【解決手段】載置台3は、載置されたオリフィス部材57の上下位置を測定する測定部4と、載置台3に対応する類別のオリフィス部材57の一部に係合する位置規制部62,63,74と、測定部4による測定結果に基づいて、オリフィス部材57の載置状態と類別とを判定するオリフィス部材判定部14とを有している。位置規制部62,63,74は、対応する類別のオリフィス部材57が正しい姿勢で載置されたとき、オリフィス部材57に係合して、オリフィス部材57を下端部の全周にわたって載置台3に着座させ、他の類別のオリフィス部材57が載置されたとき又は対応する類別のオリフィス部材57が誤った姿勢で載置されたとき、オリフィス部材57に係合せず、オリフィス部材57の少なくとも一部を載置台3から持ち上げる。
前記対応するオリフィス部材は、厚み方向の一方側に位置する一端部に形成されており、前記厚み方向に直交する方向における前記オリフィス部材の内側に、前記一方側が開口した溝状に、切り欠かれた切り欠き部を有し、
前記位置規制部は、前記対応するオリフィス部材が、正しい姿勢で載置されたとき、前記切り欠き部に係合し、前記対応しないオリフィス部材が載置されたとき又は前記対応するオリフィス部材が誤った姿勢で載置されたとき、前記オリフィス部材の前記厚み方向の他端側に位置する他端部に干渉して、前記オリフィス部材を前記載置台から持ち上げる、係合部を有している、
請求項1に記載のオリフィス部材の載置台。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業者によるオリフィス部材の載置ミス等により、オリフィス部材が上記凹部に完全に嵌まらず、オリフィス部材が誤った姿勢(例えば傾斜して)で載置される場合がある。この場合、オリフィス部材移送装置によるオリフィス部材の吸着に不具合が生じ得る。
【0006】
また、オリフィス部材は、一般に、厚み方向における天地方向が決まっており、載置台に誤った向きに載置してしまうと、誤った向き(天地が逆)で、オリフィス部材が液体封入式防振マウントに組み込まれる虞がある。
【0007】
さらにまた、要求される防振性能等に応じて、オリフィス部材には仕様の異なる種々の類別が存在する。この結果、作業者が、製造する液封マウントゴムに組み込まれるべき類別のオリフィス部材とは異なる、他の類別のオリフィス部材を誤って載置台に載置すると、オリフィス部材移送装置によって、他の類別のオリフィス部材が、吸着されて液封マウントゴムに組み込まれる、すなわち誤組の虞がある。
【0008】
本発明は、載置台に載置されたオリフィス部材の載置状態と類別とを判定できる、オリフィス部材の載置台、載置方法および液体封入式防振マウントの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
液体封入式防振マウントの液室に組み込まれるオリフィス部材が載置される載置台であって、
前記載置台に載置された前記オリフィス部材の上下位置を測定する測定部と、
前記載置台に対応する類別のオリフィス部材の一部に係合する位置規制部と、
前記測定部による測定結果に基づいて、前記オリフィス部材の載置状態と、当該オリフィス部材の類別とを判定するオリフィス部材判定部と
を有し、
前記位置規制部は、
前記対応する類別の前記オリフィス部材が正しい姿勢で載置されたとき、前記オリフィス部材に係合して、前記オリフィス部材を下端部の全周にわたって前記載置台に着座させ、
前記対応するオリフィス部材に対して少なくとも形状の相違する、他の類別のオリフィス部材が載置されたとき又は前記対応する類別の前記オリフィス部材が誤った姿勢で載置されたとき、これらのオリフィス部材に係合せず、当該オリフィス部材の少なくとも一部を前記載置台から持ち上げる、オリフィス部材の載置台を提供する。
【0010】
本発明によれば、対応する類別のオリフィス部材が正しい姿勢で組み付けられているとき以外、オリフィス部材は、載置台に着座せず少なくとも一部が載置台から持ち上げられる。すなわち、測定部によって測定されたオリフィス部材の上下位置に基づいて、載置台に載置されたオリフィス部材の載置状態およびオリフィス部材の類別を判定できる。
【0011】
これにより、載置台に対応する類別のオリフィス部材が誤った姿勢で載置されている場合、又は載置台に対応しない類別のオリフィス部材が載置されている場合、該オリフィス部材の載置状態及び類別の少なくとも1つが製造される液体封入式マウントゴムに対して、適切でないと判定できる。これによって、例えば吸着部による吸着不良又は誤った類別のオリフィス部材の誤組が未然に防止される。
【0012】
したがって、載置されたオリフィス部材の吸着不良と、他の類別であるオリフィス部材が誤って組み込まれることと、が未然に防止される。
【0013】
好ましくは、
前記対応するオリフィス部材は、
厚み方向に貫通する貫通孔と、
当該オリフィス部材が前記載置台に正しい姿勢で載置された状態で、厚み方向において中央部よりも前記載置台とは反対側に偏位した位置に、厚み方向に隔てる隔壁部と
を有し、
前記位置規制部は、
前記貫通孔に係合する、位置決めピンと、
前記対応するオリフィス部材が前記位置決めピンにより位置決めされると共に正しい姿勢で載置されたとき、前記隔壁部には干渉せず、前記対応しないオリフィス部材が載置されたとき又は前記対応するオリフィス部材が誤った姿勢で載置されたとき、前記隔壁部に干渉して、前記オリフィス部材を前記載置台から持ち上げる、持ち上げピンと
を有している。
【0014】
本構成によれば、オリフィス部材が、厚み方向に貫通する貫通孔と厚み方向の一方側に偏位した隔壁部とを有する場合において、上記発明の効果が好適に実現される。
【0015】
また、好ましくは、
前記対応するオリフィス部材は、厚み方向の一方側に位置する一端部に形成されており、前記厚み方向に直交する方向における前記オリフィス部材の内側に、前記一方側が開口した溝状に、切り欠かれた切り欠き部を有し、
前記位置規制部は、前記対応するオリフィス部材が、正しい姿勢で載置されたとき、前記切り欠き部に係合し、前記対応しないオリフィス部材が載置されたとき又は前記対応するオリフィス部材が誤った姿勢で載置されたとき、前記オリフィス部材の前記厚み方向の他端側に位置する他端部に干渉して、前記オリフィス部材を前記載置台から持ち上げる、係合部を有している。
【0016】
本構成によれば、オリフィス部材が、厚み方向の一方側に位置する一端部に形成された、溝状の切り欠き部を有する場合において、上記発明の効果が好適に実現される。
【0017】
また、本発明の他の態様は、
上記いずれか1つに記載のオリフィス部材の載置台に、前記対応するオリフィス部材を載置して、
前記載置台における前記オリフィス部材の上下位置を前記測定部によって検知し、
前記測定部による測定結果に基づいて、前記オリフィス部材の載置状態を判定する、オリフィス部材の載置方法を提供する。
【0018】
また、本発明の更なる他の態様は、
液室が形成されたゴム部材と、前記液室に組み込まれるオリフィス部材とを準備し、
上記オリフィス部材の載置方法により、前記オリフィス部材を、前記載置台に載置して、
前記載置されたオリフィス部材を、把持して、前記ゴム部材の前記液室に組み込んで、
液体封入式防振マウントを製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、載置台に載置されたオリフィス部材の載置状態および類別を判断できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0022】
図1は、車両用防振ゴムの一例として、液体封入式エンジンマウントゴム50(以下、液封マウントゴム50と称する)を示している。液封マウントゴム50は、不図示のエンジンと車体フレームとの間に介設されて、エンジンを車体フレームに対して弾性的に支持するものであり、エンジンに取り付けられるボス金具51と、車体フレームに取り付けられる外筒金具52と、ボス金具51と外筒金具52との間に介設されたゴム部材からなる弾性基体53とを備えている。
【0023】
なお、以下の説明では、便宜上、液封マウントゴム50の軸線方向(
図1において上下方向)のうち、ボス金具51側を下側とし、外筒金具52側を上側とする。
【0024】
ボス金具51には上下方向に延びる雌ねじ部54が設けられており、ここに不図示のボルトによりエンジン側の部材に取り付けられるように構成されている。外筒金具52は、金属製の円筒部材であり液封マウントゴム50の外表面に露出しており、上記車体フレームに取り付けられる。
【0025】
弾性基体53は、下端部53aにボス金具51が加硫接着されており、上端部53bに外筒金具52がカシメにより固定されている。上端部53bは、外径が下端部53aより大きく、この内側には、上方に開口した液室55が画定されている。液室55の上端の開口部55aには、ダイヤフラム56が設けられている。
【0026】
液室55は、ダイヤフラム56によって密閉状態に構成されており、水、エチレングリコール、シリコンオイル等の液体Wが封入されている。液室55には、オリフィス部材57が組み込まれており、オリフィス部材57によって上側の第1室55bと下側の第2室55cとに上下に仕切られている。第1室55bと第2室55cとは、オリフィス部材57に形成された不図示のオリフィス流路を介して互いに連通している。すなわち、液室55に封入された液体は、第1室55bから第2室55cへ又はこの逆方向へ、互いに流動可能に構成されている。
【0027】
図2は、オリフィス部材57の一例として、第1タイプのオリフィス部材20(以下、第1オリフィス部材と称する)が示されている。なお、
図2は、第1オリフィス部材20を上方から見た斜視図である。
図2に示すように、第1オリフィス部材20は、上下方向に延びる円筒状の外筒21と、この内側に同心状に位置しており上下方向に延びる円筒状の内筒22と、外筒21と内筒22の下端部を接続する下仕切り壁部23と、内筒22の上端部を上下方向に仕切る上仕切り壁部24(隔壁部)とを有している。外筒21と内筒22との間には、これらを径方向に連結するリブ25が、周方向の複数箇所に設けられている。
【0028】
外筒21の内側には、下仕切り壁部23から内筒22及び上仕切り壁部24にわたって、上下方向(第1オリフィス部材20の厚み方向)に貫通する、径方向に一対の貫通孔26が設けられている。貫通孔26は、液室55において第1室55b及び第2室55c間を連通するオリフィス流路として構成されている。
【0029】
図3は、
図2のIII−III線に沿った、一対の貫通孔26の軸心を通る縦断面図である。
図3に示すように、上仕切り壁部24は、上下方向において中央部よりも上側に偏位した位置に設けられている。
【0030】
図4は、オリフィス部材57の他の例として、第2タイプのオリフィス部材30(以下、第2オリフィス部材と称する)が示されている。
図4は、第2オリフィス部材30を下方から見た斜視図である。
図4に示すように、第2オリフィス部材30は、上下方向に延びる円柱部31と、円柱部31の外周部に1周にわたって延びており、径方向外側に開口したコ字状断面部32とを有している。
【0031】
コ字状断面部32は、下端部を構成するドーナツ状の下仕切り壁部33と、上端部を構成するドーナツ状の上仕切り壁部34と、下仕切り壁部33及び上仕切り壁部34の径方向内径部を上下方向に接続する上下壁部35と、径方向に延びており下仕切り壁部33と上仕切り壁部34とを上下方向に接続する上下仕切り壁部36とを有している。上下方向において、円柱部31は、下端部が下仕切り壁部33と上仕切り壁部34の間に位置しており、上端部がより上仕切り壁部34より上方に位置している。
【0032】
図5は、
図4のV−V線に沿った、縦断面図を示している。
図5を併せて参照して、コ字状断面部32には、円柱部31の下側(第2オリフィス部材30の一端部側)において、下仕切り壁部33から上下壁部35にかけて径方向内側に貫通して切り欠かれた下切り欠き部37が形成されている。下切り欠き部37は、上下仕切り壁部36に対して、周方向の一方側に隣接している。下切り欠き部37は、コ字状断面部32の下側より部分を、下側に開口するように径方向に溝状に貫通している。
【0033】
上仕切り壁部34(第2オリフィス部材30の他端部側)には、径方向内側に切り欠かれた上切り欠き部38が形成されている。上切り欠き部38は、周方向において、上下仕切り壁部36に対して下切り欠き部37とは反対側に位置している。コ字状断面部32は、上切り欠き部38が形成された部分において、上下壁部35は切り欠かれていない。すなわち、上切り欠き部38は、コ字状断面部32を径方向内側に貫通しておらず、内径側には円柱部31の外周部が位置する。
【0034】
図4において矢印で示すように、第2オリフィス部材30には、円柱部31の外周部に、下切り欠き部37からコ字状断面部32を介して上切り欠き部38に至る流路39が形成されている。したがって、
図1を併せて参照して、流路39は、液室55において、第1室55b及び第2室55c間を連通するオリフィス流路として構成されている。
【0035】
図6を参照して、液封マウントゴム50の組立工程について説明する。
図6(a)に示すマウントワーク載置工程41において、弾性基体53にボス金具51が加硫されたマウントワーク50Wが準備され、マウントワーク50Wが、液室55の開口部55aが上方に開口する姿勢で組立台47の上に載置される。
【0036】
次に、
図6(b)に示す液体注入工程42において、液体Wが液室55に所定量注入される。そして、
図6(c)に示すオリフィス部材組付工程43において、オリフィス部材57が液室55に組み込まれる。さらに、
図6(d)に示すダイヤフラム組付工程44において、ダイヤフラム56が液室55の開口部55aに組み付けられる。
【0037】
次に、
図6(e)に示す外筒金具組付工程45において、外筒金具52がマウントワーク50Wの上端部の外周に嵌挿される。最後に、
図6(f)に示す液室封止工程46において、外筒金具52を径方向内側にカシメてダイヤフラム56を液室55の開口部55aに固定することによって、液室55に液体Wを封止する。これによって、液封マウントゴム50が製造される。
【0038】
以下、オリフィス部材57を、吸着して、オリフィス部材組付工程43に移送するオリフィス部材移送装置1について説明する。
【0039】
図7は、オリフィス部材移送装置1の概略構成を示す図であり、オリフィス部材57が併せて示されている。
図7に示すように、オリフィス部材移送装置1は、オリフィス部材57を吸着(把持)する吸着部2と、オリフィス部材57が載置される載置台3と、載置台3に載置されたオリフィス部材57を測定する測定部4と、表示部5と、オリフィス部材移送装置1の作動を制御する制御部10とを有している。
【0040】
吸着部2は、吸着ロッド2aと、この下端部に取り付けられた吸着パッド2bとを有している。吸着ロッド2aの基端部には不図示の負圧源が接続されており、吸着パッド2bの内側が負圧状態に構成される。吸着パッド2bは、中空状のゴム部材であって、下方に向かって径方向に拡がる円錐状に形成されている。吸着パッド2bは、下端部を、被吸着物に沿わせて吸着パッド2bの内側を略密閉状態として負圧により被吸着物を吸着する。
【0041】
吸着部2は、不図示の移動手段(例えばロボット)により上下・左右・前後方向に移動可能に構成されており、その作動が制御部10によって制御される。吸着部2は、第1オリフィス部材20の上仕切り壁部24のうち、貫通孔26が形成されておらず略平坦な部分を、上方から吸着する。また、吸着部2は、第2オリフィス部材30の円柱部31の上端面のうち貫通孔が形成されておらず略平坦な部分を上方から吸着する。
【0042】
測定部4は、透過型レーザーセンサであって、載置台3を挟んだ両側に一対に設けられた、照射部4aと、受光部4bとを有している。測定部4は、載置台3に載置されたオリフィス部材57を被測定物として、照射部4aから上下方向に照射幅L0を有する照射光Aを照射し、このうち被測定物に遮られて上下方向に減少した透過幅L1の透過光Bを、受光部4bにより受光する。測定部4は、透過光Bの透過幅L1及び上下方向の位置を測定する。
【0043】
なお、本実施形態では、受光部4bは、検出能力が1mmより小さく構成されている。より好ましくは、受光部4bは、透過光Bの透過幅L1及び上下方向の位置を0.1mm単位で検出可能に構成されている。
【0044】
表示部5は、測定部4による測定結果と、後述する制御部10によって判定される、載置されたオリフィス部材57の判定結果とが表示される。
【0045】
載置台3は、第1オリフィス部材20及び第2オリフィス部材30それぞれに対応して、第1載置台60及び第2載置台70が交換可能に設けられている。すなわち、第1オリフィス部材20が組み込まれる液封マウントゴム50を製造する場合には、オリフィス部材移送装置1には、載置台3として第1載置台60が配置される。一方、第2オリフィス部材30が組み込まれる液封マウントゴム50を製造する場合には、オリフィス部材移送装置1には、載置台3として第2載置台70が配置される。
【0046】
なお、オリフィス部材移送装置1において、製造される液封マウントゴム50に対応した載置台3が配置されていることを検出可能に構成してもよい。例えば、第1及び第2載置台60,70それぞれに対応するICチップを設けたり、第1及び第2載置台60,70の外周部に互いに形状が異なる形状相違部を形成したりして、前記ICチップを読み取り又は前記形状相違部をセンサで検出すうることによって、オリフィス部材移送装置1に配置されている載置台3を判別するようにしてもよい。
【0047】
第1及び第2載置台60,70には、上下方向において、第1及び第2オリフィス部材20,30が、液封マウントゴム50に組み込まれる姿勢で載置されるようになっている。したがって、第1オリフィス部材20は、作業者によって正しい姿勢で載置された場合、下仕切り壁部23を下方に向けて第1載置台60に載置される。同様に、第2オリフィス部材30は、下仕切り壁部33を下方に向けて第2載置台70に載置される。
【0048】
図8は第1載置台60の上面図であり、
図9は第1載置台60の縦断面図である。
図8及び
図9に示すように、第1載置台60は、下方に凹設された円状の座繰り部61が形成されている。座繰り部61は、底面61aと、底面61aの周縁部から上方に立設された外周面部61bとを有している。底面61aには、一対の位置決めピン62及び一対の持ち上げピン63が、上方に立設されている。
【0049】
座繰り部61は、座繰り径D1が第1オリフィス部材20の外径D2(
図3参照)に対して少し大きく(例えば、1mm)形成されており、座繰り深さH1が第1オリフィス部材20の高さH2よりも低く形成されている。すなわち、第1オリフィス部材20は、座繰り部61内に載置されると、外筒21が座繰り部61の外周面部61bによって規制されて径方向に位置決めされると共に、上部が第1載置台60から上方に突出している。
【0050】
座繰り部61の径方向の中心を挟んだ両側には、外周面部61bから第1載置台60の外側へ径方向に連通する一対の溝部64が形成されている。一対の溝部64は、溝底面が座繰り部61の底面61aと同じ高さに形成されている。一対の溝部64は、測定部4の、照射部4aにより照射された照射光Aと、受光部4bにより受光される透過光Bとが通過する位置にそれぞれ形成されている。一対の溝部64を結ぶ線上に、座繰り部61の径方向中心が位置している。
【0051】
一対の位置決めピン62は、座繰り部61によって径方向に位置決めされた第1オリフィス部材20の一対の貫通孔26に対応した位置に設けられている。位置決めピン62の外径D3は貫通孔26の内径D4(
図3参照)よりも小さく、一対の位置決めピン62間の外幅W1は、一対の貫通孔26間の外幅W2(
図3参照)と略同一若しくは少し小さく設定されている。外幅W1は、一対の位置決めピン62の中心間の間隔P1に位置決めピン62の外径D3を加えたものである。
図3に示すように、外幅W2は、一対の貫通孔26の中心間の間隔P2に貫通孔26の内径D4を加えたものである。
【0052】
一対の持ち上げピン63は、座繰り部61によって径方向に位置決めされた第1オリフィス部材20の上仕切り壁部24に対応した径方向位置に設けられている。持ち上げピン63の高さH3は、第1オリフィス部材20の高さH2(
図3参照)の半分より低く、第1オリフィス部材20の上端部から上仕切り壁部24までの高さH4(
図3参照)よりも高い。持ち上げピン63は、位置決めピン62よりも低い。
【0053】
一対の位置決めピン62及び一対の持ち上げピン63は、一対の溝部64を結ぶ線上には位置していない。したがって、一対の溝部64を通過する照射光A及び透過光Bは、一対の位置決めピン62及び一対の持ち上げピン63により遮られない。なお、一対の溝部64を結ぶ線は、一対の位置決めピン62及び一対の持ち上げピン63を結ぶ線に対して、略直交している。一対の位置決めピン62及び一対の持ち上げピン63は、本発明の位置規制部を構成している。
【0054】
図10は第2載置台70の上面図であり、
図11は第2載置台70の縦断面図である。
図10及び
図11に示すように、第2載置台70は、下方に凹設された円状の第1座繰り部71と、この径方向内側においてさらに下方に凹設された円上の第2座繰り部72とが形成されている。第1座繰り部71は、ドーナツ状の底面71aと、底面71aの周縁部から上方に立設された外周面部71bとを有している。
【0055】
第1座繰り部71は、座繰り径D5が第2オリフィス部材30の外径D6(
図5参照)に対して少し大きく(例えば、1mm)形成されており、座繰り深さH5が第2オリフィス部材30の高さH6(
図5参照)よりも低く形成されている。すなわち、第2オリフィス部材30は、第1座繰り部71内に載置されると、コ字状断面部32の外径部が第1座繰り部71の外周面部71bによって規制されて径方向に位置決めされると共に、上部が第2載置台70より上方に突出している。
【0056】
第1座繰り部71の径方向の中心を挟んだ両側には、外周面部71bから第2載置台70の外側へ径方向に連通する一対の溝部75が形成されている。一対の溝部75は、溝底面が第1座繰り部71の底面71aと同じ高さに形成されている。一対の溝部75は、測定部4の、照射部4aにより照射された照射光Aと、受光部4bにより受光される透過光Bとが通過する位置にそれぞれ形成されている。一対の溝部75を結ぶ線上に、第1座繰り部71の径方向中心が位置している。
【0057】
また、第2載置台70には、溝部75の近傍に、第1座繰り部71の外側から、第2座繰り部72の上端部にわたって下方に凹設された凹部73が形成されている。凹部73は、一対の溝部75を結ぶ線に平行に延びている。凹部73には、第1及び第2座繰り部71,72の内側に延びる係合部材74が設けられている。係合部材74は、第1座繰り部71によって径方向に位置決めされた第2オリフィス部材30の下切り欠き部37に対応した位置に設けられている。
【0058】
上面視で、係合部材74は、第2載置台70に正しい姿勢で載置された第2オリフィス部材30の円柱部31の外周部よりも内側に延びている。また、係合部材74の、第1座繰り部71の底面71aからの突出高さH7は、第2オリフィス部材30の下切り欠き部37の上端面の下仕切り壁部33の下面からの高さH8(
図5参照)より低い。係合部材74は、本発明の位置規制部を構成している。
【0059】
図7に示すように、制御部10は、ハードディスク等の記憶部11、演算処理部(CPU)12、メモリ、および入出力装置を備えた周知のコンピュータと、コンピュータに実装されたソフトウエアとにより構成されている。
【0060】
記憶部11には、第1及び第2オリフィス部材20,30の、それぞれ対応する第1及び第2載置台60,70における上下方向の基準位置が記憶されている。上下方向の基準位置とは、第1及び第2オリフィス部材20,30の上端部の上下方向の位置を意味しており、本実施形態では、第1及び第2オリフィス部材20,30が第1及び第2載置台60,70にそれぞれ載置されたときの、第1載置台60の底面61a及び第2載置台70の底面71aをそれぞれ基準とする上下方向の位置を意味している。
【0061】
演算処理部12は、測定部4による測定結果に基づいて、被測定物である第1オリフィス部材20又は第2オリフィス部材30の上下方向における位置を分析する上下位置分析部13と、この分析結果に基づいて載置台3に載置されたオリフィス部材57の良否を判定するオリフィス部材判定部14とを有している。
【0062】
オリフィス部材判定部14は、測定されたオリフィス部材57の上下位置を記憶部11に記憶された基準位置に徴することによって、載置台3に対応する類別のオリフィス部材57が正しい姿勢で載置されている場合にオリフィス部材57の載置状態を「良」と判定し、そうでない場合にオリフィス部材57の載置状態を「否」と判定する。
【0063】
具体的には、測定されたオリフィス部材57の上下位置と基準位置との差が、所定の閾値以下であるかどうかを判定する。オリフィス部材判定部14は、基準位置との差が所定の閾値以下であると、対応するオリフィス部材57が正しい姿勢で載置されていると判定し、一方、基準位置との差が所定の閾値より大きいと、対応するオリフィス部材57が載置されていない、若しくは、対応するオリフィス部材57であっても正しくない姿勢で載置されていると判定する。
【0064】
ここで、所定の閾値とは、オリフィス部材57の上下方向の製造バラツキを考慮した値であって、例えば±0.75mmに設定されている。
【0065】
また、演算処理部12は、測定部4の作動を制御するセンサ駆動部15と、吸着部2の作動を制御する吸着駆動部16とをさらに有している。センサ駆動部15は、載置台3にオリフィス部材57が載置されたときに、測定部4を駆動して、照射部4aから照射光Aを照射させて、該照射光Aのうち、被測定物によって一部遮られた透過光Bを受光部4bにより受光させる。
【0066】
吸着駆動部16は、オリフィス部材判定部14によりオリフィス部材57の載置状態が「良」と判定された場合に、吸着部2を駆動して、オリフィス部材57を吸着してマウントワーク50Wに移送して、この液室55の内側に組み込む。一方、オリフィス部材判定部14によりオリフィス部材57の載置状態が「否」と判定された場合には、吸着駆動部16は吸着部2を駆動せず、表示部5がエラー表示を示すと共に、オリフィス部材移送装置1の作動が停止する。
【0067】
次に、
図12に示すフローチャートを参照して、オリフィス部材移送装置1の作動を説明する。
【0068】
まず、製造する液封マウントゴム50の類別に関する情報が不図示の入力装置から入力され、該入力に基づいて、制御部10は、当該液封マウントゴム50に組み込まれるべき類別のオリフィス部材57の基準位置を記憶部11から読み出す(ステップS001)
【0069】
次いで、作業者が、オリフィス部材57を載置台3に載置する(ステップS002)。制御部10は、センサ駆動部15により測定部4を駆動して、載置台3に載置されたオリフィス部材57を測定する(ステップS003)。
【0070】
次に、制御部10は、上下位置分析部13により、載置台3に載置されたオリフィス部材57の上端部の上下位置を分析する(ステップS004)。次に、制御部10は、分析されたオリフィス部材57の上端部の上下位置に基づいて、オリフィス部材判定部14によりオリフィス部材57の載置状態の良否を判定する。具体的には、オリフィス部材判定部14は、分析されたオリフィス部材57の上端部の上下位置と、基準位置との差が、所定の閾値以下か判定する(ステップS005)。
【0071】
例えば、第1オリフィス部材20が、液封マウントゴム50に組み込まれるべき類別である場合を例に取って説明する。
図13Aに示すように、第1オリフィス部材20は、正しい姿勢で第1載置台60に載置されると、外筒21は、外周部において座繰り部61の外周面部61bによって径方向に位置決めされる。この状態で、一対の位置決めピン62は一対の貫通孔26の内側に挿入されると共に、一対の持ち上げピン63は上仕切り壁部24に対して下方から間隔を介して対向している。
【0072】
すなわち、第1オリフィス部材20は、外筒21の底部における最下面において周方向にわたって座繰り部61の底面61aに着座して下方から支持される。このとき、第1オリフィス部材20は、底面61aから高さH2で、第1載置台60から上方へ突出している。
【0073】
一方、
図13Bに示すように、第1オリフィス部材20を正しい姿勢に対して上下反転させた姿勢で第1載置台60に載置すると、一対の位置決めピン62は一対の貫通孔26内に挿入されるものの、一対の持ち上げピン63が上仕切り壁部24に干渉する。この結果、第1オリフィス部材20は、一対の持ち上げピン63によって、座繰り部61の底面61aに対して上方へ持ち上げられるため、底面61aに全周にわたって着座しない。
【0074】
このため、第1オリフィス部材20は、第1載置台60に正しい姿勢で載置される場合(
図13A)に比して上方に突出する。
【0075】
また、
図13Cに示すように、第2オリフィス部材30を第1載置台60に載置すると、第2オリフィス部材30には、貫通孔が形成されていないので、底部が一対の位置決めピン62に干渉する。この結果、第2オリフィス部材30は、一対の位置決めピン62によって、座繰り部61の底面61aに対して上方へ持ち上げられるため、底面61aに全周にわたって着座しない。
【0076】
なお、一対の溝部64を結ぶ線は、一対の位置決めピン62及び一対の持ち上げピン63を結ぶ線に対して、略直交しているので、持ち上げピン63によって持ち上げられた第1オリフィス部材20及び第2オリフィス部材30は、一対の溝部64を結ぶ方向に傾斜しやすい。これによって、一対の溝部64を介して測定する測定部4によって、持ち上げられた第1及び第2オリフィス部材20の増大した高さを測定しやすい。
【0077】
次に、第2オリフィス部材30が、液封マウントゴム50に組み込まれるべき類別である場合を例に取って説明する。
図14Aに示すように、第2オリフィス部材30は、正しい姿勢で第2載置台70に載置されると、コ字状断面部32の外径部において第1座繰り部71の外周面部71bによって径方向に位置決めされる。この状態で、係合部材74は下切り欠き部37の内側に位置している。
【0078】
すなわち、第2オリフィス部材30は、下仕切り壁部33が周方向にわたって、第1座繰り部71の底面71aに着座して下方から支持される。このとき、第2オリフィス部材30は、底面71aから高さH6で、第2載置台70から上方へ突出している。
【0079】
一方、
図14Bに示すように、第2オリフィス部材30を正しい姿勢に対して上下反転させた姿勢で第2載置台70に載置すると、係合部材74に上仕切り壁部34が乗り上げる。ここで、係合部材74は、円柱部31よりも内側に延びているので、係合部材74は、上切り欠き部38には収まらない。この結果、第2オリフィス部材30は、第1座繰り部71の底面71aに対して係合部材74を起点として傾斜するので、上仕切り壁部34の全周にわたって底面71aに着座しない。
【0080】
このため、第2オリフィス部材30は、第2載置台70に正しい姿勢で載置される場合(
図14A)に比して上方に突出する。
【0081】
また、
図14Cに示すように、第1オリフィス部材20を第2載置台70に載置すると、第1オリフィス部材20には、下切り欠き部37が形成されていないので、底部が係合部材74に乗り上げる。この結果、第1オリフィス部材20は、第1座繰り部71の底面71aに対して係合部材74を起点として傾斜するので、下仕切り壁部23が底面71aに全周にわたって着座しない。
【0082】
なお、係合部材74は、溝部75に隣接した近傍に設けられているので、第1オリフィス部材20及び天地逆に載置された第2オリフィス部材30を、一対の溝部75を結ぶ方向に傾斜させやすい。これによって、一対の溝部75を通して測定する測定部4によって、持ち上げられて傾斜している第1及び第2オリフィス部材20,30の増大した高さを測定しやすい。
【0083】
したがって、載置台3に、製造する液封マウントゴム50に組み込まれるべき類別のオリフィス部材57が正しい姿勢で載置された場合のみ、当該載置台3に載置されたオリフィス部材57の上下位置が最も低くなり、それ以外、すなわち対応しない類別のオリフィス部材57が載置されたとき若しくは対応する類別のオリフィス部材57が天地逆に載置されたときには、いずれもオリフィス部材57が、下端部において全周にわたって載置台3に着座することがなく、この場合のオリフィス部材57の上下位置は、対応するオリフィス部材57が正しい姿勢で載置された場合に比して高くなる。
【0084】
よって、基準高さと測定された上下位置との差を所定の閾値と比較することによって、上記差が所定の閾値以下である場合に、オリフィス部材57が、製造される液封マウントゴム50に組み込まれるべき類別のものであって且つ正しい姿勢で載置されていること(載置状態)を精度よく簡便に判定できる。一方、上記差が閾値を超える場合に、オリフィス部材57の載置状態に問題があるか若しくは製造される液封マウントゴム50に組み込まれるべき類別とは異なるオリフィス部材57が載置されていることを精度よく簡便に判定できる。
【0085】
ステップS005における判定がYESの場合、制御部10は、表示部5に、オリフィス部材57が「良」である旨、すなわち、製造される液封マウントゴム50に組み込まれるべき類別のオリフィス部材57が正しい姿勢で載置されていることを表示させる(ステップS006)。さらに、制御部10は、吸着駆動部16により、吸着部2を駆動して、オリフィス部材57を吸着してマウントワーク50Wの液室55内に、当該オリフィス部材57を組み込む(ステップS007)。
【0086】
一方、ステップS005における判定がNOの場合、制御部10は、表示部5に、オリフィス部材57が「否」である旨、すなわち、製造される液封マウントゴム50に組み込まれるべき類別とは異なるオリフィス部材57が載置され若しくは製造される液封マウントゴム50に組み込まれるべき類別のオリフィス部材57が正しくない姿勢で載置されていることを、表示させて、作業者に載置不良であることを報知させる(ステップS008)。次に、制御部10は、オリフィス部材移送装置1の作動を停止させる(ステップS009)。
【0087】
上記説明したオリフィス部材移送装置1によれば、次のような効果が得られる。
【0088】
製造される液封マウントゴム50に組み込まれるべき類別のオリフィス部材57が正しい姿勢で組み付けられているとき以外、オリフィス部材57は、載置台3に全周にわたって着座せず少なくとも一部が載置台3から持ち上げられる。すなわち、測定部4によって測定されたオリフィス部材57の上下位置に基づいて、載置台3に載置されたオリフィス部材57の載置状態および組み込まれるべき類別のオリフィス部材57であるか否かを判定できる。
【0089】
これにより、載置台3に対応するオリフィス部材57(すなわち組み込まれるべき類別のオリフィス部材57)が誤った姿勢(例えば傾斜している)で載置されている場合、又は載置台3に対応しないオリフィス部材57(すなわち組み込まれるべき類別とは異なる類別のオリフィス部材57)が載置されている場合、オリフィス部材57の載置状態及び類別の少なくとも1つが製造される液封マウントゴム50に対して、適切でないと判定できる。これによって、吸着部による吸着不良又は誤った類別のオリフィス部材57の誤組が未然に防止される。
【0090】
したがって、載置されたオリフィス部材57の吸着不良と、組み込まれるべき類別とは異なる類別のオリフィス部材57の誤組とが未然に防止される。
【0091】
上記実施形態では、第1及び第2オリフィス部材20,30は、位置規制部により規制される部分の形状が上下方向に延びる貫通孔と、内径側に貫通する溝状の切り欠きと、互いに異なる構成を有している。しかしながら、異なる類別のオリフィス部材57において、位置規制部により規制される部分が、互いに上下方向に延びる貫通孔、若しくは内径側に貫通する溝状の切り欠きであってもよい。
【0092】
例えば、上下方向に延びる一対の貫通孔を異なる類別のオリフィス部材57が有している場合であっても、例えば外幅が異なっており互いの位置規制部が、他方の貫通孔に挿入されないように構成されていればよい。
【0093】
また、異なる類別のオリフィス部材57同士が、同様に位置規制部により位置決めされて載置台3上に全周にわたって着座するとしても、上下方向の高さ位置が異なっていればよい。上下位置の相違を分析することにより、載置台3に載置されたオリフィス部材57を、当該載置台3に対応しており、製造される液封マウントゴム50に組み込まれるべきオリフィス部材57であるか否か判定できる。
【0094】
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。