特開2020-92635(P2020-92635A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-92635(P2020-92635A)
(43)【公開日】2020年6月18日
(54)【発明の名称】培養装置および培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20200522BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20200522BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20200522BHJP
   A01H 4/00 20060101ALN20200522BHJP
   A01G 31/00 20180101ALN20200522BHJP
【FI】
   C12M1/00 D
   C12M3/00 Z
   C12N1/00 A
   A01H4/00
   A01G31/00 602
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-232098(P2018-232098)
(22)【出願日】2018年12月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】秋田 求
【テーマコード(参考)】
2B030
2B314
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030CA28
2B030CB02
2B030CD07
2B030CD09
2B030CD18
2B314MA23
2B314MA62
2B314NA18
2B314NA25
2B314PD54
4B029AA01
4B029BB01
4B029CC01
4B029CC02
4B029DB11
4B029DB16
4B029DF04
4B029GB07
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA87X
4B065AA89X
4B065BC05
4B065BC50
(57)【要約】
【課題】培養をスケールアップするためには、金属製の圧力容器の一種である培養槽が用いられる。しかし、機械通気により雑菌汚染される危険性が高まる、若しくは規模を変更して運転する場合は、各々の規模に合わせて装置を変えなければならないなどといった課題があった。
【解決手段】水が貯留される水槽と、
前記水槽中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置と、
ガス透過性を有しかつ疎水性のフィルム部を有し、
被培養生物および培地が収納され、
前記フィルム部が前記水槽の水に接するように入れられる培養容器を
有することを特徴とする培養装置は、簡便な上に、通気はフィルム部を通じて行うため、通気に伴う雑菌汚染の危険がない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が貯留される水槽と、
前記水槽中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置と、
ガス透過性を有しかつ疎水性のフィルム部を有し、
被培養生物および培地が収納され、
前記フィルム部が前記水槽の水に接するように入れられる培養容器を
有することを特徴とする培養装置。
【請求項2】
前記培養容器の前記フィルム部は袋状であることを特徴とする請求項1に記載された培養装置。
【請求項3】
前記培養容器を前記水槽中に保持する保持手段を有することを特徴とする請求項1または2の何れかに記載された培養装置。
【請求項4】
前記水槽および前記培養容器は透明部分を有し、前記培養容器内に光線を照射する光源をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一の請求項に記載された培養装置。
【請求項5】
前記フィルム部は、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)あるいはエチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)の少なくとも一種の樹脂で構成された請求項1乃至4の何れか一の請求項に記載された培養装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一の請求項に記載された培養装置を有するバイオリアクター。
【請求項7】
ガス透過性を有しかつ疎水性のフィルム部を有する培養容器に被培養生物および培地を収納する工程と、
前記フィルム部に微細気泡を接触させる工程を有することを特徴とする培養方法。
【請求項8】
前記培養容器に培地を追加する工程をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載された培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養装置および培養方法に関するものであり、特にガス透過性を有し疎水性の高い樹脂製フィルムで作製した密閉容器を、槽内に満たした水中に全部または一部分を沈め、かつ槽内に満たした水中に充満させた微細気泡に接触させることで、容器内への酸素供給を格段に高めることのできる培養装置および培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
培養をする際に微細気泡を利用する方法は、従来から提案されていた。例えば、特許文献1では、発酵槽において液体培地で微生物(但し、偏性嫌気性微生物を除く)を培養する際に、培養中は発酵槽中の培養液をダイヤフラムポンプにより循環させ、その循環中にマイクロバブル発生装置により通気することで、高い生存率及び活性を保持した微生物(例えば酵母、乳酸菌など)を簡便且つ効率的に培養する(増殖させる)ことができる方法が開示されている。
【0003】
また、植物などを栽培する場合に微細気泡を利用する方法としては、特許文献2において、加圧液体と気体との導入部と円筒状の気泡発生空間を有し、前記導入部内に、前記気泡発生空間に開口する加圧液体導入孔と気体導入孔を形成し、前記加圧液体導入孔を前記導入部の端面に開口し、前記気体導入孔を前記導入部の側面に開口したマイクロバブル発生ノズルと、栽培作物を植え付けた定植パネルを備えた栽培ベッドと、この栽培ベッドに養液を供給するパイプと、このパイプの途中または先端に取り付けた前記マイクロバブル発生ノズルに養液を圧送するポンプとを備えた水耕栽培酸素供給システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−198598号公報
【特許文献2】特開2002−142582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
培養をスケールアップするためには、特許文献1に記載しているように、一般に金属製の圧力容器の一種である培養槽が用いられる。これを液体培地で満たして機械通気する方法が最も一般的に採用される。
【0006】
しかし、それには、下記に代表される種々の問題がある。
1)培養装置が複雑で高価である。
2)操作が複雑で運転に技術を要する。
3)規模を変更して運転する場合は、各々の規模に合わせて装置を変えなければならない。
4)機械通気により雑菌汚染される危険性が高まる。
5)光を必要とする場合、特殊な構造と装置が必要となる。
6)機械通気にともなって生じる物理的ストレスに対して敏感な生物は培養できない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みて想到されたものである。具体的に本発明に係る培養装置は、
水が貯留される水槽と、
前記水槽中に微細気泡を発生させる微細気泡発生装置と、
ガス透過性を有しかつ疎水性のフィルム部を有し、
被培養生物および培地が収納され、
前記フィルム部が前記水槽の水に接するように入れられる培養容器を
有することを特徴とする。
【0008】
また本発明に係る培養方法は、
ガス透過性を有しかつ疎水性のフィルム部を有する培養容器に被培養生物および培地を収納する工程と、
前記フィルム部に微細気泡を接触させる工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、上述した問題点(1〜6)は全て解決される。具体的には、以下のとおりである。
【0010】
1)本発明に係る培養装置では、培養容器は、ガス透過性を有しかつ疎水性のフィルムで作った袋だけでもよく、単純で安価である。
2)本発明に係る培養装置では、圧力容器は不要であるので、操作は簡単で無菌的に移植操作ができれば誰でも培養できる。
3)本発明に係る培養装置では、培養容器(フィルム製の袋)の数や大きさによって規模の変更が可能なので非常に容易である。
4)本発明に係る培養装置では、培養容器を入れる水槽には微細気泡を発生させるものの、培養容器内には、機械通気しないので、大規模な雑菌汚染の危険性はない。
5)また、被培養生物は培養容器内で培養され、直接通気を受けないので、被培養生物の通気に伴う物理的ストレスは完全に解消できる。
6)本発明に係る培養装置においては、光を必要とする場合は、水槽の周囲の適当な方向から光を照射すればよく、特別な採光の手立てを用意する必要がない。
7)培養容器(フィルム製の袋)の形状、内部に入れる培地量等は、自由に設定でき、それによって、培養途中で培地を追加したり、培養完了まで放置しておく等、いずれの方法も実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る培養装置の構成を示す図である。
図2】培養容器の構成例を示す図である。
図3】保持手段の例を示す図である。
図4】微細気泡を用いた際のフィルムFの酸素透過速度を測定したグラフである。
図5】イチゴを6週間栽培した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明に係る培養装置および培養方法について図面および実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0013】
図1に本発明に係る培養装置の概要を示す。培養装置1には、水槽10、微細気泡発生装置12、照明装置14、培養容器20、培養容器20の保持手段16を有する。水槽10は、水Wを貯留できるものであれば特に限定されるものではない。光を必要とする生物を対象とする場合は、側面10sや底面10bの少なくとも一方が透明部分を有していれば好ましい。
【0014】
照明装置14は、光合成が必要な被培養生物BBを培養する際に用いる。光合成が必要な波長および照度があればよい。照明装置14は水槽10の透明部分を通じて培養容器20に光を与える。
【0015】
微細気泡発生装置12は、水槽10内の水Wを吸い、微細気泡BLを含んだ水WB(「微細気泡水WB」とも呼ぶ。)を水槽10に返す。微細気泡発生装置12は、マイクロバブルが発生できるものが望ましい。微細気泡発生装置12はさらに、ナノバブルも発生していてよい。微細気泡発生装置12は、水槽10中に配置してもよいし、水槽10の外に配置されていてもよい。
【0016】
水槽10の底部分には、微細気泡発生装置12が発生する微細気泡水WBを放出する放出管12aが配置されていてもよい。水槽10に貯留された水に微細気泡BLを充満させるためである。水槽10中の水Wは、微細気泡BLが充満すると微細気泡水WBとなる。
【0017】
図2(a)に培養容器20の一例を示す。培養容器20は本体20dに蓋20fで密閉できる構造となっている。本体20dには、ガス透過性を有しかつ疎水性のフィルム部20aを有していることが必要である。フィルム部20aを通して微細気泡BLから酸素を培養容器20内に取り込むからである。また、本体20dには光を取り込める採光部20bが設けられていてもよい。被培養生物BBには、光合成を行わせる場合もあるからである。
【0018】
採光部20bには、透明なフィルムや樹脂若しくはガラスなどで、培養容器20内部に光を取り込めるようにする。なお、培養容器20は、採光部20bが必ず水面に対して上側を向き、フィルム部20aが水面に対して下側を向くような構造であれば好ましい。
【0019】
フィルム部20aを構成するガス透過性を有しかつ疎水性のフィルムF(単に「フィルムF」とも呼ぶ。)としては、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)あるいはエチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)の少なくとも一種の樹脂フィルムを好適に利用することができる。なお、フィルム部20aを構成するフィルムFは複数種類で構成されていてもよい。
【0020】
培養容器20内に収納される被培養生物BBには、特に制限はない。しかし、本発明に係る培養装置1では、培養容器20内への酸素の供給速度が高くなる。したがって、酸素を必要とする生物であるのが望ましい。具体的には、微生物、菌類、植物、細胞といった生物を好適に培養することができる。培養容器20内には、被培養生物BBと共に、生物毎に好適な培地を入れることができる。ここでは、被培養生物BBには、培地も含まれるものとして説明を続ける。
【0021】
培養容器20内には、被培養生物BB以外に空気が溜まるスペースSがあってもよい。スペースSには、被培養生物BBの好みに応じて空気や空気以外の物(気体、液体、固体のいずれでもよい)が含まれていてもよい。
【0022】
培養容器20の非常に単純な構成の一例としては、フィルムFを袋状にし、被培養生物BBを入れ、クリップ21で開口部を気密に閉じる形態である(図2(b)参照)。この場合フィルムFが透明であれば、フィルムF自体がフィルム部20aであり、また採光部20bを構成する。
【0023】
図1を再度参照して、保持手段16は、培養容器20を水槽10の水中に沈め、その状態を保持するための手段である。培養容器20は水槽10に貯留された水に全部沈めるのが望ましい。しかし、培養容器20のフィルム部20aが水槽10の微細気泡BLを含んだ水に接するように保持できればよい。
【0024】
図3に保持手段16の例を示す。なお、図3では、水槽10と培養容器20と保持手段16だけを示し、その他の部材については、記載を省略している。図3(a)を参照すると、水槽10の上部から培養容器20を水中に押し込むタイプが挙げられる。
【0025】
保持手段16−1は、水槽10の上部に固定された枠16−1aから押さえ具16−1bが突設された構造になっている。押さえ具16−1bの形状は特に限定されるものではない。このような保持手段16−1は、培養容器20が浮力を有している場合に有効である。
【0026】
図3(b)を参照すると、培養容器20が浮き上がらないよう、若しくは沈んで底に沈降してしまわないように、水槽10の内部に設けたアーム16−2bのようなタイプが挙げられる。水槽10の上部に固定された枠16−2aから水槽10内に延設されたアーム16−2bには、連結紐16−2cが備えられている。この連結紐16−2cに培養容器20を連結しておくことで、培養容器20は、連結紐16−2cの長さ以上には水面へも底面へも行かず保持することができる。
【0027】
図3(c)を参照すると、培養容器20をザル16−3に入れ、ザル16−3毎水槽10に沈めるタイプが挙げられる。もちろん、これ以外の方法で培養容器20を水中に保持する方法も保持手段16に含まれる。
【0028】
なお、培養容器20のフィルム部20aが水面に接するのであれば、培養容器20をそのまま水槽10に投入しただけであってもよい(図3(d))。フィルム部20aが微細気泡水WBに接しているからである。この場合は、保持手段16は使用しなくてもよい。例えば、図2(b)で示した培養容器20が袋状のフィルムの開口をクリップ止めしただけの構成の場合である。培養容器20は、このような非常に簡便な構成で実施することができる。
【0029】
次に本発明に係る培養装置1の使用方法について説明する。まず水槽10に水Wを入れ、微細気泡発生装置12を動作させる。これによって、水槽10内に微細気泡水WBが発生する。次に培養容器20に被培養生物BBを適当な培地とともに、封入する。そして、水槽10中に培養容器20を入れる。この際に、培養容器20を完全に水Wに埋没させてしまうのが、好ましい。しかし、培養容器20のフィルム部20aが微細気泡水WBに接するのであれば、水槽10の水面に浮かせておくだけであってもよい。この状態で一定期間放置することで培養が進む。
【0030】
なお、途中で培養容器20中の培地を交換してもよい。また、定期的若しくは定常的に照明装置14によって培養容器20内の被培養生物BBに光を照射してもよい。
【0031】
また、本発明に係る培養装置1においては、単に被培養生物BBを培地で培養するだけでなく、培地として原料を入れ、被培養生物BBとして酵母や菌類を入れることで、原料を被培養生物の力で加工するバイオリアクターとして利用することもできる。つまり培養容器20自体がリアクター容器とみなせる。
【0032】
次に本発明に係る培養装置1および培養方法の作用について説明する。ガス透過性を有しかつ疎水性のフィルムFは、表面が高い疎水性となっているため、微細気泡BL(マイクロバブルを含む)は、フィルムFの表面に付着しやすい。そして、微細気泡BLは消失する際に高い圧力を生じる。したがって、微細気泡BLが高密度で付着したフィルムFの表面では、酸素分子がより激しくフィルムFに衝突する。その結果、フィルムを通過する酸素移動速度が大きくなる。
【0033】
すなわち、本発明の培養装置1で、被培養生物BBを培養すると、酸素を素早く供給されるため、培養効果が高くなる。次に実施例を用いてさらに具体的に説明を行う。
【実施例】
【0034】
<実施例1:微細気泡水WBからの酸素移動>
FEPフィルム製の筒(フィルム厚さ50μm、直径55mm)の一端をクリップで封じ、中に水200mLを入れ、窒素ガスを吹き込むことによって、溶存酸素濃度を十分に低下させた。もう一端からは溶存酸素濃度測定用の電極を差し込んでからきつく閉じた。なお、FEPフィルムはガス透過性を有しかつ疎水性のフィルムFである。
【0035】
(a)無通気の水槽、(b)観賞魚水槽用(バブリングした水槽)、(c)微細気泡を継続して発生させている水槽、(d)空気中、という4条件において、FEPフィルム製袋内の溶存酸素濃度の変換を測定した。水温は21℃であった。測定中は、容器内の水面の高さが水槽の水面より高くならないように保った。
【0036】
微細気泡生成には、Pao60S(森鉄工株式会社製)を用いた。微細気泡は、肉眼ではほとんど気泡が観察できない程度まで通気量を絞り込んだ(100mL/min以下)。また(b)では気泡が直接に袋に衝突するようにした。
【0037】
結果を図4(a)〜図4(d)に示した。各グラフとも、横軸は時間(分)であり、縦軸は溶存酸素濃度(mg/L)である。グラフの縦軸のスケールは図4(a)〜図4(d)まで同じである。グラフの傾きが酸素移動の速さを表している。図4(a)〜図4(d)の横軸の太線を1目盛りとすると、図4(a)では1分から9分間の間に縦軸が約1.7目盛り上昇した。同様に、図4(b)では約2.0目盛り、図4(c)では約4.0目盛り、そして図4(d)では約2.8目盛り上昇した。図4(a)の無通気の場合と図4(b)のバブリングした水槽の場合とでは差が顕著でなく、次いで、図4(d)の空気中、図4(c)の微細気泡水中に入れた場合の順に傾きが明らかに大きかった。この結果から、微細気泡水WB中ではFEPフィルムを通過する酸素分子が多くなると推定された。
【0038】
<実施例2:酵母の増殖>
FEPフィルム製バッグ(フィルム厚さ50μm、1L容量、アズワン1−6334−01)にPichia pastoris培養液200μLおよびBM液体培地45.1mLを、50mLシリンジを用いて注入した。
【0039】
注入後可能な限りバッグ内の空気を抜いて封じた。このバッグを、微細気泡を発生させた水槽中に完全に沈めた。水槽は、透明のアクリル製の水槽(50cm、50cm、50cm)に深さ約30cmまで水を満たしたものとした。
【0040】
微細気泡生成には、Pao60S(森鉄工株式会社製)を用いた。通気量は約0.1L/minとした。この場合の微細気泡は、肉眼でわずかに気泡が継続して観察できる程度であった。水槽は24℃の恒温室に設置し、水温は投げ込み式ヒーターによって28℃に調節した。
【0041】
対照区は、同様に酵母と培地を入れて封じたFEPフィルム製バッグを28℃に調節した水槽中に完全に沈め、エアーポンプ(100V、2W、約1L/min)により観賞用の水槽に用いるスパージャーを通して通気することにより気泡を継続して送り込んだ場合とした。この際、FEPフィルム製バッグに気泡が直接あたるようにした。なお、この場合の気泡は微細気泡ではない。
【0042】
2日間培養後、懸濁(OD600値)を測定した。明らかに微細気泡水中で培養した場合の培地が強く濁っており、そのOD600値は、換算値で微細気泡水中の方が約2.5倍大きかった。
【0043】
<実施例3:イチゴの増殖>
透明アクリル製の水槽(50cm、50cm、50cm)に深さ約30cmまで水を満たした。微細気泡生成のためPao60C(森鉄工株式会社製)を入れ、通気量を約0.1L/minとし、室温が24℃に保たれた室内に設置した。この場合の、微細気泡は肉眼でわずかに気泡が継続して観察できる程度であった。
【0044】
FEPフィルムで作った筒状のフィルム(フィルム厚20μm、直径55mm、長さ10cm)に、スクロース30g/Lを含む液体ムラシゲ・スクーグ培地とイチゴ無菌培養苗1株(約1g)を移植した。フィルムの両端はストッパーで封じた。これを微細気泡水中に完全に沈め、CCFL照明ユニット(日本医科器・CCFL−1−8)を用いて側面から連続照明した。
【0045】
6週間後に取り出した状態を図5(a)に示した。重さ7.8gの植物が得られ、かつ、その葉柄は太く良好な品質の苗であった。対照として恒温室内の空気中に置くこと以外は同様として同期間培養したところ、その重さは最大で6.1gであった(図5(b)参照)。以上のように、FEPフィルム内に入れた植物を微細気泡水で満たした水槽中に没しさせて培養すると、空気中で培養した以上にイチゴを増殖させることができた。
【0046】
<実験結果について>
以上の通り、FEPフィルムからなる袋に液体を封じ、微細気泡水を満たした水槽に没しさせると、気相中よりも高い効率で袋内に酸素が移動することを見出した。袋内への酸素移動速度は、空気をバブリングした場合や空気中に置いた場合よりも高かった(図4)。その理由はすでに説明したが、以下のように説明できる。
【0047】
FEPフィルムには高い疎水性があるため、マイクロバブルはフィルム表面に付着しやすい。そして、マイクロバブルは消失する際に高い圧力を生じる。したがって、マイクロバブルが高密度で付着したフィルム表面では、酸素分子がより激しくフィルムに衝突する。その結果、フィルムを通過する酸素移動速度が大きくなった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る培養装置および培養方法は、微生物、植物だけでなく、菌類や細胞の培養などにも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 培養装置
10 水槽
10s 側面
10b 底面
12 微細気泡発生装置
12a 放出管
14 照明装置
16 保持手段
16−1a 枠
16−1b 押さえ具
16−2a 枠
16−2b アーム
16−2c 連結紐
16−3 ザル
20 培養容器
20a フィルム部
20b 採光部
20d 本体
20f 蓋
21 クリップ
BB 被培養生物
W 水
BL 微細気泡
WB 微細気泡水
F フィルム
S スペース
図1
図2
図3
図4
図5