【解決手段】患者の膀胱内に留置される先端部およびその反対側の基部を有するカテーテル本体2と、カテーテル本体2内に形成され、患者の膀胱内の尿を体外に導くための尿排出用ルーメンとを含み、カテーテル本体2は、可撓性を有するチューブ状のベース部材11と、ベース部材11に0.5〜10.0質量%の割合で含有された金属イオン含有溶解性ガラスとを含む、尿道カテーテル1を提供する。
前記カテーテル本体内において前記尿排出用ルーメンに沿って延びて形成され、前記カテーテル本体の径方向断面視において、前記カテーテル本体の周面に沿う扁平形状の変形用ルーメンをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の尿道カテーテル。
前記変形用ルーメンは、前記カテーテル本体の径方向断面視において、前記カテーテル本体の周面に沿って湾曲した扁平形状に形成されている、請求項5に記載の尿道カテーテル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、カテーテルが長期に亘って使用される場合、プロテウス・ミラビリス菌のように尿素を分解する菌によって尿中の尿素が加水分解され、発生するアンモニアにより尿がアルカリ性となり、尿中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンが不溶性の塩として析出してカテーテルの尿排出用ルーメンに結石が形成されることがある。この結石によってカテーテルが詰まるおそれがあるため、カテーテル本体に抗菌作用を付与する必要がある。
【0006】
一方で、抗菌作用を付与するための抗菌剤が多量に使用されると、カテーテル本体に備わる本来の物性(可撓性等)が低下する場合があるので、抗菌剤の使用は少量であることが好ましい。
本発明の目的は、カテーテル本体の物性を維持しつつ、優れた抗菌作用を発現することができる尿道カテーテルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の尿道カテーテルは、患者の膀胱内に留置される先端部およびその反対側の基部を有するカテーテル本体と、前記カテーテル本体内に形成され、患者の膀胱内の尿を体外に導くための尿排出用ルーメンとを含み、前記カテーテル本体は、可撓性を有するチューブ状のベース部材と、前記ベース部材に0.5〜10.0質量%の割合で含有された金属イオン含有溶解性ガラスとを含む。
【0008】
本発明の尿道カテーテルでは、前記金属イオン含有溶解性ガラスは、金属イオンを含有するリン酸塩系ガラスまたはホウ酸塩系ガラスを含んでいてもよい。
本発明の尿道カテーテルでは、前記金属イオン含有溶解性ガラスは、P
2O
5−RO−R
2O系ガラス(ROは、CaO、MgO等のアルカリ土類金属の酸化物であり、R
2Oは、Li
2O、Na
2O、K
2O等のアルカリ金属酸化物である。以下同じ)、またはB
2O
3−SiO
2−R
2O系ガラスであって、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのうち一種以上を含むガラスを含んでいてもよい。
【0009】
本発明の尿道カテーテルでは、前記ベース部材は、シリコーン基材または熱可塑性エラストマー基材を含んでいてもよい。
本発明の尿道カテーテルは、前記カテーテル本体内において前記尿排出用ルーメンに沿って延びて形成され、前記カテーテル本体の径方向断面視において、前記カテーテル本体の周面に沿う扁平形状の変形用ルーメンをさらに含んでいてもよい。
【0010】
本発明の尿道カテーテルでは、前記変形用ルーメンは、前記カテーテル本体の径方向断面視において、前記カテーテル本体の周面に沿って湾曲した扁平形状に形成されていてもよい。
本発明の尿道カテーテルは、前記カテーテル本体の前記先端部側に設けられ、患者の膀胱内で膨張するバルーンと、前記バルーンと連通するように前記カテーテル本体内において前記尿排出用ルーメンに沿って延びて形成され、前記バルーンに膨張用の液体を導入するための液体導入用ルーメンとをさらに含んでいてもよい。
【0011】
本発明の尿道カテーテルは、前記ベース部材の外面に形成された親水性のコーティング層をさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の尿道カテーテルによれば、カテーテル本体のベース部材に金属イオン含有溶解性ガラスが含まれているので、当該金属イオンによって優れた抗菌作用を発現することができる。しかも、ベース部材に対する金属イオン含有溶解性ガラスの割合が0.5〜10.0質量%と低いので、ベース部材の可撓性等の物性に影響を与えることも少ない。また、金属イオンが、担持という形態ではなく、ガラスの成分としてガラスの結晶系の中に入り込んでいるため、ガラスの設計によって溶出量を簡単に制御することができる。その結果、長期に亘って抗菌作用を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る尿道カテーテル1の使用状態を示す図であって、膀胱内でバルーン4が未膨張の状態を示している。
図2は、本発明の一実施形態に係る尿道カテーテル1の使用状態を示す図であって、膀胱内でバルーン4が膨張した状態を示している。
【0015】
尿道カテーテル1は、排尿が困難な患者の導尿を補助するための器具であり、カテーテル本体2と、操作部3と、バルーン4とを備えている。
図1に示すように、バルーン4が未膨張の状態で、カテーテル本体2を、その先端部5が人体6の膀胱7に達するまで、人体6の尿道8に挿入することによって使用される。挿入後、バルーン4を膨張させて固定することによって、カテーテル本体2の抜け落ちが防止され、カテーテル本体2が膀胱7内に留置される。
【0016】
そして、膀胱7に溜まった尿10は、カテーテル本体2の先端部5に形成された尿排出口9からカテーテル本体2の内部を通って、操作部3から排出される。
次に、本発明の一実施形態に係る尿道カテーテル1の構成を、より具体的に説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る尿道カテーテル1の平面図である。
図4は、本発明の一実施形態に係る尿道カテーテル1の断面図である。
図5は、
図3のV−V切断線における断面図である。
図6は、
図4の二点鎖線VIで囲まれた部分の拡大図であって、バルーン4が未使用の状態を示す図である。
図7は、
図4の二点鎖線VIで囲まれた部分の拡大図であって、バルーン4が使用された状態を示す図である。
【0017】
尿道カテーテル1は、カテーテル本体2と、操作部3と、バルーン4とを備えている。
カテーテル本体2は、可撓性のチューブからなり、その先端に硬質の先端部5が取り付けられている。例えば、キャップ状の先端部5にカテーテル本体2を挿し込むことによってインロー構造とし、当該インロー構造の合わせ面を溶着・接着等することによって互いに固定されている。
【0018】
カテーテル本体2は、可撓性を有するチューブ状であり、金属イオン含有溶解性ガラスを含有するベース部材11で構成されている。また、ベース部材11は、必要に応じて、造影剤等の添加剤が配合されていてもよい。
ベース部材11としては、例えば、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックス等のゴムラテックス基材、シリコーン基材、熱可塑性エラストマー基材等が挙げられ、好ましくは、シリコーン基材、熱可塑性エラストマー基材が使用され、さらに好ましくは、シリコーン基材が使用される。
【0019】
ベース部材11に含有される金属イオン含有溶解性ガラスとしては、例えば、金属イオンを含有するリン酸塩系ガラスまたはホウ酸塩系ガラスが挙げられる。より具体的には、例えば、P
2O
5−RO−R
2O系ガラス(ROは、CaO、MgO等のアルカリ土類金属の酸化物であり、R
2Oは、Li
2O、Na
2O、K
2O等のアルカリ金属酸化物である。以下同じ)、またはB
2O
3−SiO
2−R
2O系ガラスであって、銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのうち一種以上を含むガラスが挙げられる。このようなガラス抗菌剤の市販品としては、例えば、石塚硝子株式会社製の「イオンピュア(登録商標)」等が挙げられる。
【0020】
ここで、溶解性ガラスが金属イオンを含有しているとは、抗菌作用を有する金属イオンが、ガラスに担持されているという形態ではなく、ガラスの成分としてガラスの結晶系の中に入り込んでいることを意味している。
また、ベース部材11における金属イオン含有溶解性ガラスの割合は、例えば、0.5〜10.0質量%である。
【0021】
このようなカテーテル本体2は、例えば、ベース部材11の原料と金属イオン含有溶解性ガラスと、その他必要な添加剤とを所定の配合割合で混合し、押出し成形することによって得ることができる。
また、カテーテル本体2は、
図5に示すように、ベース部材11の外周面を覆うように形成された親水性のコーティング層12を備えていてもよい。親水性のコーティング層12としては、例えば、ベース部材11を表面処理することによって、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸およびこれらを共重合成分とする共重合体等をコーティングすることが挙げられる。なお、カテーテル本体2は、親水性のコーティング層12によって覆われていなくてもよい。
【0022】
一方、先端部5は、例えば、天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックス等のゴムラテックス基材、シリコーン基材、熱可塑性エラストマー部材等のベース部材に、表面処理を施したもので構成されていてもよい。表面処理としては、例えば、前述のようにベース部材に潤滑性を付与する親水性コーティング、ベース部材に平滑性を付与するウレタンコーティング・フッ素コーティング、ベース部材に抗菌性を付与する銀コーティング等が挙げられる。これらの表面処理は、2種以上併用されていてもよい。
【0023】
カテーテル本体2には、尿排出用ルーメン13および液体導入用ルーメン14が、カテーテル本体2の長手方向に沿って延びるように形成されている。
尿排出用ルーメン13は、患者の膀胱7内の尿10を体外に導くための通路であって、カテーテル本体2の長手方向一端部である基部15(
図4参照)から他端部である先端部16まで貫通しており、カテーテル本体2の略中心に形成されている。尿排出用ルーメン13は、筒状の先端部5に形成された尿排出口9に連通しており、この尿排出口9を介して、尿が尿排出用ルーメン13に入り込むこととなる。
【0024】
尿排出口9は、例えば、カテーテル本体2の径方向に対向するように一対設けられていてもよい(
図6および
図7参照)。
尿排出用ルーメン13は、
図5に示すように、カテーテル本体2の径方向断面視において、その中心部に円形状に形成されている。尿排出用ルーメン13の内径は、例えば、2mm〜5mm程度であってもよい。
【0025】
液体導入用ルーメン14は、バルーン4に膨張用の液体を導入するための通路であって、尿排出用ルーメン13に沿って延びて形成されている。液体導入用ルーメン14は、カテーテル本体2の基部15を開放端として、当該基部15からカテーテル本体2の長手方向途中部まで形成されており、その終端部が行き止まり部17とされている。
この行き止まり部17は、尿排出口9とバルーン流通口18(後述)との間に配置されている。また、カテーテル本体2の外周面には、液体導入用ルーメン14に連通するバルーン流通口18が形成されている。
【0026】
液体導入用ルーメン14は、尿排出用ルーメン13の周囲において、尿排出用ルーメン13よりも小さな径を有する円形状に形成されている。液体導入用ルーメン14の内径は、例えば、0.1mm〜0.8mm程度であってもよい。
操作部3は、医師や看護師等の介助者が扱う部分であり、尿排出用ポート19および液体導入用ポート20を一体的に備えている。操作部3は、
図3および
図4に示すように、カテーテル本体2の延長線上に延びるファネル状の尿排出用ポート19の周面から、液体導入用ポート20が分岐して形成されていてもよい。この操作部3は、例えば、カテーテル本体2と同じ材料からなり、カテーテル本体2に対してインサート成形することによって、カテーテル本体2に固定されていてもよい。なお、操作部3は、カテーテル本体2と異なる材料であってもよく、その場合、インサート成形、溶着、接着等によって、カテーテル本体2に固定されていてもよい。
【0027】
また、
図4に示すように、尿排出用ポート19および液体導入用ポート20には、それぞれ、尿排出用通路21および液体導入用通路22が互いに独立して形成されている。尿排出用通路21は尿排出用ルーメン13に連通し、液体導入用通路22は液体導入用ルーメン14に連通している。
尿排出用ポート19には、排出された尿を溜めるための蓄尿バッグ等の容器が接続される。
【0028】
また、液体導入用ポート20の先端には、例えば、シリンジを接続するためのバルブ23が設けられている。医師や看護師等の介助者は、バルーン膨張用の液体が充填されたシリンジをバルブ23に接続し、シリンジのプランジャを押すことによって、液体導入用通路22および液体導入用ルーメン14を介して、バルーン4に液体を注入することができる。
【0029】
バルーン4は、カテーテル本体2を取り囲むように固定された第1端部24および第1端部24よりも先端部16側の第2端部25を有し、第1端部24と第2端部25との間に設けられ、患者の膀胱7内で球状に膨張する膜からなる膨張部26を有している。
バルーン4は、膨張部26の内側において、バルーン流通口18につながっている。また、バルーン4の第1端部24および第2端部25は、例えば、溶着・接着等によってカテーテル本体2に固定されていてもよい。また、バルーン4の材料としては、例えば、ゴムラテックス、シリコーン、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0030】
そして、医師や看護師等の介助者が、シリンジで液体導入用通路22に滅菌蒸留水等の膨張用液を注入することによって、当該膨張用液が、液体導入用ルーメン14およびバルーン流通口18を介してバルーン4内に入り込み、
図7に示すように、バルーン4が球状に膨張する。
次に、
図8および
図9を参照して、カテーテル本体2の変形例について説明する。
【0031】
前述のように、カテーテル本体2には、尿排出用ルーメン13および液体導入用ルーメン14が形成されていたが、さらに、変形用ルーメン27が形成されていてもよい。
変形用ルーメン27は、カテーテル本体2を変形させて尿道カテーテル1を挿入および抜去し易くするための通路であって、尿排出用ルーメン13に沿って延びて形成されている。変形用ルーメン27は、液体導入用ルーメン14と同様に、カテーテル本体2の基部15を開放端として、当該基部15からカテーテル本体2の長手方向途中部まで形成されており、その終端部が行き止まり部とされている(図示せず)。また、変形用ルーメン27は、液体導入用ルーメン14とは異なり、バルーン流通口18のような開口等で外部と流通しておらず、その開放端においてのみ外部と流通している。
【0032】
変形用ルーメン27は、尿排出用ルーメン13の周囲において、尿排出用ルーメン13を挟んで液体導入用ルーメン14と対向するように配置されていてもよい。変形用ルーメン27は、この実施形態では、カテーテル本体2の外周面に沿って湾曲した扁平形状に形成されている。より具体的には、変形用ルーメン27は、カテーテル本体2の径方向断面視において、尿排出用ルーメン13の中心Cから広がる中心角θが90°以下の扇形領域28の半径線分R
1,R
2上に、その一端部29および他端部30を有する扁平形状に形成されている。
【0033】
このような変形用ルーメン27が形成されているので、医師や看護師等の介助者が、シリンジで変形用ルーメン27内の空気を引いて陰圧にすることによって、変形用ルーメン27の外側面31と内側面32を密着させることができる。これにより、カテーテル本体2の一部を圧縮することができるので、カテーテル本体2の外径を小さくすることができる。その結果、尿道カテーテル1の挿入時に患者が感じる痛みを軽減することができる。
【0034】
なお、変形用ルーメン27は、
図8および
図9に示すように、カテーテル本体2に1つだけ形成されていてもよいが、複数形成されていてもよい。この場合、一方の変形用ルーメン27は、バルーン流通口18を介してバルーン4に連通するように形成され、液体導入用ルーメン14を兼ねていてもよい。液体導入用ルーメン14を兼ねる場合でも、バルーン4が閉塞されているおかげで、当該液体導入用ルーメン14の開放端においてのみ外部と流通する形態となるため、ルーメン内を陰圧にすることができる。また、変形用ルーメン27は、カテーテル本体2の外周面に沿った扁平形状ではあるが、カテーテル本体2の外周面に沿って湾曲していなくてもよい。
【0035】
以上、本発明の実施形態に係る尿道カテーテル1によれば、カテーテル本体2のベース部材11に金属イオン含有溶解性ガラスが含まれているので、当該金属イオンによって優れた抗菌作用を発現することができる。しかも、ベース部材11に対する金属イオン含有溶解性ガラスの割合が0.5〜10.0質量%と低いので、ベース部材11の可撓性等の物性に影響を与えることも少ない。特に、
図8および
図9のように、変形用ルーメン27が形成されている場合、ベース部材11の可撓性を維持できれば、変形用ルーメン27を陰圧にすることによるカテーテル本体2の圧縮を、効率よく行うことができる。
【0036】
また、金属イオンが、担持という形態ではなく、ガラスの成分としてガラスの結晶系の中に入り込んでいるため、ガラスの設計によって溶出量を簡単に制御することができる。その結果、長期に亘って抗菌作用を維持することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0037】
例えば、前述の実施形態では、バルーン4が設けられた尿道カテーテル1のみを例に取り上げたが、本発明の「カテーテル本体の物性を維持しつつ、優れた抗菌作用を発現する」という観点では、バルーン4は設けられていなくてもよい。また、
図5に示したように、変形用ルーメン27も設けられていなくてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
この実施例における抗菌性試験については、シェーク法に従って行った。
より具体的には、まず、ベース部材の原料であるシリコーン原料に抗菌剤を所定の配合割合で溶融混合し、射出成形することによって、
図10Aに示すように、平板状のサンプル33(長さL×幅W×厚さT=5.0cm×3.0cm×0.1cm)を得た。なお、使用した抗菌剤は、次の通りである。
・実施例1:イオンピュアZAF HS(石塚硝子株式会社製)
・実施例2:イオンピュアWPA<5(石塚硝子株式会社製)
・参考例1:ノバロンAGZ330(東亜合成株式会社製)
・比較例1:セラメディックDAW502(株式会社シナネンゼオミック製)
一方、プロテウス・ミラビリス菌を、普通ブイヨン培地0.2%を添加した人工尿中に均一に分散させ、菌数が1.0×10
5〜5.0×10
5CFU/mLとなるように接種用菌液を調製した。
【0039】
次に、15mLの遠沈管34(内径15mm)に、各サンプル33(サンプル33の表面積=5×3×2+(5+1)×6×0.1≒33.6cm
2)を、
図10Bに示すように3つ折りにして入れ、そこに接種用菌液35を表面積が33.6cm
2に対して10mL(1.0×10
5〜5.0×10
5CFUの菌を含む)の比率で接種して蓋をした後、温度35±1℃の恒温振とう機に入れ、遠沈管が移動しないように振とう台に固定して、遠沈管を24±1時間振とうした。振とう条件は、振幅30mm、水平方向振とう数150rpmとした。
【0040】
次に、遠沈管34中の接種用菌液35に存在する生菌数を測定することによって、各サンプルの抗菌作用を評価した。結果を
図11に示す。
図11に示すように、比較例1では、比較的多くの抗菌剤を配合しなければ、人工尿中においてプロテウス・ミラビリス菌に対する抗菌性を発現することが難しかった。一方で、実施例1,2および参考例1では、1.0質量%〜3.0質量%という少量の抗菌剤の配合であっても、人工尿中においてプロテウス・ミラビリス菌に対する抗菌性を十分発現することができた。
【0041】
なお、実施例1,2と参考例1との比較では、実施例1,2の抗菌剤が銀イオン含有リン酸塩系ガラスであり、参考例1の抗菌剤が銀イオン担持ジルコニウムである。つまり、実施例1,2では、銀イオンが、担持という形態ではなく、リン酸塩系ガラスの成分としてガラスの結晶系の中に入り込んでいるため、ガラスの設計によって溶出量を簡単に制御することができる。その結果、長期に亘って抗菌作用を維持することができると考えられる。
【0042】
また、参考として、実施例1,2、参考例1および比較例1の抗菌剤について、大腸菌(標準培地)、黄色ブドウ球菌(標準培地)およびプロテウス・ミラビリス菌(標準培地)に対する抗菌性も、前述のシェーク法に従って評価した。結果を
図12〜
図14に示す。
図12〜
図14の結果から、実施例1,2、参考例1および比較例1の抗菌剤は、大腸菌(標準培地)、黄色ブドウ球菌(標準培地)およびプロテウス・ミラビリス菌(標準培地)に対する抗菌性は十分に発現できることが分かった。
【0043】
つまり、実施例1,2の抗菌剤は、大腸菌や黄色ブドウ球菌に対する抗菌剤としてのみならず、プロテウス・ミラビリス菌のように尿素を分解する菌によるカテーテルの目詰まりを防止するために、カテーテルの原料に配合する抗菌材として有用であることが分かった。
次に、シリコーン原料に抗菌剤および造影剤を加えた系の抗菌性試験も行ったので、説明する。
【0044】
より具体的には、まず、ベース部材の原料であるシリコーン原料に抗菌剤(石塚硝子株式会社製「イオンピュアWPA<5」)および造影剤(硫酸バリウム 堺化学工業株式会社製「BMH−40」)を所定の配合割合で混合し、コンプレッション成形することによって、
図10Aに示すように、平板状のサンプル33(長さL×幅W×厚さT=5.0cm×3.0cm×0.1cm)を得た。なお、使用した抗菌剤および造影剤の割合(シリコーン原料100質量部に対する割合)は、次の通りである。
・実施例3:抗菌剤/造影剤=3質量部/10質量部
・実施例4:抗菌剤/造影剤=3質量部/20質量部
・実施例5:抗菌剤/造影剤=3質量部/30質量部
・参考例2:抗菌剤/造影剤=3質量部/0質量部
そして、前述の実施例1等と同様の方法によって、各サンプルの抗菌作用を評価した。結果を
図15に示す。
【0045】
図15に示すように、造影剤を含まない参考例2と比べて、実施例3〜5の抗菌作用に大きな低下は見られなかった。これにより、カテーテルに造影剤を配合しても、優れた抗菌性を発現できることが分かった。