特開2020-93759(P2020-93759A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2020093759-空気入りタイヤ 図000003
  • 特開2020093759-空気入りタイヤ 図000004
  • 特開2020093759-空気入りタイヤ 図000005
  • 特開2020093759-空気入りタイヤ 図000006
  • 特開2020093759-空気入りタイヤ 図000007
  • 特開2020093759-空気入りタイヤ 図000008
  • 特開2020093759-空気入りタイヤ 図000009
  • 特開2020093759-空気入りタイヤ 図000010
  • 特開2020093759-空気入りタイヤ 図000011
  • 特開2020093759-空気入りタイヤ 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-93759(P2020-93759A)
(43)【公開日】2020年6月18日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20200522BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20200522BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20200522BHJP
【FI】
   B60C11/13 C
   B60C11/03 300E
   B60C11/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-234829(P2018-234829)
(22)【出願日】2018年12月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】吉川 誠
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC34
3D131EB11X
3D131EB12X
3D131EB31X
3D131EB31Y
3D131EC12X
3D131EC12Y
3D131EC15X
(57)【要約】
【課題】タイヤ幅方向に対して傾斜しているショルダー横溝によって区画されるショルダーブロックにおいて、接地端近傍におけるトーヒール摩耗を抑制する。
【解決手段】空気入りタイヤ1は、ショルダー主溝13と、ショルダー主溝13から接地端GLを超えてタイヤ幅方向TWに対して傾斜した方向に延びるショルダー横溝23と、これらによって区画されたショルダーブロック33とを有している。ショルダーブロック33は、頂面33aにおいてタイヤ幅方向TWに延びる複数の幅方向縁部34を有し、これらのうちタイヤ周方向TCとの間の角度が鋭角となる鋭角側幅方向縁部34aには、面取り部40が形成されている。面取り部40は、タイヤ幅方向TWにおいて、接地端GLからタイヤ幅方向TWの内側へ、ショルダー接地幅Wの1/4の幅で画定される領域Rに占める割合が50%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に設けられたタイヤ周方向に延びる複数の主溝のうち、タイヤ幅方向における接地端に最も近いショルダー主溝と、
少なくとも前記ショルダー主溝から前記接地端を超えて、タイヤ幅方向に対して傾斜した方向に延びるショルダー横溝と、
前記ショルダー主溝と前記ショルダー横溝とによって区画されたショルダーブロックと を有し、
前記ショルダーブロックは、頂面においてタイヤ幅方向に延びる複数の幅方向縁部を有し、前記複数の幅方向縁部のうちタイヤ周方向との間の角度が鋭角となる鋭角側幅方向縁部には、タイヤ幅方向の所定範囲にわたって面取り部が形成されており、
前記面取り部は、タイヤ幅方向において、前記接地端からタイヤ幅方向内側へ、前記ショルダー主溝から前記接地端までのショルダー接地幅の1/4の幅で画定される領域に占める割合が50%以上である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記面取り部は、タイヤ幅方向における幅が前記ショルダー接地幅の50%以下である、
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記面取り部は、前記ショルダー横溝の延在方向に直交する方向における断面形状が、前記ショルダーブロックの頂面から周方向端面にかけて直線状に傾斜している、
請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記面取り部は、前記ショルダー横溝の延在方向に直交する方向における断面形状が、タイヤ径方向内側に向かうにしたがって、タイヤ径方向に対する角度が小さくなる、
請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記面取り部は、タイヤ幅方向に複数設けられている、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記面取り部は鋭角側面取り部であり、
前記ショルダーブロックは、前記複数の幅方向縁部のうちタイヤ周方向との間の角度が鈍角となる鈍角側幅方向縁部に、前記鋭角側面取り部とタイヤ周方向に対向する位置に、鈍角側面取り部が形成されており、
前記鈍角側面取り部は、前記鋭角側面取り部よりも小さい、
請求項1〜5のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数の主溝が設けられ、このうちタイヤ幅方向における接地端に最も近いショルダー主溝と、ショルダー主溝から接地端を超えて、タイヤ幅方向に対して傾斜した方向に延びるショルダー横溝と、ショルダー主溝とショルダー横溝とによって区画されたショルダーブロックとを有する空気入りタイヤが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5702398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ショルダー横溝がタイヤ幅方向に対して傾斜しているので、ショルダーブロックの頂面においてタイヤ幅方向に延びる縁部の1つは、タイヤ周方向との間の角度が鋭角となる。この場合、ショルダーブロックは、上記鋭角部分において剛性が低下しやすい。さらに、タイヤ幅方向における接地端近傍には接地圧が高くなりやすい。したがって、接地端近傍に位置する上記鋭角部分は、相対的に剛性が低く、且つ、接地圧が高くなりやすいために、路面に接地した際に、残余の部分に比して変形が大きくなりすべりが増大するため摩耗が促進されやすい。
【0005】
一方、上記鋭角部分に対してショルダー横溝を挟んでタイヤ周方向に対向する鈍角部分は、剛性が低下しにくく摩耗量が少ない。この結果、摩耗が進行しやすい鋭角部分と、摩耗量が少ない鈍角部分とが、ショルダー横溝を挟んでタイヤ周方向に対向するため、これらの間の摩耗量の差が増大する、いわゆるトーヒール摩耗が問題となりやすい。
【0006】
本発明は、タイヤ幅方向に対して傾斜しているショルダー横溝によって区画されるショルダーブロックにおいて、接地端近傍におけるトーヒール摩耗を抑制することができる、空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
トレッド部に設けられたタイヤ周方向に延びる複数の主溝のうち、タイヤ幅方向における接地端に最も近いショルダー主溝と、
少なくとも前記ショルダー主溝から前記接地端を超えて、タイヤ幅方向に対して傾斜した方向に延びるショルダー横溝と、
前記ショルダー主溝と前記ショルダー横溝とによって区画されたショルダーブロックと を有し、
前記ショルダーブロックは、頂面においてタイヤ幅方向に延びる複数の幅方向縁部を有し、前記複数の幅方向縁部のうちタイヤ周方向との間の角度が鋭角となる鋭角側幅方向縁部には、タイヤ幅方向の所定範囲にわたって面取り部が形成されており、
前記面取り部は、タイヤ幅方向において、前記接地端からタイヤ幅方向内側へ、前記ショルダー主溝から前記接地端までのショルダー接地幅の1/4の幅で画定される領域に占める割合が50%以上である、空気入りタイヤを提供する。
【0008】
本発明によれば、ショルダーブロックの鋭角側幅方向縁部のうち、特に接地圧が高くなりやすい接地端近傍に、面取り部が形成されている。面取り部を形成することによって、剛性が相対的に低い鋭角側幅方向縁部の接地端近傍部分が接地し難くなる。この結果、鋭角側幅方向縁部の接地端近傍部分の摩耗が抑制されるので、これにタイヤ周方向に隣り合うショルダーブロックの鈍角側の幅方向縁部における摩耗量との差が低減する。よって、接地端近傍におけるトーヒール摩耗を抑制できる。
【0009】
面取り部が、タイヤ幅方向において、ショルダー接地幅の1/4の幅で画定される領域に占める割合が50%未満であると、鋭角側幅方向縁部の接地端近傍部分が高い接地圧で接地しやすく、摩耗が促進されるため、トーヒール摩耗の抑制が不十分となる。
【0010】
好ましくは、前記面取り部は、タイヤ幅方向における幅が前記ショルダー接地幅の50%以下である。
【0011】
本構成によれば、面取り部がタイヤ幅方向に過大に形成されることがないので、鋭角側幅方向縁部によるエッジ部が所定長さで確保される。これによって、鋭角側幅方向縁部によるエッジ効果を発揮させやすく、トラクション性能の悪化を抑制できる。面取り部が、前記ショルダー接地幅の50%を超えると、鋭角側幅方向縁部が短くなるため、鋭角側幅方向縁部によるエッジ効果が減少してしまい、トラクション性能が悪化しやすい。
【0012】
また、好ましくは、前記面取り部は、前記ショルダー横溝の延在方向に直交する方向における断面形状が、前記ショルダーブロックの頂面から周方向端面にかけて直線状に傾斜している。
【0013】
本構成によれば、面取り部を容易に形成できる。
【0014】
また、好ましくは、前記面取り部は、前記ショルダー横溝の延在方向に直交する方向における断面形状が、タイヤ径方向内側に向かうにしたがって、タイヤ径方向に対する角度が小さくなる。
【0015】
本構成によれば、面取り部がタイヤ周方向に長大化することを抑制しつつ、タイヤ径方向に大きく形成しやすい。これによって、ショルダーブロックの摩耗初期においては、タイヤ径方向に対する角度が大きい面取り部によって接地が抑制される。一方、摩耗が進行するにしたがってショルダーブロックの高さが低くなるため剛性が増大するので、面取り部を適正な大きさに小さく構成しこれによって接地面をタイヤ周方向に確保しやすい。したがって、ショルダーブロックの摩耗に応じて適切な面取り部の大きさを実現できるので、ショルダーブロックの接地面を維持しつつ、トーヒール摩耗を抑制しやすい。
【0016】
また、好ましくは、前記面取り部は、タイヤ幅方向に複数設けられている。
【0017】
本構成によれば、面取り部をショルダーブロックのタイヤ幅方向にバランスよく配置できる。これによって、ショルダーブロックの鋭角側幅方向縁部の剛性をタイヤ幅方向に均一化しやすく、タイヤ幅方向における偏摩耗の増大が抑制される。
【0018】
また、好ましくは、前記面取り部は鋭角側面取り部であり、
前記ショルダーブロックは、前記複数の幅方向縁部のうちタイヤ周方向との間の角度が鈍角となる鈍角側幅方向縁部に、前記鋭角側面取り部とタイヤ周方向に対向する位置に、鈍角側面取り部が形成されており、
前記鈍角側面取り部は、前記鋭角側面取り部よりも小さい。
【0019】
本構成によれば、鋭角側面取り部に対向する位置に鈍角側面取り部が形成されているので、鈍角側幅方向縁部のうち接地圧が高くなりやすい接地端近傍部分の摩耗が抑制される。また、鈍角側幅方向縁部は、鋭角側幅方向縁部に比して剛性が高いので、鈍角側面取り部を鋭角側面取り部よりも小さくすることで、鈍角側幅方向縁部の剛性が過度に増大することがなく、鋭角側幅方向縁部との剛性差が拡大することが抑制される。これによって、鈍角側面取り部を形成したことによる、トーヒール摩耗の増大が抑制される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タイヤ幅方向に対して傾斜しているショルダー横溝によって区画されるショルダーブロックにおいて、接地端近傍におけるトーヒール摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の部分展開図。
図2図1のII−II線に沿った断面図。
図3図1のIII−III線に沿った断面図。
図4】面取り部を拡大して示す斜視図。
図5A】変形例に係る面取り部を示す図3と同様の断面図。
図5B】他の変形例に係る面取り部を示す図3と同様の断面図。
図5C】他の変形例に係る面取り部を示す図3と同様の断面図。
図6】他の変形例に係る面取り部を示すショルダーブロックの周辺を示す平面図。
図7】他の変形例に係る面取り部を示すショルダーブロックの周辺を示す平面図。
図8図7のVIII−VIII線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド部2の部分展開図である。図1に示すように、トレッド部2には、タイヤ周方向TCに延びる複数の主溝10と、タイヤ幅方向TWに延びる複数の横溝20と、主溝10及び横溝20とによって区画された複数のブロック30とが形成されている。なお、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道線CLを挟んだ両側に点対象に形成されており、以下の説明では一方側(図1において上側)について説明する。
【0024】
複数の主溝10には、トレッド部2のタイヤ幅方向TWの中央部に形成されたセンター主溝11と、このタイヤ幅方向TWの外側であって接地端GLのタイヤ幅方向TWの内側に形成されたショルダー主溝13とがタイヤ赤道線CLを挟んだ両側にそれぞれ含まれている。
【0025】
なお、本明細書における接地端GLとは、新品(すなわち、摩耗していない)状態の空気入りタイヤ1を、正規リムにリム組みして正規内圧で空気を充填した状態で、前記正規内圧における最大負荷能力の90%の負荷を与えたときに、トレッド部2の頂面うち平坦な路面に接地する接地面のタイヤ幅方向における外端部を意味している。
【0026】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば「標準リム」、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」である。
【0027】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。
【0028】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0029】
複数の横溝20には、一対のセンター主溝11をタイヤ幅方向TWに連通するセンター横溝21と、センター主溝11とショルダー主溝13とをタイヤ幅方向TWに連通するメディエイト横溝22と、ショルダー主溝13から、接地端GLを超えて、トレッド部2のタイヤ幅方向TWの幅方向外端部2aまで延びるショルダー横溝23とが含まれている。
【0030】
複数のブロック30には、センター主溝11及びセンター横溝21によって区画されるセンターブロック31と、センター主溝11、ショルダー主溝13及びメディエイト横溝22によって区画されるメディエイトブロック32と、ショルダー主溝13及びショルダー横溝23によって区画されるショルダーブロック33とが含まれている。ショルダーブロック33は、接地面を構成する頂面33aと、この周方向端部からタイヤ径方向の内側に延びる周方向端面33bとを有している。
【0031】
ショルダーブロック33は、頂面33aのタイヤ周方向TCの両側において、ショルダー横溝23によって、タイヤ幅方向TWに延びる一対の幅方向縁部34が区画されている。ここで、ショルダー横溝23は、タイヤ幅方向TWに対して傾斜している。具体的には、ショルダー横溝23は、タイヤ幅方向TWの外側に向かって、タイヤ周方向TC1側(図1において左側)に傾斜して延びている。このため、一対の幅方向縁部34は、タイヤ幅方向TWの外側に向かってタイヤ周方向TC1側に傾斜して延びている。
【0032】
一対の幅方向縁部34には、タイヤ周方向TC1側に位置しておりタイヤ周方向TCとの間の角度が鋭角となる鋭角側幅方向縁部34aと、タイヤ周方向TC2側(図1において右側)に位置しておりタイヤ周方向TCとの間の角度が鈍角となる鈍角側幅方向縁部34bとが含まれている。
【0033】
換言すれば、タイヤ周方向TCに隣り合う一対のショルダーブロック33において、タイヤ周方向TC1側に位置するショルダーブロック33の鈍角側幅方向縁部34bと、タイヤ周方向TC2側に位置するショルダーブロック33の鋭角側幅方向縁部34aとが、ショルダー横溝23を挟んだタイヤ周方向TCの両側に対向して位置している。
【0034】
鋭角側幅方向縁部34aには、頂面33aから周方向端面33bにかけて面取り状に形成された面取り部40が所定範囲にわたって形成されている。面取り部40は、ショルダー主溝13及びトレッド部2の幅方向外端部2aに連通しておらず、ショルダーブロック33(すなわち鋭角側幅方向縁部34a)のタイヤ幅方向TWにおける内側で終端している。面取り部40は、タイヤ幅方向TWの中央部に位置する面取り本体部41と、このタイヤ幅方向TWの両側に位置する、一対の面取り遷移部42とを有している。面取り部40は、本発明における鋭角側面取り部を構成している。
【0035】
面取り部40は、鋭角側幅方向縁部34aにおいて接地端GLからタイヤ幅方向TWの内側へ、ショルダー主溝13から接地端GLまでのショルダー接地幅Wの1/4で画定される領域Rに少なくとも一部が位置している。具体的には、面取り部40は、領域Rに占める割合がタイヤ幅方向TWに50%以上に設定されている。
【0036】
具体的には、面取り部40は、領域Rに位置する部分のタイヤ幅方向TWにおける幅L0が、領域Rの幅である1/4Wの50%以上に設定されている。本実施形態では、面取り部40は、領域Rの全域に対応して形成されており、面取り部40の幅L0は、領域Rの幅である1/4Wに等しい。すなわち、面取り部40は、接地端GLのタイヤ幅方向TWの内側のおける近傍に少なくとも位置している。
【0037】
なお、面取り部40の幅L0及びショルダー接地幅Wは、トレッド部2(すなわちショルダーブロック33)の接地面に沿った方向に計測した長さを意味している。本実施形態では、面取り部50は、領域Rに対応して形成されており、幅L0が領域Rの幅1/4Wに等しい。また、面取り部40の幅L0は、面取り本体部41及び面取り遷移部42を合計した長さである。
【0038】
図2は、ショルダー横溝23に沿った断面図であり面取り部40をタイヤ周方向TCから見た正面図を示している。図3は、面取り本体部41が形成された位置における、ショルダー横溝23の延在方向に直交する方向における断面図を示している。図2図3に示すように、本実施形態では、面取り本体部41の断面形状は、頂面33aから周方向端面33bにかけて、タイヤ周方向TC1に向かってタイヤ径方向内側に直線状に傾斜している。
【0039】
面取り部40は、タイヤ幅方向における幅L0が、ショルダー接地幅Wの50%以下、より好ましくは、ショルダー接地幅Wの35%以下に設定されている。これによって、面取り部40が過度に長大化することが抑制されるので、鋭角側幅方向端部34aのうち面取り部40を除くエッジ部分を確保できる。
【0040】
本実施形態では、面取り本体部41は、タイヤ径方向に対する傾斜角度Z0が45°に設定されており、周方向長さT0及び径方向長さH0が2mm以上4mm以下に設定されている。この他、面取り部40を、任意の傾斜角度Z0及び周方向長さT0、径方向長さH0で形成してもよい。
【0041】
図4は、面取り部40の周辺を拡大して示す斜視図である。図4に示すように、面取り遷移部42は、面取り本体部41のタイヤ幅方向TWの両端部からタイヤ径方向の外側に向かって、タイヤ幅方向TWにおける面取り本体部41から離れる方向に傾斜している。これによって、面取り遷移部42は、頂面33a及び周方向端面33bとの間の角度Y,Wが鈍角に構成されている。
【0042】
これによって、面取り部40を幅方向縁部34に形成するに際して、ショルダー主溝13及びトレッド部2の幅方向外端部2aにまで延在させないように、幅方向縁部34の途中部分で終端させる場合に、面取り部40のタイヤ幅方向TWにおける両端部がタイヤ幅方向TWに傾斜した面取り状に構成される。この結果、面取り遷移部42を形成しない場合に比して、面取り部40の両端部における剛性の低下を抑制しやすく、面取り部40のタイヤ幅方向TWの両端部における摩耗の増大を抑制しやすい。
【0043】
上記説明した空気入りタイヤ1によれば、次のような効果が得られる。
【0044】
(1)ショルダーブロック33の鋭角側幅方向縁部34aのうち、特に接地圧が高くなりやすい接地端GLの近傍に、面取り部40が形成されている。面取り部40を形成することによって、剛性が相対的に低い鋭角側幅方向縁部34aの接地端GLの近傍に位置する部分が接地し難くなる。この結果、鋭角側幅方向縁部34aの接地端近傍部分の摩耗が抑制されるので、これにタイヤ周方向TCに隣り合うショルダーブロック33の鈍角側幅方向縁部34bにおける摩耗量との差が低減する。よって、接地端GLの近傍におけるトーヒール摩耗を抑制できる。
【0045】
面取り部40が、タイヤ幅方向TWにおいて、ショルダー接地幅Wの1/4の幅で画定される領域Rに占める割合が50%未満であると、鋭角側幅方向縁部34aの接地端GLの近傍に位置する部分が高い接地圧で接地しやすく、摩耗が促進されるため、トーヒール摩耗の抑制が不十分となる。
【0046】
(2)面取り部40の幅L0がショルダー接地幅Wの50%以下であるので、面取り部40がタイヤ幅方向TWに過大に形成されることがない。これによって、鋭角側幅方向縁部34aが所定長さで確保されるので、鋭角側幅方向縁部34aによるエッジ効果を発揮させやすく、トラクション性能の悪化を抑制できる。面取り部40が、ショルダー接地幅Wの50%を超えると、鋭角側幅方向縁部34aのうち面取り部40を除く部分が短くなるため、鋭角側幅方向縁部34aによるエッジ効果が減少してしまい、トラクション性能が悪化しやすい。
【0047】
(3)面取り本体部41は傾斜面であるので、容易に形成できる。
【0048】
上記実施形態では、面取り本体部41が傾斜面である場合を例にとって説明したが、これに限らない。図5A図5Cは、変形例に係る面取り部50,60,70をそれぞれ示す図3と同様の断面図である。図5Aに示すように、R曲面状の面取り本体部51を有する面取り部50を形成してもよい。また、図5Bに示すように、階段状の面取り本体部61を有する面取り部60を形成してもよい。
【0049】
また、図5Cに示すように、タイヤ径方向内側に向かうにしたがって、タイヤ径方向に対する角度が小さくなる面取り本体部71を有する面取り部70を形成してもよい。具体的には、面取り本体部71を、頂面33aから第1の傾斜角度Z1(例えば45°)で傾斜してタイヤ径方向内側に延びる第1傾斜面71aと、この頂面33aとは反対側の端部から第1の傾斜角度Z1より小さい第2の傾斜角度Z2(例えば30°)で傾斜してタイヤ径方向内側に延びる第2傾斜面71bと、この頂面33aとは反対側の端部から第2の傾斜角度Z2より小さい第3の傾斜角度Z3(例えば15°)で傾斜してタイヤ径方向内側に延びる第3傾斜面71cとを有するように形成してもよい。
【0050】
面取り部70によれば、面取り部70がタイヤ周方向TCに長大化することを抑制しつつ、タイヤ径方向に大きく形成しやすい。これによって、ショルダーブロック33の摩耗初期においては、タイヤ径方向に対する角度が大きい面取り部70(第1傾斜面71a)によって接地が抑制される。
【0051】
一方、摩耗が進行するにしたがってショルダーブロック33の高さが低くなるため剛性が増大するので、面取り部70を適正な大きさに小さく構成しこれによって接地面をタイヤ周方向に確保しやすい。したがって、ショルダーブロック33の摩耗に応じて適切な面取り部70の大きさを実現できるので、ショルダーブロック33の接地面を維持しつつ、トーヒール摩耗を抑制しやすい。
【0052】
また、上記実施形態では、面取り部40を1つのみ形成した場合を例にとって説明したが、これに限らない。図6は、変形例に係る面取り部80の周辺を拡大して示す図1と同様の図である。図6に示すように、鋭角側幅方向縁部34aに、複数の面取り部80を形成してもよい。この場合でも、ショルダー接地幅Wの1/4である領域R内に、面取り部80が占める割合が50%以上であればよい。
【0053】
すなわち、図6の場合、鋭角側幅方向縁部34aに第1〜第3面取り部81〜83が形成されているが、領域Rに位置する第1及び第2面取り部81,82それぞれの領域R内における長さの合計(図6においてL1とL2の合計)が領域Rの幅1/4Wの50%以上になるように、複数の面取り部80を形成すればよい。
【0054】
面取り部80を鋭角側幅方向端部34aにおいてタイヤ幅方向に複数設けることによって、面取り部80をショルダーブロック33のタイヤ幅方向にバランスよく配置できる。これによって、ショルダーブロック33の鋭角側幅方向縁部34aの剛性をタイヤ幅方向TWに均一化しやすく、タイヤ幅方向TWにおける偏摩耗の増大が抑制される。
【0055】
また、上記実施形態では、鋭角側幅方向端部34aにのみ面取り部40を形成する場合を例にとって説明したが、これに限らない。図7は、変形例に係る面取り部90の周辺を拡大して示す図1と同様の図であり、図8は面取り部90の縦断面を示す図3と同様の図である。図7及び図8に示すように、鈍角側幅方向端部34bにも面取り部40にタイヤ周方向に対向する位置に面取り部90を形成してもよい。すなわち、面取り部90は、本発明における鈍角側面取り部を構成している。
【0056】
この場合、面取り部90を、面取り部40に比して小さく構成すればよい。例えば、面取り部90の、幅L3、周方向長さT1及び径方向長さH1の全て若しくは少なくとも1つを、面取り部40の幅L0、周方向長さT0及び径方向長さH0よりも短くすればよい。
【0057】
面取り部40に対向する位置に面取り部90が形成されているので、鈍角側幅方向縁部34bのうち接地圧が高くなりやすい接地端GLの近傍部分の摩耗が抑制される。また、鈍角側幅方向縁部34bは、鋭角側幅方向縁部34aに比して剛性が高いので、面取り部90を面取り部40よりも小さくすることで、鈍角側幅方向縁部34bの剛性が過度に増大することがなく、鋭角側幅方向縁部34aとの剛性差が拡大することが抑制される。これによって、鈍角側幅方向縁部34bに面取り部90を形成したことによる、トーヒール摩耗の増大が抑制される。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
2 トレッド部
12 ショルダー主溝
23 ショルダー横溝
33 ショルダーブロック
33a 頂面
33b 周方向端面
34 幅方向縁部
34a 鋭角側幅方向縁部
34b 鈍角側幅方向縁部
40 面取り部
41 面取り本体部
42 面取り遷移部
W ショルダー接地幅
L 面取り部の幅
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8