特開2020-92652(P2020-92652A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2020092652-剥皮方法および剥皮装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-92652(P2020-92652A)
(43)【公開日】2020年6月18日
(54)【発明の名称】剥皮方法および剥皮装置
(51)【国際特許分類】
   A23N 7/00 20060101AFI20200522BHJP
【FI】
   A23N7/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-233022(P2018-233022)
(22)【出願日】2018年12月13日
(11)【特許番号】特許第6513873号(P6513873)
(45)【特許公報発行日】2019年5月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】特許業務法人IPX
(74)【代理人】
【識別番号】100200872
【弁理士】
【氏名又は名称】押谷 昌宗
(74)【代理人】
【識別番号】100210103
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 光平
(72)【発明者】
【氏名】上野 真耶
(72)【発明者】
【氏名】尾形 泰久
(72)【発明者】
【氏名】野口 明徳
【テーマコード(参考)】
4B061
【Fターム(参考)】
4B061BA08
4B061BA13
4B061BA14
4B061BA15
4B061BA20
4B061CB02
4B061CB24
(57)【要約】
【課題】より短い加熱時間でより強力に剥皮を行うことができる、剥皮方法および剥皮装置を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、密閉された圧力室に皮を有する有皮物を入れ、前記圧力室内を所定の第1の負圧状態に減圧する第1の減圧工程と、前記第1の減圧工程後、前記圧力室内を所定の加圧加熱状態に加圧加熱する加圧加熱工程と、前記加圧加熱後、前記圧力室内を所定の第2の負圧状態に減圧する第2の減圧工程と、を備える剥皮方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された圧力室に皮を有する有皮物を入れ、前記圧力室内を所定の第1の負圧状態に減圧する第1の減圧工程と、
前記第1の減圧工程後、前記圧力室内を所定の加圧加熱状態に加圧加熱する加圧加熱工程と、
前記加圧加熱工程後、前記圧力室内を所定の第2の負圧状態に減圧する第2の減圧工程と、
を備える剥皮方法。
【請求項2】
皮を有する有皮物が入れられる密閉された圧力室と、
前記圧力室内を減圧する減圧装置と、
前記圧力室内を加圧加熱する蒸気供給装置と、
前記減圧装置および前記蒸気供給装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記圧力室内を所定の第1の負圧状態に減圧し、減圧された前記圧力室に蒸気を供給して前記圧力室内を所定の加圧加熱状態に加圧加熱し、加圧加熱後の前記圧力室内を所定の第2の負圧状態に減圧する、剥皮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、剥皮方法および剥皮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜類や果実類等の皮を有する有皮物の身と皮とを分離させる剥皮方法として、圧力室に被剥皮物を収容し、圧力室内を加圧加熱した後に急速に減圧して剥皮する方法が知られている(特許文献1)。この方法によれば、殆ど身を失うことなく皮を除去することができるため、高い歩留まりで剥皮を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭48−099376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、長時間高温に晒されると、有皮物の種類によっては身が変質してしまう。例えば、身にデンプンが含まれる場合、長時間の加熱処理によりデンプンの多くが糊化してα−デンプンとなる。このような変化は、生デンプンとしての身が商品となる場合等において、商品価値の低下をもたらす場合がある。
【0005】
また、種子等、硬い皮を有する有皮物に対しては、剥皮にあたってより強い力が求められるため、従来の加圧加熱および急速減圧による剥皮方法では十分に皮が除去されないことがあった。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、より短い加熱時間でより強力に剥皮を行うことができる、剥皮方法および剥皮装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、密閉された圧力室に皮を有する有皮物を入れ、前記圧力室内を所定の第1の負圧状態に減圧する第1の減圧工程と、前記第1の減圧工程後、前記圧力室内を所定の加圧加熱状態に加圧加熱する加圧加熱工程と、前記加圧加熱工程後、前記圧力室内を所定の第2の負圧状態に減圧する第2の減圧工程と、を備える剥皮方法が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、皮を有する有皮物が入れられる密閉された圧力室と、圧力室内を減圧する減圧装置と、圧力室内を加圧加熱する蒸気供給装置と、減圧装置および蒸気供給装置を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、圧力室内を所定の第1の負圧状態に減圧し、減圧された圧力室に蒸気を供給して圧力室内を所定の加圧加熱状態に加圧加熱し、加圧加熱後の圧力室内を所定の第2の負圧状態に減圧する剥皮装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る剥皮方法および剥皮装置によれば、短時間の加熱処理でも十分な剥皮効果を得られることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る剥皮装置の構成を示す概要図。
図2】剥皮装置の吸排系を示す回路図。
図3】剥皮装置を用いた剥皮方法を示すフローチャート。
図4】剥皮処理前の有皮物の概要図。
図5】剥皮処理後の有皮物の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0012】
なお、本明細書において、有皮物とは、剥皮対象となる植物性食品をいう。具体的に、有皮物には、ジャガイモ、サツマイモ等の野菜類、モモ、リンゴ等の果実類、ソバ、ゴマ、クリ、アブラナ、ヒマワリ等の種子が含まれる。皮とは、剥皮の対象となる部位をいう。具体的に、皮には、野菜類においては皮、果実類においては花托の皮や外果皮、種子においては外殻や渋皮が含まれる。身とは、皮によって覆われた内部をいい、有皮物から皮を除去した残存部と略一致する。また、負圧状態とは気圧が1気圧未満である状態をいう。加圧状態とは気圧が1気圧を超えている状態をいう。
【0013】
1.剥皮装置1
第1節では、図1および図2を参照しながら、本実施形態に係る剥皮装置1について説明する。
【0014】
1.1 剥皮装置1における吸排系
図1は、本実施形態に係る剥皮装置1の構成を示す概要図である。また、図2は、剥皮装置1の吸排系を概略的に示す回路図である。剥皮装置1は、有皮物Oに対して減圧や加圧加熱等の処理を施すことで、有皮物Oが有する皮O1を剥皮することができる装置である。剥皮装置1は、有皮物Oを収容する圧力室2および制御装置Cを備え、かかる圧力室2は、蒸気供給口21と、蒸気排気口22と、減圧口23と、ドレン口24と、を備える。
【0015】
圧力室2は、剥皮する有皮物Oを1個又は複数個単位でまとめて載置可能なリテーナ7を有する。大量の有皮物Oを剥皮する場合は、リテーナ7が次々とバッチ連続式に投入・交換可能に構成されてもよい。図1においては、6個の有皮物Oがリテーナ7に載置されて、圧力室2に収容されている例が示されている。
【0016】
圧力室2に設けられた減圧口23は、減圧装置5と配管を介して接続され、減圧装置5は、密閉された圧力室2内を減圧して圧力室2内の圧力を所定の負圧状態にまで減圧可能に構成される。減圧口23と減圧装置5との間の配管には減圧バルブ51が設けられる。また、減圧口23と減圧装置5を接続する配管は減圧口23と減圧バルブ51との間で分岐し、負圧破壊バルブ52を介して剥皮装置1の外部(以下、単に装置外という)と連通する。なお、減圧バルブ51と減圧装置5との間に、密閉された空間を有する減圧チャンバを設けてもよい。圧力室2内を減圧する前に、減圧チャンバ内を負圧状態に減圧しておき、この状態で減圧バルブ51を開放することで、圧力室2内を迅速に減圧することができる。
【0017】
圧力室2に設けられた蒸気供給口21は、蒸気供給装置6と配管を介して接続され、蒸気供給装置6は、密閉された圧力室2中に高温加圧の蒸気を供給可能に構成される。圧力室2内になるべく均一に蒸気が行き渡るように、1つまたは複数の蒸気供給口21が適当な位置に適宜配置される。蒸気供給口21と蒸気供給装置6との間の配管には蒸気投入バルブ62が設けられる。蒸気投入バルブ62と蒸気供給装置6は、好ましくは蒸気ヘッダ61を介して接続される。蒸気ヘッダ61は、蒸気供給口21が複数設けられる場合、各蒸気供給口21と接続される複数の配管を集合させる。また、圧力室2内に蒸気を供給する前に蒸気ヘッダ61に蒸気を貯留しておき、この状態で蒸気投入バルブ62を開放することで、蒸気を迅速に圧力室2内に供給することができる。
【0018】
圧力室2に設けられた蒸気排気口22と接続される配管は、蒸気排気バルブ64を介して装置外と連通する。圧力室2内に供給された蒸気は、蒸気排気口22を通って装置外に排気される。圧力室2内から効率よく蒸気を排気するように、1つまたは複数の蒸気排気口22が適当な位置に適宜配置される。蒸気排気口22が複数設けられる場合、好ましくは蒸気排気口22と装置外間には排気ヘッダ63が設けられ、排気ヘッダ63は各蒸気供給口21と接続される複数の配管を集合させる。
【0019】
圧力室2に設けられたドレン口24と接続される配管は、ドレンバルブ65を介して装置外と連通する。圧力室2内に供給された蒸気が凝結して生成されたドレンは、ドレンバルブ65を通って装置外に排出される。ドレン口24は本実施形態では2つ設けているが、1つまたは複数のドレン口24が適当な位置に適宜配置されればよい。
【0020】
圧力室2は、密閉された空間であり、圧力室2内に蒸気を略均一に満たすことで加圧加熱可能に構成される。換言すると、圧力室2は、所定の加圧加熱状態にすることができる構造であればよく、材質も加圧加熱状態を保てるものであればよい。加熱状態を維持するため、断熱性の高い材質が望ましい。また加圧状態を保つため圧力が低下しないように、圧力室2と各配管とは溶接等で気密性を維持するような構造にすることが好ましい。
【0021】
圧力室2の両端にはそれぞれ開閉扉85,95が設けられる。開閉扉85は、内扉82iと、外扉82oと、外扉82oの回動に連動する歯車83oと、歯車83oに係合し内扉82iの回動に連動する歯車83iと、を有する。同様に、開閉扉95は、内扉92iと、外扉92oと、外扉92oの回動に連動する歯車93oと、歯車93oに係合し内扉92iの回動に連動する歯車93iと、を有する。圧力室2の減圧時は、外扉82o,92oが気圧差により圧力室2の外壁面に対して押し付けられ、これにより歯車83o,83i,93o,93iが回転し、内扉82i,92iも連動して圧力室2の内壁面に対して押し付けられる。圧力室2の加圧時は、内扉82i,92iが気圧差により圧力室2の内壁面に対して押し付けられ、これにより歯車83o,83i,93o,93iが回転し、外扉82o,92oも連動して圧力室2の外壁面に対して押し付けられる。このような開閉扉85,95によれば、簡易な構成で高度に圧力室を密閉することができる。リテーナ7の出し入れの際は開閉扉85,95が開放され、開閉扉85側の開口部81がリテーナ7の出口となり、開閉扉95側の開口部91がリテーナ7の入口となる。
【0022】
減圧装置5は、圧力室2の内部を吸引し、減圧口23から外部に排出することで、圧力を所定の負圧状態にまで減圧可能に構成される。真空装置5は、例えば真空ポンプを用いることができるが、これに限定せず、負圧状態を作ることができる装置であればよい。
【0023】
蒸気供給装置6は、蒸気供給口21から蒸気を供給することで、圧力室2内を高温かつ高圧にすることができる。蒸気供給装置6は、例えば、供給された液体を加熱し所定圧力および所定温度の蒸気を生成するボイラである。蒸気は、水蒸気が好ましく、また飽和蒸気が好ましい。
【0024】
制御装置Cは、減圧装置5を制御する機能および蒸気供給装置6を制御する機能を有する。また、制御装置Cは、減圧バルブ51、負圧破壊バルブ52、蒸気投入バルブ62、蒸気排気バルブ64、およびドレンバルブ65の開閉制御を行う。制御装置Cに対して、減圧処理および加圧加熱処理を行う時間を設定することができる。また、減圧装置5または蒸気供給装置6による処理の圧力値が任意の値に制御可能なものであるとき、制御装置Cに対して減圧処理時または加圧加熱処理時の所定の圧力値を設定することができる。蒸気供給装置6によって供給される蒸気の温度は、例えば、圧力値を変更することで変更可能に構成してもよい。これらの設定値に基づいて制御装置Cは、剥皮装置1における減圧装置5や蒸気供給装置6を制御して、減圧または加圧加熱を実施する。制御装置Cは、各機能が発揮できる場所に配置されればよい。
【0025】
また、制御装置Cは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。ハードウェア資源としては、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0026】
換言すると、制御装置Cは、有皮物Oを圧力室2に収容した後、圧力室2内を負圧状態に減圧し、減圧された圧力室2に蒸気を供給して圧力室2内を加圧加熱し、加圧加熱後の圧力室2内を負圧状態に減圧する。減圧は2度行われるので、1度目の減圧(第1の減圧工程)と2度目の減圧(第2の減圧工程)とが異なる処理条件によってなされる場合、前述した所定の圧力値、処理時間は異なる値を設定する。
【0027】
2.剥皮方法
第2節では、第1節において説明した剥皮装置1を用いた剥皮方法について説明する。ここでは図3に示されるフローチャートの各ステップに沿って有皮物Oの皮O1が剥皮される工程を簡単に説明する。
【0028】
[開始]
(ステップS1)
皮O1と身O2とを備え、剥皮を所望する有皮物O(図4参照)を圧力室2に収容して、開閉扉85,95を閉鎖する。収容した後、圧力室2を開閉扉85,95によって密閉した状態にする。
【0029】
(ステップS2)
圧力室2内を、所定の第1の負圧状態に減圧する。具体的には、負圧破壊バルブ52、蒸気投入バルブ62、蒸気排気バルブ64およびドレンバルブ65を閉じた状態で減圧バルブ51を開き、減圧装置5を動作させて減圧口23から空気を装置外に排出し、第1の負圧状態にする。第1の負圧状態としては、1気圧(約0.10MPa)未満の任意の圧力範囲でよいが、例えば0.07Mpa以下の圧力範囲であれば後述の加圧加熱工程においてより迅速に蒸気を圧力室2内に行き渡らせることができ、より好ましい。本実施形態では、圧力室2内を、約0.05MPaの圧力下においた。
【0030】
ステップS2を経ることで、圧力室2が第1の負圧状態となる。その結果、次のステップS3において蒸気を供給した際に迅速に蒸気を圧力室2内に行き渡らせることができるので、迅速で均一な加圧加熱が可能となる。ステップS2は、特許請求の範囲における「第1の減圧工程」に相当する。
【0031】
(ステップS3)
次いで圧力室2の内部に高温かつ高圧にされた蒸気を供給し、圧力室2内を所定の加圧加熱状態にする。すなわち、圧力室2内における加圧加熱がなされる。具体的には、減圧バルブ51、負圧破壊バルブ52、蒸気排気バルブ64およびドレンバルブ65を閉じた状態で蒸気投入バルブ62を開き、蒸気供給装置6を動作させて蒸気供給口21から蒸気を圧力室2内に供給し、加圧加熱状態にする。当該蒸気の温度範囲は100℃を超える任意の温度範囲でよいが、例えば200℃以下であれば有皮物Oの熱による変質を抑えることができ、より好ましい。また、加熱加圧状態の圧力範囲としては1気圧(約0.10MPa)超1.60MPa以下が望ましい。本実施形態では、圧力室2内を約0.45Mpaの圧力下においた。このときの圧力室2内の温度は約146℃である。
【0032】
ステップS3を経ることで、蒸気温度未満の有皮物Oに蒸気が触れると、有皮物Oの皮O1の外表面に蒸気が凝縮し、凝縮潜熱による大きな熱エネルギーを当該外表面に与えるとともに、高温の液体が有皮物Oの皮O1の内部に浸透する。さらに、この際の凝縮潜熱により、有皮物Oの外表面付近に含まれる水分も高温状態となる。ステップS3は、特許請求の範囲における「加圧加熱工程」に相当する。
【0033】
(ステップS4)
ステップS3において高温高圧となった圧力室2内を、所定の第2の負圧状態に減圧する。具体的には、減圧バルブ51、負圧破壊バルブ52および蒸気投入バルブ62を閉じた状態で蒸気排気バルブ64およびドレンバルブ65を開き、圧力室2内の蒸気を蒸気排気口22から装置外に排気するとともに、蒸気が凝結して生成されたドレンをドレン口24から装置外に排出する。そして、負圧破壊バルブ52、蒸気投入バルブ62、蒸気排気バルブ64およびドレンバルブ65を閉じた状態で減圧バルブ51を開き、減圧装置5を動作させて減圧口23から空気を装置外に排出し、第2の負圧状態にする。圧力室2が減圧されることで液体の沸点が下がると、皮O1と身O2との間の水分が沸騰して非常に大きな体積の蒸気となり、図5に示すように皮O1と身O2との間に隙間O3が形成され、有皮物Oにおける皮O1が身O2から分離する。特に、圧力室2を第2の負圧状態にすることで、沸点をより低い温度にすることができるため、加圧加熱後に圧力室2を単に1気圧に戻すだけと比べて、より強力に剥皮を行うことができる。ステップS4は、特許請求の範囲における「第2の減圧工程」に相当する。第2の負圧状態としては、1気圧(約0.10MPa)未満の任意の圧力範囲でよいが、第2の減圧工程は、加圧加熱工程後迅速に行われることが望ましい。第2の負圧状態の圧力をより低く設定することでより急速に減圧が行うことができる。例えば、第2の減圧工程時に水分が蒸気となって移動する速度、すなわち断熱膨張速度は、390m/sec以上であることが望ましい。
【0034】
(ステップS5)
圧力室2内を、ステップS5において減圧された状態から負圧破壊バルブ52を開いて常圧に戻し、開閉扉85を開放して有皮物Oを圧力室2内から取り出す。このような剥離方法を実施された有皮物Oは、その皮O1が容易に除去可能な状態となっている。皮O1を完全に除去するには、例えば、ブラシローラ等で挟みこんで所定の摩擦力を付与してもよいし、エア等の流体を吹き付けてもよく、種々の手段が採用できる。
[終了]
【0035】
なお、これらステップS1〜S5を適切に実施できる環境があれば、第1節において説明した剥皮装置1を必ずしも使用する必要はないことにも留意されたい。前述のステップS1〜S5を実施可能な異なる構成を有する装置を使用してもよい。
【0036】
3.結言
以上のように、本実施形態によれば、より短い加熱時間でより強力に剥皮を行うことができる、剥皮方法および剥皮装置1を実施することができる。加圧加熱工程における加圧加熱に要する時間は、処理を開始してから、例えば、1秒以上60秒以内である。本実施形態では、10秒程度の加圧加熱工程を行った。
【0037】
かかる剥皮方法は、密閉された圧力室2に皮O1を有する有皮物Oを入れ、圧力室2内を第1の負圧状態に減圧する第1の減圧工程(ステップS2)と、第1の減圧工程(ステップS2)後、圧力室2内を加圧加熱する加圧加熱工程(ステップS3)と、加圧加熱工程(ステップS3)後、圧力室2内を第2の負圧状態に減圧する第2の減圧工程(ステップS4)と、を備えることを特徴とする。
【0038】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0039】
1 :剥皮装置
2 :圧力室
21 :蒸気供給口
22 :蒸気排気口
23 :減圧口
24 :ドレン口
5 :減圧装置
51 :減圧バルブ
52 :負圧破壊バルブ
6 :蒸気供給装置
61 :蒸気ヘッダ
62 :蒸気投入バルブ
63 :排気ヘッダ
64 :蒸気排気バルブ
65 :ドレンバルブ
7 :リテーナ
81 :開口部
82i :内扉
82o :外扉
83i :歯車
83o :歯車
85 :開閉扉
91 :開口部
92i :内扉
92o :外扉
93i :歯車
93o :歯車
95 :開閉扉
O :有皮物
O1 :皮
O2 :身
O3 :隙間
図1
図2
図3
図4
図5