【解決手段】サイドウォール部2に形成されタイヤ周方向CDに延びる環状突起であるリムプロテクタ9を有する。リムプロテクタ9は、タイヤ周方向CDの第1方向CD1から第2方向CD2に向けてビード部1側からトレッド部3側に延びる2つ以上の凹部(90、91、92)[190、191、192、193、194]を有する。2つ以上の凹部は、タイヤ周方向CDに間隔をあけて配列されている。2つ以上の凹部のうち、隣り合う2つの凹部(90、91)(91、92)(190、191)(191、192)(192、193)(193、194)は、タイヤ径方向RDに垂直な仮想面VFに投影した場合に一部が重なる位置関係にある。
トレッド部と、ビード部と、前記トレッド部と前記ビード部の間に配置されるサイドウォール部と、前記サイドウォール部に形成されタイヤ周方向に延びる環状突起であるリムプロテクタと、を有し、
前記リムプロテクタは、タイヤ周方向の第1方向から第2方向に向けて前記ビード部側から前記トレッド部側に延びる2つ以上の凹部を有し、前記2つ以上の凹部は、タイヤ周方向に間隔をあけて配列されており、
前記2つ以上の凹部のうち、隣り合う2つの凹部は、タイヤ径方向に垂直な仮想面に投影した場合に一部が重なる位置関係にある、空気入りタイヤ。
3つ以上の前記凹部が1つのグループであり、各々のグループにおいて隣り合う前記凹部同士は、タイヤ径方向に垂直な仮想面に投影した場合に一部が重なる位置関係にある、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
前記凹部の少なくともいずれかには、前記凹部の前記ビード部側の端から前記トレッド部側に向けて延びる第2突起を有し、前記第2突起は前記凹部の深さよりも突出量が小さく、前記第2突起は、前記凹部の前記トレッド部側の端との間に隙間を形成している、請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リムプロテクタが、タイヤ周方向に連続して延びる凹部を有する構造では、凹部により肉薄部位がタイヤ周方向に連続するので、剛性が不足し、タイヤ径方向の撓みに弱くなる。リムプロテクタが、タイヤ周方向に沿って複数の凹部が隙間なく連続して配置される構造も、剛性が不足する点は同様である。
【0006】
一方、特許文献1に示すように、複数の凹部がタイヤ周方向に間隔をあけて配置されれば、凹部の間が凸部となるので、剛性低下を抑制できる。しかしながら、リムプロテクタに複数の凹部が間隔をあけて配置されていると、凹部が形成された肉薄部位と肉厚部位とがタイヤ周方向に交互に配置されることになる。肉薄部位には歪が集中しやすく、凹部を設けていない肉厚部位には歪が集中しにくい。よって、歪が集中しやすい部位がタイヤ周方向に間隔をあけて配置されることになる。
【0007】
本開示の目的は、剛性低下を抑制しつつ、リムプロテクタの凹部に歪が集中することを抑制する空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の空気入りタイヤは、
トレッド部と、ビード部と、前記トレッド部と前記ビード部の間に配置されるサイドウォール部と、前記サイドウォール部に形成されタイヤ周方向に延びる環状突起であるリムプロテクタと、を有し、
前記リムプロテクタは、タイヤ周方向の第1方向から第2方向に向けて前記ビード部側から前記トレッド部側に延びる2つ以上の凹部を有し、前記2つ以上の凹部は、タイヤ周方向に間隔をあけて配列されており、
前記2つ以上の凹部のうち、隣り合う2つの凹部は、タイヤ径方向に垂直な仮想面に投影した場合に一部が重なる位置関係にある、空気入りタイヤ。
【0009】
この構成によれば、環状突起であるリムプロテクタには2つ以上の凹部がタイヤ周方向に間隔をあけて配置されているので、隣り合う2つの凹部の間に凸部が形成され、隣り合う2つの凹部がタイヤ周方向に隙間無く配置される構造に比べて、剛性低下を抑制することが可能となる。それでいて、隣り合う2つの凹部は、タイヤ径方向に垂直な仮想面に投影した場合に一部が重なる位置関係にあるので、当該重なり部分には肉厚部位が存在し、タイヤ径方向に沿って見て肉薄部位のみとなる箇所を低減することができ、歪が集中する箇所を減らし、歪を分散することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態。
以下、本開示の第1実施形態の空気入りタイヤについて、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、各々のビード部1からタイヤ径方向外側RD1に延びるサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向外側RD1端同士を連ねるトレッド部3とを備える。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配置されている。ビード部1は、リム8のビードシート8bに装着され、空気圧が正常(例えばJATMAで決められた空気圧)であれば、タイヤ内圧によりリムフランジ8aに適切にフィッティングし、タイヤがリム8に嵌合される。
【0013】
また、このタイヤは、一対のビード部1の間に架け渡されるように配され、トレッド部3からサイドウォール部2を経てビード部1に至るトロイド状のカーカス層4を備える。カーカス層4は、少なくとも一枚のカーカスプライにより構成され、その端部がビードコア1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス層4の内周側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム(図示せず)が配置されている。
【0014】
トレッド部3におけるカーカス層4の外周には、たが効果によりカーカス層4を補強するベルト層5が配置されている。ベルト層5は、タイヤ周方向に対して所定角度で傾斜して延びるコードを有する2枚のベルトプライを有し、各プライはコードが互いに逆向き交差するように積層されている。ベルト層5の外周側には、ベルト補強層7が配され、更にその外周側表面には、トレッドパターンが形成されたトレッドゴムが配置されている。
【0015】
上述したゴム層等の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。また、これらのゴムはカーボンブラックやシリカ等の充填材で補強されると共に、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等が適宜配合される。
【0016】
本実施形態では、
図1に示すように、サイドウォール部2にリムプロテクタ9が形成されている。リムプロテクタ9は、リムフランジ8aとの接触部分とタイヤ最大幅部分Whとの間に配置されている。リムプロテクタ9は、
図1、
図2及び
図3に示すように、タイヤ周方向CDに延びる環状突起である。リムプロテクタ9は、タイヤ子午線断面において断面が台形状であるが、これに限定されず、例えばタイヤ子午線断面において断面が三角形でもよい。リムプロテクタ9は、
図3に示すように、タイヤ周方向CDの第1方向CD1から第2方向CD2に向けてビード部側からトレッド部側に延びる2つ以上の凹部90、91、92を有する。各々の凹部90、91、92の深さは同じであり、0.5mm以上且つ3.0mm以下が好ましい。2つ以上の凹部90、91、92は、タイヤ周方向CDに間隔をあけて配置されている。
図3では、凹部90、91、92を斜線で示している。
図2及び
図3の例では、凹部90、91、92は3つであるが、これに限定されない。凹部が2つ以上あればよく、例えば、2、3、4、5、6つが挙げられる。
図3に示すように、複数の凹部90、91、92のうち、隣り合う2つの凹部(90、91)(91、92)は、タイヤ径方向RDに垂直な仮想面VFに投影した場合に一部が重なる位置関係にある。
図3の例において、第1凹部90が仮想面VFに投影された領域Ar1と、第2凹部91が仮想面VFに投影された領域Ar2とが重なっている。また、第2凹部91が仮想面VFに投影された領域Ar2と、第3凹部92が仮想面VFに投影された領域Ar3とが重なっている。
図3に示すように、3つの凹部90、91、92が1つのグループGを構成している。勿論、1つのグループGを2つ以上の凹部が構成するようにしてもよい。
【0017】
具体的な形状について、
図3に示すように、第1凹部90は、リムプロテクタ9のビード部側の端に沿う円弧状の最内端90aと、トレッド部側の最外点90bと、最内端90aと最外点90bとを結ぶ2つの湾曲辺90c、90dと、を有する三角形を基調とする形状である。第2凹部91は、リムプロテクタ9のビード部側の端に沿う円弧状の最内端91aと、リムプロテクタ9のトレッド部側の端に沿う円弧状の最外端91bと、最内端91aと最外端91bとを結ぶ2つの湾曲辺91c、91dと、を有する平行四辺形を基調とする形状である。第3凹部92は、第2凹部91と同じ形状である。なお、第2方向CD2が回転方向であり、タイヤ表面に回転方向が表示されている。
【0018】
図2に示すように、2つ以上(
図2では3つ)の凹部90、91、92が1つのグループGを構成している。複数のグループGがタイヤ周方向CDに一定間隔をあけて配置されている。
図2では、複数のグループGの間隔はタイヤ軸C1を中心とする角度θ1に対応する長さである。勿論、複数のグループGが一定間隔で配置されていなくてもよい。
図2の例では、5つのグループGが配置されているが、グループGの数は2以上であれば適宜変更可能である。
【0019】
<第2実施形態>
第2実施形態のタイヤについて説明する。
【0020】
図4及び
図5に示すように、リムプロテクタ9には、タイヤ周方向CDの第1方向CD1から第2方向CD2に向けてビード部側からトレッド部側に延びる2つ以上の凹部190、191、192、193、194を有する。これら2つ以上の凹部190、191、192、193、194は、タイヤ周方向CDに間隔をあけて配置されている。
図4及び
図5の例では、凹部190、191、192、193、194は5つであるが、これに限定されない。凹部が2つ以上あればよい。凹部190、191、192、193、194の最大深さD1は、0.5mm以上且つ3.0mm以下が好ましい。
図5に示すように、複数の凹部190、191、192、193、194のうち、隣り合う2つの凹部(190、191)(191、192)(192、193)(193、194)は、タイヤ径方向RDに垂直な仮想面VFに投影した場合に一部が重なる位置関係にある。
図5の例において、第1凹部190が仮想面VFに投影された領域Ar11と、第2凹部191が仮想面VFに投影された領域Ar12とが重なっている。第2凹部191が仮想面VFに投影された領域Ar12と、第3凹部192が仮想面VFに投影された領域Ar13とが重なっている。第3凹部192が仮想面VFに投影された領域Ar13と、第4凹部193が仮想面VFに投影された領域Ar14とが重なっている第4凹部193が仮想面VFに投影された領域Ar14と、第5凹部194が仮想面VFに投影された領域Ar15とが重なっている。
図5に示すように、5つの凹部190、191、192、193、194が1つのグループGを構成している。勿論、1つのグループGを2つ以上の凹部が構成するようにしてもよい。
【0021】
図4に示すように、2つ以上又は3つ以上(
図4では5つ)の凹部190、191、192、193、194が1つのグループGを構成している。複数のグループGがタイヤ周方向CDに一定間隔をあけて配置されている。
図4では、複数のグループGの間隔はタイヤ軸C1を中心とする角度θ2に対応する長さである。勿論、複数のグループGが一定間隔で配置されていなくてもよい。
図2の例では、5つのグループGが配置されているが、グループGの数は2以上であれば適宜変更可能である。
【0022】
図4及び
図5に示す複数の凹部190、191、192、193、194は、タイヤ側面視にて平行四辺形を基調とする形状である。第2方向CD2が回転方向であり、タイヤ表面に回転方向が表示されている。
図5に示すように、第3凹部192、第4凹部193及び第5凹部194には、斜線で示すように、凹部の底から突出するセレーション又は第1微小突起192s、193s、194sを有する。セレーション又は第1微小突起192s、193s、194sの突出量は、凹部の深さD1の20%以下であることが好ましい。
【0023】
図5及び
図6に示すように、第3凹部192、第4凹部193及び第5凹部194は、凹部192、193、194のビード部側の端196からトレッド部側に向けて延びる第2突起195を有する。1つの凹部あたりの第2突起195の数は1又は複数であり、適宜変更可能である。第2突起195は、凹部192、193、194の深さD1よりも突出量D2が小さい。突出量D2は、深さD1の80%以上であることが好ましい。第2突起195は、凹部192、193、194のトレッド部側の端197との間に隙間Gpを形成している。これにより、回転時に空気が隙間Gpを通過し、放熱性を向上させることが可能となる。
【0024】
以上のように、第1又は第2実施形態の空気入りタイヤは、
トレッド部3と、ビード部1と、トレッド部3とビード部1の間に配置されるサイドウォール部2と、サイドウォール部2に形成されタイヤ周方向CDに延びる環状突起であるリムプロテクタ9と、を有する。
リムプロテクタ9は、タイヤ周方向CDの第1方向CD1から第2方向CD2に向けてビード部1側からトレッド部3側に延びる2つ以上の凹部(90、91、92、190、191、192、193、194)を有する。2つ以上の凹部(90、91、92、190、191、192、193、194)は、タイヤ周方向CDに間隔をあけて配列されている。
2つ以上の凹部(90、91、92、190、191、192、193、194)のうち、隣り合う2つの凹部(90、91)(91、92)(190、191)(191、192)(192、193)(193、194)は、タイヤ径方向RDに垂直な仮想面VFに投影した場合に一部が重なる位置関係にある。
【0025】
この構成によれば、環状突起であるリムプロテクタ9には2つ以上の凹部(90、91、92、190、191、192、193、194)がタイヤ周方向CDに間隔をあけて配置されているので、隣り合う2つの凹部の間に凸部が形成され、隣り合う2つの凹部がタイヤ周方向に隙間無く配置される構造に比べて、剛性低下を抑制することが可能となる。それでいて、隣り合う2つの凹部(90、91)(91、92)(190、191)(191、192)(192、193)(193、194)は、タイヤ径方向RDに垂直な仮想面に投影した場合に一部が重なる位置関係にあるので、当該重なり部分には肉厚部位が存在し、タイヤ径方向RDに沿って見て肉薄部位のみとなる箇所を低減することができ、歪が集中する箇所を減らし、歪を分散することが可能となる。
【0026】
第1又は第2実施形態のように、2つ以上の凹部(90、91、92)[190、191、192、193、194]が1つのグループGを構成し、複数のグループGがタイヤ周方向CDに一定間隔をあけて配置されていることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、タイヤ周方向CDに歪を均等に分散させることが可能となる。
【0028】
第1又は第2実施形態のように、3つ以上の凹部(90、91、92)[190、191、192、193、194]が1つのグループであり、各々のグループにおいて隣り合う凹部同士(90、91)(91、92)(190、191)(191、192)(192、193)(193、194)は、タイヤ径方向RDに垂直な仮想面VFに投影した場合に一部が重なる位置関係にある。
【0029】
この構成によれば、タイヤ径方向RDに沿って見て肉薄部位のみとなる箇所を低減することができ、歪が集中する箇所を減らし、歪を分散することが可能となる。
【0030】
第2実施形態のように、凹部(192、193、194)の少なくともいずれかには、凹部の底から突出するセレーション又は第1微小突起192s、193s、194sを有する。この構成によれば、美観を向上させることが可能となる。
【0031】
第2実施形態のように、凹部(192、193、194)の少なくともいずれかには、凹部のビード部側の端196からトレッド部側に向けて延びる第2突起195を有し、第2突起195は凹部の深さD1よりも突出量D2が小さく、第2突起195は、凹部のトレッド部側の端197との間に隙間Gpを形成している。
【0032】
この構成によれば、凹部(192、193、194)による剛性低下を第2突起195が抑制すると共に、回転時に隙間Gpに空気を通すことができ、放熱性を向上させることが可能となる。
【0033】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0034】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。