作は第1実施例の装置と基本的に同じである。
【0065】
この第3実施例の装置に特有の利点は、2巻線構造のリアクトル145を用いたことで、二つの半導体スイッチ143、144のドレインを共通に接地することができることである。それにより、例えば共通のケースに二つの半導体スイッチが収容されているようなデバイスを利用し易く、冷却や絶縁が容易になる。
【0066】
図5は、第3実施例の変形例によるプラズマ装置用直流パルス電源装置10Dの概略回路構成図である。基本的な構成や動作は第3実施例の装置と同じであるが、2巻線構造のリアクトル145の1次巻線145aの一端の接続先を直流電源11の負極性出力端ではなく、該直流電源11の入力整流回路111(
図9中のd点又はe点のいずれか)に接続する。この場合、直流電源11は絶縁型とし、第3半導体スイッチ143のドレインは直流電源11の入力整流回路111の共通線に接続する。基本的な動作は第3実施例の装置と同じである。なお、2巻線構造のリアクトル145のインダクタンスは、フライバックトランスの励磁インダクタンスと同意である。
【0067】
[第4実施例]
図6は、第4実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置10Eの概略回路構成図である。
【0068】
この第4実施例の装置は、第2実施例の装置と同様に、第3実施例の装置に直流電源16を追加し、コンデンサ15の充電電圧を正極性とすることで、パルス底部の電圧が正極性である直流パルス電圧を容量性負荷回路50に印加できるようにしたものである。したがって、1次巻線145aから2次巻線145bへの電圧の伝達、及び、その逆の2次巻線145bから1次巻線145aへの電圧の伝達は、いずれも2巻線構造のリアクトル145のフライバック動作により達成されるが、それ以外の動作は第2実施例の装置と基本的に同じである。
【0069】
[第5及び第6実施例]
図7は、第5実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置10Fの概略回路構成図である。
図8は、第6実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置10Gの概略回路構成図である。
【0070】
これら実施例のプラズマ装置用直流パルス電源装置10F、10Gでは、昇圧/降圧コンバータ14の回路構成が第1実施例、第2実施例の装置と異なる。即ち、これら実施例の装置10F、10Gにおける昇圧/降圧コンバータ14では、第1実施例、第2実施例の装置における第3半導体スイッチ143及び第4半導体スイッチ144に、さらに二つの半導体スイッチ146、147が追加され、それら四つの半導体スイッチ143〜147は周知のHブリッジ構成となっている。二つの半導体スイッチ144、146は同時にオン・オフされ、別の二つの半導体スイッチ143、147は別のタイミングで同時にオン・オフされる。直流パルス電圧の発生に係る、それ以外の動作は第1、第2実施例の装置と基本的に同じであり、同様の効果を奏する。
【0071】
[第7実施例]
図10は、第7実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置10Hの概略回路構成図である。この実施例の装置は上記第1乃至第6実施例の装置と大きく相違する点がある。それは、第1実施例の装置における昇圧/降圧コンバータ14に代えて、昇圧動作のみを実行する(降圧動作を実行しない)昇圧コンバータ140を備える点である。
【0072】
第7実施例の装置では、第1実施例の装置10Aにおけるコンデンサ15と直流電源11との挿入位置を互いに入れ替えている。この構成では、直流電源11がパルス底部の電圧V2、例えばV2=−1500Vを提供し、コンデンサ15が充電電圧をパルス頂部の電圧V1、例えばV1=−2500Vとして提供する。出力電圧制御部123によるPWM制御によって、昇圧コンバータ140は上述したようなPWM制御動作により、直流電源11の出力電圧(V2=−1500V)をコンデンサ15の充電電圧まで昇圧する。
【0073】
上述したように直流パルス電圧が頂部から底部に変化する際に容量性負荷回路50から放出された余剰電荷は、直流電源11の内部にあって電圧出力端に接続されているコンデンサ1126に移動し、その電圧はV2から増加する。その場合にも、昇圧コンバータ140は、コンデンサ15の充電電圧がV1=−2500Vになるよう出力電圧制御部123によりPWM制御される。直流電源11の出力電圧が一時的に高くなるためにPWM制御ための第3半導体スイッチ143のオン期間P2は、直流電源11の出力電圧が−1500Vであるときに比べて短くなる。それに伴い、直流電源11において発生する電力を低減することができる。その結果、従来、抵抗等で熱として消費させていた、W=(1/2)CE (V1−V2)
2 F=0.5[mJ]×100[kHz]=50[W]の電力を、パルス頂部の供給電力の一部として再利用することができる。
【0074】
なお、この場合、昇圧コンバータ140では昇圧動作のみしか行わないので PWM制御の際には第4半導体スイッチ144をPWM制御するだけでよく、第3半導体スイッチ143は単なるダイオードに置き換えることができる。そのため、駆動回路を含めた回路構成を簡素化することができる。
【0075】
但し、この構成では、パルス頂部の電力及び回生電力が第3及び第4半導体スイッチ143、144を介して供給されるため、それら半導体スイッチを通る実効電流が大きくなる。そのため、パルス頂部の電圧とパルス底部の電圧との差が少ないような、比較的小容量の装置に有効である。或いは、第3及び第4半導体スイッチ143、144として、大電流を流すことができるような半導体スイッチを用いる必要がある。
【0076】
[第8及び第9実施例]
図13は、第1実施例の一変形例である、第8実施例のプラズマ装置用直流パルス電源装置10Jの概略回路構成図である。
図14は、第8実施例のプラズマ装置用直流パルス電源装置の概略ブロック構成図である。
図16は、第2実施例の一変形例である、第9実施例のプラズマ装置用直流パルス電源装置10Kの概略回路構成図である。また、
図17(a)は、第8実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置から出力される直流パルス電圧の概略波形図、
図17(b)は第9実施例であるプラズマ装置用直流パルス電源装置から出力される直流パルス電圧の概略波形図である。
【0077】
これら第8、第9実施例の装置では、第1、第2実施例の装置に対し、容量性負荷回路50に並列に接続される半導体スイッチ135が追加されるとともに、該半導体スイッチ135をオン・オフ駆動するゼロ電圧用駆動部125が追加されている。
【0078】
半導体スイッチ135がオンすると容量性負荷回路50の両端が短絡され、その電位は接地電位つまりゼロ電位になる。第8実施例の装置においてパルス信号生成部121は、例えば、1周期期間中のT1期間では半導体スイッチ131をオン、半導体スイッチ132、135をオフ、T2期間では半導体スイッチ132をオン、半導体スイッチ131、135をオフ、T3期間では半導体スイッチ135をオン、半導体スイッチ131、132をオフするようなパルス信号を生成する。これにより、第1実施例の装置と同様に、T1期間では−V1、T2期間には−V2の電圧が容量性負荷回路50に印加される。さらにT3期間では出力電圧はゼロになる。こうして
図17(a)に示すような、−V1、−V2、及び0という3段階のレベルのパルス電圧を容量性負荷回路50に印加することができる。また、プラズマ放電の停止中には、半導体スイッチ135をオンさせることで、本装置のパルス出力電圧を基準電位である0Vに確実に維持することができる。
【0079】
一方、第9実施例の装置において、例えば、1周期期間中のT1、T2、及びT3期間において半導体スイッチ131、132、135を上述したように駆動すると、
図17(b)に示すような、−V1、+V2、及び0という3段階のレベルのパルス電圧を容量性負荷回路50に印加することができる。即ち、第2実施例の装置と同様に、パルス底部の電圧を負極性〜正極性を調整することができ、そのうえで必要に応じてパルス出力電圧を短時間で0Vにすることができる。
【0080】
なお、第8実施例のように、オン状態であるときに容量性負荷回路50の両端を短絡させる半導体スイッチ135を設ける場合には、半導体スイッチ132は単一のMOSFET素子ではなく、
図15に示すように、少なくとも二つのMOSFET素子を逆直列に接続した双方向スイッチとする必要がある。何故なら、通常、MOSFET素子は、それ自体の寄生ダイオードのために、逆導通特性(ドレイン−ソース間に逆バイアス電圧が印加されたときにドレイン−ソース間に逆電流が流れてしまう性質)を有している。そのため、例えば半導体スイッチ132が
図1に示したような単一のMOSFET素子によるものであるとすると、半導体スイッチ135がオンしたときに、コンデンサ15の両端が半導体スイッチ132の寄生ダイオード及びオン状態である半導体スイッチ135を通して短絡してしまい、コンデンサ15が放電して両端間の電圧をV2に維持できなくなる。これに対し、
図15に示した構成の双方向スイッチを半導体スイッチ132として用いることで、寄生ダイオードを通した逆導通特性の問題がなくなるため、コンデンサ15からの放電を防止することができる。
【0081】
また、第9実施例のように、負極性出力の直流電源11と正極性出力の直流電源16とを併用し、オン状態であるときに容量性負荷回路50の両端を短絡させる半導体スイッチ135を設ける場合には、半導体スイッチ132だけでなく半導体スイッチ135も、
図15に示すように、少なくとも二つのMOSFET素子を逆直列に接続した双方向スイッチとする必要がある。これは、コンデンサ15の両端電圧の極性が反転したときに、半導体スイッチ135の寄生ダイオードによってコンデンサ15の充電電圧が放電してしまうのを防止するためである。
【0082】
第1、第2実施例以外の第3〜第7実施例の装置においても、第7、第8実施例と同様に、容量性負荷回路50の両端、つまりは装置の電圧出力端を短絡する半導体スイッチ135を追加して、パルス出力電圧を短時間で0Vに切り替え可能とする構成としてもよい。この場合でも、半導体スイッチ132、又は、半導体スイッチ132、135として
図15に示した構成の双方向スイッチを用いるようにすればよい。
【0083】
[そのほかの変形例]
図11は、第1乃至第9実施例のプラズマ装置用直流パルス電源装置において、パルス形成部13等に限流抵抗を追加したときの回路構成図である。
【0084】
上述したように直流パルス電圧のパルス底部→頂部及びパルス頂部→底部におけるエッジを急峻にするには、大きな電流を短時間で供給する必要がある。しかしながら、突入電流は電流経路にあるパルス形成部13の第1半導体スイッチ131及び第2の半導体スイッチ132 にダメージを与える。そこで、
図11中に破線で示すように、直流パルス電圧の波形形状が許容可能な範囲で、第1半導体スイッチ131のドレインと第2半導体スイッチ132のソースの接続点と、容量性負荷回路50のカソード側の間に、短時間での大電流の限流を目的として数Ωから数十Ω程度の抵抗17を挿入するとよい。
【0085】
或いは、
図11中に実線で示すように、第1半導体スイッチ131の経路に挿入する抵抗133と、第2半導体スイッチ132の経路に挿入する抵抗134と、を個別に挿入してもよい。また、抵抗17と、抵抗133、134とは併用してもよい。
【0086】
このように、容量性負荷回路50に直流パルス電圧を印加する経路上に限流抵抗を挿入することで、半導体スイッチの破損を防止することができ、装置の耐久性や信頼性を向上させることができる。また、限流抵抗により不所望の共振を抑制することができ、容量性負荷回路50に印加される直流パルス電圧の振動を防止することもできる。
【0087】
なお、上記実施例はいずれも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【0088】
例えば上記実施例では、直流パルス電圧は負電圧方向に凸であるパルスであるが、正電圧方向に凸であるパルスとしてもよいことは当然であり、それに伴う回路構成の変更も容易に想到し得るものである。
【符号の説明】
【0089】
10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10J、10K…プラズマ装置用直流パルス電源装置
11…直流電源(第1直流電源)
110…出力調整部
111…入力整流回路
1111…入力整流ダイオード
1112…入力平滑リアクトル
1113、1114、1124、1125、1126、15、512…コンデンサ
112…出力整流回路
1121…出力整流ダイオード
1122、1123…出力平滑リアクトル
115…負極性出力端
116…正極性出力端
12…制御部
121…パルス信号生成部
122…パルス形成用駆動部
123…出力電圧制御部
124…充放電用駆動部
125…ゼロ電圧用駆動部
13…パルス形成部
131、132、135、143、144、146、147…半導体スイッチ
133、134、17…抵抗
14…昇圧/降圧コンバータ
140…昇圧コンバータ
142、145、511…リアクトル
145a…1次巻線
145b…2次巻線
16…第2直流電源
20…接地電位線
50…容量性負荷回路
51…ローパスフィルタ
52…プラズマ負荷回路
521…カソード電極
522…対向電極
523…放電プラズマ
60…高周波電源
61…直流電圧源
【手続補正書】
【提出日】2019年1月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
この直流パルス電源装置10Aは容量性負荷回路50に負極性の直流パルス電圧を印加するものであり、
図2に示すように、直流電源11と、パルス形成部13と、昇圧/降圧コンバータ14と、制御部12と、コンデンサ15と、を含む。ここでは、直流パルス電圧は、
図12(a)に示すように、そのパルス全体が負である負極性のパルスである。容量性負荷回路50は例えば、
3000pFのコンデンサと
10kΩの抵抗との並列等価回路である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
一例として、昇圧/降圧コンバータ14の動作周波数、つまり出力電圧制御部123で生成されるパルス信号の周波数fは100[kHz]であるものとする。この場合、リアクトル142のインダクタンス値は例えば5[mH]以上とするとよい。また、充電電圧を安定化するために、容量性負荷回路50の容量値が
3000[pF]であるときコンデンサ15の容量値は5[μF]以上とするとよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
いま、
図12(a)に示すパルス底部に対応するT2期間、つまり第1半導体スイッチ131がオフし第2半導体スイッチ132がオンしている状態を定常的な初期状態と考える。このとき、第2半導体スイッチ132を介して、コンデンサ15の一端(接地側とは反対側の端部)が容量性負荷回路50に接続される。そのため、コンデンサ15の充電電圧V2=−1500[V]が、容量性負荷回路50にパルス底部の電圧として印加される。このとき、容量性負荷回路50には、Q2=CE・V2=
3000[pF]×1500[V]=
4.5[μC]、の電荷が蓄積される。また、放電プラズマ523には、Ip2=1500[V]/
10[kΩ]=0.
15[A]、の電流が流れ、放電プラズマ523において、P2=V2・Ip2=1500[V]×0.
15[A]=
225[W]、の有効電力が消費される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
図12(a)に示す期間T2が終了し期間T1に入ると、パルス形成用駆動部122からのオン・オフ駆動信号により第2半導体スイッチ132がまずオフし、次いで第1半導体スイッチ131がオンして、第1半導体スイッチ131を介して直流電源11の負極性出力端115と容量性負荷回路50とが接続される。そのため、負極性出力端115から出力される−2500Vの電圧が容量性負荷回路50に印加される。それにより、直流電源11から容量性負荷回路50に、電流Ic1[A]の時間積分値Q=∫Ic1 dtに相当する電荷を供給するとともに、静電エネルギーE=(1/2)CE(V1−V2)
2=(1/2)×
3000[pF]×(2500[V]−1500[V])
2=0.
15[mJ]を供給する。その結果、容量性負荷回路50の電荷量はCE(V1−V2)=
3000[pF]×(2500[V]−1500[V])=
3[μC]だけ増加し、電荷量は
7.5[μC]になる。また、放電プラズマ523に供給する電流はIp1=0.
25[A]となり、放電プラズマ523における有効電力はP1=V1・Ip1=
625[W]に増加する。なお、このときにも、コンデンサ15の充電電圧は−1500[V]に維持される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
期間T1が終了し期間T2に入ると、パルス形成用駆動部122からのオン・オフ駆動信号により第1半導体スイッチ131がまずオフし、次いで第2半導体スイッチ132がオンする。すると、オン状態である第2半導体スイッチ132を介して容量性負荷回路50とコンデンサ15は並列に接続される。すると、容量性負荷回路50の電荷のうち、その直前のパルス頂部の電圧が印加されることで増加した分の電荷、つまりは、パルス頂部の電圧とパルス底部の電圧との電圧差に対応する電荷が余剰電荷となる。具体的には、余剰電荷量はQ1−Q2=CE(V1−V2)=
3[μC]、であり、この余剰電荷量に応じた電流が、第2半導体スイッチ132を通して容量性負荷回路50からコンデンサ15に電流時間積分値Q=∫ Ic2 dtとして放出される。また同時に、静電エネルギーE=(1/2)CE(V1−V2)
2=
1.5[mJ]が放出される。即ち、容量性負荷回路50からコンデンサ15に余剰電荷量が移動するから、仮にコンデンサ15を放電させる構成が無いとすると、直流パルス電圧の1周期毎にコンデンサ15の充電電圧が増加し(電圧の絶対値が増加し)、最終的には−V2→−V1となって直流パルス電圧波形を得ることができなくなる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
このときには、上記降圧動作モードとは逆に、該降圧動作モードにおいてフォワード期間であった期間P2に、第4半導体スイッチ144がオン、第3半導体スイッチ143がオフされると、その直前にコンデンサ15に蓄積されていた電荷によって、コンデンサ15→オン状態の第4半導体スイッチ144→リアクトル142→コンデンサ15、と電流が流れる。これにより、リアクトル142にエネルギーが蓄積される。そして、降圧動作モードにおいてフォワード期間であった期間P1に、第3半導体スイッチ143がオン、第4半導体スイッチ144がオフされると、リアクトル142はその直前に蓄積されたエネルギーに基づき電流を流し続けようとする。このため、コンデンサ15、直流電源11、オン状態の第3半導体スイッチ143、リアクトル142を含む電流経路によって、リアクトル142に蓄積されていたエネルギーとコンデンサ15から放出されるエネルギーとが共に直流電源11に供給される。こうして、余剰電荷によってコンデンサ15の充電電圧が上昇した分に相当する電力が、直流電源11に回生される。回生された電圧は、後述するように、直流電源11の内部のコンデンサに吸収される。これに伴って、直流電源11自体の動作により放電プラズマ523等へ供給する電力を低減することができる。具体的には、従来は、例えばコンデンサ15の両端に接続される抵抗等において無駄に消費されていた、W=(1/2)CE(V1−V2)
2f=
1.5[mJ]×100[kHz]=
150[W]の電力が、パルス頂部の供給電力の一部として再利用できることになる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
図12(b)に示す期間T2には、オン状態である第2半導体スイッチ132を介して、コンデンサ15と容量性負荷回路50とが接続されるから、容量性負荷回路50にV2=+200[V]の逆電圧(パルス頂部の電圧に対し逆極性の電圧)が印加される。これにより、容量性負荷回路50の電荷量は、Q2=CE・V2=
3000[pF]×−200[V]=−
0.6[μC]、となる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
期間T2が終了して期間T1に入ると、第2半導体スイッチ132がオフし、次いで第1半導体スイッチ131がオンする。すると、第1半導体スイッチ131を介して第1直流電源11の負極性出力端115と容量性負荷回路50とが接続されるから、第1実施例の装置と同様に、負極性出力端115から出力される−2500Vの電圧が容量性負荷回路50に印加される。それにより、第1直流電源11から容量性負荷回路50に、電流Ic1[A]の時間積分値Q=∫Ic1 dtに相当する電荷を供給するとともに、静電エネルギーE=(1/2)CE(V1−V2)
2=(1/2)×
3000[pF]×(2500[V]+200[V])
2=
10.95[mJ]を供給する。その結果、容量性負荷回路50の電荷量はCE(V1−V2)=
3000[pF]×(2500[V]+200[V])=
8.1[μC]だけ増加する。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
期間T1が終了し期間T2に入ると、パルス形成用駆動部122からのオン・オフ駆動信号により第1半導体スイッチ131がまずオフし、次いで第2半導体スイッチ132がオンする。すると、オン状態である第2半導体スイッチ132を介して容量性負荷回路50とコンデンサ15は並列に接続される。すると、容量性負荷回路50の電荷のうち、その直前のパルス頂部の電圧が印加されることで増加した分の電荷、つまりは、パルス頂部の電圧とパルス底部の電圧との電圧差に対応する電荷が余剰電荷となる。具体的には、余剰電荷量は
8.1[μC]、であり、この余剰電荷量に応じた電流が、第2半導体スイッチ132を通して容量性負荷回路50からコンデンサ15に電流時間積分値Q=∫ Ic2 dtとして放出される。また同時に、静電エネルギーE=(1/2)CE(V1−V2)
2=
10.95[mJ]が放出される。即ち、容量性負荷回路50からコンデンサ15に余剰電荷量が移動し、コンデンサ15の充電電圧が+200Vから変化する(−2500Vに近づく方向に変化する)。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
この電圧変化を検出した出力電圧制御部123は、コンデンサ15の充電電圧を+200Vに保つようにパルス信号のデューティ比を調整する。即ち、上記降圧動作モードとは逆に、該降圧動作モードにおいてフリーホイール期間であった期間P2に、第4半導体スイッチ144がオン、第3半導体スイッチ143がオフされると、その直前にコンデンサ15に蓄積されていた電荷によって、コンデンサ15→第2直流電源16の負極性端子→第2直流電源16の正極性端子→オン状態の第4半導体スイッチ144→リアクトル142→コンデンサ15、と電流が流れる。これにより、リアクトル142にエネルギーが蓄積される。そして、降圧動作モードにおいてフォワード期間であった期間P1に、第3半導体スイッチ143がオン、第4半導体スイッチ144がオフされると、リアクトル142はその直前に蓄積されたエネルギーに基づき電流を流し続けようとする。このため、第1実施例の装置と同様に、コンデンサ15、第1直流電源11、オン状態の第3半導体スイッチ143、リアクトル142を含む電流経路によって、リアクトル142に蓄積されていたエネルギーとコンデンサ15から放出されるエネルギーとが共に直流電源11に供給される。こうして、余剰電荷によってコンデンサ15の充電電圧が上昇した分に相当する電力が、第1直流電源11に回生される。回生された電圧は、第1直流電源11の内部のコンデンサに吸収される。従来は例えば抵抗で熱として消費させる等により無駄になっていた、W=
10.95[mJ]×100[kHz]=
1095[W]の電力が、パルス頂部の供給電力の一部として再利用されることになる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
上述したように直流パルス電圧が頂部から底部に変化する際に容量性負荷回路50から放出された余剰電荷は、直流電源11の内部にあって電圧出力端に接続されているコンデンサ1126に移動し、その電圧はV2から増加する。その場合にも、昇圧コンバータ140は、コンデンサ15の充電電圧がV1=−2500Vになるよう出力電圧制御部123によりPWM制御される。直流電源11の出力電圧が一時的に高くなるためにPWM制御ための第3半導体スイッチ143のオン期間P2は、直流電源11の出力電圧が−1500Vであるときに比べて短くなる。それに伴い、直流電源11において発生する電力を低減することができる。その結果、従来、抵抗等で熱として消費させていた、W=(1/2)CE (V1−V2)
2 F=
1.5[mJ]×100[kHz]=
150[
W]の電力を、パルス頂部の供給電力の一部として再利用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2019年7月29日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを形成する電極を含む容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
a)出力電圧が可変であって、一対の出力端の一端が基準電位に接続された直流電源と、
b)一端が基準電位に接続されたコンデンサと、
c)前記直流電源の出力電圧である第1の電圧と前記コンデンサに保持されている電圧である第2の電圧とを切り替えて、前記容量性負荷回路に印加する略矩形波状の直流パルス電圧を発生させるパルス形成部と、
d)前記直流電源と前記コンデンサとの間に設けられ、前記直流電源側から前記コンデンサ側への直流電圧の降圧動作と前記コンデンサ側から前記直流電源側への昇圧動作との、双方向の動作が可能である昇圧/降圧コンバータと、
e)前記パルス形成部における第1及び第2の電圧の切替え動作、並びに、前記昇圧/降圧コンバータにおける昇圧動作及び降圧動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの充電電圧が前記第1の電圧と基準電位との間の所定の目標値になるように前記昇圧/降圧コンバータに降圧動作を行わせて前記コンデンサの充電電圧を一定に維持するとともに、前記第1の電圧のレベルの前記直流パルス電圧が前記容量性負荷回路に印加されたのち該直流パルス電圧が第2の電圧のレベルに変化するときに、前記容量性負荷回路に蓄積されていた前記第1の電圧と第2の電圧との電圧差に対応する余剰の電荷の移動によって前記コンデンサの充電電圧が上昇すると、前記昇圧/降圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記コンデンサにおいて増加したエネルギーに基づく電力を前記直流電源に回生させるように、前記パルス形成部及び前記昇圧/降圧コンバータを制御する、ことを特徴とするプラズマ装置用直流パルス電源装置。
【請求項2】
プラズマを形成する電極を含む容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
a)出力電圧が可変であって、一対の出力端の一端が基準電位に接続された第1直流電源と、
b)出力電圧が可変であって、一対の出力端の一端が基準電位に接続された第2直流電源と、
c)一端が基準電位に接続されたコンデンサと、
d)前記第1直流電源の出力電圧である第1の電圧と前記コンデンサに保持されている電圧である第2の電圧とを切り替えて、前記容量性負荷回路に印加する略矩形波状の直流パルス電圧を発生させるパルス形成部と、
e)前記第1直流電源及び前記第2直流電源と前記コンデンサとの間に設けられ、前記第1及び第2の直流電源側から前記コンデンサ側への直流電圧の降圧動作と前記コンデンサ側から前記第1直流電源側への昇圧動作との、双方向の動作が可能である昇圧/降圧コンバータと、
f)前記パルス形成部における第1及び第2の電圧の切替え動作、並びに、前記昇圧/降圧コンバータにおける昇圧動作及び降圧動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの充電電圧が前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の所定の目標値になるように前記昇圧/降圧コンバータに降圧動作を行わせて前記コンデンサの充電電圧を一定に維持するとともに、前記第1の電圧のレベルの前記直流パルス電圧が前記容量性負荷回路に印加されたのち該直流パルス電圧が第2の電圧のレベルに変化するときに、前記容量性負荷回路に蓄積されていた前記第1の電圧と第2の電圧との電圧差に対応する余剰の電荷の移動によって前記コンデンサの充電電圧が上昇すると、前記昇圧/降圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記コンデンサにおいて増加したエネルギーに基づく電力を前記第1の直流電源に回生させるように、前記パルス形成部及び前記昇圧/降圧コンバータを制御する、ことを特徴とするプラズマ装置用直流パルス電源装置。
【請求項3】
プラズマを形成する電極を含む容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
a)出力電圧が可変であって、一対の出力端に並列に出力コンデンサを有し、且つ該出力端の一端が基準電位に接続された直流電源と、
b)一端が基準電位に接続されたコンデンサと、
c)前記コンデンサに保持されている電圧である第1の電圧と前記直流電源の出力電圧である第2の電圧とを切り替えて、前記容量性負荷回路に印加する略矩形波状の直流パルス電圧を発生させるパルス形成部と、
d)前記直流電源と前記コンデンサとの間に設けられ、前記直流電源側から前記コンデンサ側への昇圧動作が可能である昇圧コンバータと、
e)前記パルス形成部における第1及び第2の電圧の切替え動作、及び、前記昇圧コンバータにおける昇圧動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの充電電圧が前記第2の電圧よりも高い所定の目標値になるように前記昇圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記コンデンサの充電電圧を一定に維持するとともに、前記第1の電圧のレベルの前記直流パルス電圧が前記容量性負荷回路に印加されたのち該直流パルス電圧が第2の電圧のレベルに変化するときに、前記容量性負荷回路に蓄積されていた前記第1の電圧と第2の電圧との電圧差に対応する余剰の電荷の移動によって前記直流電源の出力コンデンサの充電電圧が上昇すると、前記昇圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記出力コンデンサにおいて増加したエネルギーを放出し前記コンデンサを充電するように、前記パルス形成部及び前記昇圧コンバータを制御する、ことを特徴とするプラズマ装置用直流パルス電源装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
前記パルス形成部は、前記容量性負荷回路が接続される当該装置の電圧出力端を基準電位に接続するスイッチを含み、
前記制御部は、前記第1及び2の電圧のいずれも選択しない状態で前記スイッチを閉成するように前記パルス形成部を制御することにより、該第1及び第2の電圧に基準電位を加えた、電圧レベルが三段階に変化する直流パルス電圧を発生させる、ことを特徴とするプラズマ装置用直流パルス電源装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
上記課題を解決するためになされた本発明の第1の態様は、プラズマを形成する電極を含む容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
a)出力電圧が可変であって、一対の出力端の一端が基準電位に接続された直流電源と、
b)一端が基準電位に接続されたコンデンサと、
c)前記直流電源の出力電圧である第1の電圧と前記コンデンサに保持されている電圧である第2の電圧とを切り替えて、前記容量性負荷回路に印加する略矩形波状の直流パルス電圧を発生させるパルス形成部と、
d)前記直流電源と前記コンデンサとの間に設けられ、前記直流電源側から前記コンデンサ側への直流電圧の降圧動作と前記コンデンサ側から前記直流電
源側への昇圧動作との、双方向の動作が可能である昇圧/降圧コンバータと、
e)前記パルス形成部における第1及び第2の電圧の切替え動作、並びに、前記昇圧/降圧コンバータにおける昇圧動作及び降圧動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの充電電圧が前記第1の電圧と基準電位との間の所定の目標値になるように前記昇圧/降圧コンバータに降圧動作を行わせて前記コンデンサの充電電圧を一定に維持するとともに、前記第1の電圧のレベルの前記直流パルス電圧が前記容量性負荷回路に印加されたのち該直流パルス電圧が第2の電圧のレベルに変化するときに、前記容量性負荷回路に蓄積されていた前記第1の電圧と第2の電圧との電圧差に対応する余剰の電荷の移動によって前記コンデンサの充電電圧が上昇すると、前記昇圧/降圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記コンデンサにおいて増加したエネルギーに基づく電力を前記直流電源に回生させるように、前記パルス形成部及び前記昇圧/降圧コンバータを制御する、ことを特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
上記課題を解決するためになされた本発明の第2の態様は、プラズマを形成する電極を含む容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
a)出力電圧が可変であって、一対の出力端の一端が基準電位に接続された第1直流電源と、
b)出力電圧が可変であって、一対の出力端の一端が基準電位に接続された第2直流電源と、
c)一端が基準電位に接続されたコンデンサと、
d)前記直流電源の出力電圧である第1の電圧と前記コンデンサに保持されている電圧である第2の電圧とを切り替えて、前記容量性負荷回路に印加する略矩形波状の直流パルス電圧を発生させるパルス形成部と、
e)前記第1直流電源及び前記第2直流電源と前記コンデンサとの間に設けられ、
前記第1及び第2の直流電源側から前記コンデンサ側への直流電圧の降圧動作と前記コンデンサ側から前記第1直流電
源側への昇圧動作との、双方向の動作が可能である昇圧/降圧コンバータと、
f)前記パルス形成部における第1及び第2の電圧の切替え動作、並びに、前記昇圧/降圧コンバータにおける昇圧動作及び降圧動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの充電電圧が前記第1の電圧と前記第2の電圧との間の所定の目標値になるように前記昇圧/降圧コンバータに降圧動作を行わせて前記コンデンサの充電電圧を一定に維持するとともに、前記第1の電圧のレベルの前記直流パルス電圧が前記容量性負荷回路に印加されたのち該直流パルス電圧が第2の電圧のレベルに変化するときに、前記容量性負荷回路に蓄積されていた前記第1の電圧と第2の電圧との電圧差に対応する余剰の電荷の移動によって前記コンデンサの充電電圧が上昇すると、前記昇圧/降圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記コンデンサにおいて増加したエネルギーに基づく電力を前記第1の直流電源に回生させるように、前記パルス形成部及び前記昇圧/降圧コンバータを制御する、ことを特徴としている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
また上記課題を解決するためになされた本発明の第3の態様は、プラズマを形成する電極を含む容量性負荷回路に直流パルス電圧を印加するプラズマ装置用直流パルス電源装置であって、
a)出力電圧が可変であって、一対の出力端に並列に出力コンデンサを有し、且つ該出力端の一端が基準電位に接続された直流電源と、
b)一端が基準電位に接続されたコンデンサと、
c)前記コンデンサに保持されている電圧である第1の電圧と前記直流電源の出力電圧である第2の電圧とを切り替えて、前記容量性負荷回路に印加する略矩形波状の直流パルス電圧を発生させるパルス形成部と、
d)前記直流電源と前記コンデンサとの間に設けられ、前記直流電
源側から前記コンデンサ側への昇圧動作が可能である昇圧コンバータと、
e)前記パルス形成部における第1及び第2の電圧の切替え動作、及び、前記昇圧コンバータにおける昇圧動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの充電電圧が前記第2の電圧よりも高い所定の目標値になるように前記昇圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記コンデンサの充電電圧を一定に維持するとともに、前記第1の電圧のレベルの前記直流パルス電圧が前記容量性負荷回路に印加されたのち該直流パルス電圧が第2の電圧のレベルに変化するときに、前記容量性負荷回路に蓄積されていた前記第1の電圧と第2の電圧との電圧差に対応する余剰の電荷の移動によって前記直流電源の出力コンデンサの充電電圧が上昇すると、前記昇圧コンバータに昇圧動作を行わせて前記出力コンデンサにおいて増加したエネルギーを放出し前記コンデンサを充電するように、前記パルス形成部及び前記昇圧コンバータを制御する、ことを特徴としている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
第2の態様の直流パルス電源装置でも、基本的な動作は第1の態様の直流パルス電源装置と同様である。第1の態様の直流パルス電源装置と異なるのは、第1直流電源とは別に2直流電源が設けられ、昇圧/降圧コンバータでの降圧動作によりコンデンサが充電される際に、第1直流電
源の出力電圧と第2直流電源の出力電圧との両方が用いられる点である。コンデンサの充電電圧の目標値は第1直流電
源の出力電圧と第2直流電源の出力電圧との間で適宜に決めることができ、制御部はその目標値に応じて昇圧/降圧コンバータでの降圧動作(換言すれば定電圧制御動作)を制御する。したがって、例えば第1直流電源の出力電圧が負極性の電圧であるときに、第2直流電源の出力電圧を正極性の電圧とすれば、コンデンサには正極性の電圧を充電することもできる。コンデンサの充電電圧を正極性にすれば、直流パルス電圧のパルス底部の電圧は正極性になり、パルス底部の電圧をパルス頂部の電圧とは逆極性の電圧まで広げることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
第3の態様の直流パルス電源装置では、第1及び第2の態様の直流パルス電源装置とは異なり、制御部の制御の下でパルス形成部は、直流電源の出力電圧を直流パルス電圧のパルス底部の電圧として出力し、コンデンサに保持されている電圧を直流パルス電圧のパルス頂部の電圧として出力する。また、直流電源とコンデンサとの間には、双方向の昇圧/降圧コンバータではなく、直流電
源側からコンデンサ側への昇圧動作のみが可能である昇圧コンバータが設けられる。直流パルス電圧のパルス底部の電圧は直流電源の出力電圧で決まるから、この出力電圧を適宜に調整することで直流パルス電圧のパルス底部の電圧を変えることができる。