【解決手段】サイドウォールゴム30の製造方法は、タイヤ1のサイドウォール部3を構成するサイドウォールゴム30を押出機5から押し出す押出工程と、サイドウォールゴム30を搬送する搬送工程と、サイドウォールゴム30をロール状に巻き取る巻き取り工程と、搬送工程中にサイドウォールゴム30に複数の貫通孔31…31を索孔する穴開け工程とを有し、搬送工程は、サイドウォールゴム30を連続的に搬送し、穴開け工程は、搬送工程の搬送経路上に設けられた周面に針を設けた針付きローラ72に、サイドウォールゴム30を巻き掛けることによって穴を開け、穴開け工程では、サイドウォールゴム30に所定の張力が付与された状態で穴を開ける。
前記穴開け工程では、前記針付きローラの前記針が、該針付きローラの外周面から径方向外側に突出可能とされるとともに、該針付きローラの外周面から径方向内側に退避可能とされている、請求項1または請求項2に記載のサイドウォールゴムの製造方法。
前記穴開け工程は、前記ゴム部材のタイヤの骨格を形成するカーカスプライへ接着される被貼付面側が、反被貼付面側よりも径の大きな穴を開ける、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のサイドウォールゴムの製造方法。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤとして、インナーライナー、カーカスプライ、サイドウォール部、ビード部、トレッド部等の各タイヤ構成部材を予め形成し、これらのタイヤ構成部材を未加硫の状態で貼り合わせてグリーンタイヤを成型し、このグリーンタイヤを加硫成型することで製造されるものが知られている。
【0003】
グリーンタイヤの成型時に、このグリーンタイヤのゴム部材間にエアが咬み込むことがある。例えば、サイドウォール部において、カーカスプライとサイドウォールゴムとの間にエアが残留すると、製造される空気入りタイヤにおいて、サイドウォール部にベア(欠け)が発生しやすい。
【0004】
そのため、グリーンタイヤの成型後において、サイドウォールゴムに錐を用いて穴を形成し、カーカスプライとサイドウォールゴムとの間の空気を該穴から排出する場合がある。しかし、サイドウォールゴムに外側(プロファイル面)から錐を用いて穴を形成すると、タイヤ外側の穴が内側の穴よりも大きく形成され、加硫成型時のゴム流れが悪化する傾向にある。
【0005】
特許文献1では、カーカスプライに貼り付ける前のサイドウォールゴムに、カーカスに貼り付く側の内面側から外面側(プロファイル面側)へ貫通する貫通穴を設けるゴム部材及び空気入りタイヤの製造方法が開示されている。
【0006】
ところで、サイドウォールゴムは、コード入りのカーカスプライ等に比して剛性が低く撓みやすい。そのため、穴開けの際にサイドウォールゴムが撓み、貫通孔を確実に形成できない場合がある。サイドウォールゴム自体の剛性を上げるために、サイドウォールゴムの厚さを大きくすることが考えられる。しかしながら、不必要に重量を増加させることになり、コストおよび燃費の観点から好ましくない。
【0007】
これに対して、特許文献2には、カーカスプライに貼り付ける前のサイドウォールゴムを、載置台上に載置して、該載置台の上方から針を昇降させることで、剛性の低いサイドウォールゴムに貫通孔を形成するサイドウォールのホーリング装置およびホーリング方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2のホーリング装置では、サイドウォールゴムを載置台に載置して穴開けをするものであるため、押出工程から成型工程に至るまでの工程とは別の工程を設ける必要がある。仮に、工程中に穴開けの工程を設けることができたとしても、サイドウォールゴムの穴開けの際には、サイドウォールゴムの搬送を停止する必要がある。すなわち、サイドウォールゴムの厚みを適切にしつつ、サイドウォールゴムを搬送しながら穴開けを実施するためには改善の余地がある。
【0010】
本発明は、サイドウォールゴムの製造方法として、サイドウォールゴムの厚みの増大を抑制しつつ、サイドウォールゴムを搬送しながら確実に貫通孔を設けることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、タイヤのサイドウォール部を構成するゴム部材を押出機から押し出す押出工程と、前記ゴム部材を搬送する搬送工程と、前記ゴム部材をロール状に巻き取る巻き取り工程と、前記搬送工程中に前記ゴム部材に複数の貫通孔を索孔する穴開け工程とを有し、前記搬送工程は、前記ゴム部材を連続的に搬送し、前記穴開け工程は、前記搬送工程の搬送経路上に設けられた周面に針を設けた針付きローラに前記ゴム部材を巻き掛けることによって穴を開け、前記穴開け工程では、前記ゴム部材に所定の張力が付与された状態で穴を開ける、サイドウォールゴムの製造方法を提供する。
【0012】
本発明によれば、サイドウォール部を構成するゴム部材への空気抜きのための貫通孔を形成する際に、該ゴム部材に所定の張力を作用させることにより、例えば、カーカスプライ等に比して剛性の低いサイドウォール部のゴム部材の厚さを不必要に大きくすることなく、該ゴム部材に確実に穴開けすることができる。これにより、最適厚さで形成されたサイドウォール部のゴム部材の複数の貫通孔から、該ゴム部材とカーカスプライとの間の空気を排出することができる。その結果、空気入りタイヤの性能および品質の確保が可能となる。
【0013】
また、ゴム部材を搬送工程上に設けられた針付きローラによって搬送しながら、該ゴム部材に複数の貫通孔を設けることができる。これによれば、例えば、ゴム部材が押出機から押し出されてから巻き取り装置に巻き取られる搬送工程中において、ゴム部材の搬送を停止することなく(工程速度を落とすことなく)効率的に穴開けを実施することができる。
【0014】
また、好ましくは、前記穴開け工程で、前記ゴム部材に付与される張力を変更する張力変更工程をさらに有する。
【0015】
ゴム部材は、硬度および厚みによって最適な張力が異なるため、例えば、ゴム部材の穴開けに必要な張力が不足すると、針によってゴム部材が撓み、貫通孔が形成されない等の不具合が生じる場合がある。
本構成によれば、ゴム部材に最適な張力を付与することで、確実に貫通孔を設けることができる。例えば、硬度が高いゴム部材および厚みの大きなゴム部材ほど高い張力を付与させることで、ゴム部材への確実な穴開けが可能となる。
【0016】
また、好ましくは、前記穴開け工程では、前記針付きローラの前記針が、該針付きローラの外周面から径方向外側に突出可能とされるとともに、該針付きローラの外周面から径方向内側に退避可能とされている。
【0017】
本構成によれば、針付きローラの針は、該針付きローラの外周面から突出退避可能に設けられているので、針は貫通孔を形成後に退避されることができる。これにより、例えば、針が針付きローラの外周面から常時突出した状態である場合のように、針がゴム部材に貫通しながら搬送されることによって貫通孔の形状が不必要にゴム部材の搬送方向(長手方向)に拡大する(延びる)ことが抑制される。
【0018】
また、好ましくは、前記穴開け工程は、前記ゴム部材のタイヤの骨格を形成するカーカスプライへ接着される被貼付面側が、反被貼付面側よりも径の大きな穴を開ける。
【0019】
本構成によれば、加硫成型時において、ゴム部材のカーカスプライへの被貼付面側から反被貼付面側へのゴム流れの悪化を抑制することができる。
【0020】
また、好ましくは、前記搬送工程では、前記針付きローラを搬送装置として備える。
【0021】
本構成によれば、針付きローラが搬送機能を備えているので、工程速度を保ちながらゴム部材への穴開けが可能となる。
【0022】
また、好ましくは、前記巻き取り工程の後に、グリーンタイヤを成型する成型工程をさらに有する。
【0023】
本構成によれば、サイドウォール部のゴム部材のみが製造される工程において、空気抜き用の穴開けを行うことで、サイドウォール部のゴム部材のみを監視することができる。これにより、例えば、成型工程等の他の部材とが組み合わされる工程で穴開けを実施する場合に比して、サイドウォール部のゴム部材の品質不良をより確実に低減することができる。
【0024】
また、品質不良が生じた際に、最小限のラインのみを停止するだけで対応できるので、仮に、成形工程等の他の部材と組み合わされる工程で穴開けを行う場合、タイヤ製造ライン全体を停止する必要があるが、サイドウォール部のゴム部材を製造する工程のみを停止するだけで対応できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るサイドウォールゴムの製造方法において、サイドウォールゴムの厚みの増大を抑制しつつ、サイドウォールゴムを搬送しながら確実に貫通孔を設けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0028】
本発明は、空気入りタイヤ1のサイドウォール部を形成するゴム部材としてのサイドウォールゴムの製造方法に関するものである。このサイドウォールゴムの製造方法の説明に先立ち、
図1を参照しながら、該サイドウォールゴムを備えた空気入りタイヤ1の構成について概略を説明する。
【0029】
図1は、本実施形態における空気入りタイヤ1の子午線方向における半断面図であり、タイヤ赤道線に対して一方側のみを示している。
図1に示すように、空気入りタイヤ1は、トレッド面を有するトレッド部2と、そのタイヤ幅方向外側の両側端部に連なってタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3の内径端に位置する一対のビード部4とを備えている。トレッド部2およびサイドウォール部3の内側には、一対のビード部4の間に架け渡されるようにカーカスプライ11が配設されている。
【0030】
トレッド部2のカーカスプライ11のタイヤ径方向外側には、ベルト層12とベルト補強層13とが順に配設されており、この更に外側にトレッドゴム14が配設されている。カーカスプライ11の内側には、空気圧を保持するためのインナープライ15が配設されている。
【0031】
ビード部4は、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア41と、ビードコア41に連設されてタイヤ径方向外側に延びる断面三角形状の環状のビードフィラー42とを有する。
【0032】
サイドウォール部3のカーカスプライ11のタイヤ幅方向外側には、サイドウォールゴム30が配設されている。
【0033】
次に、サイドウォールゴム30の製造装置について説明する。
【0034】
図2に示すように、サイドウォールゴム30の製造ラインは、ゴム部材を押し出し成型する押出機5と、押出機5から帯状に押し出されたサイドウォールゴム30を巻き取る巻き取り装置6と、押出機5と巻き取り装置6との間でサイドウォールゴム30を搬送する複数の搬送装置71、72、73、74、75、76とを有する。
【0035】
押出機5は、例えば、断面台形状の口金からゴム部材を押し出すことによって、帯状のサイドウォールゴム30を成型する。
【0036】
巻き取り装置6は、円筒状で形成され、押出機5から帯状に押し出されたサイドウォールゴム30の一端を外周面に巻き掛けて、サイドウォールゴム30を一定速度でロール状に巻き取るように構成されている。
【0037】
複数の搬送装置71、72、73、74、75、76は、押出機5から押し出された直後のサイドウォールゴム30を一定速度で搬送するコンベア装置71と、サイドウォールゴム30に複数の貫通孔31…31を形成する針付きローラ72と、回転可能かつ上下方向に移動可能に形成された第1可動ガイドローラ73、第2可動ガイドローラ74、および、第3可動ガイドローラ75と、回転可能かつ上下方向に固定された固定ガイドローラ76とで構成されている。
【0038】
図3に示すように、針付きローラ72は、円筒状のドラム本体72aと、その両端に配設された円板状の側壁部72b、72b(
図5参照)と、ドラム本体72aと側壁部72b、72bとを軸方向に貫通する非回転の静止軸部材72cとを有している。ドラム本体72aと側壁部72b、72bとは、例えば軸受け(図示せず)等を介して静止軸部材72cに回転自在に支持されている。
【0039】
針付きローラ72は、ドラム本体72aとともに回転でき、かつ、その外周面から突出退避し得るサイドウォールゴム30への穴開け用の針としての針部材81を複数備えている。各針部材81は、針付きローラ72の径方向内側(根元側)から針付きローラ72の径方向外側(先端側)に向けて直線状に径が小さくなる円錐状に形成されている。
【0040】
針部材81は、例えば、3段収納式で形成されている。具体的には、ドラム本体72a内部に固定されて、ドラム本体72aの外周面から退避した各針部材81を収納する円筒状のベース部82と、ベース部82よりも径が小さく、且つ、ベース部82内に収納されるとともに、突出状態において針部材81を支持する概ね台形円錐状の中間部83とを有している。なお、ベース部82、中間部83、および、針部材81は、互いに気密状態となるように、それぞれの後述する係合部においてシール部材が適宜配置されている。
【0041】
ここで、
図3および
図4を用いて、針部材81の針付きローラ72からの突出動作および針付きローラ72内への退避動作について説明する。
【0042】
ドラム本体72a内の圧力を増大させる(例えば、エアを注入する)ことにより、
図3に示すように針付きローラ72内に収納された状態の針部材81および中間部83が、径方向外側に押し出され、
図4に示すように針付きローラ72から針部材81が突出した状態となる。具体的に、本実施形態においては、針部材81の下端部81aと中間部83の上端部83aとが係合するように形成されることで、針部材81の径方向外側への移動に連動して中間部83が針付きローラ72の径方向外側へ移動する。また、本実施形態においては、中間部83の下端部83bとベース部82の上端部82aとを係合させることで、中間部83の径方向外側への突出量が規制されている。なお、突出状態における針部材81の先端から中間部83までの径方向の寸法Hは、針部材81がサイドウォールゴム30を貫通する所定の長さを有している。
【0043】
ドラム本体72a内の圧力を減少させる(例えば、エアを吸引する)ことにより、針付きローラ72の外周面から突出した状態であった針部材81および中間部83が、針付きローラ72の外周面から退避するとともに、ベース部82内(針付きローラ72内)に収納される。なお、針部材81と、ベース部82との間には、突出状態の針部材81をベース部82内に退避させるように付勢するばね等の付勢手段(図示せず)が設けられていてもよい。本実施形態においては、針部材81の下端部81aおよび中間部83の下端部83bが、ベース部82の下端部82bに受け止められるように構成されることで、針部材81および中間部83のドラム本体72a内への落下が防止されている。
【0044】
さらに、針部材81は、
図5に示すように、周方向に隣り合う針部材81、81間の距離L1と、軸方向に隣り合う針部材81、81間の距離L2とが一定の千鳥配列になるように配置されている。これにより、サイドウォールゴム30に形成される複数の貫通孔31…31の配列が、針部材81…81の配列同様に千鳥配列で形成される。
【0045】
また、前述のように針部材81が円錐状を有しているので、サイドウォールゴム30に形成される貫通孔31の形状は、針部材81と同様に円錐状に形成される(
図6)。
【0046】
第1〜第3可動ガイドローラ73、74、75、および、固定ガイドローラ76は、
図2に示すように、針付きローラ72側から巻き取り装置6に向けて順に並べて配置されている。本実施形態においては、第1可動ガイドローラ73は、針付きローラ72よりも下方に配置され、第2可動ガイドローラ74は、針付きローラ72よりも上方に配置され、第3可動ガイドローラ75は、針付きローラ72と第1可動ガイドローラ73との間の高さ位置に配置され、固定ガイドローラ76は、第2可動ガイドローラ74と第3可動ガイドローラ75との間の高さ位置に配置されている。第1〜第3可動ガイドローラ73、74、75、および、固定ガイドローラ76は、互いに段違いになるように配置されている。
【0047】
サイドウォールゴム30は、第1可動ガイドローラ73に対して下側から、第2可動ガイドローラ74に対して上側から、第3可動ガイドローラ75に対して下側から、固定ガイドローラ76に対して上側から巻き掛けられて、これらのガイドローラ73、74、75、76によって搬送されるように構成されている。
【0048】
ところで、サイドウォールゴム30は、厚さおよび硬度によって、穴開け時に必要な張力が異なる。具体的には、
図6および
図7に示すように、厚さおよび硬度が大きいほど必要な張力が大きくなる傾向を有している。したがって、サイドウォールゴム30への穴開け時には、サイドウォールゴム30に、厚さまたは硬度、あるいはその両方に応じた張力を付与する必要があり、本実施形態におけるサイドウォールゴム30の製造装置には、張力変更装置9が備えられている。
【0049】
張力変更装置9は、第1〜第3可動ガイドローラ73、74、75、および、固定ガイドローラ76によって構成されている。すなわち、第1〜第3可動ガイドローラ73、74、75、および、固定ガイドローラ76は、サイドウォールゴム30を搬送する搬送機能に加え、サイドウォールゴム30に付与される張力を変更する張力変更機能を有する。
【0050】
張力変更装置9は、
図2に示すように、第1〜第3可動ガイドローラ73、74、75それぞれの上下方向位置を変更することにより、サイドウォールゴム30に付与される張力を変更することができる。なお、本実施形態においては、第1〜第3可動ガイドローラ73〜75の上下方向距離を広げることによって、サイドウォールゴム30に付与される張力が大きくなるように設定されている。これにより、サイドウォールゴム30の厚さまたは硬度、あるいは、その両方に応じた張力を、サイドウォールゴム30に付与することができる。
【0051】
次に、サイドウォールゴム30の製造方法について説明する。
【0052】
図2に示すように、押出機5によって該押出機5の口金からサイドウォールゴム30が帯状に押し出し成型される(押出工程)。押出機5から押し出されたサイドウォールゴム30は、コンベア装置71、針付きローラ72、第1〜第3可動ガイドローラ73〜75、および固定ガイドローラ76によって、巻き取り装置6へ搬送される(搬送工程)。
【0053】
押出機5から押し出されたサイドウォールゴム30は、コンベア装置71、針付きローラ72、第1〜第4ガイドローラ73〜76を経由するとともに、巻き取り装置6に巻き掛けられる。
【0054】
その後、サイドウォールゴム30には、
図6および
図7に示すように、サイドウォールゴム30の厚さまたは硬度、あるいは、その両方に応じた所定の張力が付与されるように、第1〜第3可動ガイドローラ73、74、75の上下方向位置が調整される(張力変更工程)。なお、サイドウォールゴム30に付与される張力の変更は、作業者によって調整されてもよいし、アクチュエータによって調整されてもよい。
【0055】
押出機5から押し出されたサイドウォールゴム30は、搬送工程において、所定の張力が付与された状態で、針付きローラ72によって複数の貫通孔31…31が形成される(穴開け工程)。具体的に、サイドウォールゴム30は、針付きローラ72のドラム本体72aの外周面に巻き掛けられるとともに、針付きローラ72によって押出機5側から巻き取り装置6側に搬送される。このとき、針付きローラ72のドラム本体72a内の圧力を増大させることにより、針部材81および中間部83がドラム本体72aの外周面から突出し、サイドウォールゴム30の針付きローラ72に巻き掛けられた部分に貫通孔31…31が形成される。
【0056】
サイドウォールゴム30に貫通孔31…31が形成された後に、ドラム本体72a内の圧力が減圧され、針部材81および中間部83は、針付きローラ72(ドラム本体72a)の外周面から退避するとともに、針付きローラ72内に収納される。これにより、貫通孔31…31形成後のサイドウォールゴム30に針部材81が貫通した状態のまま搬送されることによる貫通孔31…31の不必要な拡大が抑制される。
【0057】
上述のように、穴開け工程では、針付きローラ72によってサイドウォールゴム30を搬送しながら、このサイドウォールゴム30に順次穴開けすることができ、工程速度を保ちながら、効率よく穴開け作業を行うことが可能となる。
【0058】
そして、複数の貫通孔31…31が形成されたサイドウォールゴム30は、巻き取り装置6によって巻き取られ、中間製品であるサイドウォールゴム30が完成する。巻き取り装置6に巻き取られてロール体とされたサイドウォールゴム30は、その後、成型工程において、巻き戻されながらカーカスプライ11の径方向外側に貼り付けられる。
【0059】
また、成型工程において、巻き戻されるサイドウォールゴム30の複数の貫通孔31…31の形状は、
図6に示すように、カーカスプライに貼り付けられる被貼付面30b側の径D1が、反被貼付面(プロファイル面)30a側の径D2が小さくなるように貼り付けられることが好ましい。これにより、カーカスプライ11とサイドウォールゴム30との間に残留した空気が、タイヤ内側から外側に向けて排出されやすい。
【0060】
上述したサイドウォールゴム30の製造方法によれば、サイドウォールゴム30への空気抜きのための貫通孔を形成する際に、該サイドウォールゴム30に所定の張力を作用させることにより、例えば、カーカスプライ11等に比して剛性の低いサイドウォールゴム30の厚さを不必要に大きくすることなく、サイドウォールゴム30に確実に穴開けすることができる。これにより、最適厚さで形成されたサイドウォールゴム30の複数の貫通孔から、該サイドウォールゴム30とカーカスプライ11との間の空気を排出することができる。その結果、空気入りタイヤの性能および品質の確保が可能となる。
【0061】
サイドウォールゴム30を搬送工程上に設けられた針付きローラ72によって搬送しながら、該サイドウォールゴム30に複数の貫通孔31…31を設けることができるので、サイドウォールゴム30の搬送を停止することなく(工程速度を落とすことなく)効率的に穴開けを実施することができる。
【0062】
サイドウォールゴム30の製造装置は、サイドウォールゴム30に付与する張力を変更する張力変更装置9が備えているので、サイドウォールゴム30に最適な張力を作用させることができる。これにより、前述のように、サイドウォールゴム30に、該サイドウォールゴム30の厚みまたは硬度、あるいは、その両方に応じた張力を付与させることで、サイドウォールゴム30へのより確実な穴開けが可能となる。
【0063】
サイドウォールゴム30の製造装置は、針付きローラ72から針部材81が出没可能に設けられているとともに、針部材81は貫通孔31の形成後に針付きローラ72内に収納される。これにより、例えば、針部材81が針付きローラ72から常時突出した状態である場合のように、針部材81がサイドウォールゴム30に貫通しながら搬送されることによって貫通孔31の形状が不必要にサイドウォールゴム30の搬送方向(長手方向)に拡大する(延びる)ことが抑制できる。
【0064】
サイドウォールゴム30に形成された貫通孔31は、カーカスプライ11へ接着される被貼付面30b側の径D1が、反被貼付面(プロファイル面)30a側の径D2よりも大きくなるように形成されている。これによれば、加硫成型時において、サイドウォールゴム30のカーカスプライ11への被貼付面30b側から反被貼付面30a側へのゴム流れの悪化を抑制することができる。
【0065】
空気抜き用の穴開けが、サイドウォールゴム30のみが製造される工程において実施されるので、サイドウォールゴム30のみを監視することができる。これにより、例えば、成型工程等の他の部材とが組み合わされる工程で穴開けを実施する場合に比して、サイドウォール部のゴム部材の品質不良をより確実に低減することができる。
【0066】
また、品質不良が生じた際に、最小限のラインのみを停止するだけで対応できるので、仮に、成型工程等の他の部材と組み合わされる工程で穴開けを行う場合、タイヤ製造ライン全体を停止する必要があるが、本実施形態においては、サイドウォールゴム30を製造する工程のみを停止するだけで対応できる。
【0067】
なお、発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0068】
例えば、本実施形態では、針付きローラ72に収納された針部材81が、エアによって径方向外側および内側に出没可能に構成されていたが、針部材81は、例えば、機械的に出没可能に構成されていてもよい。
【0069】
例えば、本実施形態では、サイドウォールゴム30に付与される張力の変更が、最初に行われたが、サイドウォールゴム30の搬送中のサイドウォールゴム30に開けられた貫通孔31…31の状態によって張力を途中で変更してもよい。この場合、例えば、貫通孔形成後のサイドウォールゴム30の状態を監視し、貫通孔が形成されていない等の不具合に応じて、張力が変更される。
【0070】
例えば、本実施形態では、張力変更装置が、上下方向移動可能な複数の可動ガイドローラで形成されていたが、一つの可動ガイドローラで形成されていてもよい。また、張力変更装置には、通常のテンショナーが用いられてもよい。