【課題】画像表示素子や駆動用ICチップ等のバンプを有する電子部品と、透明電極と配線とが形成されている可撓性のプラスチック基板に異方性導電接続するのに適した異方性導電フィルムを提供する。
【解決手段】異方性導電フィルムは、少なくとも絶縁性樹脂層とそれに分散している導電粒子とから構成されている導電粒子分散層とを有する。この異方性導電フィルムは、条件(イ):導電粒子の20%圧縮弾性率が、6000N/mm
以下であること、条件(ロ):導電粒子の圧縮復元率が、40%以上80%以下であること、条件(ハ):導電粒子の平均粒子径が、1μm以上30μm以下であること、条件(ニ)絶縁性樹脂層の最低溶融粘度が、4000Pa・s以下であること、及び条件(ホ):導電粒子の個数密度が、6000個/mm
導電粒子の最近接粒子間距離が、導電粒子の平均粒子径の50%以上もしくは0.2μm以上のいずれか長い方である請求項1〜4のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
絶縁性樹脂層の表面に導電粒子を所定の配列で保持させ、その導電粒子を平板又はローラーで絶縁性樹脂層に押し込むことにより導電粒子分散層を形成する請求項10記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の異方性導電フィルムは、絶縁性樹脂層とそれに分散している導電粒子とから少なくとも構成されている導電粒子分散層を有する。この導電粒子分散層に保持させている導電粒子として、条件(イ):“20%圧縮弾性率”、条件(ロ):“圧縮復元率”、及び条件(ハ):“平均粒子径”がそれぞれ特定の数値範囲のものを使用し、そのような導電粒子を保持する絶縁性樹脂層として、条件(ニ):“最低溶融粘度”が特定範囲のものを使用し、そして、そのような絶縁性樹脂層に導電粒子を保持させる程度として、条件(ホ):“個数密度”を特定範囲内に設定している。以下、本発明の異方性導電フィルムの一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、後述する図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0016】
<異方性導電フィルムの全体構成>
図1Aは、本発明の一実施例の異方性導電フィルム10Aの粒子配置を説明する平面図であり、
図1BはそのX−X断面図である。また、
図2、3−4はそれぞれ、本発明の実施例の異方性導電フィルム10B、10C及び10Dの断面図である。本発明の異方性導電フィルムは、これらの図面に開示された態様に限定されるものではない。
【0017】
この異方性導電フィルム10Aは、例えば長さ5m以上の長尺のフィルム形態とすることができ、巻き芯に巻いた巻装体とすることもできる。
【0018】
異方性導電フィルム10Aは、導電粒子分散層3から構成されており、導電粒子分散層3では、絶縁性樹脂層2に導電粒子1が互いに非接触な状態にある。好ましくは、絶縁性樹脂層2の片面に導電粒子1が露出した状態で規則的に配置されている。フィルムの平面視にて導電粒子1は互いに接触しておらず、フィルム厚方向にも導電粒子1が互いに重なることなく存在している。好ましくは導電粒子1のフィルム厚方向の位置が揃った単層の導電粒子層を構成している。なお、互いに非接触な状態にある導電粒子の割合(個数基準)は、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上である。
【0019】
個々の導電粒子1の周囲の絶縁性樹脂層2の表面2aには、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層2の接平面2pに対して凹み2bが形成されていてもよい(
図1B、
図2)。また、導電粒子1の頂部1aが、
図2のように、絶縁性樹脂層2の表面2aに面一になっていてもよく、その場合には、
図1Bの場合に比べ、異方性導電接続時に樹脂流動による導電粒子の移動を軽減できる。なお、後述するように、本発明の異方性導電フィルムでは、絶縁性樹脂層2に埋め込まれた導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層の表面に凹み2cが形成されていてもよい(
図3、
図4)。
図3の場合、導電粒子1の頂部1aの一点で絶縁性樹脂層から露出していてもよい。
【0020】
<導電粒子>
導電粒子1は、公知の異方性導電フィルムに用いられている導電粒子の中から、樹脂コア粒子の表面に金属層を形成した金属被覆樹脂粒子を適宜選択して使用することができる。このような金属被覆樹脂粒子としては、その表面に絶縁コート処理(例えば、絶縁性微粒子付着処理、絶縁性樹脂被覆処理等)が施されたものも使用することができる。金属被覆樹脂粒子は2種以上を併用することもできる。また、導電粒子1として、表面に導電性の突起を有する導電粒子も使用することができる。例えば、樹脂コア粒子の表面に突起の芯材となる絶縁性粒子を付着させ、全体を導電層で被覆した導電粒子;そのような導電粒子の表面に更に別の導電層で被覆した導電粒子;あるいは、導電層で被覆した樹脂コア粒子の表面に突起の芯材となる絶縁性粒子を付着させ、全体を更に導電層で被覆した導電粒子等も使用することができる。導電層は2層もしくはそれ以上の多層であってもよい。突起は導電層の間に存在していてもよい。このような導電層の形成は、例えば樹脂コア粒子の表面に、無電解メッキ、電解メッキ、スパッタリング等、公知の成膜方法により行うことができる。また、導電性微粒子を付着させる手法などもあり、後述する条件を満たした導電粒子であり、導通性能を満足できれば、特に限定はない。また、導電層の表面には、公知の絶縁処理が施されていてもよい。この場合、絶縁処理により形成された絶縁層の厚さを除いた大きさを導電粒子の粒子径とする。
【0021】
本発明で使用する導電粒子1は、以下の条件(イ)〜(ハ)を満足するものである。
【0022】
<条件(イ)>
本発明で使用する導電粒子は、電子部品の電極や端子表面に酸化皮膜が形成されていても導電粒子によってその酸化皮膜を突き破るという観点から、その20%圧縮弾性率(K)の下限が、6000N/mm
2以上、好ましくは10000N/mm
2以上のものである。ここで、20%圧縮弾性率は、微小圧縮試験機(例えば、フィッシャー社製、フィッシャースコープH−100)を用いて導電粒子に圧縮荷重を加えたとき(例えば、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、圧縮速度2.6mN/秒、及び最大試験荷重10gfの条件下で導電粒子を圧縮したとき)の導電粒子の圧縮変量を測定し、測定して得られた数値を以下の式(1)に適用することにより算出することができる。
【0024】
式(1)中、Fは導電粒子が20%圧縮変形したときの荷重値(N)であり、Sは導電粒子が20%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)であり、Rは導電粒子の半径(mm)である。
【0025】
<条件(ロ)>
また、本発明で使用する導電粒子は、上述のように電子部品の電極や端子表面に形成された酸化皮膜を突き破ることが求められるため、接続時には導電粒子に相応の圧力が印加される。それにより導電粒子が扁平化することが予想される。従って、接続の圧力が解除された後に導電粒子は対向する電極や端子表面との接触面積を十分に確保させる上で、圧縮後に復元することが求められる。この観点から、その圧縮復元率(X)の下限は40%以上、好ましくは55%以上のものとなる。また、上限が高すぎると、硬化もしくは重合した樹脂によって保持される接続状態の維持に支障をきたす虞があることから高すぎることも望ましくなく、上限が80%以下、好ましくは75%以下のものである。ここで、圧縮復元率は、前述の微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で導電粒子を圧縮し、初期荷重時(荷重0.4mN)から荷重反転時(荷重5mN)までの変位(L2)と、荷重反転時から最終荷重時(荷重0.4mN)までの変位(L1)とを測定し、測定して得られた数値を以下の式(2)に適用することで算出することができる。
【0027】
<条件(ハ)>
本発明で使用する導電粒子1は、配線高さのばらつきに対応するという観点から、その平均粒子径の下限は1μm以上、好ましくは2.5μm以上のものであり、導通抵抗の上昇を抑制し且つショートの発生を抑制するという観点から、その上限は30μm以下、好ましくは9μm以下のものである。ここで、平均粒子径は、一般的な粒度分布測定装置(例えば、FPIA−3000(マルバーン・パナリティカル社))を用いて求めることができる。測定サンプル数は1000以上が好ましい。また、異方性導電フィルムにおける導電粒子の平均粒子径Dは、SEMなどの電子顕微鏡を用いて求めることができる。この場合、測定サンプル数を200以上とすることが好ましい。なお、導電粒子として、その表面に絶縁性微粒子が付着しているものを使用する場合、本発明における導電粒子の平均粒子径は、表面の絶縁性微粒子を含めない平均粒子径を意味する。
【0028】
<絶縁性樹脂層2>
本発明の異方性導電フィルムにおいて、導電粒子1を保持し、異方性導電フィルムのベース層として機能する絶縁性樹脂層2は、後述するように、硬化性樹脂組成物から形成することができ、以下の条件(ニ)を満足するものである。
【0029】
<条件(ニ)>
本発明の異方性導電フィルムを構成する絶縁性樹脂層2の最低溶融粘度に関し、その上限は、接続時の圧力を低下させることが、特に基板がプラスチックなどの場合には変形の抑制になり、また導電粒子の良好な押し込みを可能にするという観点から、4000Pa・s以下、好ましくは3000Pa・s以下である。また、その下限は、接続に際して、特にプラスチック基板において変形抑制の観点から低いことが望ましいため特に制限はなく、適宜調整すればよいが、異方性導電接続時に端子間で挟持されるべき導電粒子1が樹脂流動により過度に流されてしまうことを防止するという観点並びに巻装体にした際の樹脂のはみ出しを防止する観点から、好ましくは200Pa・s以上、より好ましくは400Pa・s以上のものである。ここで、最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA Instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30〜200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。
【0030】
なお、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を押し込むことにより異方性導電フィルム10Aの導電粒子分散層3を形成する場合に、導電粒子1を押し込むときの絶縁性樹脂層2は、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出径Lcで露出するように導電粒子1を絶縁性樹脂層2に押し込んだときに、絶縁性樹脂層2が塑性変形して導電粒子1の周囲の絶縁性樹脂層2に凹み2b(
図1B、
図2)が形成されるような高粘度な粘性体とするか、あるいは、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出することなく絶縁性樹脂層2に埋まるように導電粒子1を押し込んだときに、導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層2の表面に凹み2c(
図3、
図4)が形成されるような高粘度な粘性体とする。そのため、絶縁性樹脂層2の60℃における粘度を好ましくは3000〜20000Pa・sとする。この測定は最低溶融粘度と同様の測定方法で行い、温度が60℃の値を抽出して求めることができる。
【0031】
絶縁性樹脂層2に導電粒子1を押し込むときの該絶縁性樹脂層2の具体的な粘度は、特許第6187665号明細書(段落0054)の記載を参考にして決定することができる。
【0032】
上述したように、絶縁性樹脂層2から露出している導電粒子1の周囲に凹み2b(
図1B、
図2)が形成されていることにより、異方性導電接続時に導電粒子1が端子間で挟持される際に生じる導電粒子1の扁平化に対して絶縁性樹脂から受ける抵抗が、凹み2bが無い場合に比して低減するため、端子における導電粒子の挟持がされ易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性が向上する。
【0033】
また、絶縁性樹脂層2から露出することなく埋まっている導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層2の表面に凹み2c(
図3、
図4)が形成されていることにより、凹み2cが無い場合に比して異方性導電接続時の圧力が導電粒子1に集中し易くなり、端子における導電粒子1の挟持がされ易くなることで捕捉性が向上し、導通性能が向上する。
【0034】
(絶縁性樹脂層の層厚)
本発明の異方性導電フィルムでは、絶縁性樹脂層2の層厚Laと導電粒子1の平均粒子径Dとの比(La/D)は導電粒子を保持できる樹脂量があれば足りるため0.3以上であればよく、0.6以上が好ましく、1.0以上がより好ましい。La/Dが0.3未満となると、導電粒子1を絶縁性樹脂層2によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列を精密に維持することが困難となる場合がある。ここで、平均粒子径Dは金属被覆樹脂粒子の大きさ(樹脂コア粒子と、その表面の導電層からなる大きさ)で定義されるものである。絶縁性樹脂層2の層厚Laが導電粒子に対して過度に大き過ぎると異方性導電接続時に導電粒子が位置ズレしやすくなり、端子における導電粒子の捕捉性が低下する。そのためLa/Dの上限は8.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましい。
【0035】
(絶縁性樹脂層の組成)
絶縁性樹脂層2は、硬化性樹脂組成物から形成することができ、例えば、熱重合性化合物と熱重合開始剤とを含有する熱重合性組成物から形成することができる。熱重合性組成物には必要に応じて光重合開始剤を含有させてもよい。
【0036】
熱重合開始剤と光重合開始剤を併用する場合に、熱重合性化合物として光重合性化合物としても機能するものを使用してもよく、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させてもよい。好ましくは、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させる。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。
【0037】
光重合開始剤として、波長の異なる光に反応する複数種類を含有させてもよい。これにより、異方性導電フィルムの製造時における、絶縁性樹脂層を構成する樹脂の光硬化と、異方性導電接続時に電子部品同士を接着するための樹脂の光硬化とで使用する波長を使い分けることができる。
【0038】
異方性導電フィルムの製造時の光硬化では、絶縁性樹脂層に含まれる光重合性化合物の全部又は一部を光硬化させることができる。この光硬化により、絶縁性樹脂層2における導電粒子1の配置が保持乃至固定化され、ショートの抑制と捕捉の向上が見込まれる。また、この光硬化により、異方性導電フィルムの製造工程における絶縁性樹脂層の粘度を適宜調整してもよい。
【0039】
絶縁性樹脂層における光重合性化合物の配合量は30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、2質量%未満が特に好ましい。光重合性化合物が多すぎると接続時の押し込みにかかる推力が増加するためである。
【0040】
熱重合性組成物の例としては、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性アクリレート系組成物、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物等が挙げられる。熱カチオン重合開始剤を含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物に代えて、熱アニオン重合開始剤を含む熱アニオン重合性エポキシ系組成物を使用してもよい。また、特に支障を来さなければ、複数種の重合性組成物を併用してもよい。併用例としては、熱カチオン重合性組成物と熱ラジカル重合性組成物の併用などが挙げられる。
【0041】
ここで、(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知の熱重合型(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。
【0042】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0043】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0044】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。また、エポキシ化合物に加えてオキセタン化合物を併用してもよい。
【0045】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0046】
熱カチオン重合開始剤の使用量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0047】
熱重合性組成物は、膜形成樹脂やシランカップリング剤を含有することが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、成膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。重量平均分子量は10000以上であることが好ましい。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0048】
熱重合性組成物には、溶融粘度調整のために、絶縁フィラを含有させてもよい。絶縁フィラとしては、シリカ粉やアルミナ粉などが挙げられる。絶縁フィラの大きさは粒径20〜1000nmが好ましく、また、配合量はエポキシ化合物等の熱重合性化合物(及び光重合性化合物)100質量部に対して5〜50質量部とすることが好ましい。
【0049】
更に、上述の絶縁フィラとは異なる充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有させてもよい。
【0050】
<絶縁性樹脂層による導電粒子の保持の程度>
前述した最低溶融粘度を示す絶縁性樹脂層2は、前述したように導電粒子1を保持するが、その保持の程度は、個数密度を指標として評価することができる。即ち、本発明の異方性導電フィルムにおいては、導電粒子1の個数密度に関し、以下の条件(ホ)を満足する。
【0051】
<条件(ホ)>
本発明の異方性導電フィルムにおける導電粒子のフィルム平面視における個数密度は、小さすぎると捕捉数の低下で導通抵抗値の上昇が懸念されることから下限は6000個/mm
2以上、好ましくは7500個/mm
2以上となる。また個数密度が大きすぎると接続時の圧力を高くする必要が生じ、基板がプラスチックなどの場合に変形が懸念されることから接続時の圧力を過度に大きくさせないために、上限は36000個/mm
2以下、好ましくは30000個/mm
2以下のものである。ここで、導電粒子の個数密度は、金属顕微鏡を用いて観察して求める他、画像解析ソフト(WinROOF、三谷商事(株)等)により観察画像を計測して求めてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0052】
なお、導電粒子の個数密度の測定領域としては、1辺が100μm以上の矩形領域を任意に複数箇所(好ましくは5箇所以上、より好ましくは10箇所以上)設定し、測定領域の合計面積を2mm
2以上とすることが好ましい。個々の領域の大きさや数は、個数密度の状態によって適宜調整すればよい。ファインピッチ用途の比較的個数密度が大きい場合の一例として、異方性導電フィルム10Aから任意に選択した面積100μm×100μmの領域の200箇所(2mm
2)について、金属顕微鏡などによる観測画像を用いて個数密度を測定し、それを平均することにより上述の式中の「平面視における導電粒子の個数密度」を得ることができる。面積100μm×100μmの領域は、バンプ間スペース50μm以下でL/S(ライン/スペース)が1以下の接続対象物において、1個以上のバンプが存在する領域になる。
【0053】
<絶縁性樹脂層における導電粒子の分散状態>
本発明の異方性導電フィルムの導電粒子分散層3における導電粒子1の分散状態には、導電粒子1がランダムに分散している状態も規則的な配置に分散している状態も含まれる。どちらの場合においても、フィルム厚方向の位置が揃っていることが捕捉安定性の点から好ましい。ここで、フィルム厚方向の導電粒子1の位置が揃っているとは、フィルム厚方向の単一の深さに揃っていることに限定されず、絶縁性樹脂層2の表裏の界面又はその近傍のそれぞれに導電粒子が存在している態様を含む。
【0054】
また、導電粒子1はフィルムの平面視にて規則的に配列していることがショート抑制の点から好ましい。配列の態様は、端子およびバンプのレイアウトによるため、特に限定はない。例えば、フィルムの平面視にて
図1Aに示したように正方格子配列とすることができる。この他、導電粒子の規則的な配列の態様としては、長方格子、斜方格子、6方格子、3角格子等の格子配列を挙げることができる。異なる形状の格子が、複数組み合わさったものでもよい。また、導電粒子が所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させてもよい。導電粒子1を互いに非接触とし、格子状等の規則的な配列にすることにより、異方性導電接続時に各導電粒子1に圧力を均等に加え、導通抵抗のばらつきを低減させることができる。
【0055】
さらに、導電粒子がフィルムの平面視にて規則的に配列し、かつフィルム厚方向の位置が揃っていることが捕捉安定性とショート抑制の両立のためにより好ましい。
【0056】
一方、接続する電子部品の端子間スペースが広くショートが発生しにくい場合などには、導電粒子を規則的に配列させることなくランダムに分散させていてもよい。分散させる場合でも、フィルム平面視において、個々の導電粒子は非接触で配置(個々の導電粒子が非接触で独立して存在)していることが好ましい。端子レイアウトによるため一例であるが、個数割合としては75%以上であればよく、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上が更により好ましい。
【0057】
導電粒子を規則的に配列させる場合に、その配列の格子軸又は配列軸は、異方性導電フィルムの長手方向や長手方向と直交する方向に対して平行でもよく、異方性導電フィルムの長手方向と交叉してもよく、接続する端子幅、端子ピッチなどに応じて定めることができる。例えば、ファインピッチ用の異方性導電性フィルムとする場合、
図1Aに示したように導電粒子1の配列の格子軸Aを異方性導電フィルム10Aの長手方向に対して斜行させ、異方性導電フィルム10Aで接続する端子200の長手方向(フィルムの短手方向)と格子軸Aとのなす角度θを6°以上84°以下、好ましくは11°以上74°以下にすることが好ましい。
【0058】
また、導電粒子1の粒子間距離は、異方性導電フィルムで接続する端子の大きさや端子ピッチに応じて適宜定める。一般に、ショート発生の防止の観点から、最近接粒子間距離(即ち、最も近接した粒子間の距離)の下限は、導電粒子の平均粒子径Dの好ましくは50%以上もしくは0.2μm以上のいずれか長い方であり、上限は、個数密度の条件を満たすことができれば特に制限はないが、例えば、導電粒子の平均粒子径Dの好ましい最大径である30μm以下が好ましく、あるいは、比較的平均粒子径Dが小さい場合には、平均粒子径Dの10倍以下が好ましい。
【0059】
また、本発明の異方性導電フィルムの平面視における導電粒子の面積占有率は、異方性導電フィルムを電子部品に熱圧着するために押圧治具に必要とされる推力の指標となる。面積占有率が大きすぎると、推力もそれに応じて高くなり、基板がプラスチックなどの変形し易いものの場合、変形の要因になる。そのため導電粒子の面積占有率の上限は30%以下が好ましく、26%以下がより好ましく、23%以下が更により好ましい。また、面積占有率が少なすぎる場合、ファインピッチに対応できなくなる虞が生じるため、3%以上が好ましく、6%以上がより好ましく、9%以上が更により好ましい。ここで、導電粒子の面積占有率[%]は、以下の式により算出することができる。
【0061】
ここで、導電粒子の個数密度および面積占有率の測定領域としては、既に段落0052で説明したように、1辺が100μm以上の矩形領域を任意に複数箇所(好ましくは5箇所以上、より好ましくは10箇所以上)設定し、測定領域の合計面積を2mm
2以上とすることが好ましい。個々の領域の大きさや数は、個数密度の状態によって適宜調整すればよい。
【0062】
<絶縁性樹脂層の厚さ方向における導電粒子の位置>
本発明の異方性導電フィルムでは、絶縁性樹脂層2の厚さ方向における導電粒子1の位置は前述のように、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出していてもよく、露出することなく、絶縁性樹脂層2内に埋め込まれていても良いが、絶縁性樹脂層の凹み2b、2cが形成されている表面2aの、隣接する導電粒子間の中央部における接平面2pからの導電粒子の最深部の距離(以下、埋込量という)Lbと、その埋込量Lbの導電粒子1の粒子径Dに対する割合[(Lb/D)×100](以下、埋込率という)が60%以上105%以下であることが好ましい。
【0063】
埋込率を60%以上とすることにより、導電粒子1を絶縁性樹脂層2によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持し、また、105%以下とすることにより、異方性導電接続時に端子間の導電粒子を無用に流動させるように作用する絶縁性樹脂層の樹脂量を低減させることができる。
【0064】
なお、本発明において、埋込率の数値は、埋込率(Lb/D)の数値は、異方性導電フィルムに含まれる全導電粒子数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上が、当該埋込率(Lb/D)の数値になっていることをいう。したがって、埋込率が60%以上105%以下とは、異方性導電フィルムに含まれる全導電粒子数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上の埋込率が60%以上105%以下であることをいう。このように全導電粒子の埋込率(Lb/D)が揃っていることにより、押圧の加重が導電粒子に均一にかかるので、端子における導電粒子の捕捉状態が良好になり、導通の安定性が向上する。
【0065】
埋込率は、異方性導電フィルムから面積30mm
2以上の領域を任意に10箇所以上抜き取り、そのフィルム断面の一部をSEM画像で観察し、合計50個以上の導電粒子を計測することにより求めることができる。より精度を上げるため、200個以上の導電粒子を計測して求めてもよい。
【0066】
また、埋込率の計測は、面視野画像において焦点調整することにより、ある程度の個数について一括して求めることができる。もしくは埋込率の計測にレーザー式判別変位センサ((株)キーエンス製など)を用いてもよい。
【0067】
<異方性導電フィルムの変形態様>
(第2の絶縁性樹脂層)
本発明の異方性導電フィルムは、
図5に示す異方性導電フィルム10Eのように、導電粒子分散層3の、導電粒子1が保持されている側の面(換言すれば、絶縁性樹脂層2の凹み2cが形成されている面)に、該絶縁性樹脂層2よりも最低溶融粘度が低い第2の絶縁性樹脂層4(絶縁性接着層として機能)を積層してもよい。また
図6に示す異方性導電フィルム10Fのように、導電粒子分散層3の、導電粒子1が保持されていない側の面(換言すれば、絶縁性樹脂層2の凹み2cが形成されていない面)に、該絶縁性樹脂層2よりも最低溶融粘度が低い第2の絶縁性樹脂層4(絶縁性接着層として機能)を積層してもよい。第2の絶縁性樹脂層4の積層により、異方性導電フィルムを用いて電子部品を異方性導電接続するときに、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を充填し、接着性を向上させることができる。尚、第2の絶縁性樹脂層4を積層する場合、第2の絶縁性樹脂層4が凹み2cの形成面上にあるか否かに関わらず第2の絶縁性樹脂層4がツールで加圧するICチップ等の電子部品側にある(言い換えると、絶縁性樹脂層2がステージに載置される基板等の電子部品側にある)ことが好ましい。このようにすることで、導電粒子の不本意な移動を避けることができ、捕捉性を向上させることができる。
【0068】
絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層4との最低溶融粘度は、差があるほど電子部品の電極やバンプによって形成される空間が第2の絶縁性樹脂層4で充填されやすくなり、電子部品同士の接着性を向上させる効果が期待できる。また、この差があるほど導電粒子分散層3中に存在する絶縁性樹脂層2の移動量が相対的に小さくなるため、端子における導電粒子の捕捉性が向上しやすくなる。実用上は、絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層4との最低溶融粘度比(即ち、[絶縁性樹脂層2の最低溶融粘度]/[第2の絶縁性樹脂層4の最低溶融粘度])は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。一方、この比が大きすぎると長尺の異方性導電フィルムを巻装体にした場合に、樹脂のはみだしやブロッキングが生じる虞があるので、実用上は15以下が好ましい。第2の絶縁性樹脂層4の好ましい最低溶融粘度は、特許第6187665号明細書(段落0091)の記載を参考にして決定することができる。
【0069】
なお、第2の絶縁性樹脂層4は、絶縁性樹脂層と同様の樹脂組成物において、粘度を調整することにより形成することができる。
【0070】
また、異方性導電フィルム10E、10Fにおいて、第2の絶縁性樹脂層4の層厚は、好ましくは4μm以上20μm以下である。もしくは、導電粒子径に対して、好ましくは1〜8倍である。
【0071】
また、絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層4を合わせた異方性導電フィルム10E、10F全体の最低溶融粘度は、好ましくは200Pa・s以上4000Pa・s以下である。なお、第2の絶縁性樹脂層4自体の最低溶融粘度は、前述の最低溶融粘度比を満たすことを前提に、好ましくは2000Pa・s以下であり、より好ましくは100〜2000Pa・sである。
【0072】
(第3の絶縁性樹脂層)
第2の絶縁性樹脂層4と絶縁性樹脂層2を挟んで反対側に第3の絶縁性樹脂層が設けられていてもよい。例えば、第3の絶縁性樹脂層ないしは絶縁性接着層をタック層として機能させることができる。第2の絶縁性樹脂層と同様に、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を充填させるために設けてもよい。
【0073】
第3の絶縁性樹脂層の樹脂組成、粘度及び厚みは第2の絶縁性樹脂層と同様でもよく、異なっていても良い。絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層4と第3の絶縁性樹脂層を合わせた異方性導電フィルムの最低溶融粘度は特に制限はないが、200〜4000Pa・sとすることができる。
【0074】
<異方性導電フィルムの製造方法>
本発明の異方性導電フィルムは、絶縁性樹脂層に導電粒子を押し込むことにより導電粒子分散層を形成する工程を有する製造方法により製造することができる。この工程の好ましい態様としては、絶縁性樹脂層の表面に導電粒子を所定の配列で保持させ、その導電粒子を平板又はローラーで絶縁性樹脂層に押し込むことにより導電粒子分散層を形成する態様や、転写型に導電粒子を充填し、その導電粒子を絶縁性樹脂層に転写することにより絶縁性樹脂層の表面に導電粒子を所定の配置で保持させる態様が挙げられる。その他に、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を直接散布して保持する態様や、あるいは二軸延伸させることのできるフィルムに導電粒子1を単層で付着させ、そのフィルムを二軸延伸し、その延伸させたフィルムに絶縁性樹脂層2を押圧して導電粒子を絶縁性樹脂層2に転写することにより、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を保持させる態様も挙げられる。
【0075】
絶縁性樹脂層に導電粒子を押し込むことにより導電粒子分散層を形成する態様の場合、絶縁性樹脂層の最低溶融粘度を、特許第6187665号(段落0097)の記載を参考にして決定することができる。これにより、導電粒子分散層の表面をなす絶縁性樹脂層の表面が、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層の接平面に対して凹みを有するように導電粒子を押し込むことができる。
【0076】
なお、埋込率100%超の異方性導電フィルムを製造する場合に、導電粒子配列に対応した凸部を有するように押し板で押し込んでもよい。
【0077】
また、転写型を使用して絶縁性樹脂層2に導電粒子1を保持させる場合、転写型としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料などに対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって開口を形成したもの、印刷法を応用したものを使用することができる。また、転写型は、板状、ロール状等の形状をとることができる。なお、本発明は上記の手法で限定されるものではない。
【0078】
また、導電粒子を押し込んだ絶縁性樹脂層の、導電粒子を押し込んだ側の表面、又はその反対面に、絶縁性樹脂層よりも低粘度の第2の絶縁性樹脂層を積層することができる。
【0079】
異方性導電フィルムを用いて電子部品の接続を経済的に行うには、異方性導電フィルムはある程度の長尺であることが好ましい。そこで異方性導電フィルムは長さを、具体的には5m以上にすることが好ましい。特許第6187665号(段落0103)の記載を参考にして決定することもできる。また、異方性導電フィルムを実用的に用いる場合、リールに巻きつけて巻装体にすることが現実的である。しかしながら、このように巻装体にした場合、樹脂粘度(即ち、フィルムの最低溶融粘度に実質的に比例する)が低すぎるとはみ出しやブロッキングなど、接続を連続的に行うに当り問題が生じることがある。そのため、異方性導電フィルムの最低溶融粘度を好ましくは200Pa・s以上とする。これは、第2の絶縁性樹脂層や第3の絶縁性樹脂層を積層したとしても同様である。
【0080】
<異方性導電フィルムの使用方法>
本発明の異方性導電フィルムは、特に、第1電子部品(ツールで加熱される側)がICチップ、ICモジュールなどの比較的剛性が高いもの(例えば、一般的なICチップに類するウェーハーから作成される半導体素子が挙げられる)であり、第2電子部品(ステージで載置される側)がプラスチック基板などの可撓性の材料である場合に、特に好ましく適用できる。なお、半導体素子、ICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品とからなる組み合わせで異方性導電接続する態様を排除するものではない。また、本発明の異方性導電フィルムを用いてICチップやウェーハーをスタックして多層化してもよい。また、本発明の異方性導電フィルムで接続する電子部品は、上述の電子部品に必ずしも限定されるものではない。近年、多様化している種々の電子部品に使用することができる。例えば、第1電子部品としてICチップやFPCを採用した場合には、第2電子部品としてOLEDプラスチック基板を採用することができる。特に第1電子部品をICチップとし、第2電子部品をプラスチック基板とするCOP構造体とする場合、本発明は特にその効果を発揮する。従って、本発明は、「第1電子部品と第2電子部品とが、本発明の異方性導電フィルムを介して異方性導電接続されている接続構造体」、また、「第1電子部品と第2電子部品とを、本発明の異方性導電フィルムを介して異方性導電接続する、接続構造体の製造方法」も包含する。
【0081】
異方性導電フィルムを用いた電子部品の接続方法としては、異方性導電フィルムが導電粒子分散層3の単層からなる場合、各種基板などの第2電子部品に対し、異方性導電フィルムの導電粒子1が表面に埋め込まれている側から仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの導電粒子1が表面に埋め込まれていない側にICチップ等の第1電子部品を合わせ、熱圧着することにより製造することができる。異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層に熱重合開始剤と熱重合性化合物だけでなく、光重合開始剤と光重合性化合物(熱重合性化合物と同一でもよい)が含まれている場合、光と熱を併用した圧着方法でもよい。このようにすれば、導電粒子の不本意な移動は最小限に抑えることができる。また、導電粒子が埋め込まれていない側を第2電子部品に仮貼りして使用してもよい。尚、第2電子部品ではなく、第1電子部品に異方性導電フィルムを仮貼りした後にアライメントし、接続することもできる。
【0082】
また、異方性導電フィルムが、導電粒子分散層3と第2の絶縁性樹脂層4(絶縁性接着層として機能)の積層体から形成されている場合、導電粒子分散層3を各種基板などの第2電子部品に仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの第2の絶縁性樹脂層4側にICチップ等の第1電子部品をアライメントして載置し、熱圧着する。異方性導電フィルムの第2の絶縁性樹脂層4側を第1電子部品に仮貼りしてもよい。また、導電粒子分散層3側を第1電子部品に仮貼りして使用することもできる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1〜8、比較例1、参考例1
(1)絶縁性樹脂層及び絶縁性接着層を形成するための樹脂組成物の調製
表1に示した配合で、絶縁性樹脂層、第2の絶縁性樹脂層及び絶縁性接着層を形成する樹脂組成物をそれぞれ調製した。得られた組成物の最低溶融粘度を、回転式レオメータ(TA Instruments社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し、温度範囲30〜200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めた。得られた結果を表1に示す。なお、配合B、配合C及び配合Dが、本願発明用の樹脂組成物である。配合A、配合Eが、比較例用の樹脂組成物である。
【0084】
(2)導電粒子の作製
表2の導電粒子1〜4として、積水化学工業(株)製の金属被覆樹脂粒子(Au/Niメッキ、平均粒子径3μm)を用意した。ここで、20%圧縮弾性率及び圧縮復元率は、微小圧縮試験機(フィッシャー社製、フィッシャースコープH−100)を用いて以下に説明するように行った。
【0085】
<20%圧縮弾性率>
微小圧縮試験機を用い、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、圧縮速度2.6mN/秒、及び最大試験荷重10gfの条件下で導電粒子を圧縮したときの導電粒子の圧縮変量を測定し、測定して得られた数値を以下の式(1)に適用することにより算出した。
【0086】
【数4】
【0087】
式(1)中、Fは導電粒子が20%圧縮変形したときの荷重値(N)であり、Sは導電粒子が20%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)であり、Rは導電粒子の半径(mm)である。
【0088】
<圧縮復元率>
微小圧縮試験機を用い、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で導電粒子を圧縮し、初期荷重時(荷重0.4mN)から荷重反転時(荷重5mN)までの変位(L2)と、荷重反転時から最終荷重時(荷重0.4mN)までの変位(L1)とを測定し、測定して得られた数値を以下の式(2)に適用することで算出した。
【0089】
【数5】
【0090】
なお、導電粒子1、導電粒子3、導電粒子4が本願発明用の導電粒子であり、導電粒子2が比較例用の導電粒子である。
【0091】
(3)絶縁性樹脂層、第2の絶縁性樹脂層及び絶縁性接着層の形成
絶縁性樹脂層、第2の絶縁性樹脂層又は絶縁性接着層を形成するための樹脂組成物(表1参照)を、バーコーターでフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に表3に示す厚さの絶縁性樹脂層を形成した。同様に、第2の絶縁性樹脂層又は絶縁性接着層を表3に示す厚さでそれぞれ別のPETフィルム上に形成した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
(4)樹脂製転写原盤の作製
導電粒子1が平面視で
図1Aに示す正方格子配列で粒子間距離が導電粒子の平均粒子径と等しくなり、導電粒子の個数密度が表3に示す数値となるように金型を作製した。即ち、金型の凸部パターンが正方格子配列で、格子軸における凸部のピッチが平均導電粒子径の2倍であり、格子軸と異方性導電フィルムの短手方向とのなす角度θが15°となる金型を作製し、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で該金型に流し込み、冷やして固めることで、凹みが
図1Aに示す配列パターンの樹脂製転写原盤を形成した。
【0095】
(5)異方性導電フィルムの作製
表2に示す導電粒子を、表3の導電粒子の個数密度となるような個数の凹みを有する樹脂型の当該凹みに充填し、その上に上述の絶縁性樹脂層を被せ、60℃、0.5MPaで押圧することで貼着させた。そして、型から絶縁性樹脂層を剥離し、絶縁性樹脂層上の導電粒子を、加圧(押圧条件:60〜70℃、0.5Mpa)することで絶縁性樹脂層に押し込み、導電粒子分散層の単層からなる異方性導電フィルムを作製した(実施例1〜5、比較例1及び参考例1)。導電粒子の埋め込みの状態は、押し込み条件(主として圧力条件と温度条件)でコントロールした。
【0096】
また、同様に作製した導電粒子分散層に、第2の絶縁性樹脂層を積層することにより2層タイプの異方性導電フィルムを作製した(実施例6、7)。さらに、同様に作製した2層タイプの異方性導電フィルムの導電粒子分散層側に、タック性を有する絶縁性接着層を積層することにより3層タイプの異方性導電フィルムを作製した(実施例8)。
【0097】
(6)評価
(5)で作製した実施例及び比較例の異方性導電フィルムに対し、以下のようにして(a)初期導通抵抗、(b)導通信頼性、(c)圧痕、(d)粒子捕捉性を測定ないし評価した。結果を表3に示す。
【0098】
(a)初期導通抵抗
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムを、導通特性の評価用ICとプラスチック基板との間に挟み、加熱加圧(180℃、60MPa、5秒)して各評価用接続物を得、得られた評価用接続物の導通抵抗を測定した。初期導通抵抗は実用上2Ω以下であることが好ましい。
【0099】
ここで、評価用ICとプラスチック基板は、それらの端子パターンが対応しており、サイズは次の通りである。また、評価用ICとプラスチック基板を接続する際には、異方導電性フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。
【0100】
導通特性の評価用IC
外形 1.8×20.0mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ30×85μm、バンプ間距離 50μm、バンプ高さ15μm
【0101】
プラスチック基板(ITO配線)
基板材質 ポリエチレンテレフタレートベースフィルム/ポリウレタン系接着剤/ポリイミドフィルム(PET/PU/PI基板)
外形 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0102】
(b)導通信頼性
(a)で作製した評価用接続物を、温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を、初期導通抵抗と同様に測定した。導通信頼性は実用上5Ω以下であることが好ましく、2Ω以下であることがより好ましい。
【0103】
(c)圧痕
(a)で作製した評価用接続物を、プラスチック基板側から、金属顕微鏡観察し、バンプ端部の中央部に圧痕が観察されるかを確認した。観察された場合を良好(good)と評価し、観察されない場合を不良(poor)と評価した。
【0104】
(d)粒子捕捉性
粒子捕捉性の評価用ICを使用し、この評価用ICと、端子パターンが対応するプラスチック(PET/PU/PI)基板(ITO配線)とを、アライメントを6μmずらして加熱加圧(180℃、60MPa、5秒)し、評価用ICのバンプと基板の端子とが重なる6μm×66.6μmの領域の100個について導電粒子の捕捉数を計測し、最低捕捉数を求め、次の基準で評価した。実用上、B評価以上であることが好ましい。
【0105】
粒子捕捉性の評価用IC
外形 1.6×29.8mm
厚み 0.3mm
バンプ仕様 サイズ12×66.6μm、バンプピッチ22μm(L/S=12μm/10μm)、バンプ高さ12μm
【0106】
粒子捕捉性評価基準
A 5個以上
B 3個以上5個未満
C 3個未満
【0107】
【表3】
【0108】
(考察)
表3の結果から、以下の条件(イ)〜(ホ):
<条件(イ)>
導電粒子の20%圧縮弾性率が、6000N/mm
2以上15000N/mm
2以下であること;
<条件(ロ)>
導電粒子の圧縮復元率が、40%以上80%以下であること;
<条件(ハ)>
導電粒子の平均粒子径が、1μm以上30μm以下であること;
<条件(ニ)>
絶縁性樹脂層の最低溶融粘度が、4000Pa・s以下であること;及び
<条件(ホ)>
導電粒子の個数密度が、6000個/mm
2以上36000個/mm
2以下であること
を満足する実施例1〜8の異方性導電フィルムは、(a)初期導通抵抗、(b)導通信頼性、(c)圧痕、(d)粒子捕捉性の各特性について、実用上問題の無いレベル以上の好ましい結果を示した。
【0109】
一方、条件(ニ)の数値範囲を上回っている比較例1の異方性導電フィルムは、「導通信頼性」に問題があった。更に「圧痕」にも問題があった。なお、条件(イ)及び(ロ)の数値範囲をわずかに下方に外れている参考例1の異方性導電フィルムは、実施例1〜8の異方性導電フィルムに比べて初期導通抵抗や導通信頼性における抵抗値が若干高いが、実用上問題が生ずるレベルではない。ただ、製造時の接続条件の変動などを加味すれば、実施例1〜8のように初期導通抵抗や導通信頼性における抵抗値が低いことが好ましい。