【解決手段】削孔機10に接続自在な中空のロックボルト本体2と、ロックボルト本体2の先端に設けられるビット3と、ロックボルト本体2の外側に周設される外管4を備え、ビット3に削孔水吐出孔32が形成されていると共に段差面34が設けられ、外管4の先端が段差面34に水密になるように押圧して設けられている自穿孔ロックボルト1。
前記ロックボルト本体と前記外管の間の間隔を保持するスペーサーが前記ロックボルト本体と前記外管との間に設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の自穿孔ロックボルト。
前記外管の後端が着脱自在な固定部材で前記ロックボルト本体に対して固定されていると共に、前記自穿孔ロックボルトに膨張可能なパッカーが前記ロックボルト本体を覆うように設けられて前記外管に内装されており、
前記削孔工程の後に、
前記固定部材を取り外して前記ロックボルト本体から前記外管を取り外し、前記外管を孔外に抜き出す抜出工程と、
前記パッカーの内側に注入ホースを挿入し、定着材を前記注入ホースから前記パッカーに注入して充填する注入工程
を行うことを特徴とする請求項6記載の自穿孔ロックボルトの施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1〜3の二重管削孔を行う自穿孔ロックボルトは、いずれも削孔ズリをロックボルト本体と外管の間の空間を通して孔外に排出するものであるが、削孔ズリをロックボルト本体と外管の間の空間に流すと、打設されたロックボルト本体の周囲にどろどろで粘着質の削孔ズリが付着する。特に、自穿孔ロックボルトを地山斜面に下向きに打設し、削孔ズリをロックボルト本体と外管の間の空間に流した場合には、削孔ズリが孔口元側に非常に流れにくくなり、ロックボルト本体への削孔ズリの付着が多くなってしまう。ロックボルト本体の周囲に削孔ズリが付着すると、注入された定着材とロックボルト本体との付着力が低下して、定着強度が低下する原因となってしまう。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、外管の内側への削孔ズリの浸入を防止し、定着材の充填でロックボルト本体の所要の定着強度を確保することができる自穿孔ロックボルト及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自穿孔ロックボルトは、削孔機に接続自在な中空のロックボルト本体と、前記ロックボルト本体の先端に設けられるビットと、前記ロックボルト本体の外側に周設される外管を備え、前記ビットに削孔水吐出孔が形成されていると共に段差面が設けられ、前記外管の先端が前記段差面に水密になるように押圧して設けられていることを特徴とする。
これによれば、削孔ズリが外管とロックボルト本体との間に入り込むことを防ぎ、削孔ズリを外管の外側を通る形で孔外に排出することが可能になり、例えば自穿孔ロックボルトを地山斜面に下向きに打設した場合にも、削孔ズリをロックボルト本体と外管の間の空間に流す構造よりも、削孔ズリをスムーズに流して孔外に排出することができる。そして、外管の内側への削孔ズリの浸入を防止し、ロックボルト本体の周囲が綺麗なまま打設することができる。更に、例えばセメントミルク等の定着材を地山の孔に直接注入した場合には、ロックボルト本体の周囲への削孔ズリの付着が防止されていることから、ロックボルト本体の周囲に定着材が回って確実に付着する。従って、ロックボルト本体の所要の定着強度を確保することができ、地山の補強強度向上を図ることができる。
【0008】
本発明の自穿孔ロックボルトは、前記ビットの前記段差面の後側に前記段差面の外周縁よりも小径の小径部が形成され、前記小径部の外周に環状遮水材が設けられ、前記環状遮水材を前記外管の内周面に水密に当接して前記小径部が前記外管に内装されていることを特徴とする。
これによれば、外管の先端とビットの段差面との水密な当接と、環状遮水材と外管の内周面との水密な当接による二重の水密構造を構成することができ、外管の内側への削孔ズリの浸入をより確実に防止し、ロックボルト本体の所要の定着強度をより高い信頼性で確保することができる。
【0009】
本発明の自穿孔ロックボルトは、前記外管の後端を前記ロックボルト本体に対して固定する固定部材が着脱自在に設けられていることを特徴とする。
これによれば、固定部材の取り外しにより、外管を任意のタイミングで簡単に回収することが可能となる。更に、外管の任意のタイミングでの回収を可能にすることで、孔の周囲の地盤性状に応じて、例えば外管を回収してから定着材の注入作業を行う、或いは定着材の注入後に外管を回収する、或いは外管を回収しながら定着材の注入作業を行うなど、定着材の注入作業の自由度を高めることができる。
【0010】
本発明の自穿孔ロックボルトは、前記ロックボルト本体と前記外管の間の間隔を保持するスペーサーが前記ロックボルト本体と前記外管との間に設けられていることを特徴とする。
これによれば、スペーサーによってロックボルト本体と外管の位置関係を削孔、打設に望ましい位置関係で保持することができる。また、削孔ズリが外管の内側を通過しないことから、スペーサーの破損を防止することができる。また、スペーサーを外管回収後も残すことにより、ロックボルト本体の周囲に所定厚さの定着材が流動して付着する所定厚さの被りをより高い確実性で得ることも可能となり、例えば自穿孔ロックボルトを地山斜面に下向きに打設した場合に、ロックボルト本体が傾いて孔壁に接触し、被りが形成されない部位が生ずること等を防止することができる。
【0011】
本発明の自穿孔ロックボルトは、膨張可能なパッカーが前記ロックボルト本体を覆うように設けられて前記外管に内装されていることを特徴とする。
これによれば、膨張可能なパッカーをロックボルト本体に設置した状態での削孔が可能であり、定着材の注入時に定着材でパッカーを膨張させ、定着材の逸走を防止することが可能となり、ロックボルト本体の定着強度をより高めることができる。また、削孔ズリが外管の内側を通過しないことから、パッカーの破損を防止することができ、安定して高い定着強度を得ることができる。
【0012】
本発明の自穿孔ロックボルトの施工方法は、本発明の自穿孔ロックボルトを施工する方法であって、削孔機に接続した前記ロックボルト本体の中空部から削孔水を供給して前記ビットの前記削孔水吐出孔から吐出させながら前記自穿孔ロックボルトで地山を削孔すると共に、削孔による削孔ズリを前記外管と前記地山の孔壁との間の隙間を通して孔外に排出する削孔工程を備えることを特徴とする。
これによれば、ロックボルト本体の周囲に削孔ズリが付着することがなく、ロックボルト本体の周囲が綺麗なまま打設することができる。そして、例えば後工程でセメントミルク等の定着材を地山の孔に注入した際に、ロックボルト本体の周囲に定着材が回って確実に付着するので、ロックボルト本体の所要の定着強度を確保することができる。
【0013】
本発明の自穿孔ロックボルトの施工方法は、前記外管の後端が着脱自在な固定部材で前記ロックボルト本体に対して固定されていると共に、前記自穿孔ロックボルトに膨張可能なパッカーが前記ロックボルト本体を覆うように設けられて前記外管に内装されており、前記削孔工程の後に、前記固定部材を取り外して前記ロックボルト本体から前記外管を取り外し、前記外管を孔外に抜き出す抜出工程と、前記パッカーの内側に注入ホースを挿入し、定着材を前記注入ホースから前記パッカーに注入して充填する注入工程を行うことを特徴とする。
これによれば、ロックボルト本体に対して外管の後端が固定されている状態でロックボルト本体と外管が連動回転しながら削孔が行なわれるので、削孔時にパッカーも一緒に回転し、パッカーが破損することを防止することができる。また、削孔ズリが外管の内側を通過しないことから、かかる点からもパッカーの破損を防止することができ、安定して高い定着強度を得ることができる。また、定着材の注入時に定着材でパッカーを膨張させ、定着材の逸走を防止し、ロックボルト本体の定着強度をより高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外管の内側への削孔ズリの浸入を防止し、定着材の充填でロックボルト本体の所要の定着強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による第1実施形態の自穿孔ロックボルトの一部断面説明図。
【
図2】(a)は第1実施形態の自穿孔ロックボルトの後端周辺の拡大断面説明図、(b)はその先端周辺の拡大断面説明図。
【
図3】第1実施形態の自穿孔ロックボルトの先端周辺の斜視説明図。
【
図4】(a)は第1実施形態の自穿孔ロックボルトの打設前の状態を示す施工説明図、(b)はその打設途中の状態を示す施工説明図。
【
図5】第1実施形態の自穿孔ロックボルトの打設途中状態における先端周辺の削孔水の流れを説明する説明図。
【
図6】打設された第1実施形態の自穿孔ロックボルトの定着材注入時の孔口元周辺を示す説明図。
【
図7】打設された第1実施形態の自穿孔ロックボルトの定着材注入時の先端周辺を示す説明図。
【
図8】第1実施形態の自穿孔ロックボルトの施工完了状態を示す断面説明図。
【
図9】(a)は第2実施形態の自穿孔ロックボルトの一部断面説明図、(b)は第2実施形態の自穿孔ロックボルトの断面図。
【
図10】(a)は打設された第2実施形態の自穿孔ロックボルトのパッカーに定着材を注入する前の状態の断面説明図、(b)は打設された第2実施形態の自穿孔ロックボルトのパッカーに定着材を注入した後の状態の断面説明図。
【
図11】外管先端がビットの段差面に押圧される構造の変形例における自穿孔ロックボルトの先端周辺の斜視説明図。
【
図13】変形例の固定部材による外管の固定を説明する断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態の自穿孔ロックボルト及びその施工方法〕
本発明による第1実施形態の自穿孔ロックボルト1は、二重管式の自穿孔ロックボルトであり、
図1〜
図3に示すように、削孔機10に接続自在な中空のロックボルト本体2と、ロックボルト本体2の先端に設けられるビット3と、ロックボルト本体2の外側に周設される外管4を備える。
【0017】
ロックボルト本体2には、軸方向に貫通する中空部21が形成された筒状であり、中空部21は横断面の略中央に位置するように設けられている。ロックボルト本体2の外周面には、全長に亘って雄ねじ22が形成されており、雄ねじ22による螺着により、ビット3や、削孔機10の削孔水供給部に固定可能になっており、又、この螺着により必要に応じて定着材供給部にも固定可能になっている。
【0018】
ビット3には、先端側の基部31に削孔水吐出孔32が形成されている。ビット3の基部31の後側には基部31よりも小径の小径部33が設けられており、基部31と小径部33との間に軸方向に対して略垂直な平面状の段差面34が形成されている。換言すれば、段差面34の後側に設けられる小径部33は、段差面34の外周縁よりも小径で形成されている。
【0019】
ビット3の小径部33の外周には嵌合溝35が形成されており、嵌合溝35に環状遮水材に相当するオーリング36が嵌合されて設けられている。本実施形態では、軸方向に間隔を開けて複数箇所に嵌合溝35が形成され、各嵌合溝35にオーリング36が嵌合されている。また、ビット3には小径部33の後端面で開口する雌ねじ穴37が形成されており、雌ねじ穴37は削孔水吐出孔32に連通している。この雌ねじ穴37にはロックボルト本体2の先端部の雄ねじ22が螺合され、ロックボルト本体2の先端にビット3が固定されると共に、ロックボルト本体2の中空部21がビット3の削孔水吐出孔32に連通される。
【0020】
ロックボルト本体2と、その外側に周設される外管4との間には、ロックボルト本体2と外管4との間の空間を全長に亘って確保するために、相互の間隔を保持するスペーサー5が設けられている。スペーサー5は、ロックボルト本体2と外管4の長さに応じて、1箇所或いは長手方向に離間して複数箇所に設置される。図示例のスペーサー5は環状のセンタライザーであり、このセンタライザーによって外管4の断面視の略中央位置にロックボルト本体2が配置されるようになっている。
【0021】
外管4の後端は、着脱自在な固定部材6でロックボルト本体2に対して固定されている。本実施形態における固定部材6は、ロックボルト本体2の雄ねじ22に螺合される固定ナット61と、固定ナット61に対して外管4側に設けられる固定キャップ62とから構成される。固定キャップ62の短尺の筒状部材であり、後部621の外周面よりも前部622の外周面の方が小径で形成され、前部622と後部621との間に軸方向に対して略垂直な平面状の段差面623が設けられている。
【0022】
本実施形態では、段差面623に当接するようにしてパッキン63が前部622に嵌合され、パッキン63に外管4の後端面が当接されている。そして、固定ナット61の先端側への螺入によって固定キャップ62が先端側に押圧され、固定キャップ62の段差面623でパッキン63を介して外管4の後端面が先端側に押圧され、外管4の先端がビット3の段差面34に水密になるように押圧されている。即ち、固定部材6によって外管4の後端と外管4の先端がロックボルト本体2に対して固定されている。尚、本実施形態では、固定キャップ62の段差面623でパッキン63を介して外管4の後端面を押圧する構成としたが、押圧で所要の水密性が得られれば、パッキン63の形態は任意である。
【0023】
更に、本実施形態では、外管4の先端を段差面34に水密になるように押圧して設け、外管4とビット3との間から外管4内に削孔ズリが入り込むことを防止する構成に加え、外管4に内装されたビット3の小径部33に設けられている環状遮水材のオーリング36が、外管4の内周面に水密に当接するようにして設置されており、外管4の内側への削孔ズリの入り込みを二重に防止する構成になっている。
【0024】
本実施形態の自穿孔ロックボルト1を施工する際には、
図4(a)に示すように、削孔機10に自穿孔ロックボルト1を設置する。削孔機10は、ガイドセル11と、ガイドセル11に案内されて進退すると共に自穿孔ロックボルト1に回転、打撃動作を供給するドリフター12と、ドリフター12の先端部に設けられた削孔水供給部に相当するウォータースイベル13を備える。ウォータースイベル13には、削孔水供給路131が設けられていると共に、その先端部に削孔水供給路131と連通する雌ねじ部132が設けられている。
【0025】
そして、この雌ねじ部132に自穿孔ロックボルト1のロックボルト本体2の後端部の雄ねじ22が螺着され、ドリフター12及びウォータースイベル13に自穿孔ロックボルト1が機械的に固定されると共に、削孔水供給路131とロックボルト本体2の中空部21が流路接続される。また、削孔機10に設置された自穿孔ロックボルト1の先端寄りの部分は、保持部14で進退自在に保持される。
【0026】
その後、
図4(b)、
図5に示すように、ウォータースイベル13の削孔水供給路131から供給される削孔水Wをロックボルト本体2の中空部21に供給し、更にロックボルト本体2の中空部21からビット3に削孔水Wを供給してビット3の削孔水吐出孔32から削孔水Wを吐出させながら、自穿孔ロックボルト1の回転、打撃動作で地山100をビット3で削孔して孔101を形成すると共に、削孔による削孔ズリRを外管4と地山100の孔壁102との間の隙間Sを通して孔外に排出する。この削孔工程において、ロックボルト本体2に対して固定されている外管4はロックボルト本体2と同方向に回転しながら進行する。
【0027】
削孔工程の後には、例えばウォータースイベル13の雌ねじ部132とロックボルト本体2の後端部の雄ねじ22との螺着を外し、ウォータースイベル13を撤去すると共に、固定部材6を取り外してロックボルト本体2の外側に周設されている外管4をロックボルト本体2から取り外し、スペーサー5を残したまま外管4を孔外に抜き出す(
図8参照)。尚、外管4の抜き出しは、地盤性状等に応じて、後述する定着材Fの注入工程の後に行う、或いは定着材Fの注入進行に合わせて徐々に行うことが可能である。
【0028】
そして、
図6及び
図7に示すように、定着材供給路151と雌ねじ部152が設けられた定着材供給部15を用い、雌ねじ部152をロックボルト本体2の後端部の雄ねじ22に螺着し、定着材供給路151から定着材Fをロックボルト本体2の中空部21に供給し、中空部21と連通するビット3の削孔水吐出孔32から定着材Fを孔101内に注入し、孔101内に定着材を充填する。この際、ロックボルト本体2の周囲に削孔ズリが付着していないことから、定着材Fはロックボルト本体2の周囲に回って確実に付着する。充填された定着材Fの硬化により、自穿孔ロックボルト1のロックボルト本体2が打設されたロックボルト構造が構築される(
図8参照)。
【0029】
尚、上記施工例では、単独のロックボルト本体2と単独の外管4を用いる施工について説明したが、ロックボルト本体2を図示省略するカプラで継ぎ足しながら複数本連結して打設すると共に、これに合わせて長手方向に一端部に雌ねじ、他端部に雄ねじが形成されている外管4を螺着して継ぎ足しながら複数本連結して設置し、所要数のロックボルト本体2と外管4の打設後に、外管4の抜出等の次工程を行うようにすることも可能である。
【0030】
第1実施形態によれば、削孔ズリRが外管4とロックボルト本体2との間に入り込むことを防ぎ、削孔ズリRを外管4の外側を通る形で孔外に排出することが可能になり、例えば自穿孔ロックボルト1を地山斜面に下向きに打設した場合にも、削孔ズリをロックボルト本体と外管の間の空間に流す構造よりも、削孔ズリをスムーズに流して孔外に排出することができる。そして、外管4の内側への削孔ズリRの浸入を防止し、ロックボルト本体2の周囲が綺麗なまま打設することができる。更に、セメントミルク等の定着材Fを地山100の孔に直接注入した場合には、ロックボルト本体2の周囲への削孔ズリの付着が防止されていることから、ロックボルト本体2の周囲に定着材Fが回って確実に付着する。従って、ロックボルト本体2の所要の定着強度を確保することができ、地山100の補強強度向上を図ることができる。
【0031】
また、外管4の先端とビット3の段差面34との水密な当接と、環状遮水材に相当するオーリング36と外管4の内周面との水密な当接による二重の水密構造により、外管4の内側への削孔ズリRの浸入をより確実に防止し、ロックボルト本体2の所要の定着強度をより高い信頼性で確保することができる。
【0032】
また、着脱自在な固定部材6による外管4の固定により、固定部材6の取り外しにより、外管4を任意のタイミングで簡単に回収することが可能とある。そして、外管4の任意のタイミングでの回収を可能にすることにより、孔の周囲の地盤性状に応じて、例えば外管4を回収してから定着材Fの注入作業を行う、或いは定着材Fの注入後に外管4を回収する、或いは外管4を回収しながら定着材Fの注入作業を行うなど、定着材Fの注入作業の自由度を高めることができる。
【0033】
また、スペーサー5により、ロックボルト本体2と外管4の位置関係を削孔、打設に望ましい位置関係で保持することができる。また、削孔ズリRが外管4の内側を通過しないことから、スペーサー5の破損を防止することができる。また、スペーサー5を外管回収後も残すことにより、ロックボルト本体2の周囲に所定厚さの定着材Fが流動して付着する所定厚さの被りをより高い確実性で得ることも可能となり、例えば自穿孔ロックボルト1を地山斜面に下向きに打設した場合に、ロックボルト本体2が傾いて孔壁102に接触し、被りが形成されない部位が生ずること等を防止することができる。
【0034】
〔第2実施形態の自穿孔ロックボルト及びその施工方法〕
本発明による第2実施形態の自穿孔ロックボルト1aも、二重管式の自穿孔ロックボルトであり、
図9に示すように、第1実施形態と同一構成のロックボルト本体2、ビット3、外管4、固定部材6を備え、これらは第1実施形態と同様に設置され、固定部材6によって外管4の後端と外管4の先端がロックボルト本体2に対して水密な状態で固定されている。また、図示例ではスペーサー5は設けられていない。
【0035】
そして、自穿孔ロックボルト1aには、ロックボルト本体2を覆うように膨張可能なパッカー7が設けられている。パッカー7は、ロックボルト本体2の軸方向に延びる細長袋状であり、前端の開口71と後端の開口72の近傍は開口71、72に向かって窄まるように形成されている。パッカー7は外管4に内装されており、パッカー7の前端の開口71はビット3の小径部33の後端面よりも若干後寄りの位置に配置され、後端の開口72は固定ナット61の前端面よりも若干前寄りの位置に配置されている。第2実施形態の自穿孔ロックボルト1aのその他の構成は第1実施形態の自穿孔ロックボルト1と同様である。
【0036】
第2実施形態の自穿孔ロックボルト1aを施工する際には、削孔工程の完了まで第1実施形態と同様に施工する。その後、ウォータースイベル13を撤去すると共に(
図4(b)参照)、着脱自在な固定部材6を取り外してロックボルト本体2の外側に周設されている外管4をロックボルト本体2から取り外し、外管4を孔外に抜き出す(
図9、
図10(a)参照)。
【0037】
そして、
図10(a)に示すように、固定部材6と外管4の取り外しと孔101の外への抜き出しによって露出したパッカー7の後端の開口72とロックボルト本体2との間の空隙からパッカー7の内側に、図示省略する定着材供給部の注入ホース153を挿入し、更に、定着材供給部から定着材Fを注入ホース153に供給して、注入ホース153からパッカー7に定着材Fを注入して充填する。パッカー7への定着材Fの充填後には注入ホース153をパッカー7から抜き出すと共に、充填された定着材Fの硬化により、自穿孔ロックボルト1aのロックボルト本体2が打設されたロックボルト構造が構築される(
図10(b)参照)。
【0038】
第2実施形態によれば、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。また、膨張可能なパッカー7をロックボルト本体2に設置した状態での削孔が可能であり、定着材Fの注入時に定着材Fでパッカー7を膨張させ、定着材Fの逸走を防止することが可能となり、ロックボルト本体2の定着強度をより高めることができる。また、第1実施形態と同様の水密構造によって削孔ズリRが外管4の内側を通過しないことから、パッカー7の破損を防止することができ、安定して高い定着強度を得ることができる。また、ロックボルト本体2に対して外管4の後端が固定されている状態でロックボルト本体2と外管4を連動回転しながら削孔が行うことが可能であり、削孔時にパッカー7も一緒に回転し、パッカー7が破損することをかかる点からも防止することができる。
【0039】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記追加内容や変形例も含まれる。
【0040】
例えば本発明における固定部材は、第1、第2実施形態の固定部材6に限定されず、外管の先端がビットの段差面に水密になるように押圧して設けられるようにして、外管の後端をロックボルト本体に対して固定する着脱自在な固定部材であれば適宜である。また、本発明には、外管の先端がビットの段差面に水密になるように押圧して設けられる構造であれば、オーリング36等の環状遮水材が外管の内周面に水密に当接する水密構造を有しないものも含まれる。
【0041】
また、外管の先端がビットの段差面に水密に押圧される構造の変形例として、
図11のようにしても好適である。
図11の変形例では、外管4aの先端部に前方に突出する凸部41a・41aが対向する位置に一対で形成され、凸部41a・41aの先端が外管4aの先端になっている。凸部41aと凸部41aとの間は凹部42aになっており、凹部42a・42aも対向する位置に一対で形成されている。ビット3aには、基部31の後端から小径部33側に突出する凸部381a・381aが対向する位置に一対で形成され、凸部381aと凸部381aの間が凹部382a・382aになっており、凹部382a・382aも対向する位置に一対で設けられている。凹部382aにおける基部31の後端面は段差面34aになっている。そして、外管4aの凸部41a、凹部42aとビット3aの凹部382a、凸部381aとがそれぞれ噛み合わされるように設けられ、外管4aの先端である凸部41a・41aの先端が段差面34a・34aに水密に押圧されるように構成される。その他の構成は第1実施形態の構成と同様である。この変形例によれば、ビット3aと外管4aが相対的に回転しない為、緩みが発生しにくく、より遮水性を高めることができる。
【0042】
また、本発明における固定部材の変形例として、
図12及び
図13に示す固定部材60bを用いても好適である。固定部材60bは、後端内周に雌ねじ43bが形成されている外管4bをロックボルト本体2に固定する場合に用いられるものであり、中空状の第1固定ナット610b、第2固定ナット620b、パッキン630b、固定筒640b、抜落防止ピン650bから構成される。
【0043】
第1固定ナット610bは、外形が六角ナット形状で、内側に雌ねじが形成されていない嵌合部611bと、第1実施形態の固定キャップ62と基本的に同一形状を有するキャップ部612bが溶接等で一体的に接合された部材になっている。キャップ部612bの前部613bと後部614bとの間には、軸方向に対して略垂直な平面状の段差面615bが設けられており、前部613bの外周には外管4bの雌ねじ43bに螺合される雄ねじ616bが形成されている。パッキン630bは、段差面615bに当接するように前部613bに嵌合され、パッキン630bに外管4bの後端面が当接されるように配置される。
【0044】
第2固定ナット620bは、ロックボルト本体2の雄ねじ22と螺合する雌ねじが形成されている六角ナットであり、第1固定ナット610bの後側で雌ねじ22に螺合されてロックボルト本体2に取り付けられる。固定筒640bは、嵌合部611bの六角形状と第2固定ナット620bの六角形状に対応する六角穴が内側に形成され、嵌合部611bと第2固定ナット620bに外嵌される。固定筒640bには側壁近傍位置に挿通穴641bが軸方向と垂直に形成されており、挿通穴641bに抜落防止ピン650bが挿通されるようになっている。即ち、第1固定ナット610bと第2固定ナット620bを連結するように固定筒640bが外嵌され、これら3個の部材が抜落防止ピン650bで一体化される。
【0045】
更に、ロックボルト本体2の雄ねじ22及びこれと螺合する第2固定ナット620bの雌ねじと、第1固定ナット610bの雄ねじ616b及びこれと螺合する外管4bの後端内周の雌ねじ43bとは、逆ネジになっており、例えばロックボルト本体2の雄ねじ22が左ネジ構造の場合、外管4bの雌ねじ43bは右ネジ構造で構成される。そして、
図11の外管4aの凸部41a、凹部42aとビット3aの凹部382a、凸部381aとがそれぞれ噛み合わされるように設けられる変形例の構成等により、ロックボルト本体2の回転がビットと通して外管4bに伝達され、外管4bもロックボルト本体2と同方向に回転された場合、外管後端の雌ねじ43bにねじ込まれた第1固定ナット610bと、固定筒640bで第1固定ナット610bと別々に回転できないように覆われた第2固定ナット620bは、逆ネジ構造によって緩む方向に回転することが規制され、削孔時の打撃振動により外管固定に使用している第1固定ナット610bが緩んで外管4bが抜き出てくることを防止することができる。
【0046】
また、本発明は、斜面の地山など、斜め下向きや下向きに自穿孔ロックボルトを打設する際に適用すると、削孔ズリの孔外へのスムーズな排出を確保することができると共に定着材による所要の定着強度を確保できて好適であるが、本発明は適用可能な適宜の地山に用いることが可能であり、本発明の自穿孔ロックボルトは適宜の地山に打設して定着材で定着させることが可能である。