特開2020-96090(P2020-96090A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-96090(P2020-96090A)
(43)【公開日】2020年6月18日
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20200522BHJP
【FI】
   H01L31/04 570
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-233131(P2018-233131)
(22)【出願日】2018年12月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】須賀 保博
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151BA18
5F151EA02
5F151EA19
5F151EA20
(57)【要約】
【課題】
複数の太陽電池セルが直列接続されて構成される太陽電池において、太陽電池セルの端部にクラックが生じない太陽電池を提供する。
【解決手段】
複数の太陽電池セル12が接続されて構成される太陽電池10において、受光面である表面と、表面の反対面である背面とを有する複数の太陽電池セル12と、複数の太陽電池セル12の各太陽電池セル12の表面と、所定の接続方向に隣接する太陽電池セル12の背面とにわたって接続されるタブ線13と、タブ線13を太陽電池セル12の表面及び背面に接合する導電性接合材料層14とを備え、太陽電池セル12は、端部領域に、タブ線13と対向するとともに導電性接合材料層14が形成されていない非接合部15を有し、非接合部15の長さが1mm乃至10mmである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池セルが接続されて構成される太陽電池において、
受光面である表面と、前記表面の反対面である背面とを有する複数の太陽電池セルと、
前記複数の太陽電池セルの各太陽電池セルの前記表面と、所定の接続方向に隣接する太陽電池セルの前記背面とにわたって接続されるタブ線と、
前記タブ線を前記太陽電池セルの前記表面及び前記背面に接合する導電性接合材料層とを備え、
前記太陽電池セルは、端部領域に、前記タブ線と対向するとともに前記導電性接合材料層が形成されていない非接合部を有し、
前記非接合部の長さが1mm乃至10mmである太陽電池。
【請求項2】
前記タブ線は、前記太陽電池セル上において、当該太陽電池セルの端部領域に配設される先端部と、当該太陽電池セルに隣接する太陽電池セル側にわたって連続する接続端部とを有し、
前記非接合部は、少なくとも前記先端部と対向する端部領域に形成される請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記非接合部は、前記太陽電池セルの前記表面又は前記背面の少なくとも一方の面に形成されている請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記太陽電池セルの前記表面の端部領域に形成された表面側非接合部と、前記太陽電池セルの前記背面の前記端部領域に形成された背面側非接合部とが、前記太陽電池セルの厚さ方向に対向され、
前記太陽電池セルの厚さ方向に対向する前記表面側非接合部と前記背面側非接合部との長さの差が10mm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記タブ線は、前記太陽電池セルの相対向する一対の端部間にわたって直線状に接続され、
前記太陽電池セルの前記相対向する一対の端部間にわたる長さをセル長とし、前記タブ線と平行な方向における前記導電性接合材料層の長さを接合長としたとき、前記接合長が前記セル長より短い請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、複数の太陽電池セルが直列接続されて構成される太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力効果を利用して光エネルギを電力に変換する太陽電池が知られている。太陽電池は、通常、直列接続された複数の太陽電池セルから構成される(例えば、特許文献1)。図1は、直列接続された複数の太陽電池セルの一部の側断面図である。図1に示すように、太陽電池1は、複数の太陽電池セル2から構成されている。太陽電池セル2は、図面では、上側にある受光面である表面と、その反対面である背面とを備える。
【0003】
図1の左から右への方向を接続方向と定義すると、各太陽電池セル2の表面と、この接続方向に隣り合う次の太陽電池セル2の背面とは、タブ線3によって接続されている。このようにして、太陽電池1では、各太陽電池セル2を次の太陽電池セル2に順次的に接続することにより、複数の太陽電池セル2が直列接続されている。これにより、太陽電池1では、接続される太陽電池セル2の数に応じて、太陽電池セル2単体の起電力の数倍以上の起電力が得られる。
【0004】
図2は、タブ線3によって接続される隣り合う太陽電池セル2の接続部分を拡大して示す側断面図である。図2に示すように、太陽電池セル2の表面とタブ線3、及び太陽電池セルの背面とタブ線3は、それぞれ、導電性接合材料層4を介して接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−258006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
導電性接合材料層4を介して、太陽電池セル2をタブ線3に接合する工程では、まず、導電性接合材料層4を太陽電池セル2とタブ線3との間に挟み込む。次に、タブ線側から熱加圧を行うことにより、導電性接合材料層4が溶融し、これが再び硬化することによって、太陽電池セル2とタブ線3とが接合される。導電性接合材料層4には、導電性粒子が含まれており、これにより、太陽電池セル2とタブ線3とが電気的にも接続される。
【0007】
このような熱加圧工程において、導電性接合材料層4の硬化収縮や熱収縮等により太陽電池セル2に応力が加わり、図2に示すように、太陽電池セル2の端部にクラック5が生じることがある。クラック5は、この熱加圧工程だけではなく、太陽電池1の使用環境下で生じる場合もある。クラック5は、太陽電池セル2の性能を劣化させ、したがって、太陽電池1全体の性能を劣化させる。
【0008】
そこで、本技術は、上述の課題に鑑み、複数の太陽電池セルが、導電性接合材料層を介して接合される複数のタブ線によって直列接続されて構成される太陽電池において、太陽電池セルの端部にクラックが生じない太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本技術に係る太陽電池は、複数の太陽電池セルが接続されて構成される太陽電池において、受光面である表面と、前記表面の反対面である背面とを有する複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セルの各太陽電池セルの前記表面と、所定の接続方向に隣接する太陽電池セルの前記背面とにわたって接続されるタブ線と、前記タブ線を前記太陽電池セルの前記表面及び前記背面に接合する導電性接合材料層とを備え、前記太陽電池セルは、端部領域に、前記タブ線と対向するとともに前記導電性接合材料層が形成されていない非接合部を有し、前記非接合部の長さが1mm乃至10mmである。
【発明の効果】
【0010】
本技術によれば、複数の太陽電池セルが、導電性接合材料層を介して接合される複数のタブ線によって接続されて構成される太陽電池において、太陽電池セルの端部にクラックが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、従来の太陽電池の構成を示す側断面図である。
図2図2は、従来の太陽電池の側断面図である。
図3図3は、太陽電池の平面図である。
図4図4は、太陽電池の斜視図である。
図5図5は、太陽電池の第1の実施形態を説明する側断面図である。
図6図6は、太陽電池の第2の実施形態を説明する側断面図である。
図7図7は、太陽電池の第3の実施形態を説明する側断面図である。
図8図8は、太陽電池の第4の実施形態を説明する側断面図である。
図9図9は、太陽電池の第5の実施形態を説明する側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術が適用された太陽電池について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0013】
また、図において、同様の構成要素には、同じ符号を付している。説明を簡潔にするため、各図を参照する記述において、同様の構成要素の説明は繰り返さないものとする。
【0014】
図3は、本技術に基づく太陽電池10の平面図である。図3に示すように、本技術に基づく太陽電池10は、所定のサイズ、例えば6インチサイズの複数の太陽電池セル12が直列接続されて構成されたストリングスを有する。太陽電池セル12は、光エネルギを電気エネルギに変換するエネルギ変換素子であり、例えば、結晶シリコン太陽電池セル、非晶質シリコン太陽電池セル、微結晶シリコン太陽電池セル、有機薄膜太陽電池セル、色素増感太陽電池セル等の周知のいかなる太陽電池セルであってもよい。
【0015】
太陽電池セル12は、タブ線13によって接続されている。具体的には、タブ線13は、導電性接合材料層14によって太陽電池セル12に接続され、複数の太陽電池セル12について、各太陽電池セル12の受光面である表面から所定の接続方向に隣接する次の太陽電池セルの背面にわたって連続し、各太陽電池セルの表面と当該太陽電池セルに隣接する太陽電池セルの背面とをそれぞれ接続している。
【0016】
図4は太陽電池セル12の接続構成の一例を示す斜視図である。図4に示すように、太陽電池セル12aの表面は、タブ線13を介して、矢印y方向に隣り合う太陽電池セル12bの背面に接続されており、太陽電池セル12bの表面は、タブ線13を介して、矢印y方向に直交する矢印x方向に隣り合う太陽電池セル12cの背面に接続されている。このように、本明細書における接続方向とは、矢印yや矢印xで示されるような空間的な一方向を必ずしも意味せず、電気的な接続方向、すなわち、+側から−側又は−側から+側の一方向を意味する。
【0017】
タブ線13は、例えば、銅、アルミニウム、鉄、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロム、モリブデン、及びこれらの合金など、導電性を有するいかなる材料から形成してもよい、また、必要に応じて、これら金属に、金メッキ、銀メッキ、錫メッキ、半田メッキなどを施してもよい。タブ線の形状は、例えば、リボン状であり、タブ線の幅や厚みに制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、好ましいタブ線の幅は、1mm〜6mmであり、好ましいタブ線の厚みは、5μm〜300μmである。
【0018】
また、図3では、平行する3本のタブ線13で各太陽電池セル12を接続しており、図4では、平行する2本のタブ線13で各太陽電池セル12を接続している。このように、タブ線13は、その導電性によって、隣接する太陽電池セル12を電気的に接続する目的を達成する限り、いかなる本数で太陽電池セル12を接続してもよい。
【0019】
[導電性接合材料層]
導電性接合材料層14は、タブ線13と太陽電池セルの表面及び背面に形成された電極とを電気的且つ機械的に接続する接合層であり、例えば、導電性粒子と、膜形成樹脂と、硬化性樹脂と、硬化剤とを含有する樹脂組成物が硬化されて形成される。導電性接合材料層14を構成する未硬化の樹脂組成物は、例えばフィルム状に成形され、タブ線13に沿って貼付され、あるいはペースト状の樹脂組成物がタブ線13に塗布される。
【0020】
導電性接合材料層14を介して太陽電池セル2にタブ線3を接合する工程では、タブ線13の樹脂組成物が貼付された部位が太陽電池セルの表面及び背面の所定の位置に、太陽電池セルの相対向する一対の端部間にわたって仮貼りされる。次に、タブ線側から熱加圧を行うことにより、樹脂組成物が溶融、本硬化することによって、太陽電池セル2とタブ線3とが接合される。これにより、導電性接合材料層14を介して太陽電池セル2とタブ線3とが電気的、機械的に接合される。
【0021】
[非接合部]
図5に示すように、本技術が適用された太陽電池セル12は、端部領域に、タブ線13と対向するとともに導電性接合材料層14が形成されていない非接合部15を有する。非接合部15を設けることにより、太陽電池セル12は、導電性接合材料層14の硬化収縮や熱収縮等に伴う内部応力がセル端部に集中することが回避され、端部にクラックが生じることを抑制できる。
【0022】
すなわち、太陽電池セル12は、上述したタブ線13の接続工程における熱加圧によって、導電性接合材料層14を構成する樹脂組成物の硬化収縮や熱収縮等により応力が加わる。この応力は、太陽電池セル12の導電性接合材料層14を介した接合部の端部に集中しやすいため、一対の端部間にわたってタブ線13が貼付される太陽電池セル12においては、端部領域において応力を受けることとなる。また、太陽電池セル12の端部領域は、受けた応力が分散されず、クラックが生じるリスクが相対的に高い。
【0023】
しかし、本技術が適用された太陽電池セル12は、応力の集中しやすい端部領域に非接合部15を設けることで、端部領域への応力集中を抑制し、比較的応力に対する耐性の高い端部領域から内側の領域において応力を受けることができる。したがって、太陽電池セル12は、端部にクラックが生じることを抑制できる。
【0024】
この非接合部15は、太陽電池セル12の端部からタブ線13に沿って太陽電池セル12の内側の領域かけて形成される。また、非接合部15の長さは、1mm乃至10mmとすることが好ましい。非接合部15の長さを1mm未満とすると、太陽電池セル12のクラックを抑制する効果が低下する。また、非接合部15の長さが10mmを超えると、タブ線13と太陽電池セル12との接続性が低下し、タブ線13の接続強度低下や電気的抵抗の上昇を招く恐れが生じる。
【0025】
[第1の実施形態]
図5は、本技術の第1の実施形態を示している。図5に示すように、太陽電池セル12とタブ線13は、導電性接合材料層14を介して接合されている。タブ線13は、太陽電池セル12の相対向する一対の端部間にわたって直線状に接続されている。また、太陽電池セル12はタブ線13と平行な方向において、L1の長さ(セル長)を有し、また、導電性接合材料層14はタブ線13と平行な方向において、L2の長さ(接合長)を有し、この実施形態では、接合長L2をセル長L1より短く形成している。
【0026】
そして、太陽電池セル12は、相対向する一対の端部領域において、タブ線13と太陽電池セル12が対向しているが、導電性接合材料層14が形成されていない非接合部15a、15bを有する。非接合部15aは、タブ線13の太陽電池セル12上の端部のうち、当該太陽電池セル12に隣接する太陽電池セル12側にわたって連続する接続端部13aと対向する領域に形成され、非接合部15bは、タブ線13の当該太陽電池セル12の端部領域に配設される先端部13bと対向する領域に形成されている。図5に示す実施形態では、太陽電池セル12の表面および背面のそれぞれに非接合部15a,15bが形成されている。
【0027】
また、図5に示す実施形態では、タブ線13と平行な方向における非接合部15aの長さをLxとし、非接合部15bの長さをLyとしている。換言すれば、太陽電池セル12の両面に設けられる導電性接合材料層14は、タブ線13と平行な方向における太陽電池セル12の端部から、それぞれ長さLx及び長さLyだけ後退するように形成されている。
【0028】
図5に示すように、本技術が適用された太陽電池10は、太陽電池セル12の端部領域に非接合部15を設けることによって、太陽電池セル12の端部にクラックが生じることを抑制できる。これは、非接合部15a、15bの存在によって、導電性接合材料層14の硬化収縮や熱収縮等に伴う内部応力がセル端部に集中することが回避されるためである。具体的には、図5の非接合部15aの長さLx及び非接合部15bの長さLyは、それぞれ1mm以上10mm以下に設定することが好ましい。これらの長さを1mm未満とすると、太陽電池セル12のクラックを抑制する効果が低下する。また、これらの長さを10mmを超えると、タブ線13と太陽電池セル12との接続性が低下し、タブ線13の接続強度低下や電気的抵抗の上昇を招く恐れが生じる。
【0029】
また、図5に示す実施形態では、太陽電池セル12の表面の端部領域に形成された表面側非接合部15と、太陽電池セル12の背面の端部領域に形成された背面側非接合部15とが、太陽電池セルの厚さ方向に対向され、太陽電池セル12の厚さ方向に対向する表面側非接合部15と背面側非接合部15との長さが等しくされている。換言すれば表面側非接合部15と背面側非接合部15との長さの差が0とされている。具体的に、太陽電池セル12は、一方の端部領域において表面に形成された非接合部15bと背面に形成された非接合部15aとが対向されるとともに、非接合部15aの長さLxと、非接合部15bの長さLyとが等しくされている。これにより、太陽電池セル12の表面と背面とで、電性接合材料層14による接合長さが等しくされ、導電性接合材料層14を構成する樹脂組成物の硬化収縮等によって掛かる応力に差が生じにくくなり、クラックの発生を抑制することができる。
【0030】
なお、太陽電池セル12は、厚さ方向に対向する表面側非接合部15と背面側非接合部15との長さの差が10mm以下、好ましくは5mm以下とされることが、表面と背面における応力差による歪みを抑制しクラックの発生を防止する上で好ましい。表面と背面の接合長さの差がこれよりも大きくなると、接合時に太陽電池セル12に加わる応力に偏りが生じ、この圧力の偏りがクラックの原因になり得る。
【0031】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態では、太陽電池セル12の背面において、タブ線13の当該太陽電池セル12に隣接する太陽電池セル側にわたって連続する接続端部13aに非接合部15aが形成され、タブ線13の当該太陽電池セル12の端部領域に配設される先端部13bに非接合部15bが形成されている。
【0032】
このように、太陽電池セル12の背面側において、相対向する端部領域に非接合部15a、15bを形成することによっても、応力緩和が図られ、クラックの発生を抑制することができる。
【0033】
[第3の実施形態]
図7は、本発明の第3の実施形態を示している。第3の実施形態では、太陽電池セル12の表面において、タブ線13の当該太陽電池セル12に隣接する太陽電池セル側にわたって連続する接続端部13aに非接合部15aが形成され、タブ線13の当該太陽電池セル12の端部領域に配設される先端部13bに非接合部15bが形成されている。
【0034】
このように、太陽電池セル12の表面側において、相対向する端部領域に非接合部15a、15bを形成することによっても、応力緩和が図られ、クラックの発生を抑制することができる。
【0035】
[第4の実施形態]
図8は、本発明の第4の実施形態を示している。第4の実施形態では、太陽電池セル12の表面及び背面において、タブ線13の先端部13bと対向する端部領域に非接合部15bを形成し、接続端部13aと対向する端部領域には導電性接合材料層14が延在し非接合部15aが設けられていない。これは、太陽電池セル12は、導電性接合材料層14を構成する樹脂組成物の硬化収縮や熱収縮等により太陽電池セル12に応力が加わった際に、タブ線13の接続端部13aと対向する端部領域は、比較的クラックが発生しにくいことによる。したがって、少なくともタブ線13の先端部13aと対向する端部領域に非接合部15bを形成することで、効果的にクラックの発生を防止することができる。また、第4の実施の形態においては、タブ線13の接続端部13aまで太陽電池セル12と導通接続されることで、接合強度の向上及び導通抵抗の低下を図ることができる。
【0036】
[第5の実施形態]
図9は、本発明の第5の実施形態を示している。第5の実施形態では、太陽電池セル12の表面及び背面において、タブ線13の接続端部13aと対向する端部領域に非接合部15aを形成し、先端部13bと対向する端部領域には導電性接合材料層14が延在し非接合部15bが設けられていない。このようにタブ線13の接続端部13aと対向する端部領域にのみ非接合部15aを形成することによっても、太陽電池セル12の表面及び背面において応力緩和が図られ、クラックの発生を抑制することができる。
【0037】
第1〜第5の実施形態から明らかなように、非接合部15は、導電性接合材料層14の両側に設けてもよく、片側のみに設けてもよく、また、太陽電池セル12の両面に設けてもよく、片面に設けてもよい。後述する実施例からわかるように、太陽電池セル12の少なくとも一方の面に非接合部15を形成することによっても、クラックを抑制する効果が得られる。
【実施例】
【0038】
次いで、本技術の実施例について説明する。この実施例では、厚さ160μmの6インチサイズの単結晶型太陽電池セル2枚を、200μm厚の銅線の片面に20μmの半田メッキが施された太陽電池用のタブ線で接続した太陽電池ストリングスを形成した。太陽電池セルとタブ線の接合には、導電性接着フィルム(デクセリアルズ株式会社製、SP104A1)を使用した。タブ線を太陽電池セルへ接合する条件は、180℃、2MPa、10secとした。
【0039】
各太陽電池セルは、タブ線が太陽電池セルの相対向する一対の端部間にわたって直線状に接続され、相対向する一対の端部領域において、タブ線13と太陽電池セル12が対向しているが、導電性接合材料層14が形成されていない非接合部15a、15bを有する。そして、タブ線13の接続端部13aと対向する領域に形成された非接合部15aの長さLx、及びタブ線13の先端部先端部13bと対向する領域に形成された非接合部15bの長さLyを変更し、導電性接合材料層14を介して、太陽電池セルとタブ線を加熱押圧により接合したサンプルをそれぞれ5組準備した。
【0040】
そして、各サンプルの太陽電池セルにおけるクラックを目視で確認し、クラックの発生が確認された枚数(枚)を確認した。次に、EL検査によってクラックの有無を確認し、クラックの発生が確認された枚数(枚)を確認した。
【0041】
更に、−40℃〜125℃の温度サイクルを200サイクル経た後のサンプルの低下率を判定した。具体的に、太陽電池太陽電池ストリングスの初期出力値を、JIS C8912規定に基づいて、Aランクに該当する太陽光シミュレータを用い、光源としてキセノンランプを用いて測定した。その後、前記温度サイクル試験後、出力値を、前記初期出力値と同じ方法で測定した。これらの値から、初期出力値に対する温度サイクル試験後の出力値を低下率(%)とした。この実施例では、この低下率が1%以下であるサンプルをG(good)と評価し、低下率が20%以上であるサンプルをB(bad)と評価し、その中間をI(intermediate)と評価した。
【0042】
[実施例1]
実施例1では、図8に示すLxを0mmとし、Lyを2mmとして、導電性接合材料層を介して、太陽電池セルとタブ線を圧熱接合したサンプルを5組用意した。目視で確認されたクラック数は、0であり、EL検査で確認されたクラック数は、0であり、温度サイクル試験後の低下率は1%以下であった。したがって、このサンプルは、Gと評価された。
【0043】
[実施例2]
実施例2では、図8に示すLxを0mmとし、Lyを5mmとして、導電性接合材料層を介して、太陽電池セルとタブ線を圧熱接合したサンプルを5組準備した。目視で確認されたクラック数は、0であり、EL検査で確認されたクラック数は、0であり、温度サイクル試験後の低下率は1%以下であった。したがって、このサンプルは、Gと評価された。
【0044】
[実施例3]
実施例3では、図5に示すLxを10mmとし、Lyを10mmとして、導電性接合材料層を介して、太陽電池セルとタブ線を圧熱接合したサンプルを5組準備した。目視で確認されたクラック数は、0であり、EL検査で確認されたクラック数は、0であり、温度サイクル試験後の低下率は1%以下であった。したがって、このサンプルは、Gと評価された。
【0045】
[実施例4]
実施例4では、図8に示すLxを0mmとし、Lyを10mmとして、導電性接合材料層を介して、太陽電池セルとタブ線を圧熱接合したサンプルを5組準備した。目視で確認されたクラック数は、0であり、EL検査で確認されたクラック数は、4であり、温度サイクル試験後の低下率は5%であった。したがって、このサンプルは、Iと評価された。
【0046】
[比較例1]
比較例1では、Lxを0mmとし、Lyを0mmとして(図2参照)、導電性接合材料層を介して、太陽電池セルとタブ線を圧熱接合したサンプルを5組準備した。目視で確認されたクラック数は、4であり、EL検査で確認されたクラック数は、1であり、温度サイクル試験後の低下率は20%であった。したがって、このサンプルは、Bと評価された。
【0047】
表1は、以上の実施例及び比較例の結果をまとめたものである。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、太陽電池セルに非接合部が設けられていない比較例1では、太陽電池セルとタブ線の接合後にクラックが生じやすいことがわかった。
【0050】
一方、実施例1及び実施例2のように、太陽電池セルの表裏にそれぞれ形成される非接合部の長さが異なり、その差が2mm又は5mmの場合には、クラックが生じないことがわかった。また、実施例3のように、太陽電池セルの表裏の非接合部の長さを同じにした場合は、その長さを10mmとしても、クラックが生じないことがわかった。なお、実施例4のように、太陽電池セルの表裏にそれぞれ形成される非接合部の長さが異なり、その差を10mmとした場合でも、タブ線の先端部と対向する領域に非接合部を設けており、EL検査にてクラックが確認されたが出力の低下率は5%程度に止まった。
【符号の説明】
【0051】
10 太陽電池、12 太陽電池セル、13 タブ線、14 導電性接合材料層、15a 非接合部、15b 非接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9