【解決手段】ブテン原料、酸素、および水蒸気を含む第1供給物を供給する第1供給部と;ブテン原料および酸素を含む第2供給物を供給する第2供給部と;触媒固定層を含んで酸化的脱水素化反応が行われる反応部と;を含み、前記第1供給部は、前記反応部の前段に連結され、前記第2供給部は、前記反応部の中段に連結される、1,3−ブタジエンの製造システム。
前記触媒固定層は、不活性支持体、中間体および触媒成分から構成されたコーティング触媒である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の1,3−ブタジエンの製造システム。
前記触媒固定層は、(i)触媒粉末、有機バインダー、無機バインダー、および水がそれぞれ1.0:0.01〜0.1:0.02〜0.2:1.0〜3.0の重量比で混合された触媒混合物が担体にコーティングされた成形体、または(ii)触媒粉末、有機バインダー、無機バインダー、および水がそれぞれ1.0:0.01〜0.1:0.02〜0.2:0.02〜0.2の重量比で混合された触媒混合物が押出成形された成形体を含む、請求項4に記載の1,3−ブタジエンの製造システム。
前記第1供給物に含まれた前記ブテン原料の含有量は、前記製造システムに供給された前記ブテン原料の総量の40〜90体積%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の1,3−ブタジエンの製造システム。
前記第1および第2供給物において前記ブテン原料および前記酸素の体積比は、それぞれ1:0.5〜1.2である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の1,3−ブタジエンの製造システム。
前記水蒸気の含有量は、前記製造システムに供給された前記ブテン原料の総量を基準として500〜1,500体積%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の1,3−ブタジエンの製造システム。
【背景技術】
【0002】
1,3−ブタジエンは、スチレンブタジエンゴム(Styrene butadiene rubber,SBR)、ポリブタジエンゴム(Polybutadiene rubber,BR)、ブタジエン単独重合体などの合成ゴムを製造するのに使用されたり、熱可塑性樹脂であるアクリロニトリルブタジエンスチレン(Acrylonitrile butadiene styrene,ABS)を製造したりするのに使用される化合物である。
【0003】
一般的に、1,3−ブタジエンは、ナフサを原料とする炭化水素の熱分解方法(Naphtha cracking)により製造される。ナフサを熱分解すると、メタン、エタン、エテン、アセチレン、プロパン、プロペン、ブテン、ブタジエンおよび炭素数5(C5)以上の高級炭化水素の混合物が得られる。ただし、上記の熱分解法により1,3−ブタジエンを生産する場合、他の不飽和炭化水素(オレフィン)も同時に生成されるので、分離精製に過多のエネルギーが消費されて工程効率が低下する。
【0004】
ブタンまたはブテンを、不均一系触媒を使用して直接脱水素化する方法は、上記の熱分解法より1,3−ブタジエンの収率は高いが、吸熱反応として熱力学的に不利であり、高い反応温度が要求され、触媒の不活性化が速いという短所がある。
【0005】
ブテンの酸化的脱水素化反応により1,3−ブタジエンを生産する方法は、直接脱水素化の反応とは異なって、発熱反応として相対的に低い温度で反応が進行されるので、エネルギー消耗を最小化することができ、酸化剤を添加して炭素沈積物(coke)の生成を抑制することができる。
【0006】
前記酸化的脱水素化反応は、このような長所にもかかわらず、反応の間高温で酸化剤を使用するので、反応を安定化させるために多量の不活性ガス(窒素ガス、二酸化炭素ガス、水蒸気など)を注入しなければならない。この際、過量の窒素ガスを使用すると、反応に対する安全性が高まるが、反応後に冷却工程で1,3−ブタジエンが含まれた生成物と過量の窒素ガスに起因して設備構築に多くの費用がかかるという問題がある。
【0007】
これに対して、窒素ガスの代わりに、炭素沈積物の生成抑制および反応器の除熱のために水蒸気を使用する方法が提案された。水蒸気は、冷却工程で、水で除去されて抽出蒸留塔のサイズが小さくてもよいが、反応器から高温で排出される生成物を冷却させるとき、多量の有機物を含む廃水が発生し、高温の水蒸気を低温で冷却させるために過多なエネルギーが消費されるという問題がある。
【0008】
特許文献1には、全体酸素投入量のうち一部を分割投入して1,3−ブタジエンを製造することによって、ブテン転換率および1,3−ブタジエンの収率を向上させることができる技術が記載されている。しかしながら、これと比例して増加する発熱を分散させにくいため、触媒層の温度が増加して触媒の安定性が低下する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、純粋な酸素を使用して発熱の制御が容易な1,3−ブタジエンの製造システムおよびこれを利用した1,3−ブタジエンの製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ブテン転換率および1,3−ブタジエンの収率を向上させると同時に、副反応物である二酸化炭素の生成量を低く制御できる1,3−ブタジエンの製造システムおよび製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、1,3−ブタジエンの製造において、工程費用を増加させる水蒸気の使用を少なくしながらも、同一またはより優れた効果を達成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、ブテン原料、酸素、および水蒸気を含む第1供給物を供給する第1供給部と;ブテン原料および酸素を含む第2供給物を供給する第2供給部と;触媒固定層を含んで酸化的脱水素化反応が行われる反応部と;を含み、前記第1供給部は、前記反応部の前段に連結され、前記第2供給部は、前記反応部の中段に連結される、1,3−ブタジエンの製造システムを提供する。
【0014】
一実施例において、前記第2供給部は、一つ以上でありうる。
【0015】
一実施例において、前記第2供給部は、前記反応部の25〜75%の地点に連結され得る。
【0016】
一実施例において、前記触媒固定層は、不活性支持体、中間体および触媒成分から構成されたコーティング触媒でありうる。
【0017】
一実施例において、前記触媒固定層は、(i)触媒粉末、有機バインダー、無機バインダー、および水がそれぞれ1.0:0.01〜0.1:0.02〜0.2:1.0〜3.0の重量比で混合された触媒混合物が担体にコーティングされた成形体、または(ii)触媒粉末、有機バインダー、無機バインダー、および水がそれぞれ1.0:0.01〜0.1:0.02〜0.2:0.02〜0.2の重量比で混合された触媒混合物が押出成形された成形体を含むことができる。
【0018】
一実施例において、前記第1供給物に含まれた前記ブテン原料の含有量は、前記製造システムに供給された前記ブテン原料の総量の40〜90体積%でありうる。
【0019】
一実施例において、前記第1および第2供給物において前記ブテン原料および前記酸素の体積比は、それぞれ1:0.5〜1.2でありうる。
【0020】
一実施例において、前記水蒸気の含有量は、前記製造システムに供給された前記ブテン原料の総量を基準として500〜1,500体積%でありうる。
【0021】
本発明の他の態様は、前述した1,3−ブタジエン製造システムを利用する、1,3−ブタジエンの製造方法を提供する。
【0022】
一実施例において、前記ブテン原料の転換率が70%以上でありうる。
【0023】
一実施例において、前記1,3−ブタジエンの収率が60%以上でありうる。
【0024】
一実施例において、前記触媒固定層の温度の最大値が500℃以下でありうる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、純粋な酸素を使用しながらも発熱を容易に制御して触媒の安定性を向上させることができる。
【0026】
本発明の他の態様によれば、ブテン転換率および1,3−ブタジエンの収率を向上させると同時に、副反応物である二酸化炭素の生成量を低く制御することができる。
【0027】
本発明のさらに他の一態様によれば、1,3−ブタジエンの製造において工程費用を増加させる水蒸気の使用を少なくしながらも同一またはより優れた効果を達成することができる。
【0028】
本発明の効果は、上記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、添付の図面を参照して本発明を説明することとする。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で具現され得、したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。そして、図面で本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分は省略し、明細書全般において類似した部分に対しては、類似した参照符号を付けた。
【0031】
明細書全般において、任意の部分が他の部分と「連結」されているというとき、これは、「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を挟んで「間接的に連結」されている場合も含む。また、任意の部分が或る構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに具備できることを意味する。
【0032】
本明細書において数値の範囲が記載されたとき、その具体的な範囲が別途記述されない限り、その値は、有効数字に対する化学での標準規則によって提供された有効数字の精密度を有する。例えば、10は、5.0〜14.9の範囲を含み、数字10.0は、9.50〜10.49の範囲を含む。
【0033】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明することとする。
【0034】
1,3−ブタジエンの製造システム
図1は、本発明の一実施例による1,3−ブタジエンの製造システムを示す概略図である。
【0035】
図1を参照すると、本発明の一態様による1,3−ブタジエンの製造システムは、ブテン原料、酸素、および水蒸気を含む第1供給物を供給する第1供給部100と;ブテン原料および酸素を含む第2供給物を供給する第2供給部200と;触媒固定層を含んで酸化的脱水素化反応が行われる反応部300と;を含み、前記第1供給部は、前記反応部の前段に連結され、前記第2供給部は、前記反応部の中段に連結され得る。
【0036】
前記1,3−ブタジエンの製造システムは、多様な方式または形態で具現され得るが、好ましくは、費用および効率などの側面を考慮してそれぞれの設備が連続式工程に適合するように配置および設計され得る。また、前記第2供給部200は、前記製造システムの容量などによって一つ以上備えられることができる。
【0037】
前記第1供給部100は、ブテン原料供給ライン11、酸素供給ライン13および蒸気供給ライン15から供給された第1供給物を前記反応部300の前段に連結された第1供給物供給ライン10に供給することができ、前記第2供給部200は、前記ブテン原料供給ライン21および酸素供給ライン23から供給された第2供給物を前記反応部300の中段に連結された第2供給物供給ライン20に供給することができる。この際、前記第1および第2供給物は、それぞれ混合器(mixer)を通過したり、別途の混合工程なしに直接反応部300に供給したりされて、反応物として使用され得る。この際、ブテン原料、酸素および水蒸気は、質量流量調節器により精密に供給され得る。
【0038】
前記第1供給部100または第2供給部200は、前記第1または第2供給物を反応温度まで加熱させる加熱器を含むことができ、この際、前記第1または第2供給物の温度を150℃以上、200℃以上または250℃以上、かつ500℃以下、450℃以下または400℃以下の範囲で加熱することができる。前記第1または第2供給物の温度が150℃未満なら、供給物が反応部300内の触媒固定層を冷却させて、1,3−ブタジエンの収率が低下し得、500℃超なら、反応部300上部の発熱量が増加して副反応が促進されるに伴い、1,3−ブタジエンの収率が低下し得る。前記加熱器で加熱した前記第1または第2供給物は、酸化的脱水素化反応のために反応部300に移送されて反応物として使用され得る。
【0039】
前記第1、第2供給物は、前記第1供給物供給ライン10、第2供給物供給ライン20を通じて前記反応部300に移送され得る。この際、前記供給物内のブテン原料、酸素、および水蒸気は、相互に混合された状態で移送されたり、それぞれ分離して移送されたりした後、前記反応部300の内部で混合され得る。好ましくは、前記第2供給部200は、前記ブテン原料および酸素を分離して供給することができる。具体的には、前記ブテン原料および酸素を分離供給することによって、副反応により発生しうる原料損失を防止することができる。前記第1供給部100および第2供給部200から供給された前記第1および第2供給物は、前記反応部300内で酸化的脱水素化反応の反応物として使用されて、生成物である1,3−ブタジエンに転換され得る。
【0040】
前記反応部300で生成された前記1,3−ブタジエンは、前記反応部300から生成物排出ライン30を通じて排出されて、一連の精製工程によって精製され得る。このような精製工程は、冷却、圧縮、脱水、吸収、脱気および蒸留を含むことができるが、これらに限定されず、当業界に知られた工程を自由に選択して行われ得る。
【0041】
前記反応部300が前記第1供給物供給ライン10と連結された前段を0%地点、前記反応部300が前記生成物排出ライン30と連結された後段を100%地点と定義する。すなわち、前記反応部300の中段は、前記反応部300の0%超かつ100%未満である地点を意味する。この際、前記第2供給部200は、前記第2供給物供給ライン20を通じて前記反応部300の25〜75%地点、例えば、25%地点、35%地点、45%地点、55%地点、65%地点または75%地点、に連結され得る。前記第2供給部200が前記反応部300の25%未満の地点に連結されると、第2供給部200なしに第1供給部100のみが備えられた製造システムと効果の差異がないことがあり、75%超の地点に連結されると、前記第2供給物供給ライン20によって供給された前記反応物が十分に反応しないことがある。
【0042】
前記反応部300は、供給された前記反応物を酸化的脱水素化反応させて、1,3−ブタジエンを生成するための反応器を具備することができる。前記反応器は、酸化的脱水素化反応またはこれと類似した反応に使用可能な公知の反応器、例えば、多管型反応器、多段反応器、およびこれらのうち一つ以上が直列連結された反応器であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記反応部300は、触媒固定層を含むことができ、前記触媒固定層は、一体で備えられるか、一つ以上が相互離隔した複数個で備えられることができる。前記触媒固定層が相互離隔した複数個から構成されたとき、前記第2供給部200がそれぞれの前記触媒固定層の間に前記第2供給物を供給することができる。この際、それぞれの前記触媒固定層の体積またはサイズは、前記第2供給部200から供給される前記ブテン原料および酸素の相対的な体積比率に応じて調節され得る。
【0044】
前記触媒固定層に粉末状の触媒が単純充填される場合、反応間触媒粉末の分散均一度が低下して表面積が不規則的に変化し、反応速度を制御しにくいので、好ましくは、前記触媒固定層として粉末状の触媒が一定形態の構造を有する成形体にコーティングされたもの、または一定形態の構造を有する成形体で製造されたものを使用することが好ましい。
【0045】
例えば、前記触媒固定層は、不活性支持体、中間体および触媒成分から構成されたコーティング触媒であってもよく、好ましくは、(i)触媒粉末、有機バインダー、無機バインダー、および水がそれぞれ1.0:0.01〜0.1:0.01〜0.2:0.1〜3.0の重量比で混合された触媒混合物が担体にコーティングされた成形体、または(ii)触媒粉末、有機バインダー、無機バインダー、および水がそれぞれ1.0:0.01〜0.1:0.01〜0.2:0.02〜0.2の重量比で混合された触媒混合物が押出成形された成形体を含むことができる。
【0046】
前記成形体(i)は、前記触媒粉末、有機バインダー、無機バインダー、および水が混合された触媒混合物を一定範囲のセル数を有する担体に均一にコーティングし、100〜160℃、または120〜140℃の温度で乾燥した後、電気炉を利用して400〜650℃、または500〜550℃の温度で熱処理することによって製造され得る。前記乾燥時に温度が100℃未満なら、コーティングした溶液が流れて担体の表面で触媒混合物の分散度が不均一になり得、前記熱処理温度が400℃未満なら、有機バインダーを完全に除去しにくく、650℃超なら、コーティングされた触媒混合物の結晶構造が変わる場合がある。前記触媒粉末は、フェライト粉末など酸化的脱水素化反応に使用できる触媒の中から自由に選択して使用することができる。前記担体は、ハニカム、球形、シリンダー、クローバー、星形態など多様な構造を有することができる。
【0047】
前記有機バインダーは、メチルセルロース、エチレングリコール、ポリオール、フードオイル、有機脂肪酸、およびこれらのうち2以上の混合物からなる群より選択される一つであってもよく、好ましくは、ヒドロキシルメチルセルロース(hydroxyl methyl cellulose)またはポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0048】
前記無機バインダーは、固体状シリカ、固体状アルミナ、固体状シリカ−アルミナ、シリカゾル、アルミナゾル、水ガラス、およびこれらのうち2以上の混合物からなる群より選択される一つであってもよく、好ましくは、フュームドシリカ(fumed silica)、シリカゾル(silica sol)、ベーマイト(boehmite)、またはアルミナゾル(alumina sol)であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0049】
前記成形体(ii)は、鋳型枠が装着された押出成形機を利用して前記触媒混合物を一定の構造で押出成形し、押出された成形体を10〜40℃、15〜35℃、または20〜25℃で自然乾燥した後、電気炉を利用して400〜650℃、または500〜550℃の温度で熱処理することによって製造され得る。前記熱処理温度が400℃未満なら、有機バインダーを完全に除去しにくく、650℃超なら、押出成形された触媒混合物の結晶構造が変わる場合がある。前記成形体は、ハニカム、シリンダー、内部に孔隙があるホールタイプ、外部にクローバー葉または星形状の突出部を有する形態などの構造に自由に押出成形され得る。前記成形体の構造は、接触面積および強度を維持しつつ最適化され得る。
【0050】
一方、前記成形体のセル数が50〜800cpsi(cells per square inch)、または100〜600cpsiであってもよい。前記成形体のセル数が50cpsi未満なら、触媒の表面積が小さくて、反応活性が低下し得、800cpsi超なら、酸化的脱水素化反応間に生成された炭素沈積物によりセルが詰まって反応圧力が過度に上昇することがある。
【0051】
前記ブテン原料は、総使用量の一部を二以上の供給ライン11、21に分割して投入され得、前記ブテン原料としては、C4混合物またはC4ラフィネート(raffinate)のようなブテン混合物を使用することができ、前記ブテン原料に一定量以上のiso−ブテンが含まれる場合に、触媒の活性低下または急激な発熱によって1,3−ブタジエンの収率が低下し得る。よって、好ましくは、純粋なn−ブテン(1−ブテンまたは2−ブテン)を使用するか、iso−ブテンを一定水準の未満に低く維持したブテン原料を使用することができる。
【0052】
前記酸素は、総使用量の一部を二以上の供給ライン13、23に分割して投入され得、前記酸素は、純粋な酸素でありうる。従来、酸素および窒素ガスを含む空気を投入したり、純粋な酸素と純粋な窒素ガスを同時投入したりして、発熱制御のための希釈剤として使用したが、これは、実際の反応に必要な酸素の比率が減少して、システムのサイズ対比生産量が劣り、水蒸気を生成するためのエネルギーの浪費に起因して経済的に不利であるという短所があった。しかし、本発明は、ブテン原料および酸素を第1供給部および一つ以上の第2供給部に分割供給することによって、高温による触媒固定層の安定性の低下の問題を解決し、純粋な酸素を使用して1,3−ブタジエンを製造することができ、従来の1,3−ブタジエン製造システムに比べてサイズが減少した製造システムを提供することができる。
【0053】
前記水蒸気は、酸化的脱水素化反応で反応熱を制御し、反応間触媒固定層の表面に生成される炭素沈積物を除去する役割を担うことができ、多様な方法または形態、例えば、高温高圧の水蒸気の形態で供給されるか、またはポンプにより蒸発器(evaporator)に供給された水が水蒸気に気化して供給される。
【0054】
酸化的脱水素化反応において酸素の比率が高い場合、ブテン原料の転換率と1,3−ブタジエンの収率を増加させることができるが、副反応物である二酸化炭素の収率がさらに急速に増加して、原料の損失が大きくなり得る。反面、酸素の比率が低い場合、転換率および1,3−ブタジエンの収率が減少して、原料の再循環による工程費用が増加するという短所がある。
【0055】
水蒸気の比率が高い場合、1,3−ブタジエンの収率が増加し、発熱の分散が容易で、触媒の安定性が向上し得るが、このような水蒸気の形成には、過量のエネルギーが使用されるので、水蒸気使用量に対して1,3−ブタジエンの収率を向上させる場合にのみ、工程費用を節減することができる。
【0056】
前記第1供給物に含まれた前記ブテン原料の含有量は、前記製造システムに供給された前記ブテン原料の総量の40〜90体積%または55〜75体積%であり得、残量である10〜60体積%または25〜45体積%のブテン原料は、前記第2供給物に供給され得る。前記第1供給物のブテン原料比率が40体積%未満なら、前記ブテン原料の転換率が減少して工程全体の効率が低下し得、90体積%超なら、前記第2供給物を利用した分割供給の効果が具現されにくいことがある。
【0057】
前記第1および第2供給物において前記ブテン原料および前記酸素の体積比は、それぞれ1:0.5〜1.2または1:0.7〜1でありうる。前記酸素の体積比が0.5未満なら、酸化的脱水素化反応が円滑に行われにくく、1.2超なら、ブテンに対して酸素の含有量が多すぎるので、完全酸化反応が優勢になることによって、副反応物である二酸化炭素の生成比率が高くなりえる。
【0058】
前記水蒸気の含有量は、前記製造システムに供給された前記ブテン原料の総量を基準として500体積%以上、600体積%以上または700体積%以上であり、1,500体積%以下、1,400体積%以下、1,300体積%以下、または1,200体積%以下でありうる。前記蒸気の含量が500体積%未満なら、1,3−ブタジエンの収率が減少し、発熱に起因して触媒の安定性が阻害され得、1,500体積%超なら、経済的に不利になり得る。
【0059】
前記製造システムは、前記ブテン原料および前記酸素を分割供給することによって、前記反応部300のすべての地点で、前記ブテン原料に対する前記水蒸気の含有量を高くして、優れたブテン転換率、1,3−ブタジエン収率および発熱制御と、副反応物(二酸化炭素)の生成の低減を同時に具現することができる。
【0060】
1,3−ブタジエンの製造方法
本発明の他の態様による1,3−ブタジエンの製造方法は、前述した1,3−ブタジエン製造システムを利用することができる。
【0061】
前記製造システムおよび各種原料の種類、含有量およびその効果については、前述したことと同様である。
【0062】
前記製造方法によれば、前記ブテン原料の転換率が70%以上、または70〜80%であってもよく、前記1,3−ブタジエンの収率が60%以上、または60〜70%であってもよく、前記触媒固定層の温度の最大値が500℃以下であってもよい。
【0063】
酸化的脱水素化反応は、250〜500℃の温度で効率的に行われ、250℃未満なら、触媒が活性化しなくて、部分酸化反応が円滑に行われにくく、500℃超なら、触媒の安定性が低下して相変移が発生し得、触媒固定層の表面に炭素沈積物の生成速度が増加し、部分酸化反応に比べて完全酸化反応が優勢になるので、副反応物である二酸化炭素の生成比率が増加し得る。
【0064】
一般的に、ブテン原料の転換率、1,3−ブタジエン収率を高めるには、より高温で反応を進めるが、本発明の前記製造方法によれば、ブテン原料の転換率70%以上、1,3−ブタジエン収率60%以上であると同時に、触媒固定層の温度を500℃以下に維持することができる。
【0065】
したがって、前記製造方法を使用する場合、従来の製造方法に比べて触媒の寿命が長くて、工程効率性が顕著に高く、安全事故の発生を防止することができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例についてより詳細に説明することとする。ただし、以下の実験結果は、前記実施例のうち代表的な実験結果のみを記載したものであり、実施例などによって本発明の範囲と内容が縮小されたり制限されたりして解すべきものではない。下記で明示的に提示しない本発明の様々な具現例のそれぞれの効果は、当該部分で具体的に記載することとする。
【0067】
製造例.触媒成形体の製造
ベーマイト1.76g、水4.5g、および硝酸0.225gを混合して、アルミナゾルを製造した。シリカ−アルミナボール300mLを添加し回転させながら、前記ボールに前記アルミナゾルを均一に付着させた。常温で乾燥後、80℃で8時間の間さらに乾燥し、800℃で4時間の間熱処理して、ガンマ−アルミナがコーティングされたボール形態のシリカ−アルミナ担体を製造した(アルミナゾルコーティング重量/アルファ−アルミナボール体積=5g/L)。
【0068】
マグネシウム−鉄フェライト金属酸化物触媒粉末95.3g、メチルセルロース2.1gおよび水16.2gを均一に混合した後、ガンマ−アルミナがコーティングされたボール形態の前記シリカ−アルミナ担体300mLを添加した後、回転させて、前記担体上に触媒粉末をコーティングした。常温で乾燥後、80℃で8時間の間乾燥し、550℃で4時間の間熱処理して、フェライト系金属酸化物がコーティングされたボール形態の触媒成形体を製造した(触媒粉末コーティング重量/アルミナゾルがコーティングされたアルファ−アルミナボール体積=300g/L)。
【0069】
比較例1〜9
ステンレス反応器に上記製造例の成形体を空間速度400h
−1になるように充填し、370℃で活性化させた。C4混合物(n−ブテン):酸素:水蒸気がそれぞれ下記表1の体積比で混合された混合気体を前記ステンレス反応器の上部に供給し、酸化的脱水素化反応させて、1,3−ブタジエンを製造した。
【0070】
実施例1〜6
ステンレス反応器に上記製造例の成形体を空間速度400h
−1になるように充填し、370℃で活性化させた。ブテン原料(C4):酸素(O
2):水蒸気がそれぞれ下記表1の体積比で混合された第1混合気体を前記ステンレス反応器の上部に供給し、ブテン原料:酸素が下記表1の体積比で混合された第2混合気体を前記成形体の上部から50%に該当する地点に供給して酸化的脱水素化反応させて、1,3−ブタジエンを製造した。
【0071】
前記実施例および比較例それぞれの反応条件を下記式1〜4で計算し、これを整理して下記表1に示した。
【0072】
また、比較例1を基準として同じ量の1,3−ブタジエンを製造するのに必要なブテン原料の必要量を
図2に示した。
【0073】
原料投入比は、ブテン原料、純粋酸素および水蒸気の体積比を示したものであり、実施例の場合、ブテン原料および純粋酸素の体積比を第1混合気体+第2混合気体で割って示した。
【0074】
【数1】
【0075】
【表1】
【0076】
表1および
図2を参照すると、反応器の上部にのみ原料を供給した比較例に比べて、ブテン原料および酸素を反応器の中間部に分割供給した実施例が、C4転換率、ブタジエン収率に優れており、ブテン原料の必要量も、比較例1に比べて96%の水準に過ぎないので、経済的に有利であることが分かる。
【0077】
比較例1を基準としてこれを具体的に検討すると、比較例2、3は、酸素の投入比を増加させて転換率は増加したが、CO
2生成量が増加して、同じ量のブタジエンを得るためのブテン原料の必要量が増加した。
【0078】
比較例4〜9は、水蒸気対比でブテンおよび酸素の比率が低くて、触媒層の温度の最大値が減少して安定性が向上した。また、CO
2生成量が減少して同じ量のブタジエンを収得するためのブテン原料の必要量が減少したが、転換率の低下に起因してより多くの原料を再使用しなければならないので、反応システムのサイズが大きくなり、このための更なる工程費用が増加して、経済的に不利であった。
【0079】
一方、実施例1〜6は、比較例4〜9で減少したブテン原料および酸素をその比率を維持しつつ、反応器の中間部にさらに供給したものであって、ブテンの転換率およびブタジエンの収率が顕著に増加すると同時に、触媒層の温度の最大値を比較例1に比べて減少させることができた。これにより、安定性が向上し、再使用原料と同一量のブタジエンを得るためのブテン原料の必要量も減少して、経済的に優れていた。
【0080】
C4混合物および酸素を供給する第2供給部を前記成形体の上部からそれぞれ20%、30%、40%、60%、70%、80%地点に連結したことを除いては、前記実施例と同様にして、1,3−ブタジエンを製造して更なる実験を進めて、C4転換率、1,3−ブタジエン収率、およびCO
2収率を求めた結果を
図3〜
図5に示した。
【0081】
図3〜
図5を参照すると、C4混合物および酸素を10%、20%、80%、90%地点に供給すると、C4転換率およびブタジエンの収率が比較例と大きな差異がなかったが、30%〜70%地点に供給したとき、前述した実施例の優れた効果を達成することができることを確認することができる。
【0082】
これは、反応器の上部から20%未満または80%超地点に第2供給部を連結すると、上部に全部投入したことと大きな差異がないか、さらに供給された原料が十分に反応しなかったためと判断される。
【0083】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。例えば、単一型と説明されている各構成要素は、分散して実施されてもよく、同様に、分散したものと説明されている構成要素も、結合された形態で実施されてもよい。
【0084】
本発明の範囲は、後述する請求範囲によって示され、請求範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解すべきである。