【解決手段】トランスファ装置20は、筒状の生タイヤ構成部材1の外周を取り囲むように、生タイヤ構成部材1を内部に収容させるフレーム22と、フレーム22内に対向して配置され、生タイヤ構成部材1の外周面1aに面接触する半円筒状の内周面24cをそれぞれ有する一対のセグメント24と、一対のセグメント24によって生タイヤ構成部品1を保持させる進出位置と、一対のセグメント24による生タイヤ構成部品1の保持を解除した後退位置とに、一対のセグメント24をそれぞれ進退させ、生タイヤ構成部材1の受け渡しを許容するための一対の駆動部26とを備える。
前記生タイヤ構成部材を受け取る第1の位置と、前記生タイヤ構成部材を引き渡す第2の位置に移動するための移動機構を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載のトランスファ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のトランスファ装置では、複数のセグメントによって直径が異なるトレッドバンドを保持できる。しかし、トレッドバンドの外周にセグメントによる圧接痕が付くため、特許文献1のトランスファ装置には生タイヤのユニフォミティについて改善の余地がある。
【0005】
本発明は、成形する生タイヤのユニフォミティを向上できるトランスファ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒状の生タイヤ構成部材の外周を取り囲むように、前記生タイヤ構成部材を内部に収容させるフレームと、前記フレーム内に対向して配置され、前記生タイヤ構成部材の外周面に面接触する半円筒状の内周面をそれぞれ有する一対のセグメントと、前記一対のセグメントによって前記生タイヤ構成部品を保持させる進出位置と、前記一対のセグメントによる前記生タイヤ構成部品の保持を解除した後退位置とに、前記一対のセグメントをそれぞれ進退させ、前記生タイヤ構成部材の受け渡しを許容するための一対の駆動部とを備える、トランスファ装置を提供する。
【0007】
このトランスファ装置によれば、半円筒状の内周面を備える一対のセグメントによって、内部に生タイヤ構成部材を真円状態で保持して移送できる。よって、生タイヤ構成部材の外周にセグメントによる圧接痕が付くことを防止できるため、生タイヤのユニフォミティを向上できる。
【0008】
前記一対の駆動部を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記一対のセグメントのうちの一方を対応する前記駆動部によって進出させた後、前記一対のセグメントのうちの他方を対応する前記駆動部によって進出させる。具体的には、前記一対のセグメントは、前記フレームの上下にそれぞれ配置されており、前記制御部は、前記一対のセグメントのうち、下側の前記セグメントを前記対応する駆動部によって進出させた後、上側の前記セグメントを前記対応する駆動部によって進出させる。この態様によれば、生タイヤ構成部材の軸線と一対のセグメントの軸線とをそれぞれ一致させて、生タイヤ構成部材の外周にセグメントを確実に配置できる。
【0009】
前記一対のセグメントにそれぞれ着脱可能な一対の付属部材を備え、前記付属部材は、前記生タイヤ構成部材の外径よりも小さい外径とした異なる生タイヤ構成部材の外周面に面接触する半円筒状の内周面を有する。この態様によれば、1つのトランスファ装置によって外径が異なる生タイヤ構成部材を真円状態で保持できるため、トランスファ装置の汎用性を向上できる。
【0010】
前記生タイヤ構成部材を受け取る第1の位置と、前記生タイヤ構成部材を引き渡す第2の位置に移動するための移動機構を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトランスファ装置では、一対のセグメント内に生タイヤ構成部材を真円状態で保持できるため、生タイヤ構成部材の外周に圧接痕が付くことを防止でき、生タイヤのユニフォミティを向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るトランスファ装置20を用いた生タイヤ成形機10を示す。生タイヤ成形機10は、筒状のトレッドバンド1(
図2参照)と筒状のカーカスバンド2(
図2参照)とを成形し、これらを一体化して生タイヤを成形するための機構である。なお、
図2は、カーカスバンド2の中央部分をトレッドバンド1に圧着した状態を示している。
【0015】
図1に示すように、生タイヤ成形機10は、トレッドバンド(生タイヤ構成部材)1を成形するための成形ドラム12と、カーカスバンド2を成形するための成形ドラム15とを備え、これらの間に本実施形態のトランスファ装置20を備える。トランスファ装置20は、成形ドラム12で成形されたトレッドバンド1を受け取り、成形ドラム15で形成されたカーカスバンド2の外周に移送して成形ドラム15に引き渡す。成形ドラム12,15とトランスファ装置20の制御は制御部30によって行われる。
【0016】
トレッドバンド1用の成形ドラム12は、駆動装置13によって軸線A1を中心として回転可能である。成形ドラム12は、板状をなす複数のセグメント12aを周方向に並設することで、全体として円筒状に形成されている。個々のセグメント12aはそれぞれ、駆動部14によって軸線A1を中心として径方向へ進退可能である。
【0017】
セグメント12aが径方向外側に位置する進出状態で、成形ドラム12の外周面にベルト、及びトレッドゴム等が巻かれ、筒状のトレッドバンド1が成形される。セグメント12aが径方向内側へ移動(後退)されることで、軸線A1に沿って成形ドラム12からトレッドバンド1を離脱できる。
【0018】
カーカスバンド2用の成形ドラム15は、駆動装置16によって軸線A2を中心として回転可能である。成形ドラム15の軸線A2は、成形ドラム12の軸線A1と同一直線上に位置する。成形ドラム15は可撓性を有するブラダ15aを備え、駆動部17によって軸線A2を中心として径方向に拡張可能な伸縮部15bが中央に形成されている。
【0019】
伸縮部15bの非拡張状態で、成形ドラム15の外周にインナーライナ、カーカスプライ、ビードコア、ビードフィラー、及びサイドゴム等が巻かれ、筒状のカーカスバンド2が成形される。カーカスバンド2の外周にトレッドバンド1が配置された状態で、伸縮部15bが拡径されることで、カーカスバンド2の中央部分がトレッドバンド1の内側面に圧着される。伸縮部15bが縮径されることで、軸線A2に沿って成形ドラム15からトレッドバンド1を含むカーカスバンド2を離脱できる。
【0020】
図2を併せて参照すると、トランスファ装置20は、フレーム22、フレーム22内に配置されたセグメント24、及びセグメント24を駆動するエアシリンダ(駆動部)26を備える。また、トランスファ装置20は、成形ドラム12と成形ドラム15の間に設けられたガイドレール18に沿って移動するための移動機構27を備える。移動機構27は、ガイドレール18上に配置するための複数のローラ27Aと、これらのローラ27を駆動させる駆動モータ27Bとを備える。
【0021】
フレーム22はトレッドバンド1の外周を取り囲んで収容可能な円筒体であり、その内径はトレッドバンド1の外径よりも大きい。フレーム22の軸線A3が成形ドラム12,15の軸線A1,A2と同一直線上に位置するように、フレーム22はガイドレール18上に配置されている。
【0022】
セグメント24は複数(本実施形態では2個)設けられ、フレーム22の径方向内側に位置するそれぞれの内周面でトレッドバンド1を保持する。エアシリンダ26は、セグメント24と同じ数だけ用意され、フレーム22の径方向へセグメント24を個別に進退させる。エアシリンダ26はフレーム22におけるセグメント24の外側にそれぞれ配置され、フレーム22を貫通したロッド26aがセグメント24に取り付けられている。
【0023】
成形ドラム12を取り囲むように移動機構27によってトランスファ装置20が移動され、エアシリンダ26によって内向きに進出されたセグメント24によってトレッドバンド1が保持される。続いて、成形ドラム15を取り囲むように移動機構27によってトランスファ装置20が移動されることで、トレッドバンド1がカーカスバンド2の外周に移送される。この状態で、伸縮部15bの拡径によってカーカスバンド2がトレッドバンド1に圧着され、カーカスバンド2を介してトレッドバンド1が成形ドラム15に保持される。その後、トランスファ装置20は、エアシリンダ26によってセグメント24が外向きに後退されることで、トレッドバンド1の保持を解除し、移動機構27によって成形ドラム12,15間の中立位置に移動される。
【0024】
成形ドラム15に保持されたトレッドバンド1とカーカスバンド2は、図示しない押圧部材によって外側から押圧されることで一体化され、生タイヤが完成する。この生タイヤは、図示しない移送機構によって成形ドラム15から離脱され、次工程の加硫成形機へと移送される。
【0025】
トランスファ装置20によってトレッドバンド1を保持した際、トレッドバンド1の外周面1aにセグメント24による圧接痕が付くと、生タイヤのユニフォミティが低下する。そこで、本実施形態では、
図2に示すように、個々のセグメント24を半円筒状の部材によって構成している。また、
図4に示すように、外径が異なるトレッドバンド1’を保持するために、セグメント24は半円筒状で一対の付属部材28を備える。なお、一対の付属部材28は、外径が異なる生タイヤ(トレッドバンド)毎に複数組設けられる。
【0026】
図2に示すように、フレーム22は、円筒状の本体22aと、本体22aの下端に設けられた基部22bとを備える。本体22aの内径はセグメント24の外径よりも大きい。具体的には、フレーム22とセグメント24の間に定められた移動スペースを確保できるように、本体22aの内径とセグメント24の外径が設定されている。この移動スペースによって、
図2のように一対のセグメント24を後退させた状態でトランスファ装置20を移動させた際、セグメント24とトレッドバンド1の干渉を防止できる。
【0027】
引き続いて
図2を参照すると、一対のセグメント24は、上下方向に進退されるように、フレーム22(本体22a)内の上下にそれぞれ対向して配置されている。個々のセグメント24は、第1端面24aと第2端面24bを有し、これらが同一平面上に位置する半円筒体である。フレーム22の径方向内側に位置し、トレッドバンド1と対向するセグメント24の内周面24cは半円筒状である。径方向外側に位置するセグメント24の外周面24dは、本実施形態では内周面24cと同心円弧状としているが、円弧以外の形状であってもよい。
【0028】
内周面24cの直径(セグメント24の内径)は、外径が異なる複数種の生タイヤのうち、最大外径の生タイヤを基準として設定されている。具体的には、内周面24cの直径は、外周面1aに面接触するように、定められた許容誤差を含み、最大外径のトレッドバンド1の外径以下に設定されている。内周面24cの直径をトレッドバンド1の外径よりも過度に大きくすると、内周面24cと外周面1aとの間に隙間が形成されるため、トレッドバンド1を真円状態に保持できず、生タイヤのユニフォミティが低下する。内周面24cの直径を過度に小さくすると、トレッドバンド1を真円状態に保持できないうえ、端面24a,24bの干渉によって外周面1aに圧接痕が付くため、生タイヤのユニフォミティが悪くなる。よって、外周面1aとの間に隙間なく内周面24cを面接触させて、一対のセグメント24によってトレッドバンド1を保持できるように、内周面24cの直径は、トレッドバンド1の外径と同一に設定することが好ましい。
【0029】
半円筒状の内周面24c(セグメント24)とは、厳密な半円筒状に限られず、実質的な半円筒状が含まれる。具体的には、内周面24cは、第1端面24aから第2端面24bまでの角度範囲を180度とした厳密な半円筒状に限られず、第1端面24aから第2端面24bまでの角度範囲を180度未満とした実質的な半円筒状としてもよい。内周面24cの角度範囲を180度未満とした場合、
図3Bに示すトレッドバンド1の保持状態で、一対のセグメント24のうち、一方の第1端面24aと他方の第2端面24bの間、及び一方の第2端面24bと他方の第1端面24aの間に隙間が形成される。この状態で、端面24a,24b間の隙間からトレッドゴムが突出することなく、外周面1aに痕が付かない程度であれば、セグメント24の角度範囲は180度未満としてもよい。
【0030】
前述のように、エアシリンダ26は、一対のセグメント24と対応するようにフレーム22の外面側における上下にそれぞれ配置されている。ロッド26aは、フレーム22を貫通し、セグメント24の第1端面24aと第2端面24bの間の中央部分に取り付けられている。
図3Bに示すように、一対のロッド26aをそれぞれ進出させることで、一対のセグメント24はトレッドゴム1を保持する進出位置に移動する。
図2に示すように、一対のロッド26aをそれぞれ後退させることで、一対のセグメント24はトレッドゴム1の保持を解除した後退位置に移動する。
【0031】
図4に示すように、一対の付属部材28は、一対のセグメント24にそれぞれ離脱可能に取り付けられ、前述したトレッドバンド1の外径よりも外径が小さい異なる1種のトレッドバンド1’を保持する。個々の付属部材28は、第1端面28aと第2端面28bを有し、これらが同一平面上に位置する半円筒状である。但し、セグメント24と同様に、付属部材28には、厳密な半円筒状に限られず、実質的な半円筒状が含まれる。
【0032】
径方向内側に位置する付属部材28の内周面28cは半円筒状である。径方向外側に位置する付属部材28の外周面28dは、内周面28cに対して同心円弧状の半円筒状である。内周面28cの直径は、セグメント24の内周面24cと同様に、トレッドバンド1’の外径を基準として同一以下に設定される。外周面28dの直径は、定められた許容誤差を含み、セグメント24の内周面24cの直径と同一に設定される。
【0033】
付属部材28は、径方向外向きに突出する取付片28eを備える。取付片28eは断面L字形状であり、セグメント24の外周面24dに引っ掛けられる。例えば取付片28eをセグメント24にボルト止めすることで、セグメント24に対して付属部材28が固定される。この場合、セグメント24に形成するボルト穴は、外周面24dから内周面24cに向けて延び、内周面24c側が閉鎖された非貫通の凹部によって構成される。
【0034】
移動機構27によるトランスファ装置20の移動と、エアシリンダ26によるセグメント24の進退は、制御部30の指令によって行われる。なお、以下では、一対のセグメント24によってトレッドバンド1を移送する場合の制御を説明するが、セグメント24に付属部材28を取り付けた場合の制御も同様である。
【0035】
トランスファ装置20によってトレッドバンド1を保持する際、制御部30は、
図2に示すように、エアシリンダ26によってセグメント24を径方向外側に後退させた状態で、移動機構27によってトランスファ装置20を成形ドラム12(第1の位置)に向かう向きXへ移動させる。成形ドラム12までトランスファ装置20が移動すると、制御部30は、
図3Aに示すように、下側のエアシリンダ26によって下側のセグメント24を径方向内側に進出させた後、
図3Bに示すように、上側のエアシリンダ26によって上側のセグメント24を径方向内側に進出させる。これにより、一対の内周面24cが外周面1aに圧接され、一対のセグメント24によってトランスファ1が保持される。この状態で、セグメント12aが径方向内側へ後退されることで、成形ドラム12からトランスファ装置20がトレッドバンド1を受け取る。
【0036】
トランスファ装置20によってトレッドバンド1を移送する際、制御部30は、セグメント24を
図3Bに示す進出位置に維持した状態で、移動機構27によってトランスファ装置20を成形ドラム15(第2の位置)に向かう向きYへ移動させる。成形ドラム15までトランスファ装置20が移動すると、成形ドラム15の伸縮部15bが拡径されることで、カーカスバンド2がトレッドバンド1に圧着される。
【0037】
その後、トランスファ装置20によってトレッドバンド1の保持を解除する際、制御部30は、上側のエアシリンダ26によって上側のセグメント24を径方向外側に後退させた後(
図3A参照)、下側のエアシリンダ26によって下側のセグメント24を径方向外側に後退させる(
図2参照)。これにより、一対の内周面24cが外周面1aから離れ、一対のセグメント24によるトランスファ1の保持が解除されることで、トランスファ装置20から成形ドラム15にトレッドバンド1が引き渡される。
【0038】
以上のように、このトランスファ装置20では、半円筒状の内周面24cを備える一対のセグメント24によって、内部にトレッドバンド1を真円状態に保持して移送できる。よって、トレッドバンド1の外周面1aにセグメント24による圧接痕が付くことを防止できるため、生タイヤのユニフォミティを向上できる。
【0039】
セグメント24に付属部材28を取り付けることによって、トレッドバンド1とは直径が異なるトレッドバンド1’を真円状態に保持できる。また、トレッドバンド1’の直径に応じて付属部材28を交換することで、従来と同様に、直径が異なる複数種のトレッドバンド1’を保持できるため、トランスファ装置20の汎用性を向上できる。
【0040】
制御部30は、一対のセグメント24のうちの一方(下側)を移動した後に他方(上側)を移動させるため、トレッドバンド1の軸線と一対のセグメント24の軸線とをそれぞれ一致させて、トレッドバンド1の外周にセグメント24を確実に配置できる。よって、外周面1aへのセグメント24の端面24a,24bの干渉による傷痕(窪み)の発生を防止できるため、生タイヤのユニフォミティの低下を防止できる。
【0041】
なお、本発明のトランスファ装置20は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、フレーム22に対する一対のセグメント24の配置は、セグメント24が横方向に進退するように左右に対向して配置してもよい。駆動部はエアシリンダ26に限られず、セグメント24を進出位置と後退位置に進退可能な構成であれば、必要に応じて変更が可能である。また、制御部30によるトランスファ装置20の制御も、必要に応じて変更が可能である。
【0043】
一対のセグメント24の外形は、トレッドバンド1と対向する部分に外周面1aに面接触する半円筒状の内周面24cを備えていれば、必要に応じて変更が可能である。また、フレーム22の形状も、一対のセグメント24の外面形状と対応する内面形状を備えていれば、必要に応じて変更が可能である。例えば、フレーム22の本体22aを四角筒状とし、セグメント24の外形を四角形状とし、このセグメント24に半円筒状の内周面24cを形成してもよい。
【0044】
トランスファ装置20を移動不可能に設置し、成形ドラム12,15を移動可能としてもよい。また、成形ドラム12,15及びトランスファ装置20の全てを移動可能とし、成形ドラム12とトランスファ装置20、及び成形ドラム15とトランスファ装置20を相対的に移動させてもよい。